第72回サンセバスチャン映画祭2024*ポスター発表 ① ― 2024年07月01日 16:00
映画祭の顔にドノスティア栄誉賞受賞者ケイト・ブランシェット

★まだ大分先の話になりますが、今年の第72回サンセバスチャン映画祭(9月20日~28日)の顔にケイト・ブランシェットが選ばれ、同時にドノスティア栄誉賞を受賞します。昨年、全米脚本家組合と俳優組合のストライキに賛同して授与式を2024年に延期していたハビエル・バルデムも今年は現れるはずです。
*ハビエル・バルデムの栄誉賞授与式延期の記事は、コチラ⇒2023年09月14日
★ケイト・ブランシェットをあしらったセクション・オフィシアル(コンペティション部門)のメインポスター以下、各セクションのポスターも一挙に発表になりました(5月9日)。ノミネートは先になりますが、コンペティション部門のオープニング作品が、レバノン出身のフランスの監督オドレイ・ディヴァンの「Emmanuelle」に決定しています。エマニュエル・カルサン(1932~2005)の同名小説の映画化、1974年にジュスト・ジャカンによって映画化され世界的な大ヒットとなった。同年『エマニエル夫人』の邦題で公開され、昨2023年暮には製作50周年を記念して4Kレストア版をリバイバル公開している。

(オドレイ・ディヴァン、ベネチア映画祭2021ガラ)
★オドレイ・ディヴァン(ディワン、1980)は、「L’Evénement / Happening」で第78回ベネチア映画祭2021の金獅子賞を受賞した注目の監督、受賞作は翌年『あのこと』の邦題で公開されている。アニー・エルノーの同名小説の映画化、翻訳書も刊行されている(『事件』ハヤカワ文庫)。一方、新作は最初主役のエマニュエルにレア・セドゥがアナウンスされていたが、その後『燃ゆる女の肖像』のノエミ・メルランに変わり、ナオミ・ワッツ、ウィル・シャープ、ジェイミー・キャンベル・バウアーなどが共演している。
*ベネチア映画祭2021金獅子賞の記事は、コチラ⇒2021年09月15日
★第72回サンセバスチャン映画祭2024の主なポスターをアップしておきます。

(コンペ部門のポスターをお披露目するホセ・ルイス・レボルディノス総ディレクター)

(今年の映画祭の顔ケイト・ブランシェットをあしらったセクション・オフィシアル)

(オリソンテス・ラティノス部門)

(サバルテギ-タバカレア部門、アニメ、ドキュメンタリーなどジャンルを問わない)

(ペルラス部門、本祭以外の今年度の受賞作や話題作)

(ニューディレクター部門)

(ネスト部門、30分以内の短編)

(メイド・イン・スペイン部門、既に公開されているスペインの話題作)
ミシェル・フランコの最新作「Memory」*ベネチア映画祭2023 ― 2024年07月08日 11:24
ジェシカ・チャステイン主演の傷ついたラブストーリー「Memory」

★昨年の第80回ベネチア映画祭2023の記事など今更の感無きにしも非ずですが、メキシコの監督ミシェル・フランコの長編8作目「Memory」の紹介です。主演がジェシカ・チャステインとピーター・サースガードということですから言語は英語です。若年性認知症を患っている主人公を演じたサースガードがベネチアの男優賞ヴォルピ杯を受賞しています。ベネチアにはサースガードと結婚した女優で2021年に『ロスト・ドーター』で監督デビューも果たしたマギー・ジレンホール(英語読みギレンホール)も出席していた。

