準備が進むコロナ禍のゴヤ賞授賞式*ゴヤ賞2021 ⑭ ― 2021年03月02日 17:48
綱渡りのセレモニー、テレマティクスとライブの混成
(左からマリアノ・バロッソ、アントニオ・バンデラス、マリア・カサド、プレス会見2月)
★去る2月2日、第35回ゴヤ賞2021授賞式の詳細が少し明らかになりました。出席者はスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ、総合司会者のマラガ出身の俳優アントニオ・バンデラスとバルセロナ出身のジャーナリストマリア・カサドの3氏。カサドは以前にご紹介したように昨年からマラガに転居しています。授賞式は予定通り3月6日、マラガのソーホー・カイシャバンク劇場です。新型コロナのパンデミアの動向のせいで、テレマティクスとライブの混成、生放送は進行役の総合司会者、トロフィーのプレゼンター、ミュージカルでバックを構成するミュージシャンに限られるようです。
★マリアノ・バロッソ会長は「今年公開できた作品を歓迎し、称賛するためのセレモニーを全力を尽くしてやり遂げたい。状況に応じて責任ある安全安心をモットーに行いたい」と決意のほどを語った。今回のノミネーション発表で採用したテレマティクスをガラでも利用する。ゴヤ賞授賞式の長い歴史のなかでも初めての体験になります。赤絨毯に現れるお目当てのシネアストとの自撮りはできませんけれど、各家庭のお茶の間で受賞者が明らかになる瞬間をダイレクトに見ることができる。関係者はすべてPCR検査を済ませており、マスク着用は言うまでもなく、ソーシャルディスタンスを守って、最善の準備をしていることを強調した。
★総合司会者のバンデラスは、「現実が私たちに残した亀裂のなかに巻き込まれていることは分かっていますが、それはすべて怒りと錯覚です。ゴヤ賞の授賞式は疫病から心を回復させるスタートの合図でした。テレマティクスとライブの混成ですが、従来の仕来りを重んじながら、参加している人々の安全を確保しつつ観客に或るメッセージを送り届けられるよう自覚しています」と。ゴヤ賞は映画産業で働く全メンバーの祭典、特にカメラの前面ではなく、ずっと後方にいる人々なしに映画は製作できない。「賞を手にするチャンスのない人々も不可欠なことを示したい。運転手さんやケータリングの事業者の他、多くのファミリーが映画に依存して生活している」とバンデラス。「後ろにいる人々、より後方の人々、観客の存在に感謝しています」とマリア・カサドが挨拶を引き取った。
(メディアの取材を受けるアントニオ・バンデラスとマリア・カサド)
★主なミュージシャンは、マラガのシンガーソングライターのバネサ・マルティン(María Vanesa Martín Mata、1980)バルセロの歌手アイタナ(Aitana Ocaña Morales、1999)とアナウンスされました。ライブ演奏も限られた昨今では、彼女たちの出演が映画ファンのみならず音楽ファンを大いに喜ばせることになるでしょう。今年は見る価値がありそうです。「上品で節度をもった」ガラにしたいと主催者。
今年のゴヤ賞は生誕100年の「ベルランガ年」とコラボする
★スペイン国民から最も愛されたルイス・ガルシア・ベルランガ監督の生誕100周年にあたり(バレンシア1921~マドリード2010)、パンデミアの困難のなかて迎えることになりました。まだ詳細ははっきりしません。ベルランガ映画は残念ながら1本も公開されておりませんので奇異に思われるでしょうが、バレンシアのサッカー・チーム「バレンシアCF」のファンであったことから、89歳で亡くなったときには試合前に黙祷が捧げられたほど愛されていたのでした。葬儀には映画関係者以外の会葬者が押しよせて別れを忍びました。京橋フィルムセンターで開催されたスペイン映画祭1984で『ようこそマーシャルさん』(53)と『カラブッチ』(57)が上映されただけ、昨年のスペインクラシック映画上映会2020では、前者と彼の最高作と称される『死刑執行人』(63)がオンラインで上映されました。
(最晩年のルイス・ガルシア・ベルランガ監督)
(最高作と称される『死刑執行人』のポスター)
★生前ベルランガは、マドリードのセルバンテス協会本部に設置された個人ボックスに或る書類を預けました。生誕100年目となる2021年6月12日まで封印されており、間もなく中身が明らかになります。検閲に苦しんだフランコ時代の具体的な内容の書類が含まれているのではないかと期待されています。もし期待通りならスペイン映画史の空白が埋められるかもしれません。
*『カラブッチ』の紹介記事は、コチラ⇒ 2020年06月03日
*『ようこそマーシャルさん』の紹介記事は、コチラ⇒2020年05月22日
*『死刑執行人』の紹介記事は、コチラ⇒2020年06月09日/06月10日
第8回フェロス賞2021*結果発表 ― 2021年03月05日 16:49
作品賞は下馬評通り「Las niñas」と「La boda de Rosa」
★去る3月2日、マドリードのグラン・ビアにあるコリセウム劇場で第8回フェロス賞の結果発表がありました。クラスターの発生排除の見地から劇場の収容力を25パーセントにまで削減、参加者全員マスク着用、少しの移動でもソーシャルディスタンス厳守、関係者一同はPCR検査陰性が義務付けられました。伝統になっている受賞者の家族写真撮影、カクテルでの乾杯も中止されました。レッド・カーペットにはノミネートされた人の他、プレゼンターとして出席した、パコ・レオン、ロレス・レオン、ミレナ・スミット、ニコラス・コロナドスス、アブリル・サモラ、ホルヘ・サンス、メラニ・オリバレス、他ユーチューバーのEsty Quesadaの姿もありました。総合司会は女優のピラール・カストロでした。
(司会者ピラール・カストロ)
(ピラール・カストロ、プロノビアスのデザイン、赤絨毯のフォトコール)
★先日発表になったフォルケ賞と大分重なっており、これから開催されるゴヤ賞も予想通りになるかもしれません。3賞ともカテゴリーは若干異なりますが大枠は同じです。唯しんがりのゴヤ賞は映画アカデミー会員の投票ですから違いが出るかもしれません。ドラマ部門の作品賞「Las niñas」は、約84,000人が映画館に足を運んだようで、3月から5ヵ月遅れて開催されたマラガ映画祭の金のビスナガ賞の人気が続行しています。コメディ部門の作品賞「La boda de Rosa」はゴヤ賞では同じカテゴリーになるので対決することになります。ロサ役のカンデラ・ペーニャは演技は折り紙付きでも、政治的発言を嫌うテキが多いからゴヤでも泣きを見るかもしれない。
(ホルヘ・レドンドのドレスを着たカンデラ・ペーニャ、ミニスカート)
★主演女優賞のパトリシア・ロペス・アルナイス はフォルケ賞に続いての受賞、パンデミアにもかかわらず「Ane」も12,000人がチケットを買って映画館で見た。言語はバスク語、2010年9月、ETAが武装闘争停止宣言をする1年前のビトリアが舞台という地味な映画なのです。男優賞のマリオ・カサスはゴヤ賞はありませんが、フェロスは助演男優賞を2回受賞、主演は初めてです。「Sentimental」のハビエル・カマラとの対決になります。唯カマラは既にゴヤの胸像は手にしています。
(今回は残念賞のハビエル・カマラ)
*第8回フェロス賞2021受賞結果*
◎作品賞(ドラマ部門)
Akelarre 製作Sorgin Films, A.I.E. 他 監督パブロ・アグエロ
Ane 製作Amania Films, Euskal Irrati Telebista, TVE 他 同ダビ・ペレス・サニュド
El año del descubrimiento (ドキュメンタリー) 製作Lacima Producciones S.L. 他
同ルイス・ロペス・カラスコ
No matarás 製作Castelao Pictures, Filmax, RTVE 他 同ダビ・ビクトリ
Las niñas バレリー・デルピエール、アレックス・ラフエンテ、
製作Las Ninas Majicas, A.I.E. 他 監督ピラール・パロメロ
(製作者バレリー・デルピエール)
◎作品賞(コメディ部門)
Los europeos 製作Gonita, Apache Films, 他 同ビクトル・ガルシア・レオン
Historias lamentable 製作Comunidad de Madrid, Crea SGR, ICAA, 他 同ハビエル・フェセル
Orígenes secretos 製作In Post We Trust, La Chica de la Curva, RTVE 他
同ダビ・ガラン・ガリンド 邦題『ヒーローの起源 アメコミ連続殺人事件』
Sentimental 製作Impossible Films, ICEC, TV3 他 同セスク・ゲイ
La boda de Rosa クリスティナ・スマラガ、リナ・バデネス、フェルナンダ・デル・ニド、
製作La Boda de Rosa La Pelicula, A.I.E. 他 監督イシアル・ボリャイン
(クリスティナ・スマラガ)
◎監督賞
イシアル・ボリャイン(La boda de Rosa)
セスク・ゲイ(Sentimental)
ルイス・ロペス・カラスコ(El año del descubrimiento)
ダビ・ビクトリ(No matarás)
ピラール・パロメロ(Las niñas)
(ピラール・パロメロ)
◎主演女優賞
アマイア・アベラストゥリ (Akelarre)
アンドレア・ファンドス (Las niñas)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
(パトリシア・ロペス・アルナイス、テレサ・エルビグのデザイン)
◎主演男優賞
ラウル・アレバロ (Los europeos)
ハビエル・カマラ (Sentimental)
ハビエル・グティエレス (Hogar)
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos)
マリオ・カサス (No matarás)
(マリオ・カサス)
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota)
(ディオールのドレスを着たベロニカ・エチェギ)
◎助演男優賞
チェマ・デル・バルコ (El plan)
