第11回イベロアメリカ・プラチナ賞2024*結果発表 ― 2024年05月03日 17:56
作品賞を含めて6カテゴリーを制したバヨナの『雪山の絆』

★4月20日、メキシコのリビエラ・マヤのシカレ公園内にあるエルグラン・トラチコ劇場で第11回イベロアメリカ・プラチナ賞の授賞式がありました。本賞については2019年の第6回以降ノミネーションも結果発表も、金太郎飴の結果にうんざりして記事にしませんでした。今回アップするのは、一つにはフアン・アントニオ・バヨナの『雪山の絆』がフィクション部門の作品賞以下6カテゴリーを独占したこと、23カテゴリーのうち16部門をスペイン作品が制するというラテンアメリカ諸国の不振、これではイベロアメリカ映画賞の名が泣くばかりです。さらに昨年12月23日アルゼンチン大統領となったハビエル・ミレイの映画産業を脅かす言動が話題にのぼったこともあってアップすることにしました。
★『雪山の絆』で6冠(作品・監督・撮影・編集・録音・男優賞)を制したフアン・アントニオ・バヨナは、昨今のアルゼンチンにおけるミレイ大統領の文化軽視に警鐘を鳴らした。監督賞受賞の舞台で映画は「表現の道具」として守る必要性があるとスピーチした。私が「本日この舞台に立っているのは両親のお蔭です。両親は学んだり仕事を選んだりする自由を持ちませんでした。父親は15歳から、母親は9歳から働き始めました。しかし彼らにとって子供たちの教育や教養は最も重要な課題だったのです」と語った。バルセロナのトリニダード・ビエハの貧しい家庭で育ったことは、スペイン版ウイキペディアにも載っていますが、このようなハレ舞台で話すのは初めてではないでしょうか。彼の謙虚さ常識にとらわれない斬新な発想の源は、この両親のお蔭と思わずにはいられない素晴らしいスピーチでした。

(勢揃いしたトロフィー6個の『雪山の絆』クルー、
左からアンドレス・ジル、オリオル・タラゴ、監督、エンツォ・ヴォグリンチッチ、
アルゼンチンの俳優フェリペ・ゴンサレスとフアン・カルソ)
*第11回イベロアメリカ・プラチナ賞2024受賞結果*
*映画部門*
◎作品賞(フィクション)
「La sociedad de la nieve」(『雪山の絆』)スペイン&アルゼンチン、
監督フアン・アントニオ・バヨナ


(出演者に囲まれた監督、左フアン・カルソ、右フェリペ・ゴンサレス)
◎コメディ賞(フィクション)
「Bajo terapia」スペイン、監督ヘラルド・エレーロ
*「映画の質は俳優たちと無関係ではない、彼らと一緒に仕事ができて満足している」と出演者を称賛した。

◎オペラ・プリマ賞
「20,000 especies de abejas」(『ミツバチと私』)スペイン、
監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
*『雪山の絆』に次ぐ4冠で、監督は「多様性」が認められたことを称揚した。製作者のバレリー・デルピエールは「デビュー作として撮るのは冒険だったが、この映画をご覧になれば私たちの現実を見つけることができます。結局、映画は現実の扉なのです」とスピーチした。
*このカテゴリーは、アルゼンチンの「Blondi」、プエルトリコの「La pecera」、チリの「Los colonos」(『開拓者たち』)、ベネズエラの「Simón」、コスタリカの「Tengo sueños eléctricos」と、まんべんなくノミネートされたがスペイン映画が受賞した。当ブログではすべての作品を紹介しています。

(スピーチする製作者のバレリー・デルピエール)
◎ドキュメンタリー賞
「La memoria infinita」 チリ、監督マイテ・アルベルディ


◎アニメーション賞(フィクション)
「Robot Dreams」(『ロボット・ドリームズ』)スペイン&フランス、
監督パブロ・ベルヘル

◎監督賞
フアン・アントニオ・バヨナ 『雪山の絆』
*原作なしに本作は存在しなかったこと、アンデスの事故で生還した人々、生還できなかった人々やその家族に感謝の言葉を述べた。壇上に上がるまえに出演者たちと抱き合って共に喜び合っていた姿が印象的でした。

◎脚本賞
エスティバリス・ウレソラ 『ミツバチと私』

◎撮影賞
ペドロ・ルケ 『雪山の絆』
*受賞者欠席のため代理でフアン・アントニオ・バヨナ監督が登壇して、受賞者のメッセージを読み上げた。
◎オリジナル音楽賞
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 『ロボット・ドリームズ』

