ゴヤ賞2015ノミネーション*落ち穂拾い ③2015年02月07日 17:39

           フアン・ディエゴを応援していたのに

    

★脚色賞:チェマ・ロドリゲスのデビュー作Anochece en la Indíaは、マラガ映画祭2014でフアン・ディエゴが男優賞を受賞、館内が一番沸いた映画でした。他にホセ・マヌエル・ガルシア・モヤノが編集賞を受賞しました。当時ゴヤ賞受賞が云々されていましたが、結局ノミネーションされたのは、パブロ・ブルゲスダビ・プラネルチェマ・ロドリゲス共同執筆の脚色賞1、どうも選出方法に問題があるのじゃないかと勘ぐりたくなります。かつて選出法に疑問を呈してアカデミーと絶縁した大物監督がいましたけど。公開が411日と大分前なのも損しているんです。

 

ストーリー、下半身不随の老リカルドの車椅子冒険ロード・ムービー。かつてオリエントをトラックでヒッピーしていたリカルドは、人生の最期をインドで迎えようと時間を遡る旅を決心する。しかし今や老いと病で車椅子生活、ルーマニア女性ダナを介助者にして陸路をインドへと向かう。ヨーロッパを横断してトルコ、イラン、パキスタンを経てインドへ。孤独な二人の旅は、人生にけりをつける口実となり、やがて愛と時の経過についての、現在の価値と失われた時間の回復の大切さについての物語に変貌していくだろう。

 

                

               (リカルドとダナ、映画から)

anteriorsiguiente

フアン・ディエゴ1942年セビリャ生れ)が下半身不随の老ヒッピーのリカルドを演じます。車椅子で出発、ヨーロッパを横断してインドに到達しようと旅に出る。勿論死出の旅です。わざわざ何でインドまで行って死にたいのか。ずっと車椅子の撮影だから、ディエゴは断るだろうと思ったと監督。ディエゴ自身も「自分とかけ離れたもの、下半身不随とかヒッピーとかね、そういう役は好きじゃない」と。まず撮影前の5カ月間、車椅子で暮らしてみることにした()。散歩も車椅子、知り合いやファンが「どうしたんだい?」と()。座りづめで体は浮腫むし、車椅子から転落しそうになるしで恐怖だったそうです。しかしそうこうしているうちに何故リカルドがインドで死にたいかが理解できるようになった。萎えた足で椅子に縛り付けられた人生がどんなものかが理解できたと。「死を望むのは、人生をこよなく愛しているから」です。ノミネーション1個でも日本上陸が待たれます。

 

★監督をご紹介しておきます。チェマ・ロドリゲス1967年セビリャ生れ、作家、監督、脚本家。テレビ・ドキュメンタリー映画ではベテラン。2006年の Estrellas de la Linea が、ベルリン映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞。またマラガ映画祭2006審査員特別メンション、サンセバスチャン映画祭でセバスチャン賞、カルロヴィ・ヴァリ、モントリオール、エジンバラ、シカゴ等々に正式出品。他に“Coyote 2009)、“El abrazo de los peces 2011)が代表作。

マラガ映画祭2014は、コチラ2014年0411¨

フアン・ディエゴ紹介は、コチラ⇒2014年0421

 

     

   (フアン・ディエゴ、監督、共演のハビエル・ペレイラ。マラガ映画祭記者会見にて)

 

         イベロアメリカ映画賞は確定している!

     

Relatos salvajes受賞が確実だからもうイイヤ、というわけにいかないか。かつて当ブログでとり上げた2作品がノミネーションされているのでちょっと触れておきます。

 

クラウディア・ピントLa distancia más larga2013)は、ベネズエラ=スペイン合作、113分。ハビエル・フェセルの『カミーノ』で信仰に凝り固まった母親に扮したカルメ・エリアスが、人生にけりをつけようと生れ故郷に戻ってくる60代の女性を演じる。映画初出演の子役オマール・モヤ、カラカス生れのアウレック・ワイートAlec Whaite1990)など。過去を辿る死出の旅、家族の出会いなどを、ベネズエラ南西部にあるグラン・サバナ(ヒロインの生れ故郷)、雄大なテーブルマウンテンのロライマ山を背景に描く。

   

