『そして彼女は闇を歩く』Netflix 鑑賞記*SSIFF2025 ㉓ ― 2025年11月23日 11:44
アグスティン・ディアス・ヤネスの新作「Un fantasma en la batalla」

★サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティションで上映された、アグスティン・ディアス・ヤネスの7年ぶりの新作「Un fantasma en la batalla / She Walks in Darkness」(『そして彼女は闇を歩く』)は政治スリラードラマ、「バスク祖国と自由」ETAの解体のために組織に潜入して無事生還できた唯一人の女性潜入捜査官エレナ・テハダ(偽名アランサス・ベラドレ・マリン)の実話に着想をえて製作されたフィクションです。2024年、アランチャ・エチェバリアが同一人物を主役に据えた「La infiltrada / Undercover」を撮っており、今年のゴヤ賞で作品賞と潜入捜査官を演じたカロリナ・ジュステが主演女優賞を受賞したばかりです。『アンダーカバー 二つの顔を持つ女』の邦題でWOWOWが放映した。両作ともフィクションですが、先行したエチェバリアのほうがエレナ・テハダの伝記に近いようです。基本データは作品紹介記事に譲り、キャスト陣とストーリー紹介だけアップします。本祭には監督、製作者、主要キャストが「ジェノサイド・ストップ」のバッチをつけて参加しました。
*「Un fantasma en la batalla」の紹介記事は、コチラ⇒2025年07月16日
*「La infiltrada」の作品とエレナ・テハダの紹介記事は、コチラ⇒2025年01月15日

(監督と出演キャスト、サンセバスチャン映画祭、9月24日フォトコール)
キャスト:
スサナ・アバイトゥア(偽名アマイア・ロペス・エロセギ/アマヤ・マテオス・ヒネス)
アンドレス・ヘルトルディクス(フリオ・カストロ中佐)
イライア・エリアス(ベゴーニャ・ランダブル、バスク語学校校長)
ラウル・アレバロ(アリエタ/ソリオン)
アリアドナ・ヒル(ギプスコア1961、ソレダード・イパラギレ・ゲネチュア/通称アンボト)
ミケル・ロサダ(ギプスコア1954、イグナシオ・グラシア・アレギ/
筆名イニャキ・デ・レンテリア)
アナルツ・スアスア(サンセバスティアン1961、アンボトのパートナー、ミケル・アルビス・イリアルテ/ミケル・アンツァ)
ハイメ・チャバリ(チキTxiki /エル・ビエホ)
クリス・イグレシアス(治安警備隊員アデラ、アマイアの連絡係)
アンデル・ラカリェ(アンドニ)
ディエゴ・パリス(エスケルティア)
フェルナンド・タト(ビスカヤ1966、フランシスコ・ハビエル・ガルシア・ガステル/
チャポテ)
ミケル・ララニャガ(ダゴキ)
アルフォンソ・ディエス(イスンツァ)
エドゥアルド・レホン(内部告発者)
イニャキ・バルボア(ヨス・ウリベチェベリア・ボリナガ)
エネコ・サンス(チェリス)
アルマグロ・サン・ミゲル(アマイアの恋人アントニオ)、フアナ・マリア(アマイアの偽の母親)、イゴル・スマラベ(ホセ・マリア・ムヒカ、フェルナンド・ムヒカの息)、ほか多数
◎ETA による誘拐&殺害された政府要人など
アルベルト・サンチェス(グレゴリオ・オルドニェス、国民党PPバスク州議会議員、
1995年1月23日、享年36歳)
ホルヘ・ウエルゴ(ホセ・アントニオ・オルテガ・ララ、刑務官、
1996年から532日間幽閉後救出)
フアン・モントーヤ(フェルナンド・ムヒカ、弁護士、活動家、社会労働党PSOE党員、
1996年2月6日、享年62歳)
ホセ・マリア・エルナンデス(フランシスコ・トマス・イ・バリエンテ、法学教授、
元憲法裁判所長官、歴史家、1996年2月14日、享年63歳)
ウィリアム・モンラバル・クック(ミゲル・アンヘル・ブランコ、PP議員、
1997年7月10日誘拐、13日死去、享年29歳)
ベナン・ロレヒ(フェルナンド・ブエサ・ブランコ、政治家、PSOEバスク社会党PSE-EE、
2000年2月22日、享年53歳)
ストーリー:1990年、バスク祖国と自由(ETA)の解体に寄与した潜入捜査官アマイアの恐怖の10年間が語られる。アマイアのミッションは、ETAがフランス南西部バスクに武器弾薬などを隠し持つ重要な秘密のアジト(スロ)を突き止めることであった。フランコ没後激化した実際に起きた要人暗殺、自動車爆破事件の数々を背景に、スペインの歴史的、政治社会的文脈に根ざした捜査官たちに触発されたフィクション。90年代後半から21世紀初頭の治安部隊による「サンクチュアリ作戦」をベースにしている。
生還できた唯一人の女性潜入捜査官の人生に触発されたフィクション
A: まだ進行中の事案ですから評価は別れます。ジャンルとしては実際に起きた殺害事件をドラマ化して挟みこんだドキュメンタリー・フィクションです。ヒロインの潜入捜査官アマイアのモデルは、アランサス・ベラドレ・マリンという偽名をもつ国家警察所属の警官エレナ・テハダと思われますが、ドラマでは治安警備庁の隊員になっています。人物造形もかなり違っていて、アマイアの上司カストロ中佐も当然違うわけです。
B: アマイアは実在しません。冒頭で「これはある捜査員の物語かもしれない」と、フィクションだと予防線を張っています。しかしETA側の主だった登場人物は虚構の人もいますが、多くは同じ名前(通称、あるいはニックネーム)や行動から本人と同定できるケースが多いから混乱します。
A: 先行して製作されたアランチャ・エチェバリアの『アンダーカバー』(「La infiltrada / Undercover」)を視聴した人は混乱するかもしれません。あちらは同じフィクションでもドキュメンタリー・ドラマに近く、よりテハダの実像にそっている。当時の治安警備庁は警察庁と同じ内務省に所属していましたが、どちらかというと国防省所属の三軍統合本部(陸海空)に近い仕事をしており、現在では国防省に所属しています。
B: 実際は二つの組織が手柄を競い合って反目していた部分があった。プライドが高いといえば聞こえがいいが、スペイン人の妬み深さは定評がある。先行作品はゴヤ賞作品賞とカロリナ・ジュステが主演女優賞をゲットしたばかり、まだ余韻が残っているからタイミングが悪かったかもしれない。
A: テロリスト・グループ「コマンド・ドノスティ(サンセバスティアン)」というのは、ETAのなかでも最も過激な集団だったということです。バスク自治州ギプスコアの県都サンセバスティアンの責任者であったアリアドナ・ヒル扮する通称アンボトは実在しており、以下チャポテ、イニャキ・デ・レンテリア、ミケル・アンツァなどのテロリストたちも実在の人物です。
B: チャポテ、本名フランシスコ・ハビエル・ガルシア・ガステルは、劇中でも再現されたグレゴリオ・オルドニェスの暗殺者、ミゲル・アンヘル・ブランコやフェルナンド・ムヒカの暗殺などにも関与している。

(アンボトの沈黙にビビるアマイア)
A: 劇中、数本の短編映画を撮り、脚本家、ミュージシャンでもあるフェルナンド・タト扮するチャポテは、サンセバスティアンの旧市街のレストラン「ラ・セパ」で食事中のオルドニェスを殺害したとき、赤いカッパを着用していたが、実際も赤いカッパだったということです。ミゲル・アンヘル・ブランコ議員誘拐の後に起きたスペイン全土で200万人とも250万人とも言われる抗議デモのシーンも、アーカイブ映像とそっくりでした。
B: 死刑廃止のスペインでは、殺害件数が多すぎて刑期はトータルすると三桁と寿命より長い。ギプスコアの幹部アンボトは冷静沈着、美人で風雅なのも実像に近いとか。

(殺害決行日は雨が降っていたので赤いカッパでも怪しまれなかった)
A: アンボトの通称は1994年秋ごろから使用、スペインとフランスを往復して「血なまぐさい」メンバーの一人と言われ、多くの殺害に積極的に関わっています。ETA中央委員会の二人目となる女性執行委員、軍事作戦を担当する4人のメンバーの一人でもあり、部下にも厳しかったそうです。2004年フランスで、1999年からパートナーだった筆名ミケル・アンツァことミケル・アルビス・イリアルテと共に逮捕された。アンツァはETA の創設者の一人ラファエル・アルビスの長男でETA メンバーでしたが作家でもあり、現在は執筆活動をしている。劇中ではアナルツ・スアスアが扮している。
B: 治安部隊が2004年に決行した「サンクチュアリ作戦」でアンボトとアンツァは逮捕されるのですが、映画はもっと前の印象でした。現実に起きた部分とフィクション部分が入れ子になっています。これはドラマであってドキュメンタリーではない。
A: アマイアが結婚を諦めて現場に復帰するのは、1997年夏のミゲル・アンヘル・ブランコ議員の誘拐、続く殺害の後ですからズレを感じました。商業映画ですから観客サービスも必要です。ただ埋め草的なシーン、ウエディングドレスを着せるなどやりすぎ、諸所に挟みこまれた二人の逢瀬も緊張が途切れて、個人的には残念でした。ただ起こらなかった事件のでっち上げはしていない。
B: 実際に起きたグレゴリオ・オルドニェスやブランコ議員の殺害シーンなどいやにリアルな部分がある半面、アマイアとカストロ中佐の密会シーンもかなり無防備でした。ミケル・ロサダ演じるイニャキ・デ・レンテリアも実在の人ですか。
A: 詳細が分からないようですが、グループのイデオロギー指導者ミケル・アンツァに次ぐリーダーと言われ、アルジェリアでゲリラ訓練を受けた。2000年9月フランス南西部のバスクで逮捕されている。
B: アンボトが二重スパイではないかとアマイアの身元確認を依頼したハイメ・チャバリ扮する「チキ/エル・ビエホ」は架空の人物でしょうか。

