ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido」*カンヌ映画祭2026 ― 2026年06月04日 16:13
スリラーというジャンルのコルセットを脱ぎすてたソロゴジェン

(英語版プロモーション・ポスター)
★今年のカンヌ映画祭にはスペインから3作がコンペティションにノミネートされました。ペドロ・アルモドバルの「Amarga Nadidad」、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido / The Beloved」、前回アップしたロス・ハビスの「La bola negra」の3作品です。個人的に期待していたのがソロゴジェン、『ザ・ビースト』のような彼の過去の映画がもっていたスリラーの要素を除いたことが理由でした。プレミアム上映後の感触は悪くなかったようですが、下馬評はイマイチでした。フランス公開はカンヌでワールドプレミアされた当日の5月16日(配給ル・パクト)、スペインは8月26日(同ア・コントラコリエンテ・フィルム)、公開後モビスター・プラスで配信されます。近いうち鑑賞できることを期待してアウトラインをアップします。
★プレミアム上映後のスタンディングオベーションは、ソロゴジェンのスピーチを入れて7~8分くらい、夕方からのコンペ上映時には観客にもフォーマルな服装が求められるから蝶ネクタイ姿がいっぱい。映画祭関係者、カメラマンも黒服だからライトが当たった人しか判別できない。ソロゴジェン監督以下、脚本家イサベラ・ペーニャ、製作者ギジェルモ・ファレ、エドゥアルド・ビリャヌエバ、キャスト陣はハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ、マリナ・フォイス、ラウル・アルバレス、ラウル・プリエトなど、本作には関係してないと思うが、ホセ・アントニオ・バヨナの姿もあった。


(ワールドプレミア後のレッドカーペット、カンヌ映画祭2026、5月16日)
★新作「El ser querido」は、単独デビュー作「Stockholm」(ゴヤ賞2014新人監督賞ノミネート)から数えると6作めになる。長いあいだ離れて会うこともなかった父親エステバン(ハビエル・バルデム)と娘エミリア(ビクトリア・ルエンゴ)の物語、長年疎遠だった著名な映画監督の父、売れない女優の娘が再会して一緒に仕事をするとどうなるか。バルデムの起用は初、ルエンゴはTVシリーズ「Antidisturbios / Riot Police」の主役に抜擢している。スペインの過去の植民地であったサハラ砂漠を舞台に、現実とフィクションを交錯させている。
「El ser querido / The Beloved」(愛しきもの)
製作:Caballo Films / Movistar Plus+/ El Ser Querido AIE / Le Pacte /
Comunidad de Madrid / ICEC / ICAA / Crea SGR / Triodos Bank
監督:ロドリゴ・ソロゴジェン
脚本:イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン
撮影:アレハンドロ・デ・パブロ
音楽:オリヴィエ・Arson
編集:アルベルト・デル・カンポ
キャスティング:パウラ・カマラ、アランツァ・ベレス
プロダクションデザイン&美術:ホセ・ティラド
衣装デザイン:サイオア・ララ
メイクアップ&ヘアー:フランシス・ボディ、イレネ・ペドロサ、ヘスス・ヒルGil、他
製作者:フラン・アラウホ、ギジェルモ・ファレ、ホルヘ・ペッツィPezzi、(共同)アリス・ラバディ、ジャン・ラバディ、(エグゼクティブ)ハビエル・バルデム、クララ・ラゴ、ナチョ・ラビリャ、エドゥアルド・ビリャヌエバ
データ:製作国スペイン=フランス、2026年、スペイン語、ドラマ、135分、撮影地:カナリア諸島フエルテベントゥラ島のパハラ、ラ・オリバ、マドリードなど、2025年2月クランクイン、公開フランス5月16日、スペイン8月26日、スウェーデン12月18日(予定)
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2026コンペティション部門、ジャカルタ・ワールド・シネマ(10月予定)
ストーリー:著名な映画監督エステバン・マルティネスは、映画だけでなく、過剰に彩られた過去でも伝説的な存在です。新作では、長年疎遠だった女優の娘エミリアに役を提供しようとします。一緒に撮影現場で暮らすことで、何年も分かち合うことのなかった親密さが芽生えるが、同時に癒えなかった古い傷口が再び開くことになる。互いに目を見て話すことのなかった二人の人間についての映画。
キャスト:ハビエル・バルデム(エステバン・マルティネス)、ビクトリア・ルエンゴ(エミリア・マルティネス)、マリナ・フォイス(マリナ)、ラウル・アレバロ(セサル)、ムラド・ウアニ Mourad Quani(ビラル)、メリナ・マシューズ(バルバラ)、ラウラ・ビルン(アリス)、ヌリア・プリムス(チャロ)、パブロ・ゴメス=パンド(パブロ)、マレナ・ビリャ(マレナ)、ペパ・グラシア(ぺパ)、他多数
★壊れた家族の再会、権力者と犠牲者のあいだで起こるエモーショナルな暴力、互いに調和しない記憶、ストーリーからはよくあるテーマのように思われます。多くの批評家がヨアキム・トリアーの『センチメンタル・バリュー』との類似性を指摘しています。あちらの父娘も監督と女優だった。比較は避けられないと思いますが、だからと言ってソロゴジェン映画の興味がゼロかというわけではない。短い予告編からは、沈黙が支配しているように見える。登場人物のクローズアップされた視線、沈黙、表情から、壊れた父娘の関係を探ることになりそうです。