(左から、ミシェル・フランコ監督、ジェシカ・チャステイン、
ピーター・サースガード、ベネチア映画祭2023フォトコール)
★第77回ベネチア映画祭2020で銀獅子審査員グランプリ受賞の「Nuevo orden」(20、『ニューオーダー』公開)以来、フランコ映画は記事にしておりませんでした。翌2021年、同じベネチアFFにノミネートされた7作目「Sundown」(メキシコ・スイス・スウェーデン)は、舞台をメキシコのアカプルコに設定していますが、キャストはティム・ロスとシャルロット・ゲンズブール、言語は英語とスペイン語でした。メキシコのイアスア・ラリオスがベレニス役で共演していました。ラリオスは最近発表になったアリエル賞2024で最多ノミネーション15部門のリラ・アビレスの「Tótem」に出演している演技派女優、TVシリーズ出演が多そうで受賞歴はありませんが、ポストプロダクションで主役に起用されている映画が目白押しで将来が楽しみです。
*6作目『ニューオーダー』(20)の紹介記事は、コチラ⇒2022年06月13日
*「Tótem」(23)の作品紹介は、コチラ⇒2023年08月31日
★ミシェル・フランコ(メキシコシティ1979)の主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、以下にアップしております。監督にとどまらず制作会社「Teoréma」を設立して、プロデューサーとしてラテンアメリカ諸国(ロレンソ・ビガスの『彼方から』『箱』など)や独立系の米国映画(ソフィア・コッポラの『オン・ザ・ロック』など)に出資して映画産業の発展に寄与しています。
*4作目『ある終焉』(16)は、コチラ⇒2016年06月15日/同月18日
*5作目『母という名の女』(17)は、コチラ⇒2017年05月08日
「Memory」
製作:High Frequency Entertainment / Teoréma / Case Study Films / MUBI /
Screen Capital / The Match Factory
監督・脚本:ミシェル・フランコ
撮影:イヴ・カペ
編集:オスカル・フィゲロア、ミシェル・フランコ
キャスティング:スーザン・ショップメーカー
プロダクションデザイン:クラウディオ・ラミレス・カステリ
製作者:エレンディラ・ヌニェス・ラリオス、ミシェル・フランコ、ダンカン・モンゴメリー、アレックス・オルロフスキー
データ:製作国メキシコ、米国、2023年、英語、ドラマ、103分、撮影地ニューヨーク、公開米国、イギリス、アイルランド、イタリア、トルコ、ポーランド、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル、デンマーク、スウェーデンなど多数
映画祭・受賞歴:第80回ベネチア映画祭2023コンペティション部門ノミネート、男優賞ヴォルピ杯受賞(ピーター・サースガード)、キャスティング・ソサエティ・オブ・アメリカ(キャスティング賞スーザン・ショップメーカー)、トロントFF、チューリッヒFF、シカゴFF、モレリアFF、ほかBFIロンドン、シンガポール、シドニー、各映画祭で上映されてる。
キャスト:ジェシカ・チャステイン(シルビア)、ピーター・サースガード(ソール・シャピロ)、メリット・ウェヴァー(シルビアの姉妹オリビア)、ジェシカ・ハーパー(シルビアの母親サマンサ)、ブルック・ティムバー(シルビアの娘アンナ)、ジョシュ・チャールズ(ソールの兄弟アイザック)、エルシー・フィッシャー(サラ)、他多数
ストーリー:シルビアとソールの物語。シルビアは10代の娘を育てているシングルマザー、ソーシャルワーカーとして忙しい毎日を送っている。克服しようとしているアルコール依存症は、幼少期の虐待の結果による。姉妹のオリビアとは関係を保っているが、母親サマンサとは疎遠になっている。ソールは最近妻を亡くして兄アイザックと暮らしている。記憶が少しずつあいまいになっていく若年性認知症に直面して落胆の日々を過ごしている。シルビアは高校の同窓会の帰途、先輩だったソールにストーカーされる。シルビアはかつて彼女をレイプしようとした少年たちの一人と間違える。二人の漂流者の意外な出会いは、シルビアの日常生活に混乱を生じさせてくる。多くの記憶を覚えている人と記憶を忘れ始めている人のあいだのラブストリー。

(ジェシカ・チャステインとピーター・サースガード、フレームから)
「チャステインはハリウッドでもっとも輝いている女優」と監督
★記憶に優れている人とすべてを忘れてしまう人との間の愛は不可能な物語になるが、その行きすぎた世界観に誠実に向き合う。最初の出会いの一連の不幸は、直ぐに誤解であることが分かる。トラウマに囚われている男と女をテーマを撮りつづけている監督にとって、それだけでは充分ではないでしょう。監督は登場人物の立ち位置を外見が異なるだけの社会的文脈に設定し、彼らの出会いにある一定の意味を与えて、心の傷を掘り下げ癒すのではなく、反対にトラウマを追加していく。


(シルビアとソール、フレームから)
★インタビューでジェシカ・チャステイン起用の理由を質問された監督は、「チャステインが今ハリウッドでもっとも輝いている女優だから」と応じている。彼女が相手役ソールにピーター・サースガードを推薦したそうで、本作が二人の初共演の由。ジェシカ・チャステインは1977年カリフォルニア州サクラメント生れ、女優、製作者。キャスリン・ビグローの『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)主演でゴールデングローブ賞を受賞、製作も兼ねたマイケル・ショウォルターの『タミー・フェイの瞳』(21)でアカデミー主演女優賞を受賞している。

★女性の権利を守る活動家でもあり、映画で語られる現実とかけ離れた女性像に落胆しているフェミニスト。昨年、全米映画俳優組合のストライキ中にベネチア映画祭に出席するに際し、かなり躊躇した由。組合員がストライキ中に過去現在にかかわらず「出演した映画の宣伝をすることは禁じられている」からです。しかし本作が資金不足のインディペンデント映画であったことで了解されたという。というわけで「SAG-AFTRA ON STRIKE」*とプリントされたTシャツを着てフォトコールに出席した。
*SAG-AFTRA(サグ・アフトラ)映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟、米国の労働組合。

