政権批判はゴヤ賞ガラの伝統、ベストドレッサーは誰?*ゴヤ賞2023 ⑬ ― 2023年02月20日 17:16
イラク侵攻「ノー・モア・ウォー」から20年
★第37回ゴヤ賞は政治色の強いガラの印象でしたが、もともとゴヤ賞授賞式は現政権への抗議という伝統があります。一番記憶に残るのは、ブッシュ大統領のイラク侵攻に対して当時の政権党であったPP国民党アスナール首相が支援を表明した2003年でした。映画アカデミー会長は女優のマリサ・パレデスでしたが、アカデミー理事会は2派に分裂して激論のすえ、「ノー・モア・ウォー」のリボンを胸に付けるかどうかは自由裁量になった。個人的には見ていて、「少しやりすぎかな」と思いましたが、やはりしこりとなって大衆の映画館離れに拍車をかける一因になった。その後も文化軽視のシブチン政党PPが映画チケット代の消費税21%増額に対する抗議(その後撤回された)、2013年の助演女優賞受賞のカンデラ・ペーニャの公立病院の機能不全に対する批判、2018年の#Me too 運動などが記憶に残っています。
(映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス≂レイテ)
★今回はカルロス・サウラ栄誉賞のスピーチを代読した夫人のエウラリア・ラモンが、公衆衛生に携わる医療関係者の医師や看護師への感謝を繰り返したことでした。これは医療者のコロナ感染対応への単なる社交辞令ではなく、本意を読み解くならば、政府が財政逼迫のためプライマリ・ケアを担っている医療関係者の財政を大幅削減をしたことへの抗議だったということです。マドリードで大規模なデモ行進が予定されていたようです。招待席にいたサンチェス首相以下5~6人の閣僚への抗議と分かると、サウラらしいと思いました。意味不明の邦題になった『カラスの飼育』は、少女アナの目を通して、スペインの家父長制社会やフランコ独裁政権を巧みに批判した映画でした。
(スピーチするエウラリア・ラモンと家族)
★2週間前にサラゴサで開催された第10回フェロス賞の栄誉賞受賞者ペドロ・アルモドバルも公衆衛生施設の充実と医療関係者への緊急支援を訴えていました。「私たち(映画関係者)も、自分の意見が言える権利をもつ市民です」と、我々は映画製作だけしているわけにはいかないということです。さて、日本はどうでしょうか。
★生誕100周年を迎えた20世紀の女優で大歌手のローラ・フローレスを讃えて、娘ロリータ・フローレスが登壇して母親の持ち歌を絶唱した。ローラはカルロス・サウラのドキュメンタリー「Sevillanas」(92)にも出演している。またシンガーソングライターのベリー・バサルテが、過去1年間に鬼籍入りしたシネアストたちを歌で見送った。ほかにイスラエル・エルナンデスとパブロ・ロペスがデュエットしました。
(ロリータ・フローレス、母親ローラへのオマージュ)
(点鬼簿のシーンで歌うベリー・バサルテ)
★ベストドレッサー、最近ゴヤ賞ガラにご無沙汰だった方、ノミネートだけで涙をのんだ方など、レッドカーペットに登場したときのセレブたちのファッションです。一番難しい色と言われる黒装束?が、老若にかかわらずやはり流行のようでした。
(栄誉賞プレゼンターのカルメン・マウラ)
(ガラの総合プレゼンターのクララ・ラゴとアントニオ・デ・ラ・トーレ)
(クララ・ラゴ、ディオールの2022~23秋冬コレクション、薄絹のドレス、
宝石はブルガリ、最もエレガントなベストドレッサーの一人に選ばれた)
(助演女優賞ノミネート、毎回ベストドレッサーに選ばれるペネロペ・クルス、シャネル)
(ドキュメンタリー賞ノミネート、国際ゴヤ賞プレゼンターのイサベル・コイシェ)
(作品賞プレゼンターのマリベル・ベルドゥ、アルベルタ・フェレッティのデザイン)
(作品賞プレゼンターのアリアドナ・ヒル、コルタナのデザイン)
(無冠に終わったカルラ・シモン監督)
(監督賞ノミネートのピラール・パロメロ)
(監督賞ノミネートのカルロス・ベルムト、主演男優賞のナチョ・サンチェス、
新人女優賞ノミネートのゾーイ・スタインのドレスはジバンシー)
(新人監督賞ノミネートのカルロタ・ペレダ、黒ずくめのファッションが好評)
(新人監督賞ノミネートのエレナ・ロペス・リエラと主役のルナ・パミエス)
(新人監督賞ノミネートのフアン・ディエゴ・ボット、ペネロペ・クルス、
オリジナル歌曲賞にノミネートされていた弟エドゥアルド・クルス)
(主演女優賞ノミネートのフランス女優マリナ・フォイス)
(主演女優賞ノミネートのアンナ・カスティーリョ、グッチのモノトーン)
(主演女優賞ノミネートのヴィッキー・ルエンゴ)
(助演女優賞ノミネートのカルメン・マチ、ヴィッキー・マルティン・ベロカル)
(助演女優賞ノミネートのアンヘラ・セルバンテス)
(助演男優賞プレゼンターのアイタナ・サンチェス≂ヒホン、
カロリナ・エレーラのデザイン、宝石はカルティエ、靴はロディ)
(新人女優賞ノミネートのバレリア・ソローリャ、ディオール)
(ブランカ・ポルテーリョ、黒一色の中で目立ったカロリナ・エレーラのデザイン)
(プレゼンターのベレン・ルエダ、金色のスパンコールのスカート、
羽飾りのケープに、さすがの観客も仰天していた。バレンスエラ・アテリル)
(マリア・ペドロサ、アレクサンドル・ボーティエのオートクチュール、
宝石はブルガリ)
(衣装デザイン賞プレゼンター、タキシードに身を包んだミレナ・スミット)
(ベテラン女優カエタナ・ギジェン・クエルボ、ルベン・エルナンデスのデザイン)
(マリア・レオン、フアン・ビダルのデザイン、真冬に寒くないか?)
(アマイア・サラマンカ、レバノン出身のズハイル・ムラドのオートクチュール、
2022~23の秋冬コレクション、ここはハリウッドですか?)
(監督で女優のレティシア・ドレラ、ビクトリア・クルマデビリャ)
(助演女優賞のプレゼンターのベレン・クエスタ、ペドロ・デル・イエロのデザイン)
第37回ゴヤ賞の夕べ―結果発表*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月17日 10:57
「アディオス、マエストロ!」で開幕、ソロゴジェンの『ザ・ビースト』で終幕
★去る2月11日、第37回ゴヤ賞2023授賞式がセビーリャの FIBES で開催されましたが、例年とは異なってゴヤ栄誉賞受賞者カルロス・サウラ急逝のニュースが駆け巡り、「アディオス、マエストロ」の幕開けとなりました。しかし一つの作品にゴヤ胸像が集中したのは例年通り、ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』独占の夕べとなりました。監督は登壇した受賞者たちの感謝の言葉に何度も涙することになりました。総合司会者なしでプレゼンターは、アントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴでした。
★『ザ・ビースト』が作品・監督・主演男優・オリジナル脚本・助演男優・撮影・編集・録音・オリジナル作曲賞の9部門を制覇、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」が特殊効果・美術・メイクアップ・衣装デザイン・プロダクションの5部門、続くアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」の新人監督・主演女優・助演女優の3部門、この3作で17部門を攫う結果となり、なんと11部門ノミネートのカルラ・シモンの「Alcarràs」は無冠に終わるという番狂わせになりました。
★長くても2時間半以内と予告されていましたが、サウラへのオマージュに30分ほど要し、終了したのは翌日の1時近くでした。サウラと困難な時代を共に歩んできたフェルナンド・メンデス≂レイテ新会長も目を赤くしてマエストロの死を悼みました。2週間間前に開催されたフェロス賞の流れを汲んでか、黒一色で埋め尽くされた感のある会場でした。また政治色の強い授賞式でサンチェス首相以下、イセタ文化教育相、ディアス労働相など閣僚数人が招待客に並んでおりました。
★作品賞のプレゼンターは、フェルナンド・トゥルエバの『ベルエポック』30周年を記念して、4人姉妹を演じた、ミリアム・ディアス≂アロカ、アリアドナ・ヒル、マリベル・ベルドゥ、ペネロペ・クルスの4女優が勢揃いするという豪華版でした。
(左から、アリアドナ・ヒル、ペネロペ・クルス、
ミリアム・ディアス≂アロカ、マリベル・ベルドゥ)
*第37回ゴヤ賞2022結果発表全28カテゴリー*
◎作品賞
「Alcarras」カルラ・シモン(11個)
「Cinco lobitos」アラウダ・ルイス・デ・アスア(11個)
「La maternal」ピラール・パロメロ(3個)
「Modelo 77」アルベルト・ロドリゲス(16個)
「As bestas」ロドリゴ・ソロゴジェン監督、邦題『ザ・ビースト』(東京国際映画祭)
製作:Arcadia Motion Picture / Caballo Films / Cronos Entertinment / Le Pacto 協賛RTVE 他多数、製作者:サンドラ・タピア、イグナシ・エスタペ、イボン・コルメンサナ、他多数
◎監督賞
カルラ・シモン「Alcarras」
ピラール・パロメロ「La maternal」
カルロス・ベルムト「Manticora」『マンティコア』(東京国際映画祭)
アルベルト・ロドリゲス「Modelo 77」
ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、目下パリ在住のイランのミトラ・ファラハニ監督とフアン・アントニオ・バヨナ監督、イランの監督は故国の政治弾圧のために闘っている人々の生命と自由、特に差別に苦しむ女性たちの救援を訴えました。スペインの監督が訴えに呼応すると、会場から拍手が沸き起こりました。ファラハニはドキュメンタリー「See You Friday, Robinson」がベルリン映画祭2022でエンカウンターズ部門の-特別審査員賞を受賞している。
(ソロゴジェン、ミトラ・ファラハニ、J. A. バヨナ)
