サンセバスチャン映画祭2014*オフィシャル・セレクション③ ― 2014年09月16日 14:12
★オフィシャル・セレクション21本のうちコンペ外3本を除いた18作品で競います。オープニングはアメリカのアントワン・フークワの“The Equalizer”(コンペ外)、クロージングはフランスのエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュの“Samba”です。両方ともトロント映画祭「ガラ・プレゼンテーション」と重なります。スペイン語映画は6本、スペインが合作を含めて4本、アルゼンチン、チリ各1本ずつ、他にスペインはコンペ外2作品がエントリーされています。
★審査員は委員長フェルナンド・ボバイラ以下8人で構成されています(例年は7人)。ウクライナの監督・製作者Oleg Sentsov は、クリミア危機の時のテロ行為を理由にFSBロシア連邦保安局によって自宅で逮捕(5月11日)、現在モスクワの刑務所に収監中だから実際には参加できない。ヨーロッパ映画アカデミーが彼をサポートしており、アニエスカ・オランダ、ケン・ローチ、マイク・リー、ペドロ・アルモドバルなどが署名した釈放要求の手紙をプーチンに送っている。ウクライナ紛争は映画祭運営にも影響が及んでいます。『TATSUMI タツミ』のエリック・クー監督、ベネズエラのマリアナ・ロンドン監督・プロデューサー(昨年の金貝賞受賞者)、女優ナスターシャ・キンスキー他。
★フェルナンド・ボバイラは、アメナバルのヒット作『アザーズ』『海を飛ぶ夢』、フリオ・メデムの『ルシアとセックス』、ホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』などの製作を手掛けている。最近はマヌエル・マルティン・クエンカ『カニバル』、オスカル・サントス“Zipi y Zape y el Culb de la
Canica”などをサンセバスチャン映画祭にエントリーさせている。1963年カステジョン生れ。

(フェルナンド・ボバイラ審査委員長)
*銀貝賞として、監督賞/ 女優賞/ 男優賞 の3賞
*審査員賞として、撮影賞/ 脚本賞 の2賞
以上合計6賞の選出をする。基本的にはカンヌ映画祭と同じように「1作につき1賞」です。
*オフィシャル・セレクション*
◎
Aire
libre アナイー・ベルネリ (アルゼンチン)2014
脚本:アナイー・ベルネリ/ハビエル・バン・デ・Couter
プロット:ルシア(セレステ・シッド)とマヌエル(レオナルド・スバラグリア)の夫婦は、結婚、仕事、子ども、郊外に家を持つという夢にもがいていた。やがて別れが訪れ再会するも、もはや二人の夢は遠ざかっていた。
*トロント映画祭「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門出品(9月4日上映)
アルゼンチン公開5月22日

◎
Autómata
/ Automata ガベ・イバニェス (ブルガリア≂スペイン)2014
脚本:ガベ・イバニェス、イゴール・レガレータ(Legarreta)他
出演:アントニオ・バンデラス(Jacq Vaucan)、Birgitte・ヨルト・ソーレンセン(レイチェル・Vaucan)、メラニー・グリフィス(デュプレ博士)、ディラン・マクダーモット、ロバート・フォースター他
プロット:近未来SFスリラー、Jacq Vaucanはサイバネティクス会社ROCの保険ディーラー、保安証書に違反してロボットを混乱させている一連の奇妙な事件を調査している。
*チューリッヒ映画祭(9月26日上映)、10月9日クウェート公開を皮きりに中国、米国など順次公開予定。言語:英語、撮影地:ブルガリアの首都ソフィア他、製作費:約1500万ドル。
*離婚前のバンデラスとグリフィスが出演している。

◎ La isla mínima アルベルト・ロドリゲス (スペイン)2014、105分
脚本:ラファエル・コボス/アルベルト・ロドリゲス
出演:ラウル・アレバロ(刑事ペドロ)、ハビエル・グティエレス(刑事フアン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(ロドリーゴ)、ネレア・バロス(ロシオ)、ヘスス・カストロ、ヘスス・カロッサ(キニ)、マノロ・ソロ(新聞記者)ほか。
プロット:1980年の、アンダルシア、グアダルキビール河沿いの低湿地帯で2人の少女が行方不明になる。この忘れられたような小村で起きた刑事事件を捜査するためマドリードの殺人課の2人の刑事が派遣される。思想の面で反体制的な2人は言わば左遷されたかたちである。過去の因習に縛られた小さなコミュニティで起きた殺人事件の真相が暴かれることになるだろう。

(グアダルキビール河の低湿地帯を走る2人の刑事ペドロとフアン)
*“7 Virgenes”(2005、『七人のバージン』の邦題でラテンビート上映)も本映画祭2005に正式出品、主演のフアン・ホセ・バジェスタが最優秀男優賞(銀貝賞)を受賞しています。
*今年後半の大ヒット作ダニエル・モンソンの“El Niño”(ラテンビート2014上映予定、後日アップします)の新人二枚目ヘスス・カストロ、“7 Virgenes”のヘスス・カロッサもクレジットされています。
*脚本執筆のラファエル・コボスは“7 Virgenes”、“Grupo 7”でも監督とタッグを組んでいます。
*撮影地:セビーリャ、スペイン公開9月26日
◎
Loreak(Flowers) ジョン・ガラーニョ& ホセ・マリ・ゴエナガ (スペイン)2014
脚本:アイトル・アレギAitor Arregi /ジョン・ガラーニョ/ホセ・マリ・ゴエナガ
製作者:アイトル・アレギ/Xabier Berzosa/フェルナンド・Larrendo
撮影:ハビエル・アギーレ、音楽:パスカル・Gaigne
*言語:バスク語、99分
*チューリッヒ映画祭(9月28日)/ロンドン映画祭(10月18日)
*ラテンビート2014(東京10月13日上映予定)の項で紹介します。

