ペルラス部門のクロージング作品「Marco」*サンセバスチャン映画祭2024 ⑰ ― 2024年09月03日 16:22
バスクの監督コンビの新作「Marco」の主言語はスペイン語

★ペルラス部門のクロージングは、アウト・オブ・コンペティション(コンペティション作品ですが賞の対象外)のジョン・ガラーニョとアイトル・アレギの「Marco」、3000人収容できるベロドロモで上映されます。サンセバスチャン映画祭初となるバスク語映画『フラワーズ』(14)、同『アルツォの巨人』(17、審査員特別賞、イリサル賞)、スペイン語映画「La trinchera infinita」(19、銀貝監督賞、脚本賞)、以上3作に参画していたホセ・マリ・ゴエナガは、新作には脚本の共同執筆者の一人としてクレジットされているだけです。新作はエドゥアルド・フェルナンデス扮するエンリク・マルコという実在した人物が主人公、彼はナチスの強制収容所フロッセンビュルク*の生存者と偽って、スペインのホロコースト犠牲者協会の事務総長を長らく務めていたというカリスマ的な詐欺師の物語です。
*フロッセンビュルク強制収容所は、ドイツとチェコスロバキアの国境に近い遠隔地にり、1938年5月に開設された。当初の目的は、他の収容所とは異なって、ナチスの建築用の花崗岩を採掘する労働力確保のためであり、初期にはダッハウから囚人が移送された。主にナチスSSにとって好ましくない個人や「反社会的」な囚人を収容したが、ドイツのソ連侵攻後、国外の政治犯が増加した。ポーランド、ソ連の捕虜、チェコスロバキア、ベルギー、オランダ、スペインが主で、初期にはユダヤ人は多くなかった。1945年4月アメリカ陸軍によって解放されるまで、延べ89,974人だが実際はもっと多かったといわれている。うち約3万人が過労、栄養失調、処刑、死の行軍で死亡した。(Wikipedia, the free encyclopedia から作品に必要と判断した箇所の抜粋)
「Marco」
製作:Irusoin / Moriarti Produkzioak / Atresmedia Cine / La Verdad Inventada
協賛ICAA / バスクTV / バスク州政府 / Movistar Plus+ / BTeam Pictures
監督:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ
脚本:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホルヘ・ヒル・ムナリス、ホセ・マリ・ゴエナガ
撮影:ハビエル・アギレ・エラウソ
編集:マイアレン・サラスア・オリデン
音楽:アランサス・カジェハ
音響:アラスネ・アメストイ、アンドレア・サエンス・ペレイロ、シャンティ・サルバドール
視覚効果:ダビ・エラス
キャスティング:マリア・ロドリゴ
美術:ミケル・セラーノ
衣装デザイン:サイオア・ララ
メイクアップ:ナチョ・ディアス
製作者:(Irusoin)シャビエル・ベルソサ、アンデル・バリナガ・レメンテリア、アンデル・サガルドイ、(Atresmedia)ハイメ・オルティス
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語・カタルーニャ語・英語、スリラー・ドラマ、伝記映画、101分、撮影地バスク州サラウツ、カタルーニャ、マドリード、ドイツ、海外販売はフィルム・ファクトリー、公開スペイン11月8日
映画祭・受賞歴:第81回ベネチア映画祭2024オリゾンティ部門、ワールドプレミア8月30日、SSIFFアウト・オブ・コンペティション出品作品
キャスト:エドゥアルド・フェルナンデス(エンリク・マルコ)、ナタリエ・ポサ(妻ラウラ)、チャニ・マルティン(歴史研究家ベニト・ベルメホ)、ソニア・アルマルチャ、フェルミ・レイシャック(Reixachレイザック)、ダニエラ・ブラウン(メルセデス)、ビセンテ・ベルガラ、ジョルディ・リコ
ストーリー:ナチ強制収容所フロッセンビュルクからの強制送還者が架空の人物であったことが判明した実話が語られる。エンリク・マルコは長年にわたってスペインのホロコースト犠牲者協会の事務総長を務めていた。捏造は非常に複雑で巧妙だったため、協会内はいうに及ばず、世間も家族も気づかなかった。しかし或る歴史家によって真実が判明する日が訪れる。自分は強制収容所の囚人だったと虚偽を主張した非常にカリスマ的なカメレオン男の人生が、エドゥアルド・フェルナンデスの素晴らしい演技で観客を魅了するだろう。
エンリク・マルコとは誰であるか――真実と嘘、欺瞞と現実
★エンリク・マルコは、1921年バルセロナ生れ、第二次世界大戦中、ナチスドイツの強制収容所マウトハウゼンとフロッセンビュルクに捕虜として収容されていたという虚偽を主張した詐欺師。2001年カタルーニャ州政府からサンジョルディ勲章を授与され、回顧録を上梓したが、2005年、歴史研究家ベニト・ベルメホによって虚偽が判明し、自身も嘘を認め、勲章を返還した。金属労働者のマルコは、1978年から翌年にかけて、スペインのアナーキスト連合CNT全国労働者連合の書記長を務めている。2022年5月没、享年101歳でした。『サラミナの兵士たち』の著者ハビエル・セルカスが、この完璧な変装を演じ続けた人物を “El Impostor”「詐欺師」という題で2014年に刊行している。

(サンジョルディ勲章を授与されるエンリク・マルコ2001年)
★捏造の理由にマルコは「強制収容所に収容された人々の苦しみを宣伝できると考えた」もので「捏造に悪意はなかった」と主張した。しかしホロコースト生存者は「ナチス収容所の存在を否定する人々がこれを利用して、ホロコーストの証言には価値がないと主張する危険をはらんでいる」と憤慨している。
★キャスト紹介:エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ』(SSIFF2016銀貝男優賞)で実在したスパイを演じ、アレハンドロ・アメナバルの『戦争のさなかで』(19)では、隻眼片腕のホセ・ミリャン・アストライ将軍を演じてゴヤ賞2020助演男優賞を受賞、最近ではオリオル・パウロの『神が描くは曲線で』(22)に主演している。アルモドバルの『誰もがそれを知っている』(18)のようにゴヤ賞ノミネートの常連だが、デビュー当時からその演技力が認められて「Fausto 5.0」で2002主演男優賞、「En la ciudad」で2004助演男優賞を受賞している。TVシリーズのヒット作「30 Monedas」に続いて、『鉄の手』がNetflixで配信中。
*『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ⇒2016年09月24日/同年09月26日
*『戦争のさなかで』の紹介記事は、コチラ⇒2019年09月27日/同年11月26日

(マルコを演じたエドゥアルド・フェルナンデス)
★マルコの妻ラウラを演じているのがナタリエ・ポサ(マドリード1972)、リノ・エスカレラのデビュー作『さよならが言えなくて』でゴヤ賞2018主演女優賞とフォルケ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、フェロス賞、マラガ映画祭女優賞、イシアル・ボリャインの「La boda de Rosa」でゴヤ賞2021助演女優賞他を受賞、この2作で受賞の山を築いている。フェルナンデスと『戦争のさなかで』で共演、他アルモドバルの『ジュリエッタ』、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』など、シリアスもコメディも演じ分ける、その確かな演技力で多くの監督に起用されている。
*『さよならが言えなくて』の紹介記事は、コチラ⇒2017年06月25日
*「La boda de Rosa」の紹介記事は、コチラ⇒2020年03月20日