◎新人監督賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
エレナ・ロペス・リエラ「El agua」邦題『ザ・ウォーター』(東京国際映画祭)
フアン・ディエゴ・ボット「En los márgenes」
ミケル・グレア「Suro」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
*プレゼンターは、『リベルタード』(21)で同賞を受賞したクララ・ロケでした。
◎主演女優賞
マリナ・フォイス「As bestas」
アンナ・カスティーリョ「Girasoles silvestres」監督ハイメ・ロサーレス
バルバラ・レニー「Los renglones torcidos de Dios」監督オリオル・パウロ
ヴィッキー・ルエンゴ「Suro」
ライア・コスタ「Cinco lobitos」
*ブランカ・ポルティーニョとノラ・ナバスという大先輩からトロフィーを受け取り、実に光栄なことでした。フェロス賞に続いての受賞。フランスから来西したマリナ・フォイス、二人の子供の母親を演じたアンナ・カスティーリョ、微妙にすれ違う若い妻を演じたヴィッキー・ルエンゴは残念でした。バルバラ・レニーは出産したばかりで欠席しました。
◎主演男優賞
ルイス・トサール「En los márgenes」
ナチョ・サンチェス「Manticora」
ハビエル・グティエレス「Modelo 77」
ミゲル・エラン「Modelo 77」
ドゥニ・メノーシュ「As bestas」
*フランスから来西した甲斐がありました。「スペインに引っ越そうかと思います。たくさんの愛を頂きました」とスピーチ。その後はスマホと老眼鏡を取り出して入力したスペイン語原稿を読み上げました。撮影中はスペインの家族同様に和気あいあいと過ごすことができたとスピーチ、「男性たちの頑迷さを前にした女性たちの力強さと愛に敬意を表する」とリップサービスも忘れず会場を盛り上げた。彼が手にするとトロフィーが小さく見えました。おそらく外国人俳優が受賞した第1号でしょうか。フェロス賞はナチョ・サンチェスと評価が分かれました。プレゼンターはアシエル・エチェアンディアとレオナルド・スバラグリア。
◎オリジナル脚本賞
アルナウ・ピラロ&カルラ・シモン「Alcarras」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
カルロス・ベルムト「Manticora」
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス「Modelo 77」
イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、ダニエル・サンチェス・アレバロでした。二人で登壇しましたがスピーチはイサベル・ペーニャだけでした。フェロス賞はアラウダ・ルイス・デ・アスア。
◎脚色賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」監督は脚色に同じ、バスク語
ギレム・クルア&オリオル・パウロ「Los renglones torcidos de Dios」
ダビ・ムニョス&フェリックス・ビスカレット「No mires a los ojos」
監督フェリックス・ビスカレット
フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ「Un año, una noche」イサキ・ラクエスタ
*3人登壇し、イサ・カンポ、フラン・アラウホ、イサキ・ラクエスタの順にスピーチしました。本作の受賞は脚色賞だけでした。
(イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ、フラン・アラウホ)
◎助演女優賞
マリー・コロン「As bestas」
カルメン・マチ「Cerdita」
ペネロペ・クルス「En los márgenes」
アンヘラ・セルバンテス「La maternal」
スシ・サンチェス「Cinco lobitos」
*スペイン映画アカデミー副会長のスシ・サンチェスに軍配が揚がりました。すでに2個のゴヤ賞保持者、予期していなかったのか大分興奮して直ぐにはスピーチができないほどでした。女性監督の作品で受賞できたことが嬉しかったそうです。このカテゴリーは誰が取ってもおかしくない激戦区でしたが、フランスから来西したマリー・コロンは残念でした。プレゼンターは、ペトラ・マルティネスとベレン・クエスタ、二人はそれぞれ主演女優賞を受賞しています。
◎助演男優賞
ディエゴ・アニド「As bestas」
ラモン・バレア「Cinco lobitos」
フェルナンド・テヘロ「Modelo 77」
ヘスス・カロサ「Modelo 77」
ルイス・サエラ「As bestas」
*プレゼンターは、アイタナ・サンチェス≂ヒホン、例年ですと受賞者発表は助演男優賞から始まりますが、今年はカルロス・サウラ急逝でゴヤ栄誉賞で開始されました。予想通りの受賞ですが、フェロス賞に続いての受賞でした。
◎新人女優賞
アナ・オティン「Alcarras」
ルナ・ラミエス「El agua」
バレリア・ソローリャ「La consagración de la primavera」監督フェルナンド・フランコ
ゾーイ・スタイン「Manticora」
ラウラ・ガラン「Cerdita」
*文句なしの受賞ですが貫禄勝ちかもしれません。一度見たら忘れられない強烈な女優です。プレゼンターは、ロス・ハビスことハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシとアブリル・サモラでした。
◎新人男優賞
アルベルト・ボッシュ「Alcarras」
ジョルディ・プジョル・ドルセト「Alcarras」
ミケル・ブスタマンテ「Cinco lobitos」
クリスティアン・チェカ「En los márgenes」
テルモ・イルレタ「La consagración de la primavera」
*車椅子で登壇した34歳の新人は、2歳のとき脳炎が原因で脳性まひになった由、「私たちは存在しています、そしてセックスもします」と語り、障害者の可視化を印象づけました。「本当に嬉しい」と「ありがとう」を繰り返し、女優のエレナ・イルレタの甥だそうで彼女にトロフィーを捧げると語った。プレゼンターはキム・グティエレス。
◎アニメーション賞
「Black is Beltza II: Ainhoa」 監督フェルミン・ムグルザ
「Inspector Sun y la maldición de la viuda negra」 監督フリオ・ソト・グルピデ
「Los demonios de barro」 監督ヌノ・ベアト
「Tadeo Jones 3, La tabla esmeralda」 監督エンリケ・ガト
「Unicorn Wars」 監督アルベルト・バスケス
*下馬評通りの受賞でした。プレゼンターはマカレナ・ゴメス。
◎ドキュメンタリー賞
「A las mujeres de España. María Lejárraga」 監督Laura Hojman
「El sostre groc (El techo amarillo)」 監督イサベル・コイシェ
「Oswald. El falsificador」 監督キケ・マイリョ
「Sintiéndolo mucho」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
「Labordeta, un hombre sin más」 監督パウラ・ラボルデタ&ガイスカ・ウレスティ
*ラボルデタ監督は天国のパパに受賞を報告しました。
◎ヨーロッパ映画賞
「Berfast」(イギリス)監督ケネス・ブラナー、邦題『ベルファスト』
「Fue la mano de Dios」(イタリア)監督パオロ・ソレンティーノ、
邦題『Hand of God-神の手が触れた日-』
「Las ilusiones perdidas」(フランス)監督グザヴィエ・ジャノリ、邦題『幻滅』
「Un pequeño mundo」(ベルギー)監督ローラ・ワンデル、邦題『プレイグラウンド』
(なら国際映画祭2022)
「La peor persona del mundo」(ノルウェー)監督ヨアキム・トリアー、
邦題『わたしは最悪。』
*ノミネートされても誰も来西せずしらけるから、一時はカテゴリーから外す案もありましたが、最近は出席することが多くなりました。監督、製作者の来西はなく、スペインの配給会社のエンリケ・コスタが登壇、代理で受け取りました。プレゼンターはベレン・ルエダ。
(エンリケ・コスタがスピーチした)
◎イベロアメリカ映画賞
「1976」(チリ)監督マヌエラ・マルテッリ、邦題『1976』(東京国際映画祭)
「La jauría」(コロンビア)監督アンドレス・ラミレス・プリド、邦題『ラ・ハウリア』
(東京国際映画祭)
「Noche de fuego」(メキシコ)監督タチアナ・ウエソ、
「Utama」(ボリビア)アレハンドロ・ロアイサ・グリシ、邦題『UTAMA~私たちの家~』
(Skipシティ国際Dシネマ映画祭)
「Argentina, 1985」(アルゼンチン)監督サンティアゴ・ミトレ、
邦題『アルゼンチン 1985』
*長いあいだ独裁政権下で苦しんだこともあって下馬評通りになりました。3月12日開催のアカデミー賞の根回しで忙しいのか、監督と主演のリカルド・ダリンは姿を見せませんでした。副検事役のピーター・ランサニが受け取りスピーチしました。
(中央がピーター・ランサニ、製作者)
◎撮影賞
ダニエラ・カヒアス「Alcarras」
ジョン・D.・ドミンゲス「Cinco lobitos」
アルナウ・バルス「Competencia oficial」 監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
アレックス・カタラン「Modelo 77」
アレックス・デ・パブロ「As bestas」
