映画国民賞2021はホセ・サクリスタン*授賞式はサンセバスチャンFF2021年07月13日 16:54

              教育文化スポーツ省が選考母体の国民賞

  

           

 

ホセ・サクリスタン映画国民賞受賞の報せに、すぐ思い出したのが2015年の受賞者フェルナンド・トゥルエバだった。「今さら貰っても・・・」と、受賞を拒んだのでした。選考母体の教育文化スポーツ省の大臣も「断れるかな」と恐る恐る電話したというから笑える。授賞にはタイミングというものがあるということです。当時トゥルエバ監督の最新作は3年前の『二人のアトリエ~ある彫刻家とモデル』と大分前、『美しき虜』(98)の続編である「La reina de España」は、まだ準備中でクランクインもしていなかった。文化の重要性を軽視して文化予算を削り、チケット代に21%の消費税をかける政府に怒りを露わにしていた時期だった。結局は妻で製作者のクリスティナ・ウエテにとりなされて受けっとったのでしたが。

国民賞の沿革、トゥルエバ受賞の記事は、コチラ20150717

 

ホセ・サクリスタン(マドリードのチンチョン1937)が未だだったとは実に意外というか驚きでした。おそらく本人がニュースを知った最後の一人だったろうと言う。というのも彼はフェルナンド・コロモの新作Cuidado con lo que deseasの撮影でセゴビアの森の中にいて連絡が取れなかった。妻のアンパロ・パスクアルが制作チームのメンバーを通じて彼を捜しだし受賞を知らせたという。しかし数年、最有力候補者の一人だったそうですから、ホセ・マヌエル・ロドリゲス・ウリベス文化大臣の電話を敬遠したのではないかと忖度する人もいるそうですw。お祝いに数分中断しただけで何事もなかったように撮影は続行された。

 

      

   (フェロス賞2015に揃って出席したサクリスタンとアンパロ・パスクアル)

 

★撮影が終わって帰宅したサクリスタンは「賞はどれも歓迎です。それを祝う最良の方法は仕事をすることです。私にとってそれが重要だからです。この職業を続けてエンジョイできるようにするためです」と、エルパイスのの記者に電話で語った。仕事あっての人生というわけです。映画も芝居も引退の気はさらさらないが、83歳の俳優にとって撮影の手順は日増しに厳しくなっているようです。「早起きとか、待ち時間の長さ、寒さ暑さ・・・舞台のほうがずっと落ちつける」と弱音もチラリ。

 

★最初電話が繋がらなかった大臣も最終的には繋がった。「私たちは、ベルランガの年にスペイン映画史で最も偉大な俳優を選びたかった。電話で話せましたよ、勿論。渓谷の麓で撮影中の彼を見つけだしてね。ありがとう、ペペ、本当に。大いなる愛をこめて!」だそうです。遅かったのはベルランガの年を待っていたからというわけ。2021年はベルランガ生誕100周年、コロナに負けずイベントも目白押し、ペペはホセの愛称です。

 

★受賞の理由にはサクリスタンが「ルイス・ガルシア・ベルランガやフェルナンド・フェルナン・ゴメスなどスペイン映画史上に残るシネアストと仕事をしてきたこと、また若い監督カルロス・ベルムトやイサキ・ラクエスタ、ハビエル・レボーリョなどアクティブな監督とコラボしていることを審査員たちは挙げている。彼の多様性、60年代のコメディ、70年代後半からの社会派のスリラーまで幅の広いことも挙げている。本賞は映画部門の受賞だが、映画のみならず演劇、周囲を驚かせた90年代の「ラマンチャの男」や「マイ・フェア・レディ」のようなミュージカル出演も視野に入れたということです。

 

★受賞者のキャリア&フィルモグラフィーについては何回か登場させておりますが、1960年舞台でスタート、1965年のフェルナンド・パラシオスのコメディLa familia y uno másで映画デビューした。60年代は、アルフレッド・ランダホセ・ルイス・ロペス・バスケスのトリオの一人として、おびただしい数のコメディに起用されている。フランコ体制末期の1975年、ハイメ・カミーノ1936年の長い休暇』で生物学者を演じた。内戦勃発でカタルーニャ地方の山間避暑地に閉じ込められた人々を敗者の視点で描いた作品。翌年のベルリン映画祭に出品され国際映画批評家連盟賞を受賞した。日本では1984年に開催された「スペイン映画の史的展望 195577」で上映されている。1977年にはホセ・ルイス・ガルシのデビュー作Asignatura pendiente(仮題「未合格科目」)で主役に抜擢された。

 

★そして転機になったのが、ペドロ・オレアのホモセクシュアルをテーマにしたUn hombre llamado Flor de Otoño(仮題「秋の花と呼ばれた或る男」)主演だった。サンセバスチャン映画祭1978銀貝男優賞、ほかサンジョルディ男優賞など受賞、続いてマリオ・カムス『蜂の巣』82)でACE1984とフォトグラマス・デ・プラタ賞1983を受賞、ピラール・ミロEl pájaro de la felicidad93)などシリアス・ドラマに起用された。オレア作品は、マラガ映画祭2018「金の映画」に選ばれ、監督と一緒にマラガを訪れている。

マラガ映画祭2018「金の映画」の紹介記事は、コチラ20180422

    

    

 (昼は弁護士、夜は女性歌手に変身する「Un hombre llamado Flor de Otoño」のポスター)

    

       

        (マラガに連れ立って参加したオレア監督とサクリスタン)

 

★どの作品も大好きで誇りを感じており、私の人生の一部になっていると語るが、「デビュー作で受けたような衝撃をその後一度も感じたことはありません。アルベルト・クロサスが私を見たときの視線のことで、その夜は眠れませんでした。デビュー作は私の心の中で特別な場所を占めています」と。アルベルト・クロサスというのは、「La familia y uno más」の主役で、フアン・アントニオ・バルデム『恐怖の逢びき』55)で主役の大学教師を演じた俳優です。俳優も監督も鬼籍入りしています。

 

2005年から2011まで舞台に専念していたが、ダビ・トゥルエバMadrid, 1987で銀幕に復帰、フォルケ賞2013男優賞を受賞した。続いてハビエル・レボーリョEl muerto y ser felizで、余命幾ばくもない雇われ殺し屋を飄々と演じて、サンセバスチャン映画祭2012の二度目となる銀貝男優賞、初となるゴヤ賞2013主演男優賞、ガウディ賞主演男優賞、銀幕カムバック後は受賞ラッシュとなった。

ゴヤ賞・フォルケ賞受賞でキャリア紹介、コチラ20130818

  

      


        (ゴヤ賞2013主演男優賞の受賞スピーチをするペペ)

 

★他にイサキ・ラクエスタのコメディMurieron por encima de sus posibilidades14)、他に当ブログ紹介作品では、カルロス・ベルムト『マジカル・ガール』14、フェロス賞2015助演男優賞)、キケ・マイジョのアクション・スリラーToro16)でのマフィアのボス役、ポル・ロドリゲスのブラック・コメディQuatretondeta16)では、妻に先だたれ認知症の兆候が出はじめた寡役、パウ・ドゥラのコメディFormentera Lady18)では、バレアレス諸島のフォルメンテラ島を舞台に、老いた元ヒッピーを演じた。

Quatretondeta」の作品紹介は、コチラ20160422

Formentera Lady」の作品紹介は、コチラ20180417

    

     

      (サクリスタンを配した「Formentera Lady」のポスター)

 

★『Alta mar アルタ・マール:公海の殺人』(22話出演、ネットフリックス配信)のようなTVシリーズを含めると150作を超えるから、いくら紹介してもこれで充分という気になれない。役者稼業は死ぬまで続けるというから終りがない。目下撮影中のフェルナンド・コロモの「Cuidado con lo que deseas」は、今年1119日公開が予告されている。

 

★上記の受賞以外に、バジャドリード映画祭2013栄誉賞、マラガ映画祭2014レトロスペクティブ賞、フェロス栄誉賞(2014)、ヒホン映画祭2015ナチョ・マルティネス賞、スペイン俳優組合2015栄誉賞、メリダ映画祭ケレス賞、アルゼンチンの銀のコンドル賞(19932011)、シネマ・ライターズ・サークル賞2020金のメダル、などなど。授賞式は69回サンセバスチャン映画祭2021917日~25)です。セクション・オフィシアル部門以下8部門のポスターは発表されましたが、ノミネーションは未だです。シガニー・ウィバーがポスターの顔になりました。


タマラ・カセリャスとフリア・デ・パスの「Ama」*マラガ映画祭2021 ㉔2021年07月07日 13:26

        タマラ・カセリャスが「Ama」主演で銀のビスナガ女優賞を受賞

 

      

 

フリア・デ・パス監督のデビュー作Amaは、主役のタマラ・カセリャス銀のビスナガ女優賞をもたらしました。本作は2019年にESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校、マラガ映画祭が注目している映画学校)の卒業制作として撮られた同名の短編がベースになっています。当時フリアは「あまり良い状態ではなかった」とマラガのEFEインタビューに応えている。監督はまだ25歳、母親に借金をして製作したようですが、マラガで母親に最大級のプレゼントを贈ることができました。ハリウッドや男性シネアストたちが、長年にわたって作り続けてきたスーパー家父長制の映画は害をもたらし続けている。監督は、あってはならない「母性神話」の打ち壊しに挑戦しました。何故なら「母性は一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。

    

       

(タマラ・カセリャス、子役レイレ・マリン・バラ、監督、マラガFF2021フォトコール)

 

     

 Ama2021

製作:La Dalia Films / Ama Movie AIE

監督:フリア・デ・パス・ソルバス

脚本:フリア・デ・パス・ソルバス、ヌリア・ドゥンホ・ロペス

撮影:サンドラ・ロカ

音楽:マルティン・ソロサバル

編集:オリオル・ミロン

美術:ラウラ・ロスタレ

衣装デザイン:クリスティナ・マルティン

メイクアップ:メルセデス・ルハン、タニア・ロドリゲス

プロダクション・マネージメント:リチャード・ファブレガ、マメン・トルトサ

音響:ヤゴ・コルデロ、ほか

視覚効果:ギレム・ラミサ・デ・ソト(短編)

