チリ映画『そこから泳いで、私の方へ』鑑賞記*SSIFF2025 ㉑ ― 2025年10月24日 15:33
ドミンガ・ソトマヨールの新作「Limpia」のストリーミング配信始まる

★第73回サンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門オープニング作品「Limpia」が、予告通り『そこから泳いで、私の方へ』の邦題で配信が始まりました。ドミンガ・ソトマヨールの第4作め、良し悪し、白黒がはっきりする映画を好む人には不向きです。伏線やメタファー、謎解きがお好きな方にはお奨めします。以前、簡単ですが監督のキャリア&フィルモグラフィーとして、デビュー作『木曜から日曜まで』と、第2作め「Mar」の紹介記事をアップしています。新作はサンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門のオープニング作品です。映画祭には監督以下、主役のマリア・パス・グランジャン、製作者のフアン・デ・ディオス・ラライン、ロシオ・ハドゥエ、脚本家ガブリエラ・ララルデ、子役の演技指導者マリア・ラウレ・バーチなど大勢が参加した。

(ドミンガ・ソトマヨール、SSIFF2025、フォトコール)
*『そこから泳いで、私の方へ』の作品紹介は、コチラ⇒2025年09月16日
*『木曜から日曜まで』と「Mar」の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月04日

(左から、ロシオ・ハドゥエ、ガブリエラ・ララルデ、ソトマヨール監督、
マリア・パス、マリア・ラウレ・バーチ、フアン・デ・ディオス・ラライン、SSIFF25)
★作品紹介でも書きましたように、アリア・トラブッコ・セランの2022年に刊行されたベストセラー小説 ”Limpia” にインスパイアされて映像化されました。小説と映画の構造の大きな違いは、小説が6歳の少女フリアの悲劇から始まっていることです。チリの階級社会を背景に「見えない存在である」家政婦エステラと両親から「見捨てられている」と思っているフリアの孤立と依存、親密で不穏な世界が語られます。基本データとして、キャストとストーリーを再録しておきます。


(小説の表紙と原作者アリア・トラブッコ・セラン)
キャスト:マリア・パス・グランジャン(グランジーン、家政婦エステラ)、ロサ・プガ・ヴィッティニ(フリア)、イグナシア・バエサ・イダルゴ(フリアの母マラ)、ベンハミン・ウェストフォール(父クリストバル)、ロドリゴ・パラシオス(カルロス)、オティリオ・カストロ(警備員イバン)、マリア・トーレス(エステルの母親)、他多数
ストーリー:チリ南部チロエ出身のエステラは、首都サンティアゴの裕福な家族のメイドとして働くため家族を残してやってきた。エステラは家事労働のほか乳母として6歳のフリアを昼夜を問わず世話しなければならない。二人の絆が強まるにつれ、関係は複雑になり、依存しあう秘密の世界を築くことになる。エステラの孤独はやがて避けられない結果を招くことになるだろう。現代のチリ社会の階級社会、文化と社会システムの暗い大きな傷のメタファーが語られる。
「他人のために生きる人」と「自分のために生きる人」の相克
A: アリア・トラブッコ・セランの原作 ”Limpia” にインスパイアされた映画ですが、サンセバスチャン映画祭でのプレス会見によると、そもそもの始りはラライン兄弟の制作会社「Fabula ファブラ」からの働きかけであった。ソトマヨール監督は未読だったらしく「小説を読んで、小説に隠されているものが私の映画に合うかどうか判断したい」と返事した。
B: 気に入って映像化を決心したが、小説を脚色して映画化するつもりはなかった。
A: 小説と映画はそもそも別の形式のものだから、最初にストーリーの大幅な変更を原作者にも伝えたという。監督は「ファブラ」に先ず共同脚本家が必要だと話し、その結果、ガブリエラ・ララルデと共同で執筆することになった。アナイ・ベルネリの「Elena sabe」(TVドラマ、23、Netflix『エレナは知っている』)や、SSIFF2024オリソンテス・ラティノス部門ノミネートの「El aroma del pasto recién cortado」をセリナ・ムルガ監督と執筆している。
B: 監督は今まで自身のオリジナル脚本で撮っていたので、共同執筆は初めてのようです。
A: 小説のエステラは、既にこのブルジョア階級の家庭で7年間の人生を送っていて、小説は映画とは反対に「フリアの悲劇」から始まっている。
B: 雇用主は自分たちに子供が生まれるので〈nana ナナ〉としてエステラを雇ったように推測します。
A: チリと言わず南米全般に言えることですが、〈nana〉という職業は、家事労働者としてのメイドと四六時中子供の世話をしなければならない乳母を兼ねている。時代によって仕事の内容は少しずつ変化しているようですが、ナナは映画でも垣間見られるように自由度が少なく、自分が属していない世界に閉じ込められている。
B: 主に地方出身の貧しい家庭の女性たちが担っている。エステラも故郷に一人暮らしの母親を残して出稼ぎに来ている。その母親の怪我の手術にも帰郷できないで苛々している。帰られては困る雇用主夫婦の上から目線の尤もらしい言い分にナナの置かれている厳しさが分かります。
A: 従って「他人のために生きる人」であるエステラと、「自分のために生きる人」たちである夫婦の対立の物語でもある。他人の家庭に入り込むわけだから、当然秘密を知ることになるが、「守秘義務」を契約させられている。
B: フリアの母親であるイグナシア・バエサ扮するキャリアウーマンのマラは、学歴のないエステラを見下している。実家の母親の大したことのない病気でも帰ることができた。