◎編集賞
アンドレス・ジル&ジャウマ・マルティ 『雪山の絆』

(アンドレス・ジルが登壇した)
◎美術賞
ロドリゴ・バサエス 「El conde」(『伯爵』) 監督パブロ・ラライン


◎録音賞
オリオル・タラゴ、ホルヘ・アドラドス、マルク・オルツ 『雪山の絆』

(オリオル・タラゴが登壇した)
◎女優賞
ライア・コスタ 「Un amor」(『ひとつの愛』)スペイン、監督イサベル・コイシェ
*受賞を予期していなかったのか欠席、本作での受賞は初かもしてない。友人のカロリナ・ジュステが代理で受けとった。彼女はダビ・トゥルエバの新作「Saben aquell」でノミネートされていた。

(代理のカロリナ・ジュステ)
◎男優賞
エンツォ・ヴォグリンチッチ 『雪山の絆』
*「チャンスに恵まれないウルグアイから来て、この幸運に感謝したい。誰でも人生を変えるチャンスが与えられる」と。ずっと受賞を取り逃がしていたから喜びも一入身にしみた受賞者でした。何しろ体重を半分くらいに落としたのでした。


◎助演女優賞
アネ・ガバライン 『ミツバチと私』
*受賞者欠席で、製作者と監督が登壇した。

(アネ・ガバラインのスマホのメッセージを読み上げるウレソラ監督)
◎助演男優賞
ホセ・コロナド 『瞳をとじて』スペイン、監督ビクトル・エリセ
*マドリードで撮影中の受賞者は欠席で、製作者の一人が代理で受けとった。


(ホセ・コロナド、フレームから)
◎価値ある映画と教育賞
『ミツバチと私』
*TVシリーズ*
◎作品賞
「Barrabrava」(8話『バーラブラバ~ギャングたちの熱狂』)アルゼンチン、ウルグアイ
創案者ヘスス・ブラセラス
*エグゼクティブプロデューサーのサンティアゴ・ロペスが登壇した。「受賞するとは思わなかったのでスピーチを用意していなかった。キャスト陣、スタッフたち感謝したい」とスピーチした。プライムビデオ配信が2023年6月23日に開始されている。

(サンティアゴ・ロペス)

◎創案者賞
ダニエル・ブルマン 「Iosi, el espía arrepentido」
(『悔い改めたスパイ』シーズン2、8話)アルゼンチン
*二重スパイのイオシ・ぺレスの物語、プライムビデオ配信2023年10月27日。受賞者は『僕と未来とブエノスアイレス』の監督、脚本家、製作者。1994年のアルゼンチン・イスラエル相互協会ビル爆破事件を背景にしている。『安らかに眠れ』のセバスティアン・ボレンステインも監督の一人として参加している。


◎女優賞
ロラ・ドゥエニャス 「La Mesías」スペイン 創案者ロス・ハビス
*連戦連勝の受賞者です。


◎男優賞
アルフレッド・カストロ 「Los mil días de Allende」(全4話)
チリ、スペイン、アルゼンチン、監督ニコラス・アクーニャ
*チリ70年代、サルバドール・アジェンデ大統領(1970~73)を体現した演技で受賞した。残念ながら欠席、トロフィーは代理が受けとり、受賞者のスピーチ「20世紀のもっとも重要な政治家にして思想家アジェンデを演じることができたのは望外の喜びでした」をスマホで読み上げた。

(受賞者のメッセージを読み上げる)

◎助演女優賞
カルメン・マチ 「La Mesías」
◎助演男優賞
アンディ・チャンゴ 「El amor después del amor」(全8話)アルゼンチン、米国
創案者フアン・パブロ・コロジエ
*アルゼンチンのシンボリックなロックスター、フィト・パエスの人生を辿るドラマ、受賞者はチャーリー・ガルシアを演じた。Netflix配信の可能性あり。

(アルゼンチンでは「文化が抹殺されている」とスピーチした)
◎栄誉賞
セシリア・ロス
★プレゼンターのエンリケ・セレソからトロフィーを受けとり「私たちの映画に注意を払わねばなりません。何故なら常に危険にさらされていますから。イベロアメリカ共同体は一つになり、ある国に問題が生じれば助け合わなければなりません」とスピーチした。1956年ブエノスアイレス生れ、アルモドバルのミューズの一人、アルゼンチンとスペインの国籍を持つ女優。
*キャリア&フィルモグラフィーの主な紹介記事は、


(エンリケ・セレソからトフィーを受け取る受賞者)
A.J. バヨナ監督がパルムドールの審査員に*カンヌ映画祭2024 ― 2024年05月07日 16:25
審査委員長は『バービー』のグレタ・ガーウィグ監督に!

