『雪山の絆』が国際長編映画賞にノミネート*第96回アカデミー賞2024年01月25日 20:39

 『雪山の絆』のほか『ロボット・ドリームズ』や「La memoria infinita」も!

   

       

 

121日、第96回アカデミー賞のノミネートが発表になりました。日本関連の映画については周知のことですから割愛しますが、フアン・アントニオ・バヨナ『雪山の絆』がノミネートされた国際長編映画賞部門には、ヴィム・ヴェンダースのPERFECT DAYS(公開中)やイギリスの『関心領域』、イタリアの「Io Capitano」などかなりの激戦区です。本作はメイクアップ&ヘアー賞部門にもノミネートされておりますが、先だってのゴールデングローブ賞ミュージカル部門の作品賞を受賞した『哀れなるものたち』などライバルがひしめいています。

   

     

          (国際長編映画賞ノミネートの『雪山の絆』)

 

パブロ・ベルヘル『ロボット・ドリームズ』がノミネートされた長編アニメーション映画賞部門には、宮崎駿の『君たちはどう生きるか』がかぶさり、アカデミー会員の高齢化などを考慮すると、ロボットの受賞は難しいでしょうか。しかし開けてびっくり玉手箱は映画賞に限らず世の常です。

    

     

          (アニメーション『ロボット・ドリームズ』)

 

★長編ドキュメンタリー賞部門の「La memoria infinita」(英題「The Eternal Memory」)は、チリの監督マイテ・アルベルディ5作目で、彼女は3年前の『83歳のやさしいスパイ』に続いての快挙です。ラライン兄弟の制作会社「Fabula」がプロデュースしており、そのパブロ・ラライン自身が監督したホラーコメディ『伯爵』(原題「El Conde」)の撮影を手掛けたエドワード・ラックマン(またはエド・ラッハマン)がノミネートされ、チリは沸いてます。独裁者ピノチェトが本当は吸血鬼、ドラキュラ伯爵だったという設定、独裁者は死んだのだが、吸血鬼だから実は生きているというダークなコメディ、『トニー・マネロ』が思いおこされる。ラックマンはトッド・ヘインズの『エデンより彼方へ』(02)、『キャロル』(15)に続いて3度目のノミネートですが、彼自身はアメリカ人です。

   

     

       (ドキュメンタリー「La memoria infinita」のポスター)

   

      

      (ネットフリックスで配信中の『伯爵』のオリジナル・ポスター)

 

★この撮影賞部門にはメキシコのロドリゴ・プリエトがマーティン・スコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でノミネートされています。ディカプリオとタッグを組んだ超大作、20世紀初期の先住民迫害という実話をベースにしているから、観たくない会員が多いかもしれない。プリエトは同監督の『アイリッシュマン』に続いて4回目のノミネートになり、そろそろオスカー像が欲しいところです。当ブログ関連のノミネートをアップしました。『伯爵』以外作品紹介をしています。ガラは310日(日)、日本放映は翌日午前中になります。

 

第36回ヨーロッパ映画賞2023*結果発表2023年12月18日 11:09

     作品賞はジュスティーヌ・トリエの『アナトミー・オブ・ア・フォール』

    

               

        (作品・監督・脚本賞受賞のジュスティーヌ・トリエ)

 

129日、36回ヨーロッパ映画賞2023の結果発表がベルリンの本部でありました。ジュスティーヌ・トリエ監督の『アナトミー・オブ・ア・フォール』が、作品・監督・脚本・編集・女優賞のトロフィーをゲット、大勝利を収めました。少し白けた方もいたのではないでしょうか。今年は長編アニメーション部門にノミネートされていたパブロ・ベルヘルの『ロボット・ドリームズ』が受賞、J. A. バヨナの『雪山の絆』からメイクアップ&ヘアー賞にアナ・ロペス=プイグセルベルベレン・ロペス=プイグセルベルダビ・マルティモンセ・リベ4人、視覚効果賞にフェリックス・ベルヘスラウラ・ペドロ、締めくくりは3賞ある栄誉賞のうち、ワールドシネマ栄誉賞イサベル・コイシェ、など大勢が受賞しました。ゴヤ賞2024とも関連するので番外編として纏めてみました。

          

      

        (長編アニメーション賞を受賞したパブロ・ベルヘル)

 

パブロ・ベルヘル(ビルバオ1963)の長編4作目となる『ロボット・ドリームズ』は、今年の東京国際映画祭アニメーション部門で上映されたこともあり、早々と鑑賞できた作品です(予告編、Q&AトークショーがYouTube 配信中)。1980年代のニューヨークに暮らすドッグと彼のマスコットのロボットのあいだの関係を通して友情への賛歌が描かれている。サラ・ヴァロン(シカゴ1971)の同名グラフィック小説のアニメ化ですが、彼女から自由に解釈してよいというお墨付きを得て、舞台を監督が過ごした1980年代のニューヨークに移している。彼の青春時代や人生観が色濃く投影されている。「終わりなきアニメの可能性を探求する」製作者サンドラ・タピア他、アニメーターたちを励まし、このトロフィーを「創造力豊かで高揚したスペイン・アニメーション業界に捧げる」とスピーチした。

パブロ・ベルヘルの主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、

 コチラ2016052920170705

    

        

         (パブロ・ベルヘルと製作者のサンドラ・タピア)

