クラウディア・ピントの「Las consecuencias」*マラガ映画祭2021 ㉓2021年07月01日 20:31

      クラウディア・ピント、第2作「Las consecuencias」で批評家審査員特別賞

   

       

 

クラウディア・ピントはベネズエラ出身ですが、本作Las consecuenciasはスペイン=オランダ=ベルギー合作の映画です。ご存知の通り故国ベネズエラは政情不安が続いて映画製作どころではありません。主演女優のフアナ・アコスタはコロンビアのカリ生れ、共演者アルフレッド・カストロはチリ出身、今回助演女優賞を受賞したマリア・ロマニジョスカルメ・エリアスソニア・アルマルチャはスペイン、エクトル・アルテリオはアルゼンチン、とキャスト陣も国際的です。音楽監督、撮影監督、編集はデビュー作と同じ布陣、監督と共同で脚本を執筆したビンセント・バリエレ以下、音響、美術などスタッフは概ねベネズエラ・サイドが担当しています。

 

         

       (本作をプレゼンするクラウディア・ピント、525日マドリード)

 

 

Las consecuencias2021

製作:Sin Rodeos Films / Las Consecuencias AIE / N279 Entertaiment(オランダ)/

        Potemkino(ベルギー)/ Erase Una Vez Films(スペイン)

     協賛:TVE / TV3 / A Punto Media / バレンシア州TV

監督:クラウディア・ピント・エンペラドール

脚本:クラウディア・ピント・エンペラドール、エドゥアルド・サンチェス・ルへレス

撮影:ガボ(ガブリエル)・ゲーラ

音楽:ビンセント・バリエレ

編集:エレナ・ルイス

美術:フロリス・ウィレム・ボス

音響:ダーク・ボンベイ

キャスティング:アナ・サインス=トロパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ

衣装デザイン:マノン・ブロム

メイクアップ&ヘアー:アランチャ・フェルナンデス(ヘアー)、サライ・ロドリゲス(メイク)

製作者:ジョルディ・リョルカ・リナレス(エグゼクティブ/プロデューサー)、

        エルス・ヴァンデヴォルスト(オランダ)、クラウディア・ピント・エンペラドール、

        アンヘレス・エルナンデス、ヤデラ・アバロス他

 

データ:製作国スペイン=オランダ=ベルギー、スペイン語、2021年、サイコ・スリラー、96分、撮影地カナリア諸島のラ・ゴメラ、ラ・パルマ、バレンシア州のアリカンテ、ベニドルム、撮影期間2019518日~627日、スペイン公開2021917日。販売Film Factory


映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭セクション・オフィシアル部門プレミアム(611日)、銀のビスナガ批評家審査員特別賞、同助演女優賞(マリア・ロマニジョス)受賞

 

キャスト:フアナ・アコスタ(ファビオラ)、アルフレッド・カストロ(父)、カルメ・エリアス(母)、マリア・ロマニジョス(娘ガビ)、エクトル・アルテリオ、ソニア・アルマルチャ、クリスティアン・チェカ、エンリケ・ヒメノ・ペドロス、他

 

ストーリー:最近夫をダイビング中の事故で亡くしたファビオラは、思春期の娘ガビと一緒に人生をやり直そうと家族の住むカナリア諸島に浮かぶ小さな火山島へ、長らく疎遠だった父親と連れ立って旅に出る。家族は再会するが、ファビオラは家族になにか秘密があるように感じる。確かな証拠があるわけではないが、彼女の直感はすべてが見た目通りでないといっている。しかし彼女は見つかるかもしれないものへの怖れと、その答えを知る必要があるのかどうかで引き裂かれている。他人の私事に何処まで踏み込めるでしょうか。愛する人を守るための嘘は何処までなら許されるのでしょうか。母性への恐れから生まれたエモーショナルなサイコ・スリラー。怖れ、愛、嫉妬、そして火山島の風景も重要なテーマの一つ。

 

         

              (小さな火山島を目指すファビオラと父親、映画から)

   

  

      文化の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにする

     

監督紹介クラウディア・ピント・エンペラドール1977年カラカス生れ、監督、脚本家、製作者。1998年、カラカスのアンドレス・ベジョ・カトリック大学で視聴覚社会情報学を専攻、卒業する。現在はスペインのバレンシアに移って映画製作をしている。短編「Una voz tímida en un concierto hueco」(01)、「El silencio de los sapos」(06)、「Todo recto」(07)、長編デビュー作La distancia más larga13、ベネズエラ=スペイン合作)など。

   

