メイド・イン・スペイン部門に8作*サンセバスチャン映画祭2020 ⑨ ― 2020年09月12日 15:02
女性シネアストの活躍が目立つメイド・イン・スペイン部門

★8月30日、メイド・イン・スペイン部門の発表がありました。長編映画7作、HBOヨーロッパのシリーズ「Escenario 0」の1作の合計8本、なかには終了したばかりのマラガ映画祭の受賞作が含まれています。例年なら3月のマラガの後にカンヌ、ロカルノ、映画賞などが入り、サンセバスチャン映画祭になるのですが、今年はマラガとサンセバスチャンやカンヌが繋がってしまった。スペインはコロナウイリス感染の第2波では、ヨーロッパで一番感染者が多く、連日約9000人ほどが陽性反応、日本の人口の半分にも満たないのに10倍以上です。夏のバカンス休暇の落とし物です。
★マラガ映画祭の受賞作は、作品賞に当たる金のビスナガ賞(スペイン部門)のピラール・パロメロ(サラゴサ1980)のデビュー作「Las niñas」、審査員特別賞のイシアル・ボリャイン(マドリード1967)「La boda de Rosa」の2作です。
*「Las niñas」の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2020年03月16日
*「La boda de Rosa」の作品紹介は、コチラ⇒2020年04月21日


★女性新人監督のヌリア・ヒメネス(バルセロナ1976)のデビュー作「My Mexican Bretzel」は、例年11月下旬に開催されるヒホン映画祭2019で、作品・脚本・監督の3賞、ロッテルダム映画祭2020でワールドプレミアされ、Found Footage賞、D'Aバルセロナ映画祭では観客賞を受賞している。IMDbではドキュメンタリーと紹介されていますが、ドキュメンタリーとフィクションがミックスされた、いわゆるドクドラマのようです。1940年代から60年代にわたって、ビビアン・バレットを夫のレオンが撮影したダイアリーのようですが、いったい彼女はどんな女性なのか。面白そうなのでいずれアップします。
*作品紹介は、コチラ⇒2020年09月14日

(ヴィヴィアンを配したポスター)
★次も女性監督ラウラ・エレーロ・ガルビア(トレド1985)のドキュメンタリー「La Mami」(19)、ヨーロッパ=ラテンアメリカ共同フォーラム映画祭で上映され、続いてD'Aバルセロナ映画祭、IDFAアムステルダム・ドキュメンタリー映画祭などの多くの国際映画祭で上映されている。メキシコシティのキャバレー「バルバ・アスール」を通して、踊り子たちを支え続けた女性ドーニャ・オルガ、通称ラ・マミの45年にわたる人生が語られるドキュメンタリー。ウーマン・パワーが炸裂する。

(ラ・マミことドーニャ・オルガを配したポスター)
★ハイオネ・カンボルダ(サンセバスティアン1983)のデビュー作「Arima」(19)、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2019「新しい波」セクションの監督賞受賞作品。予期しない2人のよそ者が現れたことによって動揺が走る4人の女性と一人の少女の人生が語られる。現実と想像、悪夢と眠り、怖れと欲望のあいだを行き来する謎に包まれた物語。ガリシア語、77分。

(メラニア・クルスを配したポスター)
★パウラ・コンス・バレラ(ア・コルーニャ1976)のデビュー作「La isla de las mentiras」(20、93分、スペイン・ポルトガル・アルゼンチン合作)は、上海映画祭2020で上映されている。1921年1月2日の明け方、ガリシアの海岸で260人の移民を乗せたサンタ・イサベル号が沈没した。実際に起きた「ガリシアのタイタニック」と呼ばれる客船難破を描いたドラマ。公開予定だったがパンデミックで中止となり、6月24日からFilminでオンライン配信されている。言語は本来ガリシア語だがスペイン語で配信されている。キャストはネレア・バロス、ダリオ・グランディネッティ、アイトル・ルナ。初長編映画だが、ドキュメンタリー映画を2017年「La batalla desconocida」と、2018年には「El caso Diana Quer, 500 días」を撮っている。時間が許せばアップしたい。

(ネレア・バロスほか主演者を配したポスター)
★トレンテ・シリーズでお馴染みのサンティアゴ・セグラ(マドリード1965)のコメディ「Padre no hay más que uno 2: La llegada de la suegra」(20)は、2019年のスペイン映画のなかで興行成績が第2位だった、「Padre no hay más que uno」の続編というか新バージョン。出演者もオール同じということです。4歳から12歳までの5人の子供たちをおいて妻が旅に出てしまう。父親のてんやわんやが語られるが、悪いことばかりではない、父と子供たちの距離が縮まって互いの理解が深まるというお話。他にトニ・アコスタ、シルビア・アブリル、レオ・アルレムなどが共演する。父親ハビエルを監督自身が演じるが、こましゃくれた子役たちの魅力に食われてしまう。本編よりも続編のほうが評判が良いようです。

(前列左から2番目がサンティアゴ・セグラ)

(2019年の「Padre no hay más que uno」のポスター)
★最後がフランスの劇作家、演出家、俳優、監督のパスカル・ランベール(ニース1962)とスペインのディエゴ・ポスティゴ(ブリュッセル1974)の「Hermanas」(89分)、作家、監督、俳優、舞台演出家がコラボして製作された、HBOヨーロッパのTVシリーズ「Escenario 0」(6作)の中の1作。2人の姉妹を演じるバルバラ・レニーとイレネ・エスコラルもグループの一員、2人は製作、脚本も手掛けている。本作は後ほどアップを予定しています。

(姉妹を演じるバルバラ・レニーとイレネ・エスコラル)
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