(ジェシカ・チャステイン、ベネチア映画祭2023、9月8日、フォトコール)
★ピーター・サースガードは、1971年イリノイ州ベルビル生れ、俳優。ビリー・レイの『ニュースの天才』(03)で全米映画批評家協会助演男優賞受賞、サム・メンデスの『ジャーヘッド』(05)、イギリス映画でロネ・シェルフィグの『17歳の肖像』(09)、ロバート・F・ケネディに扮したパブロ・ララインの『ジャッキー/ファーストレディ』(16)、他ヴィーナ・スードの『冷たい噓』(20)に主演、上述したように妻マギー・ジレンホールが監督デビューした『ロスト・ドーター』にも出演、本作でジレンホールがベネチア映画祭2021の脚本賞を受賞しており、夫妻にとってベネチアは幸運を呼ぶ映画祭となった。『ジャーヘッド』で共演したジェイク・ギレンホールは義弟になる。

(マギー・ジレンホールとピーター・サースガード、ベネチア映画祭2023)

(ヴォルピ杯のピーター・サースガード、同映画祭授賞式)
★スタッフ紹介:メキシコ・サイドの製作者エレンディラ・ヌニェス・ラリオスは、フランコと一緒に『ニューオーダー』、ソフィア・コッポラの『オン・ザ・ロック』や、サンセバスチャンFF2023 オリソンテス・ラティノス部門にノミネートされた、ダビ・ソナナの「Heroico / Heroic」を手掛けている。米国のダンカン・モンゴメリーは、チャーリー・マクダウェルの『運命のイタズラ』(22)、サンセバスチャン映画祭2015で監督のピーター・ソレットがセバスティアン賞を受賞した『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(15)などが字幕入りで鑑賞できる。

(右2人目がエレンディラ・ヌニェス、右端は映画祭ディレクターの
ダニエラ・ミシェル、モレリア映画祭2023フォトコール)
★フランコが信頼して撮影を任せているのがイヴ・カペ、1960年ベルギー生れ、フランコ映画では『ある終焉』、『母という名の女』、『ニューオーダー』、「Sundown」と連続してタッグを組んでいる。公開作品が多いフランス、ベルギー映画では、レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』(12)を筆頭に、時系列に列挙するとマルタン・プロボの『ヴィオレット ある作家の肖像』(13)、『ルージュの手紙』(17)、セドリック・カーンのコメディ『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』(19)、エマニュエル・ベルコの『愛する人に伝える言葉』(22)などがある。
第66回アリエル賞2024(メキシコ)*ノミネーション発表 ― 2024年07月12日 11:22
リラ・アビレスの「Tótem」が最多15ノミネーション

★6月19日、第66回アリエル賞2024のノミネーション発表がありました。来月には『夏の終わりに願うこと』の邦題で劇場公開されるリラ・アビレスの「Tótem」が、作品賞、監督賞、脚本賞を含む最多ノミネーション15個とぶっちぎり、9月7日の授賞式を待つまでもなく作品賞はほぼ決まりでしょう。数が多くても空振りに終わることも多々ありますが、今回は予想通りになると思います。つづくのがダビ・ソナナの「Heroico」とエリサ・ミジェルの「Temporada de huracanes」の11個です。俳優賞は同一カテゴリーに複数ノミネートされることからカテゴリー数と一致しません。今回の「Tótem」で言うと、女優共演者賞に3人、新人俳優賞に2人が複数ノミネートされています。
*選考母体はハリスコ州政府とメキシコ映画アカデミー(AMACC)、2023年中に製作された作品が対象、授賞式は9月7日、ハリスコの州都グアダラハラのデゴジャド劇場で開催されます。

(最多15ノミネーションの日本語版「Tótem」ポスター)
★他の作品賞5作品には、タティアナ・ウエソの「El Eco」(7個)とディエゴ・デル・リオの「Todo el silencio」(6個)がノミネートされています。前者はドキュメンタリーの要素が多いことから長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされ、後者は監督デビュー作なのでオペラ・プリマ部門にもノミネートされています。両作ともこちらで受賞する確率が高そうですが、アビレス、ミジェル、ウエソと3人の女性監督ノミネートが話題になっています。大分先になりますが、結果発表を予定しています。

(作品賞ノミネート5作品)
★当ブログで作品紹介をすることの多いイベロアメリカ映画賞には、ノータッチ作品が含まれていますが、以下の5作がノミネートされています。
「Al otro lado de la niebla」(エクアドル)監督セバスティアン・コルデロ
「La hembrita」(ドミニカ共和国)同ラウラ・アメリア・グスマン
「La sociedad de la nieve」(スペイン『雪山の絆』)同J.A. バヨナ
「Los colonos」(チリ『開拓者たち』)同フェリペ・ガルベス
「Puan」(アルゼンチン)同マリア・アルチェ & ベンハミン・ナイシュタット
◎関連記事・管理人覚え◎
*「Tótem」の紹介記事は、コチラ⇒2023年08月31日
*「Heroico」の紹介記事は、コチラ⇒2023年08月31日
*「El Eco」の紹介記事は、コチラ⇒2023年08月23日
*『雪山の絆』の紹介記事は、コチラ⇒2023年11月04日/11月14日
* 『開拓者たち』の紹介記事は、コチラ⇒2023年05月15日
*「Puan」の紹介記事は、コチラ⇒2023年07月15日
金貝賞を競うコンペティション部門ノミネート*サンセバスチャン映画祭2024 ② ― 2024年07月15日 14:42
イシアル・ボリャイン、アルベルト・セラ・・・4作がノミネート

