エドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025のニュース ― 2025年07月13日 18:28
「Marco」と「El 47」のエドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025

(「Marco」でゴヤ賞2025主演男優賞を受賞したフェルナンデス、右は娘グレタ)
★6月30日、今年の映画国民賞受賞者の発表がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、副賞は30.000ユーロ、主に前年に映画界で活躍、貢献した人が選ばれます。授与式は秋開催のサンセバスチャン映画祭期間中(2025年は9月19日~27日)と大枠は変わっておりません。エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、マルセル・バレナの「El 47」とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」の演技が評価され受賞しました。昨年12月から今年にかけてスペインで開催される映画賞、前者でガウディ賞、ディアス・デ・シネ賞、後者でフォルケ賞を皮切りに、ゴヤ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、文化省が授与する金のメダル芸術功労賞と貰える賞のほとんどを制覇しておりましたので、発表を待たずとも受賞は確実視されておりました。ゴヤ胸像4個保持者はカルメン・マウラと故ベロニカ・フォルケに続く3人目とか。

(実在の詐欺師を演じた「Marco」のポスター)
★細切れにキャリア&フィルモグラフィーを紹介しておりますが、国民賞受賞を機会に公開作品もかなりありますので、代表作、受賞作を中心に紹介しておきます。1964年8月バルセロナ生れ、映画・舞台・TV俳優、2024年、短編「El otro」で監督デビュー、バジャドリード映画祭でプレミア上映されました。舞台俳優としてスタートをきる。シェイクスピアの『ハムレット』(マックス賞2013)、『テンペスト』、『ジョン王』、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』(観客賞)などに出演している。1990年作家のエスメラルダ・ベルベルと結婚、1995年グレタ・フェルナンデス誕生、2015年離婚、現在のパートナーはアイノア・アルダノンド。

(パートナー、アイノア・アルダノンドとフェルナンデス)

(シェイクスピアの『ハムレット』から、今は亡きマリサ・パレデスと)
★TVシリーズに出演した後、1994年ロサ・ベルヘスの「Souvenir」で長編映画デビュー、マリアノ・バロッソのスリラー「Los lobos de Washington」(99)でハビエル・バルデムと共演、翌年ゴヤ新人賞にノミネート、サンジョルディ賞、オンダス賞を受賞した。マヌエル・ビセントの同名小説を映画化したビガス・ルナの「Son de mar」(01)は『マルティナは海』の邦題で公開された。本作はフェルナンデス日本初登場となった作品。アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、カルロス・パドリサ、演劇集団ラ・フラ・デルス・バウスのホラー・ファンタジー「Faust 5.0」で現代のメフィストフェレス役でゴヤ賞2002主演男優賞受賞の他、シッチェスFF、サンジョルディ賞などを受賞した。ファウスト博士にミゲル・アンヘル・ソラが扮した。セスク・ゲイのアンサンブルドラマ「En la ciudad」でゴヤ賞2004助演男優賞を受賞、本作は『イン・ザ・シティ』の邦題でミニ映画祭で上映された。

(ゴヤ賞主演男優賞を手にした「Faust 5.0」のポスター)

(レオノール・ワトリングと共演した『イン・ザ・シティ』のポスター)
★マル・コルがゴヤ賞2010新人監督賞を受賞した「Tres dies amb la família」に主演、マラガ映画祭2009銀のビスナガ男優賞を受賞した。『家族との3日間』の邦題で東京国際女性映画祭2010で上映された。2010年は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「Biutiful」(『ビューティフル』)、アグスティ・ビリャロンガの「Pa negra」(『ブラック・ブレッド』)と収穫の多い年となった。2011年ペドロ・アルモドバルの「La piel que habito」(『私が、生きる肌』)、2014年ダニエル・モンソンの「El niño」(『エル・ニーニョ』)でゴヤ賞2015助演男優賞にノミネート、2015年のイマノル・ウリベの「Lejos del mar」では、エレナ・アナヤとタッグをくんで ETA の元テロリストを演じた。2016年は、アルベルト・ロドリゲスのスリラー「El hombre de las mil caras」(『スモーク・アンド・ミラーズ』)で実在したスペイン政府の元諜報員フランシスコ・パエサを演じて、サンセバスチャン映画祭2016の銀貝男優賞とガウディ賞は受賞したが、ゴヤ賞は逃した。