La distancia más largaについては、モントリオール映画祭2013で優れたラテンアメリカ映画に贈られるグラウベル・ローシャ賞受賞を皮切りに国際映画祭で17賞している。映画賞はイベロアメリカ・プラチナ賞2015オペラ・プリマ賞、ゴヤ賞2015イベロアメリカ映画賞部門ノミネート。映画祭受賞歴はモントリオールのほか、ウエルバ・ラテンアメリカ2013観客賞、パナマ2015観客賞、クリーブランド女性監督賞、ヘルシンキ・ラテンアメリカ観客賞、トリエステ・イベロアメリカ批評家特別賞などを受賞。ハバナ、トゥールーズ・ラテンアメリカ、ヒホン、各映画祭にノミネートされた。

La distancia más larga」紹介は、コチラ2013090520150207

   

               

                  (数々の受賞歴を配したデビュー作のポスター)

 

2作目が本作「Las consecuensias」である。サンセバスチャン映画祭の合作フォーラムに参加、ユーリマージュ賞Eurimages(欧州評議会文化支援基金、1989年設立)を受賞した。「このフォーラムに参加して、オランダやベルギーのシネアストと交流したことは、私にとって非常に興味深いものでした。文化と見解の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにします。それは私の望んだことでもあったのです」と語っている。2006年からTVシリーズの監督と映画製作を両立させている。

 

 

    8年ぶりの長編2作目――「彼らは愛する方法を知りません」と監督

 

8年ぶりの新作というのも驚きですが、ピント監督によると「製作には多額の資金が必要ですから、それが私にとって本当に重要な何かをもっているかどうか自問します。新作は母性への怖れから生まれました。というのも丁度妊娠していて完成できるか分かりませんでした。間違ったことをして娘を危険に晒してしまう母親はどうなるのだろう。娘がドアを閉めて沈黙してしまうとしたら最悪です。物語は娘が危険に晒されていると想像している母親と娘の闘いを描きますが、母親に確信はなく、それは不確実な怖れから生まれてきます」とRTVEスペイン国営放送で語っています。

 

     

  (撮影中のフアナ・アコスタ、マリア・ロマニジョス、監督、アルフレッド・カストロ)

 

★家族の秘密が語られますが、「私たちは敷物の下に隠しているものについては表立って話しません。多くの場合、他人を守るためには沈黙は金なのです。こうして秘密は正当化されます。まだ傷は癒えていません。正しいことをしたいと思っていますが、その方法が分かりません、彼らは愛する方法を知らないのです」と監督。キャスティングについて「フアナ(・アコスタ)はとても勇気のある女優と言わざるを得ません。彼女のことはよく知りませんでしたが、素晴らしい女優、とてもラッキーでした。彼女はこの島の人だと直ぐに私に気づかせたのです。外観だけでなく印象的なオーラを放っていました。私は『あなたと一緒にやりたい、二人なら何でもできる』と言いました」とアコスタの第一印象を語っています。

 

キャスト紹介:主役ファビオラ役のフアナ・アコスタは、1976年コロンビアのカリ生れ、監督と同世代の女優、昨年のマラガ映画祭にベルナベ・リコEl inconvenienteで現地入り、主役のキティ・マンベールが女優賞を受賞している。デビューはコロンビアのTVシリーズでしたが、2000年ごろからスペインに軸足をおいている。シリアス・ドラマ(Tiempo sin aireAnna)からコメディ(Jefe)まで演技の幅は広い。既にキャリア&フィルモグラフィーを紹介をしています。受賞歴はアレックス・デ・ラ・イグレシアの「Perfectos desconocidos」でフォトグラマス・デ・プラタ2018女優賞、ジャック・トゥールモンド・ビダルの「Anna」の主演でコロンビアのマコンド賞2016、ウエルバ映画祭2019ウエルバ市賞などを受賞している。まだゴヤ賞はノミネートもない。

 

★2003年、彼女の一目惚れで始まったエルネスト・アルテリオとの間に一人娘がいますが、2018年にパートナーを解消、正式には結婚していなかった。新恋人はパリ在住のフランスの実業家チャールズ・アラゼット、幼児を含む4人の子供がいる。本作出演のエクトル・アルテリオは実父です。

フアナ・アコスタのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20180711

 

       

                        (ファビオラと父親、映画から)

   


   (オシドリ夫婦といわれていた頃のフアナとエルネスト・アルテリオ、20172月)

 

★父親役のアルフレッド・カストロは、1955年チリのサンティアゴ生れ、俳優、舞台演出家。1982TVシリーズでスタート、既に50本以上に出演しているチリを代表する俳優。人間の暗部を掘り起こす登場人物を演じつづけ、チリ国内だけでなくラテンアメリカ各国で活躍している。今年のマラガでは、フアン・パブロ・フェリックスKarnawal(アルゼンチン)もセクション・オフィシアル部門にノミネートされ、予想通り銀のビスナガ助演男優賞を受賞している。

 

        

        (銀のビスナガ男優賞受賞のプレス会見、613日)

