オリベル・ラシュ「Sirat」の主役はセルジ・ロペス*カンヌ映画祭2025 ― 2025年05月03日 18:12
セルジ・ロペスはロマンチックコメディも得意!

(失踪した娘を探す父親と息子)
★前回オリベル・ラシュ「Sirat」の作品&監督フィルモグラフィーを紹介しました。今回は続編として、モロッコのサハラ砂漠で行方不明になった娘を探す父親を演じたセルジ・ロペスの紹介。セルジ・ロペスと言えば、ギレルモ・デル・トロのダークファンタジー『パンズ・ラビリンス』の冷酷無比なサイコパスの大尉ビダル(実際監督がロペスの悪役ぶりに惚れ込んで人物造形をしたという曰くつきのキャラクター)、ドミニク・モルのスリラー『ハリー、見知らぬ友人』の不気味な男ハリー、アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』では、主人公の母親に横恋慕する悪徳町長、と日本で公開された映画からは悪役のイメージが強い。しかし、実はロマンチックコメディが得意で以下に示すように多くのコメディに出演している。またカタルーニャ語映画マルク・レチャの「Un dia perfecte per volar」では、小さな息子と凧あげをする優しい父親を演じて観客を魅了した。スペイン語は当たり前として、流暢なフランス語、英語と語学に堪能なことから3桁に上る作品に出演している。

(『パンズ・ラビリンス』のビダル大尉)

(マルク・レチャの「Un dia perfecte per volar」から)
★父親ルイス役のセルジ・ロペス、1965年12月22日バルセロナ生れ、映画、舞台、TV俳優。16歳で学業を止め、アマチュア劇団に入り俳優の第一歩を踏み出す。その後フランスに渡り、パリのジャック・ルコック国際演劇学校に入学、演技を学んだ。スペイン映画デビューは1991年、ヘスス・フランコの「Ciudad Baja(Downtown Heat)」、フランス語のオーディションに合格して、1992年マニュエル・ポワリエの「La Petite amie d'Antonio」でフランス映画にデビューしてミシェル・シモン賞を受賞している。その後も『ニノの空』など8作に起用されるというポワリエ映画の常連となる。『ニノの空』でセザール賞有望俳優にノミネートされた。主にスペインとフランスの両国でキャリアを築いている。
★共演した国際的な女優連にも目を瞠る、「Lisboa」ではカルメン・マウラ、『スカートの奥で』でビクトリア・アブリル、『堕天使のパスポート』でオドレイ・トトゥ、『シェフと素顔と、おいしい時間』でジュリエット・ビノシュ、『記憶の行方』でエンマ・スアレス、DV男を演じた「Sólo mía」でパス・ベガ、『熟れた本能』ではクリスティン・スコット・トーマス、そして『パンズ・ラビリンス』ではマリベル・ベルドゥとアリアドナ・ヒル、「La boda de Rosa」でカンデラ・ペーニャとナタリエ・ポサと共演している。

