チリのクリストファー・マレーの『魔術』*東京国際映画祭2023 ― 2023年10月16日 16:48
正義を求める少女の物語『魔術』はファンタジー・ドラマ
★ワールド・フォーカス部門(ラテンビートFF共催)で上映されるクリストファー・マレーの『魔術』は、1880年、チリのレクタ・プロビンシア団体のメンバーが使ったという〈魔術〉が告発された実話にインスパイアされた映画です。18世紀から20世紀初頭まで実際に存在していた組織のようです。チリの先住民はペルーやメキシコのように多くありませんが、マプチェ・ドゥングン語を話すマプチェ族が現在でも減少したとはいえ約70万人を数え、これは全人口の4%に当たります。本作でもスペイン語、ドイツ語の他にマプチェ・ドゥングン語が使用されている。その抵抗の歴史は現在でも息づいており、チリの文化や政治の多様性に影響を与えている。2021年から「先住民の日」(6月20日)が設けられ、日本の「山の日」や「スポーツの日」のように日曜日と重なるとずれる移動祝日となった。
★ジャンルはファンタジーに分類されているようですが、上記のような背景を頭に入れて観ると、また違った見え方があるのではないかと思います。本作の舞台チロエはロス・ラゴス州に属するチリでも2番目に大きな島です。今回コンペティション部門で上映される、フェリペ・ガルベスの『開拓者たち』の舞台になるティエラ・デル・フエゴが最大の島、こちらは先住民セルクナム(またはオナス)族のジェノサイドが語られ、チリ共和国の歴史の一端が描かれている。これは偶然ではなく、若い監督たちが自国の負の歴史に目を向け始めているのかもしれません。
『魔術』(「Sorcery / Brujería」)
データ:製作国チリ=メキシコ=ドイツ、2023年、スペイン語・マプチェドゥングン語・ドイツ語、ファンタジー・ドラマ、100分、製作はBord Cadre Films、Fabula、Match Factory Productions。
映画祭・受賞歴:サンダンス映画祭2023ワールド・フィルム・ドラマ部門でプレミア、ヨーテボリFF国際コンペティション正式出品、トゥールーズ(シネラティノ)FF作品賞受賞、富川(プチョン)ファンタスティックFF作品賞受賞、シッチェスFFファンタスティック部門正式出品、ミュンヘンFF、他
監督:クリストファー・マレー(マーレイ、サンティアゴ1985)、脚本はパブロ・パレデスとの共同執筆、長編3作目。製作者にはFabulaのパブロ&フアン・デ・ディオス・ラライン兄弟が参画している。撮影マリア・セッコ、編集パロマ・ロペス、音楽レオナルド・ハイブルム。監督キャリア&フィルモグラフィーについては、デビュー作『盲目のキリスト』(ラテンビートFF2016)で紹介しています。
*監督キャリア&フィルモグラフィー紹介記事は、コチラ⇒2016年10月06日
キャスト:バレンティナ・ベリス・カイレオ(ロサ)、ダニエル・アンティビロ(マテオ・コニュエカル)、セバスティアン・ヒュルク(TIFF表記フールク、農場主ステファン)、フランシスコ・ヌニェス(ロサの父親フアン)、ダニエル・ムニョス(副代理人アセベド)、ネディエル・ムニョス・ミラロンコ(アウロラ・キンチェン)、アニック・ドゥラン(ステファンの妻アグネス)、イケル・エチェベルス(ステファンの息子フランツ)、他
ストーリー:1880年、チリの離島チロエ、先住民の少女ロサはドイツ人の入植者が経営する農場に父親と一緒に住み込みで働いている。ある日のこと、農場主が不手際を理由に父親を無残な方法で殺害したとき、ロサは正義を求めて、強力な魔術師の組織の王に助けを求めに出発します。
(ロサ)
(農場主ステファン)
(ステファンの家族)
(ロサと副代理人アセベド)
(ロサとアウロラ・キンチェン)
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