ラモン・バレア (La boda de Rosa)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
アレックス・ブレンデミュール (Akelarre)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
(フアン・ディエゴ・ボトー)
◎脚本賞
マリナ・ペレス・プリド、ダビ・ペレス・サニュド (Ane)
ルイス・ロペス・カラスコ、ラウル・リアルテ (El año del descubrimiento)
イシアル・ボリャイン、アリシア・ルナ (La boda de Rosa)
ハビエル・フェセル、クラロ・ガルシア (Historias lamentable)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
(二つ目のフェロス賞)
◎オリジナル音楽賞
ロケ・バニョス (Adú)
マイテ・アロタハウレギ、アランサス・カジェハ (Akelarre)
ロケ・バニョス (Explota explota)
フェデリコ・フシド、アドリアン・フォルケス (No matarás)
コルド・ウリアルテ、Bingen Mendizabal (Baby)
(コルド・ウリアルテ)
◎予告編賞
マルタ・ロンガス、ラファ・マルティネス (Akelarre)
フアン・サンティアゴ (La boda de Rosa)
ミゲル・アンヘル・トルドゥ (Explota explota)
マリナ・フランシスコ、フアン・ガブリエル・ガルシア・ロマン (Las niñas)
ハビエル・フェセル、ラファエル・マルティネス (Historias lamentable)
(ラファエル・マルティネス)
◎ポスターFlixOlé 賞
ナタリア・モンテス (Akelarre)
パブロ・ダビラ、エスピナル・ガブリエル (El arte de volver)
ダビ・デ・ラス・エラス (Los europeos)
アルフレッド・ボレス、ベルタ・ゴンサレス (La reina de los lagartos)
ジョルディ・ラバンダ (Rifikin’s Festival)米国、監督ウディ・アレン
(ジョルディ・ラバンダ)
◎ドキュメンタリー賞(新設)
A media voz (キューバ、2019 監督ハイディ・ハッサン、パトリシア・ぺレス・フェルナンデス
Courtroom 3H (『家庭裁判所 第3法廷』) 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ
Dear Werner 監督パブロ・マケダ
El desafío: ETA (TVミニシリーズ) 監督Hugo Stuven
El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ
◎特別賞(新設)
Lúa vermella 監督ロイス・パティーニョ
Blanco en blanco (チリ、2019) 監督テオ・コート
El plan 監督ポロ・メナルゲス
La reina de los lagartos 監督ブルニン・ペルセベス、ナンド・マルティネス、
フアン・ゴンサレス
My Mexican Bretzel 監督ヌリア・ヒメネス・ロラング
★TVシリーズは、下馬評では「Patria」とアレックス・デ・ラ・イグレシアのホラー・ミステリー「30 monedas」(全8話)だったのですが、作品賞はどちらも外れました。受賞したディエゴ・サン・ホセの「Vamos Juan」の主役はハビエル・カマラとマリア・プハルテですが、両人とも受賞できませんでした。満遍なく賞をばらけさせら印象です。デ・ラ・イグレシアの新作は、エドゥアルド・フェルナンデスが主演男優賞を受賞しただけ、HBOヨーロッパ製作、監督とゲリカことホルヘ・ゲリカエチェバリアが脚本を共同執筆、出演はメーガン・モンタネル、マカレナ・ゴメス、カルメン・マチ、ペホン・ニエトなど、それぞれ赤絨毯を踏みました。今年はロドリゴ・ソロゴジェンの「Antidisturbios」のホービック・ケウケリアンの二人が主演男優賞賞を分け合いました。
(賞を分け合ったフェルナンデスとケウケリアン)
*TVシリーズ&ミニシリーズ受賞結果*
◎作品賞(ドラマ部門)
Antidisturbios ロドリゴ・ソロゴジェン、イサベル・ペーニャ Movistar+ /
The Lab / Caballo Films
(ロドリゴ・ソロゴジェン)
◎作品賞(コメディ部門)
Vamos Juan ディエゴ・サン・ホセ、TNT España / 100 Bala
(ディエゴ・サン・ホセ)
◎主演女優賞
エレナ・イルレタ (Patria) 監督フェリックス・ビスカレト、オスカル・ペドラサ
(エレナ・イルレタ)
◎主演男優賞(2名)
エドゥアルド・フェルナンデス (30 monedas) 監督アレックス・デ・ラ・イグレシア
(エドゥアルド・フェルナンデス)
ホービック・ケウケリアンHovik Keuchkerian (Antidisturbios)
(ホービック・ケウケリアン)
◎助演女優賞
ロレト・マウレオン (Patria)
(ロレト・マウレオン、オートクチュールKoahariのドレス)
◎助演男優賞
パトリック・クリアド (Antidisturbios)
(初受賞のパトリック・クリアド)
◎フェロス栄誉賞
ビクトリア・アブリル
★コロナワクチン接種反対で物議を醸した受賞者、ガラの夕べでは早速軌道修正を図りました。コロナで亡くなった方への配慮が足りなかったこと、傷つける意図など毛頭なかったこと、プレス会見で述べたことをどうか許してください、私をどうか信じてください、と許しを請いました。多分そういう意図などなかったのですけど軽率でした。プレゼンターはホルヘ・サンスでした。
(メモ用紙を読み上げた受賞スピーチをするビクトリア・アブリル)
★今は亡きビセンテ・アランダのミューズであったビクトリア、1987年の「El Lute」つづく88年の「El Lute II」、『アマンテス / 愛人』(91)、アルモドバル映画で残した功績を台無しにしないで欲しい。引退をほのめかしているらしいがどうでしょうか。
*ビクトリア・アブリルのキャリア紹介記事は、コチラ⇒2015年06月06日
★以下は話題になったファッション・ショー、今回もモノクロが主流でした。
(主催者AICE会長マリア・ゲーラ)
(毎回意表をつくマカレナ・ゴメス、鶴をあしらったテレサ・エルビグのデザイン、
「30 monedas」助演)
(ナタリエ・ポサ、ペドロ・デル・イエロのデザイン、「La boda de Rosa」助演)
(ミレナ・スミット、ジャン=ポール・ゴルチエのデザイン、「No matarás」出演)
(メーガン・モンタネル、「30 monedas」主演)
(アンドレア・ファンドス、「Las niñas」主演)
(ナタリア・デ・モリーナ、「Las niñas」助演)
(カルメン・マチ、「30 monedas」助演)
(キティ・マンベール、「El inconveniente」主演)
(パウラ・ウセロ、「La boda de Rosa」助演)
第35回ゴヤ賞の栄誉賞はアンヘラ・モリーナに*ゴヤ賞2021 ⑮ ― 2021年03月06日 20:17
初のゴヤ胸像――「ゴヤ栄誉賞は仲間からのサイコウの贈り物」
(ゴヤ賞2021の栄誉賞受賞のプレス会見、2021年2月28日、映画アカデミー本部にて)
★第35回ゴヤ賞栄誉賞の受賞者はアンヘラ・モリーナ(マドリード1955)とアップしておきましたが、ガラを目前に少し書き足しておきます。キャリア&フィルモグラフィーは、2016年の映画国民賞*を受賞した折りに紹介しています。45年の映画人生のなかで、ルイス・ブニュエルを筆頭にアルモドバル、ボラウ、グティエレス・アラゴン、ハイメ・チャバリ・・・と名監督に愛されたアンヘラ、しかしゴヤ賞はノミネートこそ5回ありますが、受賞は栄誉賞が初めてなのです。
*Premio Nacional de Cinematografía(国民映画賞とも訳される)
*キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2016年07月28日
(映画国民賞授賞式のアンヘラ・モリーナ、2016年9月)
★マリアノ・バロッソk映画アカデミー会長に付き添われてプレス会見に臨んだアンヘラは、「思ってもいなかった受賞の知らせに喜びとともに驚いている。全人生を捧げてきた映画の仲間がこの賞をもたらしてくれたことが特に素晴らしことだった」と。映画国民賞は教育文化スポーツ省とICAAが選考母体だが、この賞は純粋に映画人が選ぶという違いがあります。2021年はパンデミックでテレマティクスとライブの混成になる。3月6日のガラには家族は同席できないようです。「そうすることが最善だと考えています。家族はお茶の間で楽しむことになるでしょう」。ノミネートされながらチャンスを活かせないケースもありそうですから本当に異例の授賞式になります。新型コロナを恨んでも詮ないことです。
★「誰にこの賞を捧げるか? このゴヤは私の父、私の母、私の夫、私の子供たち、愛するファンと友人たち」と明かしました。これ以外の答えはないと思いますが。離れていた時期もあったが、映画のほか舞台にも立っている。現在はラモン・カンポスやテレサ・フェルナンデス=バルデスが手掛けるTVシリーズ、スリラー「Un asunto privado」(全8話)を撮影中、2022年も既に出演作が複数決まっている。引退はまったく考えていないが、「時には疲れていると」と冗談を交えてかわしていたが、まだまだ引退の歳ではありません。
★映画アカデミーが選考母体の「金のメダル」を2013年に受賞しており、それに加えての栄誉賞受賞となりました。バロッソ会長は「私たちの映画の発展に寄与した素晴らしい女優、栄誉賞は彼女と一緒に映画を作った仲間たちの感謝が込められている。アンヘラ・モリーナと映画はフィードバックする。スクリーンの中で彼女を見ると、私たちは元気づけられる」と称賛した。
(2013年に受賞した金のメダルを手にしたアンヘラ)
(準備が整ったマラガの街路、アンヘラの写真を囲んで 左から3人目が会長)
第35回ゴヤ賞2021の授賞式*結果発表 ⑯ ― 2021年03月08日 11:24
フェロス賞に続いて「Las niñas」が栄冠を独占!
