マリオ・カサス、初のゴヤ賞ノミネート*ゴヤ賞2021 ⑫2021年02月23日 11:01

         まさかのゴヤ賞初ノミネートにびっくり――マリオ・カサス

      

       

       (ノミネート対象作品のダビ・ビクトリの「No matarás」)

 

★ゴヤ賞2021主演男優賞は、マリオ・カサス(ダビ・ビクトリ「No matarás」)、ハビエル・カマラ(セスク・ゲイ「Sentimental」)、エルネスト・アルテリオ(アチェロ・マニャス「Un mundo normal」)、ダビ・ベルダゲル(ダビ・イルンダイン「Uno para todos」)の4人、ノミネーション発表の最初からカサスかカマラのどちらかと予想しています。ダビ・ビクトリNo matarás以外は作品紹介をしているので、公平を期して作品紹介もしておこうとしたら、なんとマリオ・カサスはゴヤ賞は初ノミネートに驚きました。というのもTVシリーズも含めると20年近いキャリアがあり、それも話題作に出演していたからです。本邦でもアクション、スリラーが多いので、映画祭上映、ビデオやDVDNetflix配信などで知名度があり、当ブログでも度々登場させていたから、受賞は別としてノミネートくらいはあると思っていたのでした。

 

             

            (マリオ・カサス、「No matarás」から)

 

★マリオ・カサスは1986年、ガリシア州の県都ア・コルーニャ生れ、5人弟妹の長子、大工だった父親が19歳、母親が17歳のときに生まれた。1994年家族でバルセロナに転居、1995年からスペイン国有鉄道RENFEレンフェのコマーシャルに出演している。本格的に俳優を目指して18歳でマドリードに、演技はアルゼンチン出身の女優が設立したクリスティナ・ロタ演劇学校で学んだ。クリスティナ・ロタはフアン・ディエゴ・ボトー(助演ノミネート)、マリア・ボトーの母親でもある。卒業生にはゴヤ賞2021ノミネートのエルネスト・アルテリオ(主演)のようなアルゼンチン出身者だけでなく、ナタリエ・ポサ(助演)、アルベルト・サン・フアン(助演)、ペネロペ・クルス、エドゥアルド・ノリエガなどがおり、スペイン映画の隆盛に貢献している。

 

        

        (マラガ映画祭主演男優賞を受賞した「La mula」のポスター)

 

★ダビ・ビクトリの「No matarás」主演で、ホセ・マリア・フォルケ賞に初ノミネートされましたが、ライバルのハビエル・カマラの手に渡った。現在結果が出ているのはサン・ジョルディ賞(スペイン男優賞)とディアス・デ・シネ賞(スペイン男優賞)の2賞です。今年はコロナ禍で映画賞は軒並みガラ開催が遅れています。ゴヤ賞(36日)、フェロス賞(32日)、ガウディ賞(321日)と大きい映画賞の発表はこれからです。以下に主なフィルモグラフィーを年代順に列挙しておきます。(邦題、原題、監督名、主な受賞歴の順)

 

2006年「El camino de camino」脇役、アントニオ・バンデラス

2009年『セックスとパーティーと嘘』(『灼熱の肌』「Mentiras y gordas」)群像劇

   アルフォンソ・アルバセテ&ダビ・メンケス 

   マドリード・レズビアン&ゲイ映画祭2009レズゲイ賞、サラゴサFF 2009若い才能賞受賞   

2009年「Fuga de cerebros」主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

    サラゴサ映画祭2009若い才能賞受賞

2010年「Carne de neón」主役、パコ・カベサス

2010年『空の上3メートル』(「Tres metros sobre el cielo」)主役、

    フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ   ACE2011新人男優賞受賞

2012年『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』(「Grupo 7」)脇役、アルベルト・ロドリゲス

       フォトグラマス・デ・プラタ賞2013映画部門男優賞受賞

2012年『その愛を走れ』(「Tengo ganas de tí」)主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

2013年「La mula」主役、マイケル・ラドフォード マラガ映画祭2013主演男優賞受賞

2013『スガラムルディの魔女』(「Las brujas de Zugarramurdi」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2014助演男優賞受賞

2013年「Ismael」マルセロ・ピニェエロ

2015年『チリ33人、希望の軌跡』(「Los 33」)群像劇、パトリシア・リッヘン

2015年『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(「Mi gran noche」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2016助演男優賞受賞

