パルムドールを競うオリベル・ラシェの4作目「Sirat」*カンヌ映画祭20252025年05月01日 10:38

     オリベル・ラシェの新作はモロッコの砂漠を旅するロードムービー

   

       

 

★カンヌは5月の風に吹かれて到来する。第78回カンヌ映画祭2025513日から24日の日程で開催されます。今年はオリベル・ラシェの長編4作目「Sirat」と、カルラ・シモンの3作目「Romeria」がパルムドールを競うコンペティション部門にノミネートされました。シモンの新作のテーマは、監督が6歳のときエイズで亡くなった父親の家族に会う旅を描いた極めて個人的なものということです。まず気になるラシェ監督の新作からアップしたい。前作『ファイアー・ウィル・カム』19)の主言語はガリシア語でしたが、今作はスペイン語です。主役にカタルーニャ出身のセルジ・ロペスを起用、撮影はアラゴン州の氷点下のテルエルでクランクイン、クランクアップは酷暑のサハラ砂漠だった由、かなり挑戦的な撮影だったようです。撮影監督のマウロ・エルセは前作でゴヤ賞2020撮影賞を受賞しています。今回はスーパー16ミリで撮影された。

   

       

            (撮影中のラシェ監督とセルジ・ロペス)

   

    Sirat

製作:4 A 4 Productions / El Deseo / Filmes da Ermida / Uri Films / Movistar Plus

   / Los Desertores     協賛ICEC / ICAA / RTVE / TV3、他

監督:オリベル・ラシュ

脚本:オリベル・ラシュ、サンティアゴ・フィロルFillol

撮影:マウロ・エルセ

音楽:カンディング・レイ

キャスティング:マリア・ロドリゴ

プロダクションデザイン&美術:ライア・アテカ

衣装デザイン:ナディア・アシミ

メイクアップ&ヘアー:サイラ・エバ・アデン、ミカエラ・ピメンテル、ルシア・ソラナ

製作者:アグスティン・アルモドバル、ペドロ・アルモドバル、ハビ・フォント、オリベル・ラシュ、オリオル・マイモー、マニ・モルタサビ、アンドレア・ケラルト、(エグゼクティブ)エステル・ガルシア

 

データ:製作国フランス=スペイン、2025年、スペイン語、ドラマ、115分、撮影地アラゴン州のテルエル、サラゴサ、モロッコのサハラ砂漠、期間20245月~6月、ワールド販売配給:The Match Factory、スペイン配給はBTeam Ficturesにより202566日公開予定

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2025コンペティション部門ノミネート

 

キャスト:セルジ・ロペス(ルイス)、ブルノ・ヌニェス(息子エステバン)、ジェイド・オウキッド、リチャード・ベラミー、ステファニア・ガッダ、ジョシュア・リアム、トニン・ジャンヴィエ、他アマチュア多数

 

ストーリー:ルイスとその息子エステバンは数ヵ月前に失踪した娘マリナを探しに、モロッコの乾燥した幻想的な山塊で迷っている或るレイブに到着する。マリナはこのような過激なパーティの一つに参加したのち行方不明になっていたからです。娘に会えることを信じて、サハラ砂漠で開催される最後のフィエスタを求めてレイバーたちのグループの後を追うことに決める。社会の埒外で生きようとする人々の風変わりなロードムービーでもある。

 

       

 

     Sirat〉はアラビア語の「まっすぐな道」というイスラム教の概念

 

★最初のタイトルは「After」だったので、記事によってはこちらで紹介されている。Sirat〉はアラビア語で「道」を意味する。ラシェ監督が繰り返し探求する超越的な緊張を反映して「まっすぐな道」というイスラム教の概念から影響を受けているらしい。監督によると、登場人物は「人生に挑戦し、過激で厳しい方法で試練に耐える。重要な質問が投げかけられ、内面を見つめ直し、人生の意味を考え、・・・生と死の境界が曖昧になるほどの極端な冒険を体験する」。「セルジ・ロペスは、ブルノ・ヌニェスとプロでない出演者のグループを伴って、この過酷な旅に出発します」とコメントしていますが、ラシェ映画はあれこれ予測しても始まりません、観るしかないでしょう。

   

       

        (プロではないが国際的な俳優のグループ、フレームから)

 

監督紹介オリベル・ラシュ1982年パリ生れ、56歳のころ家族でガリシア州のア・コルーニャに戻る。長編デビュー作は自身も出演している「Todos vós sodes capitáns / Todos vosotros sois capitanes」(10)、スペイン=モロッコ合作、モノクロ、78分、「監督週間」にノミネートされ、国際映画批評家連盟FIPRESCI受賞した。2作目「Mimosas」(16)が「批評家週間」でグランプリ受賞3作目「O que arde / Lo que arde」(『ファイアー・ウィル・カム』)が、「ある視点」審査員賞受賞4作目がコンペティション部門と全てがカンヌでプレミアされている。2作目と3作目は以下で作品紹介をしています。

Mimosas」の作品&キャリア紹介は、コチラ20160522

O que arde / Lo que arde」の紹介記事は、コチラ20190428同年1121

 

    

   

        

       

 

キャスト紹介:主役ルイスを演じるセルジ・ロペス(バルセロナ1965)のキャリア&フィルモグラフィーは、次回アップいたします。ルイスの息子エステバンを演じるブルノ・ヌニェスは、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが監督したTVミニシリーズ「La Mesías」(23、全7話のうち4話出演)でデビュー、ロジェール・カザマジョールが扮するエンリックの子供時代の好演が今回の抜擢に繋がりました。このシリーズは2023年のフォルケ賞、2024年のフェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、スペイン俳優連盟賞、オンダス賞などを軒並み制覇した話題作でした。

   

       

            (セルジ・ロペスとブルノ・ヌニェス)