(妻ラウラを演じたナタリエ・ポサ)
★マルコの嘘の人生を調べ上げた歴史研究家ベニト・ベルメホに扮したチャニ・マルティン(トレラグナ1973)は、映画&舞台俳優、歌手、作曲家。テレビ出演が多いが、『パンズ・ラビリンス』、『悪人に平穏なし』、『Seventeen/セブンティーン』など、字幕入りで観られる作品に出演している。フェルミ・レイザック(ジローナ1946)は、出番はほんの少しだったが、カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』で少女の祖父を演じた俳優。つい先だって訃報に接した。結果的に本作が最後の出演となった。リー・ストラスバーグの演劇研究所「アクターズ・スタジオ」で演技を学んだ舞台俳優でした。
★監督紹介:アイトル・アレギ(オニャティ1977)、ジョン・ガラーニョ(サンセバスティアン1974)のキャリア&フィルモグラフィーは、以下に紹介しています。
*『フラワーズ』の作品、キャリア紹介は、コチラ⇒2014年11月09日
*『アルツォの巨人』の作品、キャリア紹介は、コチラ⇒2017年09月06日
*「La trinchera infinita」の作品紹介は、コチラ⇒2019年12月20日

(新作プロモーションをするガラーニョ&アレギ監督、ベネチアFF2024ノミネート会場)
ウォルター・サレスの「Ainda Estou Aqui」*サンセバスチャン映画祭2024 ⑱ ― 2024年09月06日 18:14
1970年代初頭、軍事独裁政権の弾圧に直面していたブラジルが描かれる

★ペルラス部門に『セントラル・ステーション』、『モーターサイクル・ダイヤリーズ』のウォルター・サレスが、12年ぶりの長編映画、マルセロ・ルーベンス・パイヴァの同名の回顧録に基づいた「Ainda Estou Aqui / I’m Still Here」で戻ってきました。1970年代の初頭、軍事独裁政権が日増しに厳しさを増すリオデジャネイロで暮らしていたパイヴァ一家の闘いが尊厳をもって語られる。既にベネチア映画祭コンペティション部門でのプレミア上映があり、10分間のオベーションということで、まずまずのスタートを切った。

(監督、原作者、主演者フェルナンダ・トーレスとセルトン・メロ、ベネチアFF2024)
「Ainda Estou Aqui / I’m Still Here」
製作:VideoFilmes / RT Features / MACT Productions
共同製作 Arte France Cinéma / Conspiraçao Filmes / Globoplay
監督:ウォルター・サレス
脚本:ムリーロ・ハウザー、エイトル・ロレガ、マルセロ・ルーベンス・パイヴァ
原作:マルセロ・ルーベンス・パイヴァ著 ”Ainda Estou Aqui”(2015年刊)
撮影:アドリアン・テイジド
編集:アフォンソ・ゴンザウベス
美術:カルロス・コンティ
音楽:ウォーレン・エリス
衣装デザイン:クラウジア・コブケ
製作者:マリア・カルロタ・ブルノ、ロドリゴ・テイシェイラ、マルティーヌ・ド・クレルモン・トネール、(エグゼクティブ)ギリェルメ・テラ、ティエリー・ド・クレルモン・トネール、ダビド・タギオフ、マーシャ・マゴノヴァ
データ:製作国ブラジル=フランス=スペイン、2024年、ポルトガル語、ドラマ、136分、撮影地リオデジャネイロ、公開ブラジル2024
映画祭・受賞歴:ベネチア映画祭2024コンペティション部門、トロント映画祭コンペティション部門、サンセバスチャン映画祭ペルラス部門、ニューヨーク映画祭、BFIロンドン映画祭、各正式出品
キャスト:フェルナンダ・トーレス(ユーニス・パイヴァ)、セルトン・メロ(夫ルーベンス・パイヴァ)、フェルナンダ・モンテネグロ(現在のユーニス・パイヴァ)、アントニオ・サボイア(長男マルセロ・ルーベンス・パイヴァ)、ヴァレンティナ・ハーサージュ(長女ヴェラ)、ルイザ・コゾフスキー、バルバラ・ルス、オリヴィア・トーレス、マリア・マノエラ、他多数
ストーリー:1970年代の初頭のリオデジャネイロ、軍事独裁政権下のブラジルは、日増しに厳しい統制に直面していた。パイヴァ家のルーベンスとユーニス夫婦と5人の子供たちは、ビーチ近くの貸家に住んでいる。友人たちが自由に出入りできるようドアには鍵をかけていなかった。1971年のある日の午後、軍事独裁政権を痛烈に批判していた、元下院議員ルーベンス・パイヴァは、政府高官に連行され永遠に家族のもとから姿を消してしまった。永遠に変わってしまった家族の人生をユーニスと子供たちの目を通して、夫についての父親についての真実への飽くなき探求が何十年も続くことになる。マルセロ・ルーベンス・パイヴァの回顧録を原作とする、或る家族の胸を打つ政治ドラマ。愛とユーモアを交えて、この国を混乱に陥れた弾圧に抵抗する家族を鋭い独特の方法で、ブラジルの歴史から隠されてきた重要な部分を再構築している。

★本作は国家公認の壊滅的な犯罪の物語であると同時に、友人、政治、音楽、映画、芸術に囲まれた、世界に開かれた素敵な家族が、次第に沈黙し、恐怖につつまれ、仲間が去り、門戸に鍵が掛けられていく物語でもある。原作者のマルセロ・ルーベンス・パイヴァは、1959年サンパウロ生れ、作家、脚本家、戯曲家、20歳のとき水泳中の事故で上記の写真のように電動車椅子生活になっている。原作 ”Ainda Estou Aqui”は2015年に刊行されベストセラーになった。サレス監督はパイヴァ家とは1960年代からの知り合いで、思春期に多くの時間をこの海辺の家で過ごしたそうです。
★監督紹介:ウォルター・モレイラ・サレス・ジュニアは、1956年、リオデジャネイロ生れ、監督、製作者、脚本家、他にヴァルテル、ヴァウテルとも表記される。ブラジルのウニバンコの創設者で政治家の息子、父ウォルター・モレイラ・サレスと同名ということでジュニアを付記することもある。2023年発表の「フォーブス」の長者番付で『スターウォーズ』の生みの親ジョージ・ルーカスを抜いて世界で最も裕福な映画監督といわれている。

(監督、二人の主演者、ベネチアFF2024のレッドカーペットにて)

★SSIFF関連では、「Terra Estrangeira」(95、サバルテギ―ニューディレクター部門)、『セントラル・ステーション』(98、観客賞、ユース賞)、監督初となるスペイン語映画『モーターサイクル・ダイヤリーズ』(04、観客賞)、オムニバス映画『パリ、ジュテーム』(06、ペルラス部門)、ドキュメンタリー『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』(15、サバルテギ-タバカレア部門)が上映されている。他にデビュー作サイコスリラー『殺しのアーティスト』(91)、『ビハインド・ザ・サン』(01)、『ダーク・ウォーター』(05)、『オン・ザ・ロード』(12)などが劇場公開されている。製作者としてはフェルナンド・メイレレスの『シティ・オブ・ゴッド』(02)、カリン・アイヌーズの『スエリーの青空』(06)などを手掛けている。