★間もなく開催される第77回カンヌ映画祭2024(5月14日~25日)のコンペティション部門の審査団が発表になっています。日本からも是枝裕和監督が選出されたことがニュースになっていました。審査団の委員長に『バービー』や『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督(1983)が選ばれ、女性監督が委員長を統べるのはジェーン・カンピオン以来とか。女優、脚本家としての豊富なキャリアの持ち主だが長編映画としては『バービー』が3作目になり、40歳の委員長は最年少ではないがいかにも若い。以下の9名がパルムドールを選ぶ重責を担うことになりました。
★審査委員長グレタ・ガーウィグ(米の監督・脚本家・女優)、オマール・シー(仏の俳優・製作者)、エブル・ジェイラン(トルコの脚本家・写真家)、リリー・グラッドストーン(米の女優)、エヴァ・グリーン(仏の女優)、ナディーン・ラバキー(レバノンの監督・脚本家・女優)、A.J. バヨナ(西の監督・脚本家・製作者)、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(伊の俳優)、是枝裕和(監督・脚本家)

(審査委員長グレタ・ガーウィグ監督)

★バヨナ監督は、長編デビュー作『永遠のこどもたち』(07)がカンヌ映画祭と併催の「批評家週間」にノミネートされた以外、本祭との関りは薄く、最近イベロアメリカ・プラチナ賞6冠の『雪山の絆』もベネチア映画祭でした。オマール・シーは、東京国際映画祭2011のさくらグランプリ受賞作『最強のふたり』で刑務所から出たばかりで裕福な貴族の介護者を演じた俳優、ナディーン・ラバキーは、2018年の審査員賞を受賞した『存在のない子供たち』の監督、2018年は是枝監督が『万引き家族』でパルムドールを受賞した年でした。

(A.J. バヨナ監督、ベネチア映画祭2023年9月10日)
★興味深いのがトルコのエブル・ジェイランで、カンヌの常連監督である夫ヌリ・ビルゲ・ジェイランの共同脚本家として活躍している。2003年のグランプリ『冬の街』、2008年の監督賞『スリー・モンキーズ』、2011年のグランプリ『昔々、アナトリアで』、そして劇場初公開となった2014年のパルムドール『雪の轍/ウィンター・スリープ』などの脚本を共同で執筆している。2014年の審査委員長がジェーン・カンピオン監督でした。
★また異色の審査員がリリー・グラッドストーン、先住民の血をひく女優で、2016年のケリー・ライヒャルトの群像劇『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』で、複数の助演女優賞を受賞している。またスコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で、先住民出身の女優として初めてゴールデングローブ賞2024主演女優賞を受賞したばかり、今年の審査団はコンペティションの作品以上に興味が尽きない。
★スペインからは、カンヌ本体とは別組織が運営する「批評家週間」(5月15日~24日)の審査員に、『ザ・ビースト』(公開タイトル『理想郷』)のロドリゴ・ソロゴジェンが選ばれています。本作は2022年カンヌ・プレミェール部門で上映されました。彼にしろバヨナにしろ、比較的若手ながらバランス感覚の優れたシネアストが審査員に選ばれるようになりました。

(本作でセザール外国映画賞を受賞したロドリゴ・ソロゴジェン、2023年2月24日)
『エル・ニド』の監督ハイメ・デ・アルミニャン逝く*訃報 ― 2024年05月12日 14:25
ブラックコメディ「Mi querida señorita」に隠された批判精神

(在りし日のハイメ・デ・アルミニャン)
★去る4月9日、フランコ時代を生き抜いた監督にして脚本家、戯曲家のハイメ・デ・アルミニャンが97歳の長い生涯を閉じました。映画、テレビ、舞台と半世紀以上にわたって活躍した。1927年3月9日マドリード生れ、スペイン内戦時代の子供としてサンセバスティアンで育ちました。マドリードのコンプルテンセ大学で法学を学び、卒業後は弁護士のかたわら雑誌に記事を書き、1957年にTVシリーズの脚本家としてスタートを切りました。1950年代にはカルデロン・デ・ラ・バルカ賞やロペ・デ・ベガ賞など受賞歴のある劇作家としての地位を築いていた。当時人気のあったホセ・マリア・フォルケ監督作品の脚本を手掛けていました。以下に簡単なキャリア&フィルモグラフィーをアップしております。
★「Mi querida señorita」(72)と「El nido」(80)で2度の米アカデミー賞外国語映画(現在の国際長編映画)部門にノミネートされながら、日本での公開作品はおそらく『エル・ニド』1作かもしれません。妻を亡くしたばかりの初老の孤独な男にエクトル・アルテリオ、早熟で子供特有の攻撃性と嫉妬心を見事に演じた13歳の女の子にアナ・トレント、二人の複雑に絡み合った愛憎関係、誰からも理解されない無償の愛を描いた作品。民主主義移行期とはいえフランコ時代の残滓があった時代の映画としては斬新なテーマだった。1984年11月に開催された「第1回スペイン映画祭」(全10作)に『巣』の邦題で上映された後、1987年に上記のタイトル『エル・ニド』として公開されました。

(エクトル・アルテリオとアナ・トレント、『エル・ニド』から)