(ハビエル・バルデムとビクトリア・ルエンゴ、フレームから)
★監督紹介:ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)、監督、脚本家、製作者。単独監督デビュー作以来、何回かキャリア紹介をしておりますので、今回は主なフィルモグラフィー&受賞歴だけ以下にアップしておきます(TVシリーズは割愛)。


(監督、ルエンゴ、バルデム、カンヌFF5月16日)
2013「Stockholm」マラガFF、監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞受賞
2016「Que dios nos perdone」『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』
サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル初ノミネート
2017「Madre」短編、ゴヤ賞2018短編映画賞受賞、米アカデミー賞2019ノミネート
2018「El Reino / The Realm」サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル、
ゴヤ賞2019監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞、フェロス賞監督賞・脚本賞受賞
2019「Madre」『おもかげ』公開
2022「As Bestas / The Beasts」『ザ・ビースト』TIFF、邦題『理想郷』で公開、SSIFF観客賞
ゴヤ賞2023作品・監督・イサベル・ペーニャと脚本賞受賞、セザール賞2023外国映画賞
2026「El ser querido」カンヌ映画祭コンペティション初ノミネート
*「Stockholm」とキャリア紹介記事は、コチラ⇒2014年06月17日
*「Que dios nos perdone」の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月11日
* キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2018年03月26日
*「El reino」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月25日
★キャスト紹介:
◎ハビエル・バルデム(カナリア諸島ラス・パルマス1969)、俳優、製作者。伯父にフアン・アントニオ・バルデム監督、母に女優のピラール・バルデム、俳優で作家の兄カルロス、女優の姉モニカ、妻ペネロペ・クルスと、まさに映画一家です。2023年、第71回ドノスティア栄誉賞受賞が発表された折に、かなり詳しいキャリア&フィルモグラフィーをアップしています。1年遅れの授与式に、ビクトリア・ルエンゴと「El ser querido」に主演することをアナウンスしておりました。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2023年06月09日
*ドノスティア栄誉賞授与式の記事は、コチラ⇒2024年09月23日

(新作フレームから)

(カンヌFFフォトコール、5月17日)
◎ビクトリア・ルエンゴ・サエス、1990年、パルマ・デ・マジョルカ生れのバルセロナ育ち、映画、テレビ、舞台女優。ヴィッキー・ルエンゴでデビューしたが、2020年ごろからビクトリアを使用している。バルセロナのメモリー・スクールで演技、ダンス、歌を学んでいる。2010年、TVシリーズでスタートをきる。主な映画出演は以下の通りです。ミケル・グレアのデビュー作「Suro」に主演、高評価で翌年のゴヤ賞主演女優賞にノミネート、ガウディ賞では受賞を果たした。2022年にメディナ映画祭「21世紀の女優賞」を受賞、舞台女優としては、モノローグ劇「Prima Facie」を演じ好評を博している。

(新作フレームから)

(カンヌFFフォトコール、5月17日)
★TVシリーズでは、警察を舞台にしたスリラー「Antidisturbios / Riot Police」(20、6話)に機動隊員ライア・ウルキホ役で主演、オンダス賞2021主演女優賞,フォトグラマス・デ・プラタ主演女優賞を受賞、フォルケ賞やフェロス賞、イリス賞などにノミネートされた。ソロゴジェン監督にとっても大きな転機になったTVシリーズでした。他にコルド・セラが手がけるサスペンス「Reina Roja」(『レッド・クイーン』24、シーズン1,7話)で、IQ242のアントニア・スコットを演じている。再びホヴィク・ケウチケリアンとタッグを組んだ。プライムビデオで配信されている。
2014「Born」『ボルンの街に、灯る火』監督クラウディオ・スリアン
ニューヨーク市映画祭2015主演女優賞受賞
2018「Las leyes de la termodinamica」『熱力学の法則』コメディ、監督マテオ・ヒル
2020「Hogar」スリラー、共同監督アレックス・パストール&ダビ・パストール
2021「Chavalas」コメディ、監督カロル・ロドリゲス・コラス
ガウディ賞2022主演女優賞ノミネート
2021「El sustituto / The Replacement」クライムスリラー、監督オスカル・アイバル
2022「Suro / Cork」監督ミケル・グレア、カタルーニャ語、フランス語ほか
ゴヤ賞2023主演女優賞ノミネート、ガウディ賞主演女優賞を受賞
2024「La habitacion」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』監督ペドロ・アルモドバル
2024「Verano en diciembre」監督カロリナ・アフリカ
2026「Amarga Navidad」監督ペドロ・アルモドバル
2026「El ser querido」監督ロドリゴ・ソロゴジェン
*『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ⇒2018年04月02日
*「Suro / Cork」の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月01日
*「Amarga Navidad」の紹介記事は、コチラ⇒2025年06月17日
◎批評家から演技が絶賛されているマリナ・フォイスとラウル・アレバロの立ち位置がまだ分かりません。もう4年前になるが『ザ・ビースト / 理想郷』のマリナ・フォイスの演技は忘れられません。東京国際映画祭2022では東京グランプリなど受賞しましたが、素晴らしい演技にも拘わらず女優賞は逃しました。ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズも『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』に出演しており、スタッフ同様キャストも気心の知れた布陣のようです。秋の映画祭を期待したい。



(プレス会見、カンヌFFフォトコール、5月17日)
アルモドバルの「ビター・クリスマス」は悲喜劇*カンヌ映画祭2026 ― 2026年06月14日 15:20
公開済みの作品で7回目のカンヌ映画祭コンペ入りは異例?