(ベネチア映画祭2024のフォトコール)
★キャスト紹介:1970年代のユーニス・パイヴァを演じたフェルナンダ・トーレス(リオデジャネイロ1965)は、作家でもある。サレスの「Terra Estrangeira」に出演、アルナルド・ジャボールの「Love Me Forever or Never」(英題)でカンヌ映画祭1986の主演女優賞を受賞している。現在のユーニスを演じたフェルナンダ・モンテネグロ(リオデジャネイロ1929)とは実の母娘、本当によく似ていますが、恐らく本作が最後の共演となるでしょう。モンテネグロは今さら書くまでもなく『セントラル・ステーション』の手紙の代書屋を演じて、ベルリン映画祭主演女優賞を受賞、ブラジル初となるアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされた。他に本作とテーマと時代背景が近いブルーノ・バレットの『クアトロ・ディアス』(97)に娘トーレスと共演している。『コレラの時代の愛』(07)、ラテンビート2019で上映されたカリン・アイヌーズの『見えざる人生』など、脇役ながら存在感がある。間もなく95歳になります。
*『見えざる人生』でのモンテネグロのキャリア紹介は、コチラ⇒2019年11月03日

(フェルナンダ・トーレス、フレームから)

(フェルナンダ・モンテネグロ、フレームから)

(トーレス、モンテネグロ、二人のフェルナンダ)
メイド・イン・スペイン部門21作発表*サンセバスチャン映画祭2024 ⑲ ― 2024年09月09日 17:28
オープニングはジョアン・ロペス=リョレトのドキュメンタリー

★メイド・イン・スペイン部門は賞に関係なく、合作を含むスペイン映画から選ばれます。プレミア作品を含む、既にマラガ、ヒホン、マジョルカ他、海外の先行映画祭の受賞作、公開された話題作など、見残したものが短期間に纏めて観ることができるセクションです。今回はマラガFFの受賞作が顔を揃え一挙に鑑賞できます。オープニング(ジョアン・ロペス=リョレトの「Tiempo de silencio y destrucción」)もクロージング(アルバ・ソトラの「Mucha mierda / Break a Leg」)も珍しいことにドキュメンタリー、今まで隠されてきた真実が明かされ、スペイン人には見逃せない政治色の強い作品、個人的にも興味深く、別途紹介を予定しています。

(ジョアン・ロペス=リョレトの「Tiempo de silencio y destrucción」から)

(アルバ・ソトラの「Mucha mierda / Break a Leg」出演のアナ・ベレン)
★アントニオ・チャバリアス(バルセロナ県ルスピタレート・ダ・リュブラガート1956)の「La abadesa / Holy Mother」の舞台は9世紀、ダニエラ・ブラウン扮する若き修道院長エマは、モーロ人と対立する国境地帯に再入植してキリスト教化する使命を与えられる。実話に基づいている。マラガFFコンペティション部門出品。SSIFF 2006セクション・オフィシアルに「Las vidas de Celia」がノミネートされている。製作者としてのキャリアも長く、アグスティ・ビリャロンガ、クラウディア・リョサ、ハイメ・ロサーレス、ベレン・フネス、シルビア・ムントなどの作品を手掛けている。


★シモン・カサル(ア・コルーニャ1984)の「Artificial Justice」(ポルトガルとの合作)は、フィルム・ノアール調のSF政治スリラー、ベロニカ・エチェギ、タマル・ノバス、アルバ・ガローチャ、アルベルト・アンマンが出演する。スペイン政府は近い将来、すべての裁判官を人工知能に置き換えることを目指しており、司法制度を自動化し、非政治化すると発表しました。ベロニカ・エチェギ扮する裁判官が、この新システムを評価するため招聘されるが、次第に自分の命が危険に晒されていることに気づきます。ガリシアとリスボンで撮影された。



(ジョアン・ロペス=リョレト、アルバ・ソトラ、アントニオ・チャバリアス、シモン・カサル)
★マラガ映画祭の金のビスナガ賞(作品賞)、監督賞、編集賞(ハビ・フルトス)の3冠を制したイサキ・ラクエスタ(ジローナ1975)とポル・ロドリゲス(バルセロナ1977)の「Segundo premio / Saturn Return」は、グラナダのロックグループ「ロス・プラネタス」を描いた「no-película非映画」です。
*作品紹介、授賞式の記事は、コチラ⇒2024年03月14日


★ソニア・メンデス(ビゴ1980)の長編デビュー作「As Neves」は、マラガFFセクション・オフィシアル出品作品。アス・ネベスはお互いがすべて知り合いというガリシアの山村、カーニバルの夜、ティーンエイジャーたちはパーティを開き、初めてドラッグで盛り上がった。翌朝パウラが失踪したことを知る。短編数編、ドキュメンタリー「A Poeta analfabeta」(20)を撮っている。


★アレックス・モントーヤ(バレンシア1973)のコメディドラマ「La casa」は、パコ・ロカの同名コミックを原作としている。マラガFFの脚本賞(監督とジョアナ・オルトゥエタ)と音楽賞(フェルナンド・ベラスケス)、観客賞まで受賞した。父親が亡くなってことで、3兄妹が子供時代に夏を過ごした家に家族を連れて集まってくる。この残された質素な家をどうするか、売却するにも期待通りには進まない。長い間埋もれていた記憶や秘密が浮かび上がってくる。シンプルでピュア、泣いて笑って幸せになる映画、そして家はどうなるのでしょうか。原作者のパコ・ロカがカメオ出演しているそうです。
*マラガ映画祭の授賞式の記事は、コチラ⇒2024年03月14日



(イサキ・ラクエスタ、ポル・ロドリゲス、ソニア・メンデス、アレックス・モントーヤ)
★ダビ・トゥルエバ(マドリード1969)の「El hombre bueno」は、ホルヘ・サンス、マカレナ・サンス、ビト・サンスと同じ苗字ながら血縁関係のないスリー・サンスが演じる。旧友の「善き人」に離婚の仲介を依頼するカップルの物語。マラガFFコンペティション部門出品作品。
*作品紹介は、コチラ⇒2024年03月08日

(左から、ビト・サンス、ホルヘ・サンス)


(ダビ・トゥルエバ、マラガ映画祭2024)
★ホナス・トゥルエバ(マドリード1981)の新作「Volveréis / The Other Way Around」は、カンヌ映画祭併催の「監督週間」で、ヨーロッパ映画賞ヨーロッパ・シネマズ・ラベル賞受賞している。15年間の結婚生活を解消するための「お別れパーティ」を開き、円満に別れることを希望しているカップルの物語。
*作品紹介は、コチラ⇒2024年05月27日

(円満に離婚したい夫婦、ビト・サンスとイチャソ・アラナ)


