新年のご挨拶*ゴヤ賞2021のガラはマラガとバレンシアで開催 ③ ― 2021年01月01日 18:21
今年のゴヤ賞は2都市で開催、ベルランガ生誕100周年の<ベルランガ年>

★コロナに振り回された2020年、映画の観方も激変しました。それでも人生は続くわけで細々でも関わっていきたいと思っています。例年ならゴヤ賞ノミネートも終わり候補作品の紹介で出発しておりましたが、2021年は目下のところノミネーション発表もありません。今年に限りオンライン上映作品も対象になるそうです。どのように振り分けるのか分かりませんが、人の移動を抑える作戦なのか、ガラ会場もメインのマラガ市、サブのバレンシア市と2ヵ所に分散、セレモニーはレッド・カーペットを制限した異例の年になりそうです。

(バレンシア副市長サンドラ・ゴメスとスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
★昨年12月28日、スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソとバレンシア副市長サンドラ・ゴメス同席にて、以下のことが発表になりました。開催日は以前発表になっていた2月27日(土)から1週間遅れの3月6日に変更になりました。総合司会者はマラガ会場(テアトロ・ソーホー・デ・マラガ)ではマラガ名誉市民でもあるアントニオ・バンデラスとバルセロナ出身のTVアカデミー会長マリア・カサドのご両人と変わらず、少なくともバレンシアとマドリードの2ヵ所に接続して式典を催すようです。

(アントニオ・バンデラスとマリア・カサド)
★映画アカデミーとバレンシア自治政府及び県議会とのコラボは、今年がスペインで最も愛された映画監督と言われるルイス・ガルシア・ベルランガ生誕100周年という <ベルランガ年> によるものです。コロナ禍以前から今年盛大なフィエスタが予定されておりました。トゥリア河口に位置するバレンシア市は、芸術学問の文化都市として知られています。輝かしい功績を残したバレンシアっ子のなかでも、ベルランガは飛びぬけた人気があり郷土の誇りなのです。というわけで映画アカデミーとバレンシア自治政府が2021年と2022年のゴヤ賞をコラボすることになった。ゴメス副市長とバロッソ会長の最初の正式会議がもたれメディアに大枠がアナウンスされた。

(ルイス・ガルシア・ベルランガ)
★バロッソとチームは、イベントを催す会場パラウ・デ・レ・アルテスの設備確認を済ませた由、アカデミーの制作チームとバンデラス側の監督アシスタントが、レイアウトの準備のためオーディトリアムの下見に訪れたことも明らかになった。バロッソ会長はレッド・カーペットは制限されるも、「驚き」を保証した。ゴメス副市長もゴヤ賞2021のガラが「ベルランガ年のスタートの合図になる」と明言、さてどんな授賞式になるのか、寝て待つことにいたします。
★ノミネーション候補作品は発表になっていますが、何しろ数が多すぎます。最終候補の発表も間もなくでしょうから、こちらも待つことにします。当ブログで紹介した作品、特にイベロアメリカ映画賞には、コロンビア代表作品「El olvido que seremos」(フェルナンド・トゥルエバ)、マイテ・アルベルディ『老人スパイ』(チリ)、ハイロ・ブスタマンテ『ラ・ヨローナ伝説』(グアテマラ)、その他、ピラール・パルメロ「Las niñas」、アントニオ・メンデス・エスパルサ『家庭裁判所 第3法廷』、エステバン・クレスポ「Black Beach」、パウラ・コンス「La isla de las mentiras」などが目に付きました。
*ゴヤ賞2021の総合司会者の記事は、コチラ⇒2020年07月03日
*ベルランガ年の記事は、コチラ⇒2020年06月21日
サンティアゴ・セグラのコメディがナンバーワン*スペイン映画の2020年 ― 2021年01月04日 15:09
スペインの映画館の興行成績72%ダウンの嘆き
★2020年年明けの1月2月は増加傾向にあった客足も、新型コロナウイルスが到着すると事態は一変する。自宅監禁状態では映画どころではない、ということで1年間の興行成績はトータルで72.%ダウン下落した。なかで気を吐いたのが、7月29日に封切りされたサンティアゴ・セグラの新作コメディ「Padre no hay más que uno 2:La llegada de la suegra」(「Father There is Only One 2」)で、観客動員数2.317,888人、12,938,628ユーロ、第2位のサム・メンデス『1917 命をかけた伝令』は、1,573,320人、9,661,458ユーロ、第92回アカデミー賞の話題をさらったポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』は、987,089人、6,044,369ユーロで第7位、これもコメディですが笑いの質が違うようです。
*サンティアゴ・セグラの新作コメディの記事は、コチラ⇒2020年09月12日

★「Padre no hay más que uno 2」は2019年に公開された「Padre no hay más que uno」の続編で、コメディ好きの観客には続編が待たれていたから、ある程度は想定内のことでした。「トレンテ」のようにシリーズ化されるのかどうか分かりませんが、巣ごもりでイライラしていた向きには格好の清涼剤でした。子供と犬が活躍するコメディはヒット率が高い。セグラは12歳を頭に4歳までのこましゃくれた5人姉弟の父親ハビエルに扮する。サンセバスチャン映画祭2020メイド・イン・スペイン部門でも上映された。「映画館を潰したくなかった」と監督、同感です。

(自作自演のサンティアゴ・セグラと子役たち、映画から)
★スペイン映画の第2位は、サルバドール・カルボの「Adú」で、ポン・ジュノを抜いて第5位と健闘した。1,088,469人、6,371,655ユーロ、セグラ・コメディの半分にも満たなかったが、サハラ以南の難民問題というテーマで勝負している。カルボ監督は、デビュー作『1898:スペイン領フィリピン最後の日』(16、Netflix)で当ブログに登場させています。同じルイス・トサールとアルバロ・セルバンテスをキャスティング、スタッフも音楽をロケ・バニョス、編集をハイメ・コリスなどとタッグを組んでいます。本作はフォルケ賞2021の作品賞にノミネートされています。

★こちらも西アフリカに位置するベナン共和国生れ、当時6歳だった男の子ムスタファ・ウマルがタイトルのアドゥ役で主演しています。本作もNetflixが一枚噛んでおり、データベースでは各国一斉に配信開始(6月30日)され、日本も含まれていますが検索できません。いずれにしろゴヤ賞最終ノミネートに残るのは間違いないと予想しますので、アップ予定作品の一つです。
追記:「Adú」はスペイン語、ほか英語の字幕入りで配信されておりました。
ゴヤ賞栄誉賞2021はアンヘラ・モリーナ*ゴヤ賞2021 ④ ― 2021年01月08日 18:02
第35回ゴヤ賞2021の栄誉賞は女優アンヘラ・モリーナの手に

★2020年のマリソル(ペパ・フローレス)に続いて、今年も女性シネアストの手に渡ることになりました。映画に舞台にTVに意欲的なアンヘラ・モリーナ(マドリード1955)については、映画国民賞2016を受賞した折りにキャリア&フィルモグラフィーをご紹介しています。ゴヤ賞受賞はこの栄誉賞が初めてと聞くと驚きますが、主演女優賞3回、助演女優賞2回すべてがノミネーション止まりでした。1987年に始まったゴヤ賞以前に活躍のピークがあったためと思います。第1回授賞式には、当時の国王夫妻(フアン・カルロス国王、ソフィア王妃)が臨席して盛大に行われましたが、出席者したシネアストたちの多くが既に鬼籍入りしています。特に栄誉賞では、賞の性質から顕著です。
*アンヘラ・モリーナのキャリア&フィルモグラフィーの記事は、コチラ⇒2016年07月28日

