『マリアの旅』のペトラ・マルティネスが女優賞*セビーリャ・ヨーロッパFF ― 2020年11月19日 13:50
ルーマニア映画「Malmkrog」が金のヒラルディージョ賞を受賞
(金のヒラルディージョ受賞作のポスター)
★去る11月14日、第17回セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2020(11月6日~)がルーマニアの監督・脚本家クリスティ・プイウの「Malmkrog」(20、201分)を金のヒラルディージョ賞に選んで閉幕しました。監督は脚本賞とのW受賞でした。「偉大な監督の可能性と19世紀のロシアを舞台にしたストーリーの展開に感銘を受けた。本作はパンデミックの時代に生きている私たちについて語ってもいる」が授賞理由。前作『シエラネバダ』(173分、東京国際映画祭2016上映)や公開もされたブラック・コメディ『ラザレスク氏の最期』(05、151分)などルーマニアの<ニュー・ウェーブ>を代表する監督、受賞作は3時間21分と長尺、長すぎてスペインでの配給元が見つからないと嘆いていましたが、本邦も同じでしょうか? なんとか滑り込みセーフで開催できたベルリン映画祭2020の「Encounters部門」でワールドプレミアされ、監督賞を受賞しています。
(ベルリン映画祭の監督賞受賞で登壇したときのフォト、2020年2月)
★セビーリャ・ヨーロッパ映画祭は、「空白の年があってはならない」という、セビーリャ市長フアン・エスパダスの意向で、他の映画祭がオンライン上映に切りかわるなか、午後6時には上映終了という過酷な条件のもとで開催されました。スペインの午後6時は子供の時間、これから大人の時間が始まる時刻ですから、スケジュールが大変、それでも300作を上映できたということです。欧米のコロナの脅威は留まることがありません。関係者の現地入りは難しく、クリスティ・プイウもビデオ出演でした。
(中央がフアン・エスパダス市長、右端が映画祭ディレクターのホセ・ルイス・シエンフエゴス)
★第2席に当たる審査員大賞グランプリは、スペインのルイス・ロペス・カラスコの2作目ドキュメンタリー「El año del descubrimiento」(200分)、こちらも3時間以上に及ぶ長尺でした。スペインの過去、現在、未来に関する壮大なドキュメンタリー <スペイン発見の年> は、バルセロナ・オリンピック、セビーリャ万博、新大陸発見500周年の1992年、スペイン南東部地中海に面したムルシア州の軍港カルタヘナの労働者たちのインタビューによる証言、夢と無力感で綴られている。ロッテルダム映画祭でプレミア、マル・デル・プラタFF、ボゴタFFでは作品賞を受賞している。 スペインでは既に公開が始まって絶賛されている。ゴヤ賞2021ドキュメンタリー部門の先頭を走っている。
(ルイス・ロペス・カラスコ、ロッテルダム映画祭2020にて)
★監督賞はドイツのクリスティアン・ペツォールトの「Ondine」(「Undine」)、さらに編集賞を受賞した。『東ベルリンから来た女』でベルリン映画祭2012の銀熊監督賞を受賞している。ほかに公開作品も多い。撮影賞はイタリア映画「Notturno」のジャンフランコ・ロージ、エリトリア出身の監督、脚本家、製作者でもあり、ドキュメンタリー『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』は、ベネチア映画祭2013で金獅子賞を受賞しているベテラン。マルガリタ・レドのドキュメンタリー「Nación」がスペイン映画監督特別賞を受賞した。初めて目にする監督なので検索して驚きました。1951年ガリシア州ルゴ生れ、サンティアゴ・デ・コンポステラ大学で哲学を専攻した作家、詩人、ジャーナリスト、大学教授、王立アカデミー会員になった最初のガリシア女性、映画の本数は少ないが監督、脚本の他プロデューサーでもある。いずれきちんとご紹介したいドキュメンタリーです。
(「Ondine」「Undine」のポスター)
(マルガリタ・レド、「Nación」のポスター)
★男優賞はフランス映画「Gagarine」のアルセニー・バティリー、女優賞は『マリアの旅』のペトラ・マルティネスの手に渡りました。昨年はロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」のマルタ・ニエトが受賞しているので連続スペイン女優が受賞したことになる。本邦では『おもかげ』という思わせぶりな邦題で公開された。ラテンビート・オンライン上映作品『マリアの旅』は、11月26日から配信が開始されます。
(ペトラ・マルティネス)
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