(日本語版のチラシ)
★この映画祭には『クエンカ事件』のピラール・ミロー監督を団長にフアン・アントニオ・バルデム、『血の婚礼』のカルロス・サウラ、『庭の悪魔』のマヌエル・グティエレス・アラゴン、『ミケルの死』のイマノル・ウリベ、『パスクアル・ドゥアルテ』のリカルド・フランコ、それにハイメ・デ・アルミニャンが各々自身の新作を携えて来日しました。この映画祭にはビクトル・エリセの『エル・スール 南』も上映されましたが、来日は翌年の公開まで待たされました。20世紀スペイン映画史に残る粒揃いだったことが分かります。
★アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた「Mi querida señorita」(仮題「愛しのお嬢さま」)は、〈お嬢さま〉として育てられながら中年になって男性であることが分かり、性転換手術を受け、かつて女中として雇っていた若い女性に恋をするコメディ。女性が社会に出ることを求めていない教育制度のせいで、男性として生きようとするも仕事が見つからない。成人学級に入学して高等教育を受けるなどコメディ仕立てでカモフラージュされているが、性転換、タブーであった性的指向をテーマにしており、随所に社会批判が首をだす。フランコ検閲時代によく脚本がパスしたと思わずにいられない。脚本はホセ・ルイス・ボラウとの共同執筆、主役のホセ・ルイス・ロペス・バスケスがシカゴ映画祭1972の銀のヒューゴー賞主演男優賞を受賞した他、シネマ・ライターズ・サークル賞(監督・脚本・男優賞)、サン・ジョルディ賞1973の作品賞ほか受賞歴多数。

★第28回ゴヤ賞2014の栄誉賞を受賞、当時すでに86歳でしたが「シネアストに引退なんて言葉はないんです。私と同じ思いのシネアストたちは引退なんかできないのです」と語っていました。日刊紙エル・ムンドのコラムニストだったし、戯曲を執筆しておりましたから現役でした。しかし、映画は2008年の「14, Fabian Road」を最後に撮っておりません。本作はマラガ映画祭にノミネートされ、共同執筆した子息エドゥアルド・アルミニャンと銀のビスナガ脚本賞を受賞しました。愛の物語とはいえ、復讐、秘密、不信、許し、忘却が入りまじって語られ、何よりもキャストが素晴らしかった。『エル・ニド』主演のアナ・トレント、1995年の「El palomo cojo」出演のアンヘラ・モリーナ、アルゼンチン出身のフリエタ・カルディナリ、イタリアのオメロ・アントヌッティ、フェレ・マルティネスなどが起用された。
★代表作の一つ「El palomo cojo」には、1989年TVシリーズのヒット作「Juncal」(全7話)で主役の元花形闘牛士フンカルに扮したパコ・ラバル、アルモドバルのかつての「ミューズ」たちのカルメン・マウラやマリア・バランコも初めて参加した。サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアルにノミネートされ、翌年のゴヤ賞にも脚色賞にノミネートされましたが受賞は叶いませんでした。結局、ゴヤ賞は2014年の栄誉賞だけ、当時のスペイン映画アカデミー会長エンリケ・ゴンサレス・マチョからトロフィーを受けとりました。


(ハイメ・デ・アルミニャン、2014年1月20日、ゴヤ賞ガラ)
★1974年の「El amor del capitán Brando」は、ベルリン映画祭に出品され、観客賞を受賞、ナショナル・シンジケート・オブ・スペクタクル監督賞を受賞している。亡命先から帰国した初老の男と女教師、その教え子との三角関係を描いている。性的、政治的抑圧をテーマにすることからベルリンとは相性がよく、1985年の「Stico」も出品され、フェルナンド・フェルナン・ゴメスに銀熊主演男優賞をもたらした。
★時には過小評価されることもあったが、新しい世代のロス・ハビスことハビエル・アンブロッシとハビエル・カルボによって「Mi querida señorita」のリメイク版が製作されているようです。Netflixということなのでいずれ字幕入りで鑑賞できるかもしれません。

(ポスターとロス・ハビス)
スペイン移住を決意したアルフレッド・カストロ*チリの才能流出 ― 2024年05月23日 09:57
「チリではプラチナ賞なんか誰も気にかけない!」

(ズームでインタビューに応じるカストロ、2024年4月25日、メキシコ・シティ)
★先月、4個めのイベロアメリカ・プラチナ賞(TV部門男優賞)を受賞したアルフレッド・カストロのスペイン移住のインタビュー記事に接しました。ニコラス・アクーニャの「Los mil días de Allende」(全4話、仮題「アジェンデの1000日」)でサルバドール・アジェンデ大統領(1970~73)を体現した演技で受賞したのですが、このドラマ出演とスペイン移住がやはりリンクしているようです。ラテンアメリカ諸国のなかでは、チリは経済こそ比較的安定していますが、文化軽視が顕著で芸術にはあまり敬意を払いません。多くのシネアストがヨーロッパやアメリカを目指す要因の一つです。インタビュアーは2022年からチリに在住するエルパイスの記者アントニア・ラボルデ、メキシコのプロダクションのための撮影が終了したばかりのカストロとズームでインタビュー、以下はその要約とカストロのキャリア&フィルモグラフィーを織り交ぜて紹介したい。