★7月12日、第72回サンセバスチャン映画祭2024(9月20日~28日)のセクション・オフィシアル(例年通り4作)、同セクション特別上映作品(2作)、アウト・オブ・コンペティション1作、ニューディレクター(4作)、サバルテギ-タバカレア(3作)、ベロドロモ1作など各部門のスペイン映画のノミネーション発表がありました。スペイン以外は後日の発表になります。
★金貝賞を競うコンペティション部門にあたるセクション・オフィシアルには、イシアル・ボリャイン(マドリード1967)の「Soy Nevenka / I’m Nevenka」、アルベルト・セラ(Banyoles1975)の「Tardes de Soledad」、ピラール・パロメロ(サラゴサ1980)の「Los destellos / Glimmers」、ペドロ・マルティン≂カレロ(バジャドリード1983)のデビュー作「El llanto / The Wailing」の4作です。

(イシアル・ボリャイン、ペドロ・マルティン≂カレロ、ピラール・パロメロ、
アルベルト・セラ)
★セクション・オフィシアルでも賞に絡まないアウト・オブ・コンペティションにはアラウダ・ルイス・デ・アスア(バラカルド1978)のTVミニシリーズ「Querer」(4話)が選ばれました。また特別上映枠には、ハビエル・ギネル(バラカルド1977)とエレナ・トラぺ(バルセロナ1976)の「Yo, adicto / I Addict」(6話)、それぞれ3話ずつ監督します。もう1作のパウラ・オルティスの「La virgen roja / The Red Virgin」には、ナイワ・ニムリとアルバ・プラナスが主演、監督と3人でフォトコールに応じていました。

(アラウダ・ルイス・デ・アスア、ハビエル・ギネル、パウラ・オルティス)
★未だ開催までに時間的余裕があるので、何回かに分けて紹介していきます。以下の写真はノミネート発表当日のセクション・オフィシアル関連のフォトコール集です。

(ミレイア・オリオル、イシアル・ボリャイン監督、ウルコ・オラサバル
「Soy Nevenka / I’m Nevenka」)

(リカルド・サレス、ペドロ・パラシオス、アルベルト・セラ監督、モンセ・トリオラ、
ルイス・フェロン、「Tardes de Soledad」)

(アントニオ・デ・ラ・トーレ、パトリシア・ロペス・アルナイス、
ピラール・パロメロ監督、マリナ・ゲロラ、フリアン・ロペス、「Los destellos」)

(エドゥアルド・ビリャヌエバ、クリスティナ・スマラガ、
ペドロ・マルティン≂カレロ監督、フェルナンダ・デル・ニド、「El llanto」)

(ミゲル・ベルナルデアウ、ナゴレ・アランブル、アラウダ・ルイス・デ・アスア監督、
ペドロ・カサブランク、イバン・ペリセル、「Querer」)

(ハビエル・ギネル監督、ソフィア・ファブレガス、「Yo, adicto / I Addict」)

(ナイワ・ニムリ、パウラ・オルティス監督、アルバ・プラナス、「La virgen roja」)

(本祭総ディレクターのホセ・ルイス・レボルディノス、イグナシ・カモスICAA、
コンセプシオン・カスカヨセRTVE、映画アカデミー副会長ラファエル・ポルテラ)
イシアル・ボリャインの新作「Soy Nevenka」*サンセバスチャン映画祭2024 ③ ― 2024年07月20日 16:04
イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka」―セクション・オフィシアル①

★サンセバスチャン映画祭SSIFF「セクション・オフィシアル」にノミネートされたスペイン映画はイシアル・ボリャイン以下4作、全体像がはっきりするのは、年によって違いがあり、今年は8月に入ってからと思います。まずはスペイン映画を1作ずつアップしていきます。ボリャイン監督の「Soy Nevenka」は、今世紀初頭レオン県ポンフェラダ市で実際に起きた、スペイン最初のセクハラ訴訟、いわゆる「ネベンカ事件」に材をとっています。約20年後の2021年、既にマリベル・サンチェス≂マロトによって、ネットフリックス・ドキュメンタリー『ネベンカ・フェルナンデス:沈黙を破いて』(Nevenka : Breaking the Silence、 3話)としてストリーミング配信されており、セクハラ事件のみならず、地方都市が抱える複雑な政治的体質を浮き彫りにしています。スペイン#metoo 運動の先駆けとなった事件を、SSIFF2021で「Maixabel」がノミネートされたボリャインがどのように料理するか期待したい。
*「Maixabel」マイシャベルの紹介記事は、コチラ⇒2021年08月05日/同年09月21日

