セクション・オフィシアル*サンセバスチャン映画祭2022 ②2022年08月01日 13:45

   金貝賞を競うセクション・オフィシアルにスペイン映画4作がノミネート

  

 


★現在のところノミネート発表はどの部門もスペイン映画に限られ、全体像が見えてくるのはこれからです。ベテランのハイメ・ロサーレスの「Girasoles silvestres」、中堅のフェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」、若手のピラール・パロメロの「La maternal」とバスクの新人ミケル・グレアの「Suro」の4作、特別上映となったイサベル・コイシェの「El sostre groc」、アウト・オブ・コンペティションは、前回アップしたアルベルト・ロドリゲスのオープニング作品「Modelo 77」とロドリゴ・ソロゴジェン以下5人の監督による「Apagón」の7作がアナウンスされました。作品に情報のばらつきがあり、入手できたデータで紹介しておきます。

 

                      70SSIFFセクション・オフィシアル

    

1Girasoles silvestres / Wild Flowles (スペイン=フランス)

監督ハイメ・ロサーレス(バルセロナ1970)は監督・脚本家・製作者。コンペティション部門のノミネーションは、2008年の「Tiro en la cabeza」以来14年ぶり、本作で国際映画批評家連盟FIPRESCI 賞を受賞している。もともとカンヌFFに焦点を合わせている監督なのでプレミアは少ない。コンペ以外ではカンヌFFと併催の「監督週間」に正式出品された後、ペルラス部門に出品された「Petra」(18)は、後に『ペトラは静かに対峙する』の邦題で公開された。メイド・イン・スペイン部門には多数エントリーされている。

 

スタッフ:脚本はロサーレス監督とバルバラ・ディエス、製作者は『マイ・ブックショップ』のマヌエル・モンソン、撮影はアメリカ映画『ロスト・ドーター』(21)やブラジル映画『見えざる人生』(19)など国際的な活躍をしているフランスのエレーヌ・ルヴァールLouvart、編集は『ペトラは静かに対峙する』のルシア・カサル、などベテラン揃いの布陣です。

 

     

   

データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語、ドラマ、107分、2022年、製作:Fresdeva Films / A Contracorriente Films / Oberon Media  撮影地バルセロナ

キャスト:アンナ・カスティーリョ(フリア)、オリオル・プラ(オスカル)、キム・アビラ(マルコス)、リュイス・マルケス(アレックス)、マノロ・ソロ(ロベルト)、カロリナ・ジュステ(マイテ)

ストーリー:フリアはまだ22歳だが既に二人の子供がいる。オスカルを好きになり、親しい関係をもち始めている。一緒に過ごすなかで、もしオスカルが本当に自分に必要な人なら、家族の幸せのために一緒に人生を歩んでいくだろう。

 

    

    

            (フリアとオスカルと子供たち、フレームから)

 

 

2La consagración de la primavera / The Rite of spring (スペイン)

監督フェルナンド・フランコ(セビーリャ1976)の3作目、監督・脚本家。「La herida」(13)で鮮烈デビュー、審査員特別賞、主演のマリアン・アルバレスが女優(銀貝)賞を受賞している。第2作目「Morir」(17)が特別上映作品に選ばれるなど、本映画祭一筋の監督。

 

スタッフ:脚本はフランコ監督とベゴーニャ・アロステギ、製作総指揮は「Morir」やイシアル・ボリャインの「Maixabel」をプロデュースしたグアダルーペ・バラゲル・トレリェス、他ハイメ・オルティス・デ・アルテニャーノ、コルド・スアスア、撮影は『悲しみに、こんにちは』や『マリアの旅』のサンティアゴ・ラカ、編集は「Morir」、『さよならが言えなくて』、『マリアの旅』のミゲル・ドブラド、美術&プロダクションデザインを手掛けるのがカルメン・アルバセテ・ゴメス、などの布陣。

    

    

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2022年、109分、製作Lazona / Kowalski Films / Ferdydurke Films、協賛/ Canal Sur Radio y Television / Comunidad de Madrid / Movistar+、ICAAより資金提供を受けている。撮影地グラナダとマドリード、221日~3月末。

キャスト:バレリア・ソローリャ(ラウラ)、テルモ・イルレタ(ダビ)、エンマ・スアレス(ダビの母親イサベル)

ストーリー18歳になるラウラは大学で化学を学ぶためマドリードに着いたばかりである。コンプレックスと不安を抱えているが新しい生活に適応しようとしている。ある夜、偶然に脳性麻痺のダビと母親のイサベルと知り合いになる。二人との信頼関係が増すにつれ、その込み入った不安を乗り越える必要にラウラは直面する。物語は、すべてが可能になるある瞬間についての、または思いがけない出会いが私たちの人生をどのように決定づけてしまうかについての物語。

 

    

                    (ラウラとダビ、フレームから)

 

   

             (撮影中の監督と主演者3人)

 

 

3La maternal (スペイン)