*アレックス・デ・パブロ欠席で、ソロゴジェンが代理で受け取りました。
◎編集賞
アナ・プラッフ「Alcarras」
アンドレス・ジル「Cinco lobitos」
ホセ・M.G.・モヤノ「Modelo 77」
セルジ・ディエス&フェルナンド・フランコ「Un año, una noche」
アルベルト・デル・カンポ「As bestas」
*プレゼンターはハビエル・レイ。
◎録音賞
エバ・バリニョ、トマス・ジオルジ、アレハンドロ・カスティーリョ「Alcarras」
アシエル・ゴンサレス、エバ・デ・ラ・フエンテス、ロベルト・フェルナンデス「Cinco lobitos」
ダニエル・デ・サヤス、ミゲル・ウエルテ、ペラヨ・グティエレス他「Modelo 77」
アマンダ・ビリャビエハ、エバ・バリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ他「Un año, una noche」
アイトル・べレンゲル、ファビオラ・オルドヨ、ヤスミナ・プラデラス「As bestas」
*プレゼンターは、イングリッド・ガルシア・ヨンソン。
(左から、ヤスミナ・プラデラス、アイトル・ベレンゲル、ファビオラ・オルドヨ)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ&ジョルディ・コスタ「13 exorcismos」
オスカル・アバデス&アナ・ルビオ「As bestas」
ジョン・セラーノ&ダビ・エラス「Irati」
リュイス・リベラ&ラウラ・ペドロ「Malnazidos」 監督アルベルト・デ・トロ&
ハビエル・ルイス・カルデラ
エステル・バリェステロス&アナ・ルビオ「Modelo 77」
◎美術賞
モニカ・ベルヌイ「Alcarras」
ホセ・ティラド「As bestas」
メラニー・アントン「La piedad」 監督エドゥアルド・カサノバ
シルビア・Steinbrecht「Los renglones torcidos de Dios」
ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ「Modelo 77」
◎オリジナル作曲賞
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ”ムルセゴMursego”「Irati」
イヴァン・パロマレス「Las ninas de Cristal」監督ホタ・リナレス、邦題『少女は、踊る』Netflix
フェルナンド・ヴェラスケス「Los renglones torcidos de Dios」
フリオ・デ・ラ・ロサ「Modelo 77」
オリヴィエ・アーソン「As bestas」
*フェロス賞に続いての受賞でした。
◎オリジナル歌曲賞
エドゥアルド・クルス&マリア・ロサレン「En los márgenes」
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ、パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」
パロマ・ペニャルビア・ルイス&ヴァネサ・ベニテス・サモラ「La vida chipén」
ホセバ・ベリスタイン「Unicorn Wars」
ホアキン・サビナ、レイバ「Sintiéndolo mucho」
*フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督のドキュメンタリーが受賞、ホアキン・サビナは欠席でした。
(レイバが受け取りました)
◎衣装デザイン賞(6作品)
パオラ・トーレス「As bestas」
ネレア・トリホス「Irati」
スエビア・サンペラヨ「La piedad」
アルベルト・バルカルセル「Los renglones torcidos de Dios」
クリスティナ・ロドリゲス「Malnazidos」
フェルナンド・ガルシア「Modelo 77」
◎メイクアップ&ヘアー賞
イレネ・ペドロサ&ヘスス・ジル「As bestas」
パロマ・ロサノ「Cerdita」
サライ・ロドリゲス、ラケル・ゴンサレス、オスカル・デル・モンテ「La piedad」
モンセ・サンフェィウ、カロリナ・アチュカロ、パブロ・ペロナ「Los renglones torcidos de Dios」
ヨランダ・ピニャ&フェリックス・テレロ「Modelo 77」
◎プロダクション賞
エリサ・シルベント「Alcarras」
カルメン・サンチェス・デ・ラ・ベガ「As bestas」
サラ・ガルシア「Cerdita」
マリア・ホセ・ディエスポル「Cinco lobitos」
マヌエラ・オコン・アブルト「Modelo 77」
◎短編映画賞
「Chaval」(29分) 監督ハイメ・オリアス
「Cuerdas」(30分) 監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
「La entrega」(25分) 監督ペドロ・ディアス
「Sorda」(18分) 監督エバ・リベルタード&ヌリア・ムニョス・オルティン
「Arquitectura emocional 1959」(30分) 監督エリアス・レオン・シミニアニ
*4人が登壇、プレゼンターは『少女は、踊る』主演のマリア・ペドラサ。
(左から2人目がエリアス・レオン・シミニアニ監督)
◎短編ドキュメンタリー賞
「Dancing with Rosa」(27分) 監督ロベルト・ムニョス・ルぺレス
「La gabia」(19分) 監督アダン・アリアガ
「Memoria」(15分) 監督ネレア・バロス
「Trazos del alma」(14分) 監督ラファエル・G.・アロヨ
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(27分) アマイア・レミレス&ラウル・デ・ラ・フエンテ *
*予想通りの受賞、プロデューサーのイバン・サイノスと両監督が登壇して、サイノス、レミレス、デ・ラ・フエンテの順でそれぞれスピーチした。プレゼンターは、なんと老優フェルナンド・エステソがポル・モネンに支えられて杖で登場した。「カルロスもアグスティも、次回作の脚本を書いてるだろうが、私のことも忘れないでくれよ、もう直ぐそちらに行くから。安らかに」とスピーチ、サウラと1週間前に鬼籍入りビリャロンガを追悼しました。
(フェルナンド・エステソ、ポル・モネン)
◎短編アニメーション賞
「Amanece la noche más larga」(9分) 監督ロレナ・アレス&カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ
「Amarrados」(10分) 監督カルメン・コルドバ
「La prima cosa」(19分) 監督オマル・A.・ラザック&シーラ・ウクライナツShira Ukrainitz
「La primavera siempre vuelve」(10分) 監督アリシア・ヌニェス・プエルト
「Loop」(8分) 監督パブロ・ポリェドリPolledri
◎ゴヤ栄誉賞
★カルロス・サウラ(ウエスカ1934)かねてよりマドリードの自宅で療養中でしたが、ガラ前日の2月10日に呼吸不全となり逝去、91歳の誕生日を迎えたばかりでした。スタンディングオベーションが鳴りやまず、登壇した家族はスピーチが始められませんでした。夫人で女優のエウラリア・ラモンがメッセージを読んだ。プロデューサーの息子アントニオ・サウラも登壇、女優の娘アンナ・サウラは天国のパパに感謝のスピーチをした。プレゼンターは彼の唯一のゴヤ賞受賞作『歌姫カルメーラ』(90)で主役を演じたカルメン・マウラ、本作撮影当時の思い出話、「とても優しかった」とマエストロの人柄を語った。会場の面々も涙の感謝、天国の本人に届いたでしょうか。
(左から、カルメン・マウラ、アントニオ、夫人、アンナ)
★『歌姫カルメーラ』ほか、代表作『カラスの飼育』やデビュー作『狩』、フラメンコ物が次々にスクリーンに映し出され、会場は激動の時代を走り続けたマエストロに思いを馳せていた。簡単ですが、キャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。
*カルロス・サウラのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年01月07日
(在りし日のカルロス・サウラ)
◎国際ゴヤ賞(第2回)
★ジュリエット・ビノシュ(パリ1984)スタンディングオベーションを受けて登場した輝くようなスターは、予想した通り「Nadie quiere la noche」(15)の監督イサベル・コイシェよりトロフィーを受け取りました。ゴヤ胸像に軽くキスすると、片言のスペイン語でグラシアスを連発、スペイン映画を賞賛しました。その後はフランス語で、少女時代に観たサウラの『カラスの飼育』に触れ、「幼年時代に影響を受けた」と語った。最後に劇中で姉妹たちが踊りながら歌った “Por que te vas ” を鼻歌まじり歌い、このお茶目っぷりに満場の拍手喝采をうけた。これがジュリエットの魅力です。あちらのサウラもさぞかし呵々大笑したことでしょう。
(コイシェ監督からトロフィーを受け取った受賞者)
★来西は3回、ゴヤ賞ガラ参加は今回が2回目、最初の「Nadie quiere la noche」で主演女優賞にノミネートされた折には、初めて生のジュリエットに接した若い女優たちは、その気取りの少しもない大スターに興奮した。サンセバスチャン映画祭2022ドノスティア栄誉賞を受賞した折に来西、スペインでは最も人気の高いフランス女優です。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年02月05日/2022年09月17日
(レッドカーペットのスター)
★駆け足紹介ですが、以上の結果となりました。ベルリン金熊賞受賞、オスカー賞スペイン代表作品にも選ばれたうえ、ノミネーション11部門のカルラ・シモンの「Alcarràs」が無冠に終わったことを「これは何かの手違い?」と訝しむ声もあったようです。不公平は世の常、ベルリンはベルリン、セビーリャはセビーリャで別ということ、良質な映画だがエモーションに欠けていたのではないか。