(ハイメ・チャバリ監督から栄誉賞のトロフィーを受け取るアンヘラ・モリーナ)
★3月6日、第35回ゴヤ賞の授賞式がマラガ市のソーホ・カイシャバンク劇場で開催されました。「Las niñas」が大賞の作品・新人監督・オリジナル脚本・撮影賞4部門を制しました。先日のフェロス賞に続いての新人監督ピラール・パロメロが勝利を手にしたことになります。第35回のゴヤ栄誉賞は女優のアンヘラ・モリーナ、プレゼンターはハイメ・チャバリ監督、彼女を『ベアルン』で開花させた監督です。来マラガした受賞者は栄誉賞のアンヘラ・モリーナだけ、スクリーンでのスピーチという異例の授賞式となりました。総指揮はスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ、総合司会者はマラガの名誉市民でもあるアントニオ・バンデラスと、バルセロナから転居して準備を整えていたジャーナリストのマリア・カサドです。
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
(アントニオ・バンデラスとマリア・カサド)
*第35回ゴヤ賞2021結果発表*
◎作品賞
Adú (受賞4個)
Ane (受賞3個)
La boda de Rosa (受賞2個)
Sentimental (受賞1個)
Las niñas (受賞4個) 製作Las Niñas Majicas / Inicia Films
/ Bteam Producciones
(感謝のスピーチをする、製作者バレリー・デルピエールとアレックス・ラフエンテ)
★プレゼンターは異例の看護師アナ・マリア・ルイスさん、パンデミアのなかの授賞式を印象づけました。困難な道のりであった受賞者は「ビバ・シネ!」とスクリーンで挨拶しました。
◎監督賞
フアンマ・バホ・ウジョア (Baby)
イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
イサベル・コイシェ (Nieve en Benidorm)
サルバドール・カルボ (Adú)
(よき助言者ペドロ・コスタと「Adú」の仲間に感謝を捧げたサルバドール・カルボ)
★監督賞もスクリーンからの挨拶、プレゼンターは先輩監督黒のドレスのチュス・グティエレスと白のドレスのグラシア・ケレヘタでした。
◎新人監督賞
ダビ・ペレス・サニュド (Ane)
ベルナベ・リコ (El inconveniente)
ヌリア・ヒメネス (My Mexican Bretzel)『メキシカン・プレッツェル』なら国際映画祭
ピラール・パロメロ (Las niñas)
(ピラール・パロメロ)
★プレゼンターは、左からベレン・クエスタ、アントニオ・デ・ラ・トーレ、マリア・バランコ、新人監督賞はマリア・バランコが受賞者の名前を読み上げました。
◎オリジナル脚本賞
アレハンドロ・エルナンデス (Adú)
クラロ・ガルシア&ハビエル・フェセル (Historias lamentables)監督ハビエル・フェセル
アリシア・ルナ&イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
(左から、アレックス・ラフエンテ、ピラール・パロメロ、バレリー・デルピエール)
◎脚色賞
セスク・ゲイ (Sentimental)
ベルナルド・サンチェス&マルタ・リベルタ・カスティーリョ (Los europeos)
監督ビクトル・ガルシア・レオン
ダビ・ガラン・ガリンド&フェルナンド・ナバロ(Origenes secretos)
監督ダビ・ガラン・ガリンド、『秘密の起源』Netflix
ダビ・ペレス・サニュド&マリナ・パレス (Ane)
(ダビ・ペレス・サニュドとマリナ・パレス)
★オリジナル脚本賞と脚色賞のプレゼンターは同じ、ナタリア・ベルベケとトリスタン・ウジョアでした。
◎オリジナル作曲賞
ロケ・バニョス (Adú)
Bingen Mendizabal &コルド・ウリアルテ (Baby)
フェデリコ・フシド (El verano que vivimos) 監督カリオス・セデス
アランサス・カジェハ&マイテ・アロイタハウレギ(Akelarre)(受賞5個)
監督パブロ・アグエロ
(アランサス・カジェハ右とマイテ・アロイタハウレギ)
◎オリジナル歌曲賞
ロケ・バニョス& Cherif Badua (Adú)
アレハンドロ・サンス&アルフォンソ・ぺレス・アリアス (El verano que vivimos)
カルロス・ナヤ (Las niñas)
マリア・ロサレン (La boda de Rosa)
(マリア・ロサレン)
★音楽賞のプレゼンターはレオナルド・スバラグリアとナイワ・ニムリでした。
◎主演男優賞
ハビエル・カマラ (Sentimental)
エルネスト・アルテリオ (Un mundo noemal) 監督アチェロ・マニャス
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン
マリオ・カサス (No matarás) 監督ダビ・ビクトリ(受賞1個)
(初ノミネート初受賞のマリオ・カサス)
★26番目に発表された主演男優賞、2時間以上待たされましたが、家族や仲間からハグとベソの猛攻撃を受けました。「ファンに感謝」とマリオ。プレゼンターは既に主演男優賞のゴヤ胸像保持者のロベルト・アラモとホセ・コロナドでした。
◎主演女優賞
アマイア・アベラストゥリ (Akelarre)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
(「たくさんの愛と感謝を」とスピーチしたパトリシア・ロペス・アルナイス)
★25番目の発表、嬉しさで声が出ませんでした。後ろに控えていた監督、仲間と抱き合って喜びに浸っていました。プレゼンターは複数個ゴヤの胸像をもっているエンマ・スアレスと2018年の栄誉賞受賞者の大先輩マリサ・パレデスでした。
◎助演男優賞
アルバロ・セルバンテス (Adú)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
(笑が止まらなかったアルベルト・サン・フアン)
★セスク・ゲイの「Sentimental」は5カテゴリーにノミネートされていましたが、受賞は助演男優賞だけに終わりました。共演のハビエル・カマラも大喜び。笑っていますが「PSOEに言いたいことがあるんですよ。いま良心的な監督たちは市場に作品を送り出すことができていない。家族をもつことは基本的人権です」と現政権の文化政策に苦言を呈していた。プレゼンターはアンダルシア出身の助演男優賞受賞者アントニオ・ベラスケスと2020年の主演女優賞を受賞しているマルタ・ニエトでした。ベラスケスが名前を読み上げました。
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota) 監督ナチョ・アルバレス
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
(2018年の主演女優賞受賞者ナタリエ・ポサ、数ヵ月ハグしていない母親に捧げた)
★少し意外な印象を受けましたが、人生を立て直すために急停止しなければならなくなったロサの姉妹を演じました。監督のイシアル・ボリャイン、ロサ役のカンデラ・ペーニャに感謝の言葉、セルジ・ロペスには「セルジ、愛してるよ~」と興奮していました。何故かカルメン・マチが一緒でハグしていました。プレゼンターは助演男優賞と同じ、こちらはマルタ・ニエトが受賞者名を読み上げました。
◎新人男優賞
チェマ・デル・バルコ (El plan) 監督ポロ・メナルゲス
ジャニックJanick (Historias lamentables)
フェルナンド・バルディビエルソ (No matarás)
アダム・ヌルー (Adú)
◎新人女優賞
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
ミレナ・スミット (No matarás)
グリセルダ・シチリアニ (Sentimental)
ジョネ・ラスピウル (Ane)
(スクリーン出席のジョネ・ラスピウル)
★「予想していなかった、頭がおかしくなりそう」と開口一番。本当に予期していなかったかな。プレゼンターは、アントニオ・デ・ラ・トーレが新人男優賞、ベレン・クエスタが新人女優賞を読み上げました。マリア・バランコは新人監督賞を読み上げました。