(映画国民賞の授与式はサンセバスチャン映画祭が恒例、2016年9月16日)
★しかし栄誉賞の受賞者も次第に年齢が若くなったせいか元気な方が多く、以前は栄誉賞をもらうと「引退勧告されているようで嬉しくない」向きもあったようですが、昨今ではバリバリ現役が増えました。特に最近の女性受賞者は、アナ・ベレン(2017)、マリサ・パレデス(2018)など活躍中です。マリサ・パレデスもゴヤ栄誉賞が初のゴヤ賞でした。
★ブニュエル映画に出演した唯一人のスペイン女優がアンヘラ・モリーナでした。『欲望のあいまいな対象』(77)では、コンチータ役をキャロル・ブーケと競演し、俳優で歌手のアントニオ・モリーナの娘という血筋の他に、ルイス・ブニュエルに発見された女優という特権をもつ。ハイメ・チャバリ、ハイメ・デ・アルミリャン、ホセ・ルイス・ボラウ、グティエレス・アラゴン、ビガス・ルナ、ホセフィナ・モリーナ、リカルド・フランコ、アルモドバル、パブロ・ベルヘル、ラモン・サラサールなどのスペイン監督の他、リドリー・スコット、タヴィアーニ兄弟、ジュゼッペ・トルナトーレなど、スペイン語圏以外にも出演している。最近ではTVシリーズの出演が多そうだが、映画では出番は少なくても重要な役柄を担っている。
35回ゴヤ賞ノミネーション発表は1月11日
★最終ノミネーションは、間もなく1月11日(月曜日)に、アナ・ベレンとダニ・ロビラの総合司会で発表になります。アナ・ベレンは2017年の栄誉賞受賞者、ダニ・ロビラは2015年から3年連続でゴヤ賞の総合司会者を務めた。2020年3月にホジキンリンパ腫を告知、以来闘病中だったが無事復帰している。マラガ生れでマラガ親善大使でもあることも選ばれた理由の一つかもしれない。「Ocho apellidos vascos」で出会い2014年からパートナーだったクララ・ラゴとは、2019年5年間の関係を解消していた。闘病中の写真も公開していたが辛くてアップできない。早く元気なダニを見たい。
★ノミネーション発表が1月11日から1週間遅れの1月18日(月)11:00~と変更になっていました。コロナに振り回され続けています。
第26回ホセ・マリア・フォルケ賞2021*ノミネーション発表 ― 2021年01月10日 13:53
2021年からTVシリーズ部門 3カテゴリー増えて10カテゴリーに

★文化は不要不急か悩んで巣ごもりしていると、何をするにも億劫になり、出るのは溜息ばかり、心も自然と沈滞気味になっていきます。今年はゴヤ賞だけにしようと思っていましたが、TVシリーズの作品賞、男優&女優賞の3部門が新設されたこともあり、気を取り直してノミネーションからアップいたします。フォルケ賞はゴヤ賞とは視点も若干異なり、もともと映画の裏方に光を当てることが目的で始まった映画賞でした。従って最初は俳優賞などはなく、現在でも監督賞はありません。副賞として賞金が出るのも特色の一つです。授賞式は1月16日、場所は昨年サラゴサから戻ってきて開催されたIFEMAマドリード市庁舎のイベント会場です。コロナは怖いが経済効果の大きさを考えると無視できないということです。

*第26回ホセ・マリア・フォルケ賞ノミネーション*
◎作品賞(フィクション&アニメーション)副賞30,000ユーロ
Adú 製作 Ikiru Films / Un Mundo Prohibido,A.I.E. / ICAA 他 *

Akelarre 製作 Sorgin Films 他 *

La boda de Rosa 製作 Hally Production / La Boda de Rosa La Película、A.I.E. 他 *

Las niñas 製作 BTEAM Pictures / Las Niñas Majicas, A.I.E. 他 *

◎長編ドキュメンタリー映画賞 副賞6,000ユーロ
Antonio Machado, Los días azules 監督ラウラ・ホイマン 製作 Summer Films,A.I.E.

Cartas mojadas 監督パウラ・パラシオス 製作 Morada Films

El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ 製作Lacima Producciones,S.L.

El drogas 監督ナチョ・レウサ 製作 Narm Films

◎短編映画賞 副賞3,000ユーロ
A la cara (13分) 監督ハビエル・マルコ・リコ

Yalla (10分) 監督Carlo D'Ursi カルロ・ドゥルシ

Yo (13分) 監督ベゴーニャ・アロステギ

◎TVシリーズ作品賞(新設)副賞6,000ユーロ
Antidisturbios (監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル)

La casa de papel 『ペーパー・ハウス』(監督ヘスス・コルメナル、アレックス・ロドリゴ他)

Patria (監督フェリックス・ビスカレッド、オスカル・ペドラサ) *

Veneno (監督ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ、イサベル・トーレス、他)

◎男優賞 副賞3,000ユーロ
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン *

ハビエル・カマラ(Sentimental) 監督セスク・ゲイ

フアン・ディエゴ・ボトー(Los europeos)フランスとの合作、監督ビクトル・ガルシア・レオン

マリオ・カサス(No matarás)2019年、監督ダビ・ビクトリ

◎女優賞 副賞3,000ユーロ
アンドレア・ファンドス (Las niñas) 監督ピラール・パロメロ

カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa) 監督イシアル・ボリャイン

キティ・マンベール (El inconveniente) 監督ベルナベ・リコ

パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane) 監督ダビ・ペレス・サニュド

◎TVシリーズ男優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アレックス・ガルシア(Antidisturbios) 監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル

Hovik Keuchkerian (Antidisturbios)

ハビエル・カマラ(Vamos Juan) 監督ボルハ・コベアガ、ビクトル・ガルシア・レオン、他

ラウル・アレバロ(Antidisturbios)

◎TVシリーズ女優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アネ・ガバライン (Patria)

ダニエラ・サンティアゴ (Veneno)

エレナ・イルレタ (Patria)

ビッキー・ルエンゴ (Antidisturbios)

◎ラテンアメリカ映画賞 副賞6,000ユーロ
El agente topo (チリ『老人スパイ』)監督マイテ・アルベルディ *

El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ *

El robo del siglo (アルゼンチン) 監督アリエル・ウィノグラド

Nuevo Orden (メキシコ=フランス) 監督ミシェル・フランコ

◎ Cine en Educacion y Valores
Las niñas
La boda de Rosa
Adú
Uno para todos *

(*印は当ブログで紹介している作品)
★以上10カテゴリー、栄誉賞ほか特別賞は授賞式でご紹介の予定。
第8回フェロス賞2021*ノミネーション発表 ― 2021年01月13日 17:59
フェロス賞2021ノミネーション発表、最多は「La boda de Rosa」の9個