★現在投票権のあるアカデミー会員は約2000人くらいに増加しており予想が難しくなっている。シモンの映画は昨年前半、ソロゴジェンのは後半と、忘れっぽいスペイン人にシモンは分が悪かった。大方の予想は、フェロス賞のように作品賞は『ザ・ビースト』、監督賞はカルラ・シモンと予想していたようです。ソロゴジェンは「アルカラスは大作です、受賞はそんなに重要ではない」と言ったとか。しかし重要に決まっています。管理人がもっと訝るのは、カンヌ映画祭のコンペティションに選ばれた、アルベルト・セラの『パシフィクション』が、スペイン語映画でなかったからかノミネートすらされなかったことでした。先駆者「故郷に入れられず」でしょうか。
アマイア・レミレス監督デビュー「Maldita」*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月12日 16:25
異色の短編ドキュメンタリー「Maldita. A Love Song to Sarajevo」
(ボジョ・ブレチョを配したゴヤ賞のポスター)
★既に国際映画祭での受賞歴があるラウル・デ・ラ・フエンテ & アマイア・レミレスの「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(仮訳「のけ者、サラエボへの愛の歌」)は、人生と自由と寛容への美しい讃歌である。主人公はボスニアのミュージシャンのボジョ・ブレチョと、カタルーニャのピアニストで作曲家のクララ・ペーヤである。二人の感受性豊かな音楽は、廃墟と滅亡のなかから何か純粋な気高さを生み出している。ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボは、日本人にとっては距離的にも精神的にも遠い国ですが、モノクロの映像とボジョの情熱を込めた歌声にある懐かしさを覚えます。受賞を予想してアップします。
(サンタ・マリア・デル・マル教会で演奏するボジョ・ブレチョとクララ・ペーヤ)
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」ドキュメンタリー
製作:Medicusmundi Mediterránia / Kanaki Films 協賛カタルーニャ政府、バルセロナ市
監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ、アマイア・レミレス
脚本:アマイア・レミレス
撮影:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
音楽:クララ・ペーヤ
編集:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
録音:インマ・カラスコ
製作者:イバン・サイノス、(エグゼクティブ)アマイア・レミレス
データ:製作国スペイン、2022年、ドキュメンタリー、27分、モノクロ、撮影バルセロナのサンタ・マリア・デル・マル(14世紀建立のカタルーニャ・ゴシック様式教会)やサラエボ。2021年12月バルセロナ―ジロナのイベントで先行上映された。ほかにマドリードやバルセロナでの上映イベントがある。配給Selected Films Distribution
映画祭・受賞歴:クラクフ映画祭2022銀のドラゴン受賞、メディナ・デル・カンポ映画週間2022ゴールデン・ロエル受賞、メルリンカ映画祭審査員賞受賞、ほかコソボのドキュメンタリーフェス、スペインのシウダレアル、ヒホン、ランサローテ各短編映画祭出品、ゴヤ賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート
出演者:ボジョ・ブレチョ、クララ・ペーヤ、そのほか演奏者多数
ストーリー:ボジョ・ブレチョの神は愛である。彼の祖国は地球である。性別は男性でもあるが女性でもある人間である。バルカン出身の最も革新的なアーティストであるボジョは、困難な時期に自分自身を見つける方法を知っていた二つの都市、サラエボとバルセロナのあいだの人生と、障害の克服と、愛の物語を歌いあげる。決してさようならを言わないために。想像の世界と現実の世界、寛容と残忍、破壊と怖れ、愛と許し、男性と女性、サラエボとバルセロナ、ボジョとクララ、など二面性で構成されている。
(ゴールデン・ロエルを手にしたアマイア・レミレス、メディナFF2022授賞式)
★本作のオリジナルなアイディアは、プロデューサーのイバン・サイノスである。現在はNGO制作会社Medicusmundi Mediterránia のディレクターであるが、もともとは光学機器製造会社の検眼士であった。サラエボではバルカン戦争で眼鏡を失くした人々が多く、サイノスは終戦後の1995年からサラエボに眼鏡を届けていた。そこでボジョ・ブレチョの音楽に出会った。二人は長年、一緒にドキュメンタリーを作りたいと思っていたがなかなか実現しなかった。そこで『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の製作者アマイア・レミレスとコンタクトをとった。レミレスはサイノスを通じてブレチョに会い、こうして二つの制作会社の共同製作が実現した。レミレスの「クララ・ペーヤがバルセロナを象徴する」というアイディアが生まれた。
(ラウル、イバン、ボジョ、アマイア)
★ボジョ・ブレチョ Božo Vrećoは、1983年ボスニアのフォチャ生れ、セブダリンカ(sevdalinka *)の歌手、考古学教授、LGBTQの権利を求めている。5歳の時父親が亡くなり、2人の姉妹と育つ。芸術家の母親から絵を描いたり音楽を学ぶよう勧められ、インターネットで独学する。風変わりな少年としていじめに苦しんだ。生計を立てるためセルビアのベオグラードに行き考古学の修士号を取る。しかし本当にやりたかったのはセブダリンカの音楽だった。録音で伝統的な歌唱法を学んだ。
★サラエボのカフェで歌っているところをバンドHalkaに見いだされCDを発売、2013年よりプロとして世界で活躍している。アカペラで歌うことが多い。ロングドレスや長めのチュニックに身を包んだブレチョは女性の側にいる。エレガントでデリケートな動き、よく響く声、黒くて濃い髭のコントラストに戸惑う。ブレチョは戦争のさなかに生まれ育ったが、彼は自らの独特な個性のせいで内面の葛藤から自由になる必要があった。議論の的となるアーティストは、より自由になるために豊かな表現力、寛容さでその違いを力強く示そうとする歌手である。
*セブダリンカというのは、ボスニア・ヘルツェゴビナ発祥の民族音楽、ゆっくりしたテンポ、強烈で感情豊かなメロディーが特徴的である。オリエント、ヨーロッパ、セファルディム(ディアスポラのユダヤ人のうち南欧諸国やトルコなどに定住した人)の要素を組み合わせている。
(トルコの旋踊教団の祈りのようにスピンしながら熱唱するボジョ・ブレチョ)
★クララ・ペーヤ Clara Peya、1986年カタルーニャのパラフルジェル生れ、ピアニスト、作曲家。両親は医師、母親の懇望で姉アリアドナと一緒にピアノを学ぶ。姉は16歳で断念するが、クララはカタルーニャ高等音楽学校のクラシックピアノ科に入学、2007年卒業、その後バルセロナ音楽養成所でモダンジャズを学んだ。23歳でアルバムのレコーディングを開始、独自のスタイルを確立しており、既に十数枚のアルバムを発表している。
★また姉アリアドナと制作会社 Les Impuxiblesを主宰、ミュージカル、演劇、ダンスシアター、マイクロオペラの制作を手掛けている。2019年にその社会への影響が認められてカタルーニャ文化国民賞の最年少受賞者となりました。他に2018年、アルバム「Estómac」は、音楽誌「エンダーロック・マガジン」の年間最優秀アルバム賞エンダーロックを受賞。フェミニスト活動家として男女平等を求めている。レズビアンとしてレズ嫌いを批判するドキュメンタリーに参加している。2021年の新譜「Periferia」では、男性歌手エンリオをフィーチャしている。
(クララ・ペーヤ、カタルーニャ文化国民賞授賞式)
★監督紹介:ラウル・デ・ラ・フエンテ(パンプローナ1974)とアマイア・レミレス(パンプローナ1982)は、20年来から二人三脚で問題作に挑戦している監督、脚本家、製作者、共にナバラ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒。アンゴラ内戦をアニメーションと実写で描いた「Un día más con vida」(18)が『アナザー・デイ・オブ・ライフ』としてラテンビートFF 2018で上映され、観客から賞賛を受けた。翌年のゴヤ賞アニメーション部門で受賞している。ゴヤ賞ノミネートは今回で5回目、2回目の「Minerita」がゴヤ賞2014の短編ドキュメンタリー賞受賞、ドキュメンタリー作家としての地位を確立している。レミレスは制作会社Kanaki のメインプロデューサーだが、今回監督デビューした。2021年に子供が誕生した。
*両監督のキャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2018年10月08日
(『アナザー・デイ・オブ・ライフ』のポスター)
(ゴヤ賞2019アニメーション賞のガラにて)
(最近のラウルとアマイア)
追加情報:ゴヤ賞2023短編ドキュメンタリー部門で予想どおり受賞しました。
ジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞*ゴヤ賞2023 ⑪ ― 2023年02月05日 18:12
「3冠」&オスカー女優のジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞
(ドノスティア栄誉賞のトロフィーを手に、サンセバスチャン映画祭2022)