製作者:(エグゼクティブ)シルビア・メレロ、ホセ・ルイス・ランカニョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、ドラマ、90分、撮影地バレンシアのアリカンテ、撮影期間20203月から6月、パンデミックで中断、2021年完成させた。配給&販売Filmax、スペイン公開2021716

映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭2021セクション・オフィシアル部門、銀のビスナガ女優賞受賞(タマラ・カセリャス)、AICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)が選ぶフェロス・プエルタ・オスクラ賞を受賞。

 

キャスト:タマラ・カセリャス(ぺパ)、レイレ・・マリン・バラ(娘レイラ)、エステファニア・デ・ロス・サントス(ロサリオ)、アナ・トゥルピン(アデ)、マヌエル・デ・ブラス(カルロス)、チェマ・デル・バルコ、パブロ・ゴメス=パンド(レイラの父ディエゴ)、マリア・グレゴリオ、バシレイオス・パパテオチャリス、カルメン・イベアス、エリン・ガジェゴ、シルビア・サンチェス、ほか

 

ストーリー:母性神話に縛られて孤独のなかにいる多くの女性たちの物語。さまざまな警告の末に、アデは友人のぺパを家から追い出してしまう。6歳になる娘のレイラと一緒に道路に佇んでいるぺパを目にしたのが最後だった。もう助けてくれる人は誰もいない、ぺパとレイラは生きるための場所を見つけるために闘わねばならない。困難に直面しながらも探求に取りかかる。それは遠い昔の今では存在しない関係との和解に耐えることでもあるだろう。母と娘の新たな絆を創りだすだろうが、それは間違いを許容するもので理想化とは異なるものだろう。あってはならない母性神話に挑戦する女性たちの物語。

 

       

            (路頭に迷うぺパと娘レイラ、映画から)

 

監督紹介フリア・デ・パス・ソルバスは、1995年バルセロナ生れの監督、脚本家。バルセロナのESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画演出を専攻する(201218)。2012年、短編「Atrapado」、助監督、キャスティング監督などをしながら、2017年に共同監督(11名)として撮った長編La filla dalgú19)は、マラガ映画祭2019モビスター+賞を全員で受賞した。2018ESCACの卒業制作である短編Ama1919分)は、アルカラ・デ・エナレス短編映画祭にノミネートされた。今回、初の単独監督として本作「Ama」で長編デビューした。テーマは不平等、特に女性が受けている社会的地位の格差、フィクションとドキュメンタリーの接続点を求めている。鼻ピアスに耳の後ろから剃り上げたライオン・ヘアー、エイミー・ワインハウス風のアイライン、このタフでぶっ飛んだ監督は、映画祭に旋風を巻き起こした。

 

    

    (「まだ私は25歳の青二才です」と応えるデ・パス監督、プレス会見)

 

★短編Ama」の登場人物で重なるのはぺパ、ディエゴ、レイラ(別の子役エンマ・エルナンデス・ぺレス)、アデ(ロランダ・パテルノイ)と多くない。監督とぺパ役のタマラ・カセリャスは長編デビューに4年の歳月を掛けたという。映画はこんな風に始まる。ディスコで踊り明かした若い女性が帰宅する、既に新しい一日が始まっており、テーブルでお絵描きをしていた小さな女の子が迎える、女性は動じる風もなくおはようと言う。娘の育児放棄に耐えきれない友人から家を追い出されてしまう。

 

     

               (短編「Ama」のポスター)

 

★監督は「これまでのぺパの人生を説明しない方針にした。町中を子連れで放浪するぺパを無責任な母親と呼ぶこともできます」。しかし監督は、ぺパを理解するためのモラルやアリバイを提供しない。またぺパを裁かないし、観客に許しを求めない。このような状況に至るまでの経済的社会的なリソースを提供しないシステムを描くだけです。母性は存在してはならない神話であってそれは一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。製作者のホセ・ルイス・ランカニョは、「芸術的品質、若くて才能あふれる制作チームの努力、何よりも映画が語る物語の力強さのため」と、製作意図に挙げている。

 

     

      (マラガ入りした監督、タマラ・カセリャス、レイレ・マリン・ベラ)

 

★ぺパを演じて、銀のビスナガ女優賞受賞タマラ・カセリャス(カセジャス)は、セビーリャ生れの35歳、舞台女優を目指し、セビーリャのViento Sur Teatroの演劇学校で学ぶ。その後18歳でバルセロナに移り、バルセロナの演劇学校Nancy Tuñonで学んでいる。2010年映画デビュー、2015年アルバル・アンドレス・エリアスの短編「4 días de octubre」(ESCAC Films)に出演、ハビエル・チャカルテギのコメディ「La estación」(18)、ホセチョ・デ・リナレスの「Desaparecer」(18ESCAC Films)で長編デビュー。他に上記の短編&長編の「Ama」、デ・パス監督との接点はESCACのようです。

 

      

        (銀のビスナガを手に喜びを全開するタマラ・カセリャス)

 

★ウェイトレスの仕事を終えて映画祭に馳せつけたタマラは、「私はぺパのように感じたことはないとはいえ、もし彼女が傷ついていると信じれば、すべての家族に言えることですが、まさかそんなことだったとは気づかなかったと言うのです」と語っている。事件後に親戚やご近所さんがメディアに語る定番ですね。またタマラは映画が絶えず深層に潜めているライトモチーフ、放棄または怠慢について「それぞれモードは異なりますが、それは私たち二人が感じている何かです」と。この映画には私にとって父や母が何であるかの分析があり、映画を見れば感動すると語っている。

    

     

           (自分とは違うぺパを演じたタマラ、映画から)

 

★ぺパが遊びまわっているあいだ、娘レイラの世話を押しつけられている友人アデ(アナ・トゥルピン)は、二人が彼ら自身の人生を見つけるために敢えて路頭に送り出す。レイラを演じたレイレ・マリン・ベラは自然体で、本当に難しいシーンをカバーしてくれたと監督は少女を絶賛している。タマラと同郷の先輩ロサリオ役のエステファニア・デ・ロス・サントスは幼女の祖母役、セクション・オフィシアル部門のアウトコンペティションで上映された、ビセンテ・ビジャヌエバのコメディ「Sevillanas de Brrooklyn」で活躍しています。短編「Ama」にもディエゴ役で出演していたパブロ・ゴメス=パンドは、幼女の父親役です。

 

        

  (意見の異なる友人アデとぺパ)

 

      

         (撮影中のレイラ、ぺパ、ロサリオ、20203月)

 

   

                    (新たな絆を模索するレイラとぺパ)

 

★マラガFF ESCAC出身のシネアストを重視している。2017年のカルラ・シモン(『悲しみに、こんにちは』)、2018年のエレナ・トラぺ(「Las distancias」)が金のビスナガを受賞している。2020年のピラール・パロメロ(「Las niñas」)はサラゴサ出身で卒業生ではないが、ゴヤ賞2020新人監督賞のベレン・フネス(「La hija de un ladorón」)もESCACで学んでいる。4作とも作品紹介をしていますが、今のスペインはマドリードよりバルセロナが熱い。マラガFFESCACが女性監督の採石場と称される所以です。1994年バルセロナ自治大学の付属校としてバルセロナで設立、2003年に本部をバルセロナ州テラサ(タラサ)に移した。活躍中の卒業生は、J.A. バヨナマル・コルキケ・マイジョオスカル・ファウラハビエル・ルイス・カルデラなど数えきれない。生徒に非常に厳しい要求をする学校として有名ですが、それなりの成果をあげているということでしょう。

 

★マラガ映画祭はとっくの昔に終幕しましたが、ゴヤ賞2022の新人監督賞、主演女優賞のノミネートを視野に入れて紹介いたしました。デ・パス監督の次回作は、児童虐待をテーマにした短編、目下準備中ということです。

クラウディア・ピントの「Las consecuencias」*マラガ映画祭2021 ㉓2021年07月01日 20:31

      クラウディア・ピント、第2作「Las consecuencias」で批評家審査員特別賞

   

       

 

クラウディア・ピントはベネズエラ出身ですが、本作Las consecuenciasはスペイン=オランダ=ベルギー合作の映画です。ご存知の通り故国ベネズエラは政情不安が続いて映画製作どころではありません。主演女優のフアナ・アコスタはコロンビアのカリ生れ、共演者アルフレッド・カストロはチリ出身、今回助演女優賞を受賞したマリア・ロマニジョスカルメ・エリアスソニア・アルマルチャはスペイン、エクトル・アルテリオはアルゼンチン、とキャスト陣も国際的です。音楽監督、撮影監督、編集はデビュー作と同じ布陣、監督と共同で脚本を執筆したビンセント・バリエレ以下、音響、美術などスタッフは概ねベネズエラ・サイドが担当しています。

 

         

       (本作をプレゼンするクラウディア・ピント、525日マドリード)

 

 

Las consecuencias2021

製作:Sin Rodeos Films / Las Consecuencias AIE / N279 Entertaiment(オランダ)/

        Potemkino(ベルギー)/ Erase Una Vez Films(スペイン)

     協賛:TVE / TV3 / A Punto Media / バレンシア州TV

監督:クラウディア・ピント・エンペラドール

脚本:クラウディア・ピント・エンペラドール、エドゥアルド・サンチェス・ルへレス

撮影:ガボ(ガブリエル)・ゲーラ

音楽:ビンセント・バリエレ

編集:エレナ・ルイス

美術:フロリス・ウィレム・ボス

音響:ダーク・ボンベイ

キャスティング:アナ・サインス=トロパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ

衣装デザイン:マノン・ブロム

メイクアップ&ヘアー:アランチャ・フェルナンデス(ヘアー)、サライ・ロドリゲス(メイク)