(ホナス・トゥルエバ、カンヌ映画祭2024)
★賞に絡むわけではありませんが、続けて上映作品の紹介をします。
続メイド・イン・スペイン部門*サンセバスチャン映画祭2024 ⑳ ― 2024年09月11日 15:35
アンドレア・ハウリエタの2作目「Nina」はマラガの審査員特別賞受賞作品
★メイド・イン・スペイン部門の続編は、マラガ映画祭の銀のビスナガ批評家審査員特別賞を受賞したアンドレア・ハウリエタの「Nina」は、復讐を果たすために30年ぶりに故郷に戻ってくる女性の物語、ソニア・エスコラノ&ベレン・ロペス・アルベルトのコメディ「Norberta」、ルイス・ベルメホとアドリアナ・オソレスが夫婦を演じる。マルク・フェレルの「Reír, cantar,tal vez llorar」は、中年からトランス女性になったトニとバルセロナに到着したばかりのモロッコ移民ラーセンの物語。セリア・リコ・クラベリーノの2作目「Los pequeños amores」は、マラガFFの審査員特別賞とアドリアナ・オソレスが助演女優賞を受賞した話題作。
★アンドレア・ハウリエタ(パンプローナ1986)は、監督、脚本家、2018年デビュー作「Ana de día / Ana by Day」が同じマラガFF のコンペティション部門にノミネート、翌年のゴヤ賞新人監督賞にノミネートされている。2作目となる「Nina」は、マラガ映画祭の銀のビスナガ批評家審査員特別賞を受賞している。脚本は監督自身とホセ・ラモン・フェルナンデスの共同執筆。撮影はバスク州ビスカヤ、スリラー・ドラマ、105分
キャスト:パトリシア・ロペス・アルナイス(ニナ)、ダリオ・グランディネッティ(ペドロ)、アイナ・ピカロロ(十代のニナ)、イニィゴ・アランブル(ブラス)、エネコ・グティエレス(青年ブラス)、ラモン・アギーレ(エステバン)、シルビア・デ・ペ(ヌリア)、カルロス・サバラ(ニナの父)、他多数
ストーリー:ニナは散弾銃を忍ばせたバッグを携えて、ペドロへの復讐を果たすために30年ぶりに海辺の故郷に戻る決心をする。今では著名な作家となり、町は彼に名誉を捧げている。
*「Ana de día」の作品紹介、監督キャリア紹介は、コチラ⇒2019年01月08日

(帰郷したニナ役パトリシア・ロペス・アルナイス、フレームから)

★ソニア・エスコラノ(アリカンテ1980)とベレン・ロペス・アルベルト(バルセロナ1975)の「Norberta」は、共同監督作品、脚本ソニア・エスコラノ、脚本家ベレン・ロペス・アルベルトの監督デビュー作、ファミリーシネマ、コメディ、89分。スペイン公開2024年7月25日
キャスト:ルイス・ベルメホ(ノルベルト)、アドリアナ・オソレス(マリア)、マリオナ・テレス(ナタリア)、マリア・ロマニーリョス(パウラ)、カルメン・バラゲ(テレ)、アデルファ・カルボ(ペパ)、他多数
ストーリー:ノルベルトはマリアと共に人生を過ごしてきた。数十年前からの隣人とつつましいバリオで暮らしている。しかし二人には皆に知られていない或る秘密があったのです。それは時々強盗を働くことでした。ノルベルタになるためにはノルベルトをやめなければならない。ノルベルトは生き生きとし、自由になり、自分らしくなるために、方向転換をする必要があった。ある思いがけない告白が、その後の彼の人生を危険に晒すことになるだろう。背景にLGTBiQ+が語られる。

(ルイス・ベルメホ、アドリアナ・オソレス、フレームから)

(女装してノルベルタになったノルベルトを配している)
★マルク・フェレル(バルセロナ1984)は監督、脚本家、俳優。新作「Reír, cantar,tal vez llorar / To Laugh,To Sing,Perhaps To Cry」は、彼の作品の多くが上映されているD’AバルセロナFFで4月にプレミアされている。ジャンルはロマンチック・コメディ、ミュージカル、テーマはトランスジェンダー、移民など、75分。
代表作は「¡ Corten !」(21)でトゥールーズ・シネエスパーニャの観客賞、マドリードLGBT映画祭の観客賞を受賞、フェロス賞2022フィクション部門のフェロス感動賞にノミネートされた。
キャスト:トニ・バルガス(トニ)、ラーセン・ウーチャド(ラーセン)、サンドラ・ソロ、マリア・ソラ、マダム・ヒロシマ、フリア・ベルトラン、ペレ・ヴァル、アサハラ・モヤノ、エドゥアルド・ギオン、サラ・ラモス、ジョルディ・ロドリゲス(ルイス)、その他多数
ストーリー:トニは中年になってからトランス女性になった。恋人に巡り合える奇跡を教会で祈っている。そんな折も折、バルセロナに到着したばかりの若くてハンサムなモロッコ移民のラーセンが、トニの人生に出現する。二人の関係は羨望と不信に駆られた、コミュニティの隣人たちのスキャンダルとなるだろう。



(ソニア・エスコラノ、ベレン・L・アルベルト、マルク・フェレル、アンドレア・ハウリエタ)
★セリア・リコ・クラベリーノ(セビーリャ1982)は、監督、脚本家、製作者、女優。マラガFFの審査員特別賞とアドリアナ・オソレスが助演女優賞を受賞した。オソレスはベルメホと上記の「Norberta」で共演している。新作「Los pequeños amores / Little Loves」(フランスとの合作)は長編2作目、デビュー作「Viaje al cuarto de una madre」(18)は、SSIFFニューディレクターズ部門のユース賞、審査員クチャバンク賞スペシャルメンション他を受賞している。翌年のゴヤ賞に新人監督枠でノミネートされた。新作も母親と娘の親子関係の難しさを描いている。ブエノスアイレス・インディペンデントFFに出品された。
キャスト:アドリアナ・オソレス(アニ)、マリア・バスケス(娘テレサ)、ミゲル・アンヘル・ゴンサレス(ラモン)、アイマル・ベガ(ホナス)、他多数
ストーリー:テレサは、犬の散歩中に転倒し車椅子になった母親を世話するため、夏休暇の計画を変更することになった。母と娘はかつてなかったような息の詰まるような夏を過ごすことになるだろう。長い年月を経て昼も夜も一緒に過ごすことは簡単なことではなかった。一人暮らしに慣れた二人にとって、日常生活の些細なことにも緊張が走ります。しかしながら、強制された同居とはいえ期待以上の変化があり、夏の夜、テレサは母親の傍にいることで明示的な瞬間を生きることになる。牧歌的な田園地帯を舞台に母娘に巻き起こる世代間の違いが浮き彫りになる。
*「Viaje al cuarto de una madre」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2019年01月06日



(セリア・リコ・クラベリーノ)
メイド・イン・スペイン部門オープニング作品*サンセバスチャン映画祭2024 ㉑ ― 2024年09月15日 13:37
夭折の作家ルイス・マルティン=サントスを巡る旅

★メイド・イン・スペイン部門のオープニング作品に選ばれたジョアン・ロペス=リョレトの「Tiempo de silencio y destrucción」は、夭折の作家で高名な精神科医、政治活動家でもあったルイス・マルティン=サントス(1924~64)の人生と作品を巡るドキュメンタリー。今年が生誕100周年、死後60年に当たる。映画のタイトルは、1961年、多かれ少なかれ検閲を受けながらもセイクス・バラル社から出版された小説 ”Tiempo de silencio” と交通事故による急死で未完に終わった遺作 “Tiempo de destrucción” (1975刊)から採られている。