(マラガ映画祭2020「La boda de Rosa」のフォトコール)
◎主なフィルモグラフィー◎
1991「Ciudad Baja(Downtown Heat)」ヘスス・フランコ、デビュー作
1992「La Petite amie d'Antonio」(仏語)マニュエル・ポワリエ
1993年若手有望俳優に与えられるミシェル・シモン賞
1997「Western」『ニノの空』(仏語)マニュエル・ポワリエ
シッチェスFF 1997グランアンギュラー主演男優賞、セザール賞1998有望俳優ノミネート
1998「Caresses / Carícies」(カタルーニャ語)コメディ、ベントゥーラ・ポンス
1999「Entre las piernas」『スカートの奥で』マヌエル・ゴメス・ペレイラ
1999「Lisboa」クライム・スリラー、アントニオ・エルナンデス
マラガFF 1999主演男優賞
1999「Une liaison pornographique」『ポルノグラフィックな関係』(仏語)
フレデリック・フォンテーヌ
ベネチアFF 1999パシネッティ主演男優賞、サンジョルディ賞2001スペイン俳優賞
2000「Harry, un ami qui vous veut du bien」『ハリー、見知らぬ友人』(仏語)スリラー、
ドミニク・モル
セザール賞2001主演男優賞、ヨーロッパ映画賞2000ヨーロッパ俳優賞
2001「El cielo abierto」ロマンチックコメディ、ミゲル・アルバラデホ
シネマ・ライターズ・サークル2002主演男優賞、ブタカ賞2001カタルーニャ俳優賞
2001「Sólo mía」ハビエル・バラゲル
フォトグラマス・デ・プラタ2002映画俳優賞、ゴヤ賞2002主演男優賞ノミネート
2002「Dirty Pretty Things」『堕天使のパスポート』(イギリス映画)犯罪
スティーヴン・フリアーズ
2002「Decalage horaire」『シェフと素顔と、おいしい時間』(仏語)ダニエル・トンプソン
2003「Janis et John」『歌え!ジャニス★ジョプリンのように』(仏語)コメディ
サミュエル・ベンチェトリット
2006「El laberinto del fauno」『パンズ・ラビリンス』ダーク・ファンタジー、
ギレルモ・デル・トロ ファンタスポルト2007国際ファンタジー映画賞主演男優賞、
ブタカ賞カタルーニャ俳優賞、トゥリア賞主演男優賞
ゴヤ賞2007主演男優賞ノミネート、ほかノミネート多数
2007「La Maison」(仏語)マニュエル・ポワリエ
2009「Ricky」『Ricky リッキー』(仏語)コメディ、フランソワ・オゾン
2009「Map of the Sounds of Tokyo」『ナイト・トーキョー・デイ』イサベル・コイシェ
2009「Partir」『熟れた本能』(仏語)カトリーヌ・コルシニ
2010「Pa negra」『ブラック・ブレッド』(カタルーニャ語)ダークミステリー、
アグスティ・ビリャロンガ、ゴヤ賞2011助演男優賞ノミネート
2011「Le moine / El monje」『マンク 破戒僧』(仏語)ドミニク・モル
2012「Tango lible」『タンゴ・リブレ 君を想う』フレデリック・フォンテーヌ
2014「El Niño」『エル・ニーニョ』&『ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン
2015「A Perfect Day」『ローブ/戦場の生命線』(英語・西語・ルーマニア語)
シリアスコメディ、フェルナンド・レオン・デ・アラノア
2015「Vingt et une nuits avec Pattie」『パティ―との二十一夜』(仏語)コメディ
アルノー・ラリュー & ジャン=マリー・ラリュー
2015「Un dia perfecte per volar」(カタルーニャ語)マルク・レチャ
アミアンFF 2015主演男優賞、ガウディ賞2016主演男優賞ノミネート
2016「La propera pell」『記憶の行方』(カタルーニャ語)
イサ:カンポ & イサキ・ラクエスタ
2018「Lazzaro Felice」『幸福なラザロ』(伊語)アリーチェ・ロルヴァケル
2019「La inocencia」(カタルーニャ語・西語)ルシア・アレマニー
2020「Josep」『ジュゼップ 戦場の画家』(アニメーション、ボイス、仏語)オーレル
2020「La boda de Rosa」コメディ、イシアル・ボリャイン
ゴヤ賞2021助演男優賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、各ノミネート
2020「Rifkin's Festival」『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(英語)ウディ・アレン
2021「Mediterráneo」『地中海のライフガードたち』ビオピックドラマ、マルセル・バレナ
第17回難民映画祭2022オンライン配信
2022「Pacifiction」『パシフィクション』(仏語)アルベルト・セラ
2022「La manzana de oro」コメディ、ハイメ・チャバリ
2023「La francée du poéte」『詩人の花嫁』(仏語・英語)ヨランド・モロー
2023「El viento que arrasa」(アルゼンチン・ウルグアイ)パウラ・エルナンデス
2025「La terra negra / La tierra」(カタルーニャ語・西語)アルベルト・モライス
2025「Sirat」オリベル・ラシュ
★邦題は公開、ミニ映画祭、DVDスルー、ネットフリックス、プライムビデオなどの配信による。TVシリーズ、「Mano de hierro」(24、8話)が『鉄の手』の邦題でネット配信されている。他にカタルーニャ語TV3シリーズ『あなたに出会っていなければ』(10話)にも出演している。年々父親役が多くなってきている。
◎主な関連記事◎
*『ブラック・ブレッド』の紹介記事は、コチラ⇒2023年04月14日
*『エル・ニーニョ』の紹介記事は、コチラ⇒2014年09月20日/11月03日
*「Un dia perfecte per volar」の作品&監督紹介記事は、コチラ⇒2015年10月01日
*『記憶の行方』の紹介記事は、コチラ⇒2016年04月29日
*「La boda de Rosa」の紹介記事は、コチラ⇒2020年03月21日
*『サン・セバスチャンへ、ようこそ』の紹介記事は、コチラ⇒2020年07月06日
*「Mediterráneo」の紹介記事は、コチラ⇒2021年12月13日
*『パシフィクション』の紹介記事は、コチラ⇒2022年10月13日
*「El viento que arrasa」の紹介記事は、コチラ⇒2023年08月16日
*「La terra negra / La tierra」の紹介記事は、コチラ⇒2025年03月20日
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