(サンセバスチャンFF 2016 銀貝男優賞を受賞した『スモーク・アンド・ミラーズ』)
★2016年、エンリケ・セレソがプロデュースしたサルバドール・カルボの「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』に指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスに扮し、ルイス・トサールやハビエル・グティエレス、カラ・エレハルデなどと共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの群像劇「Perfecta desconocidos」(17)、アスガー・ファルハティ「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(18)、アレハンドロ・アメナバルの「Mientras dere la guerra」(『戦争のさなかで』19)では、哲学者ウナムノを毛嫌いするホセ・ミリャン・アストライ将軍に扮し、2回目のゴヤ賞助演男優賞を受賞した。

(フランコ総統の盟友、隻眼片腕のホセ・ミリャン・アストライ将軍を演じた)
★2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」は、愛娘グレタ・フェルナンデスと初共演、グレタは銀貝女優賞を手にした。親子で銀貝賞を受賞したことになり、自身の受賞よりも何倍も嬉しかったに違いない。スペイン映画賞のノミネートの山を築いたマルセル・バレナの「Mediterráneo」(21)では、受賞こそなかったが監督との絆を固め、次の「El 47」主演に繋がった。オリオル・パウロ「Los lengrones torcidos de Dios」(22)は、邦題『神が描くは曲線で』でネット配信された。上述したアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」、マルセル・バレナの「El 47」の字幕入りを期待したい。2018年、バジャドリード映画祭栄誉スパイク賞を受賞した。
★主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは割愛、太字代表作)
1994「Souvenir」コメディ、ロサ・ベルヘス
1999「Zapping」フアン・マヌエル・チュミリャ
1999「Los lobos de Washington」スリラー、マリアノ・バロッソ、ゴヤ賞新人賞ノミネート
2000「El portero」ゴンサロ・スアレス
2001「La voz de su amo」フィルムノワール、エミリオ・マルティネス=ラサロ
2001「Son de mar」『マルティナは海』ビガス・ルナ、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2001「Faust 5.0」ファンタジー、アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、
カルロス・パドリサ、ゴヤ賞2002主演男優賞、他受賞歴多数
2002「El embrujo de Shanghai」フェルナンド・トゥルエバ
2002「Smoking room」ロヘル・グアル、J.D. Wallovits、マラガFF 銀のビスナガ男優賞
2003「En la ciudad」『イン・ザ・シティ』セスク・ゲイ、ゴヤ賞助演男優賞、
スペイン俳優組合賞
2004「Cosas que hacen que la vida valga la pena」マヌエル・ゴメス・ペレイラ、
ゴヤ賞主演男優賞・スペイン俳優組合賞ノミネート
2005「Hormigas en la boca」マリアノ・バロッソ、マラガFF銀のビスナガ男優賞
2005「Obaba」モンチョ・アルメンダリス
2005「El método」マルセロ・ピニェイロ、スペイン俳優組合賞受賞、
ゴヤ賞主演男優賞ノミネート
2006「Ficción」セスク・ゲイ
2006「Alatriste」『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス
2008「3 días」『アルマゲドン・パニック』フランシスコ・ハビエル・グティエレス
2009「Amores locos」ベダ・ドカンポ・フェイホー
2009「Tres dies amb la família」『家族との3日間』マル・コル、
マラガFF銀のビスナガ男優賞、ブタカ賞受賞、ガウディ賞主演男優賞、
シネマ・ライターズ・サークル賞ノミネート
2009「Luna caliente」『ザ:レイプ 獣欲』ビセンテ・アランダ
2010「Biutiful」『BIUTIFUL ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2010「La mosquitera」コメディ、アグスティ・ビラ、ガウディ賞主演男優賞受賞、