★2020年12月10日、第8回フェロス賞2021の19カテゴリーのノミネーション発表がありました。今回からドキュメンタリーと特別賞の2カテゴリーが新設されました。フェロス賞はゴヤ賞の前哨戦といわれながらもかなり違いがあります。作品賞がドラマ部門とコメディ部門に分かれ、各5作品がノミネートされるのでノミネート・チャンスが大きい。また撮影や衣装デザインがない代わり、予告編、ポスターの2カテゴリーがあるなどの特徴があります。作品賞(ドラマ&コメディ)は製作と監督名を載せました。TVシリーズ・ミニシリーズは鑑賞できる確率が低いこともあり、受賞結果のみをアップすることにしました。今年に限りオンライン上映のみの作品もカバーしたということです。コロナで世界が一変した2020年は忘れられない年になるでしょう。 授賞式は2月8日(月)、アルコベンダスにて開催されます。
*第8回フェロス賞2021ノミネーション*
◎作品賞(ドラマ部門)
Akelarre 製作Sorgin Films, A.I.E. 他 監督パブロ・アグエロ
Ane 製作Amania Films, Euskal Irrati Telebista, TVE 他 監督ダビ・ペレス・サニュド
El año del descubrimiento (ドキュメンタリー) 製作Lacima Producciones S.L. 他
監督ルイス・ロペス・カラスコ
Las niñas 製作Las Ninas Majicas, A.I.E. 他 監督ピラール・パロメロ
No matarás 製作Castelao Pictures, Filmax, RTVE 他 監督ダビ・ビクトリ
◎作品賞(コメディ部門)
La boda de Rosa 製作La Boda de Rosa La Pelicula, A.I.E. 他 監督イシアル・ボリャイン
Los europeos 製作Gonita, Apache Films, 他 監督ビクトル・ガルシア・レオン
Historias lamentable 製作Comunidad de Madrid, Crea SGR, ICAA, 他 監督ハビエル・フェセル
Orígenes secretos 製作In Post We Trust, La Chica de la Curva, RTVE 他
監督ダビ・ガラン・ガリンド 邦題『ヒーローの起源 アメコミ連続殺人事件』
Sentimental 製作Impossible Films, ICEC, TV3 他 監督セスク・ゲイ
◎監督賞
イシアル・ボリャイン(La boda de Rosa)
セスク・ゲイ(Sentimental)
ルイス・ロペス・カラスコ(El año del descubrimiento)
ピラール・パロメロ(Las niñas)
ダビ・ビクトリ(No matarás)
◎主演女優賞
アマイア・アベラストゥリ (Akelarre)
アンドレア・ファンドス (Las niñas)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
◎主演男優賞
ラウル・アレバロ (Los europeos)
ハビエル・カマラ (Sentimental)
マリオ・カサス (No matarás)
ハビエル・グティエレス (Hogar)
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos)
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota)
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
◎助演男優賞
チェマ・デル・バルコ (El plan)
ラモン・バレア (La boda de Rosa)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
アレックス・ブレンデミュール (Akelarre)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
◎脚本賞
マリナ・ペレス・プリド、ダビ・ペレス・サニュド (Ane)
ルイス・ロペス・カラスコ、ラウル・リアルテ (El año del descubrimiento)
イシアル・ボリャイン、アリシア・ルナ (La boda de Rosa)
ハビエル・フェセル、クラロ・ガルシア (Historias lamentable)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
◎音楽賞
ロケ・バニョス (Adú)
マイテ・アロタハウレギ、アランサス・カジェハ (Akelarre)
コルド・ウリアルテ、Bingen Mendizabal (Baby)
ロケ・バニョス (Explota explota)
フェデリコ・フシド、アドリアン・フォルケス (No matarás)
◎予告編賞
マルタ・ロンガス、ラファ・マルティネス (Akelarre)
フアン・サンティアゴ (La boda de Rosa)
ミゲル・アンヘル・トルドゥ (Explota explota)
ハビエル・フェセル、ラファ・マルティネス (Historias lamentable)
マリナ・フランシスコ、フアン・ガブリエル・ガルシア・ロマン (Las niñas)
◎ポスターFlixOlé 賞
ナタリア・モンテス (Akelarre)
パブロ・ダビラ、エスピナル・ガブリエル (El arte de volver)
ダビ・デ・ラス・エラス (Los europeos)
アルフレッド・ボレス、ベルタ・ゴンサレス (La reina de los lagartos)
ジョルディ・ラバンダ (Rifikin’s Festival)米国、監督ウディ・アレン
◎ドキュメンタリー賞(新設)
A media voz (キューバ、2019 監督ハイディ・ハッサン、パトリシア・ぺレス・フェルナンデス
El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ
Courtroom 3H (『家庭裁判所 第3法廷』) 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ
Dear Werner 監督パブロ・マケダ
El desafío: ETA (TVミニシリーズ) 監督Hugo Stuven

◎特別賞(新設)
Lúa vermella 監督ロイス・パティーニョ
Blanco en blanco (チリ、2019) 監督テオ・コート
My Mexican Bretzel 監督ヌリア・ヒメネス・ロラング
El plan 監督ポロ・メナルゲス
La reina de los lagartos 監督ブルニン・ペルセベス、ナンド・マルティネス、
フアン・ゴンサレス

★<TVシリーズ・ミニシリーズ>も、作品賞はドラマ部門、コメディ部門の2カテゴリー、主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞の計6カテゴリーありますが、ノミネートは割愛、受賞結果だけアップいたします。
★新設された2カテゴリーには小さくて分かりにくいですがポスターを入れました。またスペイン映画以外には国名を入れましたが、国際映画祭の受賞作から選ばれているようです。どんどん間口が拡がっていく傾向が顕著になってきました。
追加情報:授賞式の日程が3月2日に変更になりました。コロナに振り回される2021年です。
第26回フォルケ賞2021*結果発表&授賞式 ― 2021年01月17日 17:15
作品賞はピラール・パロメロのデビュー作「Las niñas」が受賞

★1月16日、第26回フォルケ賞2021の受賞結果が発表になりました。総合司会者はアイタナ・サンチェス=ヒホンとミゲル・アンヘル・ムニョスが担いました。教育・文化・スポーツ大臣ホセ・マヌエル・ロドリゲス・ウリベス、マドリード共同体副会長イグナシオ・アグアド、そしてEGEDAオーディオビジュアル著作権管理協会の会長エンリケ・セレソが出席した。ソーシャルディスタンスを守って座れない座席にはマークが入り、トロフィーもプレゼンターの手渡しでなく台座に置いてあるなど、やはり例年とは異なるガラとなったようです。

(司会者のアイタナ・サンチェス=ヒホンとミゲル・アンヘル・ムニョス)
★EGEDAが選考母体のフォルケ賞は、1990年代初頭のスペイン社会に青春期を送った少女たちを描いたピラール・パロメロのデビュー作「Las niñas」を最優秀作品賞に選んで閉幕しました。長編ドキュメンタリー映画賞には、同じく1992年のスペイン、特にムルシアに焦点を当てたルイス・ロペス・カラスコの「El año del descubrimiento」がトロフィーを手にしました。

(EGEDA会長エンリケ・セレソ)
★フォルケ賞は初めてTV作品を新設、もはや無視できないことを認識したようです。作品賞の他、TV男優・女優の2部門も新設、受賞者の幅が広がりました。TVシリーズ作品賞にフェリックス・ビスカレッド、オスカル・ペドラサの「Patria」、女優賞に「Ane」のパトリシア・ロペス・アルナイス、TV女優賞に「Patria」のエレナ・イルレタなど、バスク映画が評価された2021年ガラだった。
*第26回ホセ・マリア・フォルケ賞受賞結果*(○印ゴチック体が受賞)
◎作品賞(フィクション&アニメーション)副賞30,000ユーロ
Adú 製作Ikiru Films、ICAA 他 *
Akelarre 製作Sorcin Films 他 *
La boda de Rosa 製作Hally Production 他 *
○ Las niñas 製作Bteam Pictures / Inicia Films / Las Ninas Mujeres,
A.I.E. 他 *

(製作者バレリー・デルピエール)

◎長編ドキュメンタリー映画賞 副賞6,000ユーロ
Antonio Machado, Los días azules 監督Laura Hojman ラウラ・ホイマン
Cartas mojadas 監督パウラ・パラシオス
El drogas 監督ナチョ・レウサ
○ El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ


◎短編映画賞 副賞3,000ユーロ
A la cara (13分) 監督ハビエル・マルコ・リコ
Yo (13分) 監督ベゴーニャ・アロステギ
○ Yalla (10分) 監督Carlo D'Ursi カルロ・ドゥルシ


◎TVシリーズ作品賞(新設)副賞6,000ユーロ
○ Antidisturbios (監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル)
La casa de papel 『ペーパー・ハウス』
(監督ヘスス・コルメナル、アレックス・ロドリゴ)
Veneno (監督ハビエル・アンブロッシ、イサベル・トーレス、他)
Patria (監督フェリックス・ビスカレッド、オスカル・ペドラサ)

(ロドリゴ・ソロゴジェン)

◎男優賞 副賞3,000ユーロ
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン *
フアン・ディエゴ・ボトー(Los europeos)フランスとの合作、監督ビクトル・ガルシア・レオン
マリオ・カサス(No matarás)2019年、監督ダビ・ビクトリ
○ ハビエル・カマラ(Sentimental) 監督セスク・ゲイ

(今年最初の授賞式に出席できなかったハビエル・カマラ、映画から)

◎女優賞 副賞3,000ユーロ
アンドレア・ファンドス (Las niñas) 監督ピラール・パロメロ
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa) 監督イシアル・ボリャイン
キティ・マンベール (El inconveniente) 監督ベルナベ・リコ
○ パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane) 監督ダビ・ペレス・サニュド

(感激の晴れ舞台、パトリシア・ロペス・アルナイス)