製作者:ジョルディ・リョルカ・リナレス(エグゼクティブ/プロデューサー)、

        エルス・ヴァンデヴォルスト(オランダ)、クラウディア・ピント・エンペラドール、

        アンヘレス・エルナンデス、ヤデラ・アバロス他

 

データ:製作国スペイン=オランダ=ベルギー、スペイン語、2021年、サイコ・スリラー、96分、撮影地カナリア諸島のラ・ゴメラ、ラ・パルマ、バレンシア州のアリカンテ、ベニドルム、撮影期間2019518日~627日、スペイン公開2021917日。販売Film Factory


映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭セクション・オフィシアル部門プレミアム(611日)、銀のビスナガ批評家審査員特別賞、同助演女優賞(マリア・ロマニジョス)受賞

 

キャスト:フアナ・アコスタ(ファビオラ)、アルフレッド・カストロ(父)、カルメ・エリアス(母)、マリア・ロマニジョス(娘ガビ)、エクトル・アルテリオ、ソニア・アルマルチャ、クリスティアン・チェカ、エンリケ・ヒメノ・ペドロス、他

 

ストーリー:最近夫をダイビング中の事故で亡くしたファビオラは、思春期の娘ガビと一緒に人生をやり直そうと家族の住むカナリア諸島に浮かぶ小さな火山島へ、長らく疎遠だった父親と連れ立って旅に出る。家族は再会するが、ファビオラは家族になにか秘密があるように感じる。確かな証拠があるわけではないが、彼女の直感はすべてが見た目通りでないといっている。しかし彼女は見つかるかもしれないものへの怖れと、その答えを知る必要があるのかどうかで引き裂かれている。他人の私事に何処まで踏み込めるでしょうか。愛する人を守るための嘘は何処までなら許されるのでしょうか。母性への恐れから生まれたエモーショナルなサイコ・スリラー。怖れ、愛、嫉妬、そして火山島の風景も重要なテーマの一つ。

 

         

              (小さな火山島を目指すファビオラと父親、映画から)

   

  

      文化の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにする

     

監督紹介クラウディア・ピント・エンペラドール1977年カラカス生れ、監督、脚本家、製作者。1998年、カラカスのアンドレス・ベジョ・カトリック大学で視聴覚社会情報学を専攻、卒業する。現在はスペインのバレンシアに移って映画製作をしている。短編「Una voz tímida en un concierto hueco」(01)、「El silencio de los sapos」(06)、「Todo recto」(07)、長編デビュー作La distancia más larga13、ベネズエラ=スペイン合作)など。

   

La distancia más largaについては、モントリオール映画祭2013で優れたラテンアメリカ映画に贈られるグラウベル・ローシャ賞受賞を皮切りに国際映画祭で17賞している。映画賞はイベロアメリカ・プラチナ賞2015オペラ・プリマ賞、ゴヤ賞2015イベロアメリカ映画賞部門ノミネート。映画祭受賞歴はモントリオールのほか、ウエルバ・ラテンアメリカ2013観客賞、パナマ2015観客賞、クリーブランド女性監督賞、ヘルシンキ・ラテンアメリカ観客賞、トリエステ・イベロアメリカ批評家特別賞などを受賞。ハバナ、トゥールーズ・ラテンアメリカ、ヒホン、各映画祭にノミネートされた。

La distancia más larga」紹介は、コチラ2013090520150207

   

               

                  (数々の受賞歴を配したデビュー作のポスター)

 

2作目が本作「Las consecuensias」である。サンセバスチャン映画祭の合作フォーラムに参加、ユーリマージュ賞Eurimages(欧州評議会文化支援基金、1989年設立)を受賞した。「このフォーラムに参加して、オランダやベルギーのシネアストと交流したことは、私にとって非常に興味深いものでした。文化と見解の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにします。それは私の望んだことでもあったのです」と語っている。2006年からTVシリーズの監督と映画製作を両立させている。

 

 

    8年ぶりの長編2作目――「彼らは愛する方法を知りません」と監督

 

8年ぶりの新作というのも驚きですが、ピント監督によると「製作には多額の資金が必要ですから、それが私にとって本当に重要な何かをもっているかどうか自問します。新作は母性への怖れから生まれました。というのも丁度妊娠していて完成できるか分かりませんでした。間違ったことをして娘を危険に晒してしまう母親はどうなるのだろう。娘がドアを閉めて沈黙してしまうとしたら最悪です。物語は娘が危険に晒されていると想像している母親と娘の闘いを描きますが、母親に確信はなく、それは不確実な怖れから生まれてきます」とRTVEスペイン国営放送で語っています。

 

     

  (撮影中のフアナ・アコスタ、マリア・ロマニジョス、監督、アルフレッド・カストロ)

 

★家族の秘密が語られますが、「私たちは敷物の下に隠しているものについては表立って話しません。多くの場合、他人を守るためには沈黙は金なのです。こうして秘密は正当化されます。まだ傷は癒えていません。正しいことをしたいと思っていますが、その方法が分かりません、彼らは愛する方法を知らないのです」と監督。キャスティングについて「フアナ(・アコスタ)はとても勇気のある女優と言わざるを得ません。彼女のことはよく知りませんでしたが、素晴らしい女優、とてもラッキーでした。彼女はこの島の人だと直ぐに私に気づかせたのです。外観だけでなく印象的なオーラを放っていました。私は『あなたと一緒にやりたい、二人なら何でもできる』と言いました」とアコスタの第一印象を語っています。

 

キャスト紹介:主役ファビオラ役のフアナ・アコスタは、1976年コロンビアのカリ生れ、監督と同世代の女優、昨年のマラガ映画祭にベルナベ・リコEl inconvenienteで現地入り、主役のキティ・マンベールが女優賞を受賞している。デビューはコロンビアのTVシリーズでしたが、2000年ごろからスペインに軸足をおいている。シリアス・ドラマ(Tiempo sin aireAnna)からコメディ(Jefe)まで演技の幅は広い。既にキャリア&フィルモグラフィーを紹介をしています。受賞歴はアレックス・デ・ラ・イグレシアの「Perfectos desconocidos」でフォトグラマス・デ・プラタ2018女優賞、ジャック・トゥールモンド・ビダルの「Anna」の主演でコロンビアのマコンド賞2016、ウエルバ映画祭2019ウエルバ市賞などを受賞している。まだゴヤ賞はノミネートもない。

 

★2003年、彼女の一目惚れで始まったエルネスト・アルテリオとの間に一人娘がいますが、2018年にパートナーを解消、正式には結婚していなかった。新恋人はパリ在住のフランスの実業家チャールズ・アラゼット、幼児を含む4人の子供がいる。本作出演のエクトル・アルテリオは実父です。

フアナ・アコスタのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20180711

 

       

                        (ファビオラと父親、映画から)

   


   (オシドリ夫婦といわれていた頃のフアナとエルネスト・アルテリオ、20172月)

 

★父親役のアルフレッド・カストロは、1955年チリのサンティアゴ生れ、俳優、舞台演出家。1982TVシリーズでスタート、既に50本以上に出演しているチリを代表する俳優。人間の暗部を掘り起こす登場人物を演じつづけ、チリ国内だけでなくラテンアメリカ各国で活躍している。今年のマラガでは、フアン・パブロ・フェリックスKarnawal(アルゼンチン)もセクション・オフィシアル部門にノミネートされ、予想通り銀のビスナガ助演男優賞を受賞している。

 

        

        (銀のビスナガ男優賞受賞のプレス会見、613日)

 

パブロ・ラライン映画(『トニー・マネロ』『ザ・クラブ』『No)出演が有名だが、ラテンアメリカに初の金獅子賞をもたらしたベネズエラのロレンソ・ビガスとタッグを組んだ『彼方から』15)に主演している。『ザ・クラブ』でイベロアメリカ・フェニックス2015主演男優賞、マルセラ・サイドのLos perros17)でイベロアメリカ・プラチナ2018男優賞など受賞歴多数。俳優に贈られるマラガ―スール賞がラテンアメリカから選ばれるとしたら、カストロを一番にあげておきたい。

2018年のギレルモ・デル・トロ、今年のアメナバルの監督受賞は異例です)

   

Karnawal」の紹介記事は、コチラ20210613

『ザ・クラブ』『No』の紹介記事は、コチラ20150222同年1018

『彼方から』の紹介記事は、コチラ20160930

Los perros」の紹介記事は、コチラ20170501

 

  

(カナリア諸島のラ・ゴメラの浜辺に佇むアルフレッド・カストロ)

 

       

     (父と娘、アコスタとカストロ、中央はロマニジョス、映画から)

 

★母親役のカルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を目指し、ニューヨークのリー・ストラスバーグ演劇学校でメソッド演技法を学んでいる本格派。ハビエル・フェセルの『カミーノ』のオプス・デイの敬虔だが頑迷な信者を演じきって、ゴヤ賞2009主演女優賞、ほかサンジョルディ賞、トゥリア賞、スペイン俳優組合の各女優賞を受賞している。今年のガウディ栄誉賞を受賞している。クラウディア・ピントのデビュー作「La distancia más larga」で死出の旅に出る主役マルティナを好演し、第2作にも起用された。カルロス・ベルムトの『シークレット・ヴォイス』(18)では歌えなくなった歌手の冷静なマネージャー役だった。

ガウディ栄誉賞でキャリア&フィルモグラフィーを紹介、コチラ20210329

 

    

        (ファビオラの母、ファビオラ、ファビオラの娘、映画から)

    

   

       (ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを手に喜びのカルメ・エリアス)

 

★ファビオラの娘ガビを演じたマリア・ロマニジョスは、2004年マドリード生れ、Teatro Cuerta ParedCine Primera Toma の学校で演技を学んでいる。2019年本作起用がアナウンスされ映画デビューした。先述したようにデビュー作で銀のビスナガ助演女優賞を受賞している。モビスター+のTVシリーズ、フェルナンド・ゴンサレス・モリナParaíso7話)にも抜擢され、続いてフェリックス・ビスカレットのスリラーDesde la sombraでは、パコ・レオンやレオノル・ワトリングと共演している。まだ17歳、小柄で、172センチという長身のアコスタと並ぶと幼さが残る。目下のところ上昇気流に乗っているようだが、願わくば今回の受賞が吉となりますように。

