第60回アリエル賞2018*結果発表 ― 2018年06月15日 18:34
「私たち(の国)は病んでいます。どうか早く健康になりますように」とアマ・エスカランテ

★第60回を迎えたアリエル賞2018(メキシコ映画アカデミーAMACC)の標語は「No somxs tres, somos todxs」(我々は3人ではない、みんな一緒です)、これは去る3月19日に行方不明になったメディオス・オーディオビジュアルス大学の3人の学生の追悼というか連帯を込めたスローガンです。マフィアと警察と政治家が三位一体のようなメキシコでは、一般人が日常的に暴力や生命の危険に晒されている現状がうかがい知れます。3人だけでなく過去に起きた全ての誘拐拉致被害者を追悼しているようです。2018年の監督賞を受賞したアマ・エスカランテは「私たち(の国)は病んでいます。どうか早く健康になりますように」とスピーチしました。
(結果発表、メキシコ6月5日)

(「No somxs tres, somos todxs」のスローガンが掲げられた授賞式会場)
★授賞式のハイライト最高賞の作品賞は、エルネスト・コントレラス(1969、ベラクルス)の「Sueños en otro idioma」が受賞、他オリジナル脚本賞、オリジナル音楽賞、撮影賞などトータル6冠に輝きました。彼はアリエル賞を主催するAMACC会長に2017年11月就任したばかりです(任期は2年、2019年10月まで)。

(AMACC会長エルネスト・コントレラス、授賞式にて)
★監督賞以下、編集賞、助演女優賞、特殊効果賞など5冠がアマ・エスカランテの「La región salvaje」、『触手』の邦題で、短期間(2018年3月)ながら公開された作品。本邦では『サングレ』『よそ者』『エリ』と、カンヌやベネチアで評価されたこともあって比較的認知度のある監督でしょうか。当ブログ紹介作品は、イベロアメリカ映画賞を受賞したセバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』、アナ・バレリアが新人女優賞を受賞したミシェル・フランコの『母という名の女』、ドキュメンタリー賞を受賞したエベラルド・ゴンサレスの「La libertad del diablo」の4作品です。
*『よそ者』の紹介記事は、コチラ⇒2013年10月10日
*『エリ』の紹介記事は、コチラ⇒2013年10月08日
*「La región salvaje」(『触手』)の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月04日
*『ナチュラルウーマン』の紹介記事は、コチラ⇒2018年03月16日
*『母という名の女』の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月08日
*主な受賞結果*
◎作品賞
「Sueños en otro idioma」 エルネスト・コントレラス

◎監督賞
アマ・エスカランテ (「La región salvaje」『触手』)

◎男優賞
エリヒオ・メレンデス(「Sueños en otro idioma」)

◎女優賞
カリナ・ヒディGidi (「Los adioses」)

◎長編ドキュメンタリー賞
「La libertad del diablo」 (監督エベラルド・ゴンサレス)

◎新人男優賞
フアン・ラモン・ロペス (「Vuelven」)

◎新人女優賞
アナ・バレリア・べセリル (「Las hijas de Abril」 邦題『母という名の女』)

◎イベロアメリカ映画賞
『ナチュラルウーマン』 (監督セバスティアン・レリオ)
(製作者フアン・デ・ディオス・ララインと主演のダニエラ・ベガ)
◎撮影賞
トナティウ・マルティネス (「Sueños en otro idioma」)

◎オペラ・プリマ(初監督作品)賞
「El vigilante」 (監督ディエゴ・ロス)

◎編集賞
フェルナンダ・デ・ラ・ペサ、Jacob Secher Schulsingaer (「La región salvaje」)

フェルナンダ・デ・ラ・ペサ
◎特殊効果賞
ホセ・マヌエル・マルティネス (「La región salvaje」)

◎視覚効果賞
Peter Hjorth (「La región salvaje」)
◎オリジナル脚本賞
カルロス・コントレラス (「Sueños en otro idioma」)

◎美術デザイン賞
アントニオ・モニョイエロ (「El elegido」)
カルロス・ハケス (「La habitación」)
◎メイクアップ賞
アダム・ソリェル (「Vuelven」)

◎衣装賞
マリエステラ・フェルナンデス、ガブリエラ・ディアケ (「La habitación」)

マリエステラ・フェルナンデス
◎助演男優賞
アンドレス・アルメイダ (「Tiempo compartido」)

◎助演女優賞
ベルナルダ・トゥルエバ (「La región salvaje」)

◎短編アニメーション賞
「Cerulia」 (監督ソフィア・カリージョ)

◎短編映画賞
「Oasis」 (監督アレハンドロ・スノ)

◎短編ドキュメンタリー賞
「La muñeca tetona」 (監督ディエゴ・エンリケ・オソルノ、アレハンドロ・アルドレテ)

◎録音賞
エンリケ・グレイネル、パブロ・タメス、ライムンド・バジェステロス
(「Sueños en otro idioma」)

◎オリジナル音楽賞
アンドレス・サンチェス・マエル (「Sueños en otro idioma」)

◎脇役男優賞(coactuación)
ミゲル・ロダルテ (「Sueños en otro idioma」)

◎脇役女優賞(coactuación)
ベロニカ・トゥサンToussaint (「Oso Polar」)

◎「金のアリエル」(栄誉賞)
Queta Lavat (メキシコの女優)

Toni Khun (スウェーデン出身メキシコの撮影監督)

★フォトは入手できたものです。
第5回イベロアメリカ・プラチナ賞2018*結果発表 ― 2018年05月03日 09:33
大賞はセバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』が独占しました!

★4月29日メキシコのカンクン近郊のリゾート地シカレ・リビエラ・マヤで、イベロアメリカ・プラチナ賞の結果発表がありました。本賞は奇数回がラテンアメリカ諸国、偶数回がスペイン各都市と持ち回りで開催されています。スペインが指導的役割を担っておりますが、ラテンアメリカ諸国の映画振興が目的の一つということもあって、受賞作品はそちらに流れる傾向があります。今回はメキシコがホスト国で、エウヘニオ・デルベスが総合進行役を務めました。栄誉賞はメキシコの大女優アドリアナ・バラサの手に渡りましたが、メキシコ映画は残念ながら振るいませんでした。大賞はチリの『ナチュラルウーマン』が独占、技術部門はアルゼンチンの『サマ』と、ほとんどをこの2国が制しました。主なカテゴリーの受賞者は以下の通り。
(TVシリーズは割愛、*当ブログ紹介作品)
*ノミネーション発表は、コチラ⇒2018年03月20日

(メキシコのマルチ・アーティスト、エウヘニオ・デルベス)
◎作品賞(フィクション部門)
La cordillera(「サミット」アルゼンチン、スペイン)*
La librería(スペイン)*
Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
Una mujer fantástica(「ナチュラルウーマン」チリ、スペイン)*
Zama(「サマ」アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*


(中央トロフィーを手にしているのが製作者フアン・デ・ディオス・ラライン)
◎監督賞
アレックス・デ・ラ・イグレシア Perfectos desconocidos(スペイン)*
フェルナンド・ぺレス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
イサベル・コイシェ La librería(スペイン)*
ルクレシア・マルテル「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・レリオ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*


◎脚本賞
カルラ・シモン Verano 1993 「夏、1993」(スペイン)*
フェルナンド・ぺレス&アベル・ロドリゲス Ultimos días en La Habana(キューバ、西)*
イサベル・コイシェ La librería(スペイン)*
ルクレシア・マルテル 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・レリオ&ゴンサロ・マサ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎オリジナル作曲賞
アルベルト・イグレシアス 「サミット」(監督サンティアゴ・ミトレ、アルゼンチン、西)*
アルフォンソ・ビラリョンガ La librería(スペイン)*
デルリスA. ゴンサレス Los buscadores(パラグアイ)
フアン・アントニオ・レイバ&マグダ・ロサ・ガルバン El techo(ニカラグア、キューバ)
プリニオ・プロフェタ O filme da minha vida(ブラジル)

◎男優賞
アルフレッド・カストロ Los perros(マルセラ・サイド、チリ、アルゼンチン、ポルトガル)*
ダニエル・ヒメネス・カチョ「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
ハビエル・バルデム Loving Pablo(スペイン)*
ハビエル・グティエレス El autor(スペイン、メキシコ)*
ホルヘ・マルティネス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*