◎TVシリーズ男優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アレックス・ガルシア(Antidisturbios) 監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル
ハビエル・カマラ(Vamos Juan) 監督ボルハ・コベアガ、ビクトル・ガルシア・レオン、他
ラウル・アレバロ(Antidisturbios)監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル
○ホビック・ケウチケリアン Hovik Keuchkerian(Antidisturbios)
監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル

(コロナの犠牲者に黙祷を捧げるよう呼びかけたホビック・ケウチケリアン)


◎TVシリーズ女優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アネ・ガバライン (Patria)
ダニエラ・サンティアゴ (Veneno)
ビッキー・ルエンゴ (Antidisturbios)
○ エレナ・イルレタ (Patria)

(ライバルのアネ・ガバラインを制してトロフィーを手にしたエレナ・イルレタ)

El agente topo (チリ『老人スパイ』)監督マイテ・アルベルディ *
El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ *
El robo del siglo (アルゼンチン) 監督アリエル・ウィノグラド
○ Nuevo Orden (メキシコ=フランス) 監督ミシェル・フランコ

(ベネチア映画祭銀獅子賞審査員大賞受賞作品「Nuevo Orden」アップ予定作品)

(銀獅子賞のトロフィーを手にしたミシェル・フランコ、ベネチア映画祭2020)
◎ Cine y Educación en Valores(映画と価値観教育賞)
Las niñas
La boda de Rosa
Adú
○ Uno para todos 監督ダビ・イルンダイン *

(トロフィーを手にダビ・イルンダイン)

(*印は当ブログで紹介している作品)
★優れた製作者に贈られるEGEDA金のメダルは、フェルナンド・コロモとベアトリス・デ・ラ・ガンダラが受賞した。キャリア&フィルモグラフィーは次回に。

(EGEDA金のメダルのフェルナンド・コロモとベアトリス・デ・ラ・ガンダラ)
★ミュージック・パートをパブロ・アルボランとパブロ・ロペスが担いました。

(パブロ・ロペス)
第35回ゴヤ賞ノミネーション発表*ゴヤ賞2021 ⑤ ― 2021年01月21日 10:24
予定通り28部門のノミネーション発表がありました

★去る1月18日、第35回ゴヤ賞2021ノミネーション発表がスペイン映画アカデミー本部でありました。マリアノ・バロッソ会長の挨拶に続いて、司会のアナ・ベレンとダニ・ロビラが登場、カテゴリー28部門を代わるがわる淡々と候補者を読み上げ、拍手は最後だけという静かなものでした。全員マスクは勿論のこと、机上に置いてある消毒液で手を消毒してから読み上げていました。

(左から、スペイン映画アカデミー書記長フェデリコ・ガラヤルデ・ニーニョ、
ダニ・ロビラ、アナ・ベレン、スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)
★多くの予想を覆したのが、作品賞以下13回も読み上げられたサルバドール・カルボの「Adú」でした。フォルケ賞はノミネーションに終わり、フェロス賞(2月8日発表)にいたってはノミネートさえありません。しかし公開されたことやNetflixで配信されていることなどが有利に働いたのかもしれません(日本語字幕はなく、スペイン語や英語などで鑑賞できます)。昨年の興行成績が桁外れのナンバーワンだったサンチャゴ・セグラの「Padre no hay más que uno 2」は、ついに最後まで一度も読み上げられることはありませんでした。長編アニメーションのノミネートは1作だけなので、ガラを待たずに受賞が決定、今までになかったのではないか。
★司会者のダニ・ロビラは、難しい癌を克服して初めて公衆の前に姿を現しました。元気そうでしたが不安を抱えての再出発ではないでしょうか。アナ・ベレンは抑制力のある声でしたが、いつもの笑顔は最後だけでした。ノミネーションの数については初出に挿入しています。本番のガラ会場はメインがマラガ、サブがバレンシアで、総合司会者はアントニオ・バンデラスとマリア・カサド、3月6日開催の予定、現在のコロナ時代ではあくまで予定です。

*第35回ゴヤ賞2021ノミネーション*
◎作品賞(5作ノミネーション)
Adú (ノミネーション13個) *

Ane (ノミネーション5個) *

La boda de Rosa (ノミネーション8個) *

Las niñas (ノミネーション9個) *

Sentimental (ノミネーション5個) *

◎監督賞
サルバドール・カルボ (Adú)
フアンマ・バホ・ウジョア (Baby) 2個 *

イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
イサベル・コイシェ (Nieva en Benidorm) 2個 *

◎新人監督賞
ダビ・ペレス・サニュド (Adú)
ベルナベ・リコ (El inconveniente) 3個

ピラール・パロメロ (Las niñas)
ヌリア・ヒメネス(My Mexican Bretzel)『メキシカン・プレッツェル』なら国際FF、2個 *

◎オリジナル脚本賞
アレハンドロ・エルナンデス (Adú)
クラロ・ガルシア&ハビエル・フェセル(Historias lamentables)監督ハビエル・フェセル、3個

アリシア・ルナ&イシアル・ボリャイン (La boda de Rosa)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
◎脚色賞
ダビ・ペレス・サニュド&マリナ・パレス (Ane)
ベルナルド・サンチェス&マルタ・リベルタ・カスティーリョ (Los europeos)
監督ビクトル・ガルシア・レオン 3個

ダビ・ガラン・ガリンド&フェルナンド・ナバロ(Origenes secretos)
監督ダビ・ガラン・ガリンド、『秘密の起源』Netflix 3個

セスク・ゲイ (Sentimental)
◎オリジナル作曲賞
ロケ・バニョス (Adú)
アランサス・カジェハ&マイテ・アロイタハウレギ(Akelarre)監督パブロ・アグエロ、9個 *

Bingen Mendizabal &コルド・ウリアルテ (Baby)
フェデリコ・フシド (El verano que vivimos) 監督カリオス・セデス、 3個

◎オリジナル歌曲賞
ロケ・バニョス& Cherif Badua (Adú)
アレハンドロ・サンス&アルフォンソ・ぺレス・アリアス (El verano que vivimos)
マリア・ロサレン (La boda de Rosa)
カルロス・ナヤ (Las niñas)
◎主演男優賞
マリオ・カサス (No matarás) 監督ダビ・ビクトリ、3個 *

ハビエル・カマラ (Sentimental)
エルネスト・アルテリオ (Un mundo noemal) 監督アチェロ・マニャス、1個 *

ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン、1個 *

◎主演女優賞
アマイア・アベラスツリ (Akelarre)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
◎助演男優賞
アルバロ・セルバンテス (Adú)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota) 監督ナチョ・アルバレス、 3個

ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
◎新人男優賞
アダム・ヌルー (Adú)
チェマ・デル・バルコ (El plan) 監督ポロ・メナルゲス、2個 *

マティアス・ジャニックJanick (Historias lamentables)
フェルナンド・バルディビエルソ (No matarás)
◎新人女優賞
ホネ・ラスピウル (Ane)
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
ミレナ・スミット (No matarás)
グリセルダ・シチリアニ (Sentimental)
◎ドキュメンタリー賞
Anatomía de un dandy (監督アルベルト・オルテガ&チャーリー・アルナイス) 1個

Cartas mojadas (監督パウラ・パラシオス) 1個

El año del descubrimiento (監督ルイス・ロペス・カラスコ) 2個

My Mexican Bretzel
◎プロダクション賞
アナ・パラ&ルイス・フェルナンデス・ラゴ (Adú)
グアダルーペ・バラゲル・トレリェスTrellez (Akelarre)
カルメン・マルティネス・ムニョス (Black Beach) 監督エステバン・クレスポ、6個 *