◎ドキュメンタリー賞
Anatomía de un dandy (監督アルベルト・オルテガ&チャーリー・アルナイス)
Cartas mojadas (監督パウラ・パラシオス)
My Mexican Bretzel
El año del descubrimiento (受賞2個)製作El año del descubrimiento /
Alina Film / Cromagnon Producciones / Lacima Producciones / Magnetica Cine
監督ルイス・ロペス・カラスコ
◎プロダクション賞
グアダルーペ・バラゲル・トレリェスTrellez (Akelarre)
カルメン・マルティネス・ムニョス (Black Beach) 監督エステバン・クレスポ
トニ・ノベリャ (Nieve en Benidorm)
アナ・パラ&ルイス・フェルナンデス・ラゴ (Adú)
(アナ・パラとルイス・フェルナンデス・ラゴ)
★パンデミアの困難を乗り越えたことが評価されました。プレゼンターは、フアン・アントニオ・バヨナでした。
◎撮影賞
セルジ・ビラノバ (Adú)
ハビエル・アギーレ (Akelarre)
アンヘル・アモロス (Black Beach)
ダニエラ・カヒアス (Las niñas)
(ダニエラ・カヒアス)
★ボリビア出身のダニエラ・カヒアスは遠方の家族に感謝。プレゼンターは、白いドレスの Hiba Abouk、中央がマギー・シバントス、赤いドレスのマルタ・エトゥラでした。
◎編集賞
ハイメ・コリス (Adú)
フェルナンド・フランコ&ミゲル・ドブラド (Black Beach)
ソフィ・エスクデ (Las niñas)
セルヒオ・ヒメネス (El año del descubrimiento)
(セルヒオ・ヒメネス)
◎美術賞
セサル・マカロン(Adú)
モンセ・サンス (Black Beach)
モニカ・ベルヌイ (Las niñas)
ミケル・セラーノ (Akelarre)
★プレゼンターは、編集賞と同じでした。
◎衣装デザイン賞
クリスティナ・ロドリゲス (Explota explota)
アランチャ・エスケロ (Las niñas)
レナ・モッスム・モスンMossum (Los europeos)
ネレア・トリホス (Akelarre)
★「私に投票して下さった皆さま、ありがとうございました」とスピーチ、プレゼンターはペドロ・アルモドバルでした。登壇したのは左から、アルモドバル、ペネロペ・クルス、アレハンドロ・アメナバル、パス・ベガ、フアン・アントニオ・バヨナの実力者5人でした。
◎メイク&ヘアー賞
エレナ・クエバス、マラ・コリャソ、セルヒオ・ロペス (Adú)
ミル・カブレル、ベンハミン・ぺレス (Explota explota)
パウラ・クルス、ヘスス・ゲーラ、ナチョ・ディアス (Origenes secretos)
Beata Wojtowicz、リカルド・モリーナ (Akelarre)
(ベアタ・ヴォイトヴィッチとリカルド・モリーナ)
★プレゼンターは、シャネルのドレスのペネロペ・クルスでした。
◎録音賞
ウルコ・ガライ、ホセフィナ・ロドリゲス、他 (Akelarre)
コケ・ラエラ、ナチョ・ロヨ=ビリャノバ、他 (Black Beach)
マル・ゴンサレス、フランセスコ・ルカレリィ、他 (El plan)
エドゥアルド・エスキデ、ハマイカ・ルイス・ガルシア、他 (Adú)
(エドゥアルド・エスキデ)
★プレゼンターは、写真中央のアレハンドロ・アメナバルでした。
◎特殊効果賞
ラウル・ロマニリョス、ジャン=ルイ・ビリヤード (Black Beach)
ラウル・ロマニリョス、ミリアム・ピケル (Historias lamentables)
リュイス・リベラ・ホベ、ヘルムス・バーナートHelmuth Barnert (Origenes secretos)
マリアノ・ガルシア・マルティ、アナ・ルビオ (Akelarre)
(マリアノ・ガルシア・マルティとアナ・ルビオ)
★左がマリアノ・ガルシア・マルティとその家族、右がアナ・ルビオと家族。プレゼンターは、パス・ベガでした。
◎アニメーション賞(ノミネーション1作のみ)
La gallinas Túruleca 製作Brown Films / Groriamundi Producciones /
Pampa Films / Tandem Films 他 監督ビクトル・モニゴテ
(左がビクトル・モニゴテ)
(別々に待機していた製作者たちとプレゼンターのジョン・コルタハレナ)
★唯一受賞が決まっていたのがアニメーション賞でした。プレゼンターは、ダニエラ・サンティアゴとジョン・コルタハレナ、コルタハレナが読み上げました。
◎イベロアメリカ映画賞
El agente topo(チリ)『老人スパイ』 監督マイテ・アルベルディ
La llorona (グアテマラ)『ラ・ヨローナ伝説』 監督ハイロ・ブスタマンテ
Ya no estoy aquí (メキシコ)2019、監督フェルナンド・フリアス・デ・ラ・パラ
『そして俺は、ここにいない』Netflix配信
El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ
(コロンビアの製作者ゴンサロ・コルドバ)
(監督のフェルナンド・トゥルエバ)
★プレゼンターはモニカ・ランダルとベロニカ・フォルケ。ゴンサロ・コルドバは、スペイン・サイドのトゥルエバ監督や主役のハビエル・カマラ他、コロンビアのキャスト陣、スタッフ陣に感謝のスピーチをしました。トゥルエバ監督は原作者に感謝の言葉、最初イヤホーンを付けていなかったので声が聞こえなかった。Zoomで参加しているゴンサロ・コルドバから「フェルナンド、声が聞こえないよ」と笑われ仕切り直しをしました。
◎ヨーロッパ映画賞
Corpus Christi (原題「Boze Cialo」ポーランド) 監督ヤン・コマサ
El oficial y el espia (原題「J'accuse」フランス=イタリア) 監督ロマン・ポランスキー
Falling (カナダ=イギリス) 監督ヴィゴ・モーテンセン
El padre (The Father)(イギリス=フランス) 監督フローリアン・ゼレール
(アンソニー・ホプキンスとオリビア・コールマンを配したポスター)
★フローリアン・ゼレールは昨年のサンセバスチャン映画祭で参加したときの印象を語っていました。『ファーザー』の邦題で5月公開が決定しています。ホプキンスが認知症の父親を演じる。TVシリーズでエリザベス女王を演じたコールマンが娘に扮する。プレゼンターはエレナ・イルレタとペドロ・カサブランクでした。
◎短編映画賞
16 de decembro 監督アルバロ・ガゴ
Beef 監督イングリデ・サントス
Gastos incluidos 監督ハビエル・マシぺ
Lo efímero 監督ホルヘ・ムリ得る
A la cara 監督ハビエル・マルコ・リコ
(ハビエル・マルコ・リコ)
★プレゼンターは左から、カルロス・アレセス、フリアン・ロペス、アドリアン・ラストラ。
◎短編ドキュメンタリー賞
Paraíso en llamas 監督ホセ・アントニオ・エルゲタ
Paraíso 監督マテオ・カベサ
Sólo son peces 監督アナ・セルナ&パウラ・オラツ
Biografía del cadáver de una mujer 監督マベル・ロサノ
(喜びのマベル・ロサノ監督)
★プレゼンターは左から、カルロス・アレセス、フリアン・ロペス、アドリアン・ラストラ。
◎短ペンアニメーション賞
Homeless Home 監督アルベルト・バスケス
Metamorphosis 監督かリア・ペレイラ&フアンフラン・ハシント
Vuela 監督カリオス・ゴメス=ミラ・サグラド
Blue & Malone: Casos imposibles 監督アブラハム・ロペス・ゲレーロ
★「スペインのアニメーションは信じられないほど力があるが、ただ問題は製作が困難なことです」と資金難を訴えていた。プレゼンターは上記と同じでした。
(以上28部門、ゴチック体が受賞者、目下入手できたフォトだけアップしました)
ゴヤ賞2021授賞式の落穂ひろい ⑰ ― 2021年03月11日 15:46
ゴヤ賞2021ガラの視聴率は過去15年間で最低の15.6%でした!
