アルベルト・セラの「Tardes de soledad」*サンセバスチャン映画祭2024 ⑥ ― 2024年08月04日 16:27
アルベルト・セラの「Tardes de soledad」―セクション・オフィシアル④
★セクション・オフィシアルの4作目は、アルベルト・セラ(カタルーニャ州バニョラス1975)のドキュメンタリー「Tardes de soledad」、連想ゲーム風にいうとセラといえばカンヌですが、今回初めてサンセバスチャンのコンペティション部門にノミネートされました。スペイン、フランス、ポルトガル合作、言語はスペイン語です。監督キャリア&フィルモグラフィーと、デビュー作以来セラ監督とタッグを組んでいる女優でプロデューサーを務めるモンセ・トリオラの紹介は、東京国際映画祭2022ワールド・フォーカス部門で『パシフィクション』(原題「Tourment sur les iles」)がエントリーされた折にアップしております。ミニ映画祭、特別上映会で一部のファンは字幕入りで鑑賞できましたが、劇場公開は『ルイ14世の死』(16)1作である。
*『パシフィクション』の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2022年10月13日
(アルベルト・セラ監督)
★セクション・オフィシアルは初登場ですが、メイド・イン・スペイン部門には『騎士の名誉』(06)、『鳥の歌』(08)、前作『パシフィクション』が上映されている。言語がカタルーニャ語だったり、フランス語あるいはドイツ語、イタリア語、英語、ヘブライ語だったりするので、スペイン語オンリーの話者には取っつきにくい。本作はスペイン語のうえ、闘牛がテーマということが幸いしたのかもしれない。スペインを含むヨーロッパやラテンアメリカ諸国で活躍する、ペルー出身の闘牛士アンドレス・ロカ・レイが、闘牛場の砂場の中で体験する、心理的精神的な葛藤を描いている。闘牛の精神的な痛み、神聖な儀式である闘牛の複雑な美学を追求するドキュメンタリー。
「Tardes de soledad」
製作:Andergraun Films / Arte France Cinéma / Idéale Audience /
LaCiima Producciones 協賛ICEC / ICAA
監督・脚本:アルベルト・セラ
撮影:アルトゥール・トルト
編集:アルベルト・セラ、アルトゥール・トルト、
録音:ジョルディ・リバス
衣装デザイン:パウ・アウリAuli
製作者:アルベルト・セラ、モンセ・トリオラ、ルイス・フェロン、ペドロ・パラシオス、リカルド・サレス、ピエール≂オリヴィエ・バルデ、ヨアキム・サピーニョ
データ:製作国スペイン=フランス=ポルトガル、2024年、スペイン語、ドキュメンタリー、120分、撮影地セビーリャ、2023年夏クランクイン
映画祭・受賞歴:第72回サンセバスチャン2024セクション・オフィシアル
キャスト:アンドレス・ロカ・レイ、パブロ・アグアド
解説:闘牛士アンドレス・ロカ・レイの、闘牛用の光の衣装着用から闘牛が終わり衣装を脱ぐまでの或る1日が描かれている。複雑な闘牛の美的な部分に取りくむドキュメンタリーであり、監督はその表現力と可塑的な洗練さを目指そうとしている。同様に、個人的な義務として雄牛に対峙するリスクを負う闘牛士の視点からも描こうとしている。それは伝統への敬意からだが、何よりも人間がもつ平静さと合理性、野生の野蛮な動物の残忍さ、この二つの出会いから生じる、儚い美のかたちを作り出す美的挑戦である。どのような理想に導かれて、この危険で不必要と思われる闘いを追求する人がいるのか。ほかのあらゆる物より優先し、何度も危険を冒してまで挑戦する精神性とはどのようなものか、が語られるだろう。
★制作会社の製作意図によると以上のような概要になりますが、なかなか難しそうです。キャスト欄にはアンドレス・ロカ・レイとパブロ・アグアドしかクレジットされていませんが、闘牛は3人の闘牛士で構成されるので、もう一人登場するのかもしれません。
(撮影中のセラ監督)