(ハイメ・チャバリ、2022年頃)
A: フェロス栄誉賞2025の受賞者チャバリ監督がスクリーンに登場しました。自作にも出演する他、ベルランガやアルモドバル作品にも小さな役ですが出演している。本作の「チキ/エル・ビエホ」は、ETA の象徴的な人物で、フランコ総統が死去する直前の1975年9月、21歳の若さで銃殺刑になったフアン・パレデス・チキ(1954)をシンボライズしているように思いました。他にも同定できない登場人物としてイスンツァがいる。1996年1月、ログローニョの刑務官オルテガ・ララを誘拐してギプスコアのモントラゴンに幽閉、翌年夏に彼が救出されるまでの532日間の監視役を務めた人物でした。
B: イライア・エリアス扮するバスク語学校の校長ベゴーニャは実在しませんね。

(エタ組織に入った理由をアマイアに問い詰めるベゴーニャ)
A: アマイアと同じようにベゴーニャに近いモデルはいるそうです。来年のゴヤ賞助演女優賞ノミネートは期待できます。同じくラウル・アレバロのアリエタも架空の人物に思われますが、指導部の一人に同名の人がいるようです。アリエタはバスク語で「石の多い場所」をさし、慎重で猜疑心のかたまりのような人物造形にぴったりです。しかし隙のないアマイアの身辺を探るため彼女のアパートに同居したのに、盗聴器を発見できないなんてあり得ない。
B: 治安警備隊の上層部がエタの動きを探るため彼を同居させるようアマイアに指示していたわけですから、狐と狸の化かし合いです。アレバロは視聴者を不安にさせることに成功していた。誘拐したブランコ議員の処遇を決める指導部の会議でも、殺害に迷わず挙手したリーダーでした。

(アマイアを監視するアリエタ)
A: アマイアの身辺警護のため多くの治安警備隊員が張り込んでいる。時間稼ぎのためエレベーターを故障に見せかけたり、クリス・イグレシアスのアデラも危険な連絡役を受け持っている。
B: エレベーターを修理するふりをしていたのは仲間ですね。エレナ・テハダを守っていた12人の警察官は「十二使徒」と呼ばれていたそうですが、テハダは顔を知らなかったと語っている。怪しまれないようにわざとそうしていた。
A: 劇中でも空軍大尉の身元がバレて、彼女が運転している車中で射殺されたり、アマイア自身が知らずに同僚を撃ってしまったりなど、用心のため互いに知らされていない。
B: アンドレス・ヘルトルディクスが演じたフリオ・カストロ中佐のモデルは、何人かがミックスされている印象です。

(アマイアの情報を受け取るカストロ中佐)
A: 『アンダーカバー』でルイス・トサールが演じたアンヘル・サルセド警部のモデルは、国家警察のフェルナンド・サインツ・メリノ長官だそうです。1990年初頭にはギプスコアのスペイン警察の指揮を任されていた。取り調べには拷問も辞さなかったそうです。長官は『アンダーカバー』の脚本作成に参加しており、中佐の造形には彼が部分的に取り入られているように感じました。ETAに顔が割れているエレナ・テハダは、1999年3月、任務終了後スペイン内をあちこち移動させられ、最終的にアンドラ公国大使館の治安機関に配属され慎重な活動をしている。
B: 塀の中とはいえ未だほとんどが存命、裁判が続行中ですから、映画にするにはどちら側にも不満が残ります。

(先行作品『アンダーカバー』)
A: スペイン内戦ものとは訳が違う。映画の冒頭部分でフランコ将軍の腹心で後継者だったルイス・カレロ・ブランコ首相暗殺のアーカイブ映像が流れました。1973年12月、ETA が得意とした自動車爆破で即死、彼の乗っていた車は20メートル空中に飛びあがり6階建てのビルを飛び越えて隣りのビルの2階屋根部分のパティオというか3階のバルコニーに落ちた。
B: 凄い破壊力です。1979年、この爆破テロ事件は『アルジェの戦い』で金獅子賞を受賞したジッロ・ポンテコルヴォが「Operación Ogro」(「鬼作戦」)として映画化した。
A: フランコ没後4年足らずの映画化で物議を醸したが、これはフランコ政権時代のテロ事件であり、バスク語使用も自治権も復権した90年代のテロとは区別して考えるべきです。かつて長いあいだ自分たちを容赦なく苦しめたスペイン人を懲らしめる目的のテロに民主化も正義の欠片もないでしょう。監督が冒頭に入れた目的は何かです。
B: 後継者を失ったフランコ政権はETA弾圧の強化に拍車をかけ、犠牲者を増やしていった。彼らは自分たちはバスク人でスペイン人ではないと考えている。
A: 『鬼作戦』以外にも、エタラを描いた作品は量産されている。本作にも挿入された2000年2月22日に起きたPSOEのフェルナンド・ブエサ・ブランコ殺害事件をバスクの監督エテリオ・オルテガがドキュメンタリー「Asesinato en febrero」(01、「2月の暗殺」)のタイトルで撮った。製作者のエリアス・ケレヘタもギプスコア県エルナニ出身(1934)です。カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でプレミアされ、マラガ映画祭でドキュメンタリー賞を受賞している。
B: ケレヘタは、カルロス・サウラやビクトル・エリセ、モンチョ・アルメンダリス、レオン・デ・アラノアなどを国際舞台に連れ出したスペインを代表する製作者でした。
A: 監督、脚本家でもあった。当ブログでは、その他ルイス・マリアスの「Fuego」(発砲)、ボルハ・コベアガのコメディ仕立ての「Negociador」(交渉人)、アイトル・ガビロンドのTVミニシリーズ「Patria」(祖国)、イシアル・ボリャインの「Maixabel」(マイシャベル)などをアップしています。
B: ボリャイン映画のモデルになったマイシャベル・ラサは、2000年7月に暗殺された政治家フアン・マリア・ハウレギの未亡人です。どうやらディアス・ヤネスの新作がお気に召さなかったようでした。
A: エタ犠牲者の当事者ですから商業映画は受け入れがたいでしょう。真実も正義もどちらの目線に立つかで意見は別れる。すべて真実、すべて虚偽です。冒頭の「これはある捜査員の物語かもしれない」を空々しく思った人がいて当然です。本作は、自分の身元が割れることへの恐怖、自分が誰であるかを忘れることへの恐怖を描いているわけです。ベゴーニャに組織に入った理由を問い詰められて「居場所探し」と応じていたが、ベゴーニャがそんな理由を納得したとは思われない。
B: 当時の女性の居場所は決まっていた。ミーナの「あまい囁き」(「Parole, parole」)が小道具として使用されていたが、劇中で「パロール、パロール」と歌っていたのはミーナでなく、フランス語版のダリダ&アラン・ドロンのデュエットの「Paroles, paroles」でした。歌うのはダリダでドロンは語りです。
A: 「口先だけの甘い言葉では騙されないわよ」と手強いのは、登場人物の誰でしょうか。
★アグスティン・ディアス・ヤネス監督、スサナ・アバイトゥア、アンドレス・ヘルトルディクス、イライア・エリアスのキャリア紹介はアップしています。以下のフォトは本作がSSIFFでプレミアされたときのもです。






* ハイメ・チャバリのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年02月02日
*「Fuego」の作品紹介は、コチラ⇒2014年03月20日/同年12月11日
*「Negociador」の作品紹介は、コチラ⇒2015年01月11日
*「Patria」の作品紹介は、コチラ⇒2020年08月12日
*「Maixabel」の作品紹介は、コチラ⇒2021年08月05日
アルゼンチンのコメディ『27夜』鑑賞記*SSIFF2025 ㉒ ― 2025年11月06日 16:19
ダニエル・エンドレルの『27夜』ネットフリックスで配信開始

★第73回サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル開幕作品、ダニエル・エンドレルの長編4作め「27 noches / 27 Nights」が『27夜』の邦題でストリーミング配信が始まりました。エンドレル監督はモンテビデオ生れのウルグアイ出身ですが、主にアルゼンチン映画で俳優として活躍しています。本作では脚本も手掛け、さらに主役マルタ・ホフマンを演じるマリル・マリニに振り回される司法調査官役で出演、三面六臂の大活躍です。今年はオリソンテス・ラティノス部門にノミネートされた3作め「Un cabo suelto」がオリソンテス賞(スペシャル・メンション)を受賞するなど大忙しでした。纏まった監督キャリア&フィルモグラフィー、キャスト紹介を後述します。

