第5回イベロアメリカ・フェニックス賞2018*ノミネーション発表 ― 2018年09月30日 17:30
ネットフリックスの存在が大きくなってきたフェニックス賞2018
★去る9月24日、第5回イベロアメリカ・フェニックス賞2018のノミネーション発表がメキシコシティでありました。カテゴリーと解説に齟齬があったりカテゴリーの数が違ったりと、サイトでノミネーション個数にばらつきがありますが、当たらずとも遠からずでいくと、最多ノミネーションは、コロンビアのチロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴの「Pájaros de verano」の9個、アルゼンチンのルクレシア・マルテルの『サマ』の8個でした。作品・監督・脚本・男優女優・撮影・・・と両作とも主要カテゴリーに選ばれています。
★イベロアメリカとはいえ、旧宗主国のスペインとポルトガルは影が薄く、第4回までの作品賞はすべてラテンアメリカ映画が制しています(第1回メキシコの『金の鳥籠』、第2回から4回までの『ザ・クラブ』、『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』、『ナチュラルウーマン』と連続でチリが受賞しています)。今年スペインとポルトガルは主要カテゴリーのノミネーションがゼロでした。

(イベロアメリカ・フェニックス賞ノミネーション発表に集まったシネアストたち)
★チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴの「Pájaros de verano」は、カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」のオープニング作品です。チロ・ゲーラ映画の製作者クリスティナ・ガジェゴの初監督作品です。2016年には夫婦二人三脚で『彷徨える河』などの力作を撮っています。9カテゴリーの内訳は、作品・監督・脚本・撮影・編集・美術・衣装・オリジナル音楽、ゴッドマザーを演じたカルミナ・マルティネスが女優賞にノミネートされた(美術がないサイトあり)。
*「Pájaros de verano」の作品紹介は、コチラ⇒2018年05月18日

(女優賞ノミネートのカルミナ・マルティネスとラウラ・モラの「Matar a Jesús」から)
★ルクレシア・マルテルの『サマ』は、ベネチア映画祭2017のコンペティション外上映、国際映画祭に数多く出品され、ラテンビートでも昨年上映されました。しかし批評家の高い評価にもかかわらず今もって作品賞は受賞しておりません。イベロアメリカ諸国の公開が殆ど2018年だったことで、今年のノミネーションになりました。8カテゴリーの内訳は、作品・監督・脚本・撮影・編集・美術・録音とダニエル・ヒメネス・カチョが男優賞にノミネートされました。
*『サマ』の主な紹介記事は、コチラ⇒2017年10月13日

(サマを演じ男優賞ノミネートのダニエル・ヒメネス・カチョ、映画から)
★2作に続いて、メキシコのアロンソ・ルイスパラシオスの第2作「Museo」の6個です。その内訳は、作品・監督・撮影・オリジナル音楽・録音、ガエル・ガルシア・ベルナルの男優賞です。ベルリン映画祭2018脚本賞受賞作品。
*「Museo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月19日

(男優賞ノミネートのガエル・ガルシア・ベルナル、映画から)
★同じくパラグアイのマルセロ・マルティネシの「Las herederas」の6個です。その内訳は、作品・監督・脚本・撮影・美術・録音、ベルリン映画祭で女優賞を受賞したアナ・ブルンはノミネートされませんでした。ベルリン映画祭2018のアルフレッド・バウアー賞と国際映画批評家連盟賞受賞作品、サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門オープニング作品、ラテンビート2018上映作品です。
*「Las herederas」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月16日

(監督とアナ・ブルン)
★作品賞・監督賞のノミネーションだけアップしておきます。
◎作品賞(7作品)
「Alanis」監督アナイ・ベルネリ、アルゼンチン
「As boas maneiras」同フリアナ・ロハス&マルコ・ドゥトラ、ブラジル
「Cocote」同ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス、ドミニカ共和国
「Las herederas」同マルセロ・マルティネシ、パラグアイ
「Museo」同アロンソ・ルイスパラシオス、メキシコ
「Pájaros de verano」同チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ、コロンビア
「Zama」同ルクレシア・マルテル、アルゼンチン
◎監督賞(7人)
アナイ・ベルネリ「Alanis」
フリオ・エルナンデス・コルドン「Cómparame un Revólver」メキシコ
マルセロ・マルティネシ「Las herederas」
ラウラ・モラ「Matar a Jesús」コロンビア
アロンソ・ルイスパラシオス「Museo」
チロ・ゲーラ&クリスティナ・ガジェゴ「Pájaros de verano」
ルクレシア・マルテル「Zama」
★という具合でスペイン映画は作品賞にも監督賞にも見当たりませんでした。ドキュメンタリー部門にゴヤ賞2018受賞の「Muchos hijos, un mono un castillo」、男優賞に「El autor」のハビエル・グティエレス、脚本賞に「Petra」のハイメ・ロサレス、美術賞に「Handia」と「La libreria」他がありました。
★TVシリーズ部門ではネットフリックスの存在の大きさが際立っています。昨年も『ナルコス』などが受賞しましたが、今年もノミネーション5作品のうち3作がネットフリックスがらみです。スペインの「La casa de papel」(『ペーパー・ハウス』シーズン2)、メキシコ=米の「Narcos」(『ナルコス』シーズン3)、アメリカ製作の「Luis Miguel:La serie」(シーズン1)の3作です。ルイス・ミゲルというのは一名メキシコの「太陽El Sol」と言われるほどのプエルトリコ生れのメキシコの歌手、現在活躍中の歌手のビオピック、グラミー賞5回受賞でハリウッドのウォーク・オブ・フェームに星が刻まれています。しばらく活動を休むなど謎の多い歌手ですが昨年復活しました。ルイス・ミゲルをディエゴ・ボネタ、歌手だった父親をオスカル・ハエナダが演じています。シーズン1(13話)が2018年4月からメキシコ、米国、スペイン、生れ故郷プエルトリコでNetflix同時配信されました(日本は未配信のようです)。

(『ペーパー・ハウス』から)

(『ナルコス』シーズン3)

(ディエゴ・ボネタ、「Luis Miguel:La serie」から)
★この映画賞の作品選考はメキシコの「シネマ23」が中心になって行なわれ、イベロアメリカ映画アカデミー連盟、メキシコ映画アカデミーが参画、第16回モレリア映画祭(10月20~28日)で受賞結果発表があり、ガラは11月7日、メキシコシティのエスペランサ・アイリス・シティシアターで開催される予定。
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