 

★本作はカンヌ映画祭2023でワールドプレミアムされ、ヨーロッパ映画賞以外でもアヌシー・アニメーション映画祭作品賞、シッチェスFF観客賞、富川アニメーションFF観客賞、オクトパスFFオクトパス賞ほかを受賞、これから発表になるフォルケ賞2024以下、フェロス賞、ゴヤ賞、ガウディ賞にノミネートされている。カンヌに連れだって参加したプロデューサーでカメラや音楽エディターの監督夫人Yuko Harami ハラミ・ユウコの功績も見逃せない。ニューヨークで出会った両人は、以来ベルヘルの全4作『トレモリノス73』、『ブランカニエベス』、『アブラカダブラ』を二人三脚で製作している。

    

          

       

     (ベルヘル監督とハラミ・ユウコ、カンヌFF20235月フォトコール)

 

★また週末にはスペイン公開が決定しており、1221日に発表になるオスカー賞のプレセレクション15作に選ばれるかどうかを待っている。待っているのは本作だけでなくゴヤ賞2024ノミネートのフェルナンド・トゥルエバ&ハビエル・マリスカルの「Dispararon al pianista」、ゴヤ賞2023受賞のアルベルト・バスケスの「Unicorn Wars」(『ユニコーン・ウォーズ』)も同じである。

         

★ヨーロッパ映画賞の栄誉賞は、イサベル・コイシェが受賞したワールドシネマ栄誉賞、イギリスの女優ヴァネッサ・レッドグレイヴが受賞した生涯功労賞、ハンガリーのタル・ベーラが受賞した特別栄誉賞3つがある。レッドグレイヴは高齢で参加が難しくビデオテープでの出席ということでした。タル・ベーラは2011年、『ニーチェの馬』(ベルリンFF審査員グランプリ銀熊賞)を最後に引退を表明、現在は後進の指導に当たっているという伝説の映画作家。

 

★スペイン語映画に拘らず英語の作品のほうが多いコイシェは、監督になって直ぐ気づいたのは「カメラの背後には、国境も、パスポートも、国旗も、境界もないということでした。世界がこのようであったらと思います」とスピーチした。また「Green Border」で今年の作品賞・監督賞にノミネートされていたポーランドのベテラン監督アグニエシュカ・ホランドへの愛を語り、細長い形のトロフィーについて冗談を言った。「ある人が、私ではありませんよ、性玩具のようだと言いましたが、アカデミーが来年は彼女に賞を与えてくれると素晴らしい」と締めくくった。

    

       

      (トロフィーを手に受賞スピーチをするイサベル・コイシェ)

 

★男優賞はデンマークのマッツ・ミケルセン(「The Promis Land」)、女優賞は『アナトミー・オブ・ア・フォール』の主役サンドラ・ヒュラー/フラー)、音楽賞にマルクス・バインダー(「Club Zero」)、ドキュメンタリー賞にAnna Hintsの「Smoke Sauna Sisterhood」、国際映画批評家連盟 FIPRESCI ディスカバリー賞にモリー・マニング・ウォーカーの「How To Have Sex」、同カテゴリーにはエスティバリス・ウレソラ・ソラグレンの『ミツバチと私』がノミネートされていました。プロダクション・デザイン賞にエミータ・フリガート(「La Chimera」)、メイクアップ&ヘアー賞と視覚効果賞は上記の通りです。

   

           

        (ジュスティーヌ・トリエ監督とサンドラ・ヒュラー)

 

★以下は上記で紹介した受賞者に絞っており、総合写真の一部分です

  

 

(上段左から、イサベル・コイシェ、ベレン・ロペス=プイグセルベル、アナ・ロペス=プイグセルベル、マルクス・バインダー、パブロ・ベルヘル、右端モリー・マニング・ウォーカー。下段左から、ラウラ・ペドロ、エミータ・フリガート、サンドラ・ヒュラー、Anna Hints、ジュスティーヌ・トリエ)

 

追加情報:フォルケ賞アニメーション部門に『ロボット・ドリームズ』が受賞したようです。次回全受賞者の結果をアップする予定です。


アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、黒澤明賞*東京国際映画祭2022 ⑦2022年11月01日 11:47

        アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ――黒澤明賞受賞と記者会見

   

      

       (黒澤明賞のトロフィーを手にしたアレハンドロ・G・イニャリトゥ)

 

1029日、14年ぶりに復活した「黒澤明賞」の授賞式が帝国ホテルであり、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ深田晃司の両監督が受賞しました。当ブログ関連記事として前者イニャリトゥ監督の記者会見(YouTube)も合わせてアップしておきます。TIFFに詳しい記事が掲載されております。

 

★イニャリトゥ監督のキャリア&フィルモグラフィーは既に紹介済みなので割愛します。当映画祭との関りは、デビュー作『アモーレス・ぺロス』99)が第13TIFF 2000でグランプリ & 監督賞の2冠を制したときから始まった。まだ本部が渋谷のオーチャードホールにあった頃、映画館から観客の足が遠のき始め映画祭も深刻な岐路に立たされていた時代でした。幸運だったのは既にカンヌ映画祭併催の「批評家週間」でグランプリを受賞、下馬評でも先頭を走っていたから、ほぼ予想通りの受賞でした。第1話の主役、期待のガエル・ガルシア・ベルナルの来日はなかったものの、第3話の主役エミリオ・エチェバリアを迎えることができた。審査委員長が『ブリキの太鼓』(79)でパルムドールを受賞したフォルカー・シュレンドルフだったことも幸いしたかもしれない。2009年には、今度は自らがコンペティション部門の審査委員長を務めるために来日した。

