シモン・メサ・ソトの「Un poeta」が「ある視点」に*カンヌ映画祭20252025年05月14日 17:11

           コロンビア映画「Un poeta」はシモン・メサ・ソトの長編2作目

 

       

 

★「ある視点」にノミネートされたシモン・メサ・ソトの「Un poeta」は、最初のアナウンスにはなく追加発表の中にありました。コロンビア映画がノミネートされるのは、2015年のホセ・ルイス・ルヘレスの戦争の不条理を描いた「Alias Maria」以来となります。コロンビア内戦中に女性兵士となったマリアの物語でした。話題になっていたハリウッド女優クリステン・スチュワートのデビュー作も同時にノミネートされました。20作を越えましたのでもう追加はないと思います。同じハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンもノミネートされていますので、今年はコンペティション部門よりこちらのほうが面白そうです。もともと「ある視点」のほうが大物監督がいないだけ意外性のある力作が多く、楽しみにしているシネマニアが多い。

   

          

    (新作Un poeta」の主人公オスカル・レストレポ役のウベイマル・リオス

 

★シモン・メサ・ソトは、短編「Leidi」(16分、イギリス合作)がカンヌ映画祭2014のパルムドールを受賞しており、その節、作品&監督キャリアを紹介しています。また短編「Madre」(14分、スウェーデン合作)もカンヌにノミネート、長編デビュー作「Amparo」は、カンヌ併催の「批評家週間」にノミネートされ(女優賞受賞)、その後カルロヴィ・ヴァリ、リマ、イスラエル、トロント、サンセバスチャンなど各映画祭に出品され、着実に地歩を固めています。タイトルの「レイディ」も「アンパロ」もヒロインの名前です。タイトルが1語なのも歓迎です。

Leidi」の作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ20140530

*「Madreの作品&監督キャリア紹介記事は、コチラ20160512

Amparo」の作品紹介記事は、コチラ20210823

 

     

(短編パルムドール受賞の「Leidi」)

 

      

   (長編デビュー作「Amparo」)

 

  

 Un poeta / A Poet

製作:Ocúltimo / Medio de Contención Producciones(コロンビア)/ 

   Das kleine Fernsehspiel ZDF/ARTE /Ma ja de Fiction(ドイツ)

   Film i Väst / Momento Film(スウェーデン)

監督・脚本:シモン・メサ・ソト

音楽:マッティ・バイ

撮影:フアン・サルミエント G.

編集:リカルド・サライヴァ

キャスティング:ジョン・ベドヤ

製作者:フアン・サルミエント G.、マヌエル・ルイス・モンテアレグレ、シモン・メサ・ソト(以上コロンビア)、(共同プロデューサー)カタリナ・ベルクフェルト、ヘイノ・デッカート(以上ドイツ)、デビッド・ハーディーズ、マイケル・クロトキェフスキ(スウェーデン)

  

データ:製作国コロンビア=ドイツ=スウェーデン、2025年、スペイン語、風刺ドラマ、撮影地メデジン、期間5週間、16ミリフィルム。配給権フランス Epicentre films、ワールド Luxbox

映画祭・受賞歴:第78回カンヌ映画祭2025「ある視点」ノミネート(519日プレミア)

  

キャスト:ウベイマル・リオス(オスカル・レストレポ)、レベッカ・アンドラーデ(ユレディ)、ギジェルモ・カルドナ、ウンベルト・レストレポ、マルガリタ・ソト、アリソン・コレア

 

ストーリー:詩に執着しているが詩人としての栄光を彼にもたらさなかった苦悩するオスカル・レストレポの物語。老いが近づきつつあるオスカルは、詩への執着も冷えて詩の追求に行き詰っています。しかし才能に恵まれながらも謙虚な10代の少女ユレディに出会い、彼女の才能を育てることに生きがいを見いだします。彼の日々に光が差し込んできますが、彼女を詩の世界に引きずり込むことは賢明なことではないかもしれません。

    

     

  (オスカル・レストレポ役ウベイマル・リオス、ユレディ役レベッカ・アンドラーデ)

 

★スタッフ紹介:シモン・メサ・ソト(メデジン1986)、監督、脚本家、製作者。キャリア&フィルモグラフィーは、既に紹介ずみです。本作には監督の先輩でもあるコロンビア国立大学UNALの歴史学教授、映画テレビジョン学校でも教鞭をとっているマヌエル・ルイス・モンテアレグレ(ボゴタ1975、製作者、監督、歴史家)が参画している。さらに同大学の卒業生であるクリスティアン・ヌニェスとガブリエラ・クビリョスが参加している。ルイス教授によると、「脚本は深いエモーションと同じくらい笑いを誘うものにしたいと考えていました。シモンは確かなストーリーを組み立て、ビジュアル的には非常に慎重です」と指摘しています。もう一人の製作者フアン・サルミエント G.(1984生れ)は、撮影監督を兼ねていますが、デビュー作でも撮影を手掛けている盟友です。

   

      

           (製作者マヌエル・ルイス・モンテアレグレ)

 

★監督は、本作が非常に個人的なプロジェクトだったことをプレス会見で述べています。「コロンビアで映画を作るのは信じてもらえないほど難しい。デビュー作(Amparo2021)の後、もう諦めようと思いました。私は50歳になった自分を想像すると、教師として生計を立て、実際には現在もそうして生活費を稼いでいますが、芸術における過去の理想化された記憶で生きのびている、そういう自分を想像しました」と。オスカル・レストレポは監督自身が投影されているようです。「しかし、芸術を内側から探求したかった。芸術とは何か、それが課す制限、それが要求する妥協は何か。芸術は高貴なものと思われがちですが、独立していても産業でもあります。特に映画では、観客が何を期待しているかを決定する市場があり、特にラテンアメリカ映画では、特定のパターンが繰り返されます。アーティストとして外部の要求に応えるか、あるいは自分を突き動かすものは何かという問いに答えねばなりません。本作は、業界という組織に対するある種の疲労感から、そしてまるでパンク調に感じられる気迫をもって、自由で形を成していないものを作りたいという切望から生まれた」と述べていました。(IndieWire 512日付)

   

      

                (シモン・メサ・ソト)