◎女優賞
アントニア・セヘルス Los perros(チリ、アルゼンチン、ポルトガル)*
ダニエラ・ベガ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
エンマ・スアレス Las hijas de Abril(メキシコ)*
マリベル・ベルドゥ Abracadabra(スペイン)*
ソフィア・ガラ Alanis(アルゼンチン)


◎作品賞(アニメーション部門)
Deep(スペイン)
El libro de lila(コロンビア、ウルグアイ)
Historia antes de uma historia(ブラジル)
Lino-Uma aventura de sete vidas(ブラジル)
Tadeo Jones 2. El secretodel Rey Midas(監督エンリケ・ガト&ダビ・アロンソ、スペイン)

◎作品賞(ドキュメンタリー部門)
Dancing Beethoven(スペイン)
Ejercicios de memoria(パラグアイ、アルゼンチン)
El pacto de Adriana(チリ)
Los niños(チリ)
Muchos hijos, un mono y un castillo(監督グスタボ・サルメロン、スペイン)*

◎オペラ・プリマ初監督作品賞
El techo(ニカラグア、キューバ)
La defensa del dragón(コロンビア)*
La llamada(スペイン)*
La novia del desierto(アルゼンチン、チリ)*
Mala junta(チリ)
Verano 1993(監督カルラ・シモン、スペイン)*

◎編集賞
アナ・プファフ&ディダク・パロウ 「夏、1993」(スペイン)*
エティエンヌ・ボーザック La mujer del animal(コロンビア)*
ミゲル・シュアードフィンガー&カレン・ハーレー
「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
ロドルフォ・バロス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ソレダード・サルファテ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎美術賞
エステファニア・ラライン「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
ミケル・セラーノ Handia*
モニカ・ベルヌイ 「夏、1993」(スペイン)*
レナタ・ピネイロ 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・オルガンビデ&ミカエラSaiegh 「サミット」(アルゼンチン、スペイン)*

◎撮影賞
ベンハミン・エチャサレッタ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
ハビエル・フリア 「サミット」(アルゼンチン、スペイン)*
ラウル・ペレス・ウレタ Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ルイ・ポサス 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
サンティアゴ・ラカ 「夏、1993」(スペイン)*
*ルイ・ポサス欠席のためブラジル側の製作者バニア・カタニが受け取った(下の写真参照)。

◎録音賞
アイトル・ベレングエラ、ガブリエル・グティエレス、ニコラス・デ・ポウルピケ
Verónica(「エクリプス」スペイン)
グイド・ベレンブルム 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
セルヒオ・ブルマン、ダビ・ロドリゲス、ニコラス・デ・ポウルピケ
El bar(「クローズド・バル~街角の狙撃手と8人の標的」スペイン、アルゼンチン)*
Sheyla Pool Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ティナ・Laschke 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*


(左から、各自トロフィーを手にしたソレダード・サルファテ、グイド・ベレンブルム、
バニア・カタニ、レナータ・ピネイロ)
◎価値ある教育シネマ賞
Como nossos pais ブラジル
Handia (監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ)スペイン*
La mujer del animal コロンビア*
Mala junta チリ
Una mujer fantástica「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎イベロアメリカ・プラチナ栄誉賞
★アドリアナ・バラサ(日本ではバラッザと表記)Adriana Barrza、1956年メキシコ州トルーカ生れ62歳、女優、監督、製作者。イベロアメリカ映画の若い世代にとっては師であり道しるべ的存在である。サム・ライミのスリラー・ホラー『スペル』(09)の霊能者役から、アレハンドロ・ゴンサロ・イニャリトゥの『アモーレス・ぺロス』(99)、続いて『バベル』(06)に出演、本作でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされたほか、ゴッサム賞「アンサンブル・パフォーマンス賞」に共演のブラッド・ピットやケイト・ブランシェット、G.G.ベルナルなどと受賞した。142分という長い疲れる映画でしたが大ヒットした。他の公開作品ではケネス・ブラナーが実写映画化した『マイティ・ソー』(11)、パトリシア・リヘンの『チリ33人、希望の軌跡』(15)に脇役で出演している。

(『バベル』の第2部アメリカ・メキシコ編で家政婦アメリアを演じた)
★監督としてはTVシリーズのテレノベラを多く手掛けている。他に演劇では、『マクベス』のような古典劇の編集も手掛け、2011年には夫君であるブエノスアイレス出身の俳優、監督、プロデューサーArnaldo Pipkeと「アドリアナ・バラサ・アクティング・スタジオ」という俳優養成学校を米国で設立したほか、「アドリアナ・バラサ・ブラック・ボックス」というヒスパニック演劇フェスティバルが開催できる演劇空間をマイアミに設立している。夫君はメキシコ、マイアミ、ブエノスアイレスで幅広く活躍している。

(栄誉賞のトロフィーを手にしたアドリアナ・バラサ、4月29日)
第5回イベロアメリカ・プラチナ賞2018*ノミネーション発表 ― 2018年03月20日 14:23
『ナチュラルウーマン』最多の9部門ノミネーション
★第5回イベロアメリカ・プラチナ賞のガラが、昨年の7月から4月に前倒しになったせいか、ノミネーション発表も2月下旬と早まりました。目下、ガラはラテンアメリカ諸国とスペインとで交互に開催されています。パナマ、スペインのマルベージャ、ウルグアイのプンタ・デル・エステ、マドリード、今回はメキシコのカンクン近郊のリゾート地シカレ・リビエラ・マヤ(グラン・ティラッコ劇場Teatro Gran Tlachco de Xcaret 1800人収容)で4月29日です。総合進行役はメキシコの俳優・監督・製作者・脚本家と多才なエウヘニオ・デルベス、彼は第1回プラチナ賞男優賞の受賞者です。
*第1回イベロアメリカ・プラチナ賞授賞式の記事は、コチラ⇒2014年4月17日
★映画賞は過去の作品に贈られる賞だから受賞結果だけでもと思いつつ、まだ5回目という歴史の浅い映画賞、イベロアメリカ諸国以外では話題にならないことも考慮して、やはりアップしておくことにしました。開催時期が3月から4月になった第21回マラガ映画祭(4月13日~22日)の各賞発表が五月雨式にアップされています。ギレルモ・デル・トロのマラガ賞受賞を手始めに、そろそろ紹介していく予定です。第71回カンヌ映画祭(5月8日~19日)も未だ発表になっておりません。今回の審査委員長は女性と予想しておりましたが、ケイト・ブランシェットに決定したようです。スペイン語映画がノミネートされるようでしたら記事にしたい。
★主なカテゴリー
(製作国はイベロアメリカ諸国限定。「」は公開または映画祭上映時の邦題 *当ブログ紹介)
◎作品賞(フィクション部門)
La cordillera(「サミット」アルゼンチン、スペイン)*
La librería(スペイン)*
Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
Una mujer fantástica(「ナチュラルウーマン」チリ、スペイン)*
Zama(「サマ」アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*

◎監督賞
アレックス・デ・ラ・イグレシア Perfectos desconocidos(スペイン)*
フェルナンド・ぺレス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
イサベル・コイシェ La librería(スペイン)*
ルクレシア・マルテル 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・レリオ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎脚本賞
カルラ・シモン Verano 1993 「夏、1993」(スペイン)*
フェルナンド・ぺレス&アベル・ロドリゲス Ultimos días en La Habana(キューバ、西)*
イサベル・コイシェ La librería(スペイン)*
ルクレシア・マルテル 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・レリオ&ゴンサロ・マサ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎オリジナル作曲賞
アルベルト・イグレシアス 「サミット」(アルゼンチン、スペイン)*
アルフォンソ・ビラリョンガ La librería(スペイン)*
デルリスA. ゴンサレス Los buscadores(パラグアイ)
フアン・アントニオ・レイバ&マグダ・ロサ・ガルバン El techo(ニカラグア、キューバ)
プリニオ・プロフェタ O filme da minha vida(ブラジル)

◎男優賞
アルフレッド・カストロ Los perros(チリ、アルゼンチン、ポルトガル)*
ダニエル・ヒメネス・カチョ「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
ハビエル・バルデム Loving Pablo(スペイン)*
ハビエル・グティエレス El autor(スペイン、メキシコ)*
ホルヘ・マルティネス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*