(TVミニシリーズ「Nevenka」ネットフリックス・ドキュメンタリー)
「Soy Nevenka / I’m Nevenka」
製作:Kowalski Films / Feelgood Media / Nva Peli AIE / Gorbo Produzioni /
Movistar Plus+
監督:イシアル・ボリャイン
脚本:イサ・カンポ、イシアル・ボリャイン、ネベンカ・フェルナンデス
音楽:シャビ・フォント
撮影:グリス・ホルダナ
編集:ナチョ・ルイス・カピリャス
美術:ミケル・セラノ
製作:コルド・スアスア、フアン・モレノ、ギジェルモ・センペレ
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、100分、撮影地サモラ、ビルバオ、2024年1月29日クランクイン、総予算460万ユーロ(ICAA援助120万ユーロ含む)、配給ブエナビスタ・インターナショナル、公開スペイン9月27日
映画祭・受賞歴:第72回サンセバスチャン映画祭2024セクション・オフィシアル
キャスト:ミレイア・オリオル(ネベンカ・フェルナンデス)、ウルコ・オラサバル(イスマエル・アルバレス市長)、リカルド・ゴメス、カルロス・セラノ、ルシア・ベイガ、ルイス・モレノ、ハビエル・ガジェゴ、メルセデス・デル・カステーリョ、フォント・ガルシア、他
ストーリー:2000年、24歳になったネベンカ・フェルナンデスは、ポンフェラダ市議会の財務担当の議員になった。政治的にも個人的にも自分の意思を貫くことに慣れていたイスマエル・アルバレス市長から執拗な性的嫌がらせに苦しんでいた。ネベンカは非常に高い代償を払わなければならないことを覚悟して告訴することを決意する。所属する国民党の議員でネベンカをサポートする人はなく、ポンフェラダの市民も市長側にまわり背を向けた。孤独な闘いに勇気をもって臨んだ若い女性のスペイン#Me Too 運動のパイオニアとなった実話。司法闘争には勝利したが、社会闘争には敗れたと評されたネベンカ事件の性差別、権力の力学が語られる。

(撮影中の監督、ミレイア・オリオル、ウルコ・オラサバル)
★撮影がポンフェラダでなくサモラ市で行われたのは、ポンフェラダ市からのプロジェクトへの撮影許可が下りなかったためである。製作者は「近隣のサモラ市が協力を提供したのでサモラでの撮影を選択した」と語っている。この件に対してポンフェラダの社会労働党PSOEはポンフェラダ市を批判し、市長に説明を求めたと報じられた。2023年当時、ポンフェラダの市議会議員はPSOEが多数派を占めていたが市長は国民党PP であり、ネベンカ事件のしこりは解消されていない。

★コンペ部門にノミネートされたボリャイン監督は、「サンセバスチャン映画祭に行くのが楽しみです。今年は激戦が予想されますが、ネベンカも私たちに同行します。私たちにとっても、ネベンカにとっても、それはエモーショナルなことです」とインタビューに応えている。前作「Maixabel」では、バスク映画イリサル賞を製作者を代表してコルド・スアスアが登壇してトロフィーを受け取った。彼は新作も手掛けている。
★ネベンカ・フェルナンデス・ガルシア:1974年10月25日生れ、経済学者、政治家(ポンフェラダ市議会議員1999~2000)。国民党のイスマエル・アルバレス市長に対してセクハラ行為で有罪判決を下した最初のスペイン人として知られている。2017年に台頭したスペインの#Me Too 運動のパイオニアとして記憶されることになる。サンパブロCEU大学経済学の学位取得、マドリードのコンプルテンセ大学で修士号取得。1999年の地方選挙で国民党より出馬して当選、ポンフェラダ市議会の財務担当の議員に就任。

(ネベンカ・フェルナンデス、ネットフリックス・ドキュメンタリーから)

(イスマエル・アルバレス市長)
★ミレイア・オリオル:1996年、カタルーニャのアルヘントナ生れ、女優。2018年ダビ・ビクトリのホラー「El Pacto」(『ザ・パクト~白蜘蛛の呪縛』)にベレン・ルエダの娘役で長編デビュー、ペドロ・コリャンテスの「El arte de volver」(20)でマカレナ・ガルシアやナチョ・サンチェスなど若手と共演する。カタルーニャTVシリーズ「Les de l'hoquei The Hockey Girls」(19~20、26話)出演で認知度が上がり、セルヒオ・G. サンチェスのホラー・ミステリー『Alma / アルマ』(2022、9話)のアルマ役に繋がった。コメディ「La mirada de la Fiona」(23、6話)でもフィオナ役に起用されている。

(ネベンカに扮したミレイア・オリオル、フレームから)
★ウルコ・オラサバル:1978年ビルバオ生れ、俳優、フィルム編集者。代表作はボリャインの「Maixabel」のルイス・カラスコ役、ゴヤ賞2022の助演男優賞を受賞した。ハコボ・マルティネスのホラースリラー「13 exorcismos」(22)、パウラ・オルティスの「Teresa」(23)では、ブランカ・ポルテーリョが扮したアビラのテレサの父親役を演じた。アイトル・ガビロンドの「Patria」(20、8話)他、TVシリーズ出演も多い。