(ダニエル・エンドレル、サンセバスチャン映画祭2025,9月19日フォトコール)
「27 noches / 27 Nights」
製作:La Unión de los Ríos
監督:ダニエル・エンドレル
脚本:ダニエル・エンドレル、マルティン・マウレギ、アグスティナ・リエンド、
マリアノ・リナス
原作:ナタリア・シトの小説“Veintisiete noches”(2021年11月刊)
撮影:フリアン・アペステギア
編集:ニコラス・ゴールドバード
音楽:ペドロ・オスナ
録音:サンティアゴ・フマガリィ
メイク&ヘアー:マリサ・アメンタ
衣装デザイン:ロベルタ・ペスシ
製作者:アグスティナ・ジャンビ・キャンベル、サンティアゴ・ミトレ
データ:製作国アルゼンチン、2025年、スペイン語、コメディドラマ、108分、配給元ネットフリックス(ストリーミング配信10月10日)、公開アルゼンチン10月9日
映画祭・受賞歴:第73回サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル開幕作品
キャスト:マリル・マリニ(マルタ・ホフマン)、ダニエル・エンドレル(レアンドロ・カサレス)、ウンベルト・トルトネーゼ(ベルナルド・ヒルベス)、フリエタ・ジルベルベルグ(アレハンドラ・コンデ)、カルラ・ペテルソン(マルタの長女ミリアム)、パウラ・グリンシュパン(マルタの次女オルガ)、エル・ルイサ・リベラ(家政婦デリア)、リカルド・メルキン(レアンドロの父親)、エゼキエル・ディアス(Dr. オルランド・ナルバハ)、ヘルマン・デ・シルバ(フリオ)、ロベルト・スアレス(カサレスの上司ボローニャ判事)、ロシオ・ムニョス(バネ/バネッサ)、マリアナ・ショード(Dra. グロリア・フスコ)、アレハンドラ・フレヒナー(マルタの精神科医ロトマン)、アラン・サバグ(クリニック所長)、他多数
ストーリー:風変わりで裕福な83歳になるマルタ・ホフマンの物語。マルタは認知症を患っていると主張する二人の娘たちの要請で突然精神科クリニックに入院させられる。一方、司法調査官レアンドロ・カサレスは、マルタが本当に病気なのか、それとも残された人生を単に自由奔放に生きたいためだけなのか調査するよう裁判所から派遣される。調査を始めたカサレスは、入院が保護行為のためというより、ただ母親の財産をコントロールしたいだけなのではないかと疑い始める。アルゼンチンの造形アーティストで作家のナタリア・コーエンが、2005年ピック病(前頭側頭型認知症)と誤って診断され、自分の意思に反して精神科クリニックに入院させられた実話に基づいて書かれたナタリア・シトのフィクション小説にインスパイアされている。
「正気とは何か?」――奇行と狂気の境界線
A: 2005年のナタリア・コーエン事件の経緯は、彼女の娘たちが神経科医で急進市民連合党の議員でもあるファクンド・マネスの「ピック病を患っているという診断書」を添えて精神科クリニックに入院させた事案。その後の司法手続きにより、コーエンの健康状態が良好であると判断された。
B: 映画は退院後に直ぐ始まった自称アーティストたちを招いてのパーティ三昧や散財に業を煮やした娘たちが、再度の入院申立てをしたところから始まる。

(ミリアム、マルタ、オルガ、母娘バトルの勝敗は?)
A: カサレスの調査とマルタの27日間に及んだ入院中のシーンが往ったり来たりするので、分かりにくいかもしれない。マルタの老化は否めないが、奇行と狂気は別、正常なのは冒頭で分かってしまうから、正気かどうかがテーマじゃない。
B: 高齢者の自立と尊厳、意思決定権、社会的偏見、壊れてしまった親子関係のドタバタが語られます。親の健康より相続できる財産の多寡を心配する子供たちは万国共通、国籍を問わない。
A: 自由を満喫している自称芸術家が、パトロンの援助を受けるのは正当なことだと豪語するブエノスアイレスでは、財産の目減りを怖れる相続者は生きた心地がしない。マルタの二人の子供たちも例外ではない。
B: 夫の死後、再婚もしかねないぶっ飛んだ母親とあっては、なまじ財産があるだけに娘たちにも同情する。背景には親子の対立、他人が母親の財産を横取りしているという不安や不満がある。認知症にして病院送りにするとはやりすぎです。
ナタリア・シトの小説“Veintisiete noches”に着想をえる
A: 前述したように2005年、メンドサ出身の造形アーティストで作家のナタリア・コーエン(1919~2022)の身に降りかかった実話をもとにしている。精神分析医でもある作家のナタリア・シト(ブエノスアイレス1977)が、この実話に着想を得た小説“Veintisiete noches”を2021年に上梓した。それを映画化したのが「27 noches」です。小説とはいえ、作家は1年半がかりで約50人に取材した証言をもとに執筆したが、勿論取材拒否をした人もいた。
B: コーエンの享年は103歳、刊行時には存命していたことになるが、作家はモデル保護のため「サラ・カッツ」の偽名で登場させている。


(原書と作家ナタリア・シト)
A: さらに映画では「マルタ・ホフマン」になり、その他の登場人物、娘たちや精神科医たちもすべて仮名のようです。特にピック病の診断書を提出したナルバハ医師など実名では名誉棄損になりかねない。取材拒否をした人です。
ホフマン姉妹の正義 vs 母親マルタの意思決定権
B: 映画では今年のサンセバスチャン映画祭に監督と参加していたカルラ・ペテルソン(1974)扮する気の強い長女ミリアムが主導権を握っているが、実際はダリの彫刻を盗み出していた妹クラウディア(映画ではオルガ)とその夫が主に画策して、看護師たちも加担していたという。
A: ミリアム役のペテルソンはTVシリーズのコメディ出演が多く、受賞歴もテレビに偏っているが、 サンセバスチャン映画祭2023でドロレス・フォンシが監督デビューした「Blondi」に共演している。本作では他人が母親に取り入って財産を横取りするので、日に日に目減りしていくのが耐えられない。ましてや再婚などされたら万事休すである。
B: 二言目に口にする「ママのためよ」が空虚に聞こえるが、子供のときから母親に愛されていないと思っていて、自由奔放に生きるマルタが許せない。夫婦仲もイマイチらしく幸せそうでない。

(長女ミリアム役のカルラ・ペテルソン)
A: ドイツのコンテンポラリーダンスの振付師で舞踊家のピナ・バウシュの経歴を調べて、マルタのお気に入りベルナルド・ヒルベスの作り話を突いたりして利口ぶりを発揮するのは、そちらの知識には不案内な調査員カサレスの鑑定結果を有利にしようとする作戦らしい。
B: 劇中アルゼンチン人の軽薄ぶりを随所に振りまき笑わせてくれる。ピナ・バウシュはパリではなくニューヨークのジュリアード音楽院ダンスコースで学んでいるからミリアムの言う通りかも。アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』に出演して日本でもファンは多い。

(右から、カサレス役のエンドレル、ヒルベス役のウンベルト・トルトネーゼ)
A: TVシリーズでは、人気ラブコメ「Lalola」(2007~08)でブレイク、クラリン賞やマルティン・フィエロ賞を受賞しているベテランです。「Guapas」(14)では、マリル・マリニと共演している。一方、妹オルガを演じたパウラ・グリンシュパンの猫かぶりぶりが随所に見られて楽しめた。主に脇役が多いので出演本数は多いが、当ブログにアップしたディエゴ・レルマンの『UFOを愛した男』ではテレビ局職員アリシア役を演じていた。

(次女オルガ役のパウラ・グリンシュパン)
B: 威勢のいいミリアムの陰に隠れているが、担保としてダリの彫刻をちゃっかり失敬している。自分のほうが賢いと思っている姉と、長女より優しく母親想いと勘違いしているマルタの両方を騙しているのが可笑しい。
A: 本作ではオルガが盗んだダリの彫刻をミキサーの空き箱に入れて返しにきたり、挙句落として折れた腕を接着剤でくっつければバレないとカサレスに言わせたり、ヒルベスに「ダリの作品など興味がないから盗むなどありえない」など、元の宗主国スペインをおちょくっている。「私は悪くない、悪いのはお前」というアルゼンチン気質がちりばめられている。ウルグアイ人監督は、常に上から目線のアルゼンチン人をチクチクやらずにいられない。
B: 肝心のマルタ役のマリル・マリニ(マル・デル・プラタ1940)は、当ブルグ初登場、モデルとなったナタリア・コーエンに見事に化けていた。
A: コンテンポラリーダンサーとして、アルゼンチンとフランスで人生のスタートをきる。1975年パリに居を移し、サミュエル・ベケット、ジャン・ジュネ、ユキオ・ミシマなどの舞台に立っている。映画はどれも未見ですが70年代からで、フランスではクレール・ドニとタッグを組んでいる。映画出演は今世紀に入ってからに限ると、代表作としてディエゴ・サバネスの「Mentiras piadosas」(08)に主演している。エンドレル監督と共演した「Los sonámbulos」は、オスカー賞2020のアルゼンチン代表作品になった。


(モデルになったナタリア・コーエンとコーエンに化けたマリル・マリニ)
B: 演劇、映画、TVシリーズの受賞歴も多く、ナタリア・コーエンに負けず劣らずのキャリアです。加齢とともに評価が高くなるというのは、祖父母世代にこれほどチャンスは巡ってこないから、ハリウッドや日本では考えにくい。
A: カサレスの助手として資料調べや事情聴取に参加する、カサレスより有能なアレハンドラ・コンデ役のフリエタ・ジルベルベルグは、字幕入りで観られる女優の一人です。
B: ルクレシア・マルテルの2作め『ラ・ニーニャ・サンタ』の脇役でデビューしている。
A: ディエゴ・レルマンが主役に抜擢して撮った『隠れた瞳』が東京国際映画祭2010コンペティション部門にノミネートされた折り、監督と来日してQ&Aに参加している。翌年、銀のコンドル賞を受賞した。『人生スイッチ』にも出演、ダニエル・ブルマンの「El rey del Once」に新作でクリニック所長を演じたアラン・サバグとタッグを組んだ。