(公開用のポスター)
★ちょうど1年前の2025年6月9日、ペドロ・アルモドバルの「Amarga Navidad」がクランクインした折に、大枠の紹介記事をアップしました。カンヌ映画祭には多分間にあわないと予想しましたが、なんと3月20日にスペインで早々と公開、更に公開済みの作品がカンヌ・コンペ入りするなんて聞いたことがないから、じゃワールドプレミアはどこで? やはりカンヌだというので驚きました。1999年、初めてコンペ入りした『オール・アバウト・マイ・マザー』で監督賞を受賞して以来、7作目のコンペ入りでした。2006年の『ボルベール〈帰郷〉』で脚本賞を受賞、しかし一番欲しいパルムドールはまだ手にしておりません。『私の秘密の花』(95)でタッグを組んで30年、音楽監督アルベルト・イグレシアスがサウンドトラック賞を受賞しました。こんな賞があることも知りませんでした。
★タイトルは、アルモドバルが2023年に出版した12編からなる短編集 “El último sueño” から、20年前に執筆されたお気に入りの “Amarga Navidad” と、これまた監督お気に入りのメキシコの国民的な大歌手、チャベラことイサベル・バルガ・リサノの “Amarga Navidad” から採られました。エルサの物語を2004年に設定したのと関係あるのかもしれません。劇中で流れるということです。作品紹介記事にチャベラ・バルガスの紹介もアップしております。過去のカンヌ・コンペ入りは、『オール・アバウト・マイ・マザー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『抱擁のかけら』(09)、『私が、生きる肌』(11)、『ジュリエッタ』(16)、『ペイン・アンド・グローリー』(19)の6作です。
* 作品紹介記事は、コチラ⇒2025年06月17日

(カンヌ映画祭2026ワールドプレミア前のレッドカーペット、5月19日)
*レッドカーペットに現れた出席者は, 左から、ニエベス・アルバレス、ロッシ・デ・パルマ、キム・グティエレス、アイタナ・サンチェス=ヒホン、レオナルド・スバラリア、監督、バルバラ・レニー、パトリック・クリアド、ビクトリア・ルエンゴ、ミレナ・スミット、歌手アマイア・ロメロの11名、カルメン・マチは不参加でした。
「Amarga Navidad / Bitter Christmas」
製作:El Deseo / Film Factory Entertainment / Movistar Plus+ / Pathé
/ ICO / ICAA / RTVE
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:パウ・エステベ・ビルバ
音楽:アルベルト・イグレシアス
編集:テレサ・フォント
キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ
衣装デザイン:パコ・デルガド
メイクアップ&ヘアー:アナ・ロペス=プイグセルベル(メイク)
マノロ・ガルシア(ヘアー)、他
美術:パブロ・ブラッティ
製作者:アグスティン・アルモドバル、(エグゼクティブ)エステル・ガルシア
データ:製作国スペイン、2026年、スペイン語、悲喜劇、111分、撮影地カナリア諸島のランサローテ島、マドリード、2025年6月9日ランサローテでクランクイン、8月12日終了。配給:スペイン(ワーナーブラザース・ピクチャーズ)、米国(ソニー・ピクチャーズ・クラシックス)、フランス(パテ Pathé、5月20日)、イギリス、アイルランド(カーズン8月28日)、ドイツ(スタジオカナル・フィルム7月30日)、イタリア(ワーナーブラザース5月21日)、メキシコ、アルゼンチン、ブラジルほか中南米諸国(ワーナー・ブラザース5月28日)他。スペインでは公開後、モビスター・プラスが配信予定
映画祭・受賞歴:第79回カンヌ映画祭2026コンペティション、サウンドトラック賞(アルベルト・イグレシアス)、
キャスト:
バルバラ・レニー:エルサ、広告ディレクター
レオナルド・スバラリア(スバラグリア):ラウル・デュラン、映画監督
アイタナ・サンチェス=ヒホン:モニカ、ラウルの20年来の秘書
ビクトリア・ルエンゴ:パトリシア、エルサの友人、パリにいる夫の浮気を疑っている
パトリック・クリアド:ボニファシオ、エルサの年弱のパートナー、消防士、ストリッパー
ミレナ・スミット:ナタリア、エルサの友人、子供を事故で亡くし鬱になっている
キム・グティエレス:サンティ、ラウルのパートナー
カルメン・マチ:ガルシア医師
グロリア・ムニョス:エルサの母親
ロッシ・デ・パルマ:ガブリエラ
アマイア・ロメロ:歌手アマイア
マリア・モラレス:パトリシア・オテロ医師
アントニオ・ロメロ:医師
ニエベス・アルバレス、ヌルディン・バタン、ラウラ・レデスマ、(フィエスタの招待客)ハビエル・アンブロッシ、ハビエル・カルボ、ロラ・ロドリゲス、オマール・アユソ、ギタリカデラフエンテ、ビビアナ・フェルナンデス、フェルナンド・イグレシアス、テオ・ルカダモ、フリア・デ・カストロ、その他大勢
ストーリー:、2004年、12月の長い週末に母親を亡くした広告ディレクターのエルサは、仕事に没頭して対処しようとします。しかし片頭痛で休暇を余儀なくされ、憲法記念日(12月6日)の連休に友人のパトリシアと一緒にランサローテに向かうことにする。パトリシアにもマドリードを離れる必要があり、一方で年下の若いパートナーのボニファシオはマドリードに留まることにする。エルサは創作を再開するために、親しい友人たちの個人的な苦しみを食いものにしていきます。2025年、映画監督のラウルが脚本を執筆しているが、物語はラウルのもうひとりの自分であるエルサの物語であることが明らかになる。ラウルは創造性の壁を乗りこえるためにオートフィクションに没頭しており、それは自身の人生や若いパートナーのサンティ、アシスタントのモニカに影響を受けています。人生とフィクションは分かちがたく、時には痛みを伴うかたちで結びついている。しかし深入りはどこまで許されるのでしょうか。