(マラ、フリア、エステラ)
似た者同士のエステラとフリア、ボスはフリア
A: 夫婦の邸宅は「保護された居住区」にあり、入り口では警備員が目を光らせている。城壁や電気柵で囲まれているわけではないから侵入しようと思えば可能です。
B: 実際、劇中でも強盗事件が挿入されていた。アルゼンチンやメキシコの映画に出てくるブルジョア階級の居住区は、もっと厳重にテロや強盗を遮断していた。
A: マルセロ・ピニェイロのサスペンス『木曜日の未亡人』(09)では居住区は高い城壁で囲まれていたし、ロカルノ映画祭2008で金豹賞を受賞したエンリケ・リベロの『パルケ・ヴィア』では、上流階級の邸宅は高い石塀の上に電気を流した鉄条網が張り巡らされていた。主人公はこの邸宅を一人で守る警備員でナナと同じように「自分が属していない世界」に閉じ込められていた。
B: 唐突な結末に衝撃を受けた『パルケ・ヴィア』と同じく、本作の結末に戸惑った人が多いと思う。
A: ドラマは不穏な雰囲気ながらゆっくりしたペースで進み、最後の数分で急展開、唐突に終わる。巧みに張られた伏線を見落とさなければ、ある程度予測できますが唐突です。エステラとフリアが属している階級格差がテーマの一つですが、監督はチリの上流階級を批判する映画を作ることに興味がない。つまり二人の権力構造、依存、絆と孤立という複雑な人間関係に焦点を合わせている。
B: エステラを演じたマリア・パス・グランジャンは、プレス会見にも監督と同席してチリの女性たちが置かれている現状を語っていた。彼女の母親は子供の学費のために働いていたというから監督とは別の階級のようです。チリには仕事を持つ母親をフォローする制度はないとも語っている。
A: 達者な演技でエステラと対峙したフリア役のロサ・プガ・ヴィッティニを、どうやって探したのか。
難しい役柄だからキャスティングには苦労したそうです。「ファブラ」が行った公開オーディションで沢山の少女に会ったが見つからず、結局監督の母親の友人のお孫さんロシータに決まった。監督のお母さんは女優だそうで、彼女の映画のキャスティングは「ほぼ母親です」と語っている。父親も俳優、フィルム編集者、助監督とシネアスト一家です。

(マリア・パスとソトマヨール監督、SSIFF2025、フォトコール)
B: 劇中のマリア・パスとロシータは息があって、特にロシータが時折り見せる大人のような複雑な表情に驚いた。
A: 監督も「背の高い少女と背の低い少女二人」の演技を賞賛している。背の高い少女マリア・パスも「とても若くて才能のある女優との共演は勉強になった」と、若いライバルを褒めている。
B: 親密だが常に不穏な空気が漂っている。二人は秘密を共有し、エステラは雇用主に、フリアは両親に尤もらしい嘘でガードしている。
A: エステラは「見えない存在」で、当然「不満を抱えている」が、一方フリアも両親から「見捨てられている」と思って「不安を抱えている」少女、二人は似た者同士ということになるが、あくまでも上位者はフリアである。プレス会見でマリア・パスは、エステラは「毎日上司のもとで上司の世話をしている。友好関係にあるが、フリアがボスであることに変わりない。彼女を世話することで給料を貰っている。少女が助けを必要としているのは、両親に置き去りにされているから」とナナと少女の関係を分析している。


(秘密を共有しているエステラとフリア)
B: エステラも複雑な人物だが、フリアはもっと複雑な子供、他の子供と遊べない、大人であるエステラといるほうがいい。お隣りからピザパーティの誘いを受けても断る、他の子供は煩いだけ。
A: だからエステラに予期せぬボーイフレンドが現れると不安になり嫉妬する。このカルロスの登場はドラマに不穏な空気を呼び込んできます。
カルロスとダドゥの登場――「恋に落ちない」お守りの神通力
B: ロドリゴ・パラシオス演じるカルロスというボーイフレンドができると、二人の関係に微妙な亀裂が走るようになる。さらにカルロスにまとわりつくダドゥという野良犬のおまけつき。
A: エステラは恋に落ちては仕事が続けられないから、「恋に落ちないお守り」を持っている。彼女の仕送りで辛うじて生きている母親のために仕事を失うわけにいかない。しかし神通力が衰えたのか偶然カルロスに出会ってしまう。ダドゥも重要な登場人物の一人というか一匹です。二人の登場で、ゆったりしたストーリーが動き出す。

(カルロスとエステラ)
B: ナナは了解なしに勝手に他人を自室に入れることはできない。ましてや野良犬などもってのほか、エステラはナナの基本を少しずつ逸脱していく。
A: ダドゥの事故死がきっかけでドラマは破局に向かうわけですが、〈死〉は常に見え隠れしていた。例えば、小児外科医らしい父親クリストバルの患者の少女がオペの甲斐なく死亡する、エステラの母親、ダドゥなど。
B: 母親の死でエステラの我慢が爆発する。エステラの帰郷が分かるとフリアは動揺する。
A: 少女はエステラと共有していた秘密を母親マラに漏らす。母親が亡くなってエステラもこの家でナナを続ける理由がなくなり妥協しない。マラもクリストバルもナナは必要だが、エステラでなくてもいい。

