スペイン映画アカデミー新会長にマリアノ・バロッソ ― 2018年06月23日 18:08
副会長は女優ノラ・ナバスと製作者ラファエル・ポルテラ
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(スペイン映画アカデミーの新トリオ)
★去る6月9日、スペイン映画アカデミーの会長選挙が行われました。第16代会長選挙は対立候補者がゼロでしたので、いわばマリアノ・バロッソ以下二人の副会長候補ノラ・ナバスとラファエル・ポルテラの信任投票の形になりました。立候補は会長と2人の副会長、3人セットが原則です。バロッソとナバスは共に第15代の副会長で、年初に前会長イボンヌ・ブレイクが脳卒中で緊急入院、続いて治療専念のための辞任と慌ただしく、実質的には二人が映画アカデミーを運営してきました。従って今回の選挙は、どのくらい反対票が出るかに注目が集まっていた。ブレイク就任以来会員が300名ほど増えてトータル約1500人、会費が滞っている人は失格ということで、投票総数353のうち315票が賛成でした。多かったのか少なかったのかどっちでしょうか。
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(ラファエル・ポルテラとマリアノ・バロッソのプレス会見、ノラ・ナバス欠席)
★映画アカデミーの大仕事の一つがゴヤ賞選考と授賞式、進行に携わる総合司会者にTV司会者・コメディアン・製作者のアンドリュー・ブエナフエンテ(タラゴナ、1965)と女優・コメディアンのシルビア・アブリル(バルセロナ、1971)が選ばれ、同日アナウンスされました。二人は私生活では2005年からパートナーです(1女あり)。縁結びの神様は「トレンテ・シリーズ」のサンティアゴ・セグラかな。ブエナフエンテは今回が3回目のベテラン、久々の大物司会者です。ゴヤ賞2019は2月2日(土)、演出はブエナフエンテが設立した制作会社「El Terrat」が担当します。マドリード以外の開催が決定していますが、都市名は伏せられています。目下2候補に絞られているようです。以前マドリードとバルセロナが交代で開催されていた時期もありました。新執行部のトリオも司会者もカタルーニャ出身、参加者の利便を考慮すれば、バルセロナが一番有力でしょうか。
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(アンドリュー・ブエナフエンテとシルビア・アブリル)
*トリオ紹介*
★マリアノ・バロッソ(Mariano Barroso バルセロナ、1959)は、監督、脚本家、製作者、生粋のバルセロナっ子を自認している。アメリカン・フィルム・インスティチュートとサンダンス・インスティチュートで映画演出を、テアトロ・エスパニョール・マドリード他で舞台演出を学ぶ。1994年スリラー「Mi hermano del alma」でゴヤ賞新人監督賞を受賞、ベルリン映画祭出品、サン・ジョルディ賞、カルロヴィ・ヴァリ映画祭金賞を受賞。
★代表作はハビエル・バルデム、フェデリコ・ルッピを主役に起用した「Éxtasis」(95)がベルリン、ロンドン、ワシントン各映画祭に出品された。1999年、ハビエル・バルデムとエドゥアルド・フェルナンデスを主演にしたアクション・スリラー「Los lobos de Washington」は、トゥールーズ・スペイン映画祭の監督賞、金のスミレ賞を受賞した。2005年「Hormigas en la boca」でマラガ映画祭審査員特別賞、2007年、国境なき医師団の活躍を追ったドキュメンタリー「Invisibles」をハビエル・バルデムなどと製作、ゴヤ賞ドキュメンタリー賞を受賞、2010年のTVシリーズ「Todas las mujeres」に脚本を執筆、2013年に映画化、ゴヤ賞脚色賞他を受賞した。最新作は、イグナシオ・マルティネス・デ・ピソンの同名小説をTVドラマ化した「El día de mañana」(6話)、1960年代のフランコ時代のバルセロナが舞台のスリラー、2018年6月22日から放映される予定。舞台演出でも活躍している。
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(オリオル・プラ、アウラ・ガリドと「El día de mañana」の打ち合せをする監督)
★ノラ・ナバス(Nora Navas バルセロナ、1975)は、映画・舞台女優。主にバルセロナ派の監督作品に出演、日本公開作品では、アグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』の母親役で、サンセバスチャン映画祭2010女優賞、ゴヤ賞2011主演女優賞、ガウディ賞2011女優賞を受賞、一躍脚光を浴びた。アントニオ・チャバリアスの「Dictado」(12)に脇役で出演、ホラー映画と勘違いしたのか翌年『フリアよみがえり少女』の邦題で公開された。ほかにアルゼンチンのガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『笑う故郷』(「名誉市民」)では、主人公のノーベル賞作家ダニエルの秘書役で登場した。
★未公開作品ではガウディ賞やバジャドリード映画祭で女優賞を受賞した、マル・コルの「Todos queremos lo mejor para alla」(14)、グラシア・ケレヘタのシリアス・コメディ「Felices 140」(15)、マラガ映画祭2018で紹介したパウ・ドゥラの「Fermentera Lady」など女性監督作品に出演している。当ブログにもしばしば登場願っているバルセロナ派のベテランです。TVムービー、TVシリーズも多く、舞台女優としては、ガルシア・ロルカやアーサー・ミラーの戯曲に出演して、二足ならず三足の草鞋派です。会長不在のゴヤ賞2018授賞式では、バロッソと協力して無事乗り切った。
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(マリアノ・バロッソとノラ・ナバス、ゴヤ賞2018授賞式にて)
★ラファエル・ポルテラ(Rafael Portela Freire)製作者。Paramount Channil Espanaの出版副社長、9年間TCM OriginalやTNT Spainの映画チャンネルの番組編成を手掛けた。現在「Sentido Films」のプロデューサー。代表的なフィルモグラフィーは、2006年、俳優・監督のフェルナンド・フェルナン・ゴメスについてのドキュメンタリー「La silla de Fernando」(ルイス・アレグレ&ダビ・トゥルエバ)、2008年「Una palabra tuya」(アンヘレス・ゴンサレス・シンデ)、2010年ドキュメンタリー「La noche que no acaba」(イサキ・ラクエスタ)、マリアノ・バロッソのスリラー「Lo mejor de Eva」(11)、「Todas las mujeres」(13)、イサキ・ラクエスタのコメディ「Murieron por encima de sus posibilidades」(14)、「La propera pell」(『記憶の行方』16)など、バルセロナ派の監督作品を手掛けている。
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