(アジェンデ大統領に変身するためのメイクに毎日3時間を要した)
★チリだけでなくアルゼンチンを筆頭にラテンアメリカ諸国やスペインなどの映画に出演していることもあって、当ブログでも記事にすることが多い俳優の一人です。しかしその都度近況をアップすることはあっても纏まったキャリア紹介をしておりませんでした。パブロ・ララインの長編デビュー作「Fuga」、続く「ピノチェト政権三部作」(『トニー・マネロ』『ポスト・モーテム』『Noノー』)、『ザ・クラブ』や『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』、『伯爵』と監督の主要作品で存在感を示しているパフォーマーです。

(観客を震撼させた『トニー・マネロ』のポスター)
★アルフレッド・アルトゥール・カストロ・ゴメスは、1955年サンティアゴ生れの68歳、俳優、舞台演出家、映画監督、その幅広い演技力でラテンアメリカを代表する俳優の一人、特にチリの舞台芸術ではもっとも高く評価されている演技者及び演出家と言われています。5人兄弟でサンティアゴで育った。母親を10歳のとき癌で失っている。ラス・コンデスのセント・ガブリエル校、プロビデンシアのケント校、ラス・コンデスのリセオ・デ・オンブレス第11校で学んだ。1977年チリ大学芸術学部演劇科卒、同年APESエンターテイメント・ジャーナリスト協会賞を受賞する。同じくイギリスのピーター・シェイファーの「Equus」で舞台デビュー、専門家から高い評価を得る。
★1978年から1981年のあいだ、創設者の一人でもあったテアトロ・イティネランテで働く。1982年、チリ国営テレビ制作の「De cara al mañana」でTVでのキャリアをスタートさせた。翌年ブリティッシュ・カウンシルの奨学金を得てロンドンに渡り、ロンドン音楽演劇アカデミーで学んだ。1989年にはフランス政府の奨学金を受け、パリ、ストラスブール、リヨンで舞台演出の腕を磨き、帰国後テアトロ・ラ・メモリアを設立したが、2013年資金難で閉鎖した。彼は、チリの舞台芸術で高く評価されている演技者であり演出家ではあるが、大衆向けではない。傾向として登場人物に複数の人格をあたえ、それを厳密に具現化すること、比喩に満ちた演出で知られています。「私は、2000人が見に来てくれる劇場を作っているわけでも、起承転結のある物語を作っているわけでもありません」と語っている。
★その後フェルナンド・ゴンサレス演劇アカデミーの教師及び副理事長として働く。カトリック大学の演劇のため、ニカノール・パラが翻案した「リア王」、ホセ・ドノソの小説にインスパイアーされた「Casa de luna」他を上演した。2004年にサラ・ケインの戯曲「Psicosis 4:48」を演出、翌年、チリのアーティストに与えられるアルタソル賞を演劇部門で受賞、主演のクラウディア・ディ・ジローラモも女優賞にノミネートされた。2014年、テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』を演出、キャストはチリ演劇界を牽引するアンパロ・ノゲラ、マルセロ・アロンソ、ルイス・ニエッコ、パロマ・モレノを起用した。2020年3月日刊紙「エル・メルクリオ」によって2010年代の最優秀演劇俳優に選ばれている。
★1998年、チリ国営テレビ局に入社、ビセンテ・サバティーニ監督と緊密に協力し、TVシリーズの黄金時代(1990~2005)といわれたシリーズに出演して絶大な人気を博した。2006年、上述したパブロ・ララインの長編デビュー作「Fuga」に脇役で出演、2008年「ピノチェト政権三部作」の第1部となる『トニー・マネロ』に主演、その演技が批評家から絶賛された。第2部『ポスト・モーテム』、第3部『No /ノー』」と三部作すべてに出演、以後ララインとのタッグは『ザ・クラブ』から『伯爵』まで途絶えることがない。

(女装に挑戦したロドリゴ・セプルベダの「Tengo miedo torero」のフレームから)
★2015年、初めて金獅子賞をラテンアメリカにもたらしたロレンソ・ビガスの『彼方から』に主演したこともあってか、その芸術的キャリアが評価されて、2019年にベネチア映画祭からスターライト国際映画賞が授与された。以下にTVシリーズ、短編以外の主なフィルモグラフィーをアップしておきます。(ゴチックは当ブログ紹介作品、主な受賞歴を付記した)

