国民的歌手ラファエルにマラガの特別賞*マラガ映画祭2023 ③ ― 2023年03月01日 15:28
国民的歌手ラファエルに特別賞の一つビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞

★1月26日、60年の輝かしいキャリアを誇るラファエル・マルトスに、マラガ映画祭の特別賞の一つビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞授与の発表がありました。1943年ハエン県リナレス生れのスペインの大歌手は愛称〈ラファエル〉としてより広く知られていますが、俳優としての才能も発揮、祖父母から孫世代まで、クラシックからロックまで幅広く活躍、スペインで最も愛されているミュージシャンにしてスター、彼の遺産は国の遺産とまで称されています。サン・アントニオ教会の聖歌隊に入ったのはわずか4歳、ザルツブルグ音楽祭で子供の声賞を受賞したのは9歳でした。1962年ベニドルム歌唱フェスティバルの優勝を機にプロとしての活躍が始まりました。
★俳優としてミュージカル映画出演のかたわら、テレビの「ラファエル・ショー」や「ラファエルの世界」のシリーズ番組に出演、その驚異的なボイスと彼独特の個性的なスタイルで視聴者を魅了していった。それは国内だけでなくニューヨークのカーネギーホール、ラジオシティ・ミュージックホール、マディソン・スクエア・ガーデン、世界のアーティストが出演するパリのオランピア劇場、メキシコで最も格式の高い劇場である芸術院宮殿、ロンドンのロイヤル・アルバートホールの舞台にも立った。大きな成功と才能に溺れることなく、常に新しい聴衆を開拓してきた受賞者は、後進の若いアーティストたちの鑑となっている。
★映画出演について触れると、1965年、マリオ・カムスの長編3作目となるミュージカル・コメディ「Cuando tú no estás」でデビューした。サンタンデール出身のカムスは2021年秋86歳で鬼籍入りしてしまいましたが、60年代に登場した重要な監督の一人です。ほかにラファエルを主役にしたミュージカル「Al ponerse el sol」(67)と「Digan lo que digan」(68)の計3本を立て続けに撮っている。同時期に撮った「Con el viento solano」はカンヌ映画祭1966コンペティション部門にノミネートされ、本邦でも1984年開催のスペイン映画祭で『厄介者』の邦題で上映されている。ほかにベルリン映画祭1982金熊賞受賞の『蜂の巣』、カンヌ映画祭1984審査員スペシャル・メンション受賞の『無垢なる聖者』などが代表作でした。

(デビュー作「Cuando tú no estás」のポスター)
★カムスの後を継いだのがビセンテ・エスクリバ、1969年の長編3作め「El golfo」と、4作目ミュージカル「El ángel」、5作めドラマ「Sin un adiós」(70)の3本を撮っている。1913年バレンシア生れと年齢的には年長ですが、エスクリバはバレンシア大学で哲学と文学の博士号を持っており、監督だけでなく作家、脚本家、製作者、教育者といくつもの顔を持っていました。映画界入りは遅く脚本家として1948年にスタートさせている。監督デビューは60年代に入ってからで、90年代にはTVシリーズでヒット作を飛ばしていた監督。

(ミュージカル「El golfo」のポスター)
★1973年、ハビエル・アギレ監督のドラマ「Volveré a nacer」を最後に銀幕から遠ざかるが、今世紀に入ってから、バスク出身の鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアの「Balada triste de trompeta」(10)にヴォイス出演している。本作は『気狂いピエロの決闘』の邦題で公開された。2015年には同監督のヒット作「Mi gran noche」に久々に主演してその健在ぶりを示した。ラテンビート映画祭で『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』のタイトルで上映されました。マリオ・カサス、ペポン・ニエト、ブランカ・スアレス、カロリナ・バング、カルロス・アレセス、カルメン・マチ、サンティアゴ・セグラと次々に登場するスターたちのドタバタ演技にファンは大喜びでした。

(上段左がラファエル、右がマリオ・カサス)

(『グラン・ノーチェ』のプレゼンテーション中のラファエル)
★3月12日に開催される「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞サークル」で、カムスの「Cuando tú no estás」と、エスクリバの「El golfo」の上映が決定しており、当日特別賞の授与式が予定されているようです。
★本賞以外の映画関係の受賞歴として、ACE賞1970、1982、1984、1992受賞、スペイン音楽賞2006,イベロアメリカ・プラチナ賞2019栄誉賞、長年の功績に対してラジオ・オレ賞、2018年マドリード市の文化芸術に貢献した人に贈られるHijo Adoptivo de la ciudad de Madrid いわゆる金のメダルに任命された。彼は上述したようにリナレス生れですが、生後9ヵ月でマドリードに移住、人生の重要な節目、例えば歌手デビュー、初コンサート、初レコード契約、映画デビュー、結婚、すべてがマドリードで始まっているマドリっ子です。ほかに2022年ビルボード生涯功労賞(ラテンミュージック)を受賞、国際ツアーを再開している。パブロ・ロペスによって作曲、プロデュースされた ”Victoria” を発表します。

(マドリード市長マヌエラ・カルメナと金のメダルを首にかけた受賞者)

(ラ・マンチャ出身のアルモドバルも同時に受賞)
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