 

★記者会見の監督によると、黒澤映画では『羅生門』は『アモーレス・ぺロス』に、『生きる』はBIUTIFUL ビューティフル』に、『七人の侍』『乱』は『レヴェナント 蘇えりし者』に大きな影響を与えたと語っていた。詳しくはTIFFのイベントレポート、トーク(45分)がアップされている。

 

     

        (黒澤監督〈愛〉を熱弁するアレハンドロ・G・イニャリトゥ)

 

★ガラ・セレクション上映となった『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は、第79回ベネチア映画祭のコンペティション部門にノミネートされたほか、第70回サンセバスチャン映画祭ペルラス部門、第20回の節目をむかえたモレリア映画祭(1022日~29日)のオープニング作品に選ばれている。それぞれ合間をぬって監督以下キャスト&スタッフが現地を訪れている。監督は日程がTIFFと重なっていたモレリアFFのオープニングを済まして東京入りしたようです。

『バルド、偽りの記録と一握りの真実』の作品紹介は、コチラ20220908

   

     

     (監督、ヒメネス・カチョ以下出演者と。サンセバスチャン映画祭2022

 

★自伝的な要素を含む最新作のタイトルに使用したバルドは、「チベット仏教用語で自分のアイデンティティの置き場がない」という意味の由、また「バイオグラフィというものを信用していない、嘘や偽善的な内容が含まれていたりして、結局、真実とは何かという問いになる」。また「記憶には真実が抜け落ちるからだ」と、もっともな返答でした。記憶は当てになりません、記憶しておきたくないものは忘れる、または別の話に塗り替えてしまうということでしょう。「フィクションにすることで真実をより昇華でき、高みに持っていけるし、隠れているものを炙り出せる。現実と空想の垣根を漂う作品であり、内省的な作品になった」と語っている。

 

★製作で大切なことは「キャスティングを間違えないこと、形容詞ではなく動詞で考えること、俳優と共通言語をもつこと」と答えていました。また観客へのサジェスチョンには、「個人的な視点で撮っていますが、普遍的なテーマ、例えば父性、喪失感、愛、不確実性を描いていて、これはワカモレのような映画です」ということでした。「メキシコと日本は遠く離れていますが、私は日本文化、文学や音楽に親近感をもっていて、坂本龍一さんの音楽は私の人生のサウンドトラックのようなものです。『レヴェナント』で仕事ができて光栄に思いました」と。文学では松尾芭蕉、三島由紀夫、村上春樹、監督では小津、溝口、エトセトラ、の名を挙げていました。

  

ワカモレはアボカドをメインに唐辛子、トマト、タマネギ、コリアンダーに塩レモンを加えて作られたメキシコ料理のサルサの一種、トルティーヤチップスと一緒に食べることが多く、語源はナワトル語でワカ(アボカド)モレ(ソース)。

 

★ワカモレ映画『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は、劇場公開後、1216日からNetflixで配信が開始されます。


「El buen patron」ノミネートならず*第94回アカデミー賞20222022年02月11日 12:01

     オスカー夫妻バルデム&クルスが揃って主演俳優賞にノミネート

 

     

        (ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスがカップルでノミネート)

 

フェルナンド・レオン・デ・アラノアEl buen patrónは残念でした。その代わりと言ってはなんですが、本作で主役を演じたハビエル・バルデムが、アーロン・ソーキンの『愛すべき夫妻の秘密』Being the Ricardos主演男優賞にノミネートされた。ノミネーション発表をペネロペ・クルスとソファに座って待っていたというご両人、同時ノミネートに感無量だった由。


★バルデムのノミネーションは4回目、うち2回目のコーエン兄弟の『ノーカントリー』07)で可笑しなオカッパ頭で登場して助演男優賞を受賞している。因みに主演男優賞はキューバの小説家レイナルド・アレナスの伝記映画『夜になるまえに』(00)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『BIUTIFUL ビューティフル』(10)、今回の『愛すべき夫妻の秘密』は『アイ・ラブ・ルーシー』で主人公のリカード夫妻を演じたルシル・ボールとデジ・アーナズの関係を描いた伝記映画、実生活でも二人は結婚していた。ルシル役のニコール・キッドマンも主演女優賞にノミネートされ、彼女のそっくりさんぶりが話題になっている。本作はプライムビデオで昨年1221日より配信されている。

 

    

            (デジ・アーナズに扮したハビエル・バルデム、フレームから)

 

   

 

ペネロペ・クルスは、アルモドバルの「Madres paralelas」(「パラレル・マザーズ」)のシングル・マザー役で主演女優賞にノミネートされた。スペイン語映画でのノミネートは2回目。バルデムと同じ4回目のノミネートになるが、2006年同監督の『ボルベール〈帰郷〉』で主演女優賞ノミネート、2回目はウディ・アレンの『それでも恋するバルセロナ』08)で助演女優賞受賞、ロブ・マーシャルの『NINE』(09)で助演女優賞ノミネート、今回が4回目である。Netflix 配信の『ロスト・ドーター』のオリビア・コールマン、『スペンサー ダイアナの決意』のクリステン・スチュワート、ニコール・キッドマンなどと競うことになりました。