(金獅子賞を受賞したロレンソ・ビガスの『彼方から』で現地入りしたカストロ)
◎主なフィルモグラフィー
2006年「Fuga」監督パブロ・ラライン
2008年「La buena vida」(『サンティアゴの光』)同アンドレス・ウッド
2008年「Tony Manero」(『トニー・マネロ』「ピノチェト三部作」第1部)
同パブロ・ラライン
アルタソル2009男優賞、金のツバキカズラ2008男優賞、ハバナFF2008男優賞、他
2010年「Post Mortem」(『ポスト・モーテム』「ピノチェト三部作」第2部)同上
グアダラハラ映画祭2011男優賞
2012年「No」(『No/ノー』「ピノチェト三部作」第3部)同上
2013年「Carne de perro」監督フェルナンド・グッゾーニ
2015年「Desde allá」(『彼方から』ベネチアFF金獅子賞)
同ロレンソ・ビガス(ベネズエラ) テッサロニキ映画祭2015男優賞
2015年「El club」(『ザ・クラブ』ベルリンFFグランプリ審査員賞)同パブロ・ラライン
フェニックス主演男優賞、マル・デル・プラタFF男優賞
2016年「Neruda」(『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』カンヌFF「監督週間」)同上
2017年「La cordillera」(『サミット』)同サンティアゴ・ミトレ(アルゼンチン)
2017年「Los perros」(カンヌFF「批評家週間」)同マルセラ・サイド
イベロアメリカ・プラチナ2018主演男優賞
2018年「Museo」(ベルリンFF)同アロンソ・ルイスパラシオス(メキシコ)
2019年「El principe」(ベネチアFF批評家週間クィア賞)同セバスティアン・ムニョス
イベロアメリカ・プラチナ2021助演男優賞
2019年「Algunas bestias / Some Beasts」(サンセバスチャンFF)
同ホルヘ・リケルメ・セラーノ
2020年「Tengo miedo torero / My Tender Matador」同ロドリゴ・セプルベダ
グアダラハラFF2022メスカル男優賞&マゲイ演技賞、カレウチェ2022主演男優賞
2020年「Karnawal」同フアン・パブロ・フェリックス
グアダラハラFF2020男優賞&メスカル男優賞、銀のコンドル2022助演男優賞、
マラガFF2021銀のビスナガ助演男優賞、イベロアメリカ・プラチナ2022助演男優賞
2021年「Las consecuencias」(マラガFF批評家審査員特別賞)
同クラウディア・ピント(ベネズエラ)
2022年「El suplente」(『代行教師』サンセバスチャンFF)
同ディエゴ・レルマン(アルゼンチン)
2022年「La vaca que canto una cancion hacia el futuro」同フランシスカ・アレグリア
2023年「Los colonos」(『開拓者たち』カンヌFF「ある視点」)同フェリペ・ガルベス
2023年「El viento que arrasa」同パウラ・エルナンデス
2023年「El conde」(『伯爵』)同パブロ・ラライン
★フランコ没後半世紀が経っても多くの信奉者がいるように、チリのピノチェト信奉者はしっかり社会に根付いている。社会主義者アジェンデ大統領の最後の3年間(1970~73)を描いたTVミニシリーズ「Los mil días de Allende」で大統領に扮した俳優を攻撃したり、一部のメディアがタイトルを無視したりしたことがチリ脱出の引き金になっているようです。要約すると、まずはスペインに部分的に軸足を移し、本格的な移住は来年早々になる。このことが吉と出るかどうか分からないが、チリとの関係は今後も続ける。スペイン国籍は民主的記憶法のお蔭で既に取得している。母方の祖父がカンタブリア出身であったこと、ゴメス家の歴史を書いたスペインの従兄弟と知り合いだったことが取得に幸いした。母方の苗字がゴメスということで、ルーツを徹底的に調べることができた。

(『ポスト・モーテム』右は共演者アントニア・セへルス)
★TVシリーズ「アジェンデ」はベルギー、フランス、スペインでの放映が決定しており、国内より海外での関心の高さが顕著です。アウグスト・ピノチェト陸軍大将が犯した軍事クーデタから約半世紀が経つが、チリでの総括は当然のことながら終わっていない。両陣営の対立は相変わらずアンタッチャブルな側面を持っている。「パンを買いに出かけたら無事に帰宅できる、通りが憎しみに包まれていないところで暮らしたい」と、チリで最も多い受賞歴を持つカストロはインタビューに応えている。〈ボット〉はネガティブなコメントを集め、プレスはそっぽを向く。チリでは文化など不愉快、海外で評価される人は無価値、「4個のプラチナ賞など誰も重要視しない!」とカストロ。