(ルイス・マルティン=サントス)
「Tiempo de silencio y destrucción」
製作:Imposible Films
監督:ジョアン・ロペス=リョレト
脚本:ジョアン・ロペス=リョレト、ヌリア・ビダル
撮影:ジョアン・ロペス=リョレト
編集:ルぺ・ぺレス・ガルシア、メリ・コリャソス・ソラ
音楽:ロジャー・パスト
録音:ロジャー・ソレ、ビクトル・トルト
製作者:マルタ・エステバン・ロカ
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、ドキュメンタリー、60分、撮影2023年、配給フィルマックスFilmax
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭メイド・イン・スペイン部門オープニング作品
キャスト:ルイス・マルティン=サントス・リベラの長男ルイス・マルティン=サントス・ラフォン、同長女ロシオ
解説:1964年1月21日、小説 ”Tiempo de silencio” の著者ルイス・マルティン=サントスは、マドリードからの帰途、バスク自治州のビトリアで悲劇的な交通事故で亡くなりました。事故から60年、生誕100周年を迎えるにあたり、私たちは作家の子供たちルイスとロシオを追って、作家で高名な精神科医、彼を変えた作品の背後にいる人物を再構築するための航海に出ます。マルティン=サントスの人物像、戦後スペインに対する彼独特の視点、部分的に未発表のテキストに基づいて長いあいだ隠されてきた作品を巡る旅になります。

(コロナ・パンデミック中に資料収集をしたルイスとロシオ)
ルイス・マルティン=サントスの ”Tiempo de silencio” はどんな小説?
★ルイス・マルティン=サントス生誕100周年を記念して今年行われる活動の一つは、一部未発表の原稿を含む作品の再発行(全集6巻)、中国語への翻訳、今回オープニング作品に選ばれることになったドキュメンタリー製作、スペイン国立図書館での展覧会などである。作家の長男ルイス・マルティン=サントス・ラフォンによると、全集には「文学の分野だけでなく、精神医学の研究、後に民主主義に繋がる反フランコ主義への政治観」が含まれる。フランコ没後の1980年に出版された16版が決定版。
★ルイス・マルティン=サントス・リベラは、1924年11月11日、当時モロッコのスペイン保護領だったララシュで生まれた。1929年軍人だった父親の次の赴任地サンセバスティアンに移った。医学はサラマンカで学び、1946年卒業、1949年マドリードで博士号取得、1950年ドイツ留学、翌年サンセバスティアン精神療養所の院長に就任、1953年ロシオ・ラフォンと結婚、3児に恵まれた。反フランコ主義への政治観により、1956年3月パンプローナ、1958年11月にマドリードで逮捕され、カラバンチェル刑務所に収監されている。
★1964年1月20日午後、マドリードからサンセバスティアンに向かう途中、ビトリア近郊でトラックに衝突、翌日運び込まれた病院での手術中に亡くなった。前年嗅覚障害のあった妻ロシオ・ラフォンがガス漏れに気づかず33歳の若さで亡くなっており、後にはロシオ、ルイス、フアン・ペドロの3人の子供が残された。当時5歳だったというルイスには父親についての記憶は少ないが、コロナ感染のパンデミック中にさまざまな場所を旅してきた箱を開け、保存されていた多くの未発表の原稿を通じて、父親が「非常に活動的で創造的な多才な人であったことを再確認した」と語っている。家庭内ではとても楽しい人で、ユーモアのセンスのある人だったことを強調している。

(在りし日のマルティン=サントス一家)
★1961年に初めて出版された ”Tiempo de silencio” は、20世紀のスペイン文学の流れを変えたと称される小説。作家のエンリケ・ビラ=マタス(バルセロナ1948)によるプロローグが付された記念版が刊行された。「戦後の道徳的悲惨さを偉大な才能で描いた」作家の作品と称される。
★スペイン内戦語の1949年のマドリードが舞台、若い医学研究者ペドロは、鼠径部腫瘍を発症する系統のマウスが枯渇したことで癌研究が中断されるのを目の当たりにする。研究室の助手アマドールがマウスの標本を親戚のムエカスと呼ばれる犯罪者に渡しており、彼が郊外の掘っ立て小屋で繁殖させていることを知る。ペドロは首都の裏社会に接触したことで地獄への門をくぐることになる。これは小説の導入部を述べただけで、その後の展開は複雑で、ジェイムズ・ジョイスが開拓した「意識の流れ」の影響を受けている。内なるモノローグ、時間と物語の声、自由な間接的なスタイルと、当時の写実主義的な言語を刷新したと評価されている。1986年、ビセンテ・アランダが導入部を切りとって映画化したが、評価は毀誉褒貶入り混じっている。ペドロにイマノル・アリアス、ムエカスにパコ・ラバル、ビクトリア・アブリル、チャロ・ロペスなど人気俳優が共演している。
★監督紹介:ジョアン・ロペス=リョレトは、1969年バルセロナ生れ、ドキュメンタリー作家、脚本家、撮影監督。現在のESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で撮影監督、1988年から2年間CEEC(カタルーニャ映画研究センター)で映画監督を学び、テレビ、映画、広告業界で働いている。2004年、リサイクル素材で操り人形や器械器具の世界を作り出した2人のアーティストの秘密の世界を描いた長編ドキュメンタリー「Hermanos Oligor」でマラガ映画祭2005観客賞、バルセロナ・ドクポリスFFの作品賞、観客賞他を受賞、その名を世界に馳せました。

(デビュー作「Hermanos Oligor」から)
★翌年、ニカラグア革命の夢を従属的な声で解体した「Utopia 79」(06)、北アイルランドの和平プロセスにおける2人の前科者の物語「Sunday at Five」(07)、マジョルカ出身の歌手マリア・デル・マル・ボネットの生涯を描いた「Maria del Mar」(18)、「Familia, no nuclear」(19)など、忘れられがちな人物に声を与えている。

(ジョアン・ロペス=リョレト)
メイド・イン・スペイン部門クロージング作品*サンセバスチャン映画祭2024 ㉒ ― 2024年09月17日 17:16
1975年2月4日、マドリードの全劇場の幕は揚がらなかった!