★去る2月1日、スペイン映画アカデミーから第2回目となる国際ゴヤ賞受賞者は、フランス女優のジュリエット・ビノシュ(パリ1964、59歳)と公式に発表されました。昨年新設された国際ゴヤ賞は、芸術としての映画に国際的に貢献した人物に贈られる重要なスペイン映画賞の一つ、「ビノシュの並外れたキャリアは、ヨーロッパのみならず国際的に賞賛され認められている。リスクのある作家への挑戦は数多くの忘れられないパフォーマンスを生んだ。40年にわたってヨーロッパ映画が目指す指標として不動の地位を築いてきた」ことが評価されました。あと1週間後に迫った2月11日、セビーリャのFIBESで開催される第37回ゴヤ賞ガラでトロフィーを受け取ることになります。
★キャリア&フィルモグラフィーについては第70回サンセバスチャン映画祭2022でドノスティア栄誉賞を受賞した折りにアップしております。タッグを組んだ監督はフランスに止まらず、ジャン=リュック・ゴダール、レオス・カラックス、ルイ・マル、デヴィッド・クローネンバーグ、アッバス・キアロスタミ、クシシュトフ・キェシロフスキ、ミヒャエル・ハネケ、オリヴィエ・アサイヤスなど枚挙に暇がない。しかし彼女の転機は1996年に訪れる。アンソニー・ミンゲラの『イングリッシュ・ペイシェント』でアングロサクソン映画にデビュー、ベルリン映画祭銀熊女優賞、アカデミー助演女優賞、BAFTA助演女優賞ほかを受賞して、ヨーロッパの「3冠」トリプルクラウンの一つを獲得した。
★ヨーロッパの「最優秀女優トリプルクラウン」というのは、カンヌ、ベネチア、ベルリン三大映画祭の受賞者を指し、3冠を達成した最初のヨーロッパ女優になりました。クシシュトフ・キェシロフスキの『トリコロール/青の愛』(94)でベネチア映画祭女優賞(ヴォルピ杯)、イランのアッバス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』(10)でカンヌ映画祭女優賞である。
★女優のプロジェクトに参加する決め手は「新しい世界を私に覗かせる未知への旅」と語っています。また「監督の耳を傾ける能力、そして何よりも見る能力」が、「イエス」と言うように自分を駆り立てるとも語っている。イサベル・コイシェ監督が「ぶっ飛んだ女優」と評する所以である。
★片足でインディペンデント映画に、もう片足で『GODZILLA ゴジラ』や『ゴースト・イン・ザ・シェル』などの商業映画にも取り組んでいる。最新作はTVシリーズ「The New Look」(米10話)で、目下ココ・シャネルに命を吹き込んでいます。ベン・メンデルソン扮するクリスチャン・ディオールとわたり合うようです。
★第1回目の受賞者はオーストラリア出身の女優ケイト・ブランシェット、プレゼンターはアルモドバル監督とペネロペ・クルスでしたが、さて今回はどなたでしょうか。彼女が主演した「Nadie quiere la noche」(英題「Nobody Wants the Night」)のコイシェ監督あたりを個人的に予想します。本作でゴヤ賞2016の主演女優賞にノミネートされ、初めてゴヤ賞ガラに出席したフランス女優となりました。今回は国際ゴヤ賞受賞者の最初のフランス人となります。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2022年09月17日
ユーモアは控えめだが視聴者参加の授賞式*ゴヤ賞2023 ⑩ ― 2023年01月18日 15:37
総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴ
★ガラまで1ヵ月前になる1月11日、総合司会者アントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴ、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ出席のもと、第37回ゴヤ賞2023の詳細の一部が明らかになりました。4年ぶりとなるセビーリャ開催の今回は、メンデス=レイテ会長が初めて指揮するゴヤ賞授賞式になります。前回は総合司会者なしで催行されましたが、今年はマラゲーニョとマドリレーニャの俳優が担います。ここ何年かはコメディアンが抜擢されていましたが、司会者に人を笑わせる才能は必要ないということで、今回は俳優が選ばれました。ということでユーモアは控えめになります。アカデミー会長からは「ガラの司会は大きな挑戦です。忘れられない夕べを過ごすために二人が最善を尽くすことは分かっています」というコメントがありました。
(メンデス=レイテ会長、アントニオ・デ・ラ・トーレ、クララ・ラゴ、1月11日)
★アントニオ・デ・ラ・トーレ(マラガ1968)は、「私たち二人はコメディアンではないので、おどけるつもりはありません。しかし節度をもって司会を務めます」と、二人がガラを進行する同僚であることを強調した。アカデミーから電話で要請を受けたおり、彼らは「私たちに『あなた方を信頼しています』と言いました」と、続けて「過去の事例に拘りたくないし、そうする必要があるなら他の人に電話をかけたでしょう」と語った。14回というノミネートの山を積みあげつづけたベテランは、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」(18)でやっと主演男優賞のトロフィーを抱きしめた。「ゴヤに一番嫌われた男」とも言われたが宿願を果たした。実に長い道程でした。コンビを組むクララ・ラゴとは、ダニエル・サンチェス・アレバロの『マルティナの住む街』(11)で父娘を演じ、アル中のダメ親父に扮した。今回はその埋め合わせができるでしょうか。
(マリサ・パレデスから主演男優賞のトロフィーを受け取るデ・ラ・トーレ、ゴヤ賞2019ガラ)
★長時間が毎年問題になり、受賞者スピーチの持ち時間を制限したりしましたが、今回は2時間30分は超えないと大幅な短縮がアナウンスされました。ほかに今年は新しい試みが導入されます。視聴者が「La porra de los Goya」(ゴヤ賞の鉄槌?)を通して、28カテゴリーの受賞者が誰になるかを言い当てる大衆参加型のガラになるようです。蓋を開けてみないことにはよく分かりませんが、視聴者を繋ぎとめるインタラクティブなゲームになるようです。クララ・ラゴによるとゴヤ賞ガラは「スペイン映画の祭典というだけでなく大衆のフィエスタでもある」からです。「映画は、それを観てくれる観客がいなければ意味がありません」と、観客との交わりを強調しました。
★クララ・ラゴ(マドリード1990)は、エレガントなベストドレッサーとして毎回レッドカーペットの人気者ですが、ゴヤ賞はまだ受賞がありません。イマノル・ウリベの『キャロルの初恋』でゴヤ賞2003新人女優賞にノミネートされましたが、この年は混戦の年であどけない12歳の少女は弾き飛ばされました。2004年に第1回ラテンビート映画祭のゲストとして来日したときには、すらりと背が伸びて別人のようで、「撮影後は学業に専念している」ということでした。演技だけで子役出身が生き残るのは難しい。エミリオ・マルティネス=ラサロの大ヒット作「Ocho apellidos vascos」を含めて主演作は20作ぐらいあると思いますがノミネートさえありません。字幕入りで観られる映画は玉石混交ですが、公開を含めてDVDやNetflix 配信を加えると10作くらいあるでしょうか。司会を機に飛躍の年にして欲しい。
(ベストドレッサーに選ばれたクララ・ラゴ、ゴヤ賞2020ガラ)
★ガラの制作プロダクションは、スペインの主要なテレビ・コンテンツの一つである Gestmusic(バニジェイ・イベリア)が引き受け、ティネット・ルビラとアンヘル・クストディオの演出、フェルナンド・ぺレスの脚本グループがコーディネートします。彼はパコ・レオンの『KIKI 愛のトライ&エラー』(16)の脚本を手掛けています。他に祭典にはメキシコのシンガーソングライターのナタリア・ラフォルカデ(!)、マラガ出身のミュージシャンパブロ・ロペス、フラメンコ歌手イスラエル・フェルナンデスなどの出演が明らかになりました。
*アントニオ・デ・ラ・トーレのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2018年08月27日
*クララ・ラゴのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2014年03月27日
ゴヤ賞2023栄誉賞はカルロス・サウラ*ゴヤ賞2023 ⑨ ― 2023年01月07日 20:34
現役最年長監督カルロス・サウラにゴヤ賞2023栄誉賞
★昨年の〈スペイン映画の日〉*である10月6日、スペイン映画アカデミー新会長フェルナンド・メンデス=レイテが「1950年代後半から今日に至るまで、スペイン映画の歴史に対する彼の広範かつ個人的な創造的貢献にたいして、第37回ゴヤ賞2023の栄誉賞はカルロス・サウラ」と発表した。映画監督、作家、脚本家、写真家、デザイナー、舞台演出家、ミュージカル愛好家、危険を恐れず冒険を愛し、常に前進し続けるカルロス・サウラに遅ればせながらゴヤ栄誉賞を授与することにしたようです。
(栄誉賞の発表をするメンデス・レイテ会長、2022年10月6日)
★スペインを代表する製作者エリアス・ケレヘタ、エミリアノ・ピエドラ、アンドレス・ビセンテ・ゴメスとタッグを組み、一時期チャールズ・チャップリンの義理の息子だったサウラ、ルイス・ブニュエルの友人で共同製作者、映画界だけでなくオペラでもダニエル・バレンボイムやズービン・メータと協同したほか、フラメンコのパコ・デ・ルシアやカマロン、撮影監督のヴィットリオ・ストラーロとも仕事をした国際人でもあった。スペイン民主主義移行期の1977年、ブニュエルの遺作となった『欲望のあいまいな対象』がサンセバスチャン映画祭に正式出品された折り、二人の監督は現地入りして握手を交わしている。
(ルイス・ブニュエルとカルロス・サウラ、サンセバスチャン映画祭1977)