 

      


       (ペネロペ・クルス、「Madres paralelas」から


★アルモドバルの『パラレル・マザーズ』の音楽を手掛けた、アルベルト・イグレシアスが作曲部門にノミネートされた。彼も今回が4回目のノミネート、まだ受賞はありません。ジョン・ル・カレの同名小説をブラジルのフェルナンド・メイレレスが監督した『ナイロビの蜂』(05)、マーク・フォースターの『君のためなら千回でも』(07)、トーマス・アルフレッドソンのスパイ映画『裏切りのサーカス』(11)の3回です。国内ではゴヤ胸像のコレクターといわれるが、それに止まらず国際的に活躍していることが分かる。今年のフェロス賞で音楽賞を受賞したばかりです。

 

    

       (アルベルト・イグレシアス、フェロス賞2022のガラから)

 

★もう一人の短編アニメーション部門に「The Windshield Wiper」(14分、スペイン=米国合作)がノミネートされたアルベルト・ミエルゴは、アートアニメの世界では知る人ぞ知る存在。もしかしたら賞に一番近いかもしれない。愛を探す男の話です。本作はカンヌ映画祭と併催される「監督週間」で7月に上映されている。スペインの監督だが言語は英語とルーマニア語ということです。

  

  

           

        (「The Windshield Wiper」のフレームとポスター)

    

★ティム・ミラーとデヴィッド・フィンチャーが2019年に製作したアニメ・アンソロジー「Love, Death & Robots」(『ラブ、デス & ロボット』全18話)の第3話「The Witness」(『目撃者12分)を監督して2019年のプライムタイム・エミー賞をグループで受賞している。本シリーズはNetflix オリジナル作品として配信されている。殺人を目撃してしまったせいで、犯人から追われる身になった女性の話。他に2012年から開始されたTVシリーズ「Tron: Uprising」(「トロン:ライジング」)のアート監督を務め、「The Stranger」(第13話、23)で2013年に同賞を受賞している。両作とも「アニメーションのアカデミー賞」といわれるアニー賞のプロダクション・デザイン部門で受賞している。

 

       


        (「トロン:ライジング」のフレームとポスター)

 

       

         (アルベルト・ミエルゴ、エミー賞2013

 

        

     

           (『目撃者』のフレームとポスター


第94回アカデミー賞2022ショートリスト発表*国際長編映画賞部門2021年12月25日 10:01

            ショートリスト15作中スペイン語映画3作が残る!

   

   

★ベロニカ・フォルケを悼む記事が続いていますが、気を取り直して来年のアカデミー賞の話題に切り替えます。第94回のガラは、2022327日、以前のドルビー・シアターに統一して開催されるということです。それに先立つ1221日に、国際長編映画賞部門のセミ・ファイナリスト(ショートリスト)15作が発表されました。92ヵ国から応募があり、スペイン代表フェルナンド・レオン・デ・アラノアEl buen patorón、メキシコ代表タティアナ・ウエソPrayer for the Stolen(原題Noche de fuego)、パナマ代表アブナー・ベナイムPlaza Catedral3作が残りました。ノミネーションが正式に発表になるのは、来年28日がアナウンスされていますが予定です。パナマ作品は未紹介ですが、データを後述します。濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』のような強敵も残りましたから、ファイナルリスト4作に残るのは容易じゃありません。ましてや受賞となると結構長い道程です。

        

      

 (スペイン代表作品「El buen patorón」のポスター)

     

         

                 (メキシコ代表作品Noche de fuego」のポスター

 

     

          (パナマ代表作品「Plaza Catedral」のポスター)

 

El buen patorón」の主な作品紹介記事は、コチラ20210810

Noche de fuego」の主な作品紹介記事は、コチラ20210819

 

★監督紹介:パナマ代表作品Plaza Catedral」は、アブナー・ベナイムの長編第2作め。1971年パナマ生れ、監督、製作者、脚本家、造形アーティスト。米国ペンシルバニア大学で国際関係学を専攻、映画はテルアビブのカメラ映画学校で学んだ。映画はドキュメンタリーでスタートを切り、ドキュメンタリー作家としての評価は高い。2004年パナマで制作会社Apertura Films を設立、2005年ドクメンタリー・シリーズEl otora lado11エピソード)で、ニューヨークTVフェスティバルの作品賞を受賞している。2009年長編映画デビュー作Chanceは興行的にも成功し、埼玉県で開催される「スキップ・シティD シネマフェスティバル2011」に『チャンス!男メイドの逆襲』)の邦題で上映され、脚本賞を受賞している。

 

   

           (新作撮影中のアブナー・ベナイム監督)

 

2014年のInvasionは、1989年のアメリカによるパナマ侵攻をめぐる捏造された集団記憶のドキュメンタリー。本作はパナマのIFF映画祭で観客賞ほか受賞歴多数、第87回アカデミー賞(ドキュメンタリー部門)に選ばれたがノミネートはされなかった。コロンビアのバランキージャFFドキュメンタリー賞、マラガ映画祭観客賞ほかを受賞している。2018年のRuben Blades is Not My Nameも第91回アカデミー賞代表作品に選ばれたが、ノミネートには至らなかった。