◎女優賞
アントニア・セヘルス Los perros(チリ、アルゼンチン、ポルトガル)*
ダニエラ・ベガ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
エンマ・スアレス Las hijas de Abril(メキシコ)*
マリベル・ベルドゥ Abracadabra(スペイン)*
ソフィア・ガラ Alanis(アルゼンチン)

◎作品賞(アニメーション部門)
Deep(スペイン)
El libro de lila(コロンビア、ウルグアイ)
Historia antes de uma historia(ブラジル)
Lino-Uma aventura de sete vidas(ブラジル)
Tadeo Jones 2. El secretodel Rey Midas(スペイン)

「Lino-Uma aventura de sete vidas」
◎作品賞(ドキュメンタリー部門)
Dancing Beethoven(スペイン)
Ejercicios de memoria(パラグアイ、アルゼンチン)
El pacto de Adriana(チリ)
Los niños(チリ)
Muchos hijos, un mono y un castillo(スペイン)*

「Muchos hijos, un mono y un castillo」
◎オペラ・プリマ初監督作品賞
El techo(ニカラグア、キューバ)
La defensa del dragón(コロンビア)*
La llamada(スペイン)*
La novia del desierto(アルゼンチン、チリ)*
Mala junta(チリ)
Verano 1993(スペイン)*

◎編集賞
アナ・プファフ&ディダク・パロウ 「夏、1993」(スペイン)*
エティエンヌ・ボーザック La mujer del animal(コロンビア)*
ミゲル・シュアードフィンガー&カレン・ハーレー
「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
ロドルフォ・バロス Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ソレダード・サルファテ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎美術賞
エステファニア・ラライン「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
ミケル・セラーノ Handia*
モニカ・ベルヌイ 「夏、1993」(スペイン)*
レナタ・ピネイロ 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
セバスティアン・オルガンビデ&ミカエラ Saiegh 「サミット」(アルゼンチン、スペイン)*

◎撮影賞
ベンハミン・エチャサレッタ 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*
ハビエル・フリア 「サミット」(アルゼンチン、スペイン)*
ラウル・ペレス・ウレタ Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ルイ・ポサス 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、スペイン、メキシコ、ポルトガル)*
サンティアゴ・ラカ 「夏、1993」(スペイン)*

◎録音賞
アイトル・ベレングエラ、ガブリエル・グティエレス、ニコラス・デ・ポウルピケ
Verónica(「エクリプス」スペイン)
グイド・ベレンブルム 「サマ」(アルゼンチン、ブラジル、西、メキシコ、ポルトガル)*
セルヒオ・ブルマン、ダビ・ロドリゲス、ニコラス・デ・ポウルピケ
El bar(「クローズド・バル~街角の狙撃手と8人の標的」スペイン、アルゼンチン)*
Sheyla Pool Ultimos días en La Habana(キューバ、スペイン)*
ティナ・Laschke 「ナチュラルウーマン」(チリ、スペイン)*

◎価値ある教育シネマ賞
Como nossos pais ブラジル
Handia スペイン*
La mujer del animal コロンビア*
Mala junta チリ
Una mujer fantástica 「ナチュラルウーマン」チリ、スペイン*

*テレビ・シリーズのノミネーションは割愛、受賞作品はアップします。
*掲載写真は各国から適当に選んだものです。
★ざっと眺めただけで単独合作含めてスペインのノミネーションが多い。作品・監督・脚本賞のいずれにも顔を出している。ドキュメンタリーやアニメーションを合計すると20作ぐらいになるか。メキシコが開催国だがいささか寂しい印象です。メキシコ、ブラジル、チリなど除くと、ラテンアメリカ諸国は1国だけで製作するのは難しいことが分かります。少しはマシなスペインの資金提供となる。
★今回の参加国は23ヵ国だそうですが(ノミネーションを受けた国は11ヵ国)、ゴヤ賞2018イベロアメリカ映画賞にノミネートさえされなかったフェルナンド・ぺレスの「Ultimos días en La Habana」が、7カテゴリーでノミネートされている。悪くはなかったが、個人的には少し奇異な印象をもちました。
イベロアメリカ映画の将来を模索する*第4回フェニックス賞2017 ― 2017年12月13日 16:51
影の薄いかつての宗主国スペインとポルトガル

★授賞式の1日だけでなく「フェニックス週間Semana Fénix」(12月2日~9日)と銘打って、各種のシンポジウムが開催されました。せっかく各国のシネアストが一堂に会したのだから唯のお祭り騒ぎに終わらせたくないという思いがあるようです。「シネマ23」というメキシコ主導の映画賞とはいえ、ラテンアメリカ諸国の映画によりスポットを当てたい。どちらかというとかつての宗主国イベリア半島のスペインとポルトガルは裏方の印象が強い。それは結果を見れば歴然です。第1回の作品賞受賞国はメキシコのケマダ=ディエスの『金の鳥籠』、第2回と3回はチリのパブロ・ララインの『ザ・クラブ』と『ネルーダ』、第4回の『ナチュラルウーマン』とチリが3連続受賞しています。監督賞は順次、メキシコのアマ・エスカランテ、チリのパブロ・ララインとコロンビアのチロ・ゲーラ、ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ、チリのセバスティアン・レリオと、スペイン、ポルトガルの影は薄い。ここいら辺が同じイベロアメリカを対象にしたプラチナ賞との大きな違いです。
ノミネーションされた監督&脚本家のディスカッション
★シンポジウムの一つは監督と脚本家のグループ、出席者は、パブロ・ラライン、アマ・エスカランテ、ダビ・プリド(スペインの脚本家、『物静かな男の復讐』)、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン(アルゼンチン、『笑う故郷』共同監督)、カルラ・シモン(スペインの監督、『夏、1993』)の6人。「イベロアメリカ映画というジャンルが実際に存在するのかどうか?」「イベロアメリカで製作された映画が共有しているスタイル、テーマがあるのかどうか?」などについて、かなりざっくばらんに語り合ったということです。メキシコ市のトナラTonalá 映画館で開催された。

(左から、ガストン・ドゥプラット、アマ・エスカランテ、マリアノ・コーン、他)
★今回は監督としてではなく『ナチュラルウーマン』のプロデューサーの一人としてメキシコにやってきたパブロ・ラライン、今のチリで一番国際的な知名度のあるシネアストの一人だと思います。どうやら監督賞ノミネーションのセバスティアン・レリオ(受賞した!)が来墨できなかったようで、弟フアン・デ・ディオスと設立した制作会社「ファブラ」の代表者として兄弟でチームをアシストしていた。「誰しも居心地のいい箱の中にいたほうがいいとは思っていません。私たちの映画は常に他の映画とは別に分類されます。それは映画の存在を知ってもらえるよう、定義してもらえるような箱が必要なんです」とラライン。まだ各国単独で立ち向かうには力不足ということでしょうか。

(左から、パブロ、フアン・デ・ディオスのラライン兄弟)
★今回は最新作「La región salvaje」(英題「The Untamed」)の作品・監督・脚本賞のノミネーションを受けたアマ・エスカランテ、国際的なデビューでは一番の古株になります。本作は初めて参加したベネチア映画祭2016の監督賞受賞作品、製作国はメキシコ、デンマーク、仏、独以下9ヵ国に及ぶという。「私は自分のアイディアを誰にも売らなくてよかった。誤りや適切な判断を含めて、私たちは自由をもっている」とエスカランテ。本作のテーマは「メキシコに存在する偽善、ホモ嫌い、マチスモについてのSF仕立ての映画です。各国のプロデューサーが意見を述べ、最終的には私が映画の売上高も考慮して決めた」と語っている。共同執筆者ヒブラン・ポルテラと物語の信憑性や要素を損なわずに維持することができた。ポルテラは『金の鳥籠』やアロンソ・ルイスパラシオスのデビュー作『グエロス』(東京国際映画祭2014)の脚本も各監督と共同で手掛けているライター。
*IMDbによると「La región salvaje」の公開が2018年2月27日とアナウンスされていますが、邦題は未定のようで公式サイトも検索できませんでした。公開確実なら初めてとなります。デビュー作『サングレ』以下は映画祭上映です。