(最初のポスター)
「自分に対して最も残酷だった映画」と監督
★最初のポスターからも分かるように、バルバラ・レニー扮するエルサとレオナルド・スバラリアのラウルはダブル(分身)、そしてラウルは監督の別人格でもある。半自叙伝的な『ペイン・アンド・グローリー』と同じオートフィクションの要素を取り入れています。因みにあちらはアントニオ・バンデラスでした。二つの物語は悪影響をあたえながらパラレルに入れ子状に展開されます。二人の監督が重なりあうだけでなく、もう一人の監督とも重なるようです。もう一人の監督を理解して支え続けた母親が亡くなったのは、1999年9月で『オール・アバウト・マイ・マザー』が公開中のことで、翌年のアカデミー外国語映画賞受賞を知らずに旅立ちました。監督は2002年に上梓した自伝でカミングアウトしており、2004年は『バッド・エデュケーション』が公開された年でもあった。

(本作撮影中のアルモドバル)

(三人は一人、カンヌFF、2026年5月19日レッドカーペット)
★未紹介のエルサの年下のパートナー役ボニファシオを演じたパトリック・クリアド(マドリード1995)は子役出身、ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ「La familia española」でゴヤ賞2014新人男優賞にノミネートされ大人の俳優としての第一歩を踏み出した。ロドリゴ・ソロゴジェンのTVシリーズ「Antidisturbios」(6話、20)でスペイン俳優組合賞2022,フェロス賞2021の助演男優賞を受賞した他、イベロアメリカ・プラチナ賞にノミネートされた。『ペーパー・ハウス』(6話、21)、「Las noches de Tefia」(6話)でオンダス賞2023主演男優賞を受賞した。アレックス&ダビ・パストールの『バード・ボックス・バルセロナ』(23)、パウラ・オルティスの『レッド・バージン』(24)でスペイン俳優組合賞を受賞している。短編だがブラス・エヘア・サラビアの「Remember Why You Started」で脚本も手がけている。


(パニック発作で入院したエルサを介護するボニファシオ)
★主要キャストのキャリア&フィルモグラフィーは以下にアップしています。ラウルのアシスタントを20年も続けているモニカ役のアイタナ・サンチェス=ヒホンの演技が評価されていますが、うちに才能を秘めたモニカの立ち位置に注意して鑑賞したほうがよろしいようです。


(アイタナ・サンチェス=ヒホンとレオナルド・スバラリア)
*バルバラ・レニー、コチラ⇒2015年03月27日/2018年06月21日
*レオナルド・スバラリア、コチラ⇒2017年03月13日/2024年10月31日
*アイタナ・サンチェス=ヒホン、コチラ⇒2024年12月17日
*ビクトリア・ルエンゴ、コチラ⇒2026年06月04日
★批評家の評価は、90%が概ねポジティブで、5点満点で平均4.2点です。「魅力的だが感動的ではない」、「『ペイン・アンド・グローリー』より不快だがより正直な作品」、「栄光より痛みが多い」、監督自身も述懐しているように、自身に対して「容赦ない正直さ」または「残酷な誠実さの自画像」を評価している。一方には『ペイン・アンド・グローリー』のようにうまく機能してないと嘆く評者もいます。かつて『抱擁のかけら』を「褒めるところがゼロ」と書いて大喧嘩したエル・パイスのカルロス・ボジェロは「またしても感情の嵐が作り物のように見えるデザインの展示」とけんもほろろです。

(バルバラ・レニーとビクトリア・ルエンゴ)

(バルバラ・レニーとミレナ・スミット)

(レオナルド・スバラリアとキム・グティエレス)

(ニエベス・アルバレスとロッシ・デ・パルマ、レッドカーペット)
映画国民賞2026受賞者にカルメン・マチ*スペイン映画賞 ― 2026年06月17日 17:21
マラガ-スール賞2025に続いて映画国民賞を受賞するカルメン・マチ

(映画国民賞2026の受賞者カルメン・マチ)
★映画国民賞2026受賞者にカルメン・マチ(マドリード1963)のアナウンスがありました。毎年6月に入るとスペイン文化スポーツ教育省が授与する国民賞の発表があります。文学、スポーツ、科学、映画など各分野ごとに選ばれます。映画関係の選考母体は文化省とスペイン映画アカデミーで、授与式は秋に開催されるサンセバスチャン映画祭の会期中と決まっています。副賞は3万ユーロと多額ではありませんが、とても名誉な賞です。因みに昨年はエドゥアルド・フェルナンデスでした。受賞理由は、「スペイン映画史におけるコメディといわず全てのジャンルをカバーできる最も重要な俳優の一人。数多の製作者の企画をよく理解して、かつ大衆化が損なわれないように努めて、多くの観客を惹きつける術を知っている」でした。審査員全員の満場一致、反対する理由なんてないでしょう。