(アルバレス市長に扮したオラサバル、フレームから)
★イシアル・ボリャイン:上述の「Maixabel」ほか、『テイク・マイ・アイズ』(03)、「Mataharis」(07)、「Yuli」(18)の監督の主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、「En tierra extraña」(14)、『オリーブの樹は呼んでいる』(16)、「La boda de Rosa」(20)などでアップしていますので割愛します。

マルティン=カレロの「El llanto」*サンセバスチャン映画祭2024 ④ ― 2024年07月25日 16:21
マルティン≂カレロの「El llanto」―セクション・オフィシアル ②

★セクション・オフィシアルのノミネート2作目、ペドロ・マルティン=カレロのデビュー作「El llanto」の紹介です。当ブログ初登場の若い監督、1983年バジャドリード生れ、監督、脚本家、撮影監督。音楽産業、広告会社で働く。本作はロドリゴ・ソロゴジェンの共同脚本家としての実績豊富なイサベル・ペーニャと共同で脚本を執筆した。ホラー映画がコンペティションにノミネートされたのは2021年、パコ・プラサが初めてSSIFFに登場した「La abuela」でした。1973年バレンシア生れ、ジャウマ・バラゲロと共同監督した『RECレック』(07)や『エクリプス』(17)などで知名度もあるベテラン監督でしたが、マルティン=カレロは私たちにとって全く未知の監督、どんなホラーなのでしょうか。
*「La abuela」の紹介記事は、コチラ⇒2021年08月12日
「El llanto / The Wailing」
製作:Caballo Films / Setembro Cine / Tandem Films / Tarea Fina /
Noodles Production / El Llanto AIE 協賛RTVE / プライムビデオ
監督:ペドロ・マルティン=カレロ
脚本:イサベル・ペーニャ、ペドロ・マルティン=カレロ
音楽:オリヴィエ・アルソン
撮影:コンスタンサ・サンドバル
編集:ヴィクトリア・ラマーズ
キャスティング:マチルド・スノッドグラス、アランチャ・ベレス
プロダクションデザイン:ホセ・ティラド
美術:ルチアナ・コーン
メイクアップ&ヘアー:(ヘアー)フェデリコ・カルカテリ、ノエ・モンテス、(メイク主任)サライ・ロドリゲス、(特殊メイク)ナチョ・ディアス
プロダクションマネジメント:アルバロ・ディエス・カルボ、ベレン・サンチェス=ペイナド
製作者:エドゥアルド・ビジャヌエバ、クリスティナ・スマラガ、フェルナンド・デル・ニド、ジェローム・ビダル、イサベル・ペーニャ、ナチョ・ラビリャ、他
データ:製作国スペイン、フランス、アルゼンチン、2024年、スペイン語、サイコ・ホラー、107分、撮影地マドリード、ブエノスアイレス、ラプラタ、期間7週間、資金提供ICAA及びマドリード市議会、配給ユニバーサル・ピクチャーズ、海外販売フィルム・ファクトリー、公開スペイン2024年10月25日、メキシコ10月25日
映画祭・受賞歴:SSIFF 2024セクション・オフィシアル正式ノミネート
キャスト:エステル・エクスポシト(アンドレア)、マチルド・オリヴィエ(マリー)、マレナ・ビリャ(カミラ)、アレックス・モネル、ソニア・アルマルチャ、トマス・デル・エスタル、ホセ・ルイス・フェレル、リア・ロイス、クラウディア・ロセト、ラウタロ・ベットニ、ピエール・マルキーユ、他
ストーリー:時間の異なる瞬間に無意識に繋がり、自分たちを超えた脅威に直面する3人の女性のポートレート。何かがアンドレアをストーカーしているが、それを誰も彼女自身でさえも肉眼で見ることはできません。20年前、1万キロ離れた場所で同じ存在がマリーを恐怖させていた。それが何なのかカミラだけが理解できたのだが、誰もそれを信じなかった。その重苦しい脅威に直面したとき、3人は同じ抑圧的な泣き叫んでいるような音を聞きます。

(左から、イサベル・ペーニャ、マルティン=カレロ監督、エステル・エクスポシト)
★監督紹介:ペドロ・マルティン=カレロは、1983年バジャドリード生れ、監督、脚本家、撮影監督。マドリード映画学校ECAMで撮影演出を専攻、第1作ビデオクリップ「Blanc」がメディナ・デル・カンポ映画祭2014で審査員賞を受賞、インターネットで注目を集める。受賞は広告制作やロンドンのビデオクリップ制作会社 Blink Productions、バルセロナのCANADAの仕事に役立った。