 

         

                (銀のビスナガ助演女優賞のトロフィーを手にしたマリア)

 

    

 (クロージングに出席したアコスタとロマニジョス、612日)

 

スタッフ紹介:オランダのエルス・ヴァンデヴォルストは、『アイダよ、何処へ?』でオスカー賞2021国際長編映画賞にノミネートされた製作者。他『ジグザグキッドの不思議な旅』(12)、『素敵なサプライズ』(15)、『ドミノ 復讐の咆哮』(19)などが公開されている。カタルーニャのジョルディ・リョルカ・リナレスは『少年は残酷な弓を射る』の製作者、ヤディラ・アバロスはメキシコ出身だがスペインでTVシリーズ『エリーテ』や、エドゥアルド・カサノバの『スキン あなたに触らせて』などを手掛けている。

 

★撮影監督のガボ・ゲーラは、彼女の映画では「風景が重要な意味をもっています。前作のジャングルの撮影も過酷でしたが、今回は危険に晒されることが度々だった」と語っている。ラパルマ島で最も壮観な場所で撮影したが、困難が付きまとった。アコスタは「入り江のなかでも最も遠いところを選び、そこに到達するにはかなりのオデュッセイアでした」と。潮の流れに翻弄され、数時間中断することもあり、毎日が冒険だったようです。監督も「本当に美しい風景を手に入れましたが、それなりの代償を払いました。しかし払っただけのことはありました。物語の厳しさと風景の美しさのコントラストの映画でもあるからです」と。

 

          

                         (本作撮影中のピント監督)

 

        

    (撮影地のカナリア諸島ラ・ゴメラ島、フォト:サウル・サントス)

 

写真提供のサウル・サントスは、1979年ラパルマ島フエンカリエンテ生れ、世界最高を誇る『ナショナルジオグラフィック』誌の表紙を飾る写真家として、国際的に有名です。


ロジェール・カザマジョールに男優賞*マラガ映画祭2021 ㉒2021年06月24日 15:38

       男優賞受賞者ロジェール・カザマジョールはビリャロンガ映画でデビュー

 

       

 

★銀のビスナガ男優賞受賞のロジェール・カザマジョールは、バルセロナ派の監督作品出演が多く、今までなかなか賞に恵まれませんでした。スペインの映画賞はゴヤ賞を含めてマドリード派に偏っており、ガウディ賞の存在意義があるわけです。両市は犬猿の仲、バルセロナ独立運動以来、溝は深まるばかりです。今回アンダルシアの映画祭でカタルーニャ語映画に金のビスナガが受賞した意味は深い。受賞作アグスティ・ビリャロンガEl ventre del marEl vientre del mar)」では、特に監督もキャスト紹介もしませんでした。主演の一人カザマジョールが男優賞を受賞したので改めて紹介することにしました。彼はスペイン内戦後のカタルーニャの村の暗部を描いた『ブラック・ブレッド』10で主役アンドレウ少年の父親ファリオルを好演、ガウディ賞2011助演男優賞を受賞しています。TVシリーズ、短編を含めるとIMDbには57作とあり、カタルーニャ映画では認知度のある演技派の一人です。特にビリャロンガの信頼が篤く、キャリア&フィルモグラフィーで一目瞭然できます。

 

     

   (共演者オスカル・カポジャ、監督、カザマジョール、マラガFF 2021フォトコール

 

            キャリア&フィルモグラフィー

 

ロジェール・カザマジョールRoger Casamajor Esteban1976年リェイダ/レリダ県セオ・デ・ウルヘル(カタルーニャ州)生れ、俳優(舞台・映画・TV)。カタルーニャ語とスペイン語のバイリンガルだが、母語はカタルーニャ語。表記がルジェ・カザマジョール(「El mar」)、ロジャー・カサメジャー(「Pans Labyrinth」)、ロジェール・カサマジョール(「Pa negre」「Todo lo saben」)、ロジェ・カサマジョール(TVH/アチェ』)など定まっていないが、一応カタルーニャ語読みにしておきます。Somhiteatre 劇団の俳優としてアンドラ公国でキャリアをスタートさせており、カタルーニャ中を巡業している。リェイダ県はアンドラ公国と国境を接しており、カタルーニャ語が公用語の一つである。その後演技修業のためバルセロナに移り、演劇学校や1913年設立の演劇学院Instituto del Teatroで演技を学んでいる。

 

      

      (銀のビスナガ男優賞のトロフィーを手に満面の笑みのカザマジョール)

 

★アグスティ・ビリャロンガのEl mar/The Seaで映画デビュー、スペイン内戦下のマジョルカ島で子供時代を過ごした二人の少年が、10年後に結核のサナトリウムで再会して始まるドラマ。ベルリン映画祭2000に出品され、ビリャロンガが第1回目のマンフレート・ザルツゲーバー賞を受賞している。横道に剃れるが、この賞はベルリン映画祭のフォーラム、パノラマ部門の設立者でLGBTをテーマにした映画に授与されるテディ賞の生みの親、マンフレート・ザルツゲーバーの功績に敬意を表して2000年に創設された賞。既存の価値観にとらわれない作品に贈られる賞。彼は俳優で監督でもあり、20世紀ドイツのLGBT活動の推進者、擁護者であった。本作は東京国際レズビアン&ゲイ映画祭2001『エル・マール~海と殉教』の邦題で上映されたが、その後『海へ還る日』と改題された。

 

以下に主な出演作を列挙しておきます。短編、TVシリーズは割愛。

2000El mar/The Sea」(『エル・マール~海と殉教』)アグスティ・ビリャロンガ監督、

   カタルーニャ語、ベルリン映画祭2000出品、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭2001上映

2001Salvajesカルロス・モリネロ監督

2002Lilla de lholandesSigfrid Monlron監督、カタルーニャ語、

   ムルシア・スペイン映画週間出品、フランシスコ・ラバル賞受賞

2002Guerrerosダニエル・カルパルソロ監督

2002Estrella del surルイス・ニエト監督

2004Nubes de veranoフェリペ・ベガ監督

2006Pans Labyrinth」(『パンズ・ラビリンス』ギレルモ・デル・トロ監督、

   カンヌ映画祭出品、公開2007

2010Henri 4ヨ・バイヤーJo Baier監督

2010Pa negre/Pan negro/Black Bread」(『ブラック・ブレッド』

   アグスティ・ビリャロンガ監督、サンセバスチャン映画祭出品、

   ガウディ賞2011助演男優賞受賞、公開2012

2016El elegido」(『ジャック・モルナール、トロツキー暗殺』

   アントニオ・チャバリアス監督、 Netflix配信

2017Incerta gloria」アグスティ・ビリャロンガ監督、

2018Todo lo saben」(『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハディ監督、

   公開2019

2020La vanpira de Barcelonaリュイス・ダネス監督、カタルーニャ語、

   シッチェス映画祭出品

2021El ventre del marEl vientre del mar)」アグスティ・ビリャロンガ監督、

   カタルーニャ語、マラガ映画祭出品、銀のビスナガ男優賞受賞

2021Tros」(ポスト・プロダクション)

 

割愛したTVシリーズ「H/アチェ」(2019、シーズン15話にブルーノ役で出演)がNetflixで配信されている。その他、カタルーニャTVシリーズに多数出演している。脇役が多いので見過ごしされがちだが、比較的字幕入りで鑑賞できる作品も多いほうかもしれない。

   

『誰もがそれを知っている』の作品紹介は、コチラ2018050820190623

La vanpira de Barcelona」の記事は、コチラ20210324

El ventre del marEl vientre del mar)」の紹介は、コチラ20210509

 


       

(共演したブルノ・ベルゴンジニとカザマジョール、『エル・マール~海と殉教』より

   


マクシミリアン・ド・ベテュヌに扮した「Henri 4」より

  

     

(マリベル・ベルドゥの弟ペドロに扮したカザマジョール、『パンズ・ラビリンス』より)

   

        

          (カザマジョールとフランセスク・コロメル『ブラック・ブレッド』より)

 

  

 (ガウディ賞2021作品賞受賞の「La vanpira de Barcelona」から

   

   

(水夫役オスカル・カポジャと医師役カザマジョール、「El ventre del mar」より

 

スタンダップコメディ 『ダニ・ロビラの嫌悪感』*ネットフリックス配信2021年05月24日 17:44

            生れ故郷マラガで「Odio, Dani Rovira」と題してライブ

 

        

     

ダニ・ロビラHodgkin(ホジキンリンパ腫)という癌の診断を受けたのは、2020318日、スペイン政府が新型コロナウイリス蔓延のためロックダウンを宣言した4日後だったという。1週間後SNSで告知すると、友人知人はいうに及ばず見知らぬ人々からの励ましを受けて勇気づけられたという。Ocho apellidos vascos共演で意気投合、以来パートナーだったクララ・ラゴとの関係は、前年に終わっていた。リピーターを含めると約1000万人が映画館に足を運んだという、スペイン映画史上最高の収益をだした大ヒット作、二人で設立した慈善財団「Fundación Ochotumbao」の活動は続行している。それとこれは別ということです。クララの新恋人は歌手で俳優のホセ・ルセナということです。

 

 『ダニ・ロビラの嫌悪感』(原題Odio de Dani Rovira

★製作はNetflix、スタンダップコメディ、82分、ライブは20201114日、マラガのソーホー・カイシャバンク劇場 Teatro del Soho CaixaBank、今年のゴヤ賞2021のガラもこの劇場で開催された。2021212日から Netflix で配信が開始されている。

 

       

          (ソーホー・カイシャバンク劇場のライブ予告から)

 