フォルケ賞ノミネート
2010「Pa negra」『ブラック・ブレッド』アグスティン・ビリャロンガ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル
2012「Miel de naranjas」イマノル・ウリベ
2012「Una pistola en cada mano」セスク・ゲイ、ガウディ賞助演男優賞
2013「Todas las mujeres」マリアノ・バロッソ、フォルケ賞・サンジョルディ賞受賞、
ゴヤ賞主演男優賞・シネマ・ライターズ・サークル賞・フェロス賞ノミネート
2014「Marsella」ベレン・マシアス
2014「El niño」『エル・ニーニョ/ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2015「Felices 140」コメディ、グラシア・ケレヘタ
2015「Truman」『しあわせな人生の選択』セスク・ゲイ
2015「Lejos del mar」スリラー、イマノル・ウリベ
2016「La noche que mi madre mató a mi padre」コメディ、イネス・パリス
2016「El hombre de las mil caras」『スモーク・アンド・ミラーズ』
アルベルト・ロドリゲス、サンセバスチャンFF銀貝男優賞、ガウディ賞、
シネマ・ライターズ・サークル賞
2016「1898:Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』
サルバドール・カルボ
2017「Perfecta desconocidos」ブラックコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシア
2018「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハティ
ゴヤ賞助演男優賞ノミネート
2019「Mientras dere la guerra」『戦争のさなかで』アレハンドロ・アメナバル、
ゴヤ賞助演男優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞
2019「La hija de un ladrón / A thief’s daughter」ベレン・フネス、
ガウディ主演男優賞ノミネート
2021「Mediterráneo」マルセル・バレナ、ゴヤ賞主演男優賞、フォルケ賞、ガウディ賞、
フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、各男優賞ノミネート
2022「Los renglones torcidos de Dios」『神が描くは曲線で』オリオル・パウロ
ガウディ賞助演男優賞ノミネート
2024「Marco」アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ、ゴヤ賞主演男優賞、
フォルケ賞男優賞、プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、
スペイン俳優組合賞ほか多数
2024「El 47」マルセル・バレナ、ガウディ男優賞、ディアス・デ・シネ賞
★働き者ですね、出演本数の多さ、多彩さにアップして驚きました。このほかに短編、TVシリーズ、例えば最近では、Netflix 配信中の『鉄の手』(8話)、「30 Monedas」(16話、HBO MAX)に主演しており、さらに舞台にも出演しています。
★スペイン映画だけですが、サンセバスチャン映画祭2025のセクション・オフィシアル他ノミネート発表がありましたので、そろそろ作品紹介を予定しています。
◎主な関連記事
*『エル・ニーニョ』紹介は、コチラ⇒2014年09月20日/2015年01月15日
*「Lejos del mar」紹介は、コチラ⇒2014年11月30日
*「Felices 140」紹介は、コチラ⇒2015年01月07日
*「Marsella」紹介は、コチラ⇒2015年02月02日
*『スモーク・アンド・ミラーズ』紹介は、コチラ⇒2016年09月24日
*『1898:スペイン領フィリピン最後の日』紹介は、コチラ⇒2017年01月05日
*「Perfecta desconocidos」紹介は、コチラ⇒2017年02月26日
*『誰もがそれを知っている』紹介は、コチラ⇒2018年05月08日
*「La hija de un ladrón」紹介は、コチラ⇒2019年07月23日
*『戦争のさなかで』紹介は、コチラ⇒2019年11月26日
*「Mediterráneo」紹介は、コチラ⇒2021年12月13日
*「Marco」とキャリア紹介は、コチラ⇒2024年09月03日
*「El 47」紹介は、コチラ⇒2024年12月28日
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