 

      

      (ドキュメンタリー「Ruben Blades is Not My Name」ポスター)

 

★オスカー賞3回目のパナマ代表作品となる新作「Plaza Catedral」は、パナマ=メキシコ=コロンビア合作、スリラー・ドラマ、94分、スペイン語・英語、撮影地パナマシティ、製作Apertura Films。既にパナマ映画祭2021の観客賞を受賞しているほか、グアダラハラ映画祭MEZCAL賞にノミネートされ、フェルナンド・ハビエル・デ・カスタが男優賞を受賞したが、その前にパナマで射殺されるという悲劇に見舞われていた。ダンサーでサッカー選手でもあった少年の死は、パナマでは珍しいことではない。他にキャストはメキシコのベテラン女優イルセ・サラス、コロンビアのマノロ・カルドナなど。イルセ・サラス(メキシコ・シティ1981)は、『グエロス』の監督アロンソ・ルイスパラシオスと結婚、2児の母親でもある。マラガ映画祭2019金のビスナガ賞を受賞したアレハンドラ・マルケス・アベジャLas niñas bien(邦題『グッド・ワイフ』公開)で主役を演じている。カルドナはハビエル・フエンテス=レオンの話題作『波に流されて』09)で日本に紹介されている(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、レインボー・リール東京FFに改名)。本作でマコンド賞2010助演男優賞を受賞している。

      

       

        (彼の才能を惜しんだイルセ・サラスとフェルナンド)

 

    

  (イルセ・サラスとフェルナンド・ハビエル・デ・カスタ)

     

   

                      (サラスとマノロ・カルドナ、フレームから)

 

イルセ・サラスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20190414


フェルナンド・レオンの新作がオスカー賞のスペイン代表作品に決定2021年10月27日 15:12

     フェルナンド・レオンの新作「El buen patrón」がスペイン代表作品に決定

 

   

 

★第94回アカデミー賞の授賞式は2022327日(日)と大分先の話ですが、国際長編映画部門にフェルナンド・レオン・デ・アラノアEl buen patrónがスペイン代表作品に選ばれました。サンセバスチャン映画祭では鳴かず飛ばずと言っては語弊がありますが、無冠に終わった映画が代表作品に選ばれたわけです。もっとも他のスペイン映画も軒並み賞に絡みませんでしたが。代表作品に選ばれるのは『月曜日にひなたぼっこ』(02、落選)以来になります。

El buen patrón」の作品紹介は、コチラ20210810

 

      

  (フェルナンド・レオン監督とオスカー賞俳優のハビエル・バルデム、SSIFF2021

 

★最終候補に残った2作は、ペドロ・アルモドバルMadres paralelasと、マルセル・バレナMediterráneoでした。既にオスカー賞監督だったアルモドバルとは『トーク・トゥ・ハー』で競り勝って選ばれたので、いわば因縁の対決でした。製作者のジャウマ・ロウレス20年前を思い出して、「現地ではとてもいい感触だったのですが・・・新作は1950年代から60年代のイタリア映画に近く、サティラ調のコメディです。アメリカでのプロモーションには有利に働くかもしれない」と感慨深そうでした。監督も主役のバルデムも経験者です。一方アルモドバル映画は選ばれなくても公開されます。

 

★マルセル・バレナのMediterráneo」は、オーレンセ・インディペンデント映画祭とローマ映画祭で観客賞を受賞しています。寡作な監督で実話に基づいた『100メートル』(16)がNetflixで配信されているだけかもしれない。主役を演じたダニ・ロビラが新作にも登場している。難しい癌を克服したダニの姿を日本でも観られるでしょうか。他にエドゥアルド・フェルナンデスやセルジ・ロペス、パトリシア・ロペス・アルナイスの演技派ベテラン勢、アンナ・カスティーリョやアレックス・モネールなどの若手が出演しています。新作も実話に基づき、言語がスペイン語、ギリシャ語、英語、カタルーニャ語、アラビア語と複数クレジットされている。

 

      

             (最終候補に残った3作)

 

★まずショートリスト15本に選ばれるのが至難の業、28日のノミネート5本に残るまで遠い道のりです。日本はカンヌ映画祭の脚本賞受賞作品、濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』を選びましたが、米アカデミーはカンヌとは方向性が異なるから予測は難しい。

 

★作品賞予想の有力ランキングの1つに、ベネチア映画祭の監督賞を受賞した、ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が入っている。日本劇場公開は1119日、121日からネットフリックスで配信されます。アカデミー賞は Netflix を排除しない。コロナ感染の再燃、アカデミー会員の老齢化が危惧されている現状では、お茶の間で鑑賞できるのは有利だから可能性はありそうです。他にチリのパブロ・ラライン『スペンサー』でダイアナ妃を演じたクリステン・スチュワートが女優賞の下馬評に上がっています。有力視されていても土壇場でどうひっくり返るか分からないのがオスカーの常識です。


ジョディ・フォスターに栄誉パルムドール*プレゼンターはアルモドバル2021年07月09日 11:18

   2年ぶりのカンヌ映画祭、アルモドバルがジョデイ・フォスターにトロフィーを

 

     

  