★1950年代後半から現在まで途切れることなく作品を発表、短編、TVシリーズを含めると51作という驚異的な本数になりますが、ゴヤ胸像は『歌姫カルメーラ』(90)での監督賞、ラファエル・アスコナと共同執筆した脚色賞の2賞だけでした。サウラの代表作は、1965年の長編デビュー作『狩り』以下、『ペパーミント・フラッペ』、「悦楽の園」、成熟期に入ったと称された『従姉アンヘリカ』、自身の人生観を語り始めたという『カラスの飼育』、自分の道を選ぶという可能性を問うた『愛しのエリサ』、オスカー賞ノミネートの『ママは百歳』、1981年の金熊賞受賞の『急げ、急げ』まで、そのほとんどがゴヤ賞創設以前の製作でした。今年のガラ開催は2月11日、会場はセビーリャFIBESです。
★「私を虜にしているものに携わりながら人生を送れるのは幸運です。映画を撮り、舞台やオペラを演出し、絵を描いたり、写真を撮ったりしてきましたが、これからも同じようにしたいと思っています。アカデミーから受賞の報せをいただき、大きな喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。私たちの映画と文化を守ることは最も重要なことの一つです」というメッセージを、末娘の女優アンナ・サウラ(1994生)が代読した。かたわらにはプロデューサーのアントニオ・サウラ(1980生)が同席していた。スペイン映画の日のTV番組のようですね。
(代読するアンナ・サウラ、アントニオ・サウラ、2022年10月6日)
*〈スペイン映画の日〉というのは、2021年、スペイン文化・スポーツ大臣ロドリゲス・ウリベの肝煎りで新設されたもので、スペイン映画産業の促進を目的とし、その影響力と重要性を認識するために設けられた。10月6日が選ばれたのは、20世紀のスペインを代表する二人のシネアスト、ルイス・ガルシア・ベルランガとフアン・アントニオ・バルデムが共同監督したシリアスコメディ「Esa pareja feliz」(「あの幸せなカップル」)の撮影が1951年10月6日に終了したからだそうです。主役を名優フェルナンド・フェルナン・ゴメスが演じたこともあるようです。2021年はベルランガ生誕100周年、2022年はバルデム生誕100周年でした。
★1932年1月4日ウエスカ生れ、御年91歳の現役監督がまだ受賞していなかったとは驚きです。第70回サンセバスチャン映画祭2022にも芸術の起源についてのドキュメンタリー「Las paredes hablan」(75分)がエントリーされており、愛用のカメラを携えて現地入りするはずでしたが、犬の散歩中に転んで骨折したとかで見送られました。同年の第25回マラガ映画祭でビスナガ栄誉賞を受賞しており、世代的には孫娘にあたるカルラ・シモンからトロフィーを受け取り、「朝目が覚めると、なんてこった、まだ生きてるぞ」と、ユーモアたっぷりの受賞スピーチをしたのでした。
(カルラ・シモンからトロフィーを受け取る巨匠、マラガFF2022)
★オーディオビジュアル著作権管理協会(EGEDA)が選考母体のホセ・マリア・フォルケ賞は、縁の下の力持ちである製作者を讃える賞として始まったこともあり監督賞はありません。代わりにEGEDA金のメダルが栄誉賞に当たり、サウラは2018年に受賞しています。他に2015年の第2回フェロス栄誉賞、スペイン文化省が与える国民賞のうち映画部門は1980年から始まったのですが、その最初の映画国民賞を受賞したのがサウラでした。
(EGEDA金のメダルを受賞したサウラ、フォルケ賞2018)
★子供時代にスペイン内戦を体験したサウラは、「スペイン内戦は映画ではまだ充分に扱われていない。私が今怖れているのは、再びあの対立が起きることです。それが私を怖がらせます。その可能性は遠くない、なぜなら私たちは何も学んでいないからです」と。彼の映画では死が常に語られており、表層的には内戦がテーマでなくても内戦と深く結びついています。サウラは「家でも映画を見ており、良いものも悪いものも見ます。嫌いなものを見るのは、それが私の学ぶ方法だからです。50本の映画を撮れたのは奇跡でした」と語っている。2月11にはカメラを首から下げて元気な姿を見せてくれるでしょう。
◎カルロス・サウラ関連記事◎
*フェリックス・ビスカレットの『サウラ家の人々』(Saura (s))とフィルモグラフィーは、コチラ⇒2017年11月11日
*ベルリンFF 金熊賞受賞の『急げ、急げ』の作品紹介は、コチラ⇒2022年01月14日
*ドキュメンタリー「Zonda: folclore argentino」(15、ソンダ:アルゼンチンのフォルクローレ)の記事は、コチラ⇒2015年08月11日
*フォルケ賞EGEDA金のメダル受賞の記事は、コチラ⇒2018年01月15日
ノミネートされた候補者男優編*ゴヤ賞2023 ⑧ ― 2022年12月31日 15:33
ノミネート259名の多くが参集した前夜祭
★女優編に続いて男優編をアップしますが、〈Encuentro de nominados〉と言われる前夜祭のフォトは、女優陣ほど多く入手できなかったのでフレームからの登場です。「Modelo 77」のハビエル・グティエレスとミゲル・エランは不参加、アルベルト・ロドリゲス監督、脚本賞のラファエル・コボス、助演男優賞のヘスス・カロサが参加、ほか監督、新人監督は概ね参加しているようでした。
★主演男優賞
*ドゥニ・メノーシェは、ロドリゴ・ソロゴジェンの「As bestas」(『ザ・ビースト』)でノミネート、フォルケ賞で男優賞のトロフィーを手にしたばかりです。東京国際映画祭でも男優賞を受賞している。おそらく現地入りするはずです。
*ルイス・トサールは、フアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」でノミネート、前回のイシアル・ボリャインの「Maixabel」に続いてのノミネートです。
*ナチョ・サンチェスは、カルロス・ベルムトの「Manticora」でノミネート、監督、新人女優賞ノミネートのゾーイ・スタインと3人で参加しています。
*ハビエル・グティエレスは、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」でノミネート、おそらく受賞はないでしょう。
*ミゲル・エランは、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」でノミネート、二人とも不参加。
(グティエレスとエラン、フレームから)
★助演男優賞
*ディエゴ・アニドは、ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』でノミネート、ルイス・サエラとフランスからの移住者と対立する兄弟役で共演した。
*ルイス・サエラは、上記に同じ。東京国際映画祭に作品を代表して来日しました。ソロゴジェンの「El reino」で第33回ゴヤ賞2019助演男優賞を受賞しています。受賞の可能性ありです。
(左から、ディエゴ・アニド、ルイス・サエラ)
*ラモン・バレアは、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」でノミネート、出演本数が短編、TVシリーズを含めると3桁に上るが初ノミネートに驚く。1949年ビルバオ生れ、監督、脚本家でもある。
*フェルナンド・テヘロは、「Modelo 77」でノミネート、不参加。ダビ・セラーノのコメディ「Días de fútbol」でゴヤ賞2004新人男優賞を受賞している。助演男優賞ノミネートは2004年のナチョ・G・ベリーリャの『シェフズ・スペシャル』に続いて2回目。1967年コルドバ生れ。
(中央がフェルナンド・テヘロ、フレームから)
*ヘスス・カロサは、上記に同じ。フォルケ賞TVシリーズ部門の「Apagón」で男優賞を受賞している。ゴヤ賞絡みでは、同監督の「7 vírgenes」で2006年新人賞を受賞している。1987年セビーリャ生れ、故郷に錦を飾れるか。
★新人男優賞
*アルベール・ボッシュは、カルラ・シモンの「Alcarras」でノミネート。
*ジョルディ・プジョルは、上記に同じ。
*ミケル・ブスタマンテは、「Cinco lobitos」でノミネート。
*クリスティアン・チェカは、「En los márgenes」でノミネート。
*テルモ・イルレタは、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」でノミネート。
(左は共演者のバレリア・ソローリャ)
★今年の漢字〈戦〉がぴったりの1年でした。私たちとは思考回路の異なる人々が世界を動かしておりますが、希望を捨てずに新しい年を迎えたいと思っています。来る年は庶民にとって良い年でありますように。
ノミネートされた候補者女優編*ゴヤ賞2023 ⑦ ― 2022年12月29日 08:35
第37回ゴヤ賞の前夜祭に集まったノミネート候補者たち
(ゴヤ賞2023前夜祭、2022年12月20日)
★去る12月19日、マドリードのフロリダ・レティロでゴヤ賞2023の前夜祭が行われ、ノミネートを受けた候補者たちが集いました(2月11日の授賞式はセビーリャで開催)。主演・助演・新人の女優賞紹介は各作品ポスターでしたので、今回はノミネートされた候補者のフォトを中心にアップしました。前夜祭にもかかわらず結構ドレスアップしています。
*第37回ゴヤ賞ノミネーション発表は、コチラ⇒2022年12月08日
★主演女優賞ノミネートのうち、ライア・コスタ、アンナ・カスティーリョ、ヴィッキー・ルエンゴが参加、『ザ・ビースト』のフランス女優のマリーナ・フォイス、『神が描くは曲線で』のバルバラ・レニーは女児を出産したばかりで欠席でした。
*ライア・コスタは、アラウダ・ルイス・デ・アスアのデビュー作「Cinco lobitos」に主演、第28回フォルケ賞女優賞を受賞したばかりです。
*アンナ・カスティーリョは、ハイメ・ロサーレスの「Girasoles silvestres」に主演、フォルケ賞にもノミネートされていました。
*ヴィッキー・ルエンゴは、ミケル・グレアのカタルーニャご映画「Suro」でノミネート。
*バルバラ・レニーは『神が描くは曲線で』でノミネート、フォトはフレームから。
*マリーナ・フォイスは『ザ・ビースト』でノミネート、来年のガラに姿を見せるでしょうか。フォトはフレームから。
