パスカル・ランベールの「Hermanas」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑬2020年09月24日 10:53

     メイド・イン・スペイン――TVシリーズ「Escenario 0」の第1作「Hermanas

 

     

  (イレネ・エスコラルとバルバラ・レニーを配置した「Hermanas」のポスター)

 

HBOHome Box Office)ヨーロッパ製作のTVシリーズEscenario 0(全6作)の第1パスカル・ランベールディエゴ・ポスティゴHermanasがメイド・イン・スペイン部門で上映されました。フランスはニース生れの劇作家、舞台演出家、監督のランベールは来西しなかったようで、フォトコールに現れた監督はポスティゴだけでした。ポスティゴはブリュッセル生れだがスペインで活躍している。本作はもとはフランスの舞台で演じられていた作品で、スペインではイレネ・エスコラルバルバラ・レニーが姉妹を演じていた。二人以外の女優も演じているようです。しかしコロナによるパンデミックで劇場が閉鎖され、テレビ化の企画が持ち上がって撮られた。全6作は監督も出演者もそれぞれ異なるが、イレネ・エスコラルは3作に出演している。

    

     

                         (パスカル・ランベールを囲んで)

 

    

      

     (イレネ・エスコラルとバルバラ・レニー、「Hermanas」のフォトコール、920日)

 

            

 (マドリードのEl Pavón Kamikaze劇場のポスター、201812月)

 

 

 HermanasTVシリーズEscenario 0の第1話)

製作:HBO EUROPE

監督:パスカル・ランベール、ディエゴ・ポスティゴ

脚本:パスカル・ランベール

撮影:サンティアゴ・ラカホ

編集:マルタ・ベラスコ

音楽:Sin Música

プロデューサー:ミゲル・サルバト

 

データ:製作国スペイン、2020年、89分、配給HBO ESPAÑA

キャスト:バルバラ・レニー、イレネ・エスコラル

ストーリー:二人の姉妹のあいだに起きる無数の対立が描かれ、非難と愛を絡ませた冷酷なストーリーが展開される。同じ肉体から発せられる二つの存在のあいだで結束し敵対する。からだをぶつけ合っての死闘。これらの姉妹は私自身の姿であり、我々自身がそれぞれ無数に持っているものである。この無数とは強要、真実、闘いと呼ばれるものである。

      

★日本で問題化される家族の対立では、姉妹より自分の果たせなかった夢を一人娘に託す母と娘のケースが多い。二人というのは冷静な中立者がいないから社会が成立しない。家族間の対立は狭い密封された空間で起きるから表面化するのに時間がかかる。憎しみと愛が複雑に絡み合ってどうしても深刻化する。夫婦なら別れることも可能だが親子はそう簡単にいかない。両親からも世間からも暗黙のうちに優劣が比較されがちな二人姉妹はこじれると収拾がつかない。3人以上いれば2人が対立しても残る一人が仲介役となる。映画より舞台のほうが面白そうです。

 

             

           (ぶつかり合う二人の姉妹、バルバラとイレネ)

 

 

★姉役のバルバラ・レニー(マドリード1984)は、本邦ではカルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』で知名度を上げた女優。マドリード生れだが、両親がアルゼンチンの軍事独裁政権を逃れてスペインに亡命中に生れた。その後、両親と一緒に帰国したので幼少期はアルゼンチンで育った。以前キャリア&フィルモグラフィーを紹介したことがあるので詳細は割愛するが、当時は『マジカル・ガール』で共演したイスラエル・エレハルデが相思相愛のパートナーでしたが、2017年に関係を解消して、現在は共同監督のディエゴ・ポスティゴがパートナー、彼の娘二人とマドリードで暮らしている。

バルバラ・レニーの主なキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20150327

 

ディエゴ・ポスティゴは、2005年にアントニア・サン・フアンと共同監督した短編La Chinaがニューヨークシティ短編映画祭作品賞、パルマ・スプリング短編映画祭審査員賞を受賞、Run a Way12)、Ruido13)などの短編を撮っており、海外での受賞歴多数。2017年二人の娘を残して乳がんで亡くなったビンバ・ボゼーと結婚していた(200613)。ローマ生れのモデル出身の女優、スペイン映画に出演している不思議な魅力を放つ女性だった。祖母はフアン・アントニオ・バルデムの『恐怖の逢びき』のヒロインを演じたルチア・ボゼーです。バルバラはポスティゴの家族(娘2人)と一緒に暮らしており、彼のティーンエイジャーになった長女ドラも、最近映画デビューした。

 

   

                      (幸せそうなバルバラとポスティゴ)

 

     

   (『ペトラは静かに対峙する』のポスターを背に、マドリード公開201810月)

 

イレネ・エスコラル(マドリード1988)は、女優で最近脚本も執筆する才媛。19世紀から続く舞台俳優の名門一家グティエレス・カバの血を引く。大叔母フリア・グティエレス・カバ、大伯父エミリオ・グティエレス・カバは、共にゴヤ賞やマラガ映画祭の特別栄誉賞の受賞者。祖母イレネも大女優だったが1995年に死去している。映画、TVシリーズ、舞台と引っ張り凧、

グティエレス・カバ一族の紹介記事は、コチラ20190317

 

    

              (左から、大叔父エミリオ、イレネ・エスコラル、大叔母フリア)

   

      

         (マラガ映画祭2019特別賞受賞の大叔母フリアとイレネ)

 

★カルロス・サウラやビセンテ・アランダの作品に脇役で出演しはじめ、ホセ・ルイス・クエルダの話題作「Los girasoles ciegos」(07)、アルバロ・フェルナンデス・アルメロのコメディ『迷えるオトナたち』14Netflix)、コルド・セラの「Gernika」(16)、イレネが主役を演じたララ・イサギレのUn otoño sin Berlin」が、サンセバスチャン映画祭2015でイリサル賞を受賞して注目された。翌2016年のゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル賞の新人女優賞も受賞した。他にNetflix関連ではサム・フエンテスの『オオカミの皮をまとう男』17)、マテオ・ヒルの『熱力学の法則』18)などが字幕入りで観ることができる。

『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ20180402

 

★目下の話題作は今年から始まったTVシリーズのDime quién soy9話)で主役を演じている。またHBO EUROPE製作のTVシリーズEscenario 0」では、ナオ・アルベトマルセル・ボラスMammónと、カルラ・シモンVania2作に出演、バルバラ・レニー他と脚本も共同執筆している。前者にはカルメン・マチやルイス・トサール、後者にはアリアドナ・ヒルやルイス・ベルメホが共演している。

 

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2020/09/24/9298793/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。