フォト集落穂ひろい*サンセバスチャン映画祭2022 ㉔ ― 2022年10月04日 15:02
ベロドロモ部門、サバルテギ-タバカレラ部門の人気シネアスト集合
★今回は3000人収容の大型スクリーンで観られるベロドロモ部門はアップしませんでしたが、カルメン・マウラやカルメン・マチが共演するパコ・レオンの「Rainbow」、アリアドナ・ヒル主演の「Black is Beltza II:Ainhoa」などが上映された。両カルメンは奇抜な衣装でファンを楽しませました。サバルテギ-タバカレラ部門上映のカルラ・シモンの「Carta a mi madre para mi hija」、カルロッタ・ペレダの「Cerdita」にはカルメン・マチやピラール・カストロなどが出演、揃って現地入りして、パパラッチの要望に応えていました。フランスのルイ・ガレルの「L'innocent」、セクション・オフィシアルのピラール・パロメロの「La maternal」やペトル・ヴァーツラフの「Il Boemo」、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」、その他、「Walk Up」のホン・サンスのクルー、ニューディレクターズ部門『なぎさ』の古川原壮志のフォトなどアップしておきます。
◎ベロドロモ部門、上映日の18日はパパラッチも大忙しでした。パコ・レオンの「Rainbow」は、既に『レインボー』のタイトルでNetflix 配信が開始されています(9月30日)。一種の群像劇ということで出演者も多く、カルメン・マウラやカルメン・マチは映画と同じ奇抜な衣装で参加、ドラに扮したドラ・ポスティゴ、ルイス・ベルメホなど宣伝を兼ねて大勢で参加していました。レオン監督の実母カルミナ・バリオスやロッシ・デ・パルマも脇役で出演していますが不参加でした。歌手のドラ(2004)はディエゴ・ポスティゴと今は亡きビンバ・ボゼーの長女、本作がデビュー作。父親がバルバラ・レニーと再婚したので、義理の母親になり、近く弟か妹かが生まれる。
(ドラの愛犬トトを抱くパコ・レオン監督)
(悪女役が似合うカルメン・マウラ)
(カルメン・マチ、監督、カルメン・マウラ、9月18日フォトコール)
(母親探しの旅に出る子供でも大人でもない16歳のドラ役ドラ・ポスティゴ)
(偶然旅の道連れになる役柄になったルイス・ベルメホ)
◎ベロドロモ部門、フェルミン・ムグルサのアニメーション「Black is Beltza II:Ainhoa」のグループも監督以下主役アイノアのボイスを担当したアリアドナ・ヒル、アントニオ・デ・ラ・トーレ、マネックス・Fuchs、イツィアル・イトゥニョ、ダルコ・ペリック、ゴルカ・オチョアほか大勢が参加しました。
(一堂に会した出演者とスタッフ、9月23日フォトコール)
(フェルミン・ムグルサ監督)
(ホテル入りするアリアドナ・ヒル)
(アントニオ・デ・ラ・トーレ)
(イツィアル・イトゥニョ)
◎セクション・オフィシアルSO部門、20日ピラール・パロメロの「La maternal」、カルラ・キレスが主演俳優賞を受賞した。他にアンヘラ・セルバンテス、クラウディア・ダルマウ
(ピラール・パロメロ監督、9月20日)
(少女の母親を演じたアンヘラ・セルバンテス、カルラ・キレス、監督)
(カルラ・キレスとクラウディア・ダルマウ)
◎SO部門、フェルナンド・フランコの「La consagración de la primavera」には、監督以下エンマ・スアレス、バレリア・ソローリャ、テルモ・イルレタが参加した。
(フェルナンド・フランコの監督とエンマ・スアレス、9月21日)
(脳性麻痺の青年を演じたテルモ・イルレタ)
(バレリア・ソローリャ、テルモ・イルレタ、監督、エンマ・スアレス)
◎SO部門、ミケル・グレアの「Suro」は、バスク映画イリサル賞とFIPRESCI賞を受賞した。地元ということもあって大勢で参加していました。
(ミケル・グレア監督、9月19日プレス会見)
(ヴィッキー・ルエンゴ、フォトコール)
(左から、Ilyass El Ouahdani、ヴィッキー・ルエンゴ、ポル・ロペス、監督)
◎SO部門、ペトル・ヴァーツラフの「Il Boemo」(チェコ)には、監督以下ヴォイチェフ・ダイク、エレナ・ラドニッチ、ラナ・ブラディ、バルバラ・ロンキの5名が参加。
(ペトル・ヴァクラフ監督、9月19日)
(バルバラ・ロンキ、エレナ・ラドニッチ、ヴォイチェフ・ダイク、ラナ・ブラディ)
◎SO部門、ホン・サンスの「Walk Up」は、監督以下、主演のクォン・ヘヒョ、チョ・ユンヒー、ソン・ソンミの4人が現地入りした。
(ホン・サンス監督、9月22日フォトコール)
(クォン・ヘヒョ)
(チョ・ユンヒー)
(ソン・ソンミ)
◎サバルテギ-タバカレラ部門では作品紹介はしませんでしたが、カルラ・シモンの「Carta a mi madre para mi hija」とカルロッタ・ペレダの「Cerdita」が人気でした。後者にはカルメン・マチ、ピラール・カストロ、ラウラ・ガラン・モンティハノ、クラウディア・サラス、パコ・イダルゴ、チェマ・デル・バルコ、など総勢14人が参加していました。
(カルラ・シモン監督、9月20日)
(シモン監督とマリア・サモラ)
(カルロッタ・ペレダ監督とラウラ・ガラン・モンティハノ、9月19日)
(ピラール・カストロ、監督、ラウラ・ガラン、カルメン・マチ)
◎ペルラス部門、ルイ・ガレルの「L'innocent」には、ノエミ・メルランが参加、イサキ・ラクエスタの「Un año una noche」にも主演して人気を博していた。
(ルイ・ガレルとノエミ・メルラン、マリア・クリスティナ・ホテルのバルコニー)
(豪華な衣装と美脚でレッドカーペットに登場したノエミ・メルラン)
(舞台挨拶をするルイ・ガレル、9月19日)
◎ペルラス部門、ロドリゴ・ソロゴジェンの「As Bestas / The Beastas」の一行は、監督の専属脚本家のようなイサベル・ペーニャ、スペイン・サイドの出演者ルイス・サエラ、ディエゴ・アニドが参加した。
(ロドリゴ・ソロゴジェン監督、9月18日レッドカーペット)
(左から、ディエゴ・アニド、監督、イサベル・ペーニャ、ルイス・サエラ、フォトコール)
◎ニューディレクターズND部門、マリア・エロルサの「A los libros y alas mujeres canto」は、イリサル賞スペシャル・メンションを受賞した。監督と製作者のマリアン・フェルナンデス・パスカルが参加、賞に絡むと予想していたのが当たりました。
(マリア・エロルサ監督とマリアン・フェルナンデス、9月22日)
◎ND部門の「Secaderos / Tobacco Barns」のロシオ・メサが、ドゥニャ・アヤソ賞を受賞した。本賞は急逝した女性監督ドゥニャ・アヤソの名に因んでいる。異論もあるでしょうが対象は女性監督です。
(ロシオ・メサ監督、9月22日ガラ)
(アダ・マル・ルピアニェスとロシオ監督、9月18日プレス会見)