2年ぶりの第74回カンヌ映画祭20212ヵ月遅れで開幕した。開幕宣言は、栄誉パルムドール受賞者ジョデイ・フォスター、栄誉パルムドールのプレゼンターのペドロ・アルモドバル、審査員委員長スパイク・リー(去年と同じ)、2019年のパルムドール受賞のポン・ジュノ4人でした。

 

          

        (アルモドバルとジョデイ・フォスター、202176日)

 

ジョディ・フォスター(ロスアンゼルス1962)は、「『タクシードライバー』がパルムドールを受賞したのは45年前、私のキャリアを変えてくれたカンヌにとても感謝しています」。だから彼女にとってここに戻ってくることはとても重要。「未来が私たちに期待していることを皆さんと一緒に見られるよう望んでいます」と完璧なフランス語でスピーチした。彼女はロスにあるフランス人学校のリセに在籍、バカロレアの国家試験に合格している。マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』(76)に娼婦役で出演したのはなんと13歳でした。

   

           

          (トロフィーを披露するジョディ・フォスター)

 

★フォスターにとって、この1年で多くの映画館が閉鎖され、時には耐えがたい苦しみに直面している人々が増えているとしても、すべてが映画への愛に絞られる。「映画館が閉鎖されているけれども、映画は常に存続していきます。今年、映画は私の救命具でした」と語った。また52年間のキャリアを通して思うのは「映画は人を感動させ、人と繋がり、変化させる。だから映画に対する感謝をなくすことは決してない」と締めくくった。

 

★プレゼンターのペドロ・アルモドバルは、女優が2019年にロスアンゼルスで『ペイン・アンド・グローリー』をプレゼンスしたときのことを思い出したが、それよりずっと以前から彼女を身近に感じていた。それはBugsy Maloneの可愛い歌姫役で、『タクシードライバー』より数ヵ月前に制作された映画でした。アルモドバルは「女性の映画人が珍しかった時代に、彼女は役選びにも賢明だった。弱さを隠すことなく強さを見せる女性像の創造を知っていた」と、この類いまれな才能の受賞者を彼流に絶賛した。アラン・パーカーのデビュー作は、『ダウンタウン物語』の邦題で翌年公開された。禁酒法時代のニューヨークはダウンタウンを舞台に、抗争を繰りひろげる二大ギャング団を描いたミュージカル。全員子役が大人に扮して出演、マシンガンから飛びだすのは弾丸ではなくパイ、最後はみんなパイだらけになって終わる。フォスターはボスの情婦でキャバレーの妖艶な歌姫になった。

 

★コロナが収束したわけではないので、メイン会場には、ワクチン2回接種の証明書のある人、あるいは48時間ごとのPCR検査(無料)合格者とガードは厳しい。結果が分かるには最低でも6時間ほど必要だからどうなるのか。レッドカーペットに登場したシャネルやプラダのドレスに身を包んだマスク無しのセレブたちは、合格してるということですね。因みにフォスターのドレスはジバンシィだそうです。パートナーの写真家で監督のアレクサンドラ・ヘディソンも出席、アツアツぶりの映像が配信されています。

 

★オープニング作品はレオス・カラックスのミュージカルAnnette アネット2021、英語、140分)は、5分間のスタンディングオベーションだった由、監督よりスタンダップ・コメディアンを演じたアダム・ドライバーに注目が集まったとか。本作はアマゾン・オリジナル作品、ネットフリックスとの話合いは平行線でノミネーションはNO、一方でアマゾン・プライム・ビデオ、アップルTVYES、観客の一人としては違和感を覚えるが、将来的に問題を残すのではないか。ピンクのダブルの背広上下にサングラス、スニーカーで現れた審査委員長のスパイク・リーは「ストリーミングのプラットホームは共存する」とインタビューに応えて、新型コロナが世界を、映画産業をも変えてしまったことを印象づけた。

残念ながら『老人スパイ』は受賞ならず*第93回アカデミー賞結果2021年04月28日 15:53

     長編ドキュメンタリー賞は『オクトパスの神秘 海の賢者は語る

   

     

(三つ編みのお下げにエルメスのドレスと白のスニーカー、監督賞受賞のクロエ・ジャオ)


★視聴率過去最低の記録になった第93回アカデミー賞授賞式、従来の対面方式でしたがアーティストなどのライブもなく、死ぬほど退屈だったと酷評する向きもありましたが、クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』が作品賞・監督賞・主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)の主要大賞を制して終了しました。下馬評通りの結果でしたが、主演男優賞が本命視されていた『マ・レイニーのブラックボトム』の故チャドウィク・ボーズマンではなかったことで衝撃が走ったとか。それはそうでしょう、どの映画賞も大トリは作品賞と決まっているのに、順番を主演男優賞と入れ替えてガラを盛り上げようとしていたのですから。アカデミーもさぞかしガックリしたことでしょうが、Netflixもガックリだったようです。受賞はないと思っていたか、あるいは高齢のせいか欠席していた『ファーザー』フロリアン・ゼレールアンソニー・ホプキンスがレクター博士以来29年ぶり、2回目のオスカー像を手にしました。しかし彼は少しも悪くありません。

    

       

(フランシス・マクドーマンドとジャオ監督、ピーター・スピアーズほかの製作者たち)

 

