「ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞」授与式*マラガ映画祭2019 ②2019年03月17日 17:00

   特別賞第1弾―フリア・グティエレス・カバのビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞

 

   

 

          

        (メイン会場セルバンテス劇場前の人だかり、2019315日)

 

★マラガ映画祭2019の開会式はメイン会場テアトロ・セルバンテスで開催されました。8時開催にもかかわらず、明るいうちから劇場前は赤絨毯を踏むセレブたちを待つファンでいっぱい、次々に到着するシネアストたちも気軽にスマホにおさまっていました。開会式司会者ルイス・サエラの「マラガはもっとも輝かしいスペインの映画祭の一つ、映画の質の高さを競い合う国際的な映画祭としても衆目の的になっています」という挨拶で幕を開けました。ルイス・サエラ(サンティアゴ・デ・コンポステラ1966)はロドリゴ・ソロゴジェンEl reinoでゴヤ賞2019助演男優賞を受賞したばかり、1987年、バジェ=インクランの戯曲をホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスが映画化した『聖なる言葉』でデビュー、数々のTVシリーズに出演している。いずれEl reino」でご紹介したい。

 

          

          (開会のスピーチをする俳優ルイス・サエラ)

  

★本日もっとも感動的だったのは、特別名誉賞の一つビスナガ・シウダ・デル・パライソ」賞の授与式でした。この賞は2015年から始まり、過去の4人の受賞者は、フリエタ・セラノエミリオ・グティエレス・カバ(フリアの弟)、フィオレリャ・ファルトヤノモニカ・ランダルです。今年は不屈の精神と疲れを知らない長い女優人生を歩んだ女性に光が当たりました。黒のパンタロン・スーツの受賞者フリア・グティエレス・カバ(マドリード1932)は、86歳という年齢にはとても思えない若々しさで登壇しました。(キャリア&フィルモグラフィーは後述)。こんなに颯爽と凛としていられるなら「86歳まで生きていても悪くない」と感じさせる爽やかさだった。「映画が大好きで小さいときから女優を夢見ていましたが、映画は生きていくうえで避けられない孤独を癒す仲間でした」とスピーチした。

 

              

          (颯爽と登壇したフリア・グティエレス・カバ)

 

★「映画は私に喜びとチャンスを与えてくれた」と受賞者は心境を吐露した。彼女にとって如何に映画が重要であったかをセルバンテス劇場を埋め尽くした人々と共有した。映画の黎明期から共に歩んできた彼女と同世代の俳優たちにとって映画はとても意味のあることでした。映画は架空の世界ではあっても素晴らしいものであったと語った。彼女の家族は19世紀から舞台俳優として有名な一族ですが、当時女優になることは、品位を落とすとして非常に厳しいものがあった。そのように評価されることのなかった女性たち、彼女を支えてくれた家族、仲間たちへの感謝が述べられた。

 

             

         (受賞の喜びを語るフリア・グティエレス・カバ)

 

★フィナーレは、今年のオープニングとクロージングの両方に主演しているダニ・ロビラにマラガの特別栄誉のビスナガのトロフィーが授与された。彼は前回ご紹介したようにマラガが生れ故郷、マラガ市の親善大使も務めていることが評価されたようです。まさに故郷に錦を飾ることができました。オープニング作品はコンペティション外のアレホ・フラの長編第2Taxi a Gibraltarというアクション・コメディ、共演のイングリッド・ガルシア=ヨンソンも「アンダルシアのマラガ才能賞」を受賞するとアナウンスされています。クロージング作品は、これもコンペティション外ですが、アルバロ・ディアス・ロレンソのコメディLos Japónです。タイトルから想像できるように17世紀初頭の日本に題材をとっています。お相手の女優はマリア・レオンです。両作とも字幕入りで観られるかな、期待しています。

 

         

       (特別栄誉のビスナガのトロフィを手にしたダニ・ロビラ)

 

    フリア・グティエレス・カバのキャリア&フィルモグラフィー

 

★彼女の一族は150年前の曾祖父パスクアル・アルバの時代から舞台俳優一家だった。共に俳優だったエミリオ・グティエレス・エステバンを父にイレネ・カバ・アルバを母に、1932年マドリードで生まれた。上記した2016年の受賞者エミリオ・グティエレス・カバは弟、姉妹イレネと3人姉弟。祖母、伯父伯母、従兄弟などに俳優や映画製作者を多数いる。1964年、舞台演出家のマヌエル・コジャド・アルバレスと結婚、夫は2009年に鬼籍入りしている。

 

★舞台デビューは1951年、1960フアン・アントニオ・バルデムA las cinco de la tardeで映画デビュー、サン・ホセ賞スペイン映画女優賞を受賞した。以降舞台中心だが併行して映画やTVシリーズにも出演している。他に同監督のNunca pasa nadaでシネマ・ライターズ・サークルCEC1963女優賞とフォトグラマス・デ・プラタ俳優賞、ホセ・ルイス・ガルシYou're the Oneuna historia de entonces)」00)でゴヤ賞2001助演女優賞CEC2001助演女優賞を受賞している。本作では監督賞他を受賞した話題作だった。フェルナンド・パラシオスLa gran familia63)が『ばくだん家族』の邦題で公開されているほか、ギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』(10)にも出演している。

  

  

  (最もエレガントと称賛されたアルマーニを着たフリア、ゴヤ賞2001助演女優賞)

 

★演劇界の最高賞と言われるMax栄誉賞2012年に受賞している。2017年にはアメリカの劇作家A.R.バーニーの新バージョン「Love Letters」(スペイン題Cartas de amor)を、84歳にして主役を演じて話題になった。共演はミゲル・レリャン。

 

       

                      (Max栄誉賞受賞のフリア、2012年)

 

       

 (Cartas de amor」の共演者ミゲル・レリャンとフリア、20173月)

   

TVシリーズとしては、主役を演じた「Buenas noches, senores」(72)のあとブランクがあったが、今世紀に入ってからLos Serrano0308)、Águila Roja1112)、Estoy vivo1718)などに出演している。疲れを知らない女優と呼ばれる所以です。

 

       

 (左から3人目フリア、アントニオ・レシネス、ベレン・ルエダなど、Los Serrano

 

      

     (左から、弟エミリオ、売り出し中の孫イレネ・エスコラル、フリア)