新人監督賞セリア・リコ・クラベリーノのデビュー作*ゴヤ賞2019 ④2019年01月06日 20:49

        セリア・リコ・クラベリーノのデビュー作「Viaje al cuarto de una madre 

 

       

★今年のゴヤ新人監督賞は、ノミネーション4作のうち女性監督が3人という珍しい女性対決の年になっています。女性監督が複数の年は第22回(08)のイシアル・ボリャイングラシア・ケレヘタ1回のみでしょうか。今回のように3人は記憶にありません。そもそも女性監督の受賞は1997年の第11回が最初で、今は亡きピラール・ミロの『愛は奪う』でした。その後第18回には『テイク・マイ・アイズ』のイシアル・ボリャイン、「La suerte dormida」の新人アンヘレス・ゴンサレス=シンデと女性監督がダブルで受賞する異例の年になりました。続いて『あなたになら言える秘密のこと』のイサベル・コイシェ20回、英語)、『家族との3日間』のマル・コル24回、新人、カタルーニャ語)と、昨年はコイシェが再び英語で撮った「The Bookshop」が作品・監督・脚色の3賞をゲット、新人カルラ・シモンがカタルーニャ語で撮った『悲しみに、こんにちは』も受賞、確実に女性が認められる時代になってきています。

 

★ラテンビート上映の『カルメン&ロラ』アランチャ・エチェバリアSin finホセ&セサル・エステバン・アレンダ兄弟は紹介済み、残る2作のうち始めにセリア・リコ・クラベリーノViaje al cuarto de una madreからご紹介したい。サンセバスチャン映画祭2018「ニューディレクターズ」部門正式出品、ユース賞・審査員スペシャルメンション・批評家連盟賞受賞作品、かつては「貧乏人の子沢山」が一般的だったスペインでも少子化が進み、家族、特に親子の関係の在り方が難しくなってきている。離れたいが離れられない母と娘の物語。 

       

 

    

Viaje al cuarto de una madre(「Journey to a Mother's Room」)

製作:Amorós Producciones / Arcadia Motion Pictures / Sisifo Films AIE / (共)Pecado Films / Noodles Production(仏)/ 協賛Canal Sur Televición / TVE / Movistar/ ICAA / アンダルシア評議会、他

監督・脚本・製作:セリア・リコ・クラベリーノ

撮影:サンティアゴ・ラカ

編集:フェルナンド・フランコ

美術:ミレイア・カルレス

録音:アマンダ・ビリャビエハ、アルベルト・マネラ

衣装デザイン:Vinyet Escobar エスコバル

キャスティング:ロサ・エステベス

製作者:ジョセップ・アモロス、イボン・コルメンサナ、(以下エグゼクティブ)アンヘル・ドゥランデス、イグナシ・エスタペ、マル・メディル、サンドラ・タピア、他

 

データ:スペイン、スペイン語、2018年、ドラマ、90分、スペイン公開2018105

映画祭・映画賞:サンセバスチャン映画祭2018「ニューディレクターズ」部門(924日上映)、ユース賞・審査員スペシャルメンション・批評家連盟賞受賞、ロンドン映画祭、ワルシャワ映画祭、モンペリエ地中海映画祭、トゥールーズ・シネエスパーニャ映画祭、ヒホン映画祭、ウエルバ映画祭、アルメリア映画祭、他フェロス賞2019(作品・脚本・主演ロラ・ドゥエニャス、助演アンナ・カスティーリョ)、ガウディ賞(監督・脚本・主演女優・助演女優・美術・録音・衣装デザイン・カタルーニャ語以外作品賞)、ゴヤ賞(新人監督・編集・主演女優・助演女優)各ノミネーション。

 

キャスト:ロラ・ドゥエニャス(母エストレーリャ)、アンナ・カスティーリョ(レオノル)、ペドロ・カサブランク(ミゲル)、アデルファ・カルボ(ピリ)、マリソル・メンブリージョ(アゲダ)、スサナ・アバイトゥア(ラウラ)、シルビア・カサノバ(ロサ)、アナ・メナ(ベア)、マイカ・バロッソ(メルチェ)、ルシア・ムニョス・ドゥラン(ロシータ)、ノエミ・ホッパー(アンドレア)ほか