★メイド・イン・スペイン部門のクロージング作品、アルバ・ソトラのドキュメンタリー「Mucha mierda / Break a Leg」は、フランコ政権下末期の1975年2月4日に、スペインの俳優たちが初めてストライキに立ち上がった闘いの記録です。ストライキ参加者へのインタビュー、アーカイブ、映画の抜粋を織り交ぜ9日間の闘いが語られる。来る2025年は50周年記念の年、8名の逮捕者を出した2月8日は、奇しくも第39回ゴヤ賞2025の授賞式に当たる。フランコ将軍が七転八倒のすえ他界したのは、同じ年の11月20日の明け方でした。
「Mucha mierda / Break a Leg」
製作:David Lara Films / Quexito Films / 協賛ICAA 参画マドリード市議会、
モビスター+、RTVE
監督:アルバ・ソトラ
脚本:アルバ・ソトラ、ダビ・アルナンス
撮影:イレネ・ガルシア・マルティネス
編集:エレナ・カストロビエホ
音楽:フェルナンド・バカス・ナバロ
録音:フリアン・バケラ
製作者:ダビ・ララ、ミゲル・ゴンサレス、ファミリアル・ヒメネス・アバド、(エグゼクティブ)モンセラット・サンチェス
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、ドキュメンタリー、84分
映画祭・受賞歴:SSIFF2024メイド・イン・スペイン部門クロージング作品
キャスト:アナ・ベレン、ティナ・サインス、ホセ・サクリスタン、マヌエラ・ベラスコ、マリサ・パレデス、カロリナ・ジュステ、ペトラ・マルティネス、フアン・マルガーリョ、ロシオ・ドゥカル、フアン・ディエゴ
解説:1975年2月4日、マドリードのどの劇場でも幕が揚がりませんでした。ドアに貼られたポスターには「俳優が出演しないため公演は中止」と書かれていました。この日は俳優による歴史的なストライキの初日で、以来9日間国内は活動が麻痺状態になりました。彼らの要求は「法律で定められている通り、週1日の休日」というものでした。サラ・モンティエルやロラ・フロレスがストライキを支持すると、労働者の権利の要求で始まったものが、政治的挑発に変化した。報道規制にもかかわらず、このニュースは世界中に広まり、彼らは80ヵ国以上から支援の電報を受け取った。政治社会担当部署の担当者がストライキ参加者のあいだに潜入し首謀者をあぶり出し、固い団結を粉砕した。2月8日に逮捕された8人のなかには、ティナ・サインス、ロシオ・ドゥカルが含まれている。他に最前線でキャリアや自由を危険にさらした参加者には、コンチャ・ベラスコ、アナ・ベレン、フアン・ディエゴ、ホセ・サクリスタンなどがいた。本作は今まで語られることのなかった、主人公たちによって語られた物語です。勿論検閲などありません。

(アナ・ベレン)
★高い代償を払ったキャストのなかにはフアン・ディエゴ(2022年4月没)のように鬼籍入りしてしまった俳優も多い。左派の政治活動で知られる彼は、この俳優ストライキの組織化に主導的な役割を果たしている。反対にコンチャ・ベラスコの姪マヌエラ・ベラスコ(1975生れ)のようにまだ産声を上げていなかった人もいる。コンチャは2023年12月に10年前から闘っていたリンパ腫で亡くなったが、女優として2013年にゴヤ栄誉賞を受賞した人らしく最後まで現役に拘った女優でした。ゴヤ賞2022栄誉賞の受賞者ホセ・サクリスタンは86歳になっても現役を続けている。ペトラ・マルティネス、フアン・マルガーリョは夫婦揃って出演、ペトラ・マルティネスはマリサ・パレデスと一緒に本作紹介のため現地入りがアナウンスされている。

(マリサ・パレデス)

(ペトラ・マルティネス)
★監督紹介:アルバ・ソトラ(カタルーニャ州タラゴナ県レウス1980)は、監督、脚本家、製作者。ドキュメンタリー「Game Over」がマラガ映画祭2015ドキュメンタリー賞、ドクスバルセロナでニュータレント賞、ガウディ賞2016ドキュメンタリー賞などを受賞、「The Return: Life After ISIS」(21)は、10代でイスラム国に入った女性たちが、その後自国への帰還を希望するが、故国は彼女たちを拒絶する背景を語るドキュメンタリー、ワルシャワFFドキュメンタリー賞、ドクスバルセロナ観客賞ほか、ガウディ賞2022受賞、ゴヤ賞2022はノミネートに終わった。製作者としては、当ブログ紹介のアレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケスのヒット作「Upon Entry」(22)、カルラ・スビラナの「Sica」(23)などを手掛けている。

(アルバ・ソトラ監督)
★本作について監督は、「ストライキがどのように捏造されたか、警察の監視、政権の暴力的な反応、ストライキの国際的側面、抵抗勢力に供給された資金の出所を伝えます」。また「女性のリーダーシップ、刑務所と過酷な報復についても語ります」とインタビューに応えている。労働者と雇用主が同じ組合に所属しており、俳優たちは劇場オーナーの言いなりにならざるを得なかった。「この闘いの遺産は生き残っていますが、もっとも重要なことは、何年も仕事が貰えなかった人もいたということで、今日でもそれは尾を引いている」と監督。

(問題作「The Return: Life After ISIS」のポスター)
*「Upon Entry」の作品紹介は、コチラ⇒2023年07月01日
*「Sica」の作品紹介は、コチラ⇒2023年03月12日
コンペティション部門のクロージング作*サンセバスチャン映画祭2024 ㉓ ― 2024年09月19日 11:02
ジョン・クローリーの「We Live in Time」はロマンチック・ドラマ

★9月2日、遅れていたセクション・オフィシアルのクロージング作品の発表がありました。アイルランドの監督ジョン・クローリーの「We Live in Time」でアウト・オブ・コンペティションの映画です。既にトロント映画祭2024でプレミアされております。サンセバスチャン映画祭には、主役トビアスを演じるアンドリュー・ガーフィールドの現地入りがアナウンスされています。映画祭最終日の9月28日(土)にメイン会場のクルサールでスペイン語字幕、バスク語電子版字幕入りで上映されます。

(左から、アンドリュー・ガーフィールド、フローレンス・ピュー、監督、トロントFF 9月6日)

「We Live in Time / Vivir el momento」
製作:StudioCanal / Film4 / SunnyMarch
監督:ジョン・クローリー
脚本:ニック・ペイン
撮影:スチュアート・ベントレ
編集:ジャスティン・ライト
音楽:ブライス・デスナー
録音:アーサー・グレイリー
製作者:アダム・アクランド、リア・クラーク、ガイ・ヒーリー、(エグゼクティブ)ベネディクト・カンバーバッチ、他多数
データ:製作国イギリス=フランス、2024年、英語、ドラマ、107分、撮影地ロンドン、公開2024年ポルトガル、アイスランド、米国、ギリシャ、イタリア、ルーマニア、メキシコ他、2025年スペイン、アイルランド、イギリス、ドイツ、フランス(インターネット)、他
映画祭・受賞歴:トロント映画祭2024、サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル部門クロージング、リオデジャネイロ映画祭(10月)、BFIロンドン映画祭(10月)
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド(トビアス)、フローレンス・ピュー(アルムート)、グレース・デラニー(エラ)、イーファー・ハインズ(スカイ)、グレース・モロニ―(看護師)、リー・ブレイスウェイト(ジャッドJade)、アダム・ジェームズ(サイモン・マクソン)他多数
ストーリー:アルムートとトビアスは二人の人生を変えてしまう思いがけない出遭いをします。たちまち恋に落ち、家を建て、家族になる。一緒に過ごした人生の思い出を通じて、土台を揺るがす恐れのある困難な真実が明らかになる。時間の限界に立ち向かおうとする道を選ぶにつれて、二人は10年にわたる深く胸を打つラブストーリーが辿った尋常でない行程の一瞬一瞬を大切にすることを学ぶことになる。