(本作のプレゼンをするアマ・エスカランテ監督)
★製作資金も大きなテーマの一つだった。ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンは1993年に出会い、11年前から今日までコンビを組んでドキュメンタリーを含めて長編6作を撮っている。批評家の絶賛にもかかわらずデビュー作以来今日まで彼らの作品にどこからも資金提供を得られなかったという。『ル・コルビュジエの家』(09)の成功後もそれは変わらず、ノミネート作品『笑う故郷』完成に5年間要したと語っている。「年率35%のインフレでは誰も映画に投資する気になれない。着手する前に疲労困憊してしまう」とコーン監督。アルゼンチンで映画を作ろうとするなら、まず会計業務や経済学を学んでからというわけです。
★初期の映画は社会イベントにカメラを持ち込んで製作した。その後『ル・コルビュジエの家』を12万ドルの資金で4週間で撮った。「観客が新鮮な視点やテーマのもつ力強さに興味をもってくれた」とドゥプラット監督、「ある地域的な物語かもしれないが、普遍的なパンチ力があった」とコーン監督。これは最新作『笑う故郷』にもいえることでしょう。個人的には『ル・コルビュジエの家』の不気味さのほうに惹かれますが。
一番の難題は映画産業の拡大と流通のギャップ
★アマ・エスカランテがデビュー作『サングレ』(東京国際映画祭2005)を撮ったころのメキシコでは、メキシコ全体で20作ばかりしか製作されなかった。厳しさは相変わらずだが2017年には170作にも上るということです。1国だけで製作することは難しく、この10年間でいっても5~6ヵ国を超えるのは珍しくない。充分とは言えないが資金援助を利用することもできるようになっている。「警告しておきたいのは、販売ディーラーなしで映画を作るべきではない」とラライン。とは言っても、それが見つけられないのではないでしょうか。
★一番の問題は、映画産業の拡大はあっても、その作品がラテンアメリカ諸国間に流通しないということがある。他の国の映画を観ようとしても配給会社が手を出さない。危険を冒してまで賭けをしようとはしない。映画は映画館で観る時代ではなく、何か他のプラットフォームを考える時期に来ている。それは一つには「多分webウェブサイト」と、昨年の作品賞『ネルーダ』の監督。ラテンアメリカ諸国も変化の秋を迎えている。スペインから参加したダビ・プリドとカルラ・シモンは聞き役だったのでしょうか。
★もう一つのシンポジウムは俳優のグループ、男優賞・女優賞各5名のうち、レオナルド・スバラグリア(アルゼンチン、『キリング・ファミリー 殺し合う一家』)、エドゥアルド・フェルナンデス(スペイン、『スモーク・アンド・ミラーズ』)、エドゥアルド・マルティネス(キューバ、「Santa y Andrés」)、パウリナ・ガルシア(チリ、「La novia del desierto」)、アントニア・セヘレス(チリ、「Los perros」)、リリアナ・ビアモンテ(コスタリカ、「Medea」)、各3名が参加した(国名と出演映画タイトル)。
★作家性のある映画は消えていく傾向にあること、どうやって観客と出会えることができるのか、映画祭に出品される映画はともかく、そうでない作品はどうやって国境を越えて観客に届けることができるのか、コスタリカのようにプロジェクトがそもそも少ない小国で映画を作る厳しさ、ハリウッドで噴き出しているセクハラ問題には触れなかったようだが、男性のロジックが常にまかり通ってしまうラテンアメリカでは、全世代の女性たちに興味をもってもらえる役柄があるのではないかなど、ハリウッドのステレオタイプ的な映画を前にして、やるべき事柄は山積していることが異口同音に述べられた。

(左から、P. ガルシア、E. フェルナンデス、司会者K. Gidi、E. マルティネス、L. スバラグリア、
A. セヘレス、L. ビアモンテ)
*当ブログで6作とも紹介記事をアップしております。
第4回イベロアメリカ・フェニックス賞2017*結果発表 ― 2017年12月09日 14:24
最優秀作品賞はセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」

★昨年はパブロ・ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が作品賞以下多数のフェニックスのタマゴを独占しましたが、今年もセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」が作品賞を受賞、他にセバスティアン・レリオが監督賞、主演のダニエラ・ベガが女優賞と連続でチリ映画が大賞を制しました(12月6日発表)。本作は『ナチュラルウーマン』の邦題で2018年2月公開が決定しています。政治的にも経済的にも各国問題を抱えていますから、単なるフィエスタに終わらせず、この映画賞を機にイベロアメリカ諸国が一堂に会して映画の未来を議論する場にしようと模索しているようでした。受賞作品並びに受賞者は以下の通り、作品賞のみノミネート作品を列挙しました。
*第3回イベロアメリカ・フェニックス賞の記事は、コチラ⇒2016年12月15日

(女性に性転換したマリナ・ビダルを演じたダニエラ・ベガ、映画から)
*映画部門*
◎作品賞(このカテゴリーのみ7作品ノミネーション)
Viejo calavera ボリビア=カタール、2016、監督キロ・ルッソ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月5日
La región salvaje メキシコ=独=仏=デンマーク、2016、監督アマ・エスカランテ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月17日
Verano 1993 『夏、1993』スペイン、2017、監督カルラ・シモン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日
◎Una mujer fantástica チリ=スペイン=米国、2017、監督セバスティアン・レリオ
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年1月26日

(左橋がプレゼンターのディエゴ・ルナ、トロフィーを手にしているのがプロデューサーの
フアン・デ・ディオス・ラライン、右端がヒロインのダニエラ・ベガ)
El ciudadano ilustre 『笑う故郷』アルゼンチン=西、2016、
監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年10月13日
O Ornitologo ブラジル=ポルトガル=フランス、2016、監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
A fábrica de nada ポルトガル、2017、監督ペドロ・ピニュ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年11月15日
◎監督賞
セバスティアン・レリオ 「Una mujer fantastica」
◎男優賞
オスカル・マルティネス 『笑う故郷』
◎女優賞
ダニエラ・ベガ 「Una mujer fantastica」
*家族の理解もあって自らも10代のころから徐々に性転換していったというダニエラ・ベガ、これからが役者としての正念場を迎えねばならない。

(フェニックスのタマゴを手に喜びのダニエラ)
◎脚本賞
カルラ・シモン 『夏、1993』


◎オリジナル音楽賞
キンカス・モレイラ「La libertad del diablo」 メキシコ、2017、監督エベラルド・ゴンサレス
◎編集賞
クラウディア・オリヴェイラ、エドガー・フェルドマン、ルイサ・Homem 「A fábrica de nada」

◎美術デザイン賞
エウヘニオ・カバリェロ 『怪物はささやく』 監督フアン・アントニオ・バヨナ(米、西)

◎衣装賞
Ro Nascimento 「Joaquim」 監督マルセロ・ゴメス(ブラジル、ポルトガル、スペイン)
◎録音賞
Marc Orts(マーク・オーツ)、オリオル・タラゴ、ピーター・グロソップ 『怪物はささやく』
◎長編ドキュメンタリー賞
La libertad del diablo 監督エベラルド・ゴンサレス
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日

◎ドキュメンタリー撮影賞
マリア・セッコ 「La libertad del diablo」

(ディエゴ・ケマダ=ディエス『金の鳥籠』でも注目されたウルグアイのマリア・セッコ)
★他にTVシリーズ部門としてドラマ・コメディ・俳優アンサンブルの3カテゴリーがあり、ネットフリックスのオリジナル作品『ナルコス』(クリス・ブランカト、カルロ・ベルナルド、他、コロンビア=米)がドラマ部門と俳優アンサンブルで2賞、「Club de Cuervos」(ガス・アラスラキ、ミケ・ラム、メキシコ)がコメディ部門を受賞、ネットフリックスの存在の大きさを見せつけた夕べとなった。メキシコは合計4賞したこともあって、お茶の間も盛り上がったようでした。

(タマゴを手にした『ナルコス』アンドレス・バイス監督、右側パウリナ・ガルシア)

(喜びに沸いた「Club de Cuervos」のスタッフとキャスト一同)
★その他、特別賞として、キャリア賞(ノルマ・アレアンドロ)、批評家賞(アイザック・レオン・フリアス)、Exhibidoresという 展示者賞にフアン・アントニオ・バヨナ(欠席)の『怪物はささやく』が受賞した。

