フェルナンド・トゥルエバの『あなたと過ごした日に』劇場公開 ― 2022年07月28日 17:09
コロンビアのエクトル・アバド・ファシオリンセのベストセラー小説の映画化
★当ブログでは原題の「El olvido que seremos」で紹介していたコロンビア映画が邦題『あなたと過ごした日に』で劇場公開されています。アンティオキアの作家エクトル・アバド・ファシオリンセのベストセラー小説 ”El olvido que seremos” の映画化、製作はコロンビアのカラコルTV(副社長ダゴ・ガルシア)だが、監督にビリー・ワイルダーを師と仰ぐフェルナンド・トゥルエバ、作家の父親エクトル・アバド・ゴメスにハビエル・カマラ、脚色に監督の実弟ダビ・トゥルエバ、編集にトゥルエバ映画を数多く手掛けているマルタ・ベラスコなどスペインサイドが受けもった。キャストはカマラ以外オールコロンビアという合作映画。1987年、メデジンの中心街で私設軍隊パラミリタールの凶弾に倒れた、医師で国内外の人権擁護に尽力したアバド・ゴメスの生と死が描かれている。
(作家エクトル・アバド・ファシオリンセ)
★おそらく邦題には苦労したと思われますが、『あなたと過ごした日に』では味もそっけもない。原題はホルヘ・ルイス・ボルヘスのソネット”Aqui, hoy” の冒頭の1行目「Ya somos el olvido que seremos」から採られている。強いて訳せば「我らは既に忘れ去られている」か。知人友人に贈る詩集として300部限定で出版されたものです。小説刊行後にその存在を疑問視する事態になった経緯があり、それが活かされなかったのが残念です。人間は何でも直ぐ忘れてしまうのですが、邦題もこれではいずれ忘却の彼方に消えてしまうでしょう。
★本作はカンヌ映画祭2020のコンペティション部門に選ばれた作品でしたが、カンヌが対面イベントの開催を見送ったため、サンセバスチャン映画祭でプレミアされた。セクション・オフィシアルでもアウト・オブ・コンペティション上映になったのは、既にコロンビアで公開されていたことがあった。クロージング作品に選ばれた。オンライン上映となったラテンビート映画祭2020では、「Forgotten We'll Be」の英題でオープニング作品として唯一つ新宿バルト9での特別上映でした。またゴヤ賞2021のイベロアメリカ映画賞にコロンビアを代表してノミネートされ、結果受賞しました。本作の公式サイトは、主人公エクトル・アバド・ゴメス以下、スタッフ陣紹介も含めて非常に充実しています。当時のコロンビアの時代背景が知りたい方にお薦めです。
(トゥルエバ監督とハビエル・カマラ、サンセバスチャン映画祭2020、フォトコール)
*作品紹介、作家紹介、製作余話などの記事は、コチラ⇒2020年06月14日
*サンセバスチャン映画祭2020の記事は、コチラ⇒2020年10月10日
*ラテンビート2020の特別上映の記事は、コチラ⇒2020年10月23日
*ゴヤ賞2021の授賞式の記事は、コチラ⇒2021年03月08日
◎『あなたと過ごした日に』公開
*東京都写真美術館ホール(恵比寿)、2022年7月20日~、全国順次公開
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2022/07/28/9512863/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。