★アンドレス・ロカ・レイは1996年ペルーのリマ生れ、父方の曽祖父の時代から闘牛に関わっている家柄で、兄フェルナンド、叔父ホセ・アントニオも闘牛士だった。2011年スペインのバダホスの闘牛学校に入学するため海をわたった。2013年見習い闘牛士ノビジェーロnovilleroとしてスペインでデビュー、2014年からはフランス、コロンビア、ペルーでも闘い、2015年フランスのニームで正闘牛士への昇進式であるオルタナティブがあり、先輩闘牛士エンリケ・ポンセによってムレータと剣が授けられ、金の刺繍で被われた光る衣装を着ることが許された。立会人はフアン・バウティスタでした。ロカ・レイの闘牛スタイルは堅実さ、節度をわきまえたセンス、勇気と献身的な闘牛で知られ、短期間に闘牛界の中心人物になっている。
★パブロ・アグアドは、1991年セビーリャ生れ、セビーリャ大学で経営学の学士号を取得している異色の闘牛士です。ロカ・レイより5歳年長ですが、正闘牛士になったのは2017年9月でした。セビーリャのマエストランサ闘牛場、ロカ・ルイと同じエンリケ・ポンセがムレータと剣を授け、立会人はアレハンドロ・タラバンテでした。アグアドの闘牛スタイルは、その自然さ、誠実さ、セビーリャ派の伝統に沿ったクラシカルな闘牛で際立っているということです。
★スタッフ紹介:撮影監督、フィルム編集者アルトゥール・トルトは、セラ監督とは10年来タッグを組んでいる。例えば『パシフィクション』、『リベルテ』、『ルイ14世の死』(編集のみ)、監督の初期の短編「Els tres porquets」(12)、「Cuba libre」(13)、中編「Roi Soleil」(18)の撮影を手掛けている。『パシフィクション』でガウディ賞、フランスのセザール賞、ルミエール賞、国際オンラインシネマ賞などで撮影賞を受賞している。衣装デザイナーのパウ・アウリは、1992年マジョルカ島生れ、アグスティ・ビリャロンガの遺作「Loli tormenta」、「El ventre del mar」(22)を担当している。今回エグゼクティブ・プロデューサーも務めたモンセ・トリオラは、制作会社「Andergraun Films」の代表者である。
(アルトゥール・トルト撮影監督)
★監督フィルモグラフィーは、上記したように『パシフィクション』での紹介に譲りますが、一応長編映画だけ時系列にアップしておきます。日本では『騎士の名誉』をデビュー作と紹介する記事が多いのですが、当ブログではスペイン語版ウイキペディアを参考にして作成しました。
2003年「Crespia」ミュージカル、長編デビュー作
2006年「Honor de cavalleria」『騎士の名誉』カンヌFF併催の「監督週間」プレミア
2008年「El cant dels ocells」『鳥の歌』同上
2011年「El senyor ha fet en mi meravelles」『主はその力をあらわせり』
ドキュメンタリー
2013年「Historia de la meva mort」『私の死の物語』ロカルノFF金の豹賞
2016年「La mort de Louis XIV」『ルイ14世の死』カンヌFF特別招待作品
2019年「Liberte」『リベルテ』カンヌFF「ある視点」審査員特別賞
2022年「Tourment sur les iles / Pacifiction」『パシフィクション』
カンヌFFコンペティション部門
2024年「Tardes de soledad」(仮題「孤独の午後」)SSIFFセクション・オフィシアル
(中央が監督、右モンセ・トリオラ、SSIFF2024ノミネート発表)
コンペティション追加ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2024 ⑦ ― 2024年08月07日 09:56
ノミネート11作が追加発表―コスタ・ガヴラス、フランソワ・オゾン・・・