◎ND部門、『なぎさ』の古川原壮志のフォトも入手、プロデューサーの明里麻美(アカリ・マミ)と現地入りした。『百花』や『宮松と山下』のグループ、短編部門のネストを合わせると、今年は日本からの参加者も多かった。
(古川原壮志監督、9月22日)
(監督と明里麻美、9月23日フォトコール)
フォト集 ②*サンセバスチャン映画祭2022 ㉓ ― 2022年10月02日 14:20
ラテンアメリカ諸国から現地入りしたシネアストたち
★フォト集②はラテンアメリカからやってきたシネアストたちの特集。多分新型コロナウイルス以前より多かったのではないでしょうか。セクション・オフィシアルのセバスティアン・レリオ(チリ)、ペルラス部門のサンティアゴ・ミトレ(アルゼンチン)やアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(メキシコ)、ホライズンズ・ラティノ部門のアンドレス・ラミレス・プリド(コロンビア)、キューバのパベル・ジルーとカルロス・レチュガ、マリアノ・ビアシン(アルゼンチン)、ナタリア・ベリスタイン(メキシコ)、ほか多くが現地入りしました。
◎サイコスリラー「The Wonder」(英語)がセクション・オフィシアルにノミネートされたセバスティアン・レリオは、主役の少女アンナ・オドネルを演じたキラ・ロード・キャシディほかと現地入り、少女はすっかり背丈が伸びてしいました。
(監督とキラ・ロード・キャシディ、フォトコール)
(セバスティアン・レリオ監督とキラ・ロード・キャシディ、9月22日フォトコール)
◎ペルラス部門上映のサンティアゴ・ミトレの「Argentina、1986」の一行は、監督以下主演のリカルドダリン、ピーター・ランサニ、製作者の一人チノ・ダリン、ほか大勢で現地入りしました。ベネチア映画祭では金獅子賞は逃したが、FIPRESCI賞、カトリックメディア協議会(SIGNIS)賞オナラブル・メンションを受賞していた。SSIFFではサンセバスティアン市観客賞を受賞、Gala RTVE部門のセスク・ゲイのアクション・コメディ「Histirias para no contar」に出演、EUSKO LABEL賞を受賞して未だ滞在していたチノ・ダリンが受け取った。
(サンティアゴ・ミトレ監督)
(リカルドダリンとピーター・ランサニ)
(やはり人気の高いチノ・ダリン)
◎メキシコのアレハンドロ・G・イニャリトゥの「Bardo, Falsa cronica de una cuantas verdades」(『バルド、偽りの記録と一握りの真実』で東京国際映画祭上映)の一行は、監督以下主演のダニエル・ヒメネス=カチョ、グリセルダ・シチリアーニ、アンドレス・アルメイダが参加しました。
*『バルド、偽りの記録と一握りの真実』の作品紹介は、コチラ⇒2022年09月08日
(左から、グリセルダ・シチリアーニ、監督、ダニエル・ヒメネス=カチョ
アンドレス・アルメイダ)
◎ホライズンズ・ラティノHL部門にノミネートされた「Un Varón」のファビアン・エルナンデス(コロンビア)は、製作者のマヌエル・ルイス・モンテアレグレほかと現地入りしました。
(ファビアン・エルナンデス監督)
(マヌエル・ルイス・モンテアレグレと監督、9月23日プレス会見)
◎HL部門のマリアノ・ビアシンの「Sublime」(アルゼンチン)のクルーも、監督ほか主役のマルティン・ミラー、エグゼクティブプロデューサーのフアン・パブロ・ミラーが参加しました。マルティン・ミラーは製作者の息子のようです。開催前から第10回セバスティアン・ラティノ賞の受賞が決まっていました。
(マリアノ・ビアシン監督)
(左から、製作者フアン・パブロ・ミラー、監督、マルティン・ミラー、9月21日)
(マルティン・ミラー 、9月22日のプレス会見)
◎HL部門のアナ・クリスティナ・バラガンの「La piel pulpo」(エクアドル)のクルーは、監督と女性スタッフの参加でした。
(アナ・クリスティナ・バラガン監督)
(アナ・クリスティナ・バラガン監督、9月23日プレス会見)
◎HL部門のアンドレス・ラミネス・プリドの「La jauria」(『ラ・ハウリア』で東京国際映画祭上映)には、監督と主役のジョジャン・エスティベン・ヒメネスの二人が現地入りした。何らかの賞に絡むと予想しましたが外れました。今年は勝率15%?です。
*『ラ・ハウリア』の作品紹介は、コチラ⇒2022年08月25日
(アンドレス・ラミレス・プリドとジョジャン・エスティベン・ヒメネス、9月23日)
◎HL部門ノミネートの「El caso Padilla」(キューバ)は、パベル・ジルー監督が9月18日に現地入り、翌日上映後プレス会見に臨んだ。
(パベル・ジルー監督)
(パベル・ジルー、9月19日)
◎HL部門ノミネートの:「Vicenta B.」(キューバ)は、カルロス・レチュガ監督、ビセンタ・ブラボ役のリネット・エルナンデス・バルデスが参加、レチュガ監督は在住しているバルセロナからの参加。
(カルロス・レチュガ監督、リネット・エルナンデス・バルデス)
(9月18日、満員の会場で)
◎HL部門ノミネート、スペイン協同賞受賞の「Ruido / Noise」(メキシコ)は、ナタリア・ベリスタイン監督、本作の主役を演じた実母フリエタ・エグロラ、製作者のカルラ・モレノ、マリア・ホセ・コルドバが現地入り、ガラでは製作者の二人が登壇した。
(宿泊ホテルのマリア・クリスティナで寛ぐ監督と女優フリエタ・エグロラ、9月19日)
◎HL部門ノミネート、期待していたマヌエラ・マルテッリの「1976」は、監督ほかが参加、本作は第35回東京国際映画祭コンペティション部門に正式出品されます。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年09月13日
(マヌエラ・マルテッリ監督、9月22日)
◎HL部門にノミネートされたコスタリカ映画がオリソンテス賞を受賞した。監督バレンティナ・モーレルの「Tengo sueños eléctricos」はデビュー作。
(バレンティナ・モーレル監督、9月20日)
◎ニューディレクターズ部門ニカラグア映画の「La hija de todas las rabias」には、ラウラ・バウマイスター監督が参加。
(ラウラ・バウマイスター監督、9月18日)
フォト集 ①*サンセバスチャン映画祭2022 ㉒ ― 2022年09月30日 10:02
パパラッチに人気だった参加者のフォト集
★9月24日(現地時間)、受賞者、または無冠のクルー、賞とは無関係のアウト・オブ・コンペティション部門などのシネアストたちのフォト集です。本祭事務局が公開したものから選びました。以下メモランダムにアップしていきます。