★マラガでの開催は不可能と思われていた第35回ゴヤ賞授賞式、スペイン映画アカデミーの執行部や総合司会者の個人的な努力でなんとか開催できました。アントニオ・バンデラスはいささかお疲れぎみでしたが、マリア・カサドに支えられ乗り切りました。彼の奔走なくして実現できなかったかもしれませんが、お茶の間の観客2,482,000人、視聴率15,6%は、ここ15年間の最低を記録してしまいました。しかし継続は力なり、やれただけでも褒めねばなりません。今回ガラに参加できたのは栄誉賞受賞者のアンヘラ・モリーナと各カテゴリーのプレゼンター、音楽を担当したミュージシャンやダンサーだけ、ノミネートされた方々は依怙贔屓なく全てスクリーンでの参加でした。ということで座席は空っぽでした。
(全28部門でノミネートされた人々のスクリーン・パネル)
★例年のガラとは違って地味でしたが、却って落ち着いて見られたかもしれません。総合司会者が一度もお色直しをしなかったガラとしても記録されるでしょう。参加できなかった候補者たちは、1ヵ所に集合して結果を待ったグループ、例えば「Las niñas」はバルセロナ、「Ane」はブルゴスで全員で待機した。その他は自宅が多かったようです。今年はノミネートとは無関係でしたが、バンデラスの恩師アルモドバル、共にアメリカで活躍した親友ペネロペ・クルス、海外でも活躍する常に冷静沈着なアレハンドロ・アメナバル、寡黙な実力者フアン・アントニオ・バヨナ、ロス暮しも長くなったパス・ぺガが馳せつけ、それぞれプレゼンターを務めてくれた。そしてビデオ出演の世界のトップスターや監督たちから寄せられた祝辞など、彼らがもつ人脈、キャリアなくして実現できなかったでしょう。最優秀作品賞のプレゼンターに看護師のアナ・マリア・ルイスを起用するなど意表をついた企画でした。
(馳せつけたアルモドバル、ペネロペ・クルスとバンデラス)
(応援に馳せつけた左から、クルス、アルモドバル、アメナバル、バヨナ、ベガ)
(メイクアップ&ヘアーのプレゼンター、ペネロペ・クルス)
(作品賞プレゼンターを務め、コロナ禍の現状を語った看護師アナ・マリア・ルイス)
ガラを盛り上げた4人の歌姫とミュージシャンたち
★オーケストラはマラガ交響楽団、最初の歌姫はアルゼンチン出身のナティ・ペルソ、バルセロナを拠点に活躍している。1958年にルイス・セサル・アマドリが撮った「La violetera」で、往年の大女優サラ・モンティエルが歌ったクプレ(スペイン版演歌)「スミレ売り」を独自に変曲したものを歌った。
(熱唱するナティ・ペルソ)
★二番手がマラガ出身のシンガーソングライターのバネッサ・マルティン、彼女の歌う「Una nube blanca」をバックに今年鬼籍入りしたスペイン文化の担い手たちがスクリーン上に現れた。女優ルチア・ボゼー、ロサ・マリア・サルダ、監督ホセ・ルイス・クエルダ、自作の映画化に一度も満足しなかった作家のフアン・マルセ、ミュージシャンのルイス・エドゥアルド・アウテなど87人に及ぶ点鬼簿でした。アナ・ベレンの「Una nube blanca」をバラードに変曲したものを情感豊かに歌いあげた。
(バネッサ・マルティン)
★若手のホープ、アイタナ・オカ―ニャ(バルセロナ1999)は、「Happy Days Are Here Again」(幸せの日よ再び)を豊かな声量でエレガントに歌った。1962年に歌手デビューしたマルチアーティストのバーブラ・ストライサンドの持ち歌、観客を1960年代のニューヨークに連れ戻した。
(ルックスもセンスも魅力的なアイタナ)
★今年はルイス・ガルシア・ベルランガの生誕100周年ということで多くのフィエスタが企画されている。その第一弾がゴヤ賞とのコラボでした。監督を国際的に有名にした『ようこそマーシャルさん』で村長さんに扮したペペ・イスベルトにカルロス・ラトレ、美貌の歌姫カルメンに扮したロリータ・セビーリャにディアナ・ナバロが扮して息の合った「Americano, os recibimos con alegría」を歌って踊って観客を愉しませた。スクリーンには監督の代表作、『死刑執行人』『カラブッチ』「実物大」などが次々に現れ、リアルタイムで映画館に足を運んだシニア層は、特に感慨深かったにちがいない。
(ディアナ・ナバロとカルロス・ラトレの息の合った演技)
★後半1時間50分ごろに始まったゴヤ栄誉賞では、黒の衣装に朱の扇子をもったダンサーがグループでフラメンコを披露、最後に舞台中央の入り口からアンヘラ・モリーナが軽やかに踊りでた。ゴヤの授賞式の中継を1995年あたりから見ているが、これもサプライズでした。初期の受賞者に比べて若くなったこともありますが、とくに女性の元気力は際立ちます。スピーチの内容はプレス会見で述べていたこととダブりますが、印象に残ったのは俳優でコプラやフラメンコの歌手であった父親アントニオの死の痛みについてでした。芸術家一家としてスペインでは有名、母親オリビアは女優、弟妹や娘も俳優やミュージシャンとして活躍、両親の血を受け継いでいる。
(フラメンコを踊りながら登場した受賞者)
★愛について語り「映画は私の人生、私の地平線、私が進む道しるべ、私たちはそれを共有する必要があり、それを必要と感じることが大切」と語った。ハイメ・チャバリの手から受け取ったゴヤの胸像にキスをするアンヘラでした。映画アカデミー会長のマリアノ・バロッソも「映画の癒しの力」について語ったが、受賞者の多くが口にしたのも、映画に対する愛でした。拍手は舞台前面に控える楽団員のみでしたが、個人的には忘れられない授賞式でした。
(プレゼンターのハイメ・チャバリ監督とアンヘラ・モリーナ)
★祝辞を寄せた各国のシネアストたち(順不同)、アメリカサイドではロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ニコール・キッドマン、ローラ・ダーン、ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、メル・ギブソン、ベニチオ・デル・トロ、ナオミ・ワッツ、グレン・クローズ、シャーリーズ・セロン、シルヴェスター・スタローン、メラニー・グリフィス、マハーシャラ・アリ、(イギリス)エマ・トンプソン、ヘレン・ミレン、(フランス)イザベル・ユペール、ティエリー・フレモー、(メキシコ)ギレルモ・デル・トロ、ガエル・ガルシア・ベルナル、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、サルマ・ハエック、(アルゼンチン)リカルド・ダリン、オスカル・マルティネス、イタリアからモニカ・ベルッチ、まだほかに漏れがありそうです。
◎一応レッド・カーペットに現れたプレゼンター、自宅で待機していたノミネートされたベストドレッサーたちのフォトを以下に列挙しておきます。今年は若手イケメンも多いので男性陣も登場させました。(順不同)
(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
(総合司会者アントニオ・バンデラスとマリア・カサド)
(マリサ・パレデス)
(エンマ・スアレス)
(グラシア・ケレヘタ監督)
(チュス・グティエレス監督)
(ベストドレッサーに選ばれたパス・ベガ)
(ベロニカ・フォルケ)
(エレナ・イルレタ)
(モニカ・ランダル)
(マルタ・ニエト)
(マリア・バランコ)
(ナイワ・ニムリ)
(ベレン・クエスタ)
(マルタ・エトゥラ)
(ナタリア・ベルベケ)
(マギー・シバントス)
(Hiba Abouk)
(ダニエラ・サンティアゴ)
(歌手ナティ・ペルソ)
(シンガーソングライターのバネッサ・マルティン)
(歌手アイタナ・オカ―ニャ)
(歌手女優ディアナ・ナバロ)
(自宅待機のカンデラ・ペーニャ、主演女優賞候補)
(同、ベストドレッサーのナタリア・デ・モリーナ、助演女優賞候補)
(同、パウラ・ウセロ、新人女優賞候補)
(同、ミレナ・スミット、新人女優賞候補)
(フアン・アントニオ・バヨナ)
(アレハンドロ・アメナバル)
(ホセ・コロナド)
(アントニオ・デ・ラ・トーレ)
(ペドロ・カサブランク)
(カルロス・アレセス)
(レオナルド・スバラグリア)
(トリスタン・ウジョア)
(カルロス・ラトレ)
(フリアン・ロペス)