★先月30日、セクション・オフィシアル(コンペティション)の追加11作が発表になり、オープニング作品のオドレイ・ディヴァンの「Emmanuelle」(仏)、スペインの4作を含めると16作になり、一応全体像が明らかになりました。エドワード・ベルガー、コスタ・ガヴラス、フランソワ・オゾン、ディエゴ・レルマン、マイテ・アルベルディなどの新作、なかには長編デビュー作が3作も含まれています。再追加があるかもしれませんが、現時点で新たに発表された11作を簡単に列挙しておきます。今回は黒沢清監督が1998年に撮った『蛇の道』をフランスに舞台を移してセルフリメイクしたサスペンスがノミネートされています。言語はフランス語、既に劇場公開されている作品がノミネートされるのも珍しい。3回に分けてアップします。
◎第72回セクション・オフィシアル作品16作 ①◎
1)「Emmanuelle」オープニング作品、フランス
監督:オドレイ・ディヴァン(1980)
*紹介記事は、コチラ⇒2024年07月01日
6)「El lugar de la otra」(邦題『イン・ハー・プレイス』)チリ
監督:マイテ・アルベルディ(サンティアゴ・デ・チレ1983)、ドキュメンタリー作家、脚本家。セクション・オフィシアルには初登場ですが、2020年の『83歳のやさしいスパイ』、2023年の「La memoria infinita」がペルラス部門で上映されています。
★ストーリー他、データ紹介は、別途に予定しています。
*『83歳のやさしいスパイ』紹介は、コチラ⇒2020年10月22日/同年11月22日
*「La memoria infinita」紹介は、コチラ⇒2024年01月18日
*『イン・ハー・プレイス』紹介は、コチラ⇒2024年08月14日
7)「On Falling」イギリス、ポルトガル、長編デビュー作
監督・脚本:ラウラ・カレイラ(オポルト1994)、監督、脚本家、フィルム編集者、スコットランドのエディンバラを拠点にしているポルトガル出身の監督です。リスボンのアントニオ・アロイオ芸術学校で視聴覚コミュニケーションの学位、エディンバラ大学で映画監督優等学位を取得している。短編「Red Hill」がエディンバラ映画祭2018のニュービジョン賞を受賞、BAFTAスコットランド賞にノミネートされた。つづく「The Shift」がベネチア映画祭2020でプレミアされ、ヨーロッパ映画賞、ロンドン映画批評家協会賞にノミネートされました。
データ:製作国イギリス・ポルトガル、2024年、英語・ポルトガル語、ドラマ、104分、撮影地エディンバラ、SSIFF2024セクション・オフィシアルでプレミア
キャスト:ジョアナ・サントス、ニール・ライバー、オラ・フォーマン、イネス・ヴァス、デボラ・アーノット、ダニエル・マクガイア、他
ストーリー:スコットランドの広大な倉庫で働くポルトガル人労働者アウロラの物語。共同アパートの孤独と仕事場の壁のなかに閉じ込められている。彼女は孤立と疎外感、取るに足りないお喋りを乗りこえようとしているが、そのことが彼女の自己意識を脅かし始める。私たちを隔てるために設計されたアルゴリズムに基づくエコノミーが支配する環境のなかで、意味と繋がりを見つけるための静かで重たい闘いを探求している。
8)「The Last Showgirl」米国
監督:ジア・コッポラ(ロスアンゼルス1987)、監督、脚本家、女優。フランシス・フォード・コッポラが祖父、ソフィア・コッポラが叔母、ロマン・コッポラが叔父になる。短編、ミュージックビデオ、TVシリーズを手掛けている。ベネチア映画祭2013オリゾンティ部門ノミネート「Palo Alto」(『パロアルト・ストーリー』2015公開)、同映画祭2020同部門「Mainstream」(『メインストリーム』2021公開)、新作が単独での監督3作目になり、脚本はケイト・ガーステン。
データ:製作国米国、2024年、英語、ドラマ、85分、撮影地ラスベガス、SSIFF2024セクション・オフィシアルでプレミア
キャスト:パメラ・アンダーソン、キーナン・シプカ、ブレンダ・ソング、ビリー・ラド、デイブ・バウティスタ、他