(撮影監督バルバラ・アルバレスが手掛けた映像美)
B: 映画だけにあるのがポピュラーソング、フリアが恋の歌を歌っている。
A: エステラが聴いている歌を意味も分からず覚えて歌っている。上流階級はクラシック一辺倒でポピュラーソングなど論外、両親は勿論知らない。監督はカミラ・モレノのミュージックビデオを制作しているプロ、ポピュラーソングが大好きで挿入したようです。
B: エステラの孤独や優しさが分かる仕掛けでもあるようです。
チリ映画の展望――映画製作センターの設立
A: 監督が映画を学んでいた頃は、チリの人はチリ映画など誰も見なかったという。映画製作センター CCC が創設され、そこで作られた映画が注目されるようになり観客も増えてきている。1年に100作くらい製作され、なかで上映の可能性がなくても若い女性監督やプロデューサーが輩出してきているという。そうなると観客の目も肥えてくる。
B:「ファブラ」の存在が大きいですね。本祭でもメキシコより話題作が多く、チリ映画はディエゴ・セスペデスの「La misteriosa mirada del flamenco」と、未紹介でしたがナイラ・イリッチ・ガルシアの「Cuerpo Celeste」の3作がノミネートされていた。
A: しかし政治的しめつけは変わりなく戦々恐々としてるのが現状のようです。国家が文化にお金を払いたくないのは万国共通、監督も「チリで映画を作るのは、実のところ波瀾の連続」と語っている。
B: 差別と不寛容の国と揶揄されるチリ、今後も才能流失は避けられません。
★参考作品
*セリナ・ムルガの「El aroma del pasto recién cortado」は、コチラ⇒2024年08月20日
*セバスティアン・シルバの『家政婦ラケルの反乱』は、コチラ⇒2013年09月27日
公式部門の受賞結果②*SSIFF2025 ⑳ ― 2025年10月05日 17:14
ニューディレクターズ-クチャバンク賞にデンマークのエミリー・タルンド

★クロージングの舞台に登壇できる部門は、セクション・オフィシアル以外では、ニューディレクターズのクチャバンク賞、オリソンテス・ラティノスのオリソンテス賞、バスク映画のイリサル賞、社会派のテーマが多かったというネスト(短編)のネスト賞、他にサンセバスティアン市観客賞などがあります。人気のアウト・オブ・コンペティション、メイド・イン・スペイン、ベロドロモ部門などは賞に絡みません。
★ニューディレクターズ部門のクチャバンク賞には、デンマーク映画「Vaegtloes / Weightless」のエミリー・タルンドが受賞、作品賞なので2人の製作者が登壇した。他にスペシャル・メンションにスペイン映画、オリソンテス・ラティノス部門のオリソンテス賞には、コロンビアのシモン・メサ・ソトの「Un poeta / A Poet」、他スペシャル・メンション2作が選ばれています。ウルグアイのダニエル・エンドレルは、セクション・オフィシアルのオープニング作品にも選ばれ、2部門ノミネートは珍しい。
◎クチャバンク賞(ニューディレクターズ部門)
「Vaegtloes / Weightless」製作国デンマーク
監督エミリー・タルンド(デンマーク)
製作者アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ

(左から、審査員のマルコ・ミューラー、プロデューサーの両人)

(アンナ・ダムメガール・ソレステッド、クララ・ジャンツェン・クレイノエ)


◎オリソンテス賞(オリソンテス・ラティノス部門)
「Un poeta / A Poet」製作国コロンビア=ドイツ=スウェーデン
監督シモン・メサ・ソト(コロンビア)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」審査員賞受賞作品
*作品紹介は、コチラ⇒2025年05月14日

(シモン・メサ・ソト)

(背後は審査員のピラール・パロメロ、クリストフ・フリーデル、タティアナ・レイテ)

*スペシャル・メンション(2作品)
「Hiedra / The Ivy」製作国エクアドル=メキシコ=フランス=スペイン
監督アナ・クリスティナ・バラガン(エクアドル)
★ベネチア映画祭2025オリゾンティ部門の脚本賞受賞作品

「Un cabo suelte」製作国ウルグアイ=アルゼンチン=スペイン
監督ダニエル・エンドレル(ウルグアイ)
★ベネチア映画祭2025スポットライト部門で上映、WIP Latam 2024 受賞作品

◎サバルテギ-タバカレラ賞
「La tour de glace / The Ice Tower / La torre de hielo」製作国フランス=ドイツ
監督ルシール・アザリロビック Lucile Hadzihalilovic(フランス)
★ベルリン映画祭2025のコンペティション部門芸術貢献賞(銀熊賞)受賞作品



* ’Flechazo’
「Two Times Joao Liberada」製作国ポルトガル
監督パウラ・トマス・マルケス(ポルトガル)

*スペシャル・メンション
「Blue Heron」製作国カナダ=ハンガリー
監督ソフィー・ロンヴァリ(カナダ)
★ベルリン映画祭2025視点部門上映、ロカルノ映画祭オペラ・プリマ賞、トロント映画祭カナディアン・ディスカバリー賞受賞作品

◎メディアプロ・スタジオ・ネスト賞(短編)
「How To Listen To Fountains」製作国スロバキア
監督エヴァ・サヤノバ Sajanova(スロバキア)

*スペシャル・メンション
「The Old Bull Knows, Or Once Knew」製作国インド
監督ミラン・クマル(インド)

*モビスター・プラス賞
「The Loneliness of Lizards」製作国スペイン=ポルトガル
監督イネス・ヌネス(ポルトガル)

*タバカレラ賞
「Life Is Like That And Not Otherwise」製作国ドイツ
監督レニア・フリードリッヒ(ドイツ)

◎クイナリー・シネマ賞(ガストロノミー映画部門)
「Mam」製作国フランス
監督ナン・フェイクス(フランス)

(ナン・フェイクス、製作者マリーヌ・ガルニエ、プレゼンターのアンナ・カスティーリョ)


◎エウスコ・ラベル Eusko Label賞第1席
「Hatsa / Soul(Alma)」製作国スペイン
監督ホス・オサイタ・アスピロス(スペイン)


*エウスコ・ラベル Eusko Label賞第2席
「Gatz harana / Salt Valley(Valle salado)」製作国スペイン
監督サイオア・ミゲル(スペイン)

◎ロテリアス賞第1席
「Maruja」製作国スペイン
監督アルバロ・G・コンパニー(スペイン)