受賞歴:モントリオール映画祭2013「グラウベル・ローシャ賞」受賞、ウエルバ・ラテンアメリカ映画祭2013観客賞受賞。クリーブランド映画祭2014優れた女性監督に贈られる賞を受賞。ヒホン映画祭2013コンペティション正式出品、ハバナ映画祭2013初監督作品正式出品など他多数。

 

              

          (カルメ・エリアスとオマール・モヤ、映画から)

 

クラウディア・ピントClaudia Pinto Emperador:ベネズエラの監督、脚本家、製作者。TVシリーズで出発、長編第1作で数々の賞を受けた。ベネズエラの二つの顔、首都カラカスの喧騒、遠く離れたグラン・サバナのロライマの静寂、そこで描かれるのは「生を語るための死」、何故なら死は時間より前にやってくるからである。「家族の別れと和解、許しと希望が語られる」と監督。ゴヤ賞にノミネートされたのは、「とても光栄です、なぜなら各国レベルが高くノミネーションは容易じゃありませんから」と。

モントリオール映画祭2013の紹介は、コチラ2013年09月05 

   

 (本作撮影中のクラウディア・ピント監督)

                       

 

エルネスト・ダラナスConductaは、2013年イカイクICAIC唯一資金を提供して製作したキューバ映画。そういうわけでキューバ代表作品として選ばれる場合は必ず本作になります。ゴヤ賞以外にも米国アカデミー賞も本作でした。マラガ映画祭2014「ラテンアメリカ」部門も同じですが、幸運にも最優秀作品賞を受賞しました。監督賞にエルネスト・ダラナス、女優賞にアリーナ・ロドリゲス、審査員スペシャル・メンション賞をアルマンド・バルデス、さらにディエゴ・フェルナンデス・プジョルの“Rincón de Darwin”(ウルグアイ=ポルトガル)と観客賞を分け合いました。グアダラハラ映画祭他にも出品。

マラガ映画祭2014ラテンアメリカ映画部門紹介は、コチラ2014年04月04

 

           

        (アリーナ・ロドリゲスとアルマンド・バルデス、映画から)

 

バンデラス栄誉賞、アルモドバルの手から*ゴヤ賞20152015年02月07日 23:36

おしまい編として、再びバンデラス栄誉賞について

★間もなくガラが始まりますが、アルモドバル自らがバンデラスにゴヤ栄誉賞を手渡すとか。今回、アルモドバル自身が監督した映画はありませんが、エル・デセオが製作したRelatos salvajesが作品賞を含め9個ノミネーションされている。バンデラスから「ゴヤの胸像は是非アルモドバルの手から」と、アカデミーに依頼があったようです。『オール・アバウト・マイ・マザー』のオスカー像をアルモドバルに手渡したのは、当時ハリウッドで活躍していたバンデラスとペネロペ・クルスでした。スペイン・アカデミーとアルモドバルの確執は根深く、完全に解消されたわけではありませんが、出席の理由が二つになったので、多分現れるでしょうね。

 

        (アルモドバルとバンデラス、サンセバスチャン映画祭2008から)

 

★バンデラスがサンセバスチャン映画祭2008で「ドノスティア賞」を受賞したときも贈呈者はアルモドバルでした(Donostiaはバスク語でサン・セバスティアン)。2008年はゴヤ賞授賞式にはまだ欠席していた時期(2005年から欠席)、復帰したのはアレックス・デ・ラ・イグレシアがアカデミー新会長になった2010年でした。『プリズン211』が作品賞を含め大賞を独り占めした年、モンソン監督にゴヤの胸像を手渡しのがアルモドバルでした。予期せぬアルモドバル出現にみんな唖然としてしまった。「あんたがしつこいから・・・」とアルモドバル、あんたとはデ・ラ・イグレシア、復帰をしつこくせがんだのでしょうね()

 


★第29回目の栄誉賞受賞者で最も若い54歳、育ての親でもあるアルモドバルを前にして、どんなスピーチをするのでしょうか。2014年は映画を映画館では見なかった人、スペイン映画には興味を示さなかった人が映画館に足を向けた画期的な年でした。大蔵省にもタンマリ税金が入ったのだから、今年は映画産業ほか文化事業に予算を回して下さい、消費税21%は高すぎますゾ。