ストーリー:ベテランのショーガールは、30年間も続いていたショーが突然打ち切りになり、自分の将来の計画を立て直さねばならなくなります。50歳のショーガールとして続けるためには何をなすべきかに苦悩することになる。母親として、自分の人生でしばしば脇においていた娘との張り詰めた関係を修復しようと努力する。ショーガールにパメラ・アンダーソンが扮する。
9)「Le dernier souffle / Last Breath」フランス
監督・脚本:コスタ・ガブラス(ギリシャのルトラ・イレアス1933)、ギリシャ系フランス人、両国の二重国籍、SSIFF2019のドノスティア栄誉賞受賞者、初めてギリシャ語で撮った「Adults in the Room」が特別上映された。フランス映画『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』(12)で金貝賞を受賞している。キャリア&フィルモグラフィーは、以下にアップしています。
*主にキャリア&フィルモグラフィーの紹介は、コチラ⇒2019年08月25日
*ドノスティア栄誉賞授与式の記事は、コチラ⇒2019年09月25日
データ:製作国フランス、2024年、フランス語、ドラマ、100分、原作レジス・ドゥブレ&クロード・グランジュの ”Le dernier souffle”、撮影ナタリー・デュラン、美術キャサリン・ヴェルナー・シュミット、音楽アルマン・アマール、製作者KGプロダクションのミシェル・レイ、アレクサンドル・がヴラス、コスタ・ガヴラス
キャスト:デニス・ポダリデス(作家トゥーサン)、カド・メラド(マセット医師)、マリリン・カント、アンヘラ・モリーナ、シャーロット・ランプリング、ハイム・アッバス、カリン・ヴィアール、アガテ・ボニツア
ストーリー:オーギュスタン・マセット医師は、有名な作家ファブリス・トゥーサンを生と死についての哲学的対話に参加させます。医師が案内者であり、作家である同乗者が自分自身の恐怖や不安に立ち向かうことになった一連の出会いの錯綜、それぞれの患者のエモーション、笑い、涙のかたまりのなかの詩的なダンス、私たちを人生の核心に導く旅である。死にゆく人々をどうケアするかというテーマを扱っている。
(左からマイテ・アルベルディ、ラウラ・カレイラ、ジア・コッポラ、コスタ・ガヴラス)
セクション・オフィシアル作品紹介*サンセバスチャン映画祭2024 ⑧ ― 2024年08月08日 17:58
◎第72回セクション・オフィシアル作品16作 ②◎
10)「Conclave / Conclave」(『コンクラーベ』)ドイツ
監督:エドワード・ベルガー(ウォルフスブルク1970)監督、脚本家、TVシリーズの製作者、英語読みでバーガーとも表記される。ドイツのブラウンシュバイク美術大学で学んだ後、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で監督業を学んでおり、現在ベルリンを拠点にしている。2022年の『西部戦線異状なし』がアカデミー賞2023国際長編映画賞を含む7冠を制した。ほか『ぼくらの家路』(14)、「All My Loving」はベルリン映画祭2019にノミネートされている。
データ:製作国イギリス、米国、2024年、英語、スリラー、120分。原作ロバート・ハリス、ピーター・ストラウガンの同名小説の映画化。音楽フォルカー・ベルテルマン、撮影ステファン・フォンテーヌ、編集ニック・エマーソン、美術ロベルタ・フェデリコ、プロダクションデザインはスージー・デイヴィス
映画祭・受賞歴:トロント映画祭2024プレミア、SSIFFセクション・オフィシアルにノミネート
キャスト:レイフ・ファインズ(ローレンス枢機卿)、スタンリー・トゥッチ(ベリーニ枢機卿)、ジョン・リスゴー(トレンブレイ枢機卿)、イザベラ・ロッセリーニ(シスター・アグネス)、セルジオ・カステリット(テデスコ枢機卿)ほか多数
ストーリー:コンクラーベは、亡くなった教皇の後継者である新教皇を選ぶ、世界でも最も秘密主義に満ちた古くからのイベントの一つである。ローレンス枢機卿は、最愛のローマ教皇の予期せぬ死後、この秘密のプロセスを主導する任務を負うことになる。カトリック教会の強力な指導者が世界中から集まり、バチカンの広間に閉じ込められると、ローレンスは教会の土台を揺るがしかねない秘密を発見し、同時に自分が複雑な陰謀の中に捕らわれていることに気づく。