(アレハンドラ・コンデ役のフリエタ・ジルベルベルグ)
B: ダニエル・エンドレル扮するもう一人の主役、真面目だが不器用、凝り性で調査に深入りしすぎて停職をくらう司法調査官レアンドロ・カサレス、マルタに翻弄されながらも最終的には信頼されていたらしく失業を免れる。マリル・マリニとは「Los sonámbulos」で共演している。
A: ウルグアイはブラジルとアルゼンチンに挟まれて「ボカディージョのツマ」などと揶揄される小国、ほとんどの俳優が市場の狭い自国だけでは食べていけないからアルゼンチンに出稼ぎに行く。エンドレルもダニエル・ブルマンの「アリエル三部作」の第1部『救世主を待ちながら』でデビューしている。主人公アリエルはブルマン監督の分身と言われている。

(弥次さん喜多さんのエンドレルとマリル・マリニ)
B: 第2部の『僕と未来とブエノスアイレス』、第3部は未公開の「Derecho de familia」でした。
A: 第2部でベルリン映画祭2004銀熊主演男優賞を受賞した。アドリアン・カエタノの犯罪スリラー『キリング・ファミリー』にレオナルド・スバラリアやアンヘラ・モリーナと共演、簡単なキャリア紹介をしています。また「アリエル三部作」についても「El rey del Once」で紹介しています。
B: 経歴をみると、建築家になりたかったのでウルグアイ建築大学で5年も学ぶが、かたわら演劇にのめり込み、さらにミュージシャンを目指したりしている。
A: 逡巡するカサレスのキャラクターに似ているところがある。結局俳優になったわけですが、それには1998年、ウルグアイでのブルマンとの出会いがあるのではないか。ウルグアイ製作の映画は少ないが、モンテビデオのシネマテークには格安のパスがあって世界の映画が見放題だったから、シネマニアの目は肥えていた。
B: エンドレルが主演したコメディ『25ワッツ』や『ウィスキー』を観た日本人は、ウルグアイ映画のレベルの高さにびっくりした。
A: フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの名コンビ、国際映画祭での数々の賞に輝きながらもレベージャは2年後自死してしまった。エンドレルは『ウィスキー』に後に結婚することになったアナ・カッツと出演している。以後、両国で引っ張りだこになりラプラタ河を往復する人生が始まった。キャリア&フィルモグラフィーは以下に紹介しておきますが、既に70作を越えているので代表作品に限ります。
監督紹介:ダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)。司法調査官レアンドロ・カサレス役。映画、TV、舞台俳優、監督、脚本家、ユダヤ系ウルグアイ人、ウルグアイ建築大学で学ぶかたわら演劇活動にのめり込む。2007年、アルゼンチンの監督アナ・カッツと結婚したが、2018年離婚してしまった。国籍はウルグアイのみ、ブエノスアイレス在住だが取得していない。
◎フィルモグラフィーは主な作品に限ります(ゴチックが監督作品)
2000「Esperando al mesias」『救世主を待ちながら』ダニエル・ブルマン、
クラリン新人賞受賞
2001「25 Watts」『25ワッツ』フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストール
BAFICI男優賞受賞
2003「El fondo del mar」ダミアン・シフロン、銀のコンドル賞主演男優賞ノミネート、
リェイダ・ラテンアメリカFF男優賞
2004「El abrazo partido」『僕と未来とブエノスアイレス』ダニエル・ブルマン、
ベルリンFF銀熊主演男優賞、クラリン賞、銀のコンドル賞ノミネート
2004「Whisky」『ウィスキー』フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストール
2006年「Derecho de familia」ダニエル・ブルマン、スール賞、銀のコンドル賞ノミネート
2009「Los paranoicos」ビアリッツFF男優賞、リマ・ラテンアメリカFF男優賞受賞
2010「Fase 7」ニコラス・ゴールドバード、CinEuphoria賞主演男優賞受賞
2011「Norberto apenas tarde」監督デビュー作、脚本
BAFICIシグニス賞スペシャル・メンション、メキシコ市FF脚本賞受賞、
イベロアメリカ作品銀のコンドル賞ノミネート他
2015「El candidato」監督2作目、マイアミFF監督賞、ニューヨーク・ハバナFF脚本賞受賞
2017「El otro hermano」『キリング・ファミリー 殺し合う一家』イスラエル・カエタノ
2019「Los sonámbulos」パウラ・エルナンデス
2020「El Prófugo」ナタリア・メタ、アルゼンチンのアカデミー賞助演男優賞ノミネート
2025「Un cabo suelte」監督3作目、ベネチアFF観客賞ノミネート、SSIFFオリソンテス賞受賞
2025「27 noches」監督4作目、脚本、出演
*『キリング・ファミリー 殺し合う一家』紹介は、コチラ⇒2017年02月20日
*「El rey del Once」の作品紹介は、コチラ⇒2016年08月29日
*「El Prófugo」の作品とエンドレル紹介は、コチラ⇒2020年02月27日
キャスト紹介:
マリル・マリニ(マル・デル・プラタ1940)主人公マルタ・ホフマン役、ブエノスアイレスでコンテンポラリーダンスを学び、1970年代からアルゼンチンとフランスで舞踊家として人生のスタートを切る。1975年にパリに居を移し、フランスで活躍していたアルゼンチンの舞台演出家アルフレッド・アリアスの劇団の舞台にたつ。1986年モリエール賞を受賞している。
*映画出演では、ディエゴ・サバネスがフリオ・コルタサルの短編”La salud de los enfermos”を映画化した「Mentiras piadosas」(09)に主演、銀のコンドル賞にノミネート、スペインのビリャベルデ映画祭で女優賞を受賞している。またビオイ・カサレスの同名小説を映画化したアレハンドロ・マチの政治スリラー「Los que aman, odian」(17)では助演にもかかわらず銀のコンドル賞を受賞した。続いて2019年、SSIFFにエントリーされたパウラ・エルナンデスの「Los sonámbulos」ではエンドレル監督と共演、アルゼンチンのアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。本作はオスカー賞のアルゼンチン代表作品に選ばれた話題作。ゴンサロ・カルサダのホラーサスペンス「Nocturna: La noche del hombre grande」がブラジルのファンタスポア映画祭2021主演女優賞を受賞、銀のコンドル賞にノミネートされている。
カルラ・ペテルソン(ピーターソン、1974)マルタの長女ミリアム・ホフマン役、最近ではドロレス・フォンシのデビュー作「Blondi」(23)でアルゼンチン映画芸術科学アカデミーの助演女優賞にノミネート、過去にはディエゴ・カプランの「Dos más dos」(12)では主演女優賞にノミネートされた。後者はヌード・シーンのサービスが功を奏したラブコメディだったせいか『愛と情事のあいだ』という邦題でDVDが発売された。コメディ出演が多く、TVシリーズの人気ラブコメ「Lalola」で2007年と2008年、連続でクラリン主演女優賞を受賞、マルティン・フィエロ賞2008に受賞、主演したテレノベラ「Guapas」がマルティン・フィエロ2015年の金賞を受賞している。
*「Blondi」の作品紹介は、コチラ⇒2023年07月21日
パウラ・グリンシュパン(グリュンシュパン、19)マルタの次女オルガ・ホフマン役、『UFOを愛した男』の他、違いを受け入れる人々の友情を語ったサンティアゴ・ロサの「Breve historia del planeta verde」のダニエラ役、ダミアン・シフロンの辛口コメディ『人生スイッチ』(第6話「死がふたりを分かつまで」)での花嫁の友人役など。このオムニバス映画は各国際映画祭巡りをしたヒット作、受賞歴で一番多かったのが観客賞、SSIFF 2014でも受賞しています。
*『UFOを愛した男』の作品紹介は、コチラ⇒2024年10月31日
*「Breve historia del planeta verde」の作品紹介は、コチラ⇒2019年02月19日
*『人生スイッチ』の主な作品紹介は、コチラ⇒2015年07月29日
フリエタ・ジルベルベルグ(シルベルベルク、ブエノスアイレス1983)カサレスの助手アレハンドラ・コンデ役。1995年、子役としてキャリアをスタートさせる。映画、TV、舞台女優、ルクレシア・マルテルの「La niña santa」(04)でデビュー、ラテンビートで『ラ・ニーニャ・サンタ』の邦題で上映された。ディエゴ・レルマンの「La mirada invisible」(TIFF 2010『隠れた瞳』)に主演、翌年、銀のコンドル賞を受賞した。ダミアン・シフロンのヒット作「Relatos sarvajes」(14、『人生スイッチ』)の第2話に出演、アナ・カッツの「Mi amiga del parque」(15)と「El perro que no calla」(21)に出演、前者にはエンドレル監督が共演している。2016年、ダニエル・ブルマンの「El rey del Once」に新作でクリニック所長を演じたアラン・サバグとタッグを組んだ。2023年、ブエノスアイレス大学の哲学部を舞台にしたマリア・アルチェ&ベンハミン・ナイシュタットの「Puan」など。
*『隠れた瞳』の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月11日
*『人生スイッチ』の主な作品紹介は、コチラ⇒2015年07月29日
*「El rey del Once」の作品紹介は、コチラ⇒2016年08月29日
*「Puan」の作品紹介は、コチラ⇒2023年07月15日
チリ映画『そこから泳いで、私の方へ』鑑賞記*SSIFF2025 ㉑ ― 2025年10月24日 15:33
ドミンガ・ソトマヨールの新作「Limpia」のストリーミング配信始まる