2015年『ヤシの木に降る雪』(「Palmeras en la nieve」)主役、フェルナンド・G・モリーナ

    フォトグラマス・デ・プラタ賞2016映画部門男優賞受賞

2016『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「Toro」)主役、キケ・マイーリョ

2016『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(「Contratiempo」)主役、オリオル・パウロ

2017『クローズド・バル 街角の狙撃兵と8人の標的』(「El bar」)群像劇、

    アレックス・デ・ラ・イグレシア

2017年『オオカミの皮をまとう男』(「Bajo la piel de lobo」)主役、サム・フエンテス

2018『マウトハウゼンの写真家』(「El fotógrafo de Mauthausen」)主役、マル・タルガロナ

2019年「Adiós」パコ・レオン

2020『その住民たちは』(「Hogar」)脇役、ダビ&アレックス・パストール

2020年『パラメディック――闇の救急救命士』(「El practicante」)主役、カルレス・トラス

    ディアス・デ・シネ賞2021スペイン男優賞受賞

2020No matarás省略

ゴチック体は当ブログに紹介記事があります。ビデオ、短編、TVシリーズは割愛。

 

『スガラムルディの魔女』の紹介記事は、コチラ20141012

『ザ・レイジ 果てしなき怒り』の紹介記事は、コチラ20160414

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』の記事は、コチラ201702170414

『クローズド・バル 街角の狙撃兵と8人の標的』の紹介記事は、コチラ20170404

『マウトハウゼンの写真家』の紹介記事は、コチラ201903030305

『その住民たちは』の紹介記事は、コチラ20200331

 

TVシリーズでお茶の間ファンを獲得、映画デビューはアントニオ・バンデラスEl camino de caminoに脇役で出演した。これはバンデラス監督と同郷の作家アントニオ・ソレルの同名小説の映画化だった。カサスをスターにしたのはMentiras y gordasでした。お茶の間のアイドル脱出を模索していたときにオファーを受け、結果を出した。邦題は英語タイトルの直訳、原題を直訳すると「嘘っぱちとデブ女たち」になるが、gordaは強めの要素で会話などで使う「まさかそんなこと嘘でしょ」くらいになる。コメディと紹介されることもあるが、それは見た目だけで的外れ、居場所のない孤独と愛を探す若者たちを描いた青春ドラマでした。カサスは好きな親友に愛を告白できないゲイを演じた。本作はアルモドバルのカンヌ映画祭パルムドールにノミネートされた『抱擁のかけら』を抜いて興行成績ナンバーワンになったが、批評家の評価は当然のごとく分かれた。1996年のダニー・ボイル『トレインスポッティング』が下敷きになっているようです。本作でユアン・マクレガーはスターの座にのしあがった。

 

           

             (『セックスとパーティーと嘘』から)

 

★ゴヤ賞関連では、共演者はノミネートされるが、カサス自身は外されることが多く、アルベルト・ロドリゲスUNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』で助演男優賞ノミネーションを期待したが、共演者のフリアン・ビジャグランがノミネートされ受賞した。またサム・フエンテス監督のオファーを台本を読まずに話だけでOKした『オオカミの皮をまとう男』でもノミネートがなく、翌年の『マウトハウゼンの写真家』では減量して挑戦したもののまたもや素通り、映画アカデミーから嫌われているのかと思っていた。新作「No matarás」の監督は、マリオ・カサスを念頭において脚本を書いたと語っているが、サム・フエンテスもカサスに惚れ込んで「彼しかこの役はできない」とインタビューに応えていた。以下に新作の紹介をしておきます。

 

    

                  (『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』から)

 

      

          (『マウトハウゼンの写真家』のポスター

 

 

No matarás(英題「Cross the Line」)

