セスク・ゲイの新作コメディ 「Sentimental」*ゴヤ賞2021 ⑧2021年02月01日 10:12

     「トルーマン」の監督が戻ってきた―― 舞台「Los vecinos de arriba」の映画化

 

      

 

★ゴヤ作品賞5作品の一つセスク・ゲイSentimentalは、作品賞の他、監督賞、脚色賞、ハビエル・カマラの主演男優賞、グリセルダ・シチリアーニ新人女優賞の5カテゴリーにノミネーションされています。セスク・ゲイは、Truman15、『しあわせな人生の選択』)でゴヤ賞2016の監督・脚本賞を受賞しています。アルゼンチンの名優リカルド・ダリンとハビエル・カマラという芸達者を起用して映画そのものは楽しめましたが、邦題は平凡すぎて陳腐、全くいただけなかった。本作の作品紹介と監督キャリア&フィルモグラフィーはアップ済みです。

『しあわせな人生の選択』の記事は、コチラ2016010920170804

 

           

          (セスク・ゲイ監督、サンセバスチャン映画祭2020

 

Sentimental」は、もともとは2015年バルセロナで、翌2016年マドリードで公演されたLos vecinos de arriba(仮題「上階の隣人」)という舞台劇の映画化、英題のThe People Upstairsはこちらを採用した。下の階の住人がハビエル・カマラとグリセルダ・シチリアーニの結婚歴15年という倦怠ぎみの中年夫婦、上の階の住人がまだアツアツのアルベルト・サン・フアンベレン・クエスタのカップル、4人だけの室内劇のようです。監督がチリの小説家イサベル・アジェンデの Sentimental という作品にインスパイアされて脚本を執筆したという記事が目にとまりましたが、確認できませんでした。

 

(英題のポスター)

     

    

Sentimental」 (「The People Upstairs」) 

製作:Impossible Films / Sentimental Film / TV3 / Movistar/ RTVE / カタルーニャ文化協会

監督・脚本:セスク・ゲイ

撮影:アンドレウ・レベス

編集:リアナ・アルティガル

プロダクション・デザイン(美術):アンナ・プジョル・Tauler

衣装デザイン:アンナ・グエル

録音:アルベルト・ゲイ、イレネ・ラウセル、ヤスミナ・プラデウス

製作者:マルタ・エステバン、(エグゼクティブ)ライア・ボッシュ 

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、コメディ、82分、撮影地バルセロナ、公開スペイン1030日、ロシア202117

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2020924日上映)、トロント映画祭上映、第26フォルケ賞2021男優賞受賞(ハビエル・カマラ)、第8回フェロス賞2021、作品(コメディ部門)・監督・主演男優(ハビエル・カマラ)・助演男優(アルベルト・サン・フアン)の4カテゴリーにノミネーション、ガウディ賞2021作品賞(カタルーニャ語以外)、監督・脚本、主演男優、助演男優、美術、衣装デザイン、録音の9部門ノミネーション、シネマ・ライターズ・サークル賞2021男優、脚色2部門ノミネーション、ゴヤ賞は省略

 

キャストハビエル・カマラ(フリオ)、アルベルト・サン・フアン(サルバ)、ベレン・クエスタ(ラウラ)、グリセルダ・シチリアーニ(アナ) 

ゴチック体はゴヤ賞ノミネート)

 

ストーリー:フリオとアナのカップルは既に結婚歴15年となり、やや倦怠ぎみの中年夫婦、連日議論に明け暮れている。片や上階のフレンドリーな隣人、サルバとラウラの夫婦はまだアツアツ。アナが上階のカップルをディナーに招待しようと提案する。フリオは夜の騒音を疎ましく思っているので乗り気でない。やがて手料理を携えて隣人夫婦がやってきた。夜が更けるにつれ、互いの夫婦の秘密が明らかになっていくのだが、隣人は驚くべき提案をする。どんな提案なのでしょうか。ノイローゼ患者の良薬は常に笑い。

 

            

            (左から、ラウラ、サルバ、アナ、フリオ)

 

 

          舞台劇の映画化――フリオはウエルベックの熱烈な読者

 

★シネヨーロッパのインタビューで、二組の夫婦の偽善的な関係がエスカレートしていくマイク・ニコルズの『バージニア・ウルフなんかこわくない』(66)やロマン・ポランスキーの『おとなのけんか』(11)との関連性を問われて、ベースにしていることを監督は認めている。アメリカン・コメディを参考にしていると語っていた。小説や戯曲の映画化は大きくジャンルが異なるので違いがでる。シアターとフィルムもなかなか難しいが、本作は自分が書いた戯曲をフィルム用に脚色したのでスムーズだったとも語っている。キャスティングは舞台とは別、バルセロナではカタルーニャ語、マドリードではスペイン語という棲み分けだったようです。男性陣のハビエル・カマラとアルベルト・サン・フアンは家族同様、息の合ったセリフ合戦が楽しめそうです。

 

               

             (フリオとサルバの関係はどうなる?)

 

★フリオはフランスの小説家ミシェル・ウエルベックの熱烈な読者という設定、2015年当時ムスリム批判で火中の人物、世界が騒然としたシャルリー・エブド襲撃事件では危険を避けるため、警察が一時的に保護していた。どう絡みあうのか興味は尽きない。フリオ夫婦はどうやらセックスレスのようだ。サルバは消防士でラウラは精神分析医という設定です。そして互いに打ちとけるには無駄話が一番いい、ここにはセックス中でも無駄話を止めない人物が登場する。「ノイローゼの良薬は常に笑い」と監督。

 

      

                 (撮影中の4人と監督)

 

 

★早口で喋りまくるのがトレード・マークのカマラに『しあわせな人生の選択』では沈黙を要求した。今回はいつものカマラが戻ってきます。新人女優賞ノミネートのグリセルダ・シチリアーニ(ブエノスアイレス1978)は、アルゼンチンではTVシリーズで活躍のベテラン女優ですが、スペインでは <新人> です。年齢は無関係、昨年はオリベル・ラシェの『ファイアー・ウイル・カム』出演の御年84歳のベネディクタ・サンチェスが受賞しています。ただゴヤ賞はスペイン映画アカデミー会員の投票で決まるから、外国勢はどうしても不利です。アルベルト・サン・フアン(マドリード1967)はセスク・ゲイのUna pistola en cada mano12)に出演、ゴヤ賞関連では、フェリックス・ビスカレッドの「Bajo las estrellas」でゴヤ2008主演男優賞受賞以来、久々のノミネーションです。唯一人選ばれなかったベレン・クエスタは、ASECAN 2021にノミネートされていますが、昨年のホセ・マリ・ゴエナガ他の「La trinchera infinita」で主演女優賞を受賞していますから妥当な選考かなと思います。

 

       

       (ゴヤ賞ノミネートのハビエル・カマラとグリセルダ・シチリアーニ)

      

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