トニ・ノベリャ (Nieva en Benidorm)
◎撮影賞
セルジ・ビラノバ (Adú)
ハビエル・アギーレ (Akelarre)
アンヘル・アモロス (Black Beach)
ダニエラ・カヒアス (Las niñas)
◎編集賞
ハイメ・コリス (Adú)
フェルナンド・フランコ&ミゲル・ドブラド (Black Beach)
セルジ・ヒメネス (El año del descubrimiento)
ソフィ・エスクデ (Las niñas)
◎美術賞
セサル・マカロン(Adú)
ミケル・セラーノ (Akelarre)
モンセ・サンス (Black Beach)
モニカ・ベルヌイ (Las niñas)
◎衣装デザイン賞
ネレア・トリホスTorrijos (Akelarre)
クリスティナ・ロドリゲス (Explota explota)
アランチャ・エスケロ (Las niñas)
レナ・モッスム/モスンMossum (Los europeos)
◎メイク&ヘアー賞
エレナ・クエバス、マラ・コリャソ、セルヒオ・ロペス (Adú)
Beata Wotjowicz、リカルド・モリーナ (Akelarre)
ミル・カブレル、ベンハミン・ぺレス (Explota explota)
パウラ・クルス、ヘスス・ゲーラ、ナチョ・ディアス (Origenes secretos)
◎録音賞
エドゥアルド・エスキデ、ハマイカ・ルイス・ガルシア、他 (Adú)
ウルコ・ガライ、ホセフィナ・ロドリゲス、他 (Akelarre)
コケ・ラエラ、ナチョ・ロヨ=ビリャノバ、他 (Black Beach)
マル・ゴンサレス、フランセスコ・ルカレリィ、他 (El plan)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ、アナ・ルビオ (Akelarre)
ラウル・ロマニリョス、ジャン=ルイ・ビリヤード (Black Beach)
ラウル・ロマニリョス、ミリアム・ピケル (Historias lamentables)
リュイス・リベラ・ホベ、ヘルムス・バーナートHelmuth Barnert (Origenes secretos)
◎アニメーション賞(異例の1作のみ)
La gallinas Túruleca (監督ビクトル・モニゴテ、Brown Films / Groriamundi Producciones他) *

◎イベロアメリカ映画賞
El agente topo(チリ)『老人スパイ』 監督マイテ・アルベルディ *

El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ *

La llorona (グアテマラ)『ラ・ヨローナ伝説』 監督ハイロ・ブスタマンテ *

Ya no estoy aquí (メキシコ)2019、監督フェルナンド・フリアス・デ・ラ・パラ
『そして俺は、ここにいない』「I'm no longer here」で Netflix 配信 *

◎ヨーロッパ映画賞
Corpus Christi (原題「Boze Cialo」ポーランド) 監督ヤン・コマサ

El oficial y el espia (原題「J'accuse」フランス=イタリア) 監督ロマン・ポランスキー

El padre (The Father)(イギリス=フランス) 監督フローリアン・ゼレール

Falling (カナダ=イギリス) 監督ヴィゴ・モーテンセン *

◎短編映画賞
16 de decembro 監督アルバロ・ガゴ
A la cara 監督ハビエル・マルコ・リコ
Beef 監督イングリデ・サントス
Gastos incluidos 監督ハビエル・マシぺ
Lo efímero 監督ホルヘ・ムリ得る
◎短編ドキュメンタリー賞
Biografía del cadáver de una mujer 監督マベル・ロサノ
Paraíso en llamas 監督ホセ・アントニオ・エルゲタ
Paraíso 監督マテオ・カベサ
Sólo son peces 監督アナ・セルナ&パウラ・オラツ
◎短編アニメーション賞
Blue & Malone: Casos imposibles 監督アブラハム・ロペス・ゲレーロ
Homeless Home 監督アルベルト・バスケス
Metamorphosis 監督かリア・ペレイラ&フアンフラン・ハシント
Vuela 監督カリオス・ゴメス=ミラ・サグラド
(以上28部門、*は当ブログ紹介作品)
★ノミネーションの多寡では予想できないのが映画賞、例年なら2作品ぐらいに絞れるのですが、今回の作品賞は全く分かりません。投票権のある会員に若いシネアストが増えたこともあって予想が難しい。なかで主演女優賞はフォルケ賞を受賞した「Ane」のパトリシア・ロペス・アルナイス、または「La boda de Rosa」のカンデラ・ペーニャ、主演男優賞は同じく「Sentimental」のハビエル・カマラ、または「No matarás」のマリオ・カサスのどちらかを予想しています。長編ドキュメンタリーは、ルイス・ロペス・カラスコの「El año del descubrimiento」か、ヌリア・ヒメネスの「My Mexican Bretzel」のどちらか、後者はなら国際映画祭2020で『メキシカン・プレッツェル』の邦題で上映されました。
★サンチャゴ・セグラの新作コメディが無視されたほかに、グラシア・ケレヘタのコメディ「Invisibles」がノミネートされなかったことを意外に思う人がいたようです。主演のエンマ・スアレスとナタリエ・ポサはケレヘタとは初タッグ、もう一人のアドリアナ・オソレスという豪華キャスト、恋に見放され、美貌の衰えに不安を抱く3人の熟女がセリフの面白さで勝負している。他にペドロ・カサブランクやブランカ・ポルティールオもカメオ出演している。コロナ禍の初期3月公開は不利にはたらいたかもしれない。エル・ムンド紙の2020年ベスト20の第1位は「El año del descubrimiento」、意外や「Adú」は選外でしたが、選考母体によって評価は分かれます。
サルバドール・カルボの 「Adú」*ゴヤ賞2021 ⑥ ― 2021年01月24日 13:26
3本の軸が交差するサルバドール・カルボのスリラー「Adú」

(少年アドゥを配したポスター)
★ゴヤ賞2021のノミネーション発表では、サルバドール・カルボ(マドリード1970)の「Adú」が最多の13カテゴリーとなりました。Netflix 配信という強みを活かしてアカデミー会員の心を掴むことができるでしょうか。本作はデビュー作『1898:スペイン領フィリピン最後の日』(16)に続く第2作目になります。Netflixで日本語字幕入りで配信され幸運な滑り出しでしたが、第2作目は残念ながら日本語字幕はありません。第1作より時代背景も舞台も今日的ですが、アフリカ大陸、特に舞台となるカメルーンやモーリタニア、モロッコの位置関係に暗いと、登場人物がそれぞれ移動する都市に振り回される。安全な日本で暮らしていると、やはりアフリカは遠い世界と実感しました。監督キャリア&フィルモグラフィーはデビュー作でアップ済みです。
*『1898:スペイン領フィリピン最後の日』の作品紹介は、コチラ⇒2017年01月05日

