カンヌ・プルミェール部門の追加作品*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月17日 11:19
アマ・エスカランテの7年ぶりの新作「Perdidos en la noche」
★カンヌ・プルミエール部門に3作の追加発表があり、うち2作がラテンアメリカから選ばれました。一つはメキシコのアマ・エスカランテのサスペンス「Perdidos en la noche」、もう一つがアルゼンチンのリサンドロ・アロンソの「Eureka」です。前者は『触手』(16)以来7年ぶり、後者は『約束の地』(14)以来9年ぶり、コロナ・パンデミアを挟んでいるとはいえ空きすぎでしょうか。詳細アップは時間的に間に合いませんが、2 回に分けてアウトラインだけ紹介しておきます。
(撮影中のアマ・エスカランテ監督)
★「Perdidos en la noche / Lost in the Night」
製作:Pimienta Films / Bord Cadre Films / Cárcava Cine / Match Factory Productions / Snowglobe Films
監督・脚本:アマ・エスカランテ
撮影:エイドリアン・デュラソ
編集:フェルナンド・デ・ラ・ペサ
メイクアップ:ホルヘ・フエンテス・ロンキージョ
プロダクション・マネージメント:フアン・ガルバ
製作者:ニコラス・セリス、フェルナンド・デ・ラ・ペサ、アマ・エスカランテ、(エグゼクティブ)ベアトリス・エレナ・エレラ・ボールズ、ロドリゴ・マチン、アレハンドロ・マレス、グスタボ・モンタードン、フリエタ・ペラレス、ハビエル・サルガド、ほか共同製作者多数
データ:製作国メキシコ=オランダ=ドイツ、2023年、スペイン語、サスペンス、120分、撮影地グアナファト、メキシコシティ、期間2021年10月から11月末、
映画祭・受賞歴:第76回カンヌ映画祭2023「カンヌ・プルミェール」部門ノミネート、5月18日上映予定
キャスト:フアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョ(エミリアノ)、エステル・エスポシート(モニカ・アルダマ)、バルバラ・モリ(カルメン・アルダマ)、フェルナンド・ボニージャ(リゴベルト・デュプラス)、ジェロ・メディナ(ルベン)、マイラ・エルモシージョ(ビオレタ)、ヴィッキー・アライコ(エミリアノの母パロマ)他
ストーリー:教師で活動家でもあったパロマは、地元の鉱山産業に対して抗議活動を行っていた。その直後、彼女は跡形もなく姿を消してしまう。それから5年後、二十歳になった正義感の強い息子エミリアノは、犯人を探し始める。司法制度の無能さのせいで、正義は彼らの手に握られている。エミリアノは、あるメモを切っ掛けに裕福でエキセントリックなアルダマ家の夏の別荘にたどり着く。一族は著名な女家長カルメン・アルダマによって統率されています。彼は一族に表面化しない秘密が隠されていることに次第に気づいていく。真実を求めてエミリアノは、秘密、嘘、そして復讐だらけの暗い世界に沈潜していくことになる。
(エミリアノ役のフアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョ)
★アマ・エスカランテ(バルセロナ1979)の長編5作目となる本作は、正義の無能さに直面した青年が正義の行動を起こす決意をする物語だが、相変わらず厳しいテーマに挑んでいる。当ブログでは第2作「Los bastardos」(08、『よそ者』)、3作目「Heli」(13、『エリ』)を紹介しています。デビュー作「Sangre」(05、『サングレ』)が東京国際映画祭にノミネートされた折には、若干観客に戸惑いがありましたが、現在ではラテンアメリカ諸国の映画も多数公開されるようになり、少しずつ戸惑いも解消されているのではないかと思います。しかし、4作目「La región salvaje」(16、『触手』)はどうだったでしょうか。ファンタジーと恐怖をミックスさせて社会的暴力を描いたものでした。寡作な監督ですが、幸いなことに日本語字幕入りで観ることのできる幸運な映画作家の一人です。Netflix で配信されている『ナルコス:メキシコ』(18~21、7話)も手掛けています。
(カンヌFF監督賞受賞の「Heli」ポスター)
*フィルモグラフィーは以下の通り(短編、オムニバスは除く):
2005年「Sangre」カンヌFF「ある視点」国際批評家連盟賞FIPRESCI 受賞
2008年「Los bastardos」カンヌFF「ある視点」ノミネート
2013年「Heli」カンヌFFコンペティション部門、監督賞受賞
2016年「La región salvaje」ベネチアFFコンペティション部門、監督賞受賞
2023年「Perdidos en la noche」カンヌFFカンヌ・プルミェール
*『よそ者』の作品紹介は、コチラ⇒2013年10月10日
*『エリ』の作品 & 監督キャリア紹介は、コチラ⇒2013年10月08日
★エミリアノを演じるフアン・ダニエル・ガルシア・トレビーニョは、2000年モンテレイ生れ。フェルナンド・フリアス・デ・ラ・パラの「Ya no estoy aqui」(19、『そして俺は、ここにいない』)に起用されたのが切っ掛けで俳優の道を歩くことになったミュージシャン。ルーマニアの監督テオドラ・アナ・ミハイの東京国際映画祭審査員特別賞を受賞した「La civil」(21、『市民』、公開タイトル『母の聖戦』)、アレハンドラ・マルケス・アベジャのモレリア映画祭作品賞を受賞した「El norte sobre el vacío」(22、『虚栄の果て』)、ケリー・モンドラゴンの「Wetiko」(22)、ソフィア・アウサの「Adolfo」(23)など立て続けにオファーを受けている。
(主役を演じた「Ya no estoy aqui」のポスター)
★当ブログ紹介記事は以下の通り:
*『そして俺は、ここにいない』の作品 & キャスト紹介は、コチラ⇒2021年02月07日
*『母の聖戦』の主な作品紹介は、コチラ⇒2021年10月25日
*『虚栄の果て』のモレリア映画祭の紹介記事は、コチラ⇒2022年11月10日
★次回はリサンドロ・アロンソの「Eureka」紹介の予定。
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