(アドリアン・ラストラ)
(ロベルト・アラモ)
(ジョン・コルタハレナ)
(アントニオ・ベラスケス)
★以上がレッドカーペットに現れたプレゼンターですが、漏れがあるかもしれない。
アカデミー賞2021ノミネーション*ドキュメンタリー部門に『老人スパイ』 ― 2021年03月21日 18:08
動画配信のみでも対象とするのは今回だけの特例措置とか・・・
★先日、第93回アカデミー賞2021のノミネーションが発表になりました。当ブログで作品紹介をしたチリのマイテ・アルベルディの『老人スパイ』がドキュメンタリー部門の最終候補に残り、イベロアメリカ映画は本作だけでした。今回だけの特例措置ということですが、コロナ禍で劇場が閉鎖されたことから動画配信のみでも対象になり、久しく映画館から遠ざかっているにも拘わらず、ざっと一瞥しただけで20作近くが鑑賞済みなのでした。Netflixは合計16作ということです。試写会、ランチ会などのイベントはオール中止、会場となるドルビー・シアターに出席できるのは、ノミネートされた人とそのゲスト、プレゼンターだけとアナウンスされました。4月25日(現地)、日本では翌26日の昼間になります。
*『老人スパイ』の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2020年10月22日/11月22日
(老人スパイのセルヒオ・チャミーとマイテ・アルベルディ監督)
★作品賞の最有力は下馬評ではクロエ・ジャオの『ノマドランド』と、公開されたばかりのリー・アイザック・チョンの『ミナリ』、Netflixで配信された実話をベースにした法廷劇『シカゴ7裁判』、デビッド・フィンチャーのモノクロ映画『マンク(Mank)』、アマゾン配信の『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』と、8作のうち3作が動画配信されている。開催されなかったカンヌ映画祭のノミネート作品、サンセバスチャン映画祭にエントリーされ、ゴヤ賞2021ではヨーロッパ映画賞を受賞したフローリアン・ゼレールの『ファーザー』もノミネートされている。認知症の父親役アンソニー・ホプキンスが主演男優賞、娘役オリビア・コールマンが助演女優賞候補ですが、受賞はほぼ決定しているらしく、難しそうですね。
(本命視されている『ノマドランド』のポスターと主演のフランシス・マクドーマンド)
★『老人スパイ』がノミネートされたドキュメンタリー部門の対抗馬は、アマゾン・オリジナルのギャレット・ブラッドリーの『タイム』が最有力だが、アカデミー会員の中には反発する向きもいそうです。Netflix配信の『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』、『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』と、5作のうち3作が動画配信されている。どの映画もスクリーンで観るよう製作されるが、前者のような作品は特にスクリーンで見るべきです。しかしいつも不満に思うのがこの長たらしい思わせぶりな邦題、何とかならないものでしょうか。さて女性監督の活躍が目につくが、大穴で『老人スパイ』になるかもしれない。
(最有力候補の『タイム』のポスターとブラッドリー監督)
★国際映画賞の最有力は、監督賞にもノミネートされているトマス・ヴィンターベアの「Another Round」でスウェーデンとオランダ合作のデンマーク映画、サンセバスチャン映画祭2020では、マッツ・ミケルセン以下4人の出演者がグループで最優秀男優賞を受賞した。東京国際映画祭で『皮膚を売った男』の邦題で上映された、チュニジアの女性監督カウテール・ベン・ハニアの作品には、モニカ・ベルッチが出演してTIFFでも話題の映画だった。公開されるというニュースはどうなってるのだろうか。
(最有力の「Another Round」のオリジナル・ポスター)
★動画配信で鑑賞した作品は、前述以外に『マ・レイニーのブラックボトム』(肺癌で鬼籍入りしたチャドウィック・ボーズマンが主演男優、ヴィオラ・デービスが主演女優、他)、『私というパズル』(バネッサ・カービーが主演女優)、トム・ハンクス主演の『この茫漠たる荒野で』(撮影・音響・作曲・美術など)、ソフィア・ローレンの息エドゥアルド・ポンティが母親を主役にして撮った『これからの人生』(ラウラ・パウジーニが歌う歌曲賞)、『ザ・ファイブ・ブラッズ』(作曲賞)、『ザ・ホワイトタイガー』(脚色賞)、ジョージ・クルーニー主演の『ミッドナイト・スカイ』(視覚効果賞)、長編アニメーション部門の『フェイフェイと月の冒険』、短編アニメーションの『愛してるって言っておくね』、短編ドキュメンタリーの『ラターシャに捧ぐ~記憶で綴る15年の生涯』、アマゾン配信では見ていない映画、例えばクリストファー・ノーランの『TENETテネット』など何作か残っている。
第13回ガウディ賞2021受賞結果*新人監督が大賞を制す ― 2021年03月24日 16:52
女性シネアストが半分以上の受賞者となったガウディ賞2021
★去る3月21日、第13回ガウディ賞2021の授賞式がありました。コロナ禍をうけてゴヤ賞は観客ゼロの開催でしたが、こちらは30%に絞って開催されました。マスク着用などは今や常識、赤絨毯でのフォトコールはマスクなしが許可されました。ガウディ賞はカタルーニャ語映画に特化した映画祭ですが、スペイン語枠もあり作品賞はそれぞれ選ばれます。今年はリュイス・ダネスの「La vampira de Barcelona」とピラール・パロメロの「Las niñas」と監督第1作が大賞を攫いました。21カテゴリーのうち前者がカタルーニャ語作品・美術・衣装・視覚効果・メイクアップ&ヘアー賞の5部門、後者がカタルーニャ語以外の作品・監督・撮影・音響の4部門を受賞、短編・ヨーロッパ映画・ドキュメンタリー・TVムービー賞はダブることはできませんから、2作品で大半を制したことになります。
*「Las niñas」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2020年03月16日
(リュイス・ダネスの「La vampira de Barcelona」のポスター)
(コールに飛びあがって喜ぶ「La vampira de Barcelona」のスタッフたち)
★「Las niñas」はゴヤ賞も受賞しておりますが、「La vampira de Barcelona」はガウディ賞以外のスペイン映画賞ではノミネーションさえありませんでした。どうもカタルーニャ独立運動が溝を深めている印象です。主演女優賞にイシアル・ボリャインの「La boda de Rosa」主演のカンデラ・ペーニャが受賞、フォルケ賞、ゴヤ賞に一矢を報いました。主演男優賞にはゴヤ賞と同じ「No matarás」主演のマリオ・カサスが受賞しましたがガラには欠席、監督のダビ・ビクトリが代わりにトロフィーを受け取りました。
★またヌリア・ヒメネスが「My Mexican Bretzel」(邦題『メキシカン・プレッツェル』)でドキュメンタリー・脚本・編集の3賞を受賞、本作も長編デビュー作でした。栄誉賞は女優のカルメ・エリアスが受賞、女性と新人が輝いた夕べでした。カタルーニャ映画アカデミー会長は、2013年から製作者、監督のイソナ・パソラ・イ・ビダルが続投しています。
(挨拶スピーチをする、カタルーニャ映画アカデミー会長イソナ・パソラ)
(ガラを盛り上げたリゴベルタ・バンディニ)
*「La boda de Rosa」の作品紹介は、コチラ⇒2020年03月21日
*「No matarás」の作品&監督キャリア、マリオ・カサス紹介は、
*「My Mexican Bretzel」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2020年09月14日
*ガウディ賞2021の受賞結果*
◎作品賞(カタルーニャ語)
La vampira de Barcelona 製作Brutal Media / Filmax / TV3
監督リュイス・ダネス
(左からカルロス・フェルナンデス、オリオル・サラ=パタウ、ライモン・マスリョレンス)