★助演女優賞ノミネートのうち、カルメン・マチ、アンヘラ・セルバンテスが参加、マリー・コロン、「Cinco lobitos」のスシ・サンチェス、フアン・ディエゴ・ボットの「En los márgenes」のペネロペ・クルスは不参加でした。
*カルメン・マチは、カルロタ・ペレダの「Cerdita / Piggy」に主人公の母親役で助演、フォトは新人女優賞にノミネートされたラウラ・ガランとのツーショット写真。
*アンヘラ・セルバンテスは、ピラール・パロメロの「La maternal」に主人公の母親役でノミネートされた。
*フランス女優マリー・コロンは、『ザ・ビースト』の娘役でノミネート、フォトはフレームから。
*ペネロペ・クルス、「En los márgenes」のフレームから。
*スシ・サンチェス(左)「Cinco lobitos」のフレームから。
★新人女優賞ノミネートは、アナ・オティン、ルナ・パミエス、バレリア・ソローリャ、ゾーイ・スタイン、ラウラ・ガラン、全員が集いました。今後のことを考えると、万障繰り合わせてでもでしょう。
*アナ・オティンは、カルラ・シモンの「Alcarras」出演でノミネート。
*ルナ・パミエスは、監督のエレナ・ロペス・リエラのデビュー作『ザ・ウォーター』に主演、集いには新人監督賞ノミネートの監督と参加、フォトはツーショットです。
(左がルナ・パミエス)
*バレリア・ソローリャは、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」に主演、新人男優賞ノミネートのテルモ・イルレタと参加しました。
*ゾーイ・スタインは、カルロス・ベルムトの『マンティコア』主演でノミネート。
*ラウラ・ガランは、「Cerdita / Piggy」主演でノミネート、フォルケ賞の女優賞にもノミネートされていました。フォトはフォルケ賞に出席したときのものです。
ノーチェックの冒険ファンタジー「Irati」5部門ノミネート*ゴヤ賞2023 ⑥ ― 2022年12月22日 17:24
バスク語映画「Irati」の5部門ノミネートにびっくり
★パウル・ウルキホ・アリホのアドベンチャー・ファンタジー「Irati」が、脚色・オリジナル作曲・オリジナル歌曲・衣装デザイン・特殊効果賞の5カテゴリーにノミネートされた。シッチェス映画祭2022でプレミアされ、観客賞、特殊効果賞受賞作品、バスク語映画がノミネートされるのは珍しくなくなったが、エンターテインメントのファンタジーがノミネートされたことに驚きを隠せない。キャストはエネコ・サガルドイ(『アルツォの巨人』)、イツィアル・イトーニョやナゴレ・アランブル(『フラワーズ』)、イニィゴ・アランブル、ラモン・アギーレなど、バスクを代表する俳優が出演している。
「Irati」
製作:Bainet Zinema / Ikusgarri Films / Kilima Media / Irati Zinema
協賛ICAA / RTVE / Triodos Bank
監督・脚本:パウル・ウルキホ・アリホ
音楽:アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ’Mursego’
撮影:ゴルカ・ゴメス・アンドリュー
編集:エレナ・ルイス
衣装デザイン:ネレア・トリホス
プロダクション・デザイン:ミケル・セラーノ
美術:ゴルカ・アルノソ、イサスクン・ウルキホ、他
特殊効果:ジョン・セラーノ、(ビジュアル効果)ダビ・エラス、他
製作者:イニャキ・ブルチャガ、パウル・ウルキホ・アリホ、フアンホ・ランダ、(エグゼクティブ)ジョネ・ミレン・ゴエナガ、他
*カラーはゴヤ賞にノミネートされた人。
データ:製作国スペイン=フランス、2022年、バスク語、アドベンチャー、ファンタジー、114分、撮影地アラゴン州ウエスカのロアーレ城、アラバ、ギプスコア、ナバラなど、2021年秋クランクイン。ロアーレ城は保存の良いロマネスク様式の城砦で他作品でも使用されている。
映画祭・受賞歴:シッチェス映画祭2022観客賞・特殊効果賞・メイクアップ賞受賞、第33回サンセバスチャン・ファンタスティック・ホラー映画週間観客賞、テネリフェ・イスラ・カラベラFF 観客賞・特殊効果賞など受賞。公開スペイン2023年2月24日
キャスト:エネコ・サガルドイ(エネコ)、エドゥルネ・アスカラテ(イラティ)、イツィアル・イトーニョ(マリ)、ラモン・アギーレ(ビリラ)、イニィゴ・アランブル(エネコ X)、イニィゴ・アランバリ、ナゴレ・アランブル(オネカ)、他多数
ストーリー:舞台は8世紀のバスク地方、スペイン北部でキリスト教が異教の文化に優位にたったとき、ピレネー山脈を越えようとしていたカール大帝軍の攻撃に直面した、ロンセスバジェス谷のリーダーは古代の女神に助けを求めます。命を捧げるという血の契約によって敵を打ち負かしますが、新しい時代には村の住民を守り導くことを息子のエネコに約束させる前でした。数年後、エネコは使命をはたす約束に直面しています。彼はカール大帝の膨大な宝物のかたわらに異教徒の方法で埋葬されている父親の遺体を取り戻します。自身のキリスト教信仰にもかかわらず、この地域の謎めいた異教の女性イラティの助けが必要になってくる。二人の若者は、「名前をもつすべてが存在する」奇妙で荒れ果てた奥深い森の中に入り込んでいく。カール大帝のロンセスバジェスの戦いに着想を得た冒険ファンタジー。
(フレームから)
★パウル・ウルキホ・アリホ監督紹介:1984年ビトリア生れ、監督、脚本家、製作者、フィルム編集者。2011年「Jugando con la muerte」(18分ミステリーコメディ)で短編デビュー、2012年「Monsters Do Not Exist」(10分)、2015年「El bosque negro」(15分)はエルチェ・ファンタスティックFF特別賞、トランシルバニア短編審査員賞、ほか受賞。
(パウル・ウルキホ・アリホ監督)
★2017年、コメディタッチのファンタジー・ホラー「Errementari」(98分、バスク語)で長編デビュー、アレックス・デ・ラ・イグレシアやカロリナ・バングたちが製作を手掛け、脚本はアシエル・ゲリカエチェバリアが監督と共同執筆、音楽はフランス出身だがバスクに根を下ろして活躍しているパスカル・ゲーニュ、撮影監督に新作と同じゴルカ・ゴメス・アンドリューが参画、キャストは鍛冶屋にカンディド・ウランガ、少女にウマ・ブラカグリアを起用、新作主演のエネコ・サガルドイが悪魔、他にラモン・アギーレ、イツィアル・イトーニョなどがクレジットされている。また新作で特殊効果賞にノミネートされているジョン・セラーノとダビ・エラスがゴヤ賞2019でもノミネートされていた。邦題『エレメンタリ 鍛冶屋と悪魔と少女』で2018年 Netflix で配信されている。
(デビュー作「Errementari」のポスター)
★キャスト紹介:エネコ役のエネコ・サガルドイ(ビスカヤ1994)は、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの実話「Handia」(17『アルツォの巨人』)でゴヤ賞2018新人男優賞、スペイン俳優組合新人賞、シネマ・ライターズ・サークル賞を受賞、ほかTVシリーズ「Patria」(20)に出演、ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mia y Moi」(21)、ウルキホ・アリホの長編2作に主演している。イラティ役のエドゥルネ・アスカラテは、TVシリーズ「Gutuberrak」(2018~19、5話)でデビュー、ダビ・ペレス・サニュドの短編「Vatios」(22、14分)、今回主役イラティに抜擢された。
(エネコ役のエネコ・サガルドイ、フレームから)
(イラティ役のエドゥルネ・アスカラテ、同)
★マリ役のイツィアル・イトーニョは、TVシリーズ『ペーパー・ハウス』でお馴染みですが、オネカ役のナゴレ・アランブルと、ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガの『フラワーズ』(14)で共演している。イニィゴ・アランブルは、『アルツォの巨人』、ラモン・アギーレは1986年デビューの大ベテラン、出演作は3桁に達する。TVシリーズ『ペーパー・ハウス』、『エレメンタリ~』、『アルツォの巨人』ではサガルドイの父親役を演じている。バスク語話者は少ないせいか同じ俳優の共演が目立つ。
★スタッフ紹介:オリジナル作曲・オリジナル歌曲賞にノミネートされている、アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギは、パブロ・アグエロの「Akelarre」(20)でタッグを組んでゴヤ賞2021のオリジナル作曲賞、イベロアメリカ・プラチナ賞の音楽賞を受賞している。カジェハはアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」でフェロス賞2023のオリジナル作曲賞にもノミネート、歌手でもあるマイテ・アロイタハウレギは ’Mursego’ のほうで知られており、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」(22)も手掛けている。衣装デザイン賞ノミネートのネレア・トリホスは、「Akelarre」で受賞、「Errementari」、アナ・ムルガレンのコメディ「García y García」(21)、フェリックス・ビスカレットの「No mires a los ojos」(22)などを手掛けている。
*『フラワーズ』、『アルツォの巨人』、「Akelarre」、「La consagración de la primavera」、「Cinco lobitos」、「García y García」、TVシリーズ「Patria」は、当ブログで作品紹介をしています。
カルロタ・ペレダの「Cerdita」*ゴヤ賞2023 ⑤ ― 2022年12月19日 19:17
ラウラ・ガランのパーフォーマンスに絶句する?