(第29回ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたカルメン)
★受賞の知らせを受けて、「びっくりしています。受賞の知らせに感動して、感謝の言葉もありません」と。テレビのコメディではアドリブもあるのではないかと思っていましたが意外や、「台本が優れていれば、それを演じればいい。セリフを捉えて、コンマ一つ変えません。シェイクスピア劇を演じるのと同じことで、脚本家に最大級の敬意をはらっています」ということでした。舞台一筋だったせいか、長編映画出演はペドロ・アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』の看護婦役でした。彼の映画には『抱擁のかけら』、『私が、生きる肌』、『アイム・ソー・エキサイテッド!』、最新作「Amarga Navidad」など。キャリア&フィルモグラフィーは、マラガ-スール賞を受賞した折にアップしましたが、マラガFF以降のフィルモグラフィーを追加して以下に再録しておきます。
*マラガ-スール賞、キャリア&フィルモグラフィの記事は、コチラ⇒2025年4月06日
◎主なフィルモグラフィー◎
1999「Lisa」短編、カルロス・プジェ
2002「Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役
2003「Descongélate!」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ
「Torremolinos 73」『トレモリーノス73』パブロ・ベルヘル、美容院の客
2004「Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役
2005「Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ
2006「Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ
2009「Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
「La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役ロサ、
カセレス・スペインFF女優賞受賞
2010「Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、
ラテンビート2010女優賞受賞
「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客
2013「Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル
2014「Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、
ゴヤ賞2015助演女優賞受賞
2015「Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、
ベニ・マリン役
「Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア
2015「Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』
E・マルティネス=ラサロ、メルチェ / カルメ役
2016「Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役
「La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞
2017「El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』サスペンス、
アレックス・デ・ラ・イグレシア
「Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ
2018「Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、
主役カルメン・ガラテ
「La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、母親ビルヒニア役
モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞
2019「Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役
「Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ
2020「Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役
「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー
2021「El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役
2022「Amor de madre」『僕とママの ”じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役
「Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン
「La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ
「Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役
2024「Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演
「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役
2025「La viuda negra」犯罪ドラマ、カルロス・セデス、刑事役
「Día de caza」スリラー・ドラマ(サウラの『狩り』の女性版)、ペドロ・アギレラ
2026「Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役
「Los justos」コメディ、ホルヘ・ララ&フェルナンド・ぺレス、主役
「Amarga Navidad」悲喜劇、ペドロ・アルモドバル、医師ガルシア訳
「53 domingos」『53回の日曜日』コメディ、セスク・ゲイ、ナタリア役
「El director」ドラマ、ダニ・デ・ラ・オルデン(11月公開予定)

(カルメン・マチとカラ・エレハルデ、「Ocho apellidos vascos」のフレームから)
*原題ゴチック体は当ブログで紹介記事をアップしております。Netflix配信中の『53回の日曜日』は、3人の兄弟姉妹ハビエル・グティエレス、カルメン・マチ、ハビエル・カマラ、そのパートナーであるアレクサンドラ・ヒメネスが進行役のシリアスコメディ。認知症の傾向が見え始めた一人暮らしの老父の面倒は誰がみる? 今年11月公開予定の「El director」では、ダビ・ベルダゲルとアルベルト・サン・フアンと共演、両作とも鉄壁の布陣です。TVシリーズ、舞台出演については前回で紹介しています。

(『53回の日曜日』ポスター)
公式ポスターの顔にリカルド・ダリン*サンセバスチャンFF26 ① ― 2026年06月20日 17:19
第74回サンセバスチャン映画祭公式ポスターの顔にリカルド・ダリン

(リカルド・ダリンをコラージュしたコンペティション部門の公式ポスター)
★6月3日、カンヌが終わるとサンセバスチャン映画祭のニュースが入ってきます。今年が最後となる映画祭メインディレクターのホセ・ルイス・レボルディノスと、その後任者であるマイアレン・ベロキ副ディレクター立会のもと、第74回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2026(9月18日~26日)の公式ポスターの発表がタバカレラ国際現代文化センターでありました。今年は半世紀にわたりアルゼンチンといわずラテンアメリカを代表する俳優、プロデューサー、監督のリカルド・ダリン(ブエノスアイレス1957)が映画祭の公式ポスターの顔に選ばれました。既に2017年にラテンアメリカ初のドノスティア栄誉賞を受賞しています。出演本数は3桁、40以上の受賞歴、しばしばサンセバスティアンを訪れています。いずれ纏まったキャリア&フィルモグラフィをアップいたします。断片的ですが以下にフィルモグラフィを紹介しています。
*ドノスティア栄誉賞の受賞記事は、コチラ⇒2017年09月30日
*『サミット』作品紹介は、コチラ⇒2017年10月25日

(発表するホセ・ルイス・レボルディノス、マイアレン・ベロキ)
★公式ポスターは、例年同様、サンセバスティアンに本拠をおくワリハイ・スタジオが全てをデザインしました。ダリンの写真はアルゼンチンの写真家でミュージシャンのセバスティアン・アルペセラが、2024年に撮影したフォトをもとにコラージュしたものです。セクション・オフィシアル以外の8部門の公式ポスターも同時に発表になりました。昨年の版ではジャンルに焦点が当てられましたが、今回は職業をテーマにしています。コンペティション部門は「演技」、以下ニューディレクターズ部門「脚本」、オリソンテス・ラティノス部門「録音・音響」、サバルテギ-タバカレア部門「監督」、ネスト部門「美術」、料理シネマ部門「メイクアップ」、ペルラク部門「フィルム編集」、シネミラ部門「特殊効果」、メイド・イン・スペイン部門「製作」に関連しています。