 

ストーリー:家を出る時期だったのだが、レオノルは迷っていた。母を一人置いていく決心がつかないのだ。出ていくことを母が望んでいないからだ。しかしエストレーリャは娘を引き留めることはできないと分かっていた。母と娘は共に不安定なまま人生の岐路に立っていたが、互いに分かれて暮らせるだろうか。離れることができるかどうかは愛が証明するだろう。

   

          
    

              (母エストレーリャと娘レオノル)

 

セリア・リコ・クラベリーノ(クラベジーノ)Celia Rico Clavellino1982年セビーリャ生れ、監督・脚本家・製作者・女優と幾つもの顔をもつ。セビーリャ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒、バルセロナ大学で文学理論、比較文学を専攻、その後、映画文献調査、分析、脚本編集、オーディオビジュアル制作を学ぶ。現在Amorós ProduccionesArcadia Motion Picturesのようなさまざまな制作会社で仕事をしているほか、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』(12)のキャスティング、ホセ・ルイス・ゲリンの『ゲスト』にも参加している。

 

          

      (ゴヤ賞新人監督賞ノミネーションのセリア・リコ・クラベリーノ監督)

 

2012年に短編Luisa no está en casaで監督デビュー、この短編が本作の土台になっている。同年アントニオ・チャバリアスのホラー『フリア、よみがえり少女』にセリア・リコとして出演、2016年、ポル・ロドリゲスのコメディQuatretondetaの脚本執筆など。

    

          

       (本作の土台となった短編「Luisa no está en casa」のポスター)

 

★撮影は監督のホームグラウンドであるセビーリャのコンスタンティナという町で、それも監督の実家に主演のロラ・ドゥエニャスアンナ・カスティーリョを両親と同居させて撮ったそうです。「仕事がやりやすいと同時に自分を奮起させるような地元で撮ろうと決めていた。私の母は裁縫師でロラ(ドゥエニャス)に裁縫を教えるのにも都合よかった。母の部屋を舞台にしたので、みんなで撮影が終了するまで同居したのです。こんな経緯で映画を完成させたのです。それでこの映画が私の人生と深いところで融合していたことに後で気づいたのです」と監督。しかしアンダルシアに典型的な色調、白壁の家並みはほんの少ししかスクリーンに現れない。特に冬だと消えてしまう。

 

     

       (セビーリャから北方87キロにある冬のコンスタンティナ)

 

★「手工芸的な映画を作りたかった」と監督、しかし人生は複雑で、「今になればはっきりするけれど、撮影中はエモーショナルな負担に気づかなかった」とも。人口7000人未満の小さな町で撮影するとなれば、お祭り騒ぎになるのは必然だから「自分を部屋に閉じ込め思索する場所を見失った」と語っている。物語は母の視点と娘の視点から構成されており、観客は二つの視点の間で揺れながら平衡を保たねばならない。一方だけを追っていると迷子になってしまうようだ。「娘が工場でアイロンがけしているときでも、背後に母親の存在があり、母親がベッドメーキングしているときでも、ドア越しに娘のベッドを見ている」。

 

    

     (ゴヤ賞助演助演女優賞ノミネーションのアンナ・カスティーリョ)

 

★この映画は社会的な問題提起をしているわけではないが、監督のカメラが街路を映しだすとき、スペインの現実が描かれる。「私は子供のときから母親のミシンの音を聞きながら育った。想像することへの私のパッションは、母親が洋裁しているときの観察からきています。一枚の布からドレスを作り出すという、これほど創造的な仕事を他に思い浮かべることができません」。母へのオマージュなのかもしれません。

 

     

       (ゴヤ賞主演女優賞ノミネーションのロラ・ドゥエニャス)

 

ポル・ロドリゲスのQuatretondeta」の作品紹介は、コチラ20160422

    

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