*ロテリアス賞第2席
「Medusas / Jellyfish」製作国スペイン
監督イニャーキ・サンチェス・エリエタ(スペイン)

◎イリサル賞(バスク映画部門)
「Los domingos / Sundays」製作国スペイン=フランス
監督アラウダ・ルイス・デ・アスア(スペイン)
★金貝賞とFIPRESCI賞に続いてイリサル賞も受賞した。

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)

(FIPRESCI賞も受賞したアラウダ・ルイス・デ・アスア)
*スペシャル・メンション
「El último arrebato / The Last Papture」(スペイン)
監督マルタ・メディナ(スペイン)、エンリケ・ロペス・ラビグネ(スペイン)
★サバルテギ-タバカレラ部門にノミネートされたの2人監督ともデビュー作。
あああ

◎ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「The Voice of Hind Rajab(La voz de Hind)」製作国チュニジア=フランス
監督カウテール・ベン・ハニア Kaouther Ben Hania(チュニジア)
★ドキュメンタリー・ドラマ、ペルラス部門ノミネート、ベネチア映画祭2025審査員大賞(銀獅子)受賞作品

(出演者オデッサ・ラエ、モタズ・マルヒース)


◎ヨーロッパ映画ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
「Amélie et la métaphysique des tubes / Little Amélie or The Character of Rain(Little Amélie)」製作国フランス
監督マイリス・ヴァラード(仏)、リアン・チョ・ハン・ジン・クアン(仏)
★カンヌ映画祭2025特別上映作品、アヌシー・アニメーション映画祭観客賞受賞作品

(マイリス・ヴァラード、プレゼンターのキラ・ミロ)


(リアン・チョー・ハン・ジン・クアンとマイリス・ヴァラード)

◎スペイン協同賞
「Historias del buen valle / Good Valley Stories」製作国スペイン=フランス
監督ホセ・ルイス・ゲリン

◎RTVE「ある視点」賞
「Las corrientes」製作国スイス=アルゼンチン
監督ミラグロス・ムメンタラー
★受賞者帰国のため、主演のイサベル・アイメ・ゴンサレスが受け取った。

(イサベル・アイメ・ゴンサレス、背後はプレゼンターの審査員)

(ミラグロス・ムメンタラー監督、9月23日フォトコール)
◎ DAMA ユース賞
「La misteriosa mirada del flamenco」製作国チリ=仏=独=西=ベルギー
監督:ディエゴ・セスペデス(チリ)
★カンヌ映画祭2025「ある視点」賞、LGBTIQA+作品に与えられるセバスティアン賞受賞作品
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年05月12日/同年09月13日



★最後にクロージング作品「Winter of the Crow」(ポーランド=英=ルクセンブルク)のカシア・アダミク監督、主演のレスリー・マンヴィル、製作者のスタニスワフ・ジエジッチが登壇して挨拶した。

(アダミク監督)


第73回サンセバスチャン映画祭結果発表①*SSIFF2025 ⑲ ― 2025年10月02日 18:16
金貝賞はアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」

(セクション・オフィシアルの受賞者たち)
★第73回サンセバスチャン映画祭は、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」を金貝賞に選んで閉幕しました。3年連続でスペインのシネアストが金貝賞を手にしたことになります。昨年は「Tardes de soledad」(『孤独の午後』)のアルベルト・セラ、2023年は「O Corno」(『ライ麦のツノ』)のハイオネ・カンボルダでした。それぞれ東京国際映画祭フォーカス・ワールド部門で上映されました。総合司会者は、オスカル・ラサルテとイチャソ・アラナでした。

(オスカル・ラサルテとイチャソ・アラナ)
★審査員メンバーは、委員長の J.A.バヨナ以下、ポルトガルのラウラ・カレイラ監督、米国のジア・コッポラ監督、中国の女優チョウ・ドンユイ、アルゼンチンの女優で歌手のラリ・エスポシート、イギリスの俳優マーク・ストロング、フランスの製作者アンヌ・ドミニク・トゥーサンの7名です。それぞれプレゼンターを務めました。

(右から、J.A.バヨナ、ラリ・エスポシート、チョウ・ドンユイ、ラウラ・カレイラ、
アンヌ・ドミニク・トゥーサン、マーク・ストロング、ジア・コッポラ)
★大賞審査員特別賞には、ホセ・ルイス・ゲリンのドキュメンタリー「Historias del buen valle / Good Valley Stories」、彼は2001年の「En construcción」(『工事中』)で同賞とFIPRESCI賞を受賞しています。再開発中のバルセロナが舞台でドキュメンタリーとしては破格の興行成績を残した作品でした。監督賞(銀貝賞)は、「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」のベルギーの監督ヨアヒム・ラフォスが受賞、本作は脚本賞も受賞しました。俳優賞などは以下の通りです。
*セクション・オフィシアル*
◎作品賞(金貝賞)
「Los domingos / Sundays」(監督アラウダ・ルイス・デ・アスア、スペイン=フランス)
★プレゼンターは、審査委員長 J.A.バヨナ。



◎審査員特別賞
「Historias del buen valle / Good Valley Stories」
(監督ホセ・ルイス・ゲリン、スペイン=フランス合作)
★プレゼンターは、審査委員長 J.A.バヨナ。

(ホセ・ルイス・ゲリン)


◎監督賞(銀貝賞)
ヨアヒム・ラフォス(「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」
ベルギー=仏=ルクセンブルク合作)
★プレゼンターは、審査員ラウラ・カレイラ。

(ヨアヒム・ラフォス)
◎主演俳優賞(銀貝賞)今回は2名
ホセ・ラモン・ソロイス(「Maspalomas」
監督ホセ・マリ・ゴエナガ&アイトル・アレギ、スペイン)
★プレゼンターは、マーク・ストロング。