★「パンデミックだけでなくがんと闘っている人々へのオマージュ」として企画された。称賛と批判あるいは嫌悪感は背中合わせであるのだが、かなりきわどい発言もあった。202011月といえばまだ新型コロナウイルスの真っただ中のはずですが、マスクこそしていましたが会場はほぼ満席に近かったように思え、コロナ禍対応の違いを感じさせた。ロビラが罹患したホジキンリンパ腫という癌は日本では多くないそうですが、治癒が難しいということです。多分本人的には九死に一生を得たということでしょう。40歳で迎えた第二の人生は幕が揚がったばかり、心身のバランスをとって、今後も私たちに笑いを届けてください。

 

ダニ・ロビラ198011月マラガ生れ、俳優、スタンダップコメディアン、TV司会者、慈善活動家。完全菜食主義者である。18歳で大学進学のためグラナダに移り、グラナダ大学では体育スポーツ科学を専攻した。26歳のとき本格的に俳優の道を目指してマドリードに移住、2004年テレビ界でスタートする。長編映画デビューは、2014年のエミリオ・マルティネス=ラサロのコメディOcho apellidos vascosの主役に起用され、一躍スターダムにのし上がった。ゴヤ賞2015の総合司会に抜擢され、自身も新人男優賞を受賞した。第2作は、台本を渡されたのはこちらのほうが先だったというマリア・リポルAhora o nunca15、邦題『やるなら今しかない!』)。ゴヤ賞ガラは3年連続で総合司会を務めたが、称賛と批判半々に疲労困憊、4回目は引き受けなかった。

 

        

        (ゴヤ賞2015新人男優賞のトロフィーを手にしたダニ・ロビラ)

    

以下に主な活躍を列挙すると(ゴチック体は当ブログ紹介作品)、

2015『オチョ・アペリードス・カタラネス』(「オチョ・アペリードス・バスコス」の続編)

2016100メートル』マルセル・バレナ監督

2017『ティ・マイ~希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ監督

2018『スーパーロペス』ハビエル・ルイス・カルデラ監督

2018Miamor perdidaエミリオ・マルティネス=ラサロ監督

2019Taxi a Gibraltar」アレホ・フラ監督、マラガ映画祭2019のオープニング作品

2019Los Japón」アルバロ・ディアス・ロレンソ監督、マラガFF2019クロージング作品

2021『ジャングルクルーズ』ジャウム・コレット=セラ監督(ディズニー映画)

 

★邦題はネットフリックスで配信されたときのもの、『ジャングルクルーズ』の撮影は2018年と癌罹患前であるが、もともとの公開日(20207月)が、米国の新型コロナウイルス蔓延のため1年後に延期されていた。日米同時公開は20217月の予定。本作にはダニ・ロビラのほか、エドガー・ラミレス、キム・グティエレスなどがクレジットされている。キャリア詳細については、以下の作品で紹介しています。

  

Ocho apellidos vascos」の主な作品紹介は、コチラ20140327

『やるなら今しかない!』の作品紹介は、コチラ20150714

『オチョ・アペリードス・カタラネス』の作品紹介は、コチラ20151209

Miamor perdida」の作品紹介は、コチラ20181214

 

リカルド・フランコ賞にフリア・フアニス*マラガ映画祭2021 ④2021年05月07日 17:29

           フィルム編集者フリア・フアニスがリカルド・フランコ賞を受賞

    

     

                 (フリア・フアニス)

 

★去る54日、リカルド・フランコ賞にフィルム編集者フリア・フアニスの発表がありました。昨年の衣装デザイナーのタチアナ・エルナンデスに続いて女性シネアストが選ばれました。リカルド・フランコ賞の正式名はマラガ・フェスティバル・リカルド・フランコ賞といい、スペイン映画アカデミーとのコラボレーションです。カメラの背後で活躍するシネアストに贈られる賞です。2019年はグティエレス・ロドリゲス映画の脚本家として有名なラファエル・コボスが受賞しています。

リカルド・フランコ賞の紹介記事は、コチラ20200905

 

★フリア・フアニスJulia Juanizは、1956年ナバラ州アレリャーノ生れ、フィルム編集者、写真家、監督として短編を撮っている。アラゴン州のサラゴサ大学で医学を、同市のスペクトラム・ギャラリーの写真コースを学んでいる。1986年以来プロフェッショナルに映画に携わっている。1991年にビルバオのシネビ映画祭で短編Train Timeバスク映画グランプリを受賞するなどした。1990年からフィルム編集者として国内外の監督のもとでキャリアを積み始める。例えば、バシリオ・マルティン・パティノ、カルロス・サウラ、ビクトル・エリセ、ラファエル・ゴルドン、アルベルト・モライス、ラモン・バレア、ダニエル・カルパルソロ、パウラ・コンス、ボビー・モレスコ、ブライアン・グッドマン、マーク・スティーヴン・ジョンソンなど、ドキュメンタリーや短編を含めると60作以上になる。若いバスクの監督では、アルベルト・ゴリティベレア、ハビ・エロルテギ、ペドロ・アギレラ、アランツァ・イバラなどが挙げられる。

 

★特にアラゴン出身のカルロス・サウラとは『タクシー』(96)以来、多くの作品を単独で任されており信頼は厚い。監督と編集者は共にサンセバスチャン映画祭との関りが多く、『タクシー』(コンペティション)、『ブニュエル~ソロモン王の秘宝』(2001オープニング作品)、『ファド』(2007サバルテギ)などがある。サウラ映画では『ゴヤ』(99)と『イベリア 魂のフラメンコ』(05)の2作で、それぞれゴヤ賞の編集賞に2回ノミネートされている。2017年にはサンセバスチャン映画祭の特別栄誉賞の一つシネミラ賞を受賞している。

   

       

        (ゴヤ賞2000編集賞にノミネートされた『ゴヤ』のポスター)

 

★フィルム編集のほか、写真家、ビデオアーティストとしてのキャリアも築いており、セル画やコラージュ、ビデオ作品は、パンプローナ、セゴビアなど国内のアートセンターや美術館で展示され、韓国、メキシコ、ロシア、エチオピアのような海外での展示会にも選ばれている。現在は大学や映画学校で編集と脚本分析を教えている。スペイン映画アカデミーのほか、米国映画アカデミー、欧州映画アカデミーのメンバーである。以下に映画賞と短編を除く主なフィルモグラフィーを列挙しておきます。

  

 受賞&ノミネート歴

1991Train Time」(短編)ビルバオ・シネビ映画祭でバスク映画グランプリを受賞

1999Tango」(98、『タンゴ』カルロス・サウラ)アルゼンチンの銀のコンドル賞にノミネート

2000Goya en Burdeos」(99、『ゴヤ』カルロス・サウラ)ゴヤ賞編集賞ノミネート

2006El cielo gira」(04、ドキュメンタリー、共同編集、メルセデス・アルバレス監督)

   シネマ・ライターズ・サークル編集賞4名で受賞

2006Iberia」(05、『イベリア 魂のフラメンコ』カルロス・サウラ)ゴヤ賞編集賞ノミネート

2017 サンセバスチャン映画祭特別栄誉賞シネミラ賞を受賞

2021La isla de las mentiras」(20、パウラ・コンス)メストレ・マテオ賞ノミネート

2021 マラガ映画祭にてリカルド・フランコ賞を受賞

  

        

    (シネミラ受賞スピーチをするフリア・フアニス、サンセバスチャンFF2017)

 

 

 主なフィルモグラフィー

1996Taxi」(邦題『タクシー』)カルロス・サウラ

1997Pajarico」(スペイン映画祭1998仮題『パハリーコ~小鳥~』)カルロス・サウラ

1998Tango」(邦題『タンゴ』)カルロス・サウラ

1998Pecata minuta」ラモン・バレア

1999Goya en Burdeos」(『ゴヤ』)カルロス・サウラ

2000Asfalto」ダニエル・カルパルソロ

2001Buñuel y la mesa del rey Salomón」(ブニュエル~ソロモン王の秘宝』)

     カルロス・サウラ

2002Salomé」(『サロメ』)カルロス・サウラ

2002Guerreros」ダニエル・カルパルソロル

2002Alumbramiento」(英題「Lifeline」『ライフライン』)ビクトル・エリセ

10ミニッツ・オーダー人生のメビウス」の1

2004El coche de pedales」ラモン・バレア

2004El séptimo día」カルロス・サウラ

2004El cielo gira」(ドキュメンタリー)メルセデス・アルバレス

2005Iberia」(『イベリア 魂のフラメンコ』)カルロス・サウラ

2007Miguel William」イネス・パリス

2007Fados」(ドキュメンタリー『ファド』)カルロス・サウラ

2009IO, Don Giovanni」(『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツアルトの出会い』)同上

2010Naufragio」ペドロ・アギレラ

2015Todo mujer」ラファエル・ゴルドン

2016La madre」アルベルト・モライス

2017Black Butterfly」(『ブラック・バタフライ』西米伊、英語)ブライアン・グッドマン

2018Bent」(米西、英語、共同編集)ボビー・モレスコ

2019Finding Steve Macqueen」(米、英語、共同編集)マーク・スティーヴン・ジョンソン

2019Trading Paint」(『ワイルド・レース』西米、英語、共同編集)Karzan Kader

2020La isla de las mentiras」パウラ・コンス

2020Retrato de mujer blanca con pelo cano y arrugas」イバン・フロレス・ルイス

2020Cartas mojadas」(ドキュメンタリー、共同編集)パウラ・パラシオス

2021Las cartas perdidas」(進行中)アンパロ・クリメント

  

La isla de las mentiras」の紹介記事は、コチラ20200916

Las cartas perdidas」の紹介記事は、コチラ20210411

  

マリサ・パレデス、ナント映画祭2021栄誉賞を受賞2021年04月11日 22:18

              「決して無駄に生きてはこなかった」とマリサ・パレデス

 

       

      (マドリードのカフェ・ヒホンで語るパレデス、2021330日)

 