(アナ・カスティーリョ、アダム・ヌルー、監督、ルイス・トサール、1月18日)
★アンダルシア人権協会APDHAの調査によると、2018年、国境を越えてスペインへ到着した違法移民は、陸路海路を含めて64,120人に上る。翌2019年は33,261人と減少したが、子供の数は7,053から8,066人と反対に増加した。不法移民の約30%はモロッコの若者と子供であったという。これが監督の製作の意図の一つとしてあったようです。エンディングに2018年の難民7千万人のテロップが流れる。この数は移民できずに国内に止まっている難民を含めている。スペイン語、ほかに元の宗主国であるフランスやイギリスの言語が飛び交う複雑さが、現代のアフリカを象徴している。第2作目とはいえ、20年前からTVシリーズを手掛けているベテランです。主人公はルイス・トサールではなく、アドゥ少年を演じた当時6歳だったムスタファ・ウマル君と思いました。
「Adú」(2020)
製作:Ikiru Films / Telecinco Cinema / La Terraza Films / Un Mundo Prohibido / Mediaset España
協賛 ICAA / Netlix
監督:サルバドール・カルボ
脚本:アレハンドロ・エルナンデス
音楽:ロケ・バニョス、Cherif Badua
撮影:セルジ・ビラノバ
美術:セサル・マカロン
編集:ハイメ・コリス
録音:エドゥアルド・エスキデ、ハマイカ・ルイス・ガルシア、他
プロダクション:アナ・パラ、ルイス・フェルナンデス・ラゴ
メイクアップ:エレナ・クエバス、マラ・コリャソ、セルヒオ・ロペス
衣装デザイン:パトリシア・モネ
キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ
編集者:アルバロ・アウグスティン、ジスラン・バロウ(Ghislain Barrois)、エドモン・ロシュ、ハビエル・ウガルテ、他多数
データ:製作国スペイン、言語スペイン語・フランス語・英語、2020年、ドラマ、119分、撮影地ムルシア、ベナン共和国、モロッコ他、公開スペイン1月31日、インターネット配信6月30日(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、イギリス、イタリア、他)、スペイン映画2020年の興行成績第2位。
映画祭・受賞歴:ホセ・マリア・フォルケ賞2021作品賞とCine en Educación y Valores賞、2ノミネーション、フェロス賞2021オリジナル音楽賞(ロケ・バニョス)ノミネーション、ゴヤ賞省略。
キャスト:ルイス・トサール(環境活動家ゴンサロ)、アルバロ・セルバンテス(治安警備隊員マテオ)、アンナ・カスティーリョ(ゴンサロの娘サンドラ)、ムスタファ・ウマル(アドゥ6歳)、ミケル・フェルナンデス(マテオの同僚ミゲル)、ヘスス・カロサ(マテオの同僚ハビ)、アダム・ヌルー(マサール)、Zayiddiya Dissou(アドゥの姉アリカ)、アナ・ワヘネル(パロマ)、ノラ・ナバス(カルメン)、イサカ・サワドゴ(ケビラ)、ヨセアン・ベンゴエチェア(治安警備隊指揮官)、エリアン・シャーガス(Leke)、ベレン・ロペス(国連職員)、マルタ・カルボ(マテオの弁護士)、Koffi Gahou(マフィアのネコ)バボー・チャム(カメルーンの青年)、カンデラ・クルス(NGO職員)、ほか多数
*ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされたシネアスト。
ストーリー:アリカとアドゥの姉弟は自転車で散歩中に象の密猟の現場を偶然に目撃してしまう。現場に置き忘れた自転車がもとで二人は地元ボスから追われることになり、故郷を後にする。飛行機の貨物室に忍びこんでカメルーンからヨーロッパに脱出しようと、滑走路の傍にうずくまっている。ここからそう遠くないジャー自然保護区では環境保護活動家のゴンサロが、密猟者に牙を抜かれた痛ましい象の死骸と向き合っている。間もなくスペインからやって来る娘サンドラとの問題も抱えている。北へ数千マイル先のメリリャでは治安警備隊員マテオのグループが、国境線のフェンスを攀じ登ってくるサハラ以南の群衆を押しとどめる準備をしていた。彼らは交差する運命であることを未だ知らないが、元の自分に戻れないことを知ることになる。国境を越えてヨーロッパに押し寄せるサハラ以南の難民問題を軸に、3本の糸が絡みあう群像劇。 (文責:管理人)
アフリカの現実を照らしだす3本の軸
A: 日本では評価がイマイチだったデビュー作『1898:スペイン領フィリピン最後の日』よりテーマが今日的なこと、認知度のあるルイス・トサールやアナ・カスティーリョの出演もあって受け入れやすいと思っていましたが、目下Netflix配信はオリジナル作品ながら日本語字幕はありません。
B: スペイン人にとって1898年という年は、キューバ独立に続くフィリピン、プエルトリコという最後の植民地を喪失する忘れられない屈辱の年でした。経済的よりスペインの没落を象徴する精神的な打撃のほうが大きかったから、海外の視聴者の受け止め方とは事情が異なっていました。
A: 第2作は貧困や民族対立を抱えるサハラ以南からヨーロッパに押し寄せる爆発的な難民や違法移民の流入、地元マフィアが支配する動物密猟などが背景にあります。スペインはアフリカに最も近い国ですから、難民の受入れ窓口になっているという事情があります。
B: 姉アリカとアドゥ少年が暮らしていたのは、カメルーン人民共和国のムブーマMboumaでカメルーン唯一の世界遺産に登録されているジャー自然動物保護区に隣接している。この少年を軸に物語は進行する。
A: この保護区で絶滅の危機にある象の保護活動をしているのがルイス・トサール扮するゴンサロです。彼には常に不在な父親を理解できないアンナ・カスティーリョ扮する娘サンドラがいて、間もなくカメルーンに到着することになっている。これが2本目の軸。

(常日ごろ疎遠な父娘に隙間風が吹く、ルイス・トサールとアンナ・カスティーリョ)
B: 3本目がアフリカ大陸にあるスペインの飛地の一つメリリャで治安警備隊員として国境を守る任務についているマテオ、ミゲル、ハビのグループ、この3本の軸が最後にメリリャとモロッコの国境に集結することになる。
A: 主任らしいマテオを演じるアルバロ・セルバンテスが助演男優賞にノミネートされている。身体を張って危険な任務についているのに、6メートルの金属フェンスを攀じ登ってくる越境者の事故死が原因でグループは訴訟を起こされてしまう。セルバンテスは裁判に勝訴するまでの複雑な心の動きを表現できたことが評価された。米国とメキシコの国境の壁には及びませんが、二重に張り巡らされた金属フェンスの高さがアフリカとヨーロッパの現実を語っています。

(マテオ役のアルバロ・セルバンテス)

(左から、訴訟を起こされた治安警備隊員マテオ、ハビ、ミゲル)
B: トサールもそうですが、彼もカルボ監督のデビュー作に兵士の一人として出演しているほか、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナの「バスタン渓谷三部作」の2部と3部に医師役で出演している。他にTVシリーズ出演が多いのでお茶の間の認知度は高い。
アリカとアドゥの出演料は16歳までの教育資金援助
A: アドゥが移動する都市名の位置関係が先ず描けない。あっという間に字幕が変わるから1回目は字幕を無視してストーリーを掴み、2度目に気になった個所をおさえることにした。分からなくても楽しめるが、分かったほうがメッセージがより届きやすい。
B: カメルーンの首都はヤウンデYaunde、姉弟はムブーマに住んでいる。しかしカメルーンでは撮影していないから、多分二人の出身国ベナン人民共和国でしょうか。
A: 撮影当時6歳だったアドゥ役のムスタファ・ウマルはカメルーン人ではない。監督談によると、キャスティング監督がベナン北部、首都ポルトノボから遠く離れた町の街路で出会った少年だそうで、何か惹きつけられてスカウトした。勿論まだ読み書きはできないし、象など見たこともなかった。
B: 映画出演料は姉アリカ役の Zayiddiya Dissou を含めて、16歳までの教育費援助を条件に契約した。これは素晴らしい。

(7歳になったムスタファ・ウマル少年と監督)
A: 恐ろしい密猟を目撃してしまったことで自転車を置いたまま逃げ帰る。それが災いして地元のボスから脅される。母親を殺された二人は行き場を失い親戚を頼って故郷を出る。アドゥが密猟者の顔を見てしまっている。密猟者は外部からやってくるのではなく地元の人なのだ。二人は父親がいるというヨーロッパを目指すことになる。
B: しかしカメルーンから何千キロ先のヨーロッパに如何にして二人を脱出させるか。脚本家アレハンドロ・エルナンデスは、飛行機での密航というとんでもないことを思いついた(笑)。ちょっとあり得ないストーリー展開でした。

(象の密猟を偶然に目撃してしまうアリカとアドゥ)
A: エルナンデスはカルボ監督のデビュー作を手掛けたほか、当ブログでは度々登場させています。キューバ出身、2000年にスペインに亡命以来、ベニト・サンブラノの『ハバナ・ブルース』(05)以外は故国とは関係ない作品を手掛けています。ゴヤ賞ノミネートは本作が5回目、2014年にはマリアノ・バロッソの「Todas las mujeres」で共同執筆した監督と受賞、もっぱらマヌエル・マルティン・クエンカとタッグを組んでいる他、アメナバルの『戦争のさなかで』(19)に起用されノミネートされた。
B: 最近は映画よりTVシリーズに専念している。
A: 映画に戻ると、公式サイトのストーリー紹介文では、どうして子供二人が飛行機の貨物室に忍び込んでヨーロッパを目指すのか分からなかった。また実際は貨物室ではなく、驚いたことに車輪格納庫だった。神のご加護があっても99パーセント生き延びられない設定です。
B: 生存は上空の極寒と低酸素状態で不可能ではないかと思いますが、皆無ではないそうです。専門家によると生存者の多くは仮死状態だったという。姉アリカは到着時には凍死しており、着陸のため開いた車輪格納庫から転落してしまう。このシーンは前半の見せ場の一つでした。
違法移民を企てるマサールとの出会い――セネガルの首都ダカール
A: 到着したのはパリでもマドリードでもなく、なんとセネガルの首都ダカール空港、一気にメリリャに近づいた。保護された警察でアダム・ヌルー扮するマサールと出会い、姉を失ったアドゥは彼と二人三脚でメリリャを目指すことになる。青年は時々軽い咳をしているので、観客は結核かエイズを疑いながら不安に駆られて見ることになる。
B: 途中から予測つきますが、エイズ問題も重いテーマです。未だコロナがアジアの他人事であった当時では一番厄介な病気でした。新人男優賞にノミネートされているが、いつもながら新人枠は予測不可能ですね。

