アイトル・ガビロンドの「Patria」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑥ ― 2020年08月12日 15:00
特別上映はアイトル・ガビロンドのTVミニシリーズ「Patria」

★セクション・オフィシアル部門で特別上映される「Patria」は、全8話で構成されたTVミニシリーズ作品、アイトル・ガビロンドがフェルナンド・アランブラの同名小説を脚色した。監督はオスカル・ペドラサとフェリックス・ビスカレトが4話ずつ手掛けている。新型コロナウイリスが猛威を振るう以前の2019年夏から撮影に入り、HBO(Home Box Office 米国の有料ケーブルテレビ放送局)を介して2020年5月17日から放映されているようですが、今回スクリーンに登場することになった。1発の銃弾によって分断されたバスクの2つの家族の目を通して、ETAのテロリスト・グループの30年間にわたる歴史が語られる。

(原作者フェルナンド・アランブラと原作)
「Patria」スペイン、2020、TVミニシリーズ(全8話)
製作:HBO España / Alea Media / Mediaset España
監督:アイトル・ガビロンド(立案)、オスカル・ペドラサ、フェリックス・ビスカレト
脚本:アイトル・ガビロンド、(原作)フェルナンド・アランブラ
撮影:アルバロ・グティエレス、ディエゴ・ドゥセエル
音楽:フェルナンド・ベラスケス
編集:アルベルト・デル・カンポ、ビクトリア・ラメルス
製作者:パトリシア・ニエト、ダビ・オカーニャ、テデイ・ビリャルバ、アイトル・ガビロンド
キャスト:エレナ・イルレタ(ビトリ)、アネ・ガバライン(ミレン)、ロレト・マウレオン(ミレンの娘アランチャ)、スサナ・アバイトゥア(ネレア)、ミケル・ラスクライン(ミレンの夫ジョシィアン)、ホセ・ラモン・ソロイス(ビトリの夫チャト)、エネコ・サガルドイ(ミレンの息子ゴルカ)、ジョン・オリバレス(ミレンの息子ホセ・マリ)、イニィゴ・アランバリ(シャビエル)、他多数
ストーリー:2011年、ETAの戦闘中止のニュースが流れた日、ビトリは夫チャトの墓に報告に行った。テロリストに殺害された夫と人生を共にした生れ故郷へ戻ろうと決心する。しかしビトリの帰郷は町の見せかけの静穏をかき乱すことになる。特に親友だった隣人のミレンには複雑な思いがあった。ミレンはビトリの夫を殺害した廉で収監されているホセ・マリの母親だったからだ。二人の女性の間に何があったのか、何が彼女たちの子供や夫たちの人生を損なったのか。一発の銃弾で分断された二つの家族に横たわるクレーター、忘却の不可能性、許しの必要性を私たちに問いかける。
★アイトル・ガビロンド(サンセバスティアン1972)は、脚本家、TV製作者、オーディオビジュアル・フィクションの企画立案者としてスペインでは抜きんでた存在である。特に本邦でもNetflixで配信されているTVシリーズ『麻薬王の後継者』(18「Vivir sin permiso」)は、その代表的な成功作。アルツハイマーになった麻薬王ネモ・バンデイラにホセ・コロナド、彼の右腕に演技派のルイス・サエラ、人気上昇中のアレックス・ゴンサレス、レオノル・ワトリングなどを配した大掛りなシリーズ。「原作を読みはじめたときは霧雨を浴びたようだったが、だんだん雨脚が強くなり最後にはずぶ濡れになった」と、その原作の魅力を形容している。「暴力と共に生きていた時代があったことを、次の世代に橋渡し、未来に向けての一つの旅」とも語っている。

(二人の主役に挟まれて、両手に花のアイトル・ガビロンド)
★フェリックス・ビスカレト(パンプローナ1975)は、監督、脚本家、製作者。スペイン映画祭2019(インスティトゥト・セルバンテス東京主催)で上映された『サウラ家の人々』(17「Saura(s)」)を監督している。監督キャリアは以下に紹介しています。
*『サウラ家の人々』の作品&監督紹介は、コチラ⇒2017年11月11日
★キャストは、姉妹のように仲良しだったという主役の一人ビトリ役のエレナ・イルレタ(サンセバスティアン1955)は、イシアル・ボリャインの『花嫁のきた村』や『テイク・マイ・アイズ』ほかに出演している。もう一人の主役ミレン役のアネ・ガバライン(サンセバスティアン1963)は、ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガの『フラワーズ』、古くはアレックス・デ・ラ・イグレシアの『13みんなのしあわせ』や『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』、当ブログでご紹介した本作と同じバスクを舞台にしたアナ・ムルガレンの「La higuera de los bastardos」などに出演しているベテラン。
*「La higuera de los bastardos」の作品紹介は、コチラ⇒2017年12月03日

(ビトリ役エレナ・イルレタとミレン役のアネ・ガバライン)
★ミレンの息子ゴルカ役のエネコ・サガルドイは、ジョン・ガラーニョ&アイトル・アレギの『アルツォの巨人』(17「Handia」)で巨人役になった俳優。ビトリの夫チャトに扮したホセ・ラモン・ソロイス、ミレンの夫ジョシィアンのミケル・ラスクラインの二人は、『フラワーズ』に揃って出演している。バスク語話者は限られているから、結局同じ俳優が出演することになっている。

(サンセバスティアンに勢揃いしたスタッフと出演者たち、中央がアイトル・ガビロンド)
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