マリサ・パレデス(マドリード1946)がフランスのナント映画祭2021栄誉賞を受賞しました。受賞者の経歴については、ゴヤ賞2018栄誉賞を受賞した折りにフィルモグラフィーを紹介しておりますが、フランコ時代にデビュー、多くの先輩の薫陶を受けて舞台、映画、TV、ラジオと生きぬいてきた女優について、栄誉賞受賞を機に最近の出演映画や、今年公開が予定されているアンパロ・クリメントのドキュメンタリー・ドラマLas cartas perdidasなどをご紹介したい。本作はスペイン内戦を背景にした、オール女性出演のドクドラです。

 

★ゴヤ栄誉賞受賞後としては、バルバラ・レニーとの女優対決として話題を呼んだハイメ・ロサーレス『ペトラは静かに対峙する』18)をご紹介しております。75歳のバースデーを祝ったばかりですが、歩みを止めない、時間を無駄にしない女優です。詳細をまだ明かすわけにはいかないという三つの企画が、プラハ、イタリア、スペインで進行中だそうです。

ゴヤ賞2018栄誉賞受賞の記事は、コチラ20180118

『ペトラは静かに対峙する』の紹介記事は、コチラ20180808

    

   

(『ペトラ』のテーマ、エゴについて語り合うマリサ・パレデスとバルバラ・レニー、

 2018年10月、エル・パイスの編集室にて)

 

75歳の誕生日を数日後に控えた330日、エル・パイス紙のインタビューで、ウィキペディアでも触れられていない、デビューの経緯、両親、特に賢明な助言者であった母親、祖母、最初の結婚相手アントニオ・イサシ=イサメンディ、一人娘マリア・イサシ、パレデスの教師であった今は亡き先輩フェルナンド・フェルナン=ゴメスやマヌエル・アレクサンドレなどのシネアスト、スペイン映画アカデミーの会長時代のゴヤ賞ガラなどについて、マドリードのカフェ・ヒホンで語りました。

 

     

  (一人娘の女優マリア・イサシからゴヤの胸像を受け取る、ゴヤ賞2018ガラにて)

 

★少女のときから舞台女優になるのが夢だったマリサ(マリシータ)によると、初舞台は14歳のときの「El padrino」で、「トゥリノ小父さんが殺されちゃった」と言いながらデビューした。これを見ていたビクトル・バドレイ(監督、脚本家)から、コメディ劇場でリハーサルをしているコンチータ・モンテスに会いに行くように言われたという。前向きな母親はともかく、父親は怒って反対したという。しかしマリシータの決心をもはや誰も覆すことはできなかった。まさに人生はドラマです。

 

★カフェ・ヒホンのテーブルをそっと撫でながら壁を見上げ、「ここの椅子に座っていたんです、フェルナンド・フェルナン=ゴメス、マヌエル・アレクサンドレ、ホセ・ガルシア・ニエト、ペペ・ディアス・・・私は15歳で、彼らが政治やアートについて、文学について議論を闘わせているのを聞いて学んだのです。自分がしなければならないこと、してはいけないことを学びました。先人の教えを忘れてはいけないのです」と。母親からは「共和政時代には認められていた女性参政権や市民婚は、フランコ体制下では取り消された」と聞かされていました。今の自分があるのも母親の支えがあったからで、彼女は言わば<共犯者>だったと。母と祖母は私に「怯えるな」と教えてくれた。祖母ガブリエラ・クリアドは、農民で11人の子供を育てた肝っ玉母さんだったらしく、うち3人が今でも健在、最年長の叔父は99歳ということです。

 

★コンチータ・モンテスに会いに行くとき、母親は「いいかい、マリシータ、自分が信じる道を行きなさい」と言った。相手は既にメジャーなスターで、15歳の小娘には近寄りがたい存在だったが、私はちっぽけじゃない、情熱では負けない、大きな夢をもっている、とみずからを鼓舞した。60年代の街中では小児性愛者が少女たちを追いかけまわしたり、独裁、抑圧、沈黙と恐怖が蔓延し、「皆なひそひそと話をし、秘密をもち、怯えていた。家の中も同じ、父親が怖くて、パパが帰ってくるというと、子供たちは固まった」と。

 

アントニオ・イサシ=イサメンディ1929-2017との結婚と「私の人生の花」と形容する娘マリアの誕生(1975)については、両親の考えは違ったという。母親は17歳の年齢差と離婚ができないことから正式に籍を入れるべきでないと言い、父親はアントニオが籍を入れないなら母娘の面倒をみないと主張した。現実的な母親、世間を重んじる父親は万国共通です。後には孫娘を溺愛したそうですが。「アントニオとは同じ目的をもっていたのですが、次第に行き違いが重なり、娘が6歳のとき終わりました。多くの恋をしましたが、1983年、撮影監督、元国立フィルムライブラリー館長のチェマ・プラド(ルゴ1952、ホセ・マリア・プラド)と出会い再婚した。彼は「とても厳しく少し頑固だが誠実な人、皆がOKを出してもダメと言える人」だそうです。

 

             

       (チェマ・プラドとのツーショット、カンヌ映画祭2018にて)

 

★忘れられない人として、「私をもっとも信頼してくれた」舞台演出家のリュイス・パスクアル、「自由な考え方、映画に起用してくれたことで私の人生を決定した」ペドロ・アルモドバルの名前を上げている。その他、監督のカエタノ・ルカ・デ・テナフアン・ゲレロ・サモラホセフィナ・モリーナピラール・ミロ、女優マリア・アスケリノも忘れられないと語った。ホセフィナ・モリーナ以外は鬼籍入りしています。彼女は映画やオーディオビジュアルで仕事をする女性の権利を守る組織CIMAの設立者で名誉会長、女性監督として2011年、初めてゴヤ賞栄誉賞を受賞した大先輩です。

    

    

  (ビクトリア・アブリル、アルモドバルと。母と娘の愛憎劇『ハイヒール』から) 

   

2000年から3年間、スペイン映画アカデミー会長を務めた。2004年のゴヤ賞ガラも忘れられない。というのも大量破壊兵器保有を理由に米国がイラクに軍事介入した戦争に、当時のアスナール政権が同調したからだという。国民はこぞって戦争反対を表明した。仲間と「ノーモア・ウォー」のステッカーを付けてガラに出席した。いかなる戦争にも反対するのは母の教えだという。それは今年公開が予定されているアンパロ・クリメントLas cartas perdidas出演にも繋がっている。

 

      

             (撮影中のアンパロ・クリメント)

 

★新作はクリメント監督が演出をした同名戯曲の映画化、舞台は2年間のロングランをおさめたという。まだ内戦は終わっていないのです。プロットはスペイン内戦当時、追放または収監された女性たちの直筆の手紙がベースになっている、ドキュメンタリー・ドラマ、いわゆるドクドラというジャンルの映画です。共和政を支持した女性たちは、女子刑務所または強制収容所に送られた。撮影は最小のスタッフで、2020924日クランクイン、撮影地は両軍の激戦地であったアラゴン州のベルチテ、カスティーリャ・デ・ラ・マンチャ、バレンシア、フランス南部など。出演はパレデス以下、ボイス出演のアナ・ベレン、『ペーパー・ハウス』のナイロビ役で知名度が上がったアルバ・フローレス、ベテランのノラ・ナバスなどオール女性、いずれご紹介する予定です。

 

                

                       (撮影中のマリサ・パレデス)

    

      

  (全員マスク姿で撮影に臨むスタッフ)

 

 

第13回ガウディ栄誉賞にカルメ・エリアス2021年03月29日 14:59

              今年のガウディ栄誉賞は3年ぶりに女性シネアストの手に

     

          

     (ビッキー・ペーニャからトロフィーを受け取るカルメ・エリアス)

 

★前回写真だけアップしたガウディ栄誉賞受賞者カルメ・エリアスのご紹介。トロフィーは盟友ビッキー・ペーニャから渡されました。アカデミーの授賞理由は「演劇、映画、テレビにおいて常に卓越した才能を発揮した」とペーニャが紹介した。エリアスは「目には見えない人々、私を支えてくれたエキスパート、ここにいる人いない人、私の演じた登場人物たちをステージに伴ってきた」と挨拶した。「俳優というのは、役作りには時には意識的に、時には無意識に人生から糧を得る」と告白、「彼らの怖れ、勇気、不確実性を乗り越えてキャラクターの立ち位置を見つけねばならない。もし見つからないときにはとんぼ返りをしなければならない」とスピーチした。

   

     

★また誰でも自分の足跡を残していること、そして「人生を暗闇でなく光の道にしようとすれば、登場人物の話に耳を傾けねばならない」と明かし、この栄誉賞を一般の人々に捧げました。19世紀後半にカタルーニャ語で詩を書き続けた詩人で司祭だったハシント・ベルダゲルの詩の一節でスピーチを締めくくる前に、「私たちのような文明社会では不当に収監された人々が自分自身を表現できる自由があるべきと考えている」とも語った。

  

★カルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を志してバルセロナの演劇研究所や、ウィリアム・レイトンがバルセロナで創設した演劇ラボラトリーで演技を学び、その後ニューヨークに渡り、俳優学校リー・ストラスバーグのメソッド演技法を学んだ。舞台演出家レイトンは合衆国カンザス出身だが、ロンドンで演劇を学んだ後、1960年代からはスペインに軸足をおき、マドリードで演劇学校を開設、後にバルセロナに移って演劇ラボラトリーで後進の指導に当たった。卒業生には2014年にガウディ栄誉賞を受賞したフリエタ・セラーノアナ・ベレンナイワ・ニムリなど、後にスペイン演劇や映画の中核を担うアーティストを輩出している。

   

             

         (栄誉賞受賞の知らせを聞いて、カルメ・エリアス)

 

2009年から始まったガウディ賞も13回を迎え、栄誉賞も同時に始まっているから13人目になります。受賞者はバルセロナ派のシネアストから選ばれ、第1回目はバルセロナ生れのハイメ・カミーノ監督(19362015)でした。本邦では『1936年の長い休暇』が映画祭で上映されただけと思います。女性の受賞者はカルメ・エリアス5人目、一人目は昨年11月に鬼籍入りしたモンセラット・カルーリャ2013)、フリエタ・セラーノ2014)、昨年春、癌に倒れたロサ・マリア・サルダ2016)、メルセデス・サンピエトロ2018)、5人の共通項は映画・舞台・TVで活躍した、あるいは現役の女優ということです。