(上段左から、ニューディレクターズ、オリソンテス・ラティノス、
サバルテギ-タバカレア、ネスト)
(下段左から、料理シネマ、ペルラク、シネミラ、メイド・イン・スペイン)
★第66回 SSIFF 2018にフランスの女優イザベル・ユペール(2003年ドノスティア栄誉賞受賞者)から始まったイベントの顔は、リカルド・ダリンで9人目になります。67回からはドノスティア栄誉賞の受賞者から選ばれています。ペネロペ・クルス(2019)、ウィレム・デフォー(2020)、シガニー・ウィバー(2021)、ジュリエット・ビノシュ(2022)、ハビエル・バルデム(2023)、ケイト・ブランシェット(2024)、昨年はドノスティア栄誉賞の受賞者ではなく、前年師走に急逝したマリサ・パレデスにオマージュが捧げられました。驚いたのは、なんとパレデスが栄誉賞を受賞していなかったことでした。
*イザベル・ユペールの記事は、コチラ⇒2018年09月03日

(マリサ・パレデスを追悼した2025年公式ポスター)

(作品紹介を予定しているオリソンテス・ラティノスのポスター)

(メイド・イン・スペイン部門のポスター)
リカルド・ダリンのキャリア & フィルモグラフィー*サンセバチャンFF26 ② ― 2026年06月27日 15:00
公式ポスターの顔リカルド・ダリンのキャリア&フィルモグラフィー

★第66回サンセバスチャン映画祭2018年のイザベル・ユペールから始まった公式ポスターの顔に今年はアルゼンチンの俳優でプロデューサー、監督のリカルド・ダリンが選ばれました。出演した作品紹介の折にキャリア&フィルモグラフィーを断片的にアップしてきましたが、今回纏めてみました。出演映画は既に3桁、40を超える受賞歴、5歳でTVシリーズにデビューして以来、はや半世紀になります。大衆向けと作家性の強い映画をバランスよく交互に演じてきました。飽きのこない俳優として、国内外の多くの監督に愛され、例えばアドルフォ・アリスタライン、フアン・ホセ・カンパネラ、ファビアン・ビエリンスキー、フェルナンド・トゥルエバ、パブロ・トラペロ、セスク・ゲイ、サンティアゴ・ミトレ、エトセトラ。悪い噂が皆無というわけではありませんが、ラテンアメリカを代表する演技派の一人であることは万人が認めるところでしょう。

(ドノスティア栄誉賞を受賞、65SSIFF2017、ガラにて)
★経歴:1957年ブエノスアイレス生れの69歳、俳優、製作者、監督。両親とも俳優でアルゼンチンのショービジネス界と深い繋がりのある家庭で育った。テレビシリーズ出演は5歳、演劇デビューは両親との共演で10歳、以来テレビや映画での成功にもかかわらず演劇から離れることはない。1990年には舞台演出家としてデビューしています。舞台出演で演技を磨いたダリンの映画デビューは、1972年、カトラノ・カトラニの「He nacido en la ribera」、生れながらのサッカー選手ミゲル・ノタリの少年時代を演じてスタートさせた。フリオ・ポーターの「La carpa del amor」(79)で主演、フェルナンド・シロの「La canción de Buenos Aires」(80)のミュージカル・コメディ、今年4月鬼籍入りしたアドルフォ・アリスタライン初期のロマンチックコメディなど若者向け映画に出演した。1984年、ダビ・リプシックのドラマ「La Rosales」で、エクトル・アルテリオやオスカル・マルティネス、ウリセス・デュモンなどの演技派俳優と共演した。
★演技が注目され始めたのは90年代からで、アルベルト・レッキのデビュー作、スリラー「Perdido por perdido」(93)で心ならずも悪に手を染めてしまう工場経営者を演じた。エドゥアルド・ミニョニャのスペインとの合作「El faro」に出演、本作はゴヤ賞スペイン語外国映画賞1999にノミネートされた作品、更にアルゼンチンの国家破産を目前にしていた時代に撮られた、フアン・ホセ・カンパネラのラブストーリー「El mismo amor, la misima lluvia」で、共演者のソレダード・ビジャミルとアルゼンチン映画批評家協会賞2000銀のコンドルを初めて受賞した(合計7回受賞している)。これは2000年代から始まる国際的な評価を獲得するうえで重要な作品となった。

(フアン・ホセ・カンパネラの「El mismo amor, la misima lluvia」のポスター)
★2000年、ファビアン・ビエリンスキーの「Nueve reinas」にガストン・パウルスと共演、アルゼンチンの金融危機のさなかに詐欺師となった男を好演して不動の地位を確保した。2001年、エドゥアルド・ミニョニャの犯罪スリラーでミゲル・アンヘル・ソラ、ノルマ・アレアンドロなどベテランと共演、本作はゴヤ賞2002のスペイン語外国映画賞を受賞した作品。再びカンパネラのコメディ「El hijo de la novia」にアルテリオやアレアンドロ、ナタリア・ベルベケなどと共演、銀のコンドル他受賞、アカデミー賞2002外国語映画賞ノミネート作品です。
★マルセロ・ピニェイロの「Kamchatka」では、1976年に起きた軍事独裁クーデタから逃亡者となった人権派弁護士を演じた。タイトルの〈カムチャツカ〉は理想郷の代名詞になっている。アカデミー賞のアルゼンチン代表作品でしたがノミネートされなかった。メルセデス・モランやエドゥアルド・ブランコと共演したカンパネラの「Luna de Avellaneda」(04)、ファビアン・ビエリンスキーの「El aura」で剝製師に扮して、ドロレス・フォンシと共演、銀のコンドル、クラリン・エンターテイメント賞、本作もアカデミー賞アルゼンチン代表作品に選ばれている。
★2007年、ルシア・プエンソの「XXY」がカンヌ映画祭併催の「批評家週間」でグランプリを受賞したことで国際映画祭巡りをした。日本でも『XXY』の邦題でラテンビートLBFF07で上映された。10代のインターセックスの娘の父親を演じた。人生の選択権は誰にあるかというのがテーマ、主役を演じたイネス・エフロンが銀のコンドルを受賞、プエンソ監督は国際映画祭の作品賞を数多受賞した。BSスカパーで『XXY~性の意思』として放映された。同年エドゥアルド・ミニョニャが未完のまま遺した「La señal」に主演、マルティン・ホダラと共同で監督デビューを果たした。ディエゴ・ペレッティに銀のコンドル助演男優賞をもたらした。
★2009年、カンパネラのサスペンス・ミステリー「Secreto de sus ojos」が大ヒット、アカデミー外国語映画賞を筆頭に受賞歴は列挙しきれない。銀のコンドルは主なスタッフ、キャストのほぼ全員が受賞するなどした。ダリンに限ると男優賞として、銀のコンドル、ハバナ映画祭、クラリン賞、SESC映画祭(ブラジル)ほか、ノミネートはゴヤ賞2010主演男優賞ほか多数でした。東京で2009年12月に開催された「スペイン映画祭」で『瞳の奥の秘密』の邦題で上映され、翌年夏公開された。同じ映画祭で上映されたフェルナンド・トゥルエバの「El baile de la victoria」(『泥棒と踊り子』)では金庫破りの名人に扮し、こちらはゴヤ賞助演男優賞にノミネートされ、主演・助演のカテゴリーに同時にノミネートされた初の外国人俳優となりました。