★カルロタ・ペレダのデビュー作「Cerdita」は、前回触れたようにゴヤ賞2019短編映画賞受賞作「Cerdita」(14分)の延線上にあり、主役サラを同じラウラ・ガランが演じている。ペレダ監督が女優、モデル、メディア・パーソナリティとして活躍していたラウラ・ガランに接触したのは2017年、1986年生れの女優は既に30歳を超えていたから、10代の女の子に化けるには若干無理があったのではなかろうか。短編はメディナ・デル・カンポ映画祭2018でプレミアされ、国内は勿論フランスを含めた欧米の映画祭に出品され受賞歴を誇ることになった。短編よりさらに体重と年齢を増やした主役以外はキャストを総入れ替え、長編デビューを果たした。
(女優ラウラ・ガラン、カルロタ・ペレダ監督、撮影リタ・ノリエガ)
「Cerdita」(英題「Piggy」)
製作:Morena Films(西)/ Backup Media(仏)/ Cerdita AIE /
協賛:RTVE / Movister+ / Comunidad de Madrid 他
監督・脚本:カルロタ・ペレダ
音楽:オリヴィエ・アルソン
撮影:リタ・ノリエガ
編集:ダビ・ペレグリア
キャスティング:パウラ・カマラ、アランサ・ベレス
プロダクション・マネージメント:サラ・E・ガルシア
プロダクション・デザイン:オスカル・センペレ
衣装デザイン:アランシャ・エスケロ
メイクアップ&ヘアー:パロマ・ロサノ、ナチョ・ディアス
製作者:メリー・コロメル、(エグゼクティブ)ピラール・ベニト、(共同)ジャン=バティスト・ババン、デビッド・アトラン・ジャクソン、ほか
データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語・英語、2022年、スリラー・ホラー、99分、撮影地エストレマドゥーラ州カセレスのビジャヌエバ・デ・ラ・ベラ、2021年7月17日クランクイン、公開スペイン10月14日、ほかカナダ、フランス、オランダ、フィンランド、米国(限定)、インターネット上映(アルゼンチン、米国)など、配給Filmax 他
映画祭・受賞歴:サンダンス映画祭2022でプレミア、シアトル・インデペンデントFF、ブエノスアイレス・インデペンデントFF、トランシルバニア、メルボルン、ブリュッセル、独ファンタジー・フィルムフェス、サンセバスチャン(サバルテギ-タバカレラ部門)、シッチェス、リオデジャネイロ、ベルゲン、テッサロニキ、台北・ゴールデンホース、ベルファスト、ほか多数。Grimmfest 2022 監督賞と女優賞、トゥルーズ・シネエスパーニャ2022女優賞受賞。フォルケ女優賞(受賞ならず)、フェロス賞2023(作品・監督・主演女優・助演女優・ポスターエドゥアルド・ガルシア・予告編マルタ・ロンガス)ノミネート、シネマ・ライターズ・サークル賞2023(新人監督・助演女優・新人女優・脚色)ノミネート。
(左から、ピラール・カストロ、監督、ラウラ・ガラン、カルメン・マチ、
サンセバスチャン映画祭2022フォトコール)
キャスト:ラウラ・ガラン(サラ)、リチャード・ホームズ(見知らぬ男)、カルメン・マチ(サラの母親アスン)、イレネ・フェレイロ(クラウディア)、カミーユ・アギラル(ロチ)、クラウディア・サラス(マカ)、ホセ・パストール(ペドロ)、フリアン・バルカルセル(サラの父親トマス)、アメッツ・オチョア(サラの弟)、フェルナンド・デルガド=イエロ(フアンカルリートス)、ピラール・カストロ(エレナ)、チェマ・デル・バルコ(フアン・カルロス)、フレド・タティエン(ロチ神父)、マレナ・グティエレス(セニョーラ・マリア)、ほか
*ゴチック体はゴヤ賞(監督・脚色・主演女優・助演女優・プロダクション・メイクアップ)にノミネートされている。作曲家オリヴィエ・アルソンはソロゴジェンの『ザ・ビースト』でノミネートされており、本作は残念でした。
ストーリー:エストレマドゥーラの真夏の暑さは地獄、サラのような体重オーバーの少女には絶え間ないイジメを意味します。彼女は外見のため自分を愛せず自分を否定して引きこもる。少女時代には仲良しだったクラウディアの仲間のロチやマカから嫌がらせを受けている。彼女たちのいじめは凄まじく尋常ではない。しかし見知らぬ男が村にやって来ていじめっ子を誘拐するのを目撃したとき、警察に届けるべきか、あるいは復讐を遂げるべきか、ジレンマに直面する。憎しみが憎しみを呼び、村は恐怖に包まれる。
★監督紹介:カルロタ・ペレダ、1975年1月12日マドリード生れ、監督、脚本家。映画はマドリード共同体映画視聴覚学校ECAMで学ぶ。法律を専攻していたので家族は映画に進むことに反対でした。ECAM入学も秘密でしたので学費に困り、並行してテレビ界で仕事をした。TVシリーズ「Periodistas」の脚本家としてスタートを切る。「Lex」(08、2話)、「Acacias 38」(15、15話)、「El secreto de Puente Viej」(18~19、10話)他を監督する。映画は以下の通りだが、共同監督作品は除外した。
(短編映画賞のトロフィーを手にしたカルロタ・ペレダ、ゴヤ賞2019)
2016「Las rubias」(17分)が国内外の140の映画祭で上映、マドリード「短編週間」審査員賞・テレマドリード賞、メディナFFヤング審査員賞、メディナ・デル・カンポ「映画週間」ヤング審査員賞、ソリア市短編コンクール賞などを受賞した。
2018「Cerditas」(14分)は、ゴヤ賞2019短編部門作品賞、ホセ・マリア・フォルケ賞短編賞、ソリア市短編コンクール・ヤング審査員賞、ドノスキノFF脚本賞、サラゴサFF作品賞、短編ファンタスティックLa vieja Encina FF観客賞、タピアレスFF審査員賞、アイダホ・ホラーFF外国部門作品賞、マドリード「短編週間」作品賞ほか、パレンシアFF観客賞、タラベラ・デ・ラ・レイナ短編FFパベス賞(作品・監督・脚本)、サントゥルシネ審査員賞、シン・シティ・ホラーFF審査員賞、各受賞。
2020「There will be Monster」(5分)、アルカラ・デ・エナレス短編FF脚本賞、サン・クガ・ファンタスティック審査員賞受賞。
2022「Cerdita/Piggy」割愛
2023「La ermita」次回作
(短編「Las rubias」のポスター)
★新人監督賞ノミネートとはいえ、TVシリーズを含めるとキャリアは長い。短編「Cerditas」の構想は、監督によると、「いじめについてのブラックユーモアとホラーをミックスした映画を作りたいと思っていた。カセレスで夏を過ごしていたのですが、暑さは尋常でなくシエスタの時間には誰も外出しません。そこで娘がシエスタをしている一番暑い時間帯にプールに出かけていた。するといつも同じ女の子を見かけました。まさかプールに入るつもり?」そこで少女は何をするつもりかというアイデアが浮かんだ。急いで坂道を上って家に着くと汗びっしょり、もう夕方には書き始めていました。監督自身も10代の頃には肥満に苦しんでいた。夏休みになると殊更辛かった。その経験を織り込んだ〈アメリカン・ゴシック〉を構想した。
★主役の女優探しに2年間費やした。ラウラ・ガランがキャラクターを完全に理解していたことに喜びと安堵を覚えました。「ガランのお蔭で、憎しみがさらに憎しみを生むだけであることが明らかな短編映画に纏めることができた」と監督。「スペインの映画業界はサウラやアルモドバル、ボリャインやコイシェ、ネット配信のTVシリーズのお蔭で注目を集めています。しかし忘れて欲しくないのはパコ・プラサやバラゲロのホラー映画です」とインタビューに応えている。
★キャスト紹介:ラウラ・ガラン、1986年グアダラハラ生れ、女優、モデル、メディア・パーソナリティ。2017年6月、舞台演出家パトリック・ベンコモ・ウェーバーと結婚、2児の母、一人は前妻の子供。弟ハビエル・ガランも俳優。2006年TVシリーズ「Brigada policial」でデビュー、映画デビューはカルロス・アウレコエチェアの短編「Yo, Ulrike, grito」(15)、「Cerdita」(18)、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)、「There will be Monster」、ダビ・ガラン・ガリンドの「Origenes secretos」(20『ヒーローの起源~アメコミ連続殺人事件』Netflix配信)、サラ・バンバ&イバン・マルティン・ルエダスの短編「Familias」(20)、次回作出演はTVシリーズ、アリツ・モレノの「Zorras」(23、8話)が進行中。見知らぬ男役のリチャード・ホームズは、ダニエル・カルパルソロの『ライジング・スカイハイ』(20)に出演している。
(リチャード・ホームズ扮する見知らぬ殺人鬼とサラ)
(撮影中の監督とラウラ・ガラン)
(カルメン・マチ扮するサラの母親アスンとサラ)
(フリアン・バルカルセル扮する肉屋を営む父親トマスとサラ、後方は監督)
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