(パブロ・ララインの『ザ・クラブ』のフレームから)
★移住を決意した理由の一つに68歳という微妙な年齢もあるようです。「私はもう若くない」と、引退するには若すぎるがチリで仕事を続けるのはそう簡単ではない。スペインにいるエージェントたちから「アルフレッド、もしそのうち考えるよなら、来るチャンスはないよ」と言われた。しかし「私にとってチリは常に私を育ててくれ、楽しんだところだ。良きにつけ悪しきにつけ、チリは私の祖国なんです」と。
★60代というのは興味ある世代です。「スペイン語を母語とするコンテストの機会はそんなに多くない。私の世代には素晴らしい俳優がいるが、5~6人くらいです。自分は壁の隙間に入っている」。世間に〈高齢者〉と一括りされているが、旅をして、恋をして、仕事をして、SNSを自由に操作しているアクティブな〈60代の若者〉もいる。「このコンセプトが気に入った。自分にピッタリだよ」。幸運を祈りますが、わくわくするような映画を待っています。
◎主な関連記事
*「ピノチェト政権三部作」の紹介記事は、コチラ⇒2015年02月22日
*『ザ・クラブ』の紹介記事は、コチラ⇒2015年10月18日
*『彼方から』の紹介記事は、コチラ⇒2016年09月30日
*『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』の紹介記事は、コチラ⇒2016年05月16日
*『サミット』の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月18日
*「Los perros」の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月01日
*「Museo」の紹介記事は、コチラ⇒2018年02月19日
*「Algunas bestias / Some Beasts」の紹介記事は、コチラ⇒2019年08月13日
*「Tengo miedo torero / My Tender Matador」の関連記事は、コチラ⇒2019年02月18日
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ホナス・トゥルエバの新作「Volveréis」*カンヌ映画祭併催の「監督週間」 ― 2024年05月27日 18:00
愛の終わりを盛大に祝う離婚式?

★「監督週間」と「批評家週間」はカンヌ映画祭の公式部門ではないので正確にはカンヌではない。しかし運営母体が違ってもカンヌの一部ではあるので、当ブログでは併催と但し書きを入れている。今回は長編21作と短編を含めると30作がノミネートされた。本体のコンペティション部門にはスペイン映画はゼロでしたが、こちらにはホナス・トゥルエバの10作目となるコメディドラマ「Volveréis」が選ばれた。フランス語タイトルは「Septembre sans attendre」、英題は「The Other Way Around」として紹介されている。波乱万丈な事件は何も起こらないようですが、ヨーロッパ映画賞受賞のニュースが入ってきましたのでアップします。昨年エレナ・マルティン・ヒメノがカタルーニャ語で撮った「Creatura」が受賞した賞で、ガウディ賞2024を席巻したのでした。
★もう一つの「批評家週間」は新人登竜門的な立ち位置で、監督作品2作までが対象、今年は7作選ばれ、中にアルゼンチンのフェデリコ・ルイス(ブエノスアイレス1990)のデビュー作「Simon of the Mauntain」がエントリーされています。新人監督とはいえ短編などで高い評価を得ている監督作品から選ばれることが多い。
「Volveréis」(「Septembre sans attendre」・「The Other Way Around」)
製作: Los Ilusos Films / Alte France Cinéma / Les Films du Worso
監督:ホナス・トゥルエバ
脚本:イチャソ・アラナ、ビト・サンス、ホナス・トゥルエバ
撮影:サンティアゴ・ラカ
編集:マルタ・ベラスコ
音楽:イマン・アマル、アナ・バリャダレス、ギジェルモ・ブリアレス
プロダクション・マネジメント:アンヘレス・ロペス・ゲレーロ
プロダクション・デザイン:ミゲル・アンヘル・レボーリョ
製作者:アレハンドロ・アレナス、シルヴィ・ピアラ、オリヴィエル・ペレ
データ:製作国スペイン=フランス、2024年、言語スペイン語、ロマンティックコメディ、114分、撮影地マドリード郊外ほか、2023年の晩夏から初秋の11月上旬。配給:Elasticaエラスティカ(スペイン)、Arizonaアリゾナ(フランス)、公開:スペイン2024年8月30日、フランス8月28日
映画祭・受賞歴:第77回カンヌ映画祭併催の「監督週間」ノミネート、ヨーロッパ映画賞ヨーロッパ・シネマズ・ラベル受賞
キャスト:イチャソ・アラナ(映画監督のアレ)、ビト・サンス(映画俳優のアレックス)、フェルナンド・トゥルエバ(アレの父親)、ジョン・ヴィアル(脚本家)、他
ストーリー:アレとアレックスのカップルは、15年間の関係を解消して円満に別れることを決意しています。二人はアレの父親のアドバイスにそって、夏の終わりに家族や友人、隣人を招待して結婚式のような盛大なお別れパーティを企画しました。しかしこのニュースは周囲を唖然とさせ、二人が別れる可能性を受け入れられません、何故かというと二人はうまくやってるようだからです。ばかげていて、もの悲しく、ちょっぴり笑えて、古風な優しさに満ちている。観光地から外れたマドリード郊外を舞台に、映画業界の隅っこで働く人々を活写している。

(冷静で賢いアレと少し迷子になっているアレックス、フレームから)
カンヌ初出品でヨーロッパ映画賞受賞!
★パルムドールより一足先に「監督週間」の受賞者が発表されましたが、もともと監督週間自体はコンペティションではないので審査員がいるわけではありません。賞は外部機関によって授与されます。フランスの劇作家・作曲家協会が授与するSACD賞に昨年若くして鬼籍入りしたフランスのソフィー・フィリエールの「This Life Of Mine」が受賞、オープニング作品で評価が高かったようです。欧州映画ネットワークが選ぶヨーロッパ映画賞ヨーロッパ・シネマズ・ラベルにホナス・トゥルエバ、既に日本では報道されている国際映画批評家連盟が選ぶFIPRESCI賞に山中瑤子の『ナミビアの砂漠』が受賞しました。