★第73回サンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門オープニング作品「Limpia」が、予告通り『そこから泳いで、私の方へ』の邦題で配信が始まりました。ドミンガ・ソトマヨールの第4作め、良し悪し、白黒がはっきりする映画を好む人には不向きです。伏線やメタファー、謎解きがお好きな方にはお奨めします。以前、簡単ですが監督のキャリア&フィルモグラフィーとして、デビュー作『木曜から日曜まで』と、第2作め「Mar」の紹介記事をアップしています。新作はサンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門のオープニング作品です。映画祭には監督以下、主役のマリア・パス・グランジャン、製作者のフアン・デ・ディオス・ラライン、ロシオ・ハドゥエ、脚本家ガブリエラ・ララルデ、子役の演技指導者マリア・ラウレ・バーチなど大勢が参加した。

(ドミンガ・ソトマヨール、SSIFF2025、フォトコール)
*『そこから泳いで、私の方へ』の作品紹介は、コチラ⇒2025年09月16日
*『木曜から日曜まで』と「Mar」の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月04日

(左から、ロシオ・ハドゥエ、ガブリエラ・ララルデ、ソトマヨール監督、
マリア・パス、マリア・ラウレ・バーチ、フアン・デ・ディオス・ラライン、SSIFF25)
★作品紹介でも書きましたように、アリア・トラブッコ・セランの2022年に刊行されたベストセラー小説 ”Limpia” にインスパイアされて映像化されました。小説と映画の構造の大きな違いは、小説が6歳の少女フリアの悲劇から始まっていることです。チリの階級社会を背景に「見えない存在である」家政婦エステラと両親から「見捨てられている」と思っているフリアの孤立と依存、親密で不穏な世界が語られます。基本データとして、キャストとストーリーを再録しておきます。


(小説の表紙と原作者アリア・トラブッコ・セラン)
キャスト:マリア・パス・グランジャン(グランジーン、家政婦エステラ)、ロサ・プガ・ヴィッティニ(フリア)、イグナシア・バエサ・イダルゴ(フリアの母マラ)、ベンハミン・ウェストフォール(父クリストバル)、ロドリゴ・パラシオス(カルロス)、オティリオ・カストロ(警備員イバン)、マリア・トーレス(エステルの母親)、他多数
ストーリー:チリ南部チロエ出身のエステラは、首都サンティアゴの裕福な家族のメイドとして働くため家族を残してやってきた。エステラは家事労働のほか乳母として6歳のフリアを昼夜を問わず世話しなければならない。二人の絆が強まるにつれ、関係は複雑になり、依存しあう秘密の世界を築くことになる。エステラの孤独はやがて避けられない結果を招くことになるだろう。現代のチリ社会の階級社会、文化と社会システムの暗い大きな傷のメタファーが語られる。
「他人のために生きる人」と「自分のために生きる人」の相克
A: アリア・トラブッコ・セランの原作 ”Limpia” にインスパイアされた映画ですが、サンセバスチャン映画祭でのプレス会見によると、そもそもの始りはラライン兄弟の制作会社「Fabula ファブラ」からの働きかけであった。ソトマヨール監督は未読だったらしく「小説を読んで、小説に隠されているものが私の映画に合うかどうか判断したい」と返事した。
B: 気に入って映像化を決心したが、小説を脚色して映画化するつもりはなかった。
A: 小説と映画はそもそも別の形式のものだから、最初にストーリーの大幅な変更を原作者にも伝えたという。監督は「ファブラ」に先ず共同脚本家が必要だと話し、その結果、ガブリエラ・ララルデと共同で執筆することになった。アナイ・ベルネリの「Elena sabe」(TVドラマ、23、Netflix『エレナは知っている』)や、SSIFF2024オリソンテス・ラティノス部門ノミネートの「El aroma del pasto recién cortado」をセリナ・ムルガ監督と執筆している。
B: 監督は今まで自身のオリジナル脚本で撮っていたので、共同執筆は初めてのようです。
A: 小説のエステラは、既にこのブルジョア階級の家庭で7年間の人生を送っていて、小説は映画とは反対に「フリアの悲劇」から始まっている。
B: 雇用主は自分たちに子供が生まれるので〈nana ナナ〉としてエステラを雇ったように推測します。
A: チリと言わず南米全般に言えることですが、〈nana〉という職業は、家事労働者としてのメイドと四六時中子供の世話をしなければならない乳母を兼ねている。時代によって仕事の内容は少しずつ変化しているようですが、ナナは映画でも垣間見られるように自由度が少なく、自分が属していない世界に閉じ込められている。
B: 主に地方出身の貧しい家庭の女性たちが担っている。エステラも故郷に一人暮らしの母親を残して出稼ぎに来ている。その母親の怪我の手術にも帰郷できないで苛々している。帰られては困る雇用主夫婦の上から目線の尤もらしい言い分にナナの置かれている厳しさが分かります。
A: 従って「他人のために生きる人」であるエステラと、「自分のために生きる人」たちである夫婦の対立の物語でもある。他人の家庭に入り込むわけだから、当然秘密を知ることになるが、「守秘義務」を契約させられている。
B: フリアの母親であるイグナシア・バエサ扮するキャリアウーマンのマラは、学歴のないエステラを見下している。実家の母親の大したことのない病気でも帰ることができた。

(マラ、フリア、エステラ)
似た者同士のエステラとフリア、ボスはフリア
A: 夫婦の邸宅は「保護された居住区」にあり、入り口では警備員が目を光らせている。城壁や電気柵で囲まれているわけではないから侵入しようと思えば可能です。
B: 実際、劇中でも強盗事件が挿入されていた。アルゼンチンやメキシコの映画に出てくるブルジョア階級の居住区は、もっと厳重にテロや強盗を遮断していた。
A: マルセロ・ピニェイロのサスペンス『木曜日の未亡人』(09)では居住区は高い城壁で囲まれていたし、ロカルノ映画祭2008で金豹賞を受賞したエンリケ・リベロの『パルケ・ヴィア』では、上流階級の邸宅は高い石塀の上に電気を流した鉄条網が張り巡らされていた。主人公はこの邸宅を一人で守る警備員でナナと同じように「自分が属していない世界」に閉じ込められていた。
B: 唐突な結末に衝撃を受けた『パルケ・ヴィア』と同じく、本作の結末に戸惑った人が多いと思う。
A: ドラマは不穏な雰囲気ながらゆっくりしたペースで進み、最後の数分で急展開、唐突に終わる。巧みに張られた伏線を見落とさなければ、ある程度予測できますが唐突です。エステラとフリアが属している階級格差がテーマの一つですが、監督はチリの上流階級を批判する映画を作ることに興味がない。つまり二人の権力構造、依存、絆と孤立という複雑な人間関係に焦点を合わせている。
B: エステラを演じたマリア・パス・グランジャンは、プレス会見にも監督と同席してチリの女性たちが置かれている現状を語っていた。彼女の母親は子供の学費のために働いていたというから監督とは別の階級のようです。チリには仕事を持つ母親をフォローする制度はないとも語っている。
A: 達者な演技でエステラと対峙したフリア役のロサ・プガ・ヴィッティニを、どうやって探したのか。
難しい役柄だからキャスティングには苦労したそうです。「ファブラ」が行った公開オーディションで沢山の少女に会ったが見つからず、結局監督の母親の友人のお孫さんロシータに決まった。監督のお母さんは女優だそうで、彼女の映画のキャスティングは「ほぼ母親です」と語っている。父親も俳優、フィルム編集者、助監督とシネアスト一家です。

(マリア・パスとソトマヨール監督、SSIFF2025、フォトコール)
B: 劇中のマリア・パスとロシータは息があって、特にロシータが時折り見せる大人のような複雑な表情に驚いた。
A: 監督も「背の高い少女と背の低い少女二人」の演技を賞賛している。背の高い少女マリア・パスも「とても若くて才能のある女優との共演は勉強になった」と、若いライバルを褒めている。
B: 親密だが常に不穏な空気が漂っている。二人は秘密を共有し、エステラは雇用主に、フリアは両親に尤もらしい嘘でガードしている。
A: エステラは「見えない存在」で、当然「不満を抱えている」が、一方フリアも両親から「見捨てられている」と思って「不安を抱えている」少女、二人は似た者同士ということになるが、あくまでも上位者はフリアである。プレス会見でマリア・パスは、エステラは「毎日上司のもとで上司の世話をしている。友好関係にあるが、フリアがボスであることに変わりない。彼女を世話することで給料を貰っている。少女が助けを必要としているのは、両親に置き去りにされているから」とナナと少女の関係を分析している。


(秘密を共有しているエステラとフリア)
B: エステラも複雑な人物だが、フリアはもっと複雑な子供、他の子供と遊べない、大人であるエステラといるほうがいい。お隣りからピザパーティの誘いを受けても断る、他の子供は煩いだけ。
A: だからエステラに予期せぬボーイフレンドが現れると不安になり嫉妬する。このカルロスの登場はドラマに不穏な空気を呼び込んできます。
カルロスとダドゥの登場――「恋に落ちない」お守りの神通力
B: ロドリゴ・パラシオス演じるカルロスというボーイフレンドができると、二人の関係に微妙な亀裂が走るようになる。さらにカルロスにまとわりつくダドゥという野良犬のおまけつき。
A: エステラは恋に落ちては仕事が続けられないから、「恋に落ちないお守り」を持っている。彼女の仕送りで辛うじて生きている母親のために仕事を失うわけにいかない。しかし神通力が衰えたのか偶然カルロスに出会ってしまう。ダドゥも重要な登場人物の一人というか一匹です。二人の登場で、ゆったりしたストーリーが動き出す。