(審査員賞の受賞スピーチをする監督、メディナ・デル=カンポFF 2014ガラ)
*主なフィルモグラフィー紹介は以下の通り:
2008年「5 segundos」短編13分、撮影。監督ジャン・フランソワ・ルゼ
2010年「Impares」TVシリーズ28話、脚本
2010~11年「Impares premium」TVシリーズ10話、脚本
2016年「Julius Caesar: Shakespeare Lives」短編3分、英語、監督
2017年「You Are Awake」短編4分、英語、監督、脚本、撮影
2017年「The Weeknd: Secrets」ミュージックビデオ3分、英語、監督
2018年「Who Stole the Cup?」ビデオ3分、英語、監督
2024年「El llanto」長編デビュー作、107分、監督、脚本(共同)
★脚本共同執筆者のイサベル・ペーニャ(サラゴサ1983)は、ロドリゴ・ソロゴジェンのデビュー作「Stockholm」(13)以来、SSIFF 2016コンペティション部門ノミネートの『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』(16、審査員賞)、同2018の「El reino」(ゴヤ賞2019オリジナル脚本賞)、同2022ペルラス部門の『ザ・ビースト』(公開タイトル『理想郷』)、他にベネチア映画祭2019オリゾンティ部門の『おもかげ』を監督と共同で脚本を執筆している。マルティン=カレロとの接点は、マドリードの映画学校ECAMの同窓生、彼女もTVシリーズ「Impares」の脚本を17話執筆している。
*イサベル・ペーニャのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2019年07月19日

(オリジナル脚本賞のトロフィーを手にしたイサベル・ペーニャ、ゴヤ賞2019ガラ)
★音楽を担当したオリヴィエ・アルソンは、1979年パリ生れ、ペーニャと同様『ゴッド・セイブ・アス マドリード~』、『ザ・ビースト/理想郷』、他にカルロタ・ペレダの「PIGGY」(22)などを手掛けている。製作者の一人エドゥアルド・ビジャヌエバは脚本家でもあり、TVシリーズの「Impares」や「Impares premium」の脚本を執筆している。ソロゴジェンの「Stockholm」、『おもかげ』、『ザ・ビースト/理想郷』をプロデュースしている。クリスティナ・スマラガ(1990)は、ビクトル・エリセの新作『瞳をとじて』のほか、アグスティン・ディアス・ヤネスの『アラトリステ』(06)とイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(10)でそれぞれゴヤ作品賞を受賞しているスペインを代表する女性プロデューサーである。
★キャスト紹介:主役のアンドレアを演じたエステル・エクスポシト(マドリード2000)は、女優、モデル。人気TVシリーズ『エリート』(18~20、24話)のカルラ・ロソン役で人気に火がついた。映画デビューはミゲル・アンヘル・ビバスの「Tu hijo」(18、『息子のしたこと』)にホセ・コロナドと共演している。しかしジャウマ・バラゲロのヒット作「Venus」(22)でゴーゴーダンサーに扮してホラー映画デビューを果たした。これが今回の抜擢にも繋がったようです。2023年フォトグラマス・デ・プラタ(映画部門)女優賞を受賞。


(アンドレア役のエステル・エクスポシト、フレームから)
★共演者マリー役のマチルド・オリヴィエ(パリ1994)はフランスの女優、モデル、製作者。代表作はジュリアス・エイヴァリーのホラーSF『オーヴァーロード』(18、米国、プライムビデオ)、TVシリーズのスリラー『1899』(22、8話、Netflix)のクレマンス役。もう一人の共演者カミラ役のマレナ・ビリャ(ブエノスアイレス1995)は、アルゼンチンの女優、歌手、作曲家。代表作はサンセバスチャン映画祭2015でマルコ・ベルヘル監督がセバスティアン賞を受賞した「Mariposa」、彼女も銀のコンドル新人賞にノミネートされた。実話をベースにしたルイス・オルテガの『永遠に僕のもの』(18、公開19)、フアン・シュニットマンの「Rompiente」(20)、サンティアゴ・フィロルのホラーミステリー「Matadero」(22)など。若手アレックス・モネル、他ソニア・アルマルチャやトマス・デル・エスタルのベテランが脇を固めている。

(マリー役のマチルド・オリヴィエ、フレームから)


(カミラ役のマレナ・ビリャ、フレームから)
追加情報:東京国際映画祭2024ワールド・フォーカス部門に『叫び』の邦題で上映が決定しました。
ピラール・パロメロの「Los destellos」*サンセバスチャン映画祭2024 ⑤ ― 2024年07月30日 13:46
ピラール・パロメロの「Los destellos」―セクション・オフィシアル③

★セクション・オフィシアルの3作目は、ピラール・パロメロ(サラゴサ1980)の「Los destellos」、長編3作目になります。第1作が『スクールガールズ』(「Las niñas」SSIFF 2020メイド・イン・スペイン部門)、第2作が「La maternal」(SSIFF 2022セクション・オフィシアル)、主役のカルラ・キレスが銀貝賞の主演賞を受賞している。前2作を手掛けたバレリー・デルピエールが今回もプロデュースしています。監督のキャリア&フィルモグラフィーは、以下に紹介しています。
*『スクールガールズ』の作品紹介は、コチラ⇒2020年03月16日
*「La maternal」の作品紹介は、コチラ⇒2022年08月01日

