モントリオール映画祭2014*ノミネーション⑥2014年09月04日 12:00

★最後がペルー映画、サイコ・スリラーの要素をもつ政治サスペンス、ジャーナリストのリカルド・ウセダのMuerte en el Pentagonitoに着想を得て製作された。共同監督の二人はともに本作がデビュー作。話題の焦点は、新人監督より主役を演じたベテラン俳優‘Cachin’ことカルロス・アルカンタラにあるようです。ショーマンとしてテレビ界で活躍しています。

 

   ワールド・コンペティション部門(続き)

Perro GuardiánGuard Dogペルー Bacha Caravedo & Chinón Higashionna 監督

製作Señor Z

製作者マピ・ヒメネスロレナ・ウガルテチェ

監督:バチャ・カラベド/チノン・ヒガシオンナ

脚本:バチャ・カラベド

撮影:フェルガン・チャベス・フェレール

音楽:パウチ・ササキ

データ:ペルー、スペイン語、2014、ジャンル(スリラー、陰謀、犯罪)、ペルー内戦、パラミリタール(私設軍隊)、2012年ペルー文化省から企画賞として18万ドルが贈られた。モントリオール映画祭2014ワールド・コンペ正式出品(823日上映)、88分、ペルー公開201494

 


キャストカルロス・アルカンタラ(シカリオのペロ)、レイナルド・アレナス(アポストル)、マイラ・ゴニィ(ミラグロス)、ラモン・ガルシア(パドリーノ)、ミゲル・イサ(メンディエタ)、フアン・マヌエル・オチョア(オルメーニョ)、ナンシー・カバグナリ、フリア・ルイス、サンドロ・カルデロン、オズワルド・ブラボ、ホセ・メディナ他

 

ストーリー2001年リマ、反テロの闘争時代に人権侵害の廉で服役していた軍人と市民が、「軍人恩赦法」により釈放された。パラミリタール(私設軍隊)の元メンバーだったペロもその恩恵を受けた。今はある民兵軍組織のシカリオとして暗殺を請け負っている。部屋に閉じこもり上層部からの指令を実行するだけの日々を送っている。ある指令が「キリストの戦士」という教会に彼を導いていく。祈りと叫びのなかでカルトの指導者アポストルに出会うが、彼はペロの何かを嗅ぎつけているようだ。ペロはそこで出会ったミラグロスという娘に惹きつけられていく。任務をキャンセルしたペロは、教会に足しげく通い静かにミラグロスを見守っている。それまで冷酷なシカリオに徹していたペロも次第に任務を苦痛に思うようになっていった。暗殺には正当な根拠が必要ではないのか、彼の武器は神の剣に変わろうとしていた。

 

 
 (ペロに扮したカルロス・アルカンタラ)

★ペルー内戦後のリマが舞台、ファースト・フィルム部門のLa hora azul(アロンソ・クエトの同名小説の映画化)で触れましたように(⇒コチラ モントリオール映画祭④)、ペルーも長期間内戦に苦しみました。主人公ペロはパラミリタールという政府軍並みの軍事力を備えた私設軍隊のもとメンバー、恩赦で娑婆に戻っても結局彼にできるのはシカリオしかない。リマの工業地区のアパートの一室に閉じこもり機密の指令を待つ。「俺は背中にも目がある」と武器を通してしか自分を語れない男に扮するのがカルロス・アルカンタラ、ショーマンとしても人気があり、テレビ・インタビューでも若い二人の監督より彼に質問が集中しています。「前から映画化されたら演ってみたい役だった。願いが叶って嬉しい」と語るアルカンタラ、更に「主人公役でモントリオールに行けるのは、それだけで賞を貰ったようなもの。仕事に対する批評や意見が私の進むべき正しい道を教えてくれるから、それも受賞と同じです。ノミネーションされている作品が他に20作ほどあるけれど、男優賞を受賞することを夢見ている。もし叶ったら飛行機に乗ってすっ飛んで帰ってくるよ」とインタビューに語っています