(カルロスとエステラ)
B: ナナは了解なしに勝手に他人を自室に入れることはできない。ましてや野良犬などもってのほか、エステラはナナの基本を少しずつ逸脱していく。
A: ダドゥの事故死がきっかけでドラマは破局に向かうわけですが、〈死〉は常に見え隠れしていた。例えば、小児外科医らしい父親クリストバルの患者の少女がオペの甲斐なく死亡する、エステラの母親、ダドゥなど。
B: 母親の死でエステラの我慢が爆発する。エステラの帰郷が分かるとフリアは動揺する。
A: 少女はエステラと共有していた秘密を母親マラに漏らす。母親が亡くなってエステラもこの家でナナを続ける理由がなくなり妥協しない。マラもクリストバルもナナは必要だが、エステラでなくてもいい。

(撮影監督バルバラ・アルバレスが手掛けた映像美)
B: 映画だけにあるのがポピュラーソング、フリアが恋の歌を歌っている。
A: エステラが聴いている歌を意味も分からず覚えて歌っている。上流階級はクラシック一辺倒でポピュラーソングなど論外、両親は勿論知らない。監督はカミラ・モレノのミュージックビデオを制作しているプロ、ポピュラーソングが大好きで挿入したようです。
B: エステラの孤独や優しさが分かる仕掛けでもあるようです。
チリ映画の展望――映画製作センターの設立
A: 監督が映画を学んでいた頃は、チリの人はチリ映画など誰も見なかったという。映画製作センター CCC が創設され、そこで作られた映画が注目されるようになり観客も増えてきている。1年に100作くらい製作され、なかで上映の可能性がなくても若い女性監督やプロデューサーが輩出してきているという。そうなると観客の目も肥えてくる。
B:「ファブラ」の存在が大きいですね。本祭でもメキシコより話題作が多く、チリ映画はディエゴ・セスペデスの「La misteriosa mirada del flamenco」と、未紹介でしたがナイラ・イリッチ・ガルシアの「Cuerpo Celeste」の3作がノミネートされていた。
A: しかし政治的しめつけは変わりなく戦々恐々としてるのが現状のようです。国家が文化にお金を払いたくないのは万国共通、監督も「チリで映画を作るのは、実のところ波瀾の連続」と語っている。
B: 差別と不寛容の国と揶揄されるチリ、今後も才能流失は避けられません。
★参考作品
*セリナ・ムルガの「El aroma del pasto recién cortado」は、コチラ⇒2024年08月20日
*セバスティアン・シルバの『家政婦ラケルの反乱』は、コチラ⇒2013年09月27日
公式部門の受賞結果②*SSIFF2025 ⑳ ― 2025年10月05日 17:14
ニューディレクターズ-クチャバンク賞にデンマークのエミリー・タルンド

★クロージングの舞台に登壇できる部門は、セクション・オフィシアル以外では、ニューディレクターズのクチャバンク賞、オリソンテス・ラティノスのオリソンテス賞、バスク映画のイリサル賞、社会派のテーマが多かったというネスト(短編)のネスト賞、他にサンセバスティアン市観客賞などがあります。人気のアウト・オブ・コンペティション、メイド・イン・スペイン、ベロドロモ部門などは賞に絡みません。
★ニューディレクターズ部門のクチャバンク賞には、デンマーク映画「Vaegtloes / Weightless」のエミリー・タルンドが受賞、作品賞なので2人の製作者が登壇した。他にスペシャル・メンションにスペイン映画、オリソンテス・ラティノス部門のオリソンテス賞には、コロンビアのシモン・メサ・ソトの「Un poeta / A Poet」、他スペシャル・メンション2作が選ばれています。ウルグアイのダニエル・エンドレルは、セクション・オフィシアルのオープニング作品にも選ばれ、2部門ノミネートは珍しい。
◎クチャバンク賞(ニューディレクターズ部門)
「Vaegtloes / Weightless」製作国デンマーク
監督エミリー・タルンド(デンマーク)
製作者アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ

(左から、審査員のマルコ・ミューラー、プロデューサーの両人)

(アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ)


◎オリソンテス賞(オリソンテス・ラティノス部門)
「Un poeta / A Poet」製作国コロンビア=ドイツ=スウェーデン
監督シモン・メサ・ソト(コロンビア)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」審査員賞受賞作品
*作品紹介は、コチラ⇒2025年05月14日

(シモン・メサ・ソト)

(背後は審査員のピラール・パロメロ、クリストフ・フリーデル、タティアナ・レイテ)

*スペシャル・メンション(2作品)
「Hiedra / The Ivy」製作国エクアドル=メキシコ=フランス=スペイン
監督アナ・クリスティナ・バラガン(エクアドル)
★ベネチア映画祭2025オリゾンティ部門の脚本賞受賞作品

「Un cabo suelto」製作国ウルグアイ=アルゼンチン=スペイン
監督ダニエル・エンドレル(ウルグアイ)
★ベネチア映画祭2025スポットライト部門で上映、WIP Latam 2024 受賞作品

◎サバルテギ-タバカレラ賞
「La tour de glace / The Ice Tower / La torre de hielo」製作国フランス=ドイツ
監督ルシール・アザリロビック Lucile Hadzihalilovic(フランス)
★ベルリン映画祭2025のコンペティション部門芸術貢献賞(銀熊賞)受賞作品



* ’Flechazo’
「Two Times Joao Liberada」製作国ポルトガル
監督パウラ・トマス・マルケス(ポルトガル)

*スペシャル・メンション
「Blue Heron」製作国カナダ=ハンガリー
監督ソフィー・ロンヴァリ(カナダ)
★ベルリン映画祭2025視点部門上映、ロカルノ映画祭オペラ・プリマ賞、トロント映画祭カナディアン・ディスカバリー賞受賞作品

◎メディアプロ・スタジオ・ネスト賞(短編)
「How To Listen To Fountains」製作国スロバキア
監督エヴァ・サヤノバ Sajanova(スロバキア)

*スペシャル・メンション
「The Old Bull Knows, Or Once Knew」製作国インド
監督ミラン・クマル(インド)

*モビスター・プラス賞
「The Loneliness of Lizards」製作国スペイン=ポルトガル
監督イネス・ヌネス(ポルトガル)

*タバカレラ賞
「Life Is Like That And Not Otherwise」製作国ドイツ
監督レニア・フリードリッヒ(ドイツ)

◎クイナリー・シネマ賞(ガストロノミー映画部門)
「Mam」製作国フランス
監督ナン・フェイクス(フランス)

(ナン・フェイクス、製作者マリーヌ・ガルニエ、プレゼンターのアンナ・カスティーリョ)


◎エウスコ・ラベル Eusko Label賞第1席
「Hatsa / Soul(Alma)」製作国スペイン
監督ホス・オサイタ・アスピロス(スペイン)


*エウスコ・ラベル Eusko Label賞第2席
「Gatz harana / Salt Valley(Valle salado)」製作国スペイン
監督サイオア・ミゲル(スペイン)

◎ロテリアス賞第1席
「Maruja」製作国スペイン
監督アルバロ・G・コンパニー(スペイン)

*ロテリアス賞第2席
「Medusas / Jellyfish」製作国スペイン
監督イニャーキ・サンチェス・エリエタ(スペイン)

◎イリサル賞(バスク映画部門)
「Los domingos / Sundays」製作国スペイン=フランス
監督アラウダ・ルイス・デ・アスア(スペイン)
★金貝賞とFIPRESCI賞に続いてイリサル賞も受賞した。

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)

(FIPRESCI賞も受賞したアラウダ・ルイス・デ・アスア)
*スペシャル・メンション
「El último arrebato / The Last Papture」(スペイン)
監督マルタ・メディナ(スペイン)、エンリケ・ロペス・ラビグネ(スペイン)
★サバルテギ-タバカレラ部門にノミネートされたの2人監督ともデビュー作。
あああ

◎ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「The Voice of Hind Rajab(La voz de Hind)」製作国チュニジア=フランス
監督カウテール・ベン・ハニア Kaouther Ben Hania(チュニジア)
★ドキュメンタリー・ドラマ、ペルラス部門ノミネート、ベネチア映画祭2025審査員大賞(銀獅子)受賞作品

(出演者オデッサ・ラエ、モタズ・マルヒース)


◎ヨーロッパ映画ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「Amélie et la métaphysique des tubes / Little Amélie or The Character of Rain(Little Amélie)」製作国フランス
監督マイリス・ヴァラード(仏)、リアン・チョ・ハン・ジン・クアン(仏)
★カンヌ映画祭2025特別上映作品、アヌシー・アニメーション映画祭観客賞受賞作品

(マイリス・ヴァラード、プレゼンターのキラ・ミロ)


(リアン・チョー・ハン・ジン・クアンとマイリス・ヴァラード)

◎スペイン協同賞
「Historias del buen valle / Good Valley Stories」製作国スペイン=フランス
監督ホセ・ルイス・ゲリン

◎RTVE「ある視点」賞
「Las corrientes」製作国スイス=アルゼンチン
監督ミラグロス・ムメンタラー
★受賞者帰国のため、主演のイサベル・アイメ・ゴンサレスが受け取った。

(イサベル・アイメ・ゴンサレス、背後はプレゼンターの審査員)

(ミラグロス・ムメンタラー監督、9月23日フォトコール)
◎ DAMA ユース賞
「La misteriosa mirada del flamenco」製作国チリ=仏=独=西=ベルギー
監督:ディエゴ・セスペデス(チリ)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」賞、LGBTIQA+作品に与えられるセバスティアン賞受賞作品
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年05月12日/同年09月13日



★最後にクロージング作品「Winter of the Crow」(ポーランド=英=ルクセンブルク)のカシア・アダミク監督、主演のレスリー・マンヴィル、製作者のスタニスワフ・ジエジッチが登壇して挨拶した。

(アダミク監督)