11)「Bound in Heaven」中国 デビュー作
監督:シン・フオXin Huo(北京1980、ローラ・フオ)、脚本家、監督。脚本家としてスタート、チャン・ヤンの『こころの湯』(99、公開2001)、スティーブン・チョウの『カンフーハッスル』(04、公開2005)、張一白の『好奇心は猫を殺す』(06、DVD 2010)、ソイ・チェンの『モンキー・マジック孫悟空誕生』(14、公開2015)の脚本を手掛けている。本作が監督デビュー作。
データ:製作国中国、2024年、中国語、ドラマ、105分、脚本ユウ・パン、Li Xiuwenの小説 ”Bundled to Heaven”をベースに映画化された。
映画祭・受賞歴トロント映画祭2024でプレミア、SSIFFセクション・オフィシアルにノミネート
キャスト:ニー・ニーNi Ni、ユー・ジョウYou Zhou、ファン・リャオFan Liao
ストーリー:末期の病を患い心が石のようだった男と暴力に疲れ果てた女性が恋に落ちる感動的な物語が語られる。予期せぬ出来事のあとの遁走を交錯させながら、破壊的な死と束の間のきらめきのなかを生きのびる愛の物語。
12)「Hebi no michi / Serpen’s Path」(『蛇の道』)日本
監督:キヨシ・クロサワ 黒沢清(神戸1955)、監督、脚本家、作家、東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻教授。代表作『CURE』、『カリスマ』(カンヌFF併催監督週間)、『ニンゲン合格』(ベルリンFFフォーラム)、『大いなる幻影』(ベネチアFFコンペティション)、『回路』(カンヌ「ある視点」)、『アカルイミライ』(カンヌFFコンペティション)、『トウキョウソナタ』が「ある視点」審査員賞、サバルテギ-ペルラス部門上映、同じく『岸辺の旅』で監督賞を受賞、2020年の『スパイの妻』がベネチアの監督(銀獅子)賞を受賞、ペルラス部門でも上映された。
データ:製作国日本=フランス=ベルギー=ルクセンブルク合作、2024年、フランス語・日本語、クライム・サスペンス、113分、1998年に製作した自作の舞台をパリに移したセルフリメイク、ただしかなり違いがあります。日本では既に劇場公開されています。
キャスト:柴咲コウ(新島小夜子)、ダミアン・ボナール(アルベール・バシュレ)、マチュー・アマルリック(ティボー・ラヴァル)、グレゴワール・コラン(ピエール・ゲラン)、西島秀俊(吉村)、青木崇高(新島宗一郎)ほか
ストーリー:パリの場末、フリーランス・レポーターのアルベールは、幼い娘を惨殺され、復讐を固く誓う。新島小夜子というパリ在住の心療内科医が犯人捜しの協力を申し出る。小夜子の協力のお蔭で、二人はアルベールの娘の死に隠されていた真実に近づいていくが、謎に包まれた財団や人身密売の関りが明らかになるにつれ捻じれた事件に巻き込まれていく。
13)「Hard Truths」イギリス
監督:マイク・リー(サルフォード1943)は、イギリスの監督、脚本家、舞台演出家。劇作家としてキャリアをスタートさせ、1980年代から映画を手掛ける。『ネイキッド』カンヌFF1993監督賞受賞、1996年『秘密と嘘』がパルムドール、本祭ペルラス部門上映、『人生は、時々晴れ』(02)、『ヴェラ・ドレイク』でベネチアFF2004金獅子賞受賞、『ハッピー・ゴー・ラッキー』(08)、『ターナー、光に愛を求めて』はカンヌFF2014コンペ部門に正式出品。
データ:製作国イギリス=スペイン、2024年、英語、コメディドラマ、97分、撮影地ロンドン、2023年クランクイン。脚本マイク・リー、撮影ディック・ポープ、音楽ゲイリー・ヤーション、編集タニア・レディン、プロダクションデザインはスージー・デイヴィス、メイン製作者ジョージナ・ロウ