★「受賞できたのは嬉しいが、カタルーニャ以外の映画祭ではノミネートさえなかったことが残念です」と語った製作者ライモン・マスリョレンス。シッチェス映画祭2020観客賞受賞作品。ダネス監督のデビュー作だが、TVシリーズを多数手掛けているベテランです。
★対抗馬は、「L'ofrena」ベントゥーラ・ドゥエル、「La dona il-legal」ラモン・テルメンス、「Les dues nits d'uhir」(スペイン語題「Las dos noches de ayer」)Pau Cruanyes、ヘラルド・ビダル(本作は観客賞を受賞)
(ノミネート4作のポスター)
◎作品賞(カタルーニャ語以外)
Las niñas 製作Inicia Films / Bteam Pictures / Las Niñas Mujeres A.I.E
監督ピラール・パロメロ
(左から、アレックス・ラフエンテ、ピラール・パロメロ、バレリー・デルピエール)
★対抗馬は、「La boda de Rosa」のイシアル・ボリャイン、「Sentimental」のセスク・ゲイ、「Adú」のサルバドール・カルボでした。
◎監督賞
ピラール・パロメロ 「Las niñas」
(13個のノミネーションに先ず感謝したピラール・パロメロ)
★対抗馬は、「Sentimental」のセスク・ゲイ、「La boda de Rosa」のイシアル・ボリャイン、「La vampira de Barcelona」のリュイス・ダネスでした。
◎脚本賞
ヌリア・ヒメネス・ロラング 「My Mexican Bretzel」
(邦題『メキシカン・プレッツェル』)
(脚本・ドキュメンタリー・編集賞のトロフィーを手にしたヌリア・ヒメネス)
★対抗馬は、「La boda de Rosa」「La vampira de Barcelona」「Sentimental」と金太郎の飴でした。ヒメネスはゴヤ賞ではノミネートに終わりましたが、最後のガウディ賞で3個ゲットできました。
◎主演女優賞
カンデラ・ペーニャ 「La boda de Rosa」 監督イシアル・ボリャイン
(感極まるカンデラ・ペーニャ)
★対抗馬は、「L'ofrena」のアンナ・アラルコン、「La vampira de Barcelona」のノラ・ナバス、「Las niñas」のアンドレア・ファンドスでした。ゴヤ賞を受賞した「Ane」のパトリシア・ロペス・アルナイスはノミネートされませんでした。
◎主演男優賞
マリオ・カサス 「No matarás」 監督ダビ・ビクトリ
(ビデオ出演のマリオ・カサス、代理で登壇したダビ・ビクトリ監督)
★対抗馬は、「L'ofrena」のアレックス・ブレンデミュール、「Sentimental」のハビエル・カマラ、「Uno para todos」のダビ・ベルダゲルでした。カマラはフォルケ賞を受賞したガラは欠席、落選したガウディ賞は出席でした。
◎助演女優賞
ベロニカ・エチェギ 「L'ofrena」(カタルーニャ語題、スペイン語題「La ofrenda」)
監督ベントゥーラ・ドゥエル
(ポスター)
★ベントゥーラ・ドゥエルのスリラー、主役のアレックス・ブレンデミュールとアンナ・アラルコンが各々ノミネートされた。マラガ映画祭2020出品作品、公開バルセロナ9月、他。
★対抗馬は、「Las niñas」のナタリア・デ・モリーナ、「La vampira de Barcelona」のヌリア・プリムスとブルナ・クシが揃ってノミネートされた。
◎助演男優賞
アルベルト・サン・フアン 「Sentimental」 監督セスク・ゲイ
(ポスター)
★ゴヤ賞に続いての受賞。対抗馬は、「La dona il-legal」のAbdel Aziz El Mountassir、「La vampira de Barcelona」のフランセスク・オレリャ、「Te quiero, imbécil」のエルネスト・アルテリオ、本作は邦題『愛してるよバカ』で Netflix 配信されているラブコメです。
◎プロダクション賞
ルイス・フェルナンデス、アナ・パラ 「Adú」 監督サルバドール・カルボ
(ポスター)
◎ドキュメンタリー賞
My Mexican Bretzel 監督ヌリア・ヒメネス・ロラング
(ポスター)
◎短編映画賞
Ni oblit ni perdó 監督ジョルディ・ボケ・クララムント
(受賞スピーチをするジョルディ・ボケ・クララムント)
(ポスター)
◎TVムービー賞
La mort de Guillem 監督カルロス・マルケス=マルセ
(中央が受賞スピーチをするマルク・ロマ)
★1993年にバレンシアで起きた極右勢力による反ファシストのギリェム・アグリョ暗殺事件の実話に基づく。製作者マルク・ロマがトロフィーを受け取り、故人の思い出を語った由。当ブログではマラガ映画祭2020でカルロス・マルケス=マルセがマラガ才能賞を受賞した折りに作品紹介をしております。
*「La mort de Guillem」(The death of Guillem)の記事は、コチラ⇒2020年08月29日
◎美術賞
リュイス・ダネス 「La vampira de Barcelona」
(リュイス・ダネス)
◎編集賞
ヌリア・ヒメネス・ロラング、クリストバル・フェルナンデス
「My Mexican Bretzel」(ドキュメンタリー)
◎オリジナル作曲賞
Niño de Elche 「Niños somos todos」(2019年、ドキュメンタリー)
監督セルジ・カメロン
ポスター
★カンタオールのニーニョ・デ・エルチェが音楽のルーツを求めてボリビアへの旅に出るドキュメンタリー。
◎撮影賞
ダニエラ・カヒアス 「Las niñas」
(ボリビアから馳せつけたダニエラ・カヒアス)
◎衣装賞
メルセ・パロマ 「La vampira de Barcelona」
◎音響賞
アマンダ・ビリャビエハ、フェルナンド・ノビリョ、アレハンドラ・モリーナ
「Las niñas」
(4部門をゲットした「Las niñas」の受賞者全員)
◎視覚効果賞
リュイス・リベラ、アンナ・アラゴネス、アレックス・トレシリャス
「La vampira de Barcelona」
◎メイクアップ&ヘアー賞
ラウラ・ぺレス、ハビ・バルベルデ 「La vampira de Barcelona」
◎ヨーロッパ映画賞
Sorry We Missed You (イギリス) 監督ケン・ローチ
(ポスター)
◎観客賞
Les dues nits d'ahir(スペイン語題「Las dos noches de ayer」
監督Pau Cruanyes、ヘラルド・ビダル
(座席で受賞を喜ぶ監督やスタッフたち)
★作品賞(カタルーニャ語)にノミネートされています。マラガ映画祭2020 Zonacine 部門の銀のビスナガ監督賞受賞作品。
◎ガウディ栄誉賞
カルメ・エリアス(女優)
★キャリア&フィルモグラフィー紹介は次回にします。
(受賞スピーチをするカルメ・エリアス)
(レッド・カーペットのフォトコール)
*レッド・カーペットに現れたシネアスト*
★ノミネートされた人、プレゼンターのうちベストドレッサーに選ばれた人、話題を呼んだ人を選びました。デザイナーが明記されているケースは付け加えました。沈滞気味の映画産業を盛り立てるため俳優たちも散財して頑張りました。
(グレタ・フェルナンデス、イタリアのフィロソフィ・ディ・ロレンツォ・セラフィニの
デザイン、特にメイクが話題を巻きました)
(マリア・ロドリゲス、メンチェン・トマスのデザイン、
スパンコールをほどこした網目状の金色のスカートが話題になりました)
(助演女優賞ノミネートのナタリア・デ・モリーナ、クロスされたドレスとブーツの
組み合せが好感された。日本でも人気のアミ・アレクサンドル・マテュッシ)
(主演女優賞受賞のカンデラ・ペーニャ、ペドロ・デル・イエロのデザイン、
80年代に流行した肩パット入りのミニが話題になりました)
(プレゼンターのレティシア・ドレラ、イタリアのエリザベッタ・フランキの
デザイン、意表をついた白でまとめたスケスケのブラウスにショートパンツ)
(助演女優賞ノミネートのブルナ・クシ、ゴージャスな刺繍のあるディオール)
(初めて主演女優賞にノミネートされたアンドレア・ファンドス、
シルビア・フェルナンデスのデザイン)