既に発表になっており、中国のヤオ・アンリェンの手に渡ってしまいました)

 

            (ピエロに扮したショーマンのアルカンタラ)

 

★「キリストの戦士」と呼ばれる教会の指導者アポストルは、<キリスト再来>のメッセージをもたらすために神から選ばれた一種の救世主と感じている。冷静沈着、堂々としてエネルギッシュに響く声は伝道者として申し分がない。あたかも忠実な戦士のごとく士気を鼓舞する。「暗殺者は疑問を持たずに発砲する。しかし正義の人はまず何故かと理由を知りたく思う」ものだ。もう一人の重要登場人物に扮するのがレイナルド・アレナス(レイナルドのスペルが1字違うが、訳すと『夜になるまえに』のキューバ作家と同名になってしまう)。1944年生れ、1984年、フェデリコ・ガルシア・ウルタドのTupac Amaruで映画デビュー、ルイス・リョサのSniper1993、米国合作)のカシケ役で出演。リョサ監督はノーベル賞作家バルガス=リョサの従兄弟、彼の『ヤギの祝宴』を映画化した(2006、ラテンビート2006で上映)。

 

            

 

ミラグロス、一人前の女性に近づきつつある16歳。「時々体のなかにサタンがいるようで怖くなる。しかし聖霊がいるように感じるときは素晴らしい」と語るミラグロス。泣いたと思えば直ぐ笑い、優しさも簡単に残酷さに豹変する。心の中に矛盾を抱えて生きている。彼女が本当に望むことをやり続けるには、過失、宗教的罪、狂信的行為に包まれたキリスト教の現世で生きていかねばならない。マイラ・ゴニィは、2007TVドラ・シリーズに出演後、サンドロ・ベントゥラのEl Buen Pedro2012)で映画デビュー、本作が2本目の新人。

 


パドリーノ、リマの中心街で小さなペルー料理店を経営し、ミラグロスを育てている。「キリストの戦士」のナンバー2、この組織を動かしている。必要あれば、しばしばアポストルの代理人を務めている。ラモン・ガルシアは、フランシスコ・ロンバルディのLa ciudad y los perros1985)、ルイス・リョサFire on the Amazon1993、ペルー≂米国)、アルベルト・ドゥランAlias ’La Gringo’1991、ペルー≂スペイン他)などに出演。

 


メンディエタ、敵を圧倒する仕事のため今もペロと接触している。彼は武器を使わない書斎派の軍人、「恩赦は継続するだろうが、これはショーみたいなものだからほうっておくさ」。ミゲル・イサは、リマ出身、La ciudad y los perrosがデビュー作、ミゲル・バレダ≂デルガドの Y si te vi, no me acuerdoYVムービー1999、ペルー≂独)、ダニエル・ロドリゲスEl acuarelista2008)とファブリツィオ・アギーレTarata2009)の2作では主役を演じている。タラタは中流階級以上が住んでいる通りの名前、内戦でテロリストの攻撃を受け崩壊していく家族の肖像が描かる。 


★監督紹介:これがまだ詳細が分からない。バチャ・カラベドBacha Caravedoは、監督・脚本家、短編Papapa2000)とLos herederos2005)を撮っている。チノン・ヒガシオンナChinón Higashionnaは正真正銘のデビュー作、名前と風貌から類推して沖縄の東恩納出身の日系ペルー人のようです。

 

    (左がヒガシオンナ監督、カラベド監督)

★音楽担当のパウチ・ササキPauchi Sasakiも日系ペルー人、28歳と若いヴァイオリニスト、ニューヨーク他海外で学んでいる。東京にも来日しているようです。予告編からですが、これがなかなかいい。 


既に授賞式(91日)があり、本ブログにアップした作品がグランプリを含めて3作も受賞しました。次回は少しお祝いをして、モントリオールは閉幕します。

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