 

パブロ・ラライン映画(『トニー・マネロ』『ザ・クラブ』『No)出演が有名だが、ラテンアメリカに初の金獅子賞をもたらしたベネズエラのロレンソ・ビガスとタッグを組んだ『彼方から』15)に主演している。『ザ・クラブ』でイベロアメリカ・フェニックス2015主演男優賞、マルセラ・サイドのLos perros17)でイベロアメリカ・プラチナ2018男優賞など受賞歴多数。俳優に贈られるマラガ―スール賞がラテンアメリカから選ばれるとしたら、カストロを一番にあげておきたい。

2018年のギレルモ・デル・トロ、今年のアメナバルの監督受賞は異例です)

   

Karnawal」の紹介記事は、コチラ20210613

『ザ・クラブ』『No』の紹介記事は、コチラ20150222同年1018

『彼方から』の紹介記事は、コチラ20160930

Los perros」の紹介記事は、コチラ20170501

 

  

(カナリア諸島のラ・ゴメラの浜辺に佇むアルフレッド・カストロ)

 

       

     (父と娘、アコスタとカストロ、中央はロマニジョス、映画から)

 

★母親役のカルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を目指し、ニューヨークのリー・ストラスバーグ演劇学校でメソッド演技法を学んでいる本格派。ハビエル・フェセルの『カミーノ』のオプス・デイの敬虔だが頑迷な信者を演じきって、ゴヤ賞2009主演女優賞、ほかサンジョルディ賞、トゥリア賞、スペイン俳優組合の各女優賞を受賞している。今年のガウディ栄誉賞を受賞している。クラウディア・ピントのデビュー作「La distancia más larga」で死出の旅に出る主役マルティナを好演し、第2作にも起用された。カルロス・ベルムトの『シークレット・ヴォイス』(18)では歌えなくなった歌手の冷静なマネージャー役だった。

ガウディ栄誉賞でキャリア&フィルモグラフィーを紹介、コチラ20210329

 

    

        (ファビオラの母、ファビオラ、ファビオラの娘、映画から)

    

   

       (ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを手に喜びのカルメ・エリアス)

 

★ファビオラの娘ガビを演じたマリア・ロマニジョスは、2004年マドリード生れ、Teatro Cuerta ParedCine Primera Toma の学校で演技を学んでいる。2019年本作起用がアナウンスされ映画デビューした。先述したようにデビュー作で銀のビスナガ助演女優賞を受賞している。モビスター+のTVシリーズ、フェルナンド・ゴンサレス・モリナParaíso7話)にも抜擢され、続いてフェリックス・ビスカレットのスリラーDesde la sombraでは、パコ・レオンやレオノル・ワトリングと共演している。まだ17歳、小柄で、172センチという長身のアコスタと並ぶと幼さが残る。目下のところ上昇気流に乗っているようだが、願わくば今回の受賞が吉となりますように。

 

         

                (銀のビスナガ助演女優賞のトロフィーを手にしたマリア)

 

    

 (クロージングに出席したアコスタとロマニジョス、612日)

 

スタッフ紹介:オランダのエルス・ヴァンデヴォルストは、『アイダよ、何処へ?』でオスカー賞2021国際長編映画賞にノミネートされた製作者。他『ジグザグキッドの不思議な旅』(12)、『素敵なサプライズ』(15)、『ドミノ 復讐の咆哮』(19)などが公開されている。カタルーニャのジョルディ・リョルカ・リナレスは『少年は残酷な弓を射る』の製作者、ヤディラ・アバロスはメキシコ出身だがスペインでTVシリーズ『エリーテ』や、エドゥアルド・カサノバの『スキン あなたに触らせて』などを手掛けている。

 

★撮影監督のガボ・ゲーラは、彼女の映画では「風景が重要な意味をもっています。前作のジャングルの撮影も過酷でしたが、今回は危険に晒されることが度々だった」と語っている。ラパルマ島で最も壮観な場所で撮影したが、困難が付きまとった。アコスタは「入り江のなかでも最も遠いところを選び、そこに到達するにはかなりのオデュッセイアでした」と。潮の流れに翻弄され、数時間中断することもあり、毎日が冒険だったようです。監督も「本当に美しい風景を手に入れましたが、それなりの代償を払いました。しかし払っただけのことはありました。物語の厳しさと風景の美しさのコントラストの映画でもあるからです」と。

 

          

                         (本作撮影中のピント監督)

 

        

    (撮影地のカナリア諸島ラ・ゴメラ島、フォト:サウル・サントス)

 

写真提供のサウル・サントスは、1979年ラパルマ島フエンカリエンテ生れ、世界最高を誇る『ナショナルジオグラフィック』誌の表紙を飾る写真家として、国際的に有名です。