★12歳の子役レナータ・レルマンが助演俳優賞を受賞した、ディエゴ・レルマンの「El suplente」の参加者たち。レナータは監督と本作出演の女優マリア・メルリノの娘、劇中では主人公ルシオ(フアン・ミヌヒン)と別れた妻マリエラ(バルバラ・レニー)の子供を演じました。初出演で受賞、「どうして選ばれたのか分かりません」とインタビューに答えていた。記者たちも「レナータ・レルマンとは誰だ?」と大わらわ。父親の監督に付き添われて登壇した。父親曰く「水を得た魚」と我が子を絶賛しているのだが、娘は演技経験はゼロに近く、将来女優になるかどうかも決めていないと応じている。審査委員長マティアス・モステイリンがアルゼンチンの製作者なのが気になるし、個人的には子役にトロフィーは問題です。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年08月09日
(レルマン監督とレナータ・レルマン父娘、9月24日)
(アルフレッド・カストロ、監督、フアン・ミヌヒン他出演者、右端がマリア・メルリノ)
★「Pelicula sorpresaサプライズ映画」というセクションがあるのを知りませんでしたが、今回アンドリュー・ドミニクの「Blonde」(Netflix『ブロンド』で9月28日から配信開始)のヒロインアナ・デ・アルマスがパパラッチを喜ばせていました。上映では途中退席者も出たそうですが、お茶の間で見るのも165分という長尺ではトイレタイムが必要です。賛否の別れる問題作。彼女はキューバ出身ですがスペインの国籍もあり、スペイン映画、TVシリーズ、ハリウッド映画出演で認知度は高い。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年7月10日
(アナ・デ・アルマスとアンドリュー・ドミニク監督、9月24日)
★ニール・ジョーダンのスリラー「Marlowe」に出演したリーアム・ニーソンとダイアン・クルーガーもファンの人気を攫っていました。アウト・オブ・コンペティション部門なので賞には絡みませんが登壇して監督がスピーチしました。
(監督、ダイアン・クルーガー、リーアム・ニーソン、フォトコール)
★ペルラス部門で特別上映されたオリオル・パウロのミステリー「Los renglones torcidos de Dios」のチームのフォトコールは選ぶのに困るほど多かった。特に主役のバルバラ・レニー(1984)が人気、38歳での高齢出産を控えているが順調なのか元気そうです。共演者のエドゥアルド・フェルナンデス、ロレト・マウレオンと話題は尽きない。マウレオンはオープニングの総合司会をパコ・レオンと務めていた。
*作品紹介は、コチラ⇒2022年08月31日
(フェルナンデス、レニー、監督、マウレオン、フォトコール)
(上から、監督、バルバラ・レニー、エドゥアルド・フェルナンデス、ロレト・マウレオン)
★アウト・オブ・コンペティション部門で上映された、スペイン5監督の「Apagón / Offworld」(229分)も、各自脚本家や出演者と連れ立って参加していました。製作テレフォニカ・ビジュアル・デジタルSLU、アンソロジーTVシリーズです。監督は第1話から順にロドリゴ・ソロゴジェン、ラウル・アレバロ、イサ・カンポ、アルベルト・ロドリゲス、イサキ・ラクエスタの5人、太陽嵐が地球全体に衝撃を与え停電を引き起こす。このような状況で5つの都市を舞台に5つのストーリーが展開していく。
(プレス会見、9月23日)
(監督、脚本家などが勢揃い、ラウル・アレバロは欠席?)
(第1話出演のルイス・カジェホ)
(第2話出演のアイノア・サンタマリア)
(第2話出演のメリナ・マシューズ)
(第3話出演のパトリシア・ロペス・アルナイス)
(第3話出演のソエ・アルナオ)
(第4話出演のヘスス・カロサ)
(2話に出演するマリア・バスケス)
第70回サンセバスチャン映画祭2022ガラ*受賞結果発表 ㉑ ― 2022年09月27日 13:11
金貝賞はコロンビアの女性監督作品「Los reyes del munndo」が受賞
★9月24日、第70回サンセバスチャン映画祭2022の授賞式がメイン会場クルサールで行われました。金貝賞はコロンビアのラウラ・モラの2作目「Los reyes del mundo」、審査員特別賞はアメリカのマリアン・マティアスの「Runner」、監督賞は『百花』の川村元気のデビュー作、若いシネアストが大賞を独占するという結果になりました。まだ授賞式を見ておりませんが、コンペティション部門以下、ホライズンズ・ラティノ部門など、結果だけ以下にアップしておきます。金貝賞は作品賞のみで、後は銀貝賞です。また昨年から男女の区別を撤廃、主演俳優と助演俳優となっています。脚本審査員賞受賞作ワン・チャオの「Kong Xiu / A Woman」は、最終段階で追加ノミネートされたので作品紹介が間に合いませんでした。中国語タイトルはヒロインの名前です。
セクション・オフィシアル
◎作品賞(金貝賞)
「Los reyes del mundo / The Kings of the World」
(コロンビア=ルクセンブルク=フランス=メキシコ=ノルウェー)
監督ラウラ・モラ
(メデジン出身のラウラ・モラ監督)
(製作者のミルランダ・トーレスとクリスティナ・ガジェゴと)
◎審査員特別賞
「Runner」(米=ドイツ=フランス)
監督マリアン・マティアス
(マリアン・マティアス監督と製作者ジョイ・ヨルゲンセン)
◎監督賞(銀貝賞)
川村元気 作品『百花』(日本)
◎主演俳優賞(銀貝賞)2人
ポール・キルヒャー 出演映画「Le lyceen / Winter Boy」
(監督クリストフ・オノレ、フランス)
カルラ・キレス 出演映画「La maternal」(監督ピラール・パロメロ、スペイン)
◎助演俳優賞(銀貝賞)
レナータ・レルマン 出演作品「El suplente / The Substitute」(監督ディエゴ・レルマン、アルゼンチン=スペイン=イタリア=メキシコ=フランス)
(監督であるパパにエスコートされて登壇したレナータ・レルマン、
左は審査員のレモハン・ジェレミア・モセセ)
◎脚本審査員賞
Dong Yun Zhou(ドン・ユン・チョウ?)、Wang Chao(王超 ワン・チャオ)
「Kong Xiu / A Woman」(監督ワン・チャオ、中国)
(ワン・チャオ監督、ビデオ・メッセージ)
(フレームから)
◎撮影審査員賞(銀貝賞)
マヌエル・アブラモヴィッチ
「Pornomelancolía」
(監督マヌエル・アブラモヴィッチ、アルゼンチン=フランス=ブラジル=メキシコ)
ニューディレクターズ部門
◎クチャバンク賞
「Fifi / Spare Keys」(監督ジャンヌ・アスラン、ポール・サンティラン、フランス)
◎スペシャル・メンション
「Pokhar Ke Dunu Para / On Either Sides of Pond」
(監督 Parth Saurabh インド)
(左から、撮影監督 Pradeep Vignavelu、監督)
ホライズンズ・ラティノ部門
◎オリソンテス賞「Tengo sueños eléctricos」(ベルギー=フランス=コスタリカ)
監督バレンティナ・モーレル
サバルテギ-タバカレラ部門