(受賞を喜ぶ左から、イチャソ・アラナとホナス・トゥルエバ)
★カンヌでのプレス・インタビューでは、「お別れパーティのアイデアは、何年も前から構想していましたが、結局のところ、悲しみが多すぎて、実際にこんなことをする人はおりません。映画は実生活では敢えてできないことをさせてくれます。イチャソ・アラナとビト・サンスの起用は最初から決まっていたので、二人に創作プロセスに参加してもらうことを提案しました。彼らを共犯者として映画全体の構成、キャラクター、セリフに協力してもらい、結局3人共同で脚本を執筆することになった」と語っている。
★マドリードを舞台に選んだのは、自分のよく知っている場所で撮影するのが好きなこと、何かが終わり、何か新しいことが起こっていることが感じられる夏の終わりの雰囲気が重要でした。40度の酷暑のなかでクランクイン、まだ秋だというのにコートを着用、雨が降り氷点下になってしまったと語っている。
★フランスとの合作は初めてだそうで、ハビエル・ラフエンテと共同で設立した制作会社「Los Ilusos Films」とシルヴィ・ピアラのパートナーであるアレハンドロ・アレナスのお蔭で、自然に実現した。パリに本社を置くピアラの制作会社「Les Films du Worso」の協力を得ることができたのは、「とても贅沢なことでした」とも語っている。カンヌに選ばれた一因かもしれない。 因みにスペイン語の〈Iluso〉は、夢想家または騙されやすい人をさします。
★ホナス・トゥルエバ(マドリード1981)は、父フェルナンド・トゥルエバ監督と製作者の母クリスティナ・ウエテの息、ダビ・トゥルエバ監督、ドキュメンタリー作家ハビエル・トゥルエバは叔父にあたる。父親が監督した『泥棒と踊り子』(09)で脚本家デビュー、「Todas las canciones hablan de mí」で監督デビュー、ゴヤ賞2011新人監督賞にノミネートされた。マラガ映画祭2015で審査員特別賞を受賞した「Los exiliados románticos」、ラテンビート2019で上映された『8月のエバ』、ゴヤ賞2022長編ドキュメンタリー賞を受賞したドク・ドラマ4部作「Quien lo impide」などで、キャリア&フィルモグラフィーを紹介をしています。

(仲睦まじいホナス・トゥルエバとイチャソ・アラナ、カンヌにて)
*「Los exiliados románticos」の紹介記事は、コチラ⇒2015年04月23日
*『8月のエバ』の紹介記事は、コチラ⇒2019年06月03日
*「Quien lo impide」の紹介記事は、コチラ⇒2021年08月16日

(イチャソ・アラナ、『8月のエバ』のフレームから)
★2022年の「Tenéis que venir a verla」が、EUフィルムデーズ2023で『とにかく見にきてほしい』という邦題で上映された。これには新作の主役二人イチャソ・アラナとビト・サンスも共演しています。若手ながら日本語字幕入りで鑑賞できる幸運な監督の一人です。
★『8月のエバ』で脚本家デビューした主演のイチャソ・アラナ(1985)は、監督のパートナーで新作でも脚本を共同執筆しています。Netflixで配信された初期の作品「La reconquista」(16、邦題『再会』)、ダニエル・サンチェス・アレバロの『最後列ガールズ』(TVミニシリーズ6話)に出演しています。同じくダビ・トゥルエバ作品の常連でもあるビト・サンスも今回脚本執筆に参画、直近ではマラガ映画祭2024出品のダビ・トゥルエバの「El hombre bueno」に出ている。アレの父親を演じている実父フェルナンド・トゥルエバはIMDbにはクレジットされているが、スクリーンには現れないようです。現れるのは古びたガウンだったり、バスローブらしい(笑)。二人を取り巻く登場人物は、映画業界の端っこで働く人々です。
*『再会』の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月11日
*「El hombre bueno」の紹介記事は、コチラ⇒2024年03月08日

(ビト・サンスと共演のホルヘ・サンス、「El hombre bueno」フレームから)
★撮影監督のサンティアゴ・ラカは、「Los ilusos」、『再会』、『8月のエバ』、『とにかく見にきてほしい』ほか、当ブログ紹介のカルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』、カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』、リノ・エスカレラの『さよならが言えなくて』など、慎重なフレーミングと落ち着いたトーンで観客を魅了している。まだ予告編はアップされていないが楽しみである。また本作には40年代のハリウッド再婚コメディ、例えばケーリー・グラントが早口でまくしたてるハワード・ホークスの『ヒズ・ガール・フライデー』の2024年版と紹介されているから、離婚式ではなく再婚式のリハーサルでしょうか。
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