(ホセ・ラモン・ソロイス、プレゼンターのマーク・ストロング)

シャオホン・ジャオ Zhao Xiaohong
(「Jianyu Laide Mama / Her Heaet Beats in Its Cage」監督秦暁宇、中国)
★プレゼンターは、ジア・コッポラ監督、とても長いスピーチでした。


◎助演俳優賞(銀貝賞)
カミラ・プラーテ(「Belén」監督、アルゼンチン)
★プレゼンターは、ラリ・エスポシート、涙の受賞スピーチでした。


(プレゼンターのラリ・エスポシートと)

◎脚本審査員賞
ヨアヒム・ラフォス(ベルギー)、クロエ・デュポンシェル(フランス)、
ポウル・イスマエル(同)(「Six jours ce printemps -la / Six Days in Spring」)
★プレゼンターは、アンヌ・ドミニク・トゥーサン。

(ヨアヒム・ラフォスとクロエ・デュポンシェル)

◎撮影審査員賞(銀貝賞)
パウ・エステベ(スペイン)(「Los Tigres」監督アルベルト・ロドリゲス、
スペイン=フランス合作)
★プレゼンターは、チョウ・ドンユイ。

(パウ・エステベ、プレゼンターのチョウ・ドンユイ)

★襟や胸につけている赤いバッチには、「ジェノサイド・ストップ」と書いてあります。
★次回はその他のオフィシアル賞(クチャバンク賞-ニューディレクターズ部門、オリソンテス賞-オリソンテス・ラティノス部門、ほか)をアップします。
*「Los domingos / Sundays」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月27日
*「Historias del buen valle」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*「Maspalomas」作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*「Los Tigres」の作品紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*審査員メンバー紹介記事は、コチラ⇒2025年09月19日
ジェニファー・ローレンスのドノスティア栄誉賞授与式*SSIFF2025 ⑱ ― 2025年10月01日 09:29
最年少の受賞者ジェニファー・ローレンスの栄誉賞授与式

★9月27日、第73回サンセバスチャン映画祭は、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos / Sundays」(西仏)が金貝賞を受賞して閉幕しました。結果スペインの監督が3年連続で受賞したことになりました。今回は2番目の大賞である審査員特別賞もホセ・ルイス・ゲリンの「Historias del buen valle / Good Valley Stories」(西仏)が受賞、国際映画祭として少し問題かなと思いました。受賞結果は次回に回して、前日にクルサール・ホールで授与式のあったジェニファー・ローレンス(ケンタッキー1990)のドノスティア栄誉賞の記事をアップします。
*ジェニファー・ローレンスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2025年09月18日

(プレゼンターのJ.A. バヨナからトロフィーを受け取る受賞者、9月26日)
★エステル・ガルシアに続いて二人目の受賞者となったローレンスは、受賞したことは「信じられないほど幸運なことで・・・率直に言って畏敬の念を抱きました」と、この〈魅惑的で並外れた栄誉賞〉に感謝し、「人々が映画、ストーリーを語る芸術や作品の魂を心から愛する映画祭に出席できたことは、本当に特別なことです、有難うございます」とスピーチした。

★授与式の司会者はイニェゴ・ガステシ、プレゼンターはセクション・オフィシアルの審査委員長J.A. バヨナ、女優、プロデューサー(2018年制作会社「エクセレント・カダバー」設立)、監督でもあるローレンスは、1986年の開催以来、最年少の受賞者となりました。若干35歳というのは如何にも若い。先の受賞者として挙げた「比類なきメリル・ストリープ(2008)、レジェンドのペドロ・アルモドバル(2024)、象徴的なローレン・バコール(1992)」のようなアーティストの一人に自分が数えられたことが〈信じられない幸運〉だったのである。

(大歓迎を受ける受賞者)
★2019年の受賞者ドナルド・サザーランド(2024年没)が、数年前に「彼女の演技力は偉大な英国俳優と同じくらい優れているから、ジェニファー・ローレンス・オリヴィエに変更することを提案したこと」をプレゼンターは思い出した。「オリヴィエと同じように自然な流れをもち、鋭く、明快で、カリスマ性がある」。彼女の多様性、冷静で情熱的、大胆で繊細さをあげ、「ローレン・バコールにもジーナ・ローランズにも、同じ映画のなかで両方を同時に演じることさえできる。自分が望むものに何でもなれる」と称賛を惜しまなかった。

(プレゼンターのJ.A. バヨナ)
★授与式の後、リン・ラムジーの最新作「Die, May Love」(25)が上映された。本作について受賞者は「ストーリーはとても生々しく、ユニークで、生の感情、複雑さ、そして抑えのきかないパンクを巧みに織り交ぜています」と、産後鬱でアイデンティティの危機に瀕したヒロインを分析した。本作は配給元も決まり、公開が予定されています。


(共演者のロバート・パティンソンと、カンヌ映画祭2025のフォトコール)
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞授与式*SSIFF2025 ⑰ ― 2025年09月26日 18:00
エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025授与式

(エドゥアルド・フェルナンデス、サンセバスチャン映画祭、9月20日)
★9月20日、エドゥアルド・フェルナンデスの映画国民賞2025の授与式がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、映画だけでなく文学、音楽、スポーツなど各分野ごとに選ばれます(発表は6月30日でした)。映画部門は演技者だけでなく、製作者、監督、脚本家、技術部門など幅広く、授与式はサンセバスチャン映画祭開催中と決まっています。プレゼンターは文化大臣で、今年はエルネスト・ウルタスン(バルセロナ1982)、彼は2023年11月から現職を務めています。フェルナンデスの授賞理由、キャリア&フィルモグラフィー紹介は既にアップしております。
*フェルナンデス映画国民賞2025受賞の記事は、コチラ⇒2025年07月13日