第73回サンセバスチャン映画祭結果発表①*SSIFF2025 ⑲ ― 2025年10月02日 18:16
金貝賞はアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」

(セクション・オフィシアルの受賞者たち)
★第73回サンセバスチャン映画祭は、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」を金貝賞に選んで閉幕しました。3年連続でスペインのシネアストが金貝賞を手にしたことになります。昨年は「Tardes de soledad」(『孤独の午後』)のアルベルト・セラ、2023年は「O Corno」(『ライ麦のツノ』)のハイオネ・カンボルダでした。それぞれ東京国際映画祭フォーカス・ワールド部門で上映されました。総合司会者は、オスカル・ラサルテとイチャソ・アラナでした。

(オスカル・ラサルテとイチャソ・アラナ)
★審査員メンバーは、委員長の J.A.バヨナ以下、ポルトガルのラウラ・カレイラ監督、米国のジア・コッポラ監督、中国の女優チョウ・ドンユイ、アルゼンチンの女優で歌手のラリ・エスポシート、イギリスの俳優マーク・ストロング、フランスの製作者アンヌ・ドミニク・トゥーサンの7名です。それぞれプレゼンターを務めました。

(右から、J.A.バヨナ、ラリ・エスポシート、チョウ・ドンユイ、ラウラ・カレイラ、
アンヌ・ドミニク・トゥーサン、マーク・ストロング、ジア・コッポラ)
★大賞審査員特別賞には、ホセ・ルイス・ゲリンのドキュメンタリー「Historias del buen valle / Good Valley Stories」、彼は2001年の「En construcción」(『工事中』)で同賞とFIPRESCI賞を受賞しています。再開発中のバルセロナが舞台でドキュメンタリーとしては破格の興行成績を残した作品でした。監督賞(銀貝賞)は、「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」のベルギーの監督ヨアヒム・ラフォスが受賞、本作は脚本賞も受賞しました。俳優賞などは以下の通りです。
*セクション・オフィシアル*
◎作品賞(金貝賞)
「Los domingos / Sundays」(監督アラウダ・ルイス・デ・アスア、スペイン=フランス)
★プレゼンターは、審査委員長 J.A.バヨナ。



◎審査員特別賞
「Historias del buen valle / Good Valley Stories」
(監督ホセ・ルイス・ゲリン、スペイン=フランス合作)
★プレゼンターは、審査委員長 J.A.バヨナ。

(ホセ・ルイス・ゲリン)


◎監督賞(銀貝賞)
ヨアヒム・ラフォス(「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」
ベルギー=仏=ルクセンブルク合作)
★プレゼンターは、審査員ラウラ・カレイラ。

(ヨアヒム・ラフォス)
◎主演俳優賞(銀貝賞)今回は2名
ホセ・ラモン・ソロイス(「Maspalomas」
監督ホセ・マリ・ゴエナガ&アイトル・アレギ、スペイン)
★プレゼンターは、マーク・ストロング。


(ホセ・ラモン・ソロイス、プレゼンターのマーク・ストロング)

シャオホン・ジャオ Zhao Xiaohong
(「Jianyu Laide Mama / Her Heaet Beats in Its Cage」監督秦暁宇、中国)
★プレゼンターは、ジア・コッポラ監督、とても長いスピーチでした。


◎助演俳優賞(銀貝賞)
カミラ・プラーテ(「Belén」監督、アルゼンチン)
★プレゼンターは、ラリ・エスポシート、涙の受賞スピーチでした。


(プレゼンターのラリ・エスポシートと)

◎脚本審査員賞
ヨアヒム・ラフォス(ベルギー)、クロエ・デュポンシェル(フランス)、
ポウル・イスマエル(同)(「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」)
★プレゼンターは、アンヌ・ドミニク・トゥーサン。

(ヨアヒム・ラフォスとクロエ・デュポンシェル)

◎撮影審査員賞(銀貝賞)
パウ・エステベ(スペイン)(「Los Tigres」監督アルベルト・ロドリゲス、
スペイン=フランス合作)
★プレゼンターは、チョウ・ドンユイ。

(パウ・エステベ、プレゼンターのチョウ・ドンユイ)

★襟や胸につけている赤いバッチには、「ジェノサイド・ストップ」と書いてあります。
★次回はその他のオフィシアル賞(クチャバンク賞-ニューディレクターズ部門、オリソンテス賞-オリソンテス・ラティノス部門、ほか)をアップします。
*「Los domingos / Sundays」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月27日
*「Historias del buen valle」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*「Maspalomas」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*「Los Tigres」の作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*審査員メンバー紹介記事は、コチラ⇒2025年09月19日
ジェニファー・ローレンスのドノスティア栄誉賞授与式*SSIFF2025 ⑱ ― 2025年10月01日 09:29
最年少の受賞者ジェニファー・ローレンスの栄誉賞授与式

★9月27日、第73回サンセバスチャン映画祭は、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」(西仏)が金貝賞を受賞して閉幕しました。結果スペインの監督が3年連続で受賞したことになりました。今回は2番目の大賞である審査員特別賞もホセ・ルイス・ゲリンの「Historias del buen valle / Good Valley Stories」(西仏)が受賞、国際映画祭として少し問題かなと思いました。受賞結果は次回に回して、前日にクルサール・ホールで授与式のあったジェニファー・ローレンス(ケンタッキー1990)のドノスティア栄誉賞の記事をアップします。
*ジェニファー・ローレンスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2025年09月18日

(プレゼンターのJ.A. バヨナからトロフィーを受け取る受賞者、9月26日)
★エステル・ガルシアに続いて二人目の受賞者となったローレンスは、受賞したことは「信じられないほど幸運なことで・・・率直に言って畏敬の念を抱きました」と、この〈魅惑的で並外れた栄誉賞〉に感謝し、「人々が映画、ストーリーを語る芸術や作品の魂を心から愛する映画祭に出席できたことは、本当に特別なことです、有難うございます」とスピーチした。

★授与式の司会者はイニェゴ・ガステシ、プレゼンターはセクション・オフィシアルの審査委員長J.A. バヨナ、女優、プロデューサー(2018年制作会社「エクセレント・カダバー」設立)、監督でもあるローレンスは、1986年の開催以来、最年少の受賞者となりました。若干35歳というのは如何にも若い。先の受賞者として挙げた「比類なきメリル・ストリープ(2008)、レジェンドのペドロ・アルモドバル(2024)、象徴的なローレン・バコール(1992)」のようなアーティストの一人に自分が数えられたことが〈信じられない幸運〉だったのである。

(大歓迎を受ける受賞者)
★2019年の受賞者ドナルド・サザーランド(2024年没)が、数年前に「彼女の演技力は偉大な英国俳優と同じくらい優れているから、ジェニファー・ローレンス・オリヴィエに変更することを提案したこと」をプレゼンターは思い出した。「オリヴィエと同じように自然な流れをもち、鋭く、明快で、カリスマ性がある」。彼女の多様性、冷静で情熱的、大胆で繊細さをあげ、「ローレン・バコールにもジーナ・ローランズにも、同じ映画のなかで両方を同時に演じることさえできる。自分が望むものに何でもなれる」と称賛を惜しまなかった。

(プレゼンターのJ.A. バヨナ)
★授与式の後、リン・ラムジーの最新作「Die, May Love」(25)が上映された。本作について受賞者は「ストーリーはとても生々しく、ユニークで、生の感情、複雑さ、そして抑えのきかないパンクを巧みに織り交ぜています」と、産後鬱でアイデンティティの危機に瀕したヒロインを分析した。本作は配給元も決まり、公開が予定されています。


(共演者のロバート・パティンソンと、カンヌ映画祭2025のフォトコール)
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞授与式*SSIFF2025 ⑰ ― 2025年09月26日 18:00
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025授与式

(エドゥアルド・フェルナンデス、サンセバスチャン映画祭、9月20日)
★9月20日、エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025の授与式がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、映画だけでなく文学、音楽、スポーツなど各分野ごとに選ばれます(発表は6月30日でした)。映画部門は演技者だけでなく、製作者、監督、脚本家、技術部門など幅広く、授与式はサンセバスチャン映画祭開催中と決まっています。プレゼンターは文化大臣で、今年はエルネスト・ウルタスン(バルセロナ1982)、彼は2023年11月から現職を務めています。フェルナンデスの授賞理由、キャリア&フィルモグラフィー紹介は既にアップしております。
*フェルナンデス映画国民賞2025受賞の記事は、コチラ⇒2025年07月13日

(プレゼンターのエルネスト・ウルタスン文化大臣と)

(パレスチナ連帯のスカーフを手に)
★今回選ばれたのは、マルセル・バレナの「El 47」のマノロ・ビタル役、とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」のエンリック・マルコ役の演技が認められたからでした。写真で分かるようにパレスチナ連帯のスカーフを肩にかけて登壇しています。賛否両論あると思いますが・・・「ガザで起きていることは野蛮な行為である」と、ガザでのジェノサイドは人間の本質から外れた解決すべき問題という立場を明らかにしました。

(マル・コル、受賞者、ジョン・ガラーニョ)
★お祝いに馳せ参じたのは、文化大臣のほか、第2副首相兼労働社会経済大臣ヨランダ・ディアス、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、ジョン・ガラーニョ監督は、「この賞は彼のような豊かな才能の持主には小さい。共同監督した同僚(アイトル・アレギ)や私が賞賛の言葉を述べるのは恐れ多い」と述べた。デビュー作『家族との3日間』の監督マル・コルは、「最初の作品は複雑だったけれど、私の父親を演じてくれた。私を振り回すような手法を採らず、まだ25歳だった小娘を助けてくれた」と感謝の言葉を述べた。