◎サバルテギ-タバカレラ賞「Vanskabte land / Godland」
(デンマーク=アイスランド=フランス=スウェーデン)
監督Hlynur Palmasonフリヌール・パルマソン
ネスト部門
◎ネスト賞「Montaña azul / Blue Mountain」(短編14分、コロンビア)
監督ソフィア・サリナス、フアン・ダビ・ボオルケスBohorques
◎スペシャル・メンション「Anabase」(短編28分、スイス)
監督バンジャマン・グベ Benjamin Goubet
ドノスティア(サンセバスティアン)市観客賞
◎ドノスティア市観客賞「Argentina, 1985」(ペルラス部門、アルゼンチン=米)
監督サンティアゴ・ミトレ
(製作者の一人チノ・ダリン)
◎ヨーロッパ映画賞「As bestas / The Beasts」
(ペルラス部門、スペイン=フランス)
監督ロドリゴ・ソロゴジェン
(アドルフォ・ブランコ・ルカス、ロドリゴ・ソロゴジェン)
バスク映画イリサル賞
◎イリサル賞「Suro」(スペイン)
監督ミケル・グレア
◎スペシャル・メンション
「A los libros y a las mujeres canto / To Books And Women I Sing」
(スペイン)
監督マリア・エロルサ
ユースTCM賞
◎「A los libros y a las mujeres canto / To Books And Women I Sing」
(スペイン)
監督マリア・エロルサ
WIPヨーロッパ賞
◎WIPヨーロッパ産業賞・WIPヨーロッパ賞
「Hesitation Wound」(監督セルマン・ナカル、トルコ=フランス=ルーマニア)
◎ヨーロッパ―ラテンアメリカ共同作品賞(第11回)
「Seis meses en el edificio rosa con azul」
(監督ブルノ・サンタマリア・ラソ、メキシコ)
RTVE「ある視点」賞
◎RTVE「ある視点」賞
「El sostre groc / El techo amarillo」(監督イサベル・コイシェ スペイン)
*セクション・オフィシアル特別上映作品
◎スペシャル・メンション
「Corsage / La emperatriz reberde」(監督マリー・クロイツァー、
オーストリア=フランス=ドイツ=ルクセンブルク)
◎スペイン協同賞
「Ruido / Noise」(監督ナタリア・ベリスタイン、メキシコ)
(製作者カルラ・モレノ、マリア・ホセ・コルドバ)
ドゥニア・アヤソ賞
◎ドゥニア・アヤソ賞
「Secaderos / Tobacco Barns」(監督ロシオ・メサ、スペイン=米)
◎スペシャル・メンション
「El sostre groc / El techo amarillo」(監督イサベル・コイシェ、スペイン)
◎FIPRESCI賞「Suro」(監督ミケル・グレア、スペイン)
★だいたいメインの賞は以上のようでした。スペインで開催される映画祭ですからスペイン語映画に偏るのは仕方がないとして、今年は多すぎる印象でした。ただセクション・オフィシアルの1作品1賞の原則は守られました。それにしても川村元気の監督賞にはびっくり、デビュー作がノミネートされること事態がそもそも異例なのでした。今年はデビュー作や初出演の受賞者が多く、まるで新人○○賞の印象でした。
デヴィッド・クローネンバーグに栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2022 ⑳ ― 2022年09月26日 10:04
カナダの監督デヴィッド・クローネンバーグにドノスティア栄誉賞
★9月21日、ビクトリア・エウヘニア劇場において、カナダの監督、脚本家、製作者、俳優のデヴィッド・クローネンバーグ(トロント1943)のドノスティア栄誉賞の授賞式がありました。ガラの進行役は本祭の総ディレクターホセ・ルイス・レボルディノス、彼はクローネンバーグ映画を「私たちの人間的な資質の隠された側面を描いている。それは普段は見せないものだが基本的な部分であり、私たちの現実の姿である」と端的に紹介した。
★プレゼンターは『アレックス』や『CLIMAX クライマックス』の問題作を撮っているフランスの監督ギャスパー・ノエ、キャリア&フィルモグラフィーを含めた長い祝辞のあと、やっと登壇した受賞者は、鳴りやまぬ拍手にしばしスピーチができなかった。ノエ監督はブエノスアイレス生れだがパリに在住して、両国の国籍を持っている。「クローネンバーグは映画に生物学者、外科医や精神科医が探索すると思われる新しいテーマやトリックを持ち込んで、異常で不穏だが円熟したプリズムを通して、私たち自身の存在を再考させてくれた」と称揚した。ガラの後、カンヌ映画祭2022に出品された最新作「Crimes of the Future」が上映された。
(ノエ監督からトロフィーを受け取る受賞者)
★受賞スピーチ「人生のある時点で生涯功労賞を受賞することは、もう映画を撮るのは止めるというメッセージであり、そう自分に言い聞かせる一つの方法だと思っていました。『もう充分だ、止めなさい』と。しかし、時間が経つにつれて、特にこのような賞を、長い歴史があり美しい街で開催される映画祭で頂けて、そうじゃないと思い直しています。この賞は、映画を作り続けるための励ましとして受け取ります」とスピーチした。また「アートは規範を揺るがすものであり、困難で暴力的、かつ破壊的で不安定な人間性の側面に取り組むという意味で、しばしばアートは犯罪であると考えてきました。ある意味でアートは、私たちが理解できるように、地球上で市民生活を続けるために必要である事柄を表現する方法を与えることによって、文明に寄与しています。昨今起こっている出来事を考えるに、かつてないほどアートの犯罪は焦眉の急です。それで私は、犯罪映画バンザイ!と言いたい」と。あと3ヵ月で80代の大台に乗りますが、制作意欲は以前と変わらない。
(右手にいるのがホセ・ルイス・レボルディノス)
★最初に監督の代表作、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)、『危険なメソッド』(11)に主演したヴィゴ・モーテンセンがビデオでお祝いのメッセージを送ってきた。彼は2020年のドノスティア栄誉賞受賞者で、その節、監督からお祝いのビデオ・メッセージをもらっていた。彼の初監督作品「Falling」も正式出品され、クローネンバーグは本作に脇役でしたが出演していた。監督はカナダ、俳優はアメリカと出身国は異なっていますが、二人とも父方の祖父がデンマーク人という縁で結びついているようです。ヴィゴは語学の才人でデンマーク語も堪能です。
「親愛なるデヴィッド、サンセバスチャン映画祭によるあなたの価値ある評価を祝福します。あなたは世界中のシネマニア、愛好家にとって生きた伝説です。この数年間、あなたとコラボして多くのことを学べたことは、私にとって名誉であり特権でした」と。サンセバスティアンのように美しい街での滞在を楽しんでください。「私はあなたが好きです、デヴィッド」と最後はバスク語で締めくくった。