(プレゼンターのエルネスト・ウルタスン文化大臣と)

(パレスチナ連帯のスカーフを手に)
★今回選ばれたのは、マルセル・バレナの「El 47」のマノロ・ビタル役、とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」のエンリック・マルコ役の演技が認められたからでした。写真で分かるようにパレスチナ連帯のスカーフを肩にかけて登壇しています。賛否両論あると思いますが・・・「ガザで起きていることは野蛮な行為である」と、ガザでのジェノサイドは人間の本質から外れた解決すべき問題という立場を明らかにしました。

(マル・コル、受賞者、ジョン・ガラーニョ)
★お祝いに馳せ参じたのは、文化大臣のほか、第2副首相兼労働社会経済大臣ヨランダ・ディアス、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、ジョン・ガラーニョ監督は、「この賞は彼のような豊かな才能の持主には小さい。共同監督した同僚(アイトル・アレギ)や私が賞賛の言葉を述べるのは恐れ多い」と述べた。デビュー作『家族との3日間』の監督マル・コルは、「最初の作品は複雑だったけれど、私の父親を演じてくれた。私を振り回すような手法を採らず、まだ25歳だった小娘を助けてくれた」と感謝の言葉を述べた。

(ウルタスン文化大臣、受賞者、背後にヨランダ・ディアス第2副首相、20日)

(ハグしあうマル・コルと受賞者)

(勢揃いした出席者たち)
ウォルター・サレスに大賞FIPRESCI賞*SSIFF2025 ⑯ ― 2025年09月25日 18:21
大賞FIPRESCIは『アイム・スティル・ヒア』のウォルター・サレスの手に

★ドノスティア栄誉賞授与式の他、国際映画批評家連盟が選考母体の大賞、FIPRESCI賞に「Ainda estou aqui / I'm Still Here / Aúun estoy aquí」のブラジルの監督ウォルター・サレス(リオデジャネイロ1956)が選ばれました。8月に『アイム・スティル・ヒア』の邦題で劇場公開されました。ジャーナリストで映画プログラマー、評論家のカルメン・グレイからトロフィーを受け取りました。サレス監督は本作を「記憶と抵抗についての」映画と定義しました。「特に忘却との闘いやデモクラシーの擁護に尽力している」FIPRESCIのメンバーに感謝のスピーチをした。サレスとサンセバスチャン映画祭との関係は深く、『セントラル・ステーション』や『モーターサイクル・ダイヤリーズ』も、「ここブニュエルの国で」上映された。「マリサ・パレデスのことは忘れることができない」とスピーチを締めくくった。
*『アイム・スティル・ヒア』関連記事は、コチラ⇒2025年03月02日/2024年09月06日


★開幕当日には、女優ジュリエット・ビノシュ(パリ1964)が初めて監督するドキュメンタリー「In-I in Motion」(156分、仏語・英語、アウト・オブ・コンペティション)の特別上映で登場、パレデスが果たした功績やパレスチナで起きている虐殺にも言及した。また映画祭前半に上映される監督、キャスト、スタッフがレッドカーペットでファンの歓迎を受けていた。セクション・オフィシアルの審査員メンバー全員が登壇しての紹介があった。
*ジュリエット・ビノシュ関連記事は、コチラ⇒2022年09月17日/同年09月20日

(第70回2022のドノスティア栄誉賞受賞者でもあったジュリエット・ビノシュ)

(9月20日)
★締めくくりはセクション・オフィシアルのオープニング作品「27 noches / 27 Nights」のダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)監督・出演、共演者のカルラ・ペターソン、製作者のサンティアゴ・ミトレ、アグスティナ・ジャンビなどが現地入りした。本作は Netflix で10月17日からの配信が決定しており、いずれアップの予定。

(第73回のオープニング作品「27 noches / 27 Nights」)

(ダニエル・エンドレル、19日、プレス会見にて)

(カルラ・ペターソン、同上)

(左から、アグスティナ・ジャンビ、カルラ・ペターソン、エンドレル監督、
サンティアゴ・ミトレ、20日)
第73回サンセバスチャン映画祭開幕*SSIFF2025 ⑮ ― 2025年09月23日 16:41
マリサ・パレデスに捧げられた第73回サンセバスチャン映画祭開幕

★9月19日、第73回サンセバスチャン映画祭がクルサール・ホールで開催されました。今年の映画祭は、公式ポスターで分かるように昨年12月に急逝したマリシータことマリサ・パレデス(1946~2024)に捧げられています。ファンならずとも彼女の存在はスペイン映画界にとって大きなものがありました。総合司会者は、シルビア・アブリル、トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョの3女優でした。
*マリサ・パレデス紹介記事は、コチラ⇒2025年02月25日


(トニ・アコスタ、イツィアル・イトゥーニョ、シルビア・アブリル)
★オープニングのハイライトは、ドノスティア栄誉賞を受賞したスペインの女性製作者のパイオニアの一人、エステル・ガルシア(セゴビア1956)でした。1986年アルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」に入社以来、アルモドバル映画の全作を手掛けています。2018年に映画国民賞を受賞した折に同じ舞台で授与式が行われていますから、2回目の大賞となりました。プレゼンターはアルモドバル兄弟、監督からトロフィーを手渡されました。

★司会者イツィアル・イトゥーニョは、「現在のスペインでは多くの監督やプロデューサーが活躍しておりますが、これも偏に彼女のような先達のお蔭です」と紹介、「40年間も本当にありがとう」とプレゼンターのラ・マンチャの監督、同僚というだけでなく、友達であり、エル・デセオというファミリーの〈マードレ〉のような存在だと感謝のスピーチをした。
*エステル・ガルシアの紹介記事は、コチラ⇒2025年08月05日/2018年09月17日