 

★カルメはスペイン語読みカルメンとしてクレジットされることもありますが、現在はカタルーニャ語のカルメが多い。当ブログではベネズエラの監督クラウディア・ピントのデビュー作La distancia más largaがモントリオール映画祭で「グラウベル・ローシャ賞」を受賞した折りに記事をアップしています。エリアスは実年齢の60歳代の女性に扮し、スペインから思い出のいっぱい詰まった生れ故郷、ベネズエラに最期の旅をする物語でした。翌年マラガ映画祭上映、ウエルバ映画祭観客賞受賞作品。もう1作がカルロス・ベルムト『シークレット・ヴォイス』(サンセバスチャン映画祭2018正式出品)で、そこで簡単にキャリア紹介をしています。バルセロナの演劇ラボラトリーの後輩ナイワ・ニムリと共演したメタファー満載のスリラーでした。

La distancia más larga」の紹介記事は、コチラ20130905

『シークレット・ヴォイス』の紹介記事は、コチラ20190313

   

  

 

   

      (祖母役に扮したエリアス、クラウディア・ピントのデビュー作から)

 

      

     (『シークレット・ヴォイス』撮影時のベルムト監督とエリアス)

 

★出演作は1975年にデビューしたTVシリーズを含めると3桁に及びますが、以下に主な作品を列挙しておきます。本邦ではラテンビート2009の目玉、ハビエル・フェセル監督の信仰と幸福、命と死をテーマにした『カミーノ』でしょうか。エリアスは難病に罹った少女カミーノの母親役でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。このゴヤ賞6部門制覇の実話にインスパイアされた作品は、後にオプス・デイ信者の遺族から裁判を起こされるなどした問題作。舞台とTV出演&受賞歴は割愛しますが、舞台女優としてはギリシャ悲劇からスペインの古典、チェーホフ、現代劇と幅広く出演している。

 

      

     

   (カミーノ役のネレア・カマチョと頑迷なオプス・デイ信者の母親役のエリアス)

 

タイトルと監督名、受賞歴の順(ノミネートは除外)

1985年「Stico」監督ハイメ・デ・アルミニャン、ベルリンFF正式出品

1990年「Pont de Varsovia」同ペレ・ポルタベリャ、

    カタルーニャ自治政府の国民映画女優賞受賞

1991年「El rey pasmado」同イマノル・ウリベ

1994年『わが生涯最悪の年』同エミリオ・マルティネス=ラサロ、スペイン映画祭1997上映

1995年『私の秘密の花』同ペドロ・アルモドバル、公開

2000年「Morir (o no)」同ベントゥラ・ポンス、カタルーニャ語

2006年「Los aires dificiles」同ヘラルド・エレーロ、

    マラガ映画祭金のビスナガ賞受賞作品

2008年『カミーノ』同ハビエル・フェセル、ラテンビート映画祭2009上映。

    ゴヤ賞主演女優賞サン・ジョルディ女優賞トゥリア女優賞

    スペイン俳優組合女優賞など受賞

2011年「Planes para mañana」同フアナ・マシアス、

    ムルシア・ウィーク映画祭フランシスコ・ラバル賞受賞

2012年「Tengo ganas de ti」同フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

2013年「La distancia más larga」(ベネズエラとの合作)同クラウディア・ピント

    第2回イベロアメリカ・プラチナ賞2015の初監督作品賞受賞作品

2018年『シークレット・ヴォイス』同カルロス・ベルムト

     

    

          (ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを胸に)

 

★最近ではTVシリーズ出演が多いが、デミ・ムーア、ナスターシャ・キンスキー、ダリル・ハンナ、シガニー・ウィバーなどの声優としても活躍している。次回作はベネズエラのクラウディア・ピントの第2作目Las Consecuenciasに出演、アルゼンチン出身だがスペインで活躍しているエクトル・アルテリオ、フアナ・アコスタ、チリのアルフレッド・カストロなどベテラン演技派と共演している。カナリア諸島のパルマで撮影したサイコ・スリラーということです。今回のガウディ栄誉賞ガラにピントも出席とあったがフォトは検索できなかった。


第35回ゴヤ賞の栄誉賞はアンヘラ・モリーナに*ゴヤ賞2021 ⑮2021年03月06日 20:17

            初のゴヤ胸像――「ゴヤ栄誉賞は仲間からのサイコウの贈り物」

 

       

   (ゴヤ賞2021の栄誉賞受賞のプレス会見、2021228日、映画アカデミー本部にて)

   

35回ゴヤ賞栄誉賞の受賞者はアンヘラ・モリーナ(マドリード1955)とアップしておきましたが、ガラを目前に少し書き足しておきます。キャリア&フィルモグラフィーは、2016年の映画国民賞*を受賞した折りに紹介しています。45年の映画人生のなかで、ルイス・ブニュエルを筆頭にアルモドバル、ボラウ、グティエレス・アラゴン、ハイメ・チャバリ・・・と名監督に愛されたアンヘラ、しかしゴヤ賞はノミネートこそ5回ありますが、受賞は栄誉賞が初めてなのです。

Premio Nacional de Cinematografía(国民映画賞とも訳される)

キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ20160728

 

        

         (映画国民賞授賞式のアンヘラ・モリーナ、20169月)

   

★マリアノ・バロッソk映画アカデミー会長に付き添われてプレス会見に臨んだアンヘラは、「思ってもいなかった受賞の知らせに喜びとともに驚いている。全人生を捧げてきた映画の仲間がこの賞をもたらしてくれたことが特に素晴らしことだった」と。映画国民賞は教育文化スポーツ省とICAAが選考母体だが、この賞は純粋に映画人が選ぶという違いがあります。2021年はパンデミックでテレマティクスとライブの混成になる。36日のガラには家族は同席できないようです。「そうすることが最善だと考えています。家族はお茶の間で楽しむことになるでしょう」。ノミネートされながらチャンスを活かせないケースもありそうですから本当に異例の授賞式になります。新型コロナを恨んでも詮ないことです。

 

★「誰にこの賞を捧げるか? このゴヤは私の父、私の母、私の夫、私の子供たち、愛するファンと友人たち」と明かしました。これ以外の答えはないと思いますが。離れていた時期もあったが、映画のほか舞台にも立っている。現在はラモン・カンポスやテレサ・フェルナンデス=バルデスが手掛けるTVシリーズ、スリラーUn asunto privado(全8話)を撮影中、2022年も既に出演作が複数決まっている。引退はまったく考えていないが、「時には疲れていると」と冗談を交えてかわしていたが、まだまだ引退の歳ではありません。

 

★映画アカデミーが選考母体の「金のメダル」を2013年に受賞しており、それに加えての栄誉賞受賞となりました。バロッソ会長は「私たちの映画の発展に寄与した素晴らしい女優、栄誉賞は彼女と一緒に映画を作った仲間たちの感謝が込められている。アンヘラ・モリーナと映画はフィードバックする。スクリーンの中で彼女を見ると、私たちは元気づけられる」と称賛した。

   

           

          (2013年に受賞した金のメダルを手にしたアンヘラ)

   

   

    

     (準備が整ったマラガの街路、アンヘラの写真を囲んで 左から3人目が会長)


マリオ・カサス、初のゴヤ賞ノミネート*ゴヤ賞2021 ⑫2021年02月23日 11:01

         まさかのゴヤ賞初ノミネートにびっくり――マリオ・カサス

      

       

       (ノミネート対象作品のダビ・ビクトリの「No matarás」)

 

★ゴヤ賞2021主演男優賞は、マリオ・カサス(ダビ・ビクトリ「No matarás」)、ハビエル・カマラ(セスク・ゲイ「Sentimental」)、エルネスト・アルテリオ(アチェロ・マニャス「Un mundo normal」)、ダビ・ベルダゲル(ダビ・イルンダイン「Uno para todos」)の4人、ノミネーション発表の最初からカサスかカマラのどちらかと予想しています。ダビ・ビクトリNo matarás以外は作品紹介をしているので、公平を期して作品紹介もしておこうとしたら、なんとマリオ・カサスはゴヤ賞は初ノミネートに驚きました。というのもTVシリーズも含めると20年近いキャリアがあり、それも話題作に出演していたからです。本邦でもアクション、スリラーが多いので、映画祭上映、ビデオやDVDNetflix配信などで知名度があり、当ブログでも度々登場させていたから、受賞は別としてノミネートくらいはあると思っていたのでした。

 

             

            (マリオ・カサス、「No matarás」から)

 

★マリオ・カサスは1986年、ガリシア州の県都ア・コルーニャ生れ、5人弟妹の長子、大工だった父親が19歳、母親が17歳のときに生まれた。1994年家族でバルセロナに転居、1995年からスペイン国有鉄道RENFEレンフェのコマーシャルに出演している。本格的に俳優を目指して18歳でマドリードに、演技はアルゼンチン出身の女優が設立したクリスティナ・ロタ演劇学校で学んだ。クリスティナ・ロタはフアン・ディエゴ・ボトー(助演ノミネート)、マリア・ボトーの母親でもある。卒業生にはゴヤ賞2021ノミネートのエルネスト・アルテリオ(主演)のようなアルゼンチン出身者だけでなく、ナタリエ・ポサ(助演)、アルベルト・サン・フアン(助演)、ペネロペ・クルス、エドゥアルド・ノリエガなどがおり、スペイン映画の隆盛に貢献している。

 

        

        (マラガ映画祭主演男優賞を受賞した「La mula」のポスター)

 