(家族になったトビアスとアルムート)
キャッチコピーは「1分Ⅰ秒が大切」――ロマンチック・ドラマ
★新進気鋭のシェフと最近離婚したばかりのシェフが偶然の出遭いをして家族になる。偶然の出遭いとは、アルムートがトビアスを誤って車で轢いてしまって知り合うことらしい。10年間の深く感動的なロマンスが語られるのだが、二人に困難が訪れる。限りある時間を彼らはどう過ごすのだろうか。
★キャスト紹介:アルムートに『ドント・ウォーリー・ダーリン』、セバスティアン・レリオのサイコスリラー『聖なる証』の英国人看護師、クリスファー・ノーランの『オッペンハイマー』に出演したフローレンス・ピューが扮する。『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』で、オスカーの助演女優賞にノミネートされている。トビアスにはジョン・クローリーの『BOY A』、『アメイジング・スパイダーマン』、『Tick, tick...BOOM: チック、チック・・ブーン』(21)でオスカーの主演男優賞にノミネートされたアンドリュー・ガーフィールドが扮する。2人の娘になる可愛らしい子役が人気となっている。

★監督紹介:ジョン・クローリーは、1969年アイルランド南部、ダブリンに継ぐ第二の都市コーク生れ。ユニバーシティ・カレッジ・コークで文学(学士号)と哲学(学士号と修士号)を取得している。シカゴのグッドマン・シアターで4か月間のインターンシップに就いている。上記のように『BOY A』(07)にガーフィールドを起用している。同名小説の映画化『ブルックリン』(15、アイルランド・イギリス・カナダ合作)、批評家の評価が芳しくなかった『ザ・ゴールドフィンチ』(19、米)が公開されている。
*『聖なる証』(原題「The Wonder」)の紹介記事は、コチラ⇒2022年08月06日
全セクションの審査員発表*サンセバスチャン映画祭2024 ㉔ ― 2024年09月21日 18:23
金貝賞を競うコンペティション部門の審査委員長はハイオネ・カンボルダ

★開幕3日前の9月17日、全セクションの審査員団が一挙に発表になりました。映画祭は既に開幕してしまいましたが、一応セクション・オフィシアル(コンペティション・金貝賞)と、オリソンテス・ラティノス部門(オリソンテス賞)の審査員メンバーをアップしておきます。
◎セクション・オフィシアル(6名)
*審査委員長:ハイオネ・カンボルダ(スペインの監督、脚本家、アートディレクター、1983年サンセバスティアン生れ)、SSIFF2023にノミネートされたガリシア語で撮った「O Corno / The Rye Horn」(『ライ麦のツノ』)が金貝賞を受賞している。
紹介記事は、コチラ⇒2023年07月17日
*審査員:レイラ・ゲリエロ(アルゼンチンの作家、ジャーナリスト)、軍事独裁政権下の1976年にモントロネス組織の一員だったため誘拐され2年間に渡って拷問を受けた女性シルビア・ラバイルにインタビューして、4月に ”La llamada, un retrato” を上梓して話題になっている。
*審査員:フラン・クランツ(米国の俳優、監督、1981年ロサンゼルス生まれ)、監督デビュー作「Mass」がサンダンス映画祭でプレミアされ、SSIFF2021ではユース賞を受賞、2023年『対峙』の邦題で劇場公開されている。俳優としてはテレドラ『ドールハウス』他に出演している。
*審査員:クリストス・ニク(ギリシャの監督、脚本家、製作者、1984年アテネ生れ)、代表作『フィンガーネイルズ』(23、AppleTV+で配信)、長編デビュー作『林檎とポラロイド』(20)が劇場公開されている。
*審査員:キャロル・スコッタ(フランスの製作者、1966年リオン生れ)、1992年、独立系の制作会社「Haut et Courtオー・エ・クール」設立、2008年、ローラン・カンテが監督した『パリ20区、僕たちのクラス』がパルムドールを受賞している。ほか国際映画祭での受賞歴多数。
*同審査員:ウルリヒ・ザイドル(オーストリアの監督、脚本家、製作者、1956年ウィーン生れ)、SSIFF2022セクション・オフィシアルに「Sparta」がノミネートされている。
紹介記事は、コチラ⇒2022年08月14日

◎オリソンテス・ラティノス部門(3名)
*審査委員長:フェルナンド・フアン・リマ(アルゼンチンの映画批評家、ブエノスアイレス生れ)、アルゼンチン映画アカデミー会長、2017年INCAAの副会長、2020から4年間マル・デ・プラタ映画祭会長を務めていた。「クラリン」紙ほかで映画批評を執筆している。テレビ司会者でもあり、アメリカのゴールデングローブ賞のメンバーでもある。
*審査員:ペドロ・エルナンデス・サントス(スペインの製作者)、アントニオ・メンデス・エスパルサの『ヒア・アンド・モア』、『ライフ・アンド・ナッシング・モア』、カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』、『マンティコア』、最近ソニア・メンデスの「As Neves」などを手掛けている。当ブログ作品紹介の常連プロデューサーの一人。
*審査員:バレンティナ・モーレル(コスタリカの監督)SSIFF2022ノミネートの「Tengo sueños eléctricos」がオリソンテス賞を受賞している。
紹介記事は、コチラ⇒2022年08月25日

追加情報:9月20日、開幕式にカンボルダ以下の審査員全員の紹介がありました。

(レッドカーペットに勢揃いした審査員たち)

(ハイオネ・カンボルダ審査委員長)

(登壇した審査員全員)
ハビエル・バルデムのドノスティア栄誉賞授与式*サンセバスチャン映画祭2024 ㉕ ― 2024年09月23日 17:43
ハビエル・バルデム――1年遅れのドノスティア栄誉賞授与式

★9月20日、第72回サンセバスチャン映画祭が開幕しました。進行役の司会者はスペインを代表するコメディアン、アンドレウ・ブエナフエンテとベルト・ロメロのご両人、昨年ベロドロモ部門で上映されたTVシリーズ「El otro lado」(6話)の共演者、登壇早々舌戦をたたかわせて会場を沸かせました。もう一人がバスク出身の女優バルバラ・ゴエナガが、ユーモアに満ちた援護射撃でプレゼンターのミッションを果たしました。

(進行役のベルト・ロメロ、アンドレウ・ブエナフエンテ、バルバラ・ゴエナガ)
★セレモニーには昨年のドノスティア栄誉賞受賞者の一人、ハビエル・バルデムへの1年遅れの授与式、ヨルゴス・ランティモスの『哀れなるものたち』の国際映画批評家連盟賞FIPRESCI 2024 の授与式、スペインのウォルト・ディズニー・スタジオの総ディレクターマヌエル・ムロが登壇して、ブラジルの批評家エラ・ビッテンコートからトロフィーを受け取りました。またセクション・オフィシアルの審査委員長ハイオネ・カンボルダ以下審査員紹介、オープニング作品、フランスのオドレイ・ディヴァンの新作「Emmanuelle」の出演者ノエミ・メルラン、ウィル・シャープ、チャチャ・ホアン、ジェイミー・キャンベル・バウアーなどの紹介、上映などがありました。
★スペイン7人目となるドノスティア栄誉賞2023の受賞者ハビエル・バルデムの登壇は、拍手と歓声が鳴りやみませんでした。キャリア&フィルモグラフィー紹介は既に昨年アップ済みですが、背後のスクリーンに次々に映し出される『ハモンハモン』、『ペルディーダ』、『ライブ・フレッシュ』、『月曜日にひなたぼっこ』『海を飛ぶ夢』、『ノーカントリ―』、『007スカイフォール』、『ラビング・パブロ』、「El buen Patrón」エトセトラに、貰うのが遅すぎたのではないかと思うほどでした。
*ハビエル・バルデムのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年06月09日