(シルビア・アブリルのお祝いのキス)
★ガルシアのスピーチ、「人生に大きな影響を与えた」両親に言及したのち、この製作者という男性中心の職業が、女性にとって如何に難しかったかに触れた。道筋をつけてくれた今は亡きピラール・ミロ、ホセフィナ・モリーナ、パトリシア・フェレイラ、クリスティナ・ウエテなどの先輩に感謝した。「私たち女性は本当に僅かしかいませんでした。しかしこの愛すべき職業の自分たちのスペースを喧嘩しながらも求め続けました」と、きっぱり述べました。

★多くの犠牲者を出しているウクライナやガザの現状にも触れ、「私たちは壊れやすい存在です。文化の力を信じています。多分映画は、夢を見る憩いの場所であり、権利を主張できる拡声器でもあります。映画は素晴らしい世界を作るための私たちの道具、なかでも、最高のものです」と締めくくった。

★アレックス・デ・ラ・イグレシア、イサベル・コイシェ、ダニエル・カルパルソロ、モニカ・ラグナ、ドゥニア・アヤソ、フェリックス・サブロソ、ベレン・マシアス、オリベル・ラシェのようなスペインの監督だけでなく、ギレルモ・デル・トロ、ルクレシア・マルテル、ダミアン・シフロン、パブロ・トラペロ、ルイス・オルテガ、アンドレス・ウッドなどラテンアメリカの監督、ポルトガルのミゲル・ゴンサルヴェス・メンデスのドキュメンタリーも手掛けている。
セクション・オフィシアルの審査委員長にJ.A.バヨナ*SSIFF2025 ⑭ ― 2025年09月19日 17:21
コンペティション部門の審査委員長は、J.A.バヨナ監督

(セクション・オフィシアルの審査員メンバー)
★第73回サンセバスチャン映画祭のセクション・オフィシアルの審査員メンバー7名が発表になり、いよいよ開幕間近になりました。審査委員長はJ.A.バヨナ監督、『インポッシブル』や『怪物はささやく』でお馴染み、サンセバスチャン映画祭2023では、『雪山の絆』が観客賞を受賞している。

*『雪山の絆』の作品紹介は、コチラ⇒2023年11月04日/同年11月14日
★審査員には2人の女性監督、ポルトガルのラウラ・カレイラ(オポルト1994)、SSIFF2024で長編デビュー作「On Falling」が監督賞(銀貝賞)を受賞している。もう一人はフランシス・フォード・コッポラを祖父にもつジア・コッポラ(ロスアンゼルス1987)、「The Last Showgirl」で審査員特別賞を受賞している。二人とも2年続きでの参加となる。

(ラウラ・カレイラ、18日)

(ジア・コッポラ、18日)
*「On Falling」の作品紹介、監督紹介記事は、コチラ⇒2024年08月07日
*「The Last Showgirl」の作品紹介、監督紹介記事は、コチラ⇒2024年08月07日
★演技者として3名、中国の女優チョウ・ドンユイ Zhou Dongyu(河北省石家荘市1992)、チャン・イーモウの文化大革命を題材にした『サンザシの樹の下で』で鮮烈デビューした。アルゼンチンの女優で歌手のラリ・エスポシート(ブエノスアイレス1991)、SSIFF2023にマリア・アルチェ&ベンハミン・ナイシュタットの「Puan」に脇役で出演している他、TVシリーズにも出演している。英国のマーク・ストロング(ロンドン1963)が選ばれている。

(チョウ・ドンユイ、18日)

(ラリ・エスポシート、19日)

(マーク・ストロング、19日)
★フランスの製作者アンヌ・ドミニク・トゥーサン(ブリュッセル1959)、ナディーン・ラバキーの『私たちはどこに行くの?』(レバノン=フランス合作)を手掛けている。カンヌ映画祭2011「ある視点」エキュメニカル審査員特別賞、トロント映画祭とサンセバスチャン映画祭で観客賞を受賞した。ほか同監督の『存在のない子供たち』(19)、『キャラメル』(07)などが公開されている。

(アンヌ・ドミニク・トゥーサンとバヨナ、19日)
オリソンテス・ラティノ部門の審査委員長にピラール・パロメロ
★全部門審査員は発表になっているが、当ブログに関係の深いオリソンテス・ラティノ部門をアップしておきます。審査委員長はスペインの監督ピラール・パロメロ、『スクールガールズ』が公開されている。最新作はSSIFF2024セクション・オフィシアルにノミネートされた「Los destellos」がある。
*『スクールガールズ』の紹介記事は、コチラ⇒2020年03月16日
*「Los destellos」の紹介記事は、コチラ⇒2024年07月30日
★ほかに審査員2名、ドイツの製作者クリストフ・フリーデル、アンドレアス・ドレゼンの『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(21)、『ミセス・クルナスvs ジョージ・W・ブッシュ』(22)が公開されている。ブラジルのプロデューサー兼キュレーターのタティアナ・レイテ、先述の「Puan」の他、ペドロ・フレイレの「Malu」(24)、ラテンビート2018で上映されたグスタボ・ピッツィの母親奮闘記『ベンジーニョ』などを手掛けている。他にロッテルダム、シカゴ、各映画祭でも審査員を務めている。

ジェニファー・ローレンスにドノスティア栄誉賞*SSIFF2025 ⑬ ― 2025年09月18日 14:31
オスカー女優ジェニファー・ローレンスにドノスティア栄誉賞