(アルゼンチンの『オフィシャル・ストーリー』の主演女優ノルマ・アレアンドロ)
★エミリアノ・トレスのデビュー作「El invierno」は、サンセバスチャン映画祭2016の審査員特別賞受賞作品。時間切れで作品紹介はできませんでしたが、サンセバスチャンでもラミロ・シビタは撮影賞を受賞しています。
★ポルトガル映画ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの「O Ornitologo」と、ブラジル映画マルセロ・ゴメスの「Joaquim」は当ブログ未紹介作品です。前者はロッテルダム映画祭2016の監督賞受賞を皮切りに国際映画祭の受賞歴多数、サンセバスチャン映画祭2016「サバルテギ」部門でも上映されました。後者はベルリン映画祭2017正式出品です(主要言語がポルトガル語)。
★イベロアメリカ・フェニックス映画賞は参加国が23ヵ国と多いせいか公開時期が各国異なるので、どうしても2016年と2017年が混在が避けられません。大分以前の作品もノミネーションされている印象を受けます。 (クラウディア・オリヴェイラ)
ウエルバ映画祭2017結果発表*アルゼンチンの「La novia del desierto」 ― 2017年11月24日 14:05
二人の女性監督のデビュー作が「金のコロン」作品賞を受賞

★第43回を迎えたイベロアメリカ・ウエルバ映画祭2017の結果発表がありました(11月18日)。本映画祭紹介は初めてですが、今年は当ブログで紹介したアルゼンチンのセシリア・アタン&バレリア・ピバトの長編デビュー作「La novia del desierto」(アルゼンチン=チリ合作)が最優秀作品賞「金のコロン」(ゴールデン・コロンブス賞)、主演のパウリナ・ガルシアが女優賞「銀のコロン」、同じく共演者のクラウディオ・リッシが男優賞、さらに合作映画に与えられる共同製作賞などの大賞を独り占めしたのでアップいたします。カンヌ映画祭2017「ある視点」ノミネーション作品。
*「La novia del desierto」の紹介記事は、コチラ⇒2017年5月14日

(パウリナ・ガルシアとクラウディオ・リッシ)

(二人の監督、セシリア・アタンとバレリア・ピバト)
★授賞式には両監督は欠席、主役のパウリナ・ガルシアがメッセージを代読、配給元のプロデューサーロレア・エルソが「世界のすべてのテレサたちに捧ぐ」とコメントした(テレサとはパウリナが演じた54歳になる身寄りのない家政婦の名前)。プレゼンテーターは今回の審査委員長メキシコの監督ルシア・カレーラス、日本では『うるう年の秘め事』(マイケル・ロウ、LB2011)や『金の鳥籠』(ディエゴ・ケマダ=ディエス、難民映画祭2014)の脚本家として認知されているが、2011年「Nos vemos, papa」で監督デビューを果たし、2016年の第2作「Tamara y la Catarina」は評価も高く、今回の審査委員長指名になった。

(左から、ルシア・カレーラス、パウリナ・ガルシア、ロレア・エルソ、授賞式にて)
★ウエルバ市はアンダルシア州ウエルバ県の県都、隣県セビーリャ、カディス、バダホス、ポルトガルに接し、南はカディス湾に面している。どちらかというと芸術文化には縁の薄い産業と農業の町です。作品賞に命名された「コロン」は、1492年にコロンブスが最初の航海に出た港がウエルバ県のパロス・デ・ラ・フロンテラだったからです。まだフランコ体制だった1974年設立、第1回開催が1975年、インターナショナルではなくスペイン語とポルトガル語映画に特化した映画祭、イベロアメリカの発展振興を世界に向けて発信するのが目的です。今年の受賞国アルゼンチンが10回、続くブラジルとチリが7回、他スペイン、ポルトガル、メキシコ、キューバ、ウルグアイなどが各3~5回、時代によってかなり変化があります。
★オフィシャル・セレクションはドキュメンタリーを含む長編と短編に分かれ、長編部門の最高賞が「金のコロン」、短編が「銀のカラベラ」です。カラベラcarabelaは15~6世紀の航海時代に使用された3本マストの快速小型帆船のことで、コロンブスの第1回航海に使用されたことに因んで命名された。従って金賞は長編作品賞のみです。他にコンペティション部門とは関係なく選ばれる、栄誉賞にあたる「ウエルバ市賞」(1998年より)、アンダルシア出身の監督作品に与えられる「フアン・ラモン・ヒメネス賞」、新人監督賞、観客賞(El eco de los aplausos)他があります。
★今年は12作がノミネートされ、そのうち当ブログで紹介した作品は、受賞作の他、ベルリン映画祭2017の銀熊脚本賞に輝いたセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」(チリ)、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」に正式出品されたマルセラ・サイドの第2作「Los perros」(チリ)、エベラルド・ゴンサレスのメキシコの闇を切り取った問題作「La libertad del díablo」(メキシコ、ドキュメンタリー)などがあります。賞に絡んだのは、マルセラ・サイドの「Los perros」が「イベロアメリカの現実を反映した映画」として、ラジオ・エクステリアRadio Exterior de España賞、主役を演じたダニエラ・ベガが女優賞を取るかと予想した、セバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」は観客賞を受賞した。既にベルリンやカンヌでワールド・プレミアした作品ですが、チリの躍進が目立った印象でした。
*「Una mujer fantástica」の紹介記事は、コチラ⇒2017年1月26日/同年2月22日
*「Los perros」の紹介記事は、コチラ⇒2017年5月1日
*「La libertad del diablo」の紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日

(アントニア・セヘルスとアルフレッド・カストロ、ポスターから)


(女性に性転換したマリアを演じたダニエラ・ベガ、映画から)

(「La libertad del díablo」のエベラルド・ゴンサレス監督)
★栄誉賞「ウエルバ市賞」をアルゼンチンの俳優ダリオ・グランディネッティが受賞、登壇したハイメ・チャバリにエスコートされたアナ・フェルナンデスの手からトロフィーを受け取った。1959年サンタ・フェ生れの58歳、アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』や『ジュリエッタ』、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』で知名度を高めている。2016年の受賞者はキューバのホルヘ・ぺルゴリア、2015年はベレン・ルエダ、アイタナ・サンチェス=ヒホンの複数、年によって数がまちまちです。他にアルゼンチンからは、アドルフォ・アリスタライン監督、ベテラン俳優のフェデリコ・ルッピ、レオナルド・スバラグリア、エルネスト・アルテリオなどが受賞者。

(トロフィーを手にダリオ・グランディネッティ)
第4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017*結果発表 ― 2017年07月25日 18:36
作品賞は『笑う故郷』、アルモドバルが『ジュリエッタ』で監督賞!
★ノミネーション発表(5月31日)から大分時間が空いて気が抜けてしまっていた授賞式が、去る7月22日にマドリードのカハ・マヒカで開催されました。作品賞は予想通り、本作はラテンビート上映時の邦題『名誉市民』が『笑う故郷』と笑えないタイトルになって公開されます。監督賞はJ.A.バヨナかアルモドバルか迷いましたが、後者に軍配が上がりました。当夜いちばん光が当たった人がアルモドバルでした。彼の授賞式参加は初めて、つまりガラでの発言は皆無でした。「この受賞を市民戦争中に行方不明になった家族を探し続けている人々に」捧げるとスピーチした。えっ『ジュリエッタ』ってそんな映画でした? これにはかなり説明が必要なので別にアップいたします。というのもフランコ時代に無実の罪で23年間服役していた詩人マルコス・アナ(1920~2016)の回想録の映画化と関係があるからです(アルモドバルはこの回想録の映画化権を持っている)。いずれアップします。