(アカデミー外国語映画賞受賞の『瞳の奥の秘密』のポスター)
★2010年代になると、ラテンビート映画祭(LBFF)に代表されるスペイン語ポルトガル語に特化したミニ映画祭での上映が増えるにつれ、公開、ネット配信、DVDなどで良作が字幕入りで鑑賞できるようになった。例えば、パブロ・トラペロの「Carancho」(『カランチョ』LBFF2010)の交通事故専門の弁護士役、「Elefante blanco」(『ホワイト・エレファント』LBFF2012)のスラム地区に派遣された司祭役など、ワールドプレミアされた年に鑑賞できた。ダリンが初めてサンセバスチャン映画祭に参加したのは、ファビアン・ビエリンスキーの「El aura / The Aura」がセクション・オフィシアルにノミネートされた2005年でした。それから9回も訪れています。その代表が2017年に受賞したドノスティア栄誉賞と、2015年にセスク・ゲイの「Truman」での銀貝男優賞受賞でした。

(銀貝男優賞を受賞、SSIFF2015ガラにて)
★2015年のセスク・ゲイ「Truman」(『しあわせな人生の選択』)の製作は、アルゼンチンと合作したスペイン映画、SSIFF2015の銀貝男優賞を共演のハビエル・カマラと受賞、翌年のゴヤ賞では主演男優賞を受賞した。相思相愛の妻フロレンシア・バスとガラに出席していた。勿論助演男優賞はカマラ、意気投合していた犬のトルーマンは撮影後亡くなり、ダリンは1週間以上も涙にくれたのでした。アルゼンチン以外の映画出演には、カンヌ映画祭の常連であるイランのアスガー・ファルハディの「Todos lo saben」(『誰もがそれを知っている』西仏伊合作)がある。ペネロペ・クルスの夫役、経営していた会社が倒産して失業中、ずっと仏頂面で不機嫌でした(笑)。

(ゴヤ賞2016主演男優賞のトロフィーを手にしたリカルド・ダリン)
★サンティアゴ・ミトレとは、「La cordillera」(『サミット』)のアルゼンチン大統領役、軍事クーデタの歴史に基づいた法廷ドラマ「Argentina, 1985」(『アルゼンチン1985』)の主任検事役でタッグを組んだ。本祭ではペルラス部門の観客賞を受賞、アルゼンチンに初めてゴールデングローブ賞のトロフィーをもたらして大ヒットした。現在アルゼンチンは、他のラテンアメリカ諸国同様、国家が文化芸術に敬意をはらわない国になっており、映画界も苦戦している。国際映画祭でのノミネートが先細りしており、カンヌ映画祭など、ここ数年ノミネートなしが続いている。