★ビデオ・メッセージの後、監督作品がメモランダムにスクリーンに映しだされました。モーテンセンが主演した上記の3作のほか、『クラッシュ』(96)、『ラビッド』(77)、『デッドゾーン』(83)、『コスモポリス』(12)、『エム・バタフライ』(93)、『戦慄の絆』(88)などが次々に映しだされました。ほとんどが公開作品、なかには吹替版で放映された映画もあり、我が国での人気ぶりを実感したことでした。クローネンバーグとタッグを組んだ4作目「Crimes of the Future」の予告編も上映された。日本公開は2023年の予定。
(新作出演のレア・セドゥと監督、カンヌFF2022)
(主演のモーテンセンとレア・セドゥ、新作のフレームから)
(2021年公開された『クラッシュ 4K無修正版』のポスター)
★1986年から始まったドノスティア栄誉賞の受賞者に監督が選ばれたのは、2019年のコスタ・カヴラス以来、10年遡っても受賞者26人中、是枝裕和(18)、アグネス・ヴァルダ(17)、オリバー・ストーン(12)の4人しかおりません。最近は受賞者が複数になって多くなりましたが、大方が俳優出身でした。
川村元気の『百花』がワールド・プレミア*サンセバスチャン映画祭2022 ⑲ ― 2022年09月22日 15:01
コンペティション部門――川村元気の『百花』ワールド・プレミア
★9月20日、川村元気の『百花』がワールド・プレミアされました。参加したのは川村監督と主役の原田美枝子のお二人、残念ながら菅田将暉は欠席でした。プレス会見は大盛況というほどではありませんでしたが、Q&Aの内容は深く、心強い通訳氏のお蔭もあってか、途切れなく終わることができました。挨拶はレディファーストなのか監督より先に原田さんに振られ、覚えたてのスペイン語でなんとか自己紹介できました。続く監督も自己紹介はスペイン語で、たどたどしくても記者連に好印象を与えました。これは会見を成功させるためにも大切ですね。以下のQ&Aは順序通りでなく、管理人が恣意的に纏めたものです。
★先ず監督に原田さんを主役に選んだ理由についての質問がありました。「自分が長編映画を撮るとしたら、黒澤明の映画に出演していた原田さんを起用したいと常々思っていました」。『乱』とか『夢』のことでしょうか、具体的なタイトルの言及はありませんでした。また「彼女の体験、認知症になった母親のドキュメンタリーをビデオで撮っていたことも理由の一つかもしれない」と。原田さんから時々「こういうとき黒澤さんなら・・・」とプレッシャーをかけられたと答えて会場を沸かせていました。原田さんに黒澤映画についての質問があり、スペインでの人気ぶりが窺えました。『乱』はサンセバスチャン映画祭1985でヨーロッパに紹介されましたが、参加者にリアルタイムで観ていた人はいないでしょう。多分2017年の4Kデジタル版『乱4K』(「Ran」)を見ているのではないでしょうか。
★「主人公のモデルは自分の祖母ですが、私は祖母が認知症になったことが受け入れられなくて、昔の記憶を思い起こさせようと努力した。例えば子供のとき最初に買ってもらった玩具は赤い車だったのですが、祖母は青い飛行機だったという。家に帰って写真で確認したら青い飛行機でした。記憶が曖昧だったのは祖母ではなく自分だった。記憶は書き換えながら、現実と非現実の境目を曖昧にしていく。いま緊張しながら会見に臨んでいますが、昨晩食べたハモンセラーノを思い出したりするように頭はでたらめに働く」とユーモアも交えていました。ロジカルなものとエモーショナルなものの境界も曖昧だとも語っていた。
(緊張しながら質問に応える川村監督)
★自身の小説の映画化についての質問、「小説は後の映画化を考えて書いているのか、小説と映画の違いについて、アニメーションにするという選択肢もあったか」。監督「映画化するつもりで小説を書いたことはありません。今まで小説を5作書いており、これは4作目になります。小説は言葉で表現し、映画は映像と別のものです。映画化を考えたのは祖母が亡くなってから、溝口健二の映画を観ていて撮ろうと考えました」。スペインでは監督はアニメの製作者として知られているのでアニメ化についての質問があったようです。しかし答えるまでもないのか飛ばされてしまいました。
★女優について「最初に監督から、1シーン1カットで撮りたいと言われたとき、これは大変なことになると戸惑った。しかし話しているうちに奥に深い意味があることが分かってきた。母親のドキュメンタリー撮影の体験から、記憶を失っていく様子を映像にするのは難しいことも分かっていた。私はセリフの少ない映画が好きで、というのも言葉というのは氷山の一角でしかなく、多くは言葉にできないものだからです」と、ベテランらしい貫禄でした。他にも1シーン1カットについての質問があり、撮影監督今村圭佑のリリカルな映像を褒める人が多かった。通訳氏は日本語が堪能だけでなく、邦画にも詳しく作品をよく理解しているのでした。
(認知症の母親に扮した原田美枝子)
★「黄色のポスター、(赤絨毯でも)黄色の着物を着ていたが、この黄色に何か意味があるのか」という質問には、「私の好みというわけではないから監督に聞いて」と。監督は「時間を交錯させるため、濃い黄色は過去、現実に近づくにつれだんだん薄くなって最後には白にした」と答えていた。映画のテーマの一つは〈許し〉だが、「祖母は好きな人ができて家出したことがあったと話してくれた。娘である母にも言わなかった秘密を私に打ち明けた」と。
ニューディレクターズ部門――監督集団「5月」の『宮松と山下』
★9月20日、監督集団「5月(ごがつ)」の『宮松と山下』もワールド・プレミアされました。主役の香川照之は目下窮地に立っているせいか不参加でした。3人の監督、佐藤雅彦、関友太郎、平瀬謙太朗の三氏が揃って現地入りしていました。佐藤氏は東京芸術大学大学院映像研究科教授(2006~21、現名誉教授)、若い二人は彼の教え子、『百花』の川村元気も3氏との共同監督作品があり、平瀬謙太朗は『百花』の脚本を手掛けている。
★プレミア上映では会場から笑い声があがって受け入れられていたようです。会場の通訳は『百花』と同じ人が担当していました。殺され役のエキストラ俳優というストーリーが面白く、来る日も来る日も真面目に殺され続ける宮松役を香川照之が演じる。その宮松には過去の記憶がないという斬新さに興味がそそられます。11月18日公開予定。
(左から、関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦教授、
宿泊ホテルのマリア・クリスティナのバルコニーにて、9月20日)
(どの写真も3人一緒、9月20日フォトコール)
★今回はサバルテギ-タバカレラ部門は割愛していますが、深田隆之の中編『ナナメのろうか』(44分、モノクロ)が正式出品され、監督が現地入りしていました。こちらは既に公開されています。
(深田隆之監督、9月21日)