★ドラマ部門の女優賞はブラジルのソニア・ブラガ、本作で第3回イベロアメリカ・フェニックス賞でも女優賞を受賞している。なお彼女は第1回プラチナ賞の栄誉賞受賞者でもありました。観客賞部門の女優賞ナタリア・オレイロは、ウルグアイ出身であるが主にアルゼンチンで活躍している。前回ウルグアイで開催された第3回ではサンティアゴ・セグラと総合司会者を務めました。ということで今回はベテラン女優が気を吐きました。男優賞のオスカル・マルティネスについてはもう書きすぎました。
作品賞(ドラマ部門)
「Aquarius アクエリアス」(ブラジル)監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
◎『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督:ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)監督:アルベルト・ロドリゲス
『ジュリエッタ』(スペイン)監督:ペドロ・アルモドバル
「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)監督:パブロ・ラライン

(左から、アンドレス・ドゥプラット、ガストン・ドゥプラット、オスカル・マルティネス、
マリアノ・コーン、受賞者一同)
監督賞
フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(スペイン)
クレベール・メンドンサ・フィリオ「Aquarius」(ブラジル)
ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)
パブロ・ラライン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
◎ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』(スペイン)

脚本賞
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)
◎アンドレス・ドゥプラット『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)
セルソ・ガルシア「La delgada línea amarilla」(メキシコ)
ギジェルモ・カルデロン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
パベル・ヒロウド&アレハンドロ・ブルゲス他「El acompañante」
(キューバ、ベネズエラ、コロンビア)
女優賞
アンジー・セペダ「La semilla del silencio」(コロンビア)
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』(スペイン)
フアナ・アコスタ「Anna」(コロンビア・フランス)ジャックToulemondeビダル監督
ナタリア・オレイロ「Gilda, no me arrepiento de este amor」(アルゼンチン)
ロレナ・ムニョス監督
◎ソニア・ブラガ「Aquarius」(ブラジル)

男優賞
アルフレッド・カストロ『彼方から』(ベネズエラ、チリ)
ダミアン・カサレス「La delgada línea amarilla」(メキシコ)
エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)
ルイス・ニェッコ「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
◎オスカル・マルティネス『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

オペラ・プリマ(第1回監督作品、ドラマ部門)
◎『彼方から』(ベネズエラ、チリ)ロレンソ・ビガス
「La delgada línea amarilla」(メキシコ)セルソ・ガルシア
「Rara」(アルゼンチン、チリ)ペパ・サン・マルティン
「Viejo calavera」(ボリビア)キロ・ルッソ
『物静かな男の復讐』(スペイン)ラウル・アレバロ
音楽賞
◎アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』
ゴヤ賞の胸像を10個、オスカー賞ノミネーション3回、今回プラチナ賞をゲットして、トロフィーのコレクター。アルモドバル作品を一手に引き受けている。
美術賞
◎エウヘニオ・カバジェロ『怪物はささやく』
撮影賞
◎オスカル・ファウラ『怪物はささやく』
編集賞
◎Bernat Vinapiana / Jaune Marti『怪物はささやく』
録音賞
◎Peter Glossop / Marc Orts / オリオル・タラゴ『怪物はささやく』
『怪物はささやく』は言語が英語のため、作品賞から外されました。興行的にはナンバーワンの功労者でしたが残念でした。バヨナ自身は監督賞を逃しましたが、技術部門4個を制しました。

ミニシリーズ&テレビシリーズ賞
◎“Cuatro estaciones en La Habana”(西、キューバ)監督:フェリックス・ビスカレット
キューバの推理作家レオナルド・パドゥラのマリオ・コンデ警部補が活躍する「四季シリーズ」がベースになっている。
ドキュメンタリー賞
◎“2016, Nacido en Siria”(スペイン)監督:エルナン・シン
現在ヨーロッパで起きている、各政府が目を背けている証言で綴られている。よりよい生活を求めて旅を続けるシリアの子供たち20人と14か月間、監督は行を共にして作ったドキュメンタリー。
アニメーション賞
◎“Psiconautas, los niños olvidados ”(スペイン)監督:アルベルト・バスケス&ペドロ・リベロ
意義のある教育賞
◎“Esteban”(キューバ、スペイン)
作品賞(観客賞部門)
◎『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)
女優賞(観客賞部門)
◎ナタリア・オレイロ ”Gilda, no me arrepiento de esta amor”

男優賞(観客賞部門)
◎オスカル・マルティネス(『笑う故郷』)
ポスター賞(観客賞部門)
◎『ジュリエッタ』アルモドバル
◎プラチナ栄誉賞
エドワード・ジェームズ・オルモス
EGEDA会長エンリケ・セレソがプレゼンターでした。1947年ロサンゼルス生れのメキシコ系アメリカ人俳優。スペインUSA合作『ロルカ、暗殺の丘』(1997、監督マルコス・スリナガ)、代表作は『ブレードランナー』、TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984~89)のマーティン・キャステロ主任警部役がもっとも有名でしょうか。本作で1985年にゴールデングローブ賞、エミー賞を受賞している。5月31日にロスで開催されたノミネーション発表会のプレゼンターを務めていた。

★記者会見では「時差ボケで睡眠がとれずくたくたです。・・・国ではラテン芸術の理解に奮闘しています。彼らは私たちラテン系に恐怖をもっているのです」と、今や国民の20パーセントを占めるに至ったヒスパニック系アメリカ人に対する差別が増加していると語っていた。トランプが演出する反オバマ政策を支持する一部の人々が存在していること、そういう米国人はアフロ系大統領には我慢できなかった。「しかし私はオプティミストです」と希望も語っていた。
★第5回イベロアメリカ・プラチナ賞2018はラテンアメリカに戻って、メキシコのリビエラ・マヤで、4月開催がアナウンスされました。有名なリゾート地カンクンより南へ車で90分ほどにある、外国人セレブに人気のあるリゾート地です。
*第4回イベロアメリカ・プラチナ賞ノミネーション発表の記事は、コチラ⇒2017年6月5日
アリエル賞2017*メキシコ・アカデミー賞の結果発表 ― 2017年07月15日 16:30
メキシコ未公開映画が最優秀作品賞以下10冠の不思議
★デビュー作(◎印)が目立った今年のアリエル賞が、7月11日に発表になりました。カテゴリーはまた増えて28個、うち10冠(ノミネート20個)を制した「La 4a compañía」が、未だにメキシコでは公開されていないのに受賞しました。グアダラハラ映画祭2016(3月6日)で上映こそされましたが、アカデミー会員の多くはスクリーンでは観てないはずです。今後の公開を期待したのかもしれませんが、配給会社はまだ決まっていないようです。受賞カテゴリーは、作品・男優(アドリアン・ラドロン)・クアドロ男優(エルナン・メンドサ)・編集・視覚効果・特殊効果・美術デザイン・録音・衣装・メイクアップの10個です。「Tempestad」がドキュメンタリーということからある程度は予想されていましたが、未公開作品が作品賞を取るという結果になりました。

(「La 4a compañía」のポスター)
★アリエル賞はメキシコの社会情勢を反映して、政治的メッセージの強い映画が選ばれる傾向にあると思います。2016年ダビ・パブロスの『選ばれし少女たち』、2015年アロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』、2014年ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』と、切りこむ角度は違ってもメキシコやラテンアメリカの闇を抉るという意味では同じでした。今年の受賞作も実話をベースにした刑務所が舞台になっている。制度的革命党PRIのホセ・ロペス・ポルティーリョが大統領だった時代(1976~82)、メキシコ・ペソの大暴落で世界を混乱させた頃の物語です。実現までに10年以上もかかったプロジェクト全員が、待ちに待った受賞者のアナウンスに酔いしれた夕べとなりました。
*「La 4a compañía」ほかノミネーション発表の記事は、コチラ⇒2017年6月9日
最優秀作品賞(メキシコ)
『夜を彩るショーガール』◎(Bellas de noche)ドキュメンタリー
監督マリア・ホセ・クエバス
『彼方から』◎(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス
『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン
「Tempestad」ドキュメンタリー 監督タティアナ・ウエソ
「Me estás matando, Susana」監督ロベルト・スネイデル
◎「La 4a compañía」◎(スペイン合作)
監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ
「El sueño del Mara'akame」◎ 監督フェデリコ・Cecchetti