★期待の長編ドキュメンタリー賞、マイテ・アルベルディの『老人スパイ』は残念でした。受賞するに越したことはありませんが、今年7月には邦題83歳のやさしいスパイ』シネマカリテ他で公開されることになりました。これもひとえにノミネートのお蔭です。監督、主演のドン・セルヒオ以下チリの皆さん、お疲れさまでした。下馬評ではギャレット・ブラッドリーの『タイム』でしたが、ピッパ・エアリック他の『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』(原題「My Octopus Teacher)が受賞しました。受賞作はスランプに陥っていた映像作家クレイグ・フォスターが偶然出会った1匹のタコとの1年間にわたる交流を軸にしたドキュメンタリー。海中の映像美に止まらずタコの未知の生態への興味、疎遠だった息子との共同作業を通してフォスター自身が再生していくドラマが、会員の心を打ったのかもしれません。

 

Netflix7冠を獲得、うち短編アニメーション賞『愛してるって言っておくね』もシンプルだが余韻が残る作品だった。他『Mank(マンク)』の美術・撮影、『マ・レイニーのブラックボトム』は、上記のように主演男優賞は逃しましたが、メイクアップ&ヘアー賞と衣装デザイン賞の2冠、前者の受賞者セルヒオ・ロペス=リベラはスペイン出身、二番目のオスカー受賞者となりました。最初のオスカー賞は、ギレルモ・デル・トロ『パンズ・ラビリンス』06)のダビ・マルティモンセ・リベの二人でした。

        

       

         (受賞者の3人、右端セルヒオ・ロペス=リベラ)

 

★国際長編映画賞は、トマス・ヴィンターベアの「Druk」(デンマーク)、英題のカタカナ起こし『アナザーラウンド』として新宿武蔵野館ほかの公開が決定しています。短編ドキュメンタリー賞では、『ラターシャに捧ぐ 記憶で綴る15年の生涯』をご紹介しましたが、受賞作はアンソニー・ジアッチーノColette米国、24分)でした。ナチ占領下のフランス、75年間記憶を封印してきたコレット・マリン・キャサリンが、歴史を学ぶ学生ルーシーに説得されて過去の忌まわしい亡霊と向き合うことを決心する。当時レジスタンスとして共に戦った兄ジャン=ピエールの最期の地、ナチ強制収容所を訪れる。言語は仏語と独語ですが英語字幕入りYouTubeで鑑賞できます。

   

        

           (オスカー像を手にしたトマス・ヴィンターベア)


第93回アカデミー賞ノミネーションの記事は、コチラ⇒2021年03月21日

 

チリのジェームズ・ボンド、ハリウッドへ*米アカデミー賞20212021年04月23日 20:17

            ドン・セルヒオ、重装備で初めての海外旅行

   

    

 (第93回オスカー賞ドキュメンタリー部門ノミネートの『老人スパイ』のポスター)

 

チリのジェームズ・ボンドことセルヒオ・チャミーが、93回アカデミー賞授賞式(425日)出席のため監督マイテ・アルベルディ監督、代表プロデューサーのマルセラ・サンティバネスなど「老人スパイ」の御一行と一緒に現地入りできたようです。コロナ・ワクチンの2回接種(チリは南米の優等生で30%の接種率、ただし最近感染者が急増している)、何回も受けたPCR検査を合格して、写真のようなマスク&フェイスシールドの重装備で搭乗、これが初の海外旅行とか。2017年撮影時には御年83歳でしたが既に87歳、人生死ぬまで何があるか分かりません。

アカデミー賞ドキュメンタリー部門ノミネートの記事は、コチラ20210321

『老人スパイ』の紹介記事は、コチラ202010221122

 

      

   (少し緊張気味のドン・セルヒオ)

   

  

            (アルベルディ監督とドン・セルヒオ)

 

★本作の製作国は、チリのほか米国=ドイツ=オランダ=スペインと大所帯、スペインはマリア・デル・プイ・アルバラド(エグゼクティブ、サンセバスティアン生れ42歳)とマリサ・フェルナンデス・アルメンテロス(共同製作者、サンタンデール生れ45歳)の二人、前者はロドリゴ・ソロゴジェンの短編Madreを手掛けている。これは第91回アカデミー賞短編部門のノミネート作品です。

 

    

(左マリア・デル・プイ・アルバラドとマリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、マドリード)

 

★「1年前は公開できるかどうかさえ分からず、袋小路に入っていました。しかしサンセバスチャン映画祭で息を吹き返しました」とフェルナンデス・アルメンテロス。1月にサンダンスでプレミアされ、9月にサンセバスチャン、観客の反応はとても違っていた。オランダだけリリースされたが、それも「10日後にはロックダウン」で市民は自宅監禁されたわけです。だからオスカー賞ノミネートのニュースには「涙が止まらなかったし、部屋の中を走り回りました」とも語っている。「チリのアルベルディに会いに行くことはできませんから、地球の反対側から朝の9時だというのにシャンペンで祝いました」と。「20パーセントの確率はあるわけだから、ガラは我が家かマリアの家かどちらかで見守ることになる」とフェルナンデス。

 

★アルバラドは「ダイヤローグはそのままで手を加えずに自然さを捉えるようにした。もっとも重要な質問は個人的なものでした。つまり、私たちの老後はどうなるの?老人ホームで暮らすようになるの?私たちは老人に何をしたらいいの?」と語っている。老人問題ではなく自分自身の問題だったのでしょう。「セルヒオは自分にあるルールを課した。重要なのはスパイすることや盗聴することではなく、相手の話を聞くことだと気づいたのです」とフェルナンデスは当時を思い出して語っている。アルベルディ監督も「老人たちは私たちがなりたい老人について決して尋ねません」と。

