「監督週間」にホドロフスキーの『エンドレス・ポエトリー』*カンヌ映画祭2016 ⑥2016年05月20日 15:06

      『リアリティのダンス』の続編、『エンドレス・ポエトリー』

 

★前作『リアリティのダンス』の配給元アップリンクの代表者浅井隆がエグゼクティブ・プロデューサーの一人ということで、2017年春公開がアナウンスされています。いずれうんざりするほど記事が溢れてくると思いますが、一応アウトラインをご紹介。カンヌでは「長~い」オベーションに、ホドロフスキー父子3人、チリからカンヌ入りしたパメラ・フローレス、前作より大分背の伸びたイェレミアス・ハースコヴィッツも登壇して感激の面持ちだったとか。

 

アレハンドロ・ホドロフスキー『リアリティのダンス』紹介記事のなかで、次回作は「ブロンティス主演で『フアン・ソロ』(“Juan Solo”)と決定しているようです」と書いたのですが、気が変わったのか蓋を開けたら前作の続きのPoesía sin finでした。生まれ故郷トコビージャを出て首都サンチャゴに転居したところから始まります。アレハンドロの青春時代、1940年代後半が語られる。父親ハイメには前作同様長男ブロンティス・ホドロフスキー、母親サラも同じくパメラ・フローレス10代後半までのアレハンドロにイェレミアス・ハースコヴィッツ、そして青年アレハンドロに四男アダン・ホドロフスキー、彼は前作ではイバニェス大統領暗殺に失敗して自殺するアナーキスト役を演じました。今回は主役になるわけで、50歳のとき生まれた末っ子ということもあって可愛がっている。アダンは音楽も担当する。

 

      

         (人形を操るエンリケ・リンとホドロフスキー、1949年)

 

どうやらホドロフスキーは5部作のオートフィクションを構想しているらしく、本作はその第2部になるようです。それなら急がねばなりません、何しろ87歳ですから(1929217日生れ)。それで資金も充分でないのに見切り発車、昨年、YouTubeを通じてキックスターターなどのクラウドファンディング・サイトで製作資金を募り、世界中から1万人に及ぶ人々の出資で完成した。これは寄付金と同じで出資者に返済する義務はない。この呼びかけの談話では、人間86歳にもなれば毎朝目が覚めると、「まだ生きている」と生きていることの幸せを噛みしめるが、今日が最後の日になるかもしれないとも考えるものだ、と語っていた。老いるということは時間との駆けっこです。長く生きることではなく、よく生きること、これが映画を作り続ける理由でしょう。

『リアリティのダンス』紹介記事は、コチラ⇒201471471986

3回に分けて家族歴・キャリア・映画データ・プロットなどアップしております。

    

    

 

   Poesía sin finEndless Poetry2016

製作: Le Soleil Films(チリ) / Openvizor / Satori Films(仏)

監督・脚本・製作者:アレハンドロ・ホドロフスキー

撮影:クリストファー・ドイル

音楽:アダン・ホドロフスキー

編集:マリリーヌ・モンティウ Maryline Monthieux

衣装デザイン:パスカル・モンタンドン≂ホドロフスキー

製作者:モイゼス・コシオ(メキシコ)、ハビエル・ゲレーロ・ヤマモト(チリ)、タカシ・アサイ浅井隆(日本)、Abbas Nokhas、以上エグゼクティブ・プロデューサー

データ 製作国:フランス、チリ、日本合作 スペイン語、2016年、128分、伝記 撮影地:チリの首都サンティアゴ、20157月~8月の8週間。カンヌ映画祭2016「監督週間」正式出品、映画祭上映514日、日本公開2017年春予定、多分邦題は『エンドレス・ポエトリー』か。

 

キャスト:ブロンティス・ホドロフスキー(父親ハイメ)、パメラ・フローレス(母親サラ)、イェレミアス・ハースコヴィッツ(10代後半アレハンドロ)、アダン・ホドロフスキー(青年アレハンドロ)、レアンドロ・ターブ(詩人エンリケ・リン)、フェリペ・リオス(ニカノール・パラ)、カオリ・イトウキャロリン・カールソン、ウーゴ・マリン、アリ・アフマド・サイード・エスベル、他

 