(ミッチ・バネッサ・アレオラとアミル・ガルバン・セルベラ)
監督賞&長編ドキュメンタリー賞
タティアナ・ウエソ「Tempestad」ドキュメンタリー
*女性で監督賞を受賞した第1号となり、当夜のもう一人の華だった。アリエル賞は1947年、16のカテゴリーで始まったメキシコ・アカデミー賞、その長い歴史にもかかわらず、ウエソ監督が初とは驚きを通りこして沈黙あるのみです。女性への暴力が処罰されないメキシコの現在が語られる。パウラ・マルコビッチ監督の自伝的デビュー作「El premio」(メキシコ、仏、独、ポーランド)が、2013年に作品賞を受賞したことがあります。しかし彼女はメキシコで活動しているアルゼンチン出身の脚本家でした。

(監督賞のトロフィーを手にしたタティアナ・ウエソ)
オペラ・プリマ第1回作品賞&と音楽賞
「El sueño del Mara'akame」監督:フェデリコ・Cecchetti

(出演者と一緒に)
男優賞(二人)
アドリアン・ラドロン「La 4a compañía」
ホセ・カルロス・ルイス「Almacenados」監督:ジャック・サグア・カバビエZagha Kababie確認
*若手とベテランが賞を分け合いました。

(左から、ホセ・カルロス・ルイスとアドリアン・ラドロン)
女優賞
ベロニカ・ランガー(ランヘル)「La calidas」監督:マロエイリノ・イスラス・エルナンデス

(貫禄の受賞者ベロニカ・ランガー)
助演男優賞
オセHoze・メレンデス「Almacenados」

助演女優賞
アドリアナ・パス「La calidas」

新人男優賞
パコ・デ・ラ・フエンテ「El alien y yo」監督:ヘスス・マガニャ・バスケス
新人女優賞
マリア・エボリ「Tenemos la carne」監督:エミリアノ・ロチャ・ミンター

クアドロ男優賞
エルナン・メンドサ「La 4a compañía」

クアドロ女優賞
マルタ・クラウディア・モレノ 「Distancias cortas」

オリジナル脚本賞
ホアキン・デル・パソ&ルシー・Pawlak「Maquinaria Panamericana」監督ホアキン・デル・パソ
脚色賞
ダビ・デソラ「Almacenados」
撮影賞
エルネスト・パルド「Tempestad」
編集賞
ミッチ・バネッサ・アレオラ、フランシスコ・リベラ、カミロ・アバディア「La 4a compañía」

(欠席したカミロ・アバディアのトロフィーも手にアレオラ、フランシスコ・リベラ)
視覚効果賞
リカルド・ロブレス「La 4a compañía」
特殊効果賞
ルイス・エドゥアルド・アンブリス「La 4a compañía」
美術デザイン賞
ジェイ・エロエスティ、カルロス・コッシオ「La 4a compañía」

音楽賞
エミリアノ・モッタ「El sueño del Mara'akame」
衣装賞
ベルタ・ロメロ、ホセ・グアダルーペ・ロペス「La 4a compañía」

メイクアップ賞
カルラ・ティノコ、アルフレッド・ガルシア「La 4a compañía」

録音賞(2作)
ハビエル・ウンピエレス、イサベル・ムニョス他「La 4a compañía」
フェデリコ・ゴンサレス・ホルダン、カルロス・コルテス他「Tempestad」
短編賞(フィクション)
「El ocaso de Juan」監督:オマル・デネド・フアレス

短編賞(ドキュメンタリー)
「Aurelia y Pedro」監督:オマル・ロブレス、ホセ・ペルマル
短編アニメーション(長編は該当作なし)
「Los aeronautas」監督:レオン・ロドリゴ・フェルナンデス

イベロアメリカ映画賞
◎『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート
◎『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
「Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル
「Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、独) 監督セバスティアン・コルデロ
『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ
(ブラジルとアルゼンチンが分け合いました)
ゴールデン・アリエル賞(二人)
イセラ・ベガ(女優、脚本家、製作者、シンガー・ソング・ライター)
*1939年生まれ。アリエル賞では、女優賞を1984年にアルトゥーロ・リプスタインの「La viuda negra」で受賞しているが、本作は1977年製作、メキシコ公開が1983年でした。他に2000年「La ley del Herodes」でも受賞、他に助演女優賞も受賞している。サム・ペキンパーの米国メキシコ合作映画『ガルシアの首』に出演、これは1975年公開されている。

ルセロ・イサック(美術監督)

★「La 4a compañía」が10個、「Tempestad」が4個、「Almacenados」が3個、「El sueño del Mara'akame」
と「La calidas」が2個ずつ、他は1カテゴリーという結果になりました。既に公開、映画祭上映、ネットフリックスなどで見ることのできる作品もありますが、この他どのくらい日本で見られるでしょうか。マリア・エボリが新人賞を取ったホラー・ファンタジー「Tenemos la carne」(エミリアノ・ロチャ・ミンター)あたりは期待できそうです。
アリエル賞2017*ノミネーション発表 ― 2017年06月09日 12:13
メキシコ版アカデミー賞、作品賞候補にドキュメンタリーも

★アリエル賞2016の結果発表は5月中だったが、今年は7月11日ということです。昨年の授賞式は『選ばれし少女たち』の監督ダビ・パブロスが両手に花でしたが、今年も同じような結果でしょうか。ざっと見た限りですが、ノミネーションは昨年12月の「イベロアメリカ・フェニックス賞」、11月開催の「ロス・カボス映画祭」受賞作品などと、当然ですがダブっているようです。最優秀作品賞ノミネーションには、公開、映画祭上映、ネットフリックスと、既に日本語字幕入り作品も交じっています。カテゴリーの数が多く、監督賞・脚本賞などはダブるので、最優秀作品賞とイベロアメリカ映画賞だけアップしておきます。ゴチック体は当ブログで扱った作品です。

(最優秀作品賞ノミネーションの7作品)
◎最優秀作品賞(メキシコ)
『夜を彩るショーガール』◎(Bellas de noche)ドキュメンタリー
監督マリア・ホセ・クエバス
『彼方から』◎(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス
『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン
「Tempestad」ドキュメンタリー、監督タティアナ・ウエソ
「Me estás matando, Susana」監督ロベルト・スネイデル
「La 4a compañía」◎(スペイン合作)
監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ
「El sueño del Mara'akame」◎ 監督フェデリコ・Cecchetti
◎印はデビュー作
★マリア・ホセ・クエバスの『夜を彩るショーガール』は、カンヌ映画祭で物議をかもしたネットフリックスで放映されている作品、ディスコ全盛期の1970年代から80年代にかけて活躍した5人のショーガールvedette(リン・メイ、ワンダ・セウス、プリンセサ・ジャマル、ロッシー・メンドサ、オルガ・ブレースキン)の数奇な人生を語るドキュメンタリー。ショー場面が続く前半よりオール60歳代になった後半が胸を打つ。彼女たちの栄光と転落がホンネで語られるからです。vedette というのはフランス語起源のバラエティーショーのセックス・シンボル的な女性スター、踊れて歌えて演技もできるアーティスト。モレリア映画祭2016メキシコ・ドキュメンタリー賞、ロス・カボス映画祭、パナマ映画祭などで受賞している。本作はドキュメンタリー部門でもノミネートされている。

★アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラの「La 4a compañía」は、最多の20カテゴリーでノミネートされている。本作についてはミシェル・フランコの「Las hijas de Abril」に出演していたエルナン・メンドサの紹介記事で少しだけ触れています。両監督のデビュー作。

★タティアナ・ウエソの「Tempestad」は8部門ノミネーション、分類はドキュメンタリーだがドラマでもある。監督はこの二つのジャンルは区別できないと語っている。暴力が処罰されることのないメキシコ、二人の犠牲者の物語。ミリアムは人身売買の濡れ衣を着せられて収監中、アデラは移動サーカスで働いている。闇が支配する世界への旅は同時に自由への旅でもある。一種のロードムービー。ベルリン映画祭2016フォーラム部門上映で高い評価を受け、12月開催の「フェニックス賞」ではドキュメンタリー賞やエルネスト・パルドの素晴らしい映像が撮影賞などを受賞している。『夜を彩るショーガール』同様、本作もドキュメンタリー部門でノミネートされている。審査員の評価は高いと思います。

★「El sueño del Mara'akame」はフェデリコ・Cecchettiの長編第1作、タイトルのMara'akameはウイチョル族のシャーマンを指すようです。オースティン映画祭観客賞とスペシャル・メンション、モレリア映画祭第1回・2回作品賞受賞、シカゴ映画祭他で上映されている。今年のアリエル賞は新人監督が目立つ印象です。4作とも第1回監督賞にノミネートされている。