ジュリエット・ビノシュ、栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2022 ⑱ ― 2022年09月20日 15:01
ジュリエット・ビノシュ、イサベル・コイシェの手からトロフィーを
★9月18日クルサール、フランス女優ジュリエット・ビノシュは映画祭の最高賞であるドノスティア栄誉賞を受賞しました。セレモニー後、クレール・ドゥニの「Avec amour el acharnement / Both Side of The Blade」(22、西題「Fuego」)が上映されました。トロフィーを手渡したのはイサベル・コイシェ、監督は「Nadie quiere la noche」(15)でビノシュとコラボしていました。ドゥニ監督も17日に現地入りしてガラを客席から見守ったようです。
(コイシェ監督からトロフィーを受け取る受賞者ジュリエット・ビノシュ)
(クレール・ドゥニ監督とビノシュ)
★受賞スピーチは、家族、友人、近親者、仕事仲間に感謝の言葉を述べた後、自分が愛してやまない映画作家たちの作品を上映してくれたサンセバスチャン映画祭にも感謝しました。「私は今、家にいるような温かさを感じています。ここに居られてとても光栄です」と。「また、忠実な旅の仲間である沈黙にも感謝しています。沈黙は存在です。ショットの前、演技の前に、沈黙は強さであり、その強さから感情や感覚を呼び起こし、それは意志とは関係なく現れます。沈黙がなければ言葉はありません。沈黙がなければ精神は存在せず、その沈黙が監督や俳優たち、スタッフたちと共有されると、金色の糸が織られ、後に映画になります。そこには女優になりたいという私の夢のすべての意味が、生きた作品として具現化されています」とスピーチした。ちょっと難しかったですね。
(うるうるだった受賞スピーチ)
★一方プレゼンターのコイシェ監督は、「彼女と一緒に仕事をしていると、映像、言葉、フレームを越えていく或る不思議な、まるで魔法にかかったような気になります。彼女の顔から光が発しているように感じるというのは本当なんです。しかしその光は信じられないほど寛容で、彼女と一緒に映画を作っているすべての人に浸透していくのです。彼女が演じる登場人物はそれぞれ全く異なっていても、みんなその稀有な並外れた光に触れているように思うのです」と、その魅力を称えました。
★ガラの進行役はエネコ・サガルドイ(『アルツォの巨人』の主役)で、「巨大な才能、スクリーンを超えたカリスマ性、そして彼女のキャリアを築いた一連の勇敢な選択」とフィルモグラフィーを定義した。
(ガラ進行役のエネコ・サガルドイ)
★今年は、セクション・オフィシアルにクリストフ・オノレの「Le lycéen / Winter Boy」がノミネートされており、19日午後10時から上映された。オノレ監督、主役のポール・キルヒャー、ヴィンセント・ラコステなども現地入りして、選ぶのに迷うほど写真がアップされていました。
(クリストフ・オノレ監督)
(左から、ポール・キルヒャー、ビノシュ、ヴィンセント・ラコステ、19日)
第70回サンセバスチャン映画祭2022開幕 ⑰ ― 2022年09月19日 09:45
全員ノーマスク開催は3年ぶり、みんなで罹れば怖くない?
(総合司会のロレト・マウレオンとパコ・レオン)
★9月16日20時30分(現地時間)、第70回サンセバスチャン映画祭2022がサンセバスティアンのメイン会場クルサールで開幕しました。総合司会者はアナウンス通り女優のロレト・マウレオンと監督で俳優のパコ・レオンが務めました。ロレト・マウレオン(1988)はブルゴス生れですがバスク語が堪能、当ブログでもご紹介したTVシリーズ「Patria」(製作アイトル・ガビロンド)に出演してフェロス賞2021(シリーズ部門)助演女優賞を受賞しています。映画ではオリオル・パウロのミステリー「Los renglones torcidos de Dios」(22)に出演、本作は今回ペルラス部門のアウト・オブ・コンペティション部門で上映されます。ヒットメーカーのパコ・レオン(1974)はセビーリャ生れ、映画にTVシリーズに、監督 & 製作者と守備範囲は広い。ラテンビート2016で『KIKI~愛のトライ&エラー』で当ブログに登場しています。
★昨年コンペティション部門の特別枠で上映された濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』が国際映画批評家連盟賞FIPRESCI を受賞しており、その授与式がありました。コロナ隔離期間2週間だった昨年は一人で現地入りしましたが、今回は残念ながら日本語でのビデオ出演でした。デビュー作『百花』がいきなりセクション・オフィシアルににノミネートされた川村元気監督の現地入りが報道されましたがフォトが入手できませんでした。代わりと言ってはなんですが、『Broker ベビー・ブローカー』ペルラス部門に選出されている是枝監督が17日一人で来西、招待客の宿泊ホテルであるマリア・クリスティナのレッドカーペットでの動画が配信され、待ち構えていたファンのサインや写真に一緒におさまっていました。
(シャイな監督も国際舞台ではリラックス)
★今年は新型コロナの「パンデミックの終りが視野に入ってきた」というWHOテドロス事務局長の発言もあったように、ここでもベネチア同様コロナ前に戻り、招待客も海外勢が多くなり、カメラマンを含む映画祭関係者、レッドカーペットに押しよせたファンも全員ノーマスク、勿論会場内もマスク姿はおりませんでした。是枝監督も郷に入れば郷に従えでしたね。テドロス氏を全く信用していない石橋たたく管理人は複雑なのですが。
*「Patria」の作品紹介は、コチラ⇒2020年08月12日
*「Los renglones torcidos de Dios」の作品紹介は、コチラ⇒2022年08月31日
*『KIKI~愛のトライ&エラー』の作品紹介は、コチラ⇒2016年10月08日
★以下の写真は、16日から17日にかけて事務局がアップした、主要なシネアストたちです。アップは恣意的です(順不同)。
(アルベルト・ロドリゲス監督)
(主演のミゲル・エランとハビエル・グティエレス)
(オープニング作品「Modelo 77」出演者一同、アルベルト・ロドリゲス監督、
ミゲル・エラン、ハビエル・グティエレス、他)
(2022映画国民賞受賞者のペネロペ・クルス)
(フアン・ディエゴ・ボットのデビュー作「En los márgenes」に主演、
共演のルイス・トサール、監督と)
(フランソワ・オゾン、ペルラス部門「Peter Von Kant」監督)
(イサキ・ラクエスタ、ペルラス部門「Un año una noche」の監督)
(ナウエル・ぺレス・ビスカヤート、「Un año una noche」に主演)
(ファンの写真におさまるノエミ・メルラン、「Un año una noche」に主演)
(ナタリア・デ・モリーナ、「Un año una noche」に出演)
(マリアン・マティアス、コンペティション部門「Runner」監督)