(祝福する姉モニカ、兄カルロスとバルデム3姉弟)
★彼の本祭での受賞歴は、1994年にイマノル・ウリベの『時間切れの愛』とゴンサロ・スアレスの「El detective y la muerte」の2作により銀貝男優賞を受賞しただけで、これは大方の予想を裏切るサプライズ受賞でした。マリサ・パレデスからトロフィーを受け取ったまま「ありがとう」以外感涙でスピーチができず、そのまま会場の歓声に見送られて退場してしまったのでした。この前代未聞の映像が今夜も流れて、会場の拍手喝采を浴びていました。
★登壇したときから涙だった女優の姉モニカ・バルデム、作家で俳優の兄カルロス・バルデム、そしてプレゼンターは、受賞者の演技指導の師フアン・カルロス・コラッツァでした。1959年アルゼンチンのコルドバ出身の演出家兼演技指導者、1990年にスペインのアンダルシア演劇センターに招かれて来西、マドリードに演劇学校を設立、以来スペインで活動している。本校の優等生の一人バルデムに「ハビエル、芸術は社会を豊かにするために不可欠という信念をもって、芸術の壊れやすく神秘的な思潮への君の献身に、ありがとう」と断言しました。

(フアン・カルロス・コラッツァ、ハビエル)
★俳優の仕事は「真実と誠実さに関係がある」と教えてくれた恩師に感謝し、自分を見いだしてくれた今は亡きビガス・ルナ監督と女優だった母親ピラール・バルデムに、最後に会場にいる妻ペネロペ・クルス、二人の子供たちレオとルナにトロフィーを捧げました。姉弟3人抱き合って涙ナミダの退場でした。


(涙が止まらないペネロペ・クルス)
★以下、9月20日オープニング当日のフォト集

(FIPRESCI賞、マヌエル・ムロとエラ・ビッテンコート)

(コンペティション部門の審査委員長カンボツダ以下審査員、右から3人目が監督)

(開幕作品「Emmanuelle」のオドレイ・ディヴァン監督以下出演者たち
左から2人目が監督、レッドカーペットでのフォトコール)

(現地入りしたハビエル・バルデム)

(恒例のサインをするバルデム)

(ペネロペ・クルスと赤絨毯に登場したバルデム)
ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉖ ― 2024年09月25日 17:59
ブランシェットにドノスティア栄誉賞―プレゼンターはアルフォンソ・キュアロン

★9月21日、ドノスティア栄誉賞2024の受賞者ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞の授与式がクルサール・ホールでありました。プレゼンターは、イギリスと米国の合作のTVミニシリーズ「Disclaimer」(24、7話)でタッグを組んだメキシコのアルフォンソ・キュアロン(クアロン)、受賞者の「厳格さと卓越した演技」を称賛しました。

(ハグしあうケイト・ブランシェットとアルフォンソ・キュアロン)
★ケイト・ブランシェット(メルボルン1969)は、紹介するまでもなくオーストラリアを代表するオスカー女優、主演女優賞(『ブルージャスミン』13)と助演女優賞(『アビエイター』04)と受賞、ノミネートは主演した『エリザベス』(98)、『エリザベス ゴールデン・エイジ』(07)、『キャロル』(15)、『TAR ター』(22)など4回、助演も含めると合計6回、IMDbによると合計218賞、288ノミネートとあり、今後も増え続けるでしょう。2022年から始まった国際ゴヤ賞の第1回受賞者でもあり、因みにプレゼンターはペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルスでした。アルモドバルも今回のドノスティア栄誉賞二人目の受賞者、授与式は26日の予定です。
*ブランシェットの国際ゴヤ賞受賞の記事は、コチラ⇒2022年02月13日
★「海外で仕事をするオーストラリアの女性として、多くの国境を越えて世界中を旅するという光栄に浴してきました。そして文化的、映画的な国境も超えた、この素晴らしく活気に満ちたバスクの映画祭で、この賞を受け取るのは名誉なことです」と感謝した。キュアロン監督のプレゼンに感謝し、自分を多くの場所に運んでいったキャリアは、折衷的で奇妙なものだと分析した。ただ共通するのは「知りたいという願望」であり、人間であることが何を意味するのか知りたいということです。私たちのようにものを作るのが仕事である場合、疑問や不確実性は付きまといます。謙虚に認めねばなりません。「私は知りません、だから学びに来ました」と言わねばなりません。性急に答えを見つけることには反対です。知らないことが私の一部になり、少しずつ理解が始まります。「知りたいという欲求」で旅は続きます。

(受賞スピーチをするケイト・ブランシェット)
ケイトを泣かせたジョージ・クルーニー、ビデオ祝辞はサプライズ!?
★ビデオ出演でヴェネチアから祝福を送ったのは、友人で共演者でもあったジョージ・クルーニーでした。「私はあなたを監督し、共演する幸運に恵まれました。周りの人たち皆に幸せをもたらしました。私はあなたの友人であることを誇りに思います」と。さらに演技を芸術レベルに高めたパフォーマーの一人だと称賛、マーロン・ブランド、キャサリン・ヘプバーン、モンゴメリー・クリフト、ジャック・ニコルソン、かつてのドノスティア栄誉賞受賞者でもあるメリル・ストリープとロバート・デ・ニーロの名前を挙げ、「ケイト、あなたもその一員になりました」と語りました。「私もそこへ行きたかったのですが行けません。今、ヴェネチアにいて飲んでいます。おまけにズボンを履いていません。しかし、もしズボンを履いてヴェネチアで飲んでなかったら、そこで一緒に乾杯したでしょう」とユーモアたっぷりに称賛した。涙で目張りが崩れるのを気にしながら「ファッキング・ジョージ!」とやっと一言お返ししました。


(ズボンを着用していないクルーニーの祝賀ビデオに涙するブランシェット)
★授与式の司会を務めたのは女優のマルタ・エトゥラでした。「卓越性とリスクに取りくむ」演技者、「メッセージを持った、強い女性で献身的な複雑なキャラクターに命を吹き込んだ」と称賛した。またフェミニズム、移民問題、母国オーストラリアの先住民に関連したプロジェクトの演出&製作を手掛けていることを強調した。米アカデミー以下の3桁に及ぶ受賞歴の紹介、多くの監督に愛され、例えばマーティン・スコセッシ、テレンス・マリック、スティーブン・ソダーバーグ、リドリー・スコット、サリー・ポッター、ウディ・アレン他を次々に列挙して、女優の幅広い活躍を称揚した。

(受賞者を称賛するマルタ・エトゥラ)
★ガラの後、ブランシェットの最新作となるコメディ・ホラー「Rumours」(24、カナダ=独=米合作)が上映された。カナダのガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ゲイレン・ジョンソンのトリオが監督している。カンヌ映画祭2024でプレミアされ、映画祭巡りをしている。

(中央がケイト・ブランシェット、ポスター)
★ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞関連のフォト集

(現地入りしたケイト・ブランシェット、出迎えた総ディレクター)

(恒例のサインをする)

(ファンサービスも怠りなく・・・)

(アルフォンソ・キュアロンとのツーショット)
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