金貝賞を争うセクション・オフィシアル*サンセバスチャン映画祭2018 ④2018年07月25日 11:43

             金貝賞にイシアル・ボリャイン、イサキ・ラクエスタなどが参入!

 

    

★去る720日、サンセバスチャン映画祭SSIFFの総ディレクター、ホセ・ルイス・レボルディノス、コミュニケーション責任者ルス・ペレス・デ・アヌシタにより、イシアル・ボリャイン、イサキ・ラクエスタ、ロドリゴ・ソロゴジェン、カルロス・ベルムトなどベテラン勢が、金貝賞を競うコンペティション部門に参入することがアナウンスされました。他にコンペティション外サバルテギ-タバカレラペルラス、前回アップのニューディレクターズを含めて、スペインの制作会社が手掛ける作品はトータルで19作品となりました。まず金貝賞を争うセクション・オフィシアルにノミネートされた4作品の基本データのご紹介です。4作というのは例年通りの本数、4監督ともコンペティション部門には複数回登場、金貝賞受賞者も混じっております。

 

         セクション・オフィシアル(コンペティション)

 

 El Reino  監督:ロドリゴ・ソロゴジェン(スペイン)

キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(マヌエル・ロペス・ビダル)、モニカ・ロペス、ホセ・マリア・ポウ、ナチョ・フレスネダ(パコ)、アナ・ワヘネル、バルバラ・レニー、ルイス・サエラ、フランシスコ・レイェス、マリア・デ・ナティ、パコ・レビリャ、ソニア・アルマルチャ、ダビ・ロレンテ、アンドレス・リマ、オスカル・デ・ラ・フエンテ・マヌエル

 

物語:マヌエル・ロペス・ビダルは、ある政党の自治州副書記官として影響力をもっており、国政への飛躍が期待されていた。しかし親友の一人パコと共に汚職の陰謀に巻き込まれ、秘密漏洩から生き残りをかけての悪のスパイラルに陥っていく・・・

 

監督紹介ロドリゴ・ソロゴジェン(ソロゴイェン、マドリード、1981)のノミネーションは、2016年の長編3作目『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強盗殺人事件』(Que Dios nos perdoneに続いて2回目、脚本賞を受賞している(イサベル・ペーニャとの共同執筆)。ゴヤ賞2017では主役のロベルト・アラモが主演男優賞を受賞した。短編Madreでゴヤ賞2018短編映画賞を受賞、マラガ映画祭2018「マラガ才能賞 エロイ・デ・ラ・イグレシア」に早くも選ばれるなど活躍が目立っている。4作目となるEl Reinoは、前作にも主演したアントニオ・デ・ラ・トーレを起用、汚職に巻き込まれていく政治家を演じる。本作の脚本もイサベル・ペーニャとの共同執筆。

 

トロント映画祭2018「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」正式出品作品

Que Dios nos perdone」の作品紹介は、コチラ20160811

 キャリア&フィルモグラフィーについては、コチラ20180326

 短編「Madre」については、コチラ20180210

 

    

 

 

 Entre dos aguas (「Between Two Waters」) 監督:イサキ・ラクエスタ(スペイン)

キャスト:イスラエル・ゴメス・ロメロ(イスラ)、フランシスコ・ホセ・ゴメス・ロメロ(チェイト)

 

解説:イスラとチェイトのロマ兄弟の物語。イスラは麻薬密売の廉で刑に服している。一方チェイトは海兵隊に志願して入隊している。イスラが刑期を終えて出所、チェイトも長期のミッションを終えて、二人はサンフェルナンド島に戻ってきた。再会を果たした兄弟は、まだ二人が幼かったときに起きた父親の変死に思いを馳せる。果たして兄弟のわだかまりは回復できるのか。イスラは妻と娘たちとの関係を取り戻すために帰郷したのだが、スペインで最も失業率の高い地方でどのようにして人生を立て直そうとするのか。ラクエスタの『時間の伝説』から12年後、成人したイスラとチェイト兄弟の現在がゴメス・ロメロ兄弟によって演じられる。

 