(助演女優賞ノミネートのヌリア・プリムス、スパンコールを施した濃紺のドレス)
(映画、TV、舞台女優で歌手でもあるエレナ・タラトスTarrats、
パールドレスが人気のブライダル会社オタディーのエレガントなドレス)
(ベリャ・アゴッソウ、ジョルディ・ダルマウの裾長のドレス、「Adú」出演)
(ガウディ栄誉賞プレゼンターのビッキー・ペーニャ、カタルーニャ俳優演出家協会
副会長及びスペイン映画アカデミー理事を務めている)
(バルセロナ派のベテラン、舞台にTV に活躍するマリア・モリンス)
(Netflixのラブコメで認知度あるパウラ・マリア、珍しかったパンツルック)
(主演男優賞ノミネートのハビエル・カマラ)
(重鎮カラ・エレハルデ)
(昨年までゴヤ賞ガラのメイン司会をしていたアンドレウ・ブエナフエンテ)
(左派の論客でもあるギジェルモ<ウィリー>・トレド)
*入手できた写真のみアップしました。
第13回ガウディ栄誉賞にカルメ・エリアス ― 2021年03月29日 14:59
今年のガウディ栄誉賞は3年ぶりに女性シネアストの手に
(ビッキー・ペーニャからトロフィーを受け取るカルメ・エリアス)
★前回写真だけアップしたガウディ栄誉賞受賞者カルメ・エリアスのご紹介。トロフィーは盟友ビッキー・ペーニャから渡されました。アカデミーの授賞理由は「演劇、映画、テレビにおいて常に卓越した才能を発揮した」とペーニャが紹介した。エリアスは「目には見えない人々、私を支えてくれたエキスパート、ここにいる人いない人、私の演じた登場人物たちをステージに伴ってきた」と挨拶した。「俳優というのは、役作りには時には意識的に、時には無意識に人生から糧を得る」と告白、「彼らの怖れ、勇気、不確実性を乗り越えてキャラクターの立ち位置を見つけねばならない。もし見つからないときにはとんぼ返りをしなければならない」とスピーチした。
★また誰でも自分の足跡を残していること、そして「人生を暗闇でなく光の道にしようとすれば、登場人物の話に耳を傾けねばならない」と明かし、この栄誉賞を一般の人々に捧げました。19世紀後半にカタルーニャ語で詩を書き続けた詩人で司祭だったハシント・ベルダゲルの詩の一節でスピーチを締めくくる前に、「私たちのような文明社会では不当に収監された人々が自分自身を表現できる自由があるべきと考えている」とも語った。
★カルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を志してバルセロナの演劇研究所や、ウィリアム・レイトンがバルセロナで創設した演劇ラボラトリーで演技を学び、その後ニューヨークに渡り、俳優学校リー・ストラスバーグのメソッド演技法を学んだ。舞台演出家レイトンは合衆国カンザス出身だが、ロンドンで演劇を学んだ後、1960年代からはスペインに軸足をおき、マドリードで演劇学校を開設、後にバルセロナに移って演劇ラボラトリーで後進の指導に当たった。卒業生には2014年にガウディ栄誉賞を受賞したフリエタ・セラーノ、アナ・ベレン、ナイワ・ニムリなど、後にスペイン演劇や映画の中核を担うアーティストを輩出している。
(栄誉賞受賞の知らせを聞いて、カルメ・エリアス)
★2009年から始まったガウディ賞も13回を迎え、栄誉賞も同時に始まっているから13人目になります。受賞者はバルセロナ派のシネアストから選ばれ、第1回目はバルセロナ生れのハイメ・カミーノ監督(1936~2015)でした。本邦では『1936年の長い休暇』が映画祭で上映されただけと思います。女性の受賞者はカルメ・エリアスが5人目、一人目は昨年11月に鬼籍入りしたモンセラット・カルーリャ(2013)、フリエタ・セラーノ(2014)、昨年春、癌に倒れたロサ・マリア・サルダ(2016)、メルセデス・サンピエトロ(2018)、5人の共通項は映画・舞台・TVで活躍した、あるいは現役の女優ということです。
★カルメはスペイン語読みカルメンとしてクレジットされることもありますが、現在はカタルーニャ語のカルメが多い。当ブログではベネズエラの監督クラウディア・ピントのデビュー作「La distancia más larga」がモントリオール映画祭で「グラウベル・ローシャ賞」を受賞した折りに記事をアップしています。エリアスは実年齢の60歳代の女性に扮し、スペインから思い出のいっぱい詰まった生れ故郷、ベネズエラに最期の旅をする物語でした。翌年マラガ映画祭上映、ウエルバ映画祭観客賞受賞作品。もう1作がカルロス・ベルムトの『シークレット・ヴォイス』(サンセバスチャン映画祭2018正式出品)で、そこで簡単にキャリア紹介をしています。バルセロナの演劇ラボラトリーの後輩ナイワ・ニムリと共演したメタファー満載のスリラーでした。
*「La distancia más larga」の紹介記事は、コチラ⇒2013年09月05日
*『シークレット・ヴォイス』の紹介記事は、コチラ⇒2019年03月13日
(祖母役に扮したエリアス、クラウディア・ピントのデビュー作から)
(『シークレット・ヴォイス』撮影時のベルムト監督とエリアス)
★出演作は1975年にデビューしたTVシリーズを含めると3桁に及びますが、以下に主な作品を列挙しておきます。本邦ではラテンビート2009の目玉、ハビエル・フェセル監督の信仰と幸福、命と死をテーマにした『カミーノ』でしょうか。エリアスは難病に罹った少女カミーノの母親役でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。このゴヤ賞6部門制覇の実話にインスパイアされた作品は、後にオプス・デイ信者の遺族から裁判を起こされるなどした問題作。舞台とTV出演&受賞歴は割愛しますが、舞台女優としてはギリシャ悲劇からスペインの古典、チェーホフ、現代劇と幅広く出演している。
(カミーノ役のネレア・カマチョと頑迷なオプス・デイ信者の母親役のエリアス)
*タイトルと監督名、受賞歴の順(ノミネートは除外)
1985年「Stico」監督ハイメ・デ・アルミニャン、ベルリンFF正式出品
1990年「Pont de Varsovia」同ペレ・ポルタベリャ、
カタルーニャ自治政府の国民映画女優賞受賞
1991年「El rey pasmado」同イマノル・ウリベ
1994年『わが生涯最悪の年』同エミリオ・マルティネス=ラサロ、スペイン映画祭1997上映
1995年『私の秘密の花』同ペドロ・アルモドバル、公開
2000年「Morir (o no)」同ベントゥラ・ポンス、カタルーニャ語
2006年「Los aires dificiles」同ヘラルド・エレーロ、
マラガ映画祭金のビスナガ賞受賞作品
2008年『カミーノ』同ハビエル・フェセル、ラテンビート映画祭2009上映。
ゴヤ賞主演女優賞、サン・ジョルディ女優賞、トゥリア女優賞、
スペイン俳優組合女優賞など受賞
2011年「Planes para mañana」同フアナ・マシアス、
ムルシア・ウィーク映画祭フランシスコ・ラバル賞受賞
2012年「Tengo ganas de ti」同フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ
2013年「La distancia más larga」(ベネズエラとの合作)同クラウディア・ピント
第2回イベロアメリカ・プラチナ賞2015の初監督作品賞受賞作品
2018年『シークレット・ヴォイス』同カルロス・ベルムト
(ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを胸に)
★最近ではTVシリーズ出演が多いが、デミ・ムーア、ナスターシャ・キンスキー、ダリル・ハンナ、シガニー・ウィバーなどの声優としても活躍している。次回作はベネズエラのクラウディア・ピントの第2作目「Las Consecuencias」に出演、アルゼンチン出身だがスペインで活躍しているエクトル・アルテリオ、フアナ・アコスタ、チリのアルフレッド・カストロなどベテラン演技派と共演している。カナリア諸島のパルマで撮影したサイコ・スリラーということです。今回のガウディ栄誉賞ガラにピントも出席とあったがフォトは検索できなかった。
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