監督ピラール・パロメロ(サラゴサ1980)は監督、脚本家。本作は第2作目になります。2020年のデビュー作「Las niñas」(『スクールガールズ』として2021年公開)がメイド・イン・スペイン部門で上映されている。ベルリン映画祭2020ゼネレーションKplus部門でワールド・プレミアされ、続いてマラガ映画祭セクション・オフィシアル作品に正式出品、見事金のビスナガ作品賞を受賞した。翌年のゴヤ賞2021の作品賞・新人監督賞・オリジナル脚本賞の3冠、ゴヤ賞の話題をさらった。デビュー作は11歳の少女が主人公でしたが、本作も14歳の未成年者が母親になるプロセスが語られるようです。

 

スタッフ:脚本はパロメロ監督、製作者はデビュー作を手掛けたバレリー・デルピエール、アレックス・ラフエンテ、撮影はミケル・グレアの「Suro」も手掛けたフリアン・エリサルデ、以下編集のソフィア・エスクデ、美術のモニカ・ベルヌイはデビュー作と同じ、キャスティングのイレネ・ロケはロサーレスの「Girasoles silvestres」、『エリサとマルセラ』やTVミニシリーズ『イノセント』など数多くのTVシリーズを手掛けているベテランです。

   

    

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2022年、ドラマ、100分、製作:Aragon TV / BTeam Pictures / Inicia Films 他協賛Movistar/ ICAA / RTVE / TV3など。配給BTeam Pictures、公開スペイン1118

キャスト:カルラ・キレス(カルラ)、アンヘラ・セルバンテス(母親ペネロペ)、ホルダン・アンヘル・デュメス(エフライン)、ルベン・マルティネス、ペペ・ロレンテ、ネウス・パミエス、オルガ・ウエソ、ガル・ラ・サバテ、他

ストーリー14歳になるカルラは反抗的で扱いにくい年頃の少女である。若いシングルマザーと一緒に町外れの街道沿いにある古いレストランに住んでいる。学校をサボって男友達のエフラインと時間を潰している。ソーシャルワーカーが妊娠5カ月に気づいて、未成年の母親を収容するセンター〈ラ・マテルナル〉に入所することになる。カルラと同じような境遇の娘たちと日々を過ごすことになる。母親との変わりやすい複雑な関係も含めて、準備する時間を与えられずに赤ん坊と一緒に大人になる困難、成熟、コミュニケーションの欠如、恐怖が語られる。

 

   

    

        (未成年のまま母親になる娘たち、フレームから)

 

 

4)Suro (スペイン)

監督ミケル・グレア(サンセバスティアン1985)監督、脚本家、戯曲家。本作が長編デビュー作。バルセロナのUPFを卒業後、ロンドン・フィルム・スクールで修士号を取得、彼の戯曲はロンドンやマドリードのフェルナンド・フェルナン・ゴメス劇場で初演されている。2021年、スーパー16ミリで撮った「Heltzear」(2117分)がベネチア映画祭「オリゾンティ」部門に出品され、ベネチアが歴史上初めて上映するバスク語映画でした。サバルテギ-タバカレラ部門でも上映された。タイトルのHeltzearは掴む、成長するという意味。2000年サンセバスティアンが舞台のドラマ、15歳のクライマーであるサラは不在の兄に手紙を書きながら、人生でもっとも厳しい登山に向けてトレーニングをしている。

   

    

             (短編「Heltzear」のポスター)

 

最初の短編「Primo」(0813分)、「The cats on the roof」(0918分)、イソナ・リガウと共同監督した「Rojo en el agua」(1012分)は、サンゴがなぜ赤いのかという伝説を絡ませたドラマ、どれも不思議な魅力をたたえている短編、他にロンドン・ロイヤル・バレエでバスク出身の最初のソリストとなったイツィアル・メンディサバルを追ったドキュメンタリー「Txoria / The bird」(1322分)も発表している。

 

スタッフ:脚本はグレア監督とフランシスコ・コステルリツ、製作総指揮アリアドナ・ドット、クラウディア・マルエンダ、ラウラ・ルビロラ、製作者ハビエル・ベルソサ、撮影は「La maternal」も担当したフリアン・エリサルデ、編集はアルベルト・セラとタッグを組むことの多いアリアドナ・リバス、プロダクション・デザインはイソナ・リガウ、などバルセロナ派の布陣で臨んでいる。

 

データ:製作国スペイン、カタルーニャ語、2022年、スリラー、ドラマ、90分、イクスミラ・ベリアクIkusmira Berriak 2016作品が金貝賞を競うセクション・オフィシアルにノミネートされるのは初めて。公開スペイン2022122日、

キャスト:ヴィッキー・ルエンゴ(エレナ)、ポル・ロペス(イバン)、イリヤス・エル・ウアダニIlyass El Ouahdani

ストーリー:子供を欲しいと思っているエレナとイバンは、コルク農園で新しい人生を始めようと都会を離れてコルクガシの森に移住してきた。しかし新しい土地でどのように生きていくか、夫婦として将来にどのように立ち向かうかについて、二人の思いはそれぞれ異なっていた。

 

      

             (イバンとエレナ、フレームから)

  

     

          (左から、フランコ、グレア、パロメロ、ロサーレス)

 

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