監督紹介イサキ・ラクエスタ(ジローナ、1975)のセクション・オフィシアル部門ノミネーションは、コンペティション外(2014Murieron por encima de sus posibilidades)を含めると3回目になる。今作は100%フィクションのコメディだったがあまり評価されなかった。初ノミネーションのLos pasos dobles11)がいきなり金貝賞を受賞、今回のEntre dos aguasは、上述したようにLa leyenda del tiempo06、『時間の伝説』)のその後が語られるようです。当ブログではマラガ映画祭2016に出品され、妻イサ・カンポと共同監督した『記憶の行方』(16La próxima piel)を紹介しています。エンマ・スアレスにゴヤ賞2017助演女優賞をもたらした作品(邦題はNetflixによる)。

  

『記憶の行方』の紹介記事、監督フィルモグラフィーは、コチラ20160429

 

 

   

 

 

Quién te cantará  監督:カルロス・ベルムト(スペイン、フランス)

キャスト:ナイワ・ニムリ(リラ・カッセン)、エバ・リョラチ(ビオレタ)、ナタリア・デ・モリナ(マルタ)、カルメ・エリアス、フリアン・ビリャグラン(ニコラス)、他

 

解説:リラ・カッセンは1990年代に最も成功をおさめたスペインの歌手だったが、突然謎を秘めたまま姿を消してしまった。10年後リラは華々しい舞台復帰の準備をしていたが、待ち望んだ期日の少し前に事故にあって記憶を失ってしまった。一方ビオレタは、関係がぎくしゃくしている娘マルタの意のままに操られており、辛い現実を逃れるためにできる唯一のことは、毎夜働いているカラオケでリラ・カッセンに変身することだった。ある日ビオレタは、リラ・カッセンがもとの彼女に戻れるように教えて欲しいという魅惑的な申し出を受ける。

  

監督紹介カルロス・ベルムト(マドリード、1980)のノミネーションは、金貝賞受賞の第2作目『マジカル・ガール』14Magical girl)に続いて2回目。異例の作品賞・監督賞のダブル受賞をうけ、授賞式では驚きとブーイングが同時におきたことは記憶に新しい。国際映画祭での数々の受賞歴を誇るが、ゴヤ賞2017では主演のバラバラ・レニーが主演女優賞を取っただけに終わった。新作は5年間銀幕から遠ざかっていたナイワ・ニムリをヒロインに迎えて撮った長編3作目、舞台復帰を目前に事故にあって記憶喪失になってしまう歌手の物語が語られる。

 

トロント映画祭2018「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」正式出品作品 

『マジカル・ガール』の作品紹介の記事は、コチラ2015121

 本邦公開の記事は、コチラ20160215 

 

       

 追記:『シークレット・ヴォイス』の邦題で、2019年1月4日公開になりました。

 

 Yuli  監督:イシアル・ボリャイン(スペイン、キューバ、イギリス、ドイツ)

キャスト:カルロス・アコスタ、サンティアゴ・アルフォンソ、ケヴィン・マルティネス、エディソン・マヌエル・オルベラ、ラウラ・デ・ラ・ウス、他

 

解説:タイトルの「ユーリ」はカルロス・アコスタの父親ペドロが付けた綽名から採られており、アフリカの戦いの神様オグンの息子という意味ということです。英国ロイヤル・バレエ団で黒人として初めてプリンシパル・ダンサーになったカルロス・ユニオル・アコスタ(キューバ、1973)の「No Way Home」に触発されて製作されたビオピック。アコスタ本人が出演しているがフィクションです。他にキューバの俳優が数多く出演している。アコスタのキャリアについては日本語ウイキペディアで読める。

  

監督紹介イシアル・ボリャイン(マドリード、1967)のノミネーションは3回目、初ノミネーション『テイク・マイ・アイズ』03Te doy mis ojos)では主演のライア・マルルルイス・トサールがそれぞれ女優賞、男優賞を受賞した。第2回目のMataharis07)はナイワ・ニムリを主役にしたコメディだったが無冠に終わった。最新作Yuliは、2016年の『オリーブの樹は呼んでいる』(El olivo)に続いて、夫君でもあるイギリスの脚本家ポール・ラバディが執筆している。

  

El olivo」の作品紹介、監督、脚本家紹介は、コチラ20160719

 

  

    

 

★以上ノミネーション4作のリストです。開幕までに気になる作品を順次アップしたいが、次回はコンペティション外で上映されるエンリケ・ウルビスホルヘ・ドラドGigantes(スペイン)です。