(いつも腹ペコのアドゥとマサール、映画から)
A: ダカールから陸路を北上、泥棒をしながらモーリタニアの首都ヌアクショットに、さらにトラックを乗り継いで、遂にモロッコの北岸モンテ・グルグーの難民キャンプに到着する。メリリャの灯りが見える小高い岬、マサールはここで医師の診察を受ける。
B: 国境なき医師団のマークとは違うようでしたが、欧米ではこういうボランティア活動が当たり前に行われている。マサールの病状は進行していて検査入院を勧められるが時間の余裕がない。目指すメリリャは目の前なのだ。

(メリリャの灯りを見つめながら絶望の涙にくれるマサール)
A: この難民キャンプには金網フェンス越えに失敗した死者、怪我人が運び込まれてくる。子供連れのフェンス越えを断念したマサールは、古タイヤを体に巻きつけて海を泳いで渡る決心をする。脚本家エルナンデスは、再びとんでもないことを思いつきました。
B: その昔、キューバ人のなかには筏でマイアミに渡った人々がいたのを思い出しました。二人は離れ離れになりながらも対岸に辿りつく。治安警備隊員マテオのグループが乗った巡視艇が二人を発見して救助する。ここで初めてアドゥとマテオが交錯する。アドゥを抱きかかえたマテオは、もう以前のマテオではない。
「パパは私の友達ではなく、父親」とサンドラ、和解のときが訪れる
A: サンドラは長いことスペインに帰国しない父親にわだかまりをもっている。ゴンサロは「私たちは今までも友達同士として上手くやってきたではないか」と言う。しかし娘が求めているのは友達ではなく父親の存在、「パパは私の友達ではなく、父親よ」とサンドラ。
B: もう大人だと思っていた娘が親の愛に飢えていたとは気づかなかった。しかし娘には別の仕方で愛を注いでいたのだ。それを最後に娘は気づいて大粒の涙を流すことになる。愛とは難しい。

(父娘を演じたカステーリョとトサール、公開イベントにて)
A: ゴンサロは愛情こまやかタイプではなく、絶滅の危機にある象の保護で頭がいっぱい。いま手を打たないと明日では手遅れになる。「カメルーンに来て2ヵ月しか経たないが、4頭の象が殺害された」と嘆く。
B: しかし地元の人々はそうは考えていない。欧米の価値観をストレートに持ち込んでも理解されない。お金になる密猟はやめられないし、象の保護など白人のお節介。かつての支配者への不信は何代にもわたって続く。
A: 互いの乖離は埋めがたい。活動家は常に身の危険と背中合わせですね。次の派遣地がアフリカ南部、インド洋に面したモザンビークというのも驚きです。
B: メリリャの検問所までサンドラを送ってきたゴンサロは、少年センターに送られる途中のアドゥとすれ違う。登場人物全てがここメリリャに集合したことになる。
A: サンドラが押している自転車は姉弟が密猟現場に残してきた自転車、常に2本の軸は知らずに繋がっていたのでした。ゴンサロは以前カメルーンでヒッチハイクをする姉弟とすれ違っていた。本作では父娘の和解以外、何も解決していない。しかし観客は何かを学んだはずです。ニュースと映画の違いかもしれません。
B: アナ・ワヘネルとノラ・ナバスは特別出演、出番こそ少ないが二人の演技派女優が映画に重みをもたせている。両人とも監督たちの信頼は厚い。受賞に関係ないと思いますが、ナバスは映画アカデミーの副会長です。
A: 監督によると、1月公開作品はゴヤ賞では不利にはたらく。というのも1年前の映画など皆忘れてしまうからです。しかし昨年は3月からは映画館も閉鎖、公開できただけでも幸運だったと言う。収束の目途が立たない現状で一番恐れているのは、映画館が消滅してしまうことだという。それは映画製作者というより観客としてだそうです。
B: TVと映画は本質的に異なるというのが持論、TV界出身なのだから映画館が減っても困らないだろうというのは間違いだと。コロナは経済や医療を直撃していますが、文化も破壊している。2020年に撮影が始まった作品は少ないから、今年はともかく来年のゴヤ賞はどうなるのか。
パトリシア・ロペス・アルナイス主演の「Ane」*ゴヤ賞2021 ⑦ ― 2021年01月27日 20:37
ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」はバスク語映画

(英題「Ane is Missing」のポスター)
★ゴヤ賞の作品賞以下5カテゴリーにノミネートされたダビ・ペレス・サニュドの「Ane」は、昨年のサンセバスチャン映画祭2020のバスク映画イリサル賞受賞作品です。主演のパトリシア・ロペス・アルナイスが、第26回フォルケ賞2021の女優賞を受賞したばかりです。さらに2月8日に発表される第8回フェロス賞(ドラマ部門)では、作品賞、脚本賞、女優賞にノミネートされています。パトリシアは脇役やTV 出演が多かったので紹介が遅れていましたが、気になる女優の一人でした。アメナバルの『戦争のさなかで』(19)でウナムノの次女マリア役で既に登場しているほか、Netflix配信では結構目にします。バスク自治州ビトリアの出身ということもあってバスク語ができる。本作でアネの母親リデに抜擢されて初めて主役を演じています。先ずは映画のアウトラインからスタートします。

(ミケル・ロサダ、パトリシア・ロペス・アルナイス、ペレス・サニュド監督)
「Ane」(英題「Ane is Missing」)
製作:Amania Films / EiTB Euskal Irrati Telebista / 協賛バスク自治州政府、ICAA、他
監督:ダビ・ペレス・サニュド(新人監督賞)
脚本:ダビ・ペレス・サニュド、マリナ・パレス(脚本賞)
撮影:ビクトル・ベナビデス
音楽:ホルヘ・グランダ(作曲)
編集:リュイス・ムルア
美術:イサスクン・ウルキホ
キャスティング:チャベ・アチャ
衣装デザイン:エリサベト・ヌニェス
メイクアップ:エステル・ビリャル
プロダクション・マネージメント:ケビン・イグレシアス
製作者:アグスティン・デルガド、ダビ・ペレス・サニュド、(エグゼクティブ)カティシャ・シルバ、他
データ:製作国スペイン、バスク語、2020年、ドラマ、100分、撮影地アラバ県ビトリア他、公開スペイン2020年10月16日
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2020「ニューディレクターズ」部門ノミネーション、バスク映画イリサル賞・脚本賞受賞、ワルシャワ映画祭コンペティション部門10月9日上映。フォルケ賞2021女優賞受賞(パトリシア・ロペス・アルナイス)、第8回フェロス賞作品・脚本・女優賞ノミネーション、第35回ゴヤ賞は省略。
キャスト:パトリシア・ロペス・アルナイス(リデ)、ジョネ・ラスピウルJone Laspiur(リデの娘アネ)、ミケル・ロサダ(リデの元夫フェルナンド)、フェルナンド・アルビス(校長)、ナゴレ・アランブル(イサベル)、ルイス・カジェホ(エネコ)、アイア・クルセ(レイレ)、アネ・ピカサ(ミレン)、ダビ・ブランカ(ペイオ)他多数
(*ゴチック体がゴヤ賞ノミネート)
ストーリー:2009年ビトリア、リデは高速列車の工事現場のガードマンとして働いている。17歳のときから育てている年頃の娘アネと暮らしている。仕事から帰宅すると二人分の朝食の準備をする。しかしその日はアネの姿がなかった。翌朝になっても帰ってこなかった。リデは平静を保とうとするが、前日にした激しい口論のせいかもしれないと不安を募らせる。別れた夫フェルナンドとアネの居場所を尋ねまわるが、二人は娘の世界を何も知らなかったことに気づくのだった。娘の失踪によって親子関係の希薄さ、無頓着さ、配慮のなさを突きつけられる。折しもETAに所属しているらしい二人の若者の逮捕が報じられる。 (文責:管理人)