解説:ホドロフスキー一家は生れ故郷トコビージャを後にしてサンチャゴに移転、アレハンドロも新しい一歩を踏み出していく。しかし割礼を受けた鉤鼻の青年は、まさにコンプレックスのかたまりであった。抑圧的な父ハイメの希望は息子が医者か弁護士か、あるいは建築家になることだった。詩人なんてあまりにバカげている。「クソ家族」と喚きながら庭の菩提樹を斧で伐り倒そうとするアレハンドロ、そんなアレハンドロにも転機が訪れる。ある日のこと、従兄がセレセダ姉妹の家に連れて行ってくれた。一人は画家、もう一人は詩人だった。姉妹の家でマリオネットに魅せられ、やがて檻に鍵を掛けていたのが自分自身であったことに気づく。檻から自らを解き放ち、エンリケ・リン、ニカノール・パラ、初恋の人ステラ・ディアス・バリン、後にチリを代表する詩人、アーティストたちとも出会うことになるだろう。

 

    

        (「詩人になりたい」という息子の願いを無視する父ハイメ)

 

★実際のホドロフスキー一家は1939年にサンチャゴに転居している。映画は1940年代後半、アレハンドロの青春時代を中心に語られるようです。同時代の詩人エンリケ・リン、アンチ・ポエマスを標榜したニカノール・パラ、初恋の人ステラ・ディアス・バリンなど実在の詩人、アーティストが登場する。IMDbではまだ詳細が分からず、ステラを誰が演じるのか楽しみです。彼女はニカノール・パラの“La víbora”(「蛇女」)にインスピレーションを与えた詩人、ホドロフスキーは1949年に町の中心にあった夜行性の人間たちの溜まり場「カフェ・イリス」で出逢っている。異様なオーラを放つステラにひと目でノックアウトされた。

 

   

  (「クソ家族」と喚きながら庭をぐるぐる駆けまわるアレハンドロ、奥に母サラの姿)

 

★本作の主人公青年アレハンドロを演じるのは監督の四男アダン・ホドロフスキー、前作同様音楽も担当する。1979年パリ生れ、俳優、監督、ミュージシャン(ベースギター奏者、ピアノ、作曲)と多才。前作ではイバニェス大統領暗殺に失敗して自殺するアナーキスト役を演じた。ホドロフスキーの『サンタ・サングレ』(89)、ジュリー・デルピーの『パリ、恋人たちの2日間』(07)などに出演。短編“The Voice Thief”(13、米・仏・チリ)がフランスの「ジェラールメ映画祭2014」で短編賞を受賞した。父親アレハンドロも出演、脚本も共同執筆して応援、目下お気に入りの息子。 

 

(監督と四男アダノフスキー)

            

★父親ハイメ役は監督長男ブロンティス・ホドロフスキー、彼の怪演は前作に引き続き健在、虚栄心と憎しみをエネルギーにした矛盾だらけの人格、苦労と怒りで心の発達が子供で止まってしまった人間、若い頃は許せなかったという監督も今は父親の体だけ逞しくなった人間の悲しみ、粗野と純粋が複雑に絡み合ったハイメを理解できるという。 

(監督と長男ブロンティス)

            

                          

衣装デザインを担当するパスカル・モンタンドン≂ホドロフスキーは監督夫人、ヴェトナム系フランス人の画家、デザイナー。彼女の一目惚れで結婚した。『リアリティのダンス』プロモーションに監督と一緒に来日している。撮影監督クリストファー・ドイルは、ウォン・カーウァイ『恋する惑星』や『花様年華』、チャン・イーモウ『HERO』、ガス・ヴァン・サント『パラノイドパーク』など、最近は日本映画も撮っている。ホドロフスキーとのタッグは初めて。他に舞踊家のキャロリン・カールソンの名前がクレジットされていますが、誰を演じるのか目下のところ不明です。他にもクレジットされているアリ・アフマド・サイード・エスベルは、シリア出身の詩人でエッセイストのペンネームAdonisアドニスでしょうか、そのうち分かりますね。

 

  

(いかさまカードで親戚から毟られるハイメ、左が祖母ハシェ、右は叔父イシドロ)

 

 

      (本作撮影中のクリストファー・ドイル奥)

           

  追加情報:東京国際映画祭2017「特別招待作品」として上映決定

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