(ホアキン・サビーナ、デ・アラノア監督、レイバ、
ベロドロモ上映のフェルナンド・レオン・デ・アラノア「Sintiéndolo mucho」)
(プレス会見のディエゴ・レルマン、コンペティション部門「El suplente」監督)
(おめでたらしいバルバラ・レニー、「El suplente」に出演)
(アルフレッド・カストロ、「El suplente」に出演)
(リカルド・ダリン、
ペルラス部門、サンティアゴ・ミトレの「Argentina, 1985」に主演、製作)
(共演のピーター・ランサニとリカルド・ダリン)
(マヌエラ・マルテッリ、ホライズンズ・ラティノ部門「1976」監督)
(フアン・パブロ・ゴンサレス、ホライズンズ・ラティノ部門「Dos estaciones」
監督、主演テレサ・サンチェス、助演タティン・ベラ)
(ハイメ・ロサーレス、コンペティション部門「Girasoles silvestres」監督)
(アンナ・カスティーリョ、「Girasoles silvestres」主演)
(オリオル・プラ、「Girasoles silvestres」主演)
(オリビア・ワイルド、ペルラス部門『ドント・ウォーリー・ダーリン』監督、出演)
(審査委員審査員一同、中央がマティアス・モステイリン委員長)
(審査員委員長マティアス・モステイリン)
(審査員アントワネット・ブラ)
(同テア・リンデブルク)
(同フリーヌル・パルマソン)
(同レモハン・ジェレミア・モセセ)
(同ロサ・モンテロ)
(ユース賞の若い審査員たち)
(数年前からコラボしているカンヌ映画祭とSSIFFの総指揮者
ティエリー・フレモーとホセ・ルイス・レボルディノス)
ジュリエット・ビノシュにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2022 ⑯ ― 2022年09月17日 17:19
ジュリエット・ビノシュにドノスティア栄誉賞
(第70回の公式ポスターの顔でもある受賞者ジュリエット・ビノシュ)
★9月16日20時30分(現地時間)、第70回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2022が開幕しました。それは次回にまわすとして、今年のドノスティア栄誉賞は二人、フランスの女優ジュリエット・ビノシュとカナダの映画監督デヴィッド・クローネンバーグ、ビノシュはクローネンバーグの『コズモポリス』に出演している。本作はカンヌ映画祭2012コンペティション部門でプレミアされた。第70回の公式ポスターの顔でもある女優からアップします。短編、TVシリーズ出演を除いても70作以上に出演しているが、幸いフランス映画やハリウッド映画のこともあり、公開、映画祭上映、DVDなどで約80パーセントは字幕入りで観ることができているようです。授与式はメイン会場のクルサールが予定されています。
★ジュリエット・ビノシュ、1964年パリ生れの58歳、演技はコンセルヴァトワールで学んでいる。パスカル・カネの「Liberty Belle」(リバティ・ベル83)の小さな役で映画デビューした。先日スイスで自死同然の自殺幇助で鬼籍入りしたゴダールの『ゴダールのマリア』(85)やSSIFFのセクション・オフィシアルにノミネートされたジャック・ドワイヨンの『家族生活』に出演している。アンドレ・テシネの『ランデヴー』(85)で初めてセザール賞主演女優賞にノミネートされ、後に『溺れゆく女』(98)にも出演している。レオス・カラックスとの最初の作品『汚れた血』(86)、続いて『ポンヌフの恋人』(91)、後者でヨーロッパ映画賞女優賞を受賞、両作ともセザール賞主演女優賞にノミネートされた。彼とは一時期交際していた。他にルイ・マルの『ダメージ』(92)をあげておきたい。
(レオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋人』ポスター)
★最初こそ国内映画出演でしたが、フィリップ・カウフマンの『存在の耐えられない軽さ』(88)やピーター・コスミンスキーの『嵐が丘』(92)など英語での文芸作品に主演した。しかし、彼女の存在を国際舞台に押し上げたのは『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でした。アカデミー助演女優賞、ベルリン映画祭銀熊女優賞、英国アカデミー賞BAFTA助演女優賞、ヨーロッパ映画女優賞ほか、国際映画祭の受賞を攫った映画でした。主演女優のクリスティン・スコット・トーマスの印象を薄めてしまった。アンソニー・ミンゲラもアカデミー監督賞を受賞、作品賞をはじめ最多9部門を制覇したヒット作でした。英語圏の大物俳優、ダニエル・デイー=ルイス、レイフ・ファインズ、ジェレミー・アイアンズとの共演でした。
(ミンゲラの『イングリッシュ・ペイシェント』でオスカー像を手にしたビノシュ)
★クシシュトフ・キェシロフスキの「トリコロール三部作」の『トリコロール/青の愛』(94)では、ベネチア映画祭女優賞(ヴォルピ杯)、セザール主演女優賞を受賞、ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされた。本作はSSIFFのサバルテギ部門で上映されている。SSIFF 1995にジャン=ポール・ラプノーの『プロヴァンスの恋』(95)がアウト・オブ・コンペティションだがクロージング作品に選ばれている。シャンタル・アケルマンの『カウチ・イン・ニューヨーク』(96)、パトリス・ルコントの『サン・ピエールの生命』(99)でダニエル・オートゥイユと、ラッセ・ハルストレムの『ショコラ』(00)でジョニー・デップと、ジョン・ブアマンの『イン・マイ・カントリー』(04)でサミュエル・L・ジャクソンと、ミヒャエル・ハネケの『コード・アンノウン』(00)や『隠された記憶』(05)も落とせないでしょう。
(キェシロフスキの『トリコロール/青の愛』ポスター)
★サンセバスティアン入りは今回で4回目になるようですが、最初は2002年、ダニエル・トンプソンのラブ・コメディ『シェフと素顔と、おいしい時間』で、アウト・オブ・コンペティション部門、ジャン・レノやセルジ・ロペスが共演した。アベル・フェラーラのサスペンス『マリー』(05、DVD)はペルラス部門にエントリーされた。異色なのはアジアの監督とのコラボ、例えば台湾の監督ホウ・シャオシエンの『レッド・バルーン』(07)やイスラエルのアモス・ギタイの『撤退』(07)、そしてイランのアッバス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』(10)では観客をアッと言わせ、カンヌFFの女優賞を受賞した。またチリ鉱山の落盤事故に基づいたパトリシア・リケンの『チリ33人、希望の軌跡』(15)では、アントニオ・バンデラスと共演、世界を飛び回っている。脇役だがハリウッドのスーパープロダクション製作のギャレス・エドワーズの『GODZILLA ゴジラ』(14)、士郎正宗の漫画を原作としたルパート・サンダースのSFアクション『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)に出演、主役はスカーレット・ヨハンソンでしたが、ビートたけし、桃井かおりなど日本の俳優も共演した。