★第73回サンセバスチャン映画祭の二人目のドノスティア栄誉賞の受賞者にアメリカの女優、プロデューサー、活動家のジェニファー・ローレンスが選ばれました。2013年『世界にひとつのプレイブック』でオスカー像を手にしているとはいえ、1990年ケンタッキーのルイビル生れ、35歳になったばかりです。スクリーン、TV放映など主要作品の多くが字幕入りで鑑賞できます。おそらく最新作リン・ラムジー(グラスゴー1969、監督・脚本家・撮影監督)の「Die May Love」での産後鬱の演技が受賞の決定打だったのではないでしょうか。カンヌ映画祭2025コンペティション部門ノミネート作品、日本での配給権はクロックワークスが取得したようです。授賞式は9月26日、クルサール・ホールにて行われ、「Die May Love」(製作国カナダ)が上映される。

(ジェニファー・ローレンス、「Die May Love」から)

(ロバート・パティンソン、ラムジー監督、ローレンス、カンヌFF2025フォトコール)
★ジェニファー・ローレンスといえば、ギジェルモ・アリアガのオペラ・プリマ『あの日、欲望の大地で』に触れねばならない。既に『アモーレス・ぺロス』(00)、『21グラム』(03)、『バベル』(06)などの脚本で世界的に知られていたアリアガが長年温めてきた映画。監督はオーディションを受けに来たローレンスを一目で気に入り、即採用となった。彼女も期待通りの演技で応え、17歳にしてベネチア映画祭2008で新人賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。その後の活躍をみれば、アカデミー賞に史上最年少で4度もノミネートされたことも納得がいく。新作「Die May Love」の公開が待たれる。
*受賞歴のある出演作は多すぎて書ききれないが主なものは以下の通り(年号は受賞年):
2008『あの日、欲望の大地で』上記
2011『ウィンターズ・ボーン』ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞、アカデミー賞ノミネート
2013『世界にひとつのプレイブック』アカデミー賞・ゴールデングローブ賞(ミュージカル)・
ロサンゼルス映画批評家協会賞などの主演女優賞を受賞、ほか多数
2014『アメリカン・ハッスル』ゴールデングローブ賞・英国アカデミー賞助演女優賞受賞、
トロント・サンフランシスコ・バンクーバー・セントラルオハイオ・セントルイス、
各映画批評家協会賞(2013)を受賞
2016『ジョイ』ゴールデングローブ賞主演女優賞受賞、アカデミー賞ノミネート

(ベストドレッサーでもあるローレンス、アカデミー賞2013授賞式にて)
開幕作品はドミンガ・ソトマヨールの「Limpia」*SSIFF2025 ⑫ ― 2025年09月16日 19:02
オリソンテス・ラティノス開幕作品――ドミンガ・ソトマヨールの「Limpia」

★第73回SSIFF 2025オリソンテス・ラティノス部門オープニング作品は、チリのドミンガ・ソトマヨールの「Limpia」、久しぶりの登場です。デビュー作『木曜から日曜まで』が東京国際映画祭2012ワールド・シネマで上映されています。既に英語題「Swim to Me」から採った『そこから泳いで、私の方へ』という邦題で10月10日からNetflix 配信が決定しています。ラライン兄弟の制作会社「Fabulaファブラ」が製作しています。アリア・トラブッコ・セランの同名ベストセラー小説の映画化、作家自身も脚本に参加しているようです。アリア・トラブッコは、マイテ・アルベルディ監督の『イン・ハー・プレイス』(原題「El lugar de la otra」)の原作者、チリの人気作家です。新作は現代のチリの文化と社会システムに対する批判がテーマの一つかと想像します。詳細は Netflix 配信後を予定しており、今回はデータ、キャスト、ストーリーを簡単にアップいたします。
*『木曜から日曜まで』の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月04日
*『イン・ハー・プレイス』の紹介記事は、コチラ⇒2024年10月19日


(表紙とアリア・トラブッコ)
「Limpia」
製作:Fabula
監督:ドミンガ・ソトマヨール
脚本:ガブリエラ・ララルデ、ドミンガ・ソトマヨール、(原作)アリア・トラブッコ・セラン
撮影:バルバラ・アルバレス
編集:フェデリコ・Rotstein
美術:アゴスティナ・デ・フランセスコ
録音:レアンドロ・デ・ロレド、ナウエル・パレンケ、他
音楽:カルロス・カベサス
衣装デザイン:クリスティアン・ゴメス、フリオ・ムニサガ
製作者:ロシオ・ハドゥエ、フアン・デ・ディオス・ラライン、パブロ・ラライン、(エグゼクティブ)ソフィア・カステルス
データ:製作国チリ、2025年、スペイン語、心理スリラー、97分、Netflix 配信(2025年10月10日、邦題『そこから泳いで、私の方へ』)
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2025「オリソンテス・ラティノス」部門オープニング作品(9月19日上映)
キャスト:マリア・パス・グランジャン(エステラ)、ロサ・プガ・ヴィッティニ(フリア)、イグナシア・バエサ・イダルゴ(マラ)、ベンハミン・ウェストフォール(クリストバル)、ロドリゴ・パラシオス(カルロス)、他多数
ストーリー:チリ南部のチロエ出身のエステラは、裕福な家庭のメイドとして働くため家族を残して首都サンティアゴへ旅立つ。家事労働のほかに昼夜を問わず世話をしなければならない6歳の娘フリアとの複雑な関係は、二人の絆が強くなるにつれて、避けられない結果に導かれる依存しあう秘密の世界を築くことになる。現代のチリの文化と社会システムの暗い大きな傷のメタファーが語られる。
★監督、スタッフ、キャスト紹介は、Netflix 鑑賞後に纏めてアップしますが、撮影監督がデビュー作『木曜から日曜まで』と同じバルバラ・アルバレス、少女の目線にこだわる巧みなカメラワークも楽しみです。



最近のコメント