★ダビ・ビクトリの「No matarás」主演で、ホセ・マリア・フォルケ賞に初ノミネートされましたが、ライバルのハビエル・カマラの手に渡った。現在結果が出ているのはサン・ジョルディ賞(スペイン男優賞)とディアス・デ・シネ賞(スペイン男優賞)の2賞です。今年はコロナ禍で映画賞は軒並みガラ開催が遅れています。ゴヤ賞(36日)、フェロス賞(32日)、ガウディ賞(321日)と大きい映画賞の発表はこれからです。以下に主なフィルモグラフィーを年代順に列挙しておきます。(邦題、原題、監督名、主な受賞歴の順)

 

2006年「El camino de camino」脇役、アントニオ・バンデラス

2009年『セックスとパーティーと嘘』(『灼熱の肌』「Mentiras y gordas」)群像劇

   アルフォンソ・アルバセテ&ダビ・メンケス 

   マドリード・レズビアン&ゲイ映画祭2009レズゲイ賞、サラゴサFF 2009若い才能賞受賞 

2009年「Fuga de cerebros」主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

    サラゴサ映画祭2009若い才能賞受賞

2010年「Carne de neón」主役、パコ・カベサス

2010年『空の上3メートル』(「Tres metros sobre el cielo」)主役、

    フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ   ACE2011新人男優賞受賞

2012年『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』(「Grupo 7」)脇役、アルベルト・ロドリゲス

       フォトグラマス・デ・プラタ賞2013映画部門男優賞受賞

2012年『その愛を走れ』(「Tengo ganas de tí」)主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

2013年「La mula」主役、マイケル・ラドフォード マラガ映画祭2013主演男優賞受賞

2013『スガラムルディの魔女』(「Las brujas de Zugarramurdi」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2014助演男優賞受賞

2013年「Ismael」マルセロ・ピニェエロ

2015年『チリ33人、希望の軌跡』(「Los 33」)群像劇、パトリシア・リッヘン

2015年『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(「Mi gran noche」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2016助演男優賞受賞

2015年『ヤシの木に降る雪』(「Palmeras en la nieve」)主役、フェルナンド・G・モリーナ

    フォトグラマス・デ・プラタ賞2016映画部門男優賞受賞

2016『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「Toro」)主役、キケ・マイーリョ

2016『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(「Contratiempo」)主役、オリオル・パウロ

2017『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』(「El bar」)群像劇、

    アレックス・デ・ラ・イグレシア

2017年『オオカミの皮をまとう男』(「Bajo la piel de lobo」)主役、サム・フエンテス

2018『マウトハウゼンの写真家』(「El fotógrafo de Mauthausen」)、マル・タルガロナ

2019年「Adiós」パコ・レオン

2020『その住民たちは』(「Hogar」)脇役、ダビ&アレックス・パストール

2020年『パラメディック――闇の救急救命士』(「El practicante」)主役、カルレス・トラス

    ディアス・デ・シネ賞2021スペイン男優賞受賞

2020No matarás省略

ゴチック体は当ブログに紹介記事があります。ビデオ、短編、TVシリーズは割愛。

 

『スガラムルディの魔女』の紹介記事は、コチラ20141012

『ザ・レイジ 果てしなき怒り』の紹介記事は、コチラ20160414

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』の記事は、コチラ201702170414

『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』の紹介記事は、コチラ20170404

『マウトハウゼンの写真家』の紹介記事は、コチラ201903030305

『その住民たちは』の紹介記事は、コチラ20200331

 

TVシリーズでお茶の間ファンを獲得、映画デビューはアントニオ・バンデラスEl camino de caminoに脇役で出演した。これはバンデラス監督と同郷の作家アントニオ・ソレルの同名小説の映画化だった。カサスをスターにしたのはMentiras y gordasでした。お茶の間のアイドル脱出を模索していたときにオファーを受け、結果を出した。邦題は英語タイトルの直訳、原題を直訳すると「嘘っぱちとデブ女たち」になるが、gordaは強めの要素で会話などで使う「まさかそんなこと嘘でしょ」くらいになる。コメディと紹介されることもあるが、それは見た目だけで的外れ、居場所のない孤独と愛を探す若者たちを描いた青春ドラマでした。カサスは好きな親友に愛を告白できないゲイを演じた。本作はアルモドバルのカンヌ映画祭パルムドールにノミネートされた『抱擁のかけら』を抜いて興行成績ナンバーワンになったが、批評家の評価は当然のごとく分かれた。1996年のダニー・ボイル『トレインスポッティング』が下敷きになっているようです。本作でユアン・マクレガーはスターの座にのしあがった。

 

           

             (『セックスとパーティーと嘘』から)

 

★ゴヤ賞関連では、共演者はノミネートされるが、カサス自身は外されることが多く、アルベルト・ロドリゲスUNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』で助演男優賞ノミネーションを期待したが、共演者のフリアン・ビジャグランがノミネートされ受賞した。またサム・フエンテス監督のオファーを台本を読まずに話だけでOKした『オオカミの皮をまとう男』でもノミネートがなく、翌年の『マウトハウゼンの写真家』では減量して挑戦したもののまたもや素通り、映画アカデミーから嫌われているのかと思っていた。新作「No matarás」の監督は、マリオ・カサスを念頭において脚本を書いたと語っているが、サム・フエンテスもカサスに惚れ込んで「彼しかこの役はできない」とインタビューに応えていた。以下に新作の紹介をしておきます。

 

    

                  (『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』から)

 

      

          (『マウトハウゼンの写真家』のポスター

 

 

No matarás(英題「Cross the Line」)

製作:Castelao Pictures / Castelao Production / Filmax / Movistar/ RTVE / TV3 他

監督:ダビ・ビクトリ

脚本:ダビ・ビクトリ、ジョルディ・バリェホ、クララ・ビオラ

音楽:フェデリコ・フシド、エイドリアン・フォルケス

撮影:エリアス・M・フェリックス

編集:アルベルト・グティエレス

キャスティング:アレハンドロ・ヒル

プロダクション・デザイン&美術:バルテル・ガジャルト

衣装デザイン:オルガ・ロダル、イランツゥ・カンポス

メイクアップ&ヘアー:ナタリア・アルベール、パトリシア・レイェス、(特殊メイク)ルシア・ソラナ

舞台装置:Thais・カウフマン

プロダクション・マネージメント:エステル・べラスコ、アルフレッド・アベンティン

製作者:ラウラ・フェルナンデス・Brites、(エグゼクティブ)カルロス・フェルナンデス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語・英語、2020年、アクション・スリラー、92分、撮影地バルセロナ、シッチェス映画祭20201010日上映)、公開スペイン1016日、チリ1016日(ネット)、アルゼンチン121日、ドイツ225日(DVD発売35日)、他

 

キャストマリオ・カサス(ダニ)、ミレナ・スミット(ミラ)、フェルナンド・バルディビエルソ(レイ)、エリザベス・ラレナ(ラウラ)、ハビエル・ムラ(ベルニ)、アレックス・ムニョス(デルガド)、アンドレウ・Kreutzer(フォルニド)、オスカル・ぺレス(従兄弟)、シャビ・シレス(刑事)、ミゲル・アンヘル・ゴンサレス(物乞い)、アルベルト・グリーン、ヘラルド・オムス(ヘラルド)、シャビ・サエス(ルベン)、ビクトル・ソレ(見張り役)、ミゲル・ボルドイ(ダニの父親)、他

ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされている俳優、新人女優賞、新人男優賞

 

ストーリー:ダニはここ数年、病気の父親の介護をしながら旅行会社で働いていた。父親が亡くなると自分の人生を変えようと世界をめぐる旅に出ようと決心する。そんな折も折、セクシーだが精神が不安定なミラという女性と運命の出会いをしてしまう。その夜を境にダニの人生は本物の悪夢と化してしまうだろう。ミラはダニを想像もできない破局に導いていく。本作はもし平凡な人間が誰かを殺すことが可能かどうか考える物騒な映画。

 

    

            (マリオ・カサス、映画から)

 

★カサスによると、シナリオを読むなりこのプロジェクトに参加したいと思った。「この役柄を演じられる自信はなかったが、これも挑戦だと魅了された。スリラーが好きなのです」と。監督もカサスについて「脚本は常にマリオを念頭において書きすすめた」と打ち明ける。「マリオの視線を通して、この登場人物を変身させる。観客もこの人物のなかにある真実を体験できるだろう」とコメントしている。

 

       

                (撮影中の監督とカサス)

 

ダビ・ビクトリ1982年バルセロナ生れの監督、脚本家、製作者。スペインと米国で映画を学んだ。2008年短編「Reaccion」でデビュー、同Zero15)がアリカンテのラルファス・デル・ピ映画祭で監督賞と作品第2席を受賞、2018年長編デビュー作El pactoは公開された。ベレン・ルエダやダリオ・グランディネッティが出演している。本作は第2作目。

 

   

   (シッチェス映画祭2020、フォトコール)

 

      

          (マリオ・カサスとミレナ・スミットに挟まれた監督)

 

★ゴヤ賞新人女優賞にノミネーションされている、ミレナ・スミット1996年エルチェ生れ、ホテルのフロントで働いていたところをスカウトされた。未だ24歳だが妖艶な雰囲気があり、もしかすると受賞するかもしれない。次回作はアルモドバルの新作Madres paralelasに出演が決まり、既にクランクインしている。共演者はペネロペ・クルスとアイタナ・サンチェス=ヒホン、他にアルモドバル常連のロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、イスラエル・エレハルデなど賑やかです。ゴヤ賞のライバルは「Ane」のホネ・ラスピウルか。

 

    

    

            (ミレナ・スミットとカサス、映画から)

 

★新人男優賞ノミネーションのフェルナンド・バルディビエルソは、1984年マドリード生れ。2005年短編でデビュー、主にTVシリーズに出演している。2008イサベル・デ・オカンポのスリラー短編「Miente」でラルファス・デル・ピ映画祭2008男優賞を受賞している。当ブログで作品紹介をしているダニエル・カルパルソロのスリラーHasta el cieloに警官役で出演している。特異な風貌から役柄が限られそうだが、異色の新人として大いに脈がありそうです。

 

  

    

       (フェルナンド・バルディビエルソ、シッチェスFFのフォトコール)