◎
Magical Girl カルロス・ベルムト (スペイン=フランス)2014
脚本・美術:カルロス・ベルムト、撮影:サンティアゴ・Racaj、編集:エンマ・トゥセル
製作:Aquí y Allí Films & Canal+España 1
出演:ホセ・サクリスタン(ダミアン)、バルバラ・レニー(バルバラ)、ルイス・ベルメホ(ルイス)、イスラエル・エレハルデ(アルフレッド)、ルシア・ポリャン(アリシア)、他
プロット:文学教師のルイスは失業中、彼の12歳になる娘アリシアは末期ガンで余命いくばくもない。アリシアの最後の願いは日本のアニメTVシリーズ『マジカル・ガールYukiko』の衣装を着ること、なんとか叶えてやりたい。その高価な衣装のためルイスは恐ろしい恐喝のネットに深く入り込むことになる。ダミアンとバルバラを巻き添えに、彼らの運命も永遠に変えてしまうだろう。

*カルロス・ベルムトの第2作、ミステリー。デビュー作は“Diamond flash”(2011)。1980年マドリード生れ、監督・脚本家・漫画家・プロデューサー。美術学校でイラストを学び、「エル・ムンド」のイラストレーターとして働く。2006年、最初のコミック“El banyan rojo”がバルセロナのコミック国際フェアで評価された。彼の漫画家としての才能と経験は本作にも活かされている。他に短編映画3作、コミック3作、2012年の“Cosmic
Dragon”は、鳥山明の『ドラゴンボール』のオマージュとして描かれたようです。

*本ブログお馴染みのホセ・サクリスタンの紹介は割愛。バルバラ・レニーは、「メイド・イン・スペイン」部門のリュイス・ミニャロの“Stella
cadente”に出演、アントニオ・チャバリアスの『フリア、よみがえりの少女』(“Dictado”2012)で日本初登場、今年のラテンビートで上映されるダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』で再登場いたします。古くはモンチョ・アルメンダリスの“Obaba”(2005)など、多くの監督からオファーを受けています。
*トロント映画祭(9月7日上映)/チューリッヒ映画祭(9月25日)、スペイン公開10月17日
◎
La voz en off(Voice Over) クリスチャン・ヒメネス (チリ≂フランス≂カナダ)2014
脚本:ダニエル・カストロ/クリスチャン・ヒメネス、撮影:インティ・ブリオネス/クリスチャン・ヒメネス、96分
出演:イングリッド・イセンセ Isensee(ソフィア)、マリア・シエバルドSiebald(アナ)、パウリナ・ガルシア(マティルデ)、マイテ・ネイラ(アリシア)、クリスチャン・カンポス(マヌエル)、他
プロット:最近離婚したばかりの美人のソフィアは35歳、2人の子どもを育てている。しかし人生は何もかも悪いほうへと転がっていく。父が母を残して出て行ってしまうかと思うと、姉がチリに戻ってきて彼女流のけんか腰でズカズカと割り込んでくる。ソフィアはベジタリアンだが、子どもたちは肉が食べたいと文句を言うし、更にはふとしたことから父親の不愉快な事実を知ってしまう。

*クリスチャン・ヒメネスの第3作、1975年チリのバルディビア生れ。デビュー作『見まちがう人たち』と第2作『Bonsai~盆栽』が東京国際映画祭2009・2011で上映され、2回ともゲスト出演のため来日しております。前作と同じ流れの作品のようですが、チリ「クール世代」の代表的な監督。『見まちがう人たち』がブラチスラヴァ(スロバキア)映画祭2009でエキュメニカル審査員スペシャル・メンション賞、ケーララ(インド)映画祭2010出品、『Bonsai~盆栽』はカンヌ映画祭2011「ある視点」出品、ハバナ映画祭2011国際批評家連盟賞受賞、マイアミ映画祭2012グランド審査員賞受賞他。

(『Bonsai~盆栽』上映で登壇したヒメネス監督、東京国際映画2011にて)
*イングリッド・イセンセ は、1974年チリのサンチャゴ生れ、『Bonsai~盆栽』に脇役で出演、今回主役ソフィアを射止めた。他にマリアリー・リバスの“Joven y alocada”(2012)に出演、本映画祭2012の「ホライズンズ・ラティーノ」部門の上映作品。今年短編“El Puente”で監督デビューした。
*ベテラン女優パウリナ・ガルシアは、セバスチャン・レリオの『グロリアの青春』(2013)の圧倒的な演技が記憶に新しい。国際的な賞を独り占め、昨年の本映画祭の審査員を務めました(⇒コチラ2013・9・12)。
*リオデジャネイロ映画祭2014、トロント映画祭「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門出品(9月6日上映)、チューリッヒ映画祭2014(9月25日)、他
*コンペティション外*
◎ Lasa ETA Zabala / Lasa y Zabala パブロ・マロ (スペイン)

◎ Murieron por encima de sus posibilidades イサキ・ラクエスタ (スペイン)

★駆け足でご紹介してきましたが、コンペ外は間もなく開催される「ラテンビート2014」のラインナップの後に回します。
★「おめでとう」トロント映画祭2014でご紹介したイサベル・コイシェの“Learning to Drive”が、ピープルズ・チョイス賞次点に選ばれました。トロントFFはノン・コンペティションの映画祭でいわゆる観客賞にあたるピープルズ・チョイス賞が最高賞ですから、次点は大賞です。(⇒コチラ8月13日)
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