(キアロスタミの『トスカーナの贋作』フレームから)
★オリヴィエ・アサイヤスの『夏時間のパリ』(08、ペルラス部門)、『アクトレス 女たちの舞台』(14)、『冬時間のパリ』(18)と立て続けに主演した。ブリュノ・デュモンの彫刻家カミーユ・クローデルのビオピック『カミーユ・クローデル』(13 WOWOW)、イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」(15)と、SFを含めたラブコメからシリアスドラマまで、列挙した作品のほとんどが主演で、そのバイタリティには驚嘆するばかりである。コイシェ監督が「ぶっ飛んだ女優」と賞賛したのもむべなるかなです。
★2回目のサンセバスティアン入りは2018年、河瀨直美の『Vision ビジョン』とクレール・ドゥニの『ハイ・ライフ』の2作品がコンペティション部門にノミネートされたからでした。ドゥニ監督は初めて英語映画に挑戦したSF ミステリーてFIPRESCI 賞を受賞した。ビノシュはドゥニ監督とは前年「Un beau soleil intérieur」でコラボしていた。つい最近のベルリンFF 2022のコンペティション部門に出品され銀熊監督賞を受賞した「Avec amour et acharnement」(英題Both Sides of the Blade)にも主演、女一人と男二人の三角関係の由、共演者はバンサン・ランドンとグレゴワール・コラン。SSIFFでもドノスティア賞作品として上映され、ドゥニ監督も17日に現地入りの予定です。
(「Avec amour el acharnement」のフレームから)
(最近のジュリエット・ビノシュ、第72回ベルリン映画祭2022、2月12日)
★3回目は2019年、是枝裕和の『真実』で監督も現地入りした(フォト下)。是枝さんて「こんな面白い映画撮るんだ」と驚いた作品でした。サフィー・ネブーの『私の知らないわたしの素顔』(19)、エマニュエル・カレールの『ウイストルアム―二つの世界の狭間で』(21)は、ペルラス部門のヨーロッパ映画ドノスティア市観客賞を受賞した。今年が4回目になるが、栄誉賞のほかクリストフ・オノレが金貝賞を競う「Le lyceen」に出演している。
(レッド・カーペットに現れた是枝監督とビノシュ、第67回SSIFF2019、9月22日)
*イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」の作品紹介は、コチラ⇒2015年03月01日
*クリストフ・オノレの「Le lyceen」作品紹介は、コチラ⇒2022年08月06日
グレン・クローズ、審査委員長をキャンセル*サンセバスチャン映画祭2022 ⑮ ― 2022年09月14日 17:32
グレン・クローズ、家族の緊急事態対応のため来西できず!
(グレン・クローズと新審査委員長マティアス・モステイリン)
★9月13日、開催を3日後に控えた第70回サンセバスチャン映画祭事務局は、セクション・オフィシアルの審査委員長グレン・クローズが「家族の緊急事態対応のため」来西できないことを発表しました。新しい審査委員長には、アルゼンチンの製作者マティアス・モステイリンに決定したことも同時にアナウンスされました。
★先週、クローズはサンセバスチャン映画祭のコンペティション部門の審査委員長として来西することに興奮しているとSNSに投稿していたばかりです。「今まで経験したことのない新しい冒険」、「大好きなサンセバスティアン、人々は素晴らしいし、優れた映画をたくさん観たいし、他の審査員たちとの出会いにワクワクしている」と、『危険な情事』のストーカー役、自ら製作や脚本も手掛けた『アルバートの人生』などの主役を演じたグレン・クローズは近況を伝えていた。しかし急遽、責任ある今回の仕事を果たすことができなくて悔やんでいると伝えてきたようです。家族の緊急事態の詳細は個人情報として明らかではありませんが、どうやら今回の不参加は動かせないようです。審査員は最低でも10日間は縛りつけられるから、とんぼ返りは許されない。
「映画祭に参加できなくて心から残念に思っています。家族の緊急事態が発生してその対応のため自宅を離れることができません。映画祭、審査員、多くのシネアストの方々、ドノスティア賞、映画祭の視聴者の皆さん、どうぞお許しください、皆さんと当地でご一緒できません」
★委員長マティアス・モステイリン以下の審査員メンバーは、キャスティング監督アントワネット・ブラ(仏)、監督で脚本家のテア・リンデブルク(デンマーク)、作家でジャーナリストのロサ・モンテロ(西)、監督・脚本家でビジュアルアーティストのレモハン・ジェレミア・モセセLemohang Jeremiah Mosese(レソト王国)、監督で脚本家のフリーヌル・パルマソン(アイスランド)、合計6名です。リンデブルクは昨年の銀貝監督賞受賞者、パルマソンは『ウィンター・ブラザーズ』(17)が「トーキョーノーザンライツフェスティバル2019」で上映されている。
★審査委員長マティアス・モステイリン紹介:1974年ブエノスアイレス生れ、製作者。アルゼンチンではモステイリ製作の映画は枚挙に暇がない。パブロ・トラペロのデビュー作「Mundo Grúa」(99)、ベネチア2015監督賞受賞の『エル・クラン』、カンヌの「批評家週間」2001ユース批評家賞受賞のアドリアン・カエタノの「Bolivia」や彼の代表作「Un oso rojo」(02)、ルクレシア・マルテルの『沼地という名の町』『ラ・ニーニャ・サンタ』、カルロス・ソリンの「Días de pesca」(12)、オスカーにノミネートされたダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(14)、アナ・カッツの「Los Marziano」(11)、アルマンド・ボーの『エルヴィス、我が心の歌』(12)、サンティアゴ・ミトレの『サミット』(17)、ルイス・オルテガの『永遠に僕のもの』(18)、セバスティアン・ボレンステインの『明日に向かって笑え!』(19)、スペインとのコラボでは、ダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』(16)、アレハンドロ・アメナバルの『戦争のさなかで』(19)などがあり、本祭のセクション・オフィシアル、ホライズンズ・ラティノ、ペルラス、メイド・イン・スペイン、いずれかの部門で上映、受賞などしています。当ブログでもそれぞれ作品紹介をしています。
(パブロ・トラペロの「El clan」日本語版ポスター)
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