 

コロナ禍の最中に開催されるオスカー賞、87歳という高齢を考えて授賞式が行われるドルビー・シアター近くのホテルが準備された由、ガラではトム・クルーズやマット・デイモンのクルーの近くの席とか、チリ政府もアメリカ側も気づかっているようです。人生終盤近くにこんな夢にも見なかっただろう晴れ舞台が準備されていたとは、ドン・セルヒオも想像していなかったでしょう。日本では26日月曜日午前中、WOWOWの独占生中継です。

 

アカデミー賞2021ノミネーション*ドキュメンタリー部門に『老人スパイ』2021年03月21日 18:08

      動画配信のみでも対象とするのは今回だけの特例措置とか・・・

 

  

 

★先日、第93回アカデミー賞2021のノミネーションが発表になりました。当ブログで作品紹介をしたチリのマイテ・アルベルディ『老人スパイ』がドキュメンタリー部門の最終候補に残り、イベロアメリカ映画は本作だけでした。今回だけの特例措置ということですが、コロナ禍で劇場が閉鎖されたことから動画配信のみでも対象になり、久しく映画館から遠ざかっているにも拘わらず、ざっと一瞥しただけで20作近くが鑑賞済みなのでした。Netflixは合計16作ということです。試写会、ランチ会などのイベントはオール中止、会場となるドルビー・シアターに出席できるのは、ノミネートされた人とそのゲスト、プレゼンターだけとアナウンスされました。425日(現地)、日本では翌26日の昼間になります。

『老人スパイ』の作品&監督キャリア紹介は、コチラ202010221122

     

    

    

            (老人スパイのセルヒオ・チャミーとマイテ・アルベルディ監督)

 

★作品賞の最有力は下馬評ではクロエ・ジャオの『ノマドランド』と、公開されたばかりのリー・アイザック・チョンの『ミナリ』Netflixで配信された実話をベースにした法廷劇『シカゴ7裁判』、デビッド・フィンチャーのモノクロ映画『マンク(Mank)』、アマゾン配信の『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』と、8作のうち3作が動画配信されている。開催されなかったカンヌ映画祭のノミネート作品、サンセバスチャン映画祭にエントリーされ、ゴヤ賞2021ではヨーロッパ映画賞を受賞したフローリアン・ゼレールの『ファーザー』もノミネートされている。認知症の父親役アンソニー・ホプキンスが主演男優賞、娘役オリビア・コールマンが助演女優賞候補ですが、受賞はほぼ決定しているらしく、難しそうですね。

  

     

   (本命視されている『ノマドランド』のポスターと主演のフランシス・マクドーマンド)

 

★『老人スパイ』がノミネートされたドキュメンタリー部門の対抗馬は、アマゾン・オリジナルのギャレット・ブラッドリーの『タイム』が最有力だが、アカデミー会員の中には反発する向きもいそうです。Netflix配信の『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』と、5作のうち3作が動画配信されている。どの映画もスクリーンで観るよう製作されるが、前者のような作品は特にスクリーンで見るべきです。しかしいつも不満に思うのがこの長たらしい思わせぶりな邦題、何とかならないものでしょうか。さて女性監督の活躍が目につくが、大穴で『老人スパイ』になるかもしれない。

  

      

                (最有力候補の『タイム』のポスターとブラッドリー監督)

 

★国際映画賞の最有力は、監督賞にもノミネートされているトマス・ヴィンターベアAnother Roundでスウェーデンとオランダ合作のデンマーク映画、サンセバスチャン映画祭2020では、マッツ・ミケルセン以下4人の出演者がグループで最優秀男優賞を受賞した。東京国際映画祭で『皮膚を売った男』の邦題で上映された、チュニジアの女性監督カウテール・ベン・ハニアの作品には、モニカ・ベルッチが出演してTIFFでも話題の映画だった。公開されるというニュースはどうなってるのだろうか。

  

          

                (最有力の「Another Round」のオリジナル・ポスター)

 

★動画配信で鑑賞した作品は、前述以外に『マ・レイニーのブラックボトム』(肺癌で鬼籍入りしたチャドウィック・ボーズマンが主演男優、ヴィオラ・デービスが主演女優、他)、『私というパズル』(バネッサ・カービーが主演女優)、トム・ハンクス主演の『この茫漠たる荒野で』(撮影・音響・作曲・美術など)、ソフィア・ローレンの息エドゥアルド・ポンティが母親を主役にして撮った『これからの人生』(ラウラ・パウジーニが歌う歌曲賞)、『ザ・ファイブ・ブラッズ』(作曲賞)、『ザ・ホワイトタイガー』(脚色賞)、ジョージ・クルーニー主演の『ミッドナイト・スカイ』(視覚効果賞)、長編アニメーション部門の『フェイフェイと月の冒険』、短編アニメーションの『愛してるって言っておくね』、短編ドキュメンタリーの『ラターシャに捧ぐ~記憶で綴る15年の生涯』、アマゾン配信では見ていない映画、例えばクリストファー・ノーランのTENETテネット』など何作か残っている。