(ウルタスン文化大臣、受賞者、背後にヨランダ・ディアス第2副首相、20日)

(ハグしあうマル・コルと受賞者)

(勢揃いした出席者たち)
ウォルター・サレスに大賞FIPRESCI賞*SSIFF2025 ⑯ ― 2025年09月25日 18:21
大賞FIPRESCIは『アイム・スティル・ヒア』のウォルター・サレスの手に

★ドノスティア栄誉賞授与式の他、国際映画批評家連盟が選考母体の大賞、FIPRESCI賞に「Ainda estou aqui / I'm Still Here / Aúun estoy aquí」のブラジルの監督ウォルター・サレス(リオデジャネイロ1956)が選ばれました。8月に『アイム・スティル・ヒア』の邦題で劇場公開されました。ジャーナリストで映画プログラマー、評論家のカルメン・グレイからトロフィーを受け取りました。サレス監督は本作を「記憶と抵抗についての」映画と定義しました。「特に忘却との闘いやデモクラシーの擁護に尽力している」FIPRESCIのメンバーに感謝のスピーチをした。サレスとサンセバスチャン映画祭との関係は深く、『セントラル・ステーション』や『モーターサイクル・ダイヤリーズ』も、「ここブニュエルの国で」上映された。「マリサ・パレデスのことは忘れることができない」とスピーチを締めくくった。
*『アイム・スティル・ヒア』関連記事は、コチラ⇒2025年03月02日/2024年09月06日


★開幕当日には、女優ジュリエット・ビノシュ(パリ1964)が初めて監督するドキュメンタリー「In-I in Motion」(156分、仏語・英語、アウト・オブ・コンペティション)の特別上映で登場、パレデスが果たした功績やパレスチナで起きている虐殺にも言及した。また映画祭前半に上映される監督、キャスト、スタッフがレッドカーペットでファンの歓迎を受けていた。セクション・オフィシアルの審査員メンバー全員が登壇しての紹介があった。
*ジュリエット・ビノシュ関連記事は、コチラ⇒2022年09月17日/同年09月20日

(第70回2022のドノスティア栄誉賞受賞者でもあったジュリエット・ビノシュ)

(9月20日)
★締めくくりはセクション・オフィシアルのオープニング作品「27 noches / 27 Nights」のダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)監督・出演、共演者のカルラ・ペターソン、製作者のサンティアゴ・ミトレ、アグスティナ・ジャンビなどが現地入りした。本作は Netflix で10月17日からの配信が決定しており、いずれアップの予定。

(第73回のオープニング作品「27 noches / 27 Nights」)

(ダニエル・エンドレル、19日、プレス会見にて)

(カルラ・ペテルソン、同上)

(左から、アグスティナ・ジャンビ、カルラ・ペテルソン、エンドレル監督、
サンティアゴ・ミトレ、20日)
第73回サンセバスチャン映画祭開幕*SSIFF2025 ⑮ ― 2025年09月23日 16:41
マリサ・パレデスに捧げられた第73回サンセバスチャン映画祭開幕

★9月19日、第73回サンセバスチャン映画祭がクルサール・ホールで開催されました。今年の映画祭は、公式ポスターで分かるように昨年12月に急逝したマリシータことマリサ・パレデス(1946~2024)に捧げられています。ファンならずとも彼女の存在はスペイン映画界にとって大きなものがありました。総合司会者は、シルビア・アブリル、トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョの3女優でした。
*マリサ・パレデス紹介記事は、コチラ⇒2025年02月25日


(トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョ、シルビア・アブリル)
★オープニングのハイライトは、ドノスティア栄誉賞を受賞したスペインの女性製作者のパイオニアの一人、エステル・ガルシア(セゴビア1956)でした。1986年アルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」に入社以来、アルモドバル映画の全作を手掛けています。2018年に映画国民賞を受賞した折に同じ舞台で授与式が行われていますから、2回目の大賞となりました。プレゼンターはアルモドバル兄弟、監督からトロフィーを手渡されました。

★司会者イツィアル・イトゥーニョは、「現在のスペインでは多くの監督やプロデューサーが活躍しておりますが、これも偏に彼女のような先達のお蔭です」と紹介、「40年間も本当にありがとう」とプレゼンターのラ・マンチャの監督、同僚というだけでなく、友達であり、エル・デセオというファミリーの〈マードレ〉のような存在だと感謝のスピーチをした。
*エステル・ガルシアの紹介記事は、コチラ⇒2025年08月05日/2018年09月17日




(シルビア・アブリルのお祝いのキス)
★ガルシアのスピーチ、「人生に大きな影響を与えた」両親に言及したのち、この製作者という男性中心の職業が、女性にとって如何に難しかったかに触れた。道筋をつけてくれた今は亡きピラール・ミロ、ホセフィナ・モリーナ、パトリシア・フェレイラ、クリスティナ・ウエテなどの先輩に感謝した。「私たち女性は本当に僅かしかいませんでした。しかしこの愛すべき職業の自分たちのスペースを喧嘩しながらも求め続けました」と、きっぱり述べました。

★多くの犠牲者を出しているウクライナやガザの現状にも触れ、「私たちは壊れやすい存在です。文化の力を信じています。多分映画は、夢を見る憩いの場所であり、権利を主張できる拡声器でもあります。映画は素晴らしい世界を作るための私たちの道具、なかでも、最高のものです」と締めくくった。

★アレックス・デ・ラ・イグレシア、イサベル・コイシェ、ダニエル・カルパルソロ、モニカ・ラグナ、ドゥニア・アヤソ、フェリックス・サブロソ、ベレン・マシアス、オリベル・ラシェのようなスペインの監督だけでなく、ギレルモ・デル・トロ、ルクレシア・マルテル、ダミアン・シフロン、パブロ・トラペロ、ルイス・オルテガ、アンドレス・ウッドなどラテンアメリカの監督、ポルトガルのミゲル・ゴンサルヴェス・メンデスのドキュメンタリーも手掛けている。
セクション・オフィシアルの審査委員長にJ.A.バヨナ*SSIFF2025 ⑭ ― 2025年09月19日 17:21
コンペティション部門の審査委員長は、J.A.バヨナ監督

(セクション・オフィシアルの審査員メンバー)
★第73回サンセバスチャン映画祭のセクション・オフィシアルの審査員メンバー7名が発表になり、いよいよ開幕間近になりました。審査委員長はJ.A.バヨナ監督、『インポッシブル』や『怪物はささやく』でお馴染み、サンセバスチャン映画祭2023では、『雪山の絆』が観客賞を受賞している。

*『雪山の絆』の作品紹介は、コチラ⇒2023年11月04日/同年11月14日
★審査員には2人の女性監督、ポルトガルのラウラ・カレイラ(オポルト1994)、SSIFF2024で長編デビュー作「On Falling」が監督賞(銀貝賞)を受賞している。もう一人はフランシス・フォード・コッポラを祖父にもつジア・コッポラ(ロスアンゼルス1987)、「The Last Showgirl」で審査員特別賞を受賞している。二人とも2年続きでの参加となる。

(ラウラ・カレイラ、18日)

(ジア・コッポラ、18日)
*「On Falling」の作品紹介、監督紹介記事は、コチラ⇒2024年08月07日
*「The Last Showgirl」の作品紹介、監督紹介記事は、コチラ⇒2024年08月07日
★演技者として3名、中国の女優チョウ・ドンユイ Zhou Dongyu(河北省石家荘市1992)、チャン・イーモウの文化大革命を題材にした『サンザシの樹の下で』で鮮烈デビューした。アルゼンチンの女優で歌手のラリ・エスポシート(ブエノスアイレス1991)、SSIFF2023にマリア・アルチェ&ベンハミン・ナイシュタットの「Puan」に脇役で出演している他、TVシリーズにも出演している。英国のマーク・ストロング(ロンドン1963)が選ばれている。

(チョウ・ドンユイ、18日)

(ラリ・エスポシート、19日)

(マーク・ストロング、19日)
★フランスの製作者アンヌ・ドミニク・トゥーサン(ブリュッセル1959)、ナディーン・ラバキーの『私たちはどこに行くの?』(レバノン=フランス合作)を手掛けている。カンヌ映画祭2011「ある視点」エキュメニカル審査員特別賞、トロント映画祭とサンセバスチャン映画祭で観客賞を受賞した。ほか同監督の『存在のない子供たち』(19)、『キャラメル』(07)などが公開されている。

(アンヌ・ドミニク・トゥーサンとバヨナ、19日)
オリソンテス・ラティノ部門の審査委員長にピラール・パロメロ
★全部門審査員は発表になっているが、当ブログに関係の深いオリソンテス・ラティノ部門をアップしておきます。審査委員長はスペインの監督ピラール・パロメロ、『スクールガールズ』が公開されている。最新作はSSIFF2024セクション・オフィシアルにノミネートされた「Los destellos」がある。
*『スクールガールズ』の紹介記事は、コチラ⇒2020年03月16日
*「Los destellos」の紹介記事は、コチラ⇒2024年07月30日
★ほかに審査員2名、ドイツの製作者クリストフ・フリーデル、アンドレアス・ドレゼンの『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(21)、『ミセス・クルナスvs ジョージ・W・ブッシュ』(22)が公開されている。ブラジルのプロデューサー兼キュレーターのタティアナ・レイテ、先述の「Puan」の他、ペドロ・フレイレの「Malu」(24)、ラテンビート2018で上映されたグスタボ・ピッツィの母親奮闘記『ベンジーニョ』などを手掛けている。他にロッテルダム、シカゴ、各映画祭でも審査員を務めている。

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