製作:Castelao Pictures / Castelao Production / Filmax / Movistar/ RTVE / TV3 他

監督:ダビ・ビクトリ

脚本:ダビ・ビクトリ、ジョルディ・バリェホ、クララ・ビオラ

音楽:フェデリコ・フシド、エイドリアン・フォルケス

撮影:エリアス・M・フェリックス

編集:アルベルト・グティエレス

キャスティング:アレハンドロ・ヒル

プロダクション・デザイン&美術:バルテル・ガジャルト

衣装デザイン:オルガ・ロダル、イランツゥ・カンポス

メイクアップ&ヘアー:ナタリア・アルベール、パトリシア・レイェス、(特殊メイク)ルシア・ソラナ

舞台装置:Thais・カウフマン

プロダクション・マネージメント:エステル・べラスコ、アルフレッド・アベンティン

製作者:ラウラ・フェルナンデス・Brites、(エグゼクティブ)カルロス・フェルナンデス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語・英語、2020年、アクション・スリラー、92分、撮影地バルセロナ、シッチェス映画祭20201010日上映)、公開スペイン1016日、チリ1016日(ネット)、アルゼンチン121日、ドイツ225日(DVD発売35日)、他

 

キャストマリオ・カサス(ダニ)、ミレナ・スミット(ミラ)、フェルナンド・バルディビエルソ(レイ)、エリザベス・ラレナ(ラウラ)、ハビエル・ムラ(ベルニ)、アレックス・ムニョス(デルガド)、アンドレウ・Kreutzer(フォルニド)、オスカル・ぺレス(従兄弟)、シャビ・シレス(刑事)、ミゲル・アンヘル・ゴンサレス(物乞い)、アルベルト・グリーン、ヘラルド・オムス(ヘラルド)、シャビ・サエス(ルベン)、ビクトル・ソレ(見張り役)、ミゲル・ボルドイ(ダニの父親)、他

ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされている俳優、新人女優賞、新人男優賞

 

ストーリー:ダニはここ数年、病気の父親の介護をしながら旅行会社で働いていた。父親が亡くなると自分の人生を変えようと世界をめぐる旅に出ようと決心する。そんな折も折、セクシーだが精神が不安定なミラという女性と運命の出会いをしてしまう。その夜を境にダニの人生は本物の悪夢と化してしまうだろう。ミラはダニを想像もできない破局に導いていく。本作はもし平凡な人間が誰かを殺すことが可能かどうか考える物騒な映画。

 

    

            (マリオ・カサス、映画から)

 

★カサスによると、シナリオを読むなりこのプロジェクトに参加したいと思った。「この役柄を演じられる自信はなかったが、これも挑戦だと魅了された。スリラーが好きなのです」と。監督もカサスについて「脚本は常にマリオを念頭において書きすすめた」と打ち明ける。「マリオの視線を通して、この登場人物を変身させる。観客もこの人物のなかにある真実を体験できるだろう」とコメントしている。

 

       

                (撮影中の監督とカサス)

 

ダビ・ビクトリ1982年バルセロナ生れの監督、脚本家、製作者。スペインと米国で映画を学んだ。2008年短編「Reaccion」でデビュー、同Zero15)がアリカンテのラルファス・デル・ピ映画祭で監督賞と作品第2席を受賞、2018年長編デビュー作El pactoは公開された。ベレン・ルエダやダリオ・グランディネッティが出演している。本作は第2作目。

 

   

   (シッチェス映画祭2020、フォトコール)

 

      

          (マリオ・カサスとミレナ・スミットに挟まれた監督)

 

★ゴヤ賞新人女優賞にノミネーションされている、ミレナ・スミット1996年エルチェ生れ、ホテルのフロントで働いていたところをスカウトされた。未だ24歳だが妖艶な雰囲気があり、もしかすると受賞するかもしれない。次回作はアルモドバルの新作Madres paralelasに出演が決まり、既にクランクインしている。共演者はペネロペ・クルスとアイタナ・サンチェス=ヒホン、他にアルモドバル常連のロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、イスラエル・エレハルデなど賑やかです。ゴヤ賞のライバルは「Ane」のホネ・ラスピウルか。

 

    

    

            (ミレナ・スミットとカサス、映画から)

 

★新人男優賞ノミネーションのフェルナンド・バルディビエルソは、1984年マドリード生れ。2005年短編でデビュー、主にTVシリーズに出演している。2008イサベル・デ・オカンポのスリラー短編「Miente」でラルファス・デル・ピ映画祭2008男優賞を受賞している。当ブログで作品紹介をしているダニエル・カルパルソロのスリラーHasta el cieloに警官役で出演している。特異な風貌から役柄が限られそうだが、異色の新人として大いに脈がありそうです。

 

  

    

       (フェルナンド・バルディビエルソ、シッチェスFFのフォトコール)