(ピラール・パロメロ監督)
「Los destellos / Glimmers」
製作:Mod Producciones / Misent Producciones S.L. / Inicia Films / Crea SGR /
協賛ICEC / IVAC / ICAA / RTVE / Movistar+ / A Punt Media
監督:ピラール・パロメロ
脚本:ピラール・パロメロ、エイデル・ロドリゲス(原作バスク語”Bihorz handiegia”)
音楽:ビセンテ・オルティス・ヒメノ
撮影:ダニエラ・カヒアス
編集:ソフィア・エスクデ
キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ
美術:モニカ・ベルヌイ
衣装デザイン:アランチャ・エスケロ
メイクアップ:カルメン・アルブエス≂ミロ
製作者:フェルナンド・ボバイラ、シモン・デ・サンティアゴ、バレリー・デルピエール
データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、ドラマ、101分、撮影地カタルーニャ州タラゴナのオルタ・デ・サント・ジョアン、2023年10月クランクイン、公開:スペイン10月4日
映画祭・受賞歴:第72回サンセバスチャン映画祭2024セクション・オフィシアル
キャスト:パトリシア・ロペス・アルナイス(イサベル)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(元夫ラモン)、マリナ・ゲロラ(娘マダレン)、フリアン・ロペス、他
ストーリー:イサベルの人生は、娘のマダレンに定期的に訪れて病弱な父親ラモンの介護をするよう頼まれたとき、思いがけない展開を遂げます。別れてから見知らぬ人と見なして会わなかった。15年後イサベルは自分が克服しようとしている恨みの感情を再燃させますが、勤勉さと冷淡さで淡々と使命を果たそうとします。しかしラモンの傷つきやすい瞬間に出合うことで、自分たちに何が起こったのかを別の視点で見ることができるようになります。エイデル・ロドリゲスの短編(スペイン語題 “Un corazón demaciado grande”)にインスピレーションを得ています。

(パロメロ監督とパトリシア・ロペス・アルナイス、タラゴナ、2023年10月)
★主役イサベル役のパトリシア・ロペス・アルナイスは、1981年バスク州ビトリア生れ、女優。当ブログ紹介はダビ・ペレス・サニュドのバスク映画「Ane / Ane Is Missing」(20)、ゴヤ賞2021主演女優賞、他フェロス賞、ホセ・マリア・フォルケ賞、サンジョルディ賞などを受賞した。代表作はエスティバリス・ウレソラ・ソラグレンの『ミツバチと私』という邦題で公開された「20.000 especies de abejas」、マラガ映画祭2023助演女優賞、フェロス賞2024助演女優賞を受賞している。東京国際映画祭2021上映の『ザ・ドーター』、ネットフリックス配信のTVシリーズ『インティミダ』でもフェロス賞2023 TV 部門で助演女優賞を受賞するなどその演技力は折紙付きです。
*「Ane / Ane Is Missing」の紹介記事は、コチラ⇒2021年01月27日
*「20.000 especies de abejas」の紹介記事は、コチラ⇒2023年03月03日
*『ザ・ドーター』の作品紹介は、コチラ⇒2021年10月16日/同年11月07日

(「Los destellos」のフレームから)
★ラモン役のアントニオ・デ・ラ・トーレは、1968年マラガ生れの俳優、ジャーナリスト。多くの監督に愛されて、出演本数はシリアスドラマ、スリラー、コメディなど既に130作を超えている。ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカに扮した、アルバロ・ブレッヒナーの『12年の長い夜』(18)でキャリア&フィルモグラフィー紹介をしています。最近当ブログの登場頻度が減りましたが、パロメロ映画に出演するとは意外でした。マラガ―スール賞2015、「El reino」でゴヤ賞2019主演男優賞ほか、フェロス賞、プラチナ賞、フォルケ賞など受賞歴多数。
*『12年の長い夜』でのキャリア紹介は、コチラ⇒2018年08月27日

(イサベルとラモン、フレームから)
★娘マダレン役のマリナ・ゲロラは本作でデビューしたようです。フリアン・ロペスは1978年クエンカ生れの俳優、脚本家、クリエイターと多才、コメディアニメーションのTVシリーズ「Muchachada nui」(07~10、52話)には、製作と出演を兼ねている。映画ではボルハ・コベアガのコメディ「Fe de etarras」(18)、アルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』(19)など。

(左から、フリアン・ロペス、デ・ラ・トーレ、マリナ・ゲロラ)
★バレリー・デルピエールほど新人監督の発掘に寄与している製作者はそう多くありません。その多くがヒット作を飛ばしている。例えばカルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』、パロメロのデビュー作『スクールガールズ』、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレンのデビュー作『ミツバチと私』、ダビ・イルンダインのデビュー作「B」や「Uno para todos」などが挙げられる。撮影監督ダニエラ・カヒアス、フィルム編集者ソフィア・エスクデ、衣装デザイナーのアランチャ・エスケロ、美術のモニカ・ベルヌイなどとチームを組んで多くの新人監督を育てている。女性プロデューサーとしては、今年の映画国民賞を受賞したマリア・サモラの活躍も特筆に値するでしょうか。映画国民賞の授与式はサンセバスチャンFFが決まりですから、サモラも期間中に登場するはずです。

(SSIFFノミネーションに出席した際のフォトコール)
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