(ミトレの軍事政権裁判劇『アルゼンチン1985』、共演のピーター・ランサニと)
★主なフィルモグラフィー(ゴチック体は当ブログで紹介した作品)
1972「He nacido en la ribera」ミュージカル・コメディ、監督カトラノ・カトラニ
1977「Asi es la vida」コメディ、同エンリケ・カレラス
1979「La carpa del amor」ミュージカル・コメディ、同フリオ・ポーター、主演
1980「La playa del amor」ロマンチックコメディ、同アドルフォ・アリスタライン
1980「La canción de Buenos Aires」ミュージカル・コメディ、同フェルナンド・シロ
1980「La dicoteca del amor」ロマンチックコメディ、同アドルフォ・アリスタライン
1984「La Rosales」ドラマ、同ダビ・リプシック
1987「Revancha de un amigo」スリラー、同アルベルト・レッキ
1987「The Stranger / Traición y venganza」(米、英語)スリラー、ミステリー
同アドルフォ・アリスタライン
1993「Perdido por perdido」スリラー、同アルベルト・レッキ、
SSIFFニューディレクター部門、ダリンは不参加
1998「El faro」(西合作)ドラマ、同エドゥアルド・ミニョニャ
1999「El mismo amor, la misima lluvia」ドラマ、同フアン・ホセ・カンパネラ
アルゼンチン映画批評家協会賞2000銀のコンドル初受賞
2000「Nueve reinas / Nine Queens」『華麗なる詐欺師たち』犯罪スリラー、
監督ファビアン・ビエリンスキー、銀のコンドル、クラリン・エンターテイメント賞、
サン・ジョルディ賞(外国人俳優部門)、ビアリッツ・ラテンアメリカ・シネマ男優賞
2001「La fuga」犯罪スリラー、同エドゥアルド・ミニョニャ、SSIFFコンペティション部門
2001「El hijo de la novia」(西合作)コメディ、同フアン・ホセ・カンパネラ、
銀のコンドル、サン・ジョルディ(外国人俳優部門)、クラリン・エンターテイメント賞
2002「Kamchatka」ドラマ、同マルセロ・ピニェイロ
2004「Luna de Avellaneda」(西合作)コメディ・ドラマ、同フアン・ホセ・カンパネラ
2005◎「El aura / The Aura」(西仏合作)犯罪スリラー、同ファビアン・ビエリンスキー
銀のコンドル、クラリン賞受賞
2006「La educación de las hadas」(仏・ポルトガル・西合作)ドラマ、
同ホセ・ルイス・クエルダ
2007「XXY」『XXY~性の意思』心理ドラマ、同ルシア・プエンソ
2007「La señal」犯罪ドラマ、共同監督リカルド・ダリン&マルティン・ホダラ、主演
2009◎「Secreto de sus ojos / The Secret in Their Eyes」『瞳の奥の秘密』ドラマ
(西合作)、同フアン・ホセ・カンパネラ
*作品紹介は、コチラ⇒2014年08月09日
2009「El baile de la victoria / The Dance and the Thief」『泥棒と踊り子』
(スペイン映画)、同フェルナンド・トゥルエバ
2010「Carancho」『カランチョ/ハゲ鷹と女医』犯罪スリラー、監督パブロ・トラペロ
SSIFFペルラク部門、LBFF2010上映
2011「Un cuento chino」コメディ、同セバスティアン・ボレンステイン、
*簡単な作品紹介は、コチラ⇒2020年01月18日
2012◎「Elefante blanco」『ホワイト・エレファント』社会派ドラマ、同パブロ・トラペロ
LBFF2012オープニング作品、スラム地区に赴任する司祭役
2012「Una pistola en cada mano」コメディ、同セスク・ゲイ
*簡単な作品紹介は、コチラ⇒2017年08月04日
2013「Tesis sobre un homicidio」『ある殺人に関するテーゼ』(西合作)サスペンス、
元弁護士の教師役、同エルナン・ゴルドフリード、WOWOW2013放映、2014年DVD発売
2013「Séptimo」『ロスト・フロア』(西合作)サスペンス、同パチ・アメスクア、Netflix、
公開
2014◎「Relatos salvajes」『人生スイッチ』ブラック・コメディ(第4話「発破屋」主演)
同ダミアン・シフロン、公開
*主な作品紹介は、コチラ⇒2015年07月29日
2015◎「Truman」『しあわせな人生の選択』(スペイン=アルゼンチン)ドラマ、
同セスク・ゲイ、SSIFF2015銀貝男優賞、ゴヤ賞主演男優賞受賞、他受賞歴多数、公開
*作品紹介は、コチラ⇒2016年01月09日/2017年08月04日
2016「Capitán Kóblic」『コブリック大佐の決断』犯罪スリラー、
同セバスティアン・ボレンステイン
*作品紹介は、コチラ⇒2016年04月30日
2017「Nieve negra」『黒い雪』(西合作)犯罪ミスリラー、同マルティン・オダラ、Netflix
2017◎「La cordillera」『サミット』スリラー、同サンティアゴ・ミトレ
*作品紹介は、コチラ⇒2017年05月18日/同年10月25日
2018「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(西仏伊合作)スリラー・ドラマ、
同アスガー・ファルハディ、カンヌ映画祭2018オープニング作品
*作品紹介は、コチラ⇒2018年05月08日/2019年06月23日
2018◎「El amor menos pensado」ロマンティック・コメディ、同フアン・ベラ、出演・製作
SSIFFオープニング作品
*作品紹介は、コチラ⇒2018年08月14日
2019◎「La odisea de los giles」『明日に向かって笑え!』アドベンチャー・コメディ、
同セバスティアン・ボレンステイン、出演・製作
*主な作品紹介は、コチラ⇒2020年01月18日
2022◎「Argentina, 1985」『アルゼンチン1985』法廷ドラマ、同サンティアゴ・ミトレ、
主演・製作、アルゼンチン初のゴールデングローブ賞受賞作品、プライムビデオ
*主な作品紹介は、コチラ⇒2022年11月23日
2024「Descansar en paz」『安らかに眠れ』同セバスティアン・ボレンステイン、製作のみ、
Netflix
*作品紹介は、コチラ⇒2024年04月16日/同年04月30日
2025「El Eternauta」『エテルナウタ』(7話、TVシリーズ、SF)
クリエーター、ブルーノ・スタグナロ
イベロアメリカ・プラチナ賞2026男優賞(TVシリーズ部門)、Netflix
★主なフィルモグラフィーは以上です。ラテンアメリカの俳優としては知名度もずば抜けています。受賞歴は作品紹介にアップしています。なお◎印はサンセバスチャン映画祭に参加した年です。2019年には初めて共演した息子チノ・ダリンと現地入りしました。最近では若い人から「リカルド・ダリンってチノ・ダリンのパパなんだってよ」といわれる由、いえいえ、それはまだ早い、「チノがリカルド・ダリンの息子」です。

(現地入りしたダリン親子、SSIFF2019,フォトコール)
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