*『彼方から』の紹介記事は、コチラ⇒2016年9月30日
*『ノー・エスケープ自由への国境』は、コチラ⇒2017年4月23日
*「Me estás matando, Susana」は、コチラ⇒2016年3月22日
*「La 4a companía」は、コチラ⇒2017年5月8日
◎イベロアメリカ映画賞
「Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル
「Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、ドイツ)
監督セバスティアン・コルデロ
『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
追記:公開邦題『笑う故郷』として岩波ホールで9月16日から
『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ
『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート
★「Anna」は、ゴヤ賞2017のイベロアメリカ映画賞ノミネート、これから発表になる第4回イベロアメリカ・プラチナ賞には主演のフアナ・アコスタが候補者となっている。映画賞、映画祭で目にするが受賞にまで至らない。「Sin muertos no hay carnaval」は、セバスティアン・コルデロが生れ故郷エクアドルで撮った話題作、いつかご紹介したいと思っている映画の一つ。


★アナ・ミュイラートの長編第4作目『セカンドマザー』(Que Horas Ela Volta?)は、英題「The Second Mother」の片仮名起こし、東海地方で展開しているコロナシネマワールドでのみ上映される「メ~シネマ」作品として今年1月公開された。ミュイラート監督は1964年サンパウロ生れの53歳、サンパウロ大学で映画を学ぶ。脚本家としてキャリアを出発させた。主にテレビ界での活躍が目立っていたが、短編中編を手掛けた後、2002年「Durval Discos」で長編デビューを果たす。日本ではカオ・アンブルゲールの『1970、忘れられない夏』(2006シネフィル・イマジカ放映、当時ハンバーガーと表記された)や『シングー』(2011ラテンビート2012)の脚本家の一人として紹介されているが、もっと注目されていい監督の一人。またベテラン女優のヘジーナ・カゼRegina Caseが母親役を演じているのも見逃せない。レジーナ・ケースという英語読みがあり、ポルトガル語はスペイン語以上に人名表記が定まっていない。古い話だが、アンドルッシャ・ワッディントンの佳作『エゥ・トゥ・エリス』(東京国際映画祭2000上映)で日本初登場、これは『私の小さな楽園』の邦題で公開された。

第4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017*ノミネーション発表 ― 2017年06月05日 14:31
「オスカーに匹敵する」賞とケイト・デル・カスティージョがノミネーション発表

★先月31日(水)、ハリウッド映画の中心地ロスアンゼルス(ビバリーヒルトン・ホテル)でイベロアメリカ・プラチナ賞2017のノミネーション発表がありました。ビバリーヒルトンは、例年オスカー賞候補者の昼食会やゴールデン・グローブ賞のガラが開催されるホテル、それでケイト・デル・カスティージョの開会の辞が「オスカーに匹敵する」云々になったようです。デル・カスティージョ(女優1969メキシコ・シティ、現ロス在住)、その他、エドワード・ジェームズ・オルモス(俳優1947ロス)、アンジー・セペダ(女優1974カルタヘナ、現マドリード在住)、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(俳優1982カステジョン)の4人(写真中央はCNNの司会者フアン・カルロス・アルシニエガス)が各カテゴリーのノミネーション発表を行った。今年の授賞式会場は、7月22日(土)、マドリードの屋内競技場カハ・マヒカCaja Mágicaで開催される。ここは2020年のオリンピック誘致ではテニス会場になるはずだった。スポーツだけでなく音楽祭なども開催されている。

(左から、エドワード・ジェームズ・オルモス、ケイト・デル・カスティージョ、一人置いて
アンジー・セペダ、ミゲル・アンヘル・シルベストレ)
★最多ノミネーションは、フアン・アントニオ・バヨナの『怪物はささやく』の7個(監督・美術・録音・撮影・編集・オリジナル音楽・価値ある映画と教育)、ただしメインの作品賞には、オリジナル版が英語作品だったため、「言語はスペイン語・ポルトガル語」という条件を満たせず該当外となった。続くパブロ・ララインの「ネルーダ」が5個(2017秋公開が予定されているが、邦題は未定)、ロレンソ・ビガスの『彼方から』、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『名誉市民』、アルモドバルの『ジュリエッタ』、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』、セルソ・ガルシアの「La delgada línea amarilla」の4個でした。当ブログではセルソ・ガルシア作品以外は既にアップ済み。なお写真掲載は1カテゴリー1個に絞った。

(最多ノミネーション7個の『怪物はささやく』)
主要カテゴリーのノミネーション
◎作品賞(ドラマ部門)
「Aquarius」(ブラジル)クレベール・メンドンサ・フィリオ監督
『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン監督
『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)アルベルト・ロドリゲス監督
『ジュリエッタ』(スペイン)ペドロ・アルモドバル監督
「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)パブロ・ラライン監督

◎監督賞
フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(スペイン)
クレベール・メンドンサ・フィリオ「Aquarius」(ブラジル)
ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)
パブロ・ラライン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』(スペイン)

◎脚本賞
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)
アンドレス・ドゥプラット『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)
セルソ・ガルシア「La delgada línea amarilla」(メキシコ)
ギジェルモ・カルデロン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
パベル・ヒロウド&アレハンドロ・ブルゲス他「El acompañante」(キューバ、ベネズエラ、
コロンビア)

◎女優賞
アンジー・セペダ「La semilla del silencio」(コロンビア)
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』(スペイン)
フアナ・アコスタ「Anna」(コロンビア・フランス)ジャック・トゥールモンド・ビダル監督
ナタリア・オレイロ「Gilda, no me arrepiento de este amor」(アルゼンチン)
ロレナ・ムニョス監督
ソニア・ブラガ「Aquarius」(ブラジル)

◎男優賞
アルフレッド・カストロ『彼方から』(ベネズエラ、チリ)
ダミアン・カサレス「La delgada línea amarilla」(メキシコ)
エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)
ルイス・ニェッコ「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)
オスカル・マルティネス『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)

◎オペラ・プリマ(第1回監督作品、ドラマ部門)
『彼方から』(ベネズエラ、チリ)ロレンソ・ビガス
「La delgada línea amarilla」(メキシコ)セルソ・ガルシア
「Rara」(アルゼンチン、チリ)ペパ・サン・マルティン
「Viejo calavera」(ボリビア)キロ・ルッソ
『物静かな男の復讐』(スペイン)ラウル・アレバロ

(ペパ・サン・マルティンの「Rara」)
★女優賞ノミネートのナタリア・オレイロは、ウルグアイで開催された第3回目の総合司会者、ウルグアイ出身ですが主にアルゼンチンで活躍している(『ワコルダ』)。「Gilda, no me arrepiento de este amor」は1996年交通事故死したアルゼンチンの歌姫ヒルダのビオピック。ソニア・ブラガは第1回プラチナ賞2014の栄誉賞受賞者、「Aquarius」はカンヌ映画祭2016正式出品を皮切りに世界各地の映画祭巡りをした。アンジー・セペダは、今回ノミネーション発表をしたコロンビア出身の女優だが、本拠地をマドリードに移している。ノミネーション発表をした先輩ケイト・デル・カスティージョとは親友同士だそうです。フアナ・アコスタが出演した「Anna」(西語・仏語)は、ゴヤ賞2017のイベロアメリカ映画部門にノミネートされた。2015年製作とやや古い。フアナ・アコスタはエルネスト・アルテリオと結婚、スペイン映画出演も多く、当ブログ登場も多いほうか。エンマ・スアレス他、男優賞ノミネートの紹介は不要ですね。

★その他のカテゴリーとして、オリジナル音楽、撮影、美術、録音、ドキュメンタリー、アニメーション、シリーズのテレビドラマその他がありますが割愛、受賞結果はアップいたします。
◎EGEDA (Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales) とFIPCA(Federación Iberoamericana de Productores Cinematográficos y Audiovisuales) が主催します。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための管理交渉団体です。EGEDAは1990年創設、活動は1993年から。スペイン、チリ、コロンビア、US、ペルー、ウルグアイ他などが参加しております。
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