(娘を尋ね歩くリデ、映画「Ane」から)
バスクの対立を背景に親子の断絶と和解が語られる
★ダビ・ペレス・サニュド(ビルバオ1987)は、2010年プロデューサーとしてスタート、10本以上の短編を手掛け、その多くが国際短編映画祭で受賞している。2012年制作会社「Amania Films」をパートナーのルイス・エスピナソと設立、メイン・プロデューサーはエスピナソ。ビルバオとマドリードを拠点にしている。本作がバスク語で撮った長編デビュー作となる。バスクの対立とか労働者階級の闘いなどは、背景の一つであって真のテーマではない。あくまでもコミュニケーションがとれていない親子の断絶と開いた傷口の縫合が語られるようです。英題ポスターに見られるように同じ方向に向かっているが、上下に別れた道路を歩いているので出会えない。

(長編デビュー作のポスターを背にした監督)
★2013年短編第2作目となる「Agur」が評価され、その後「Malas vibraciones」(14、共同)、「Artifitial」(15)、「De-mente」(16)と立て続けに発表、サンセバスチャン映画祭に出品されたミステリー・コメディ「Aprieta pero raramente ahoga」(15分、17)が、ヒホン映画祭で最優秀短編映画賞を受賞した。他にも国内外の映画祭の受賞歴の持ち主である。他に2018年「Ane」という短編を撮っている。ここではアネはETAメンバーのようで、長編の下敷きになっているようです。2018年からはTVシリーズも手掛けており、仕事の幅を広げている。今年のゴヤ新人監督賞は激戦区の一つ、ライバルは「Las ninas」のピラール・パロメロ、『メキシカン・プレッツェル』のヌリア・ヒメネスなど受賞歴を誇る粒揃い、侮れない相手です。

(評価された短編「Aprieta pero raramente ahoga」のポスター)

(イリサル賞受賞のペレス・サニュド監督、SSIFF2020授賞式にて)

(ペイオ役のダビ・ブランカ、製作者カティシャ・デ・シルバ、監督)
「リデはチャンスを求めて闘っている戦士で闘士」とパトリシア
★主演女優賞ノミネートのパトリシア・ロペス・アルナイス(ビトリア1981)は、アラバ県の県都ビトリアの小さな村で幼少期を過ごし、後にマドリードにフリオ・メデムの『ファミリー・ツリー血族の秘密』(17)やフェルナンド・ゴンサレス・モリーナの「バスタン渓谷三部作」の第1部『パサジャウンの影』(17)がNetflixで配信されている。後者は第2部、第3部も日本語字幕はないが、スペイン語、英語なら視聴できます。脇役で出番も限られるので日本の観客には馴染みがない。長寿TVシリーズ「La otra mirada」(18~19、全21話)のテレサ役が評価され、オンダス賞2018とACE賞2019の女優賞を受賞している。TVシリーズでは「La peste」にも出演、スペインでは知名度が高い。

(テレサに扮したパトリシア・ロペス・アルナイス、TVシリーズ「La otra mirada」から)
★上述したようにアメナバルの『戦争のさなかで』でスクリーンに登場していますが、映画デビューは、2010年のホセ・マリ・ゴエナガ&ジョン・ガラーニョ共同監督のバスク語映画「80 egunean」(For 80 Days)でした。当時は必ずしも女優を目指していなかったと語っている。ダビ・ベルダゲルが主演男優賞にノミネートされているダビ・イルンダインの「Uno para todos」にも出演、本作と「Ane」でディアス・デ・シネ2021の女優賞を既に受賞している。最近の2年間で人生に革命が起きたと述懐しているように女優としての転機を迎えている。

(フォルケ賞2021最優秀女優賞のトロフィーを抱きしめるパトリシア、2021年1月16日)
★本作が生れ故郷のビトリアでクランクインしたことも幸いした。また「労働者階級に属しているリデは、チャンスを求めて闘っている戦士で闘士である」ともインタビューに応えている。自身と重なる部分があるということでしょうか。ライバルはイシアル・ボリャインの「La boda de Rosa」のカンデラ・ペーニャ、ゴヤの胸像は既に主演1個(06)、助演2個(04、13)をゲットしているが、そろそろ欲しいところです。
*「Uno para todos」の作品紹介は、コチラ⇒2020年04月16日
*「80 egunean」の作品紹介は、コチラ⇒2015年09月09日

(人生に革命が起きたと語るパトリシア、映画の1シーンから)
新人女優賞にノミネートされた個性派女優ホネ・ラスピウル
★新人女優賞ノミネートのジョネ・ラスピウル(Jone Laspiur サンセバスチャン1995)は、バスク大学で美術を専攻したという変り種、マドリードのコンプルテンセ大学やマセオ・ソシアル・アルヘンティノ大学でも学んでいる。子供のときからピアノを学び、合唱団に所属していた。ミュージック・グループNogenを経て、現在はコバンKobanの合唱団員として舞台に立っている。25歳デビューは遅いほうか。


★映画界入りは、パブロ・アグエロの「Akelarre」の音楽を担当していたミュージシャンのMursego(マイテ・アロタハウレギ)の目にとまりスカウトされた。歌えて踊れる若い女性を探していた。サンセバスチャン映画祭2020オフィシャル・セレクションに正式出品された本作は、ゴヤ賞主演女優賞(アマイア・アベラスツリ)を含めて9カテゴリーにノミネートされている。彼女は魔女アケラーレの一人マイデルに抜擢された。
*「Akelarre」の作品紹介は、コチラ⇒2020年08月02日

(「Akelarre」の魔女アケラーレの一人を演じた、映画から)

(サンセバスチャン映画祭2020のフォトコールにて)
★まだ「Akelarre」と「Ane」の他、バスクTVミニシリーズ「Alardea」(4話)に出演しただけだが、ゴヤの話題作2作に出演している旬の個性派女優として地元のメディアに追いかけられている。日本でも話題になったホセ・マリ・ゴエナガ&ジョン・ガラーニョの『フラワーズ』や『アルツォの巨人』のようなバスク語映画を見ることで新しい道が開けているとインタビューに応えている。第62回ビルバオ・ドキュメンタリー&短編映画祭ZINEBI 2020(1959年設立)のバスク作品賞と脚本賞を受賞したエスティバリス・ウレソラの短編「Polvo Somos」が公開されるほか、コロナ禍の影響でどうなるか分からないが、新しいプロジェクトの撮影も2月クランクインの予定。
フェルナンド・アルビスを筆頭にベテラン勢が脇を固めている
★リデの別れた夫フェルナンドを演じたミケル・ロサダ(ビスカヤ県エルムア1978)は、本作と同じようにパトリシア・ロペス・アルナイスと夫婦役を演じた『パサジャウンの影』のフレディ役、バスク語映画の代表作はアルバル・ゴルデフエラ&ハビエル・レボーリョの「Alaba Zintzoa」(「La buena hija」)、アナ・ムルガレンの「Tres mentiras」や、当ブログ紹介の「La higuera de los bastardos」、同じくルイス・マリアスの「Fuego」など。
*「La higuera de los bastardos」の作品紹介は、コチラ⇒2017年12月03日
*「Fuego」の作品紹介は、コチラ⇒2014年12月11日

(インタビューを受けるパトリシアとミケル・ロサダ)

(リデとフェルナンド、映画から)
★校長役のフェルナンド・アルビス(ビトリア1963)は、ダビ・ペレス・サニュド監督の短編「Agur」出演以来、「Aprieta pero raramente ahoga」や短編「Ane」他に出演している。他にたっぷりした体形を活かしたダニエル・サンチェス・アレバロの『デブたち』で、スペイン俳優ユニオン2010助演男優賞を受賞している。イサベル役のナゴレ・アランブルは、『フラワーズ』で匿名の贈り主から花束を受け取る中年女性役を演じた女優、レイレ役のアイア・クルセは短編「Ane」で主役アネを演じている。

(校長役のフェルナンド・アルビス、映画から)

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