映画祭・受賞歴:トロントFF2024スペシャル・プレゼンテーションでプレミア、SSIFFセクション・オフィシアルにノミネート
キャスト:マリアンヌ・ジャン=バティスト(パンジー)、ミシェル・オースティン(妹シャンテル)、デビッド・ウェバー、アニ・ネルソン、トゥウェイン・バレット、ソフィア・ブラウン、ほか
ストーリー:パンジーにとって人生は常に闘いである。心も身体も痛みがある。世間にかかわる方法は、容赦ない怒りを通して、例えば家族、歯医者、主治医、スーパーのレジ係・・・などと対決する。夫カートリーは大分前から彼女の扱いが分からない、息子モーゼスは自分の世界にどっぷり浸かり会話はゼロ、唯一の理解者は妹シャンテルだけである。幸福の可能性、人間の絆の限界についての探求であり、現代の家族生活についての厳しいが思いやりのある親密な研究でもある。
(左から、エドワード・ベルガー、シン・フオ、黒沢清、マイク・リー)
セクション・オフィシアル作品紹介*サンセバスチャン映画祭2024 ⑨ ― 2024年08月11日 15:48
◎第72回セクション・オフィシアル作品16作 ③◎
14)「El hombre que los platos voladores / The Man Who Laves UFOs」
アルゼンチン
監督:ディエゴ・レルマン(ブエノスアイレス1976)、監督、脚本家。セクション・オフィシアルに再び戻ってきました。7作目となる新作でノミネーション3回目となる。2017年の『家族のように』、2022年『代行教師』に続く3作目は、1986年のアルゼンチンのテレビ史上、最も記憶に残るエイリアン地球外生物の存在をテーマにしたコメディ・ドラマです。ドン・キホーテ役のジャーナリストにレオナルド・スバラリア、サンチョ・パンサ役のカメラマンにセルヒオ・プリナが扮します。
★別途紹介予定の作品、監督キャリア&フィルモグラフィーは、以下にアップしています。
*『代行教師』作品紹介は、コチラ⇒2022年08月09日
*『家族のように』紹介とキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2017年09月03日
*「UFOを愛した男」の作品紹介は、コチラ⇒2024年08月17日
15)「The End」デンマーク=ドイツ=アイルランド=イタリア=スウェーデン
監督:ジョシュア・オッペンハイマー(テキサス州オースティン1974)は、監督、製作者、撮影監督。代表作は1965年、当時のインドネシア大統領が軍事クーデタで失脚、その後に起きた犠牲者100万人といわれるジェノサイドに材をとった初の長編ドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』(12)、ベルリン映画祭2013で観客賞、イギリスのBAFTA2014ドキュメンタリー賞などを受賞、その続編である『ルック・オブ・サイレンス』はベネチア映画祭2014の審査員グランプリとFIPRESCI賞を受賞、この2作でアカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされた他、国際映画祭で60賞している。SSIFFノミネートは初めてである。
データ:製作国デンマーク=ドイツ=アイルランド=イタリア=スウェーデン他、2024年、英語、ミュージカル、ファンタジーSF、148分、脚本オッペンハイマー監督とラスムス・ハイスタ―ベルクの共同執筆、撮影ミハイル・クリチマン、音楽ジョシュア・シュミット、マリウス・デ・フリース、編集ニルス・パー・アンデルセン、プロダクションデザインはジェッテ・レーマン、撮影地アイルランド
映画祭・受賞歴:トロント映画祭2024スペシャル・プレゼンテーション部門プレミア、テルライド(コロラド州)映画祭、SSIFFセクション・オフィシアルにノミネート
キャスト:ティルダ・スウィントンジョージ・マッケイ、モーゼス・イングラム、マイケル・シャノン、ブロナー・ギャラガー、ティム・マッキナニー、レニー・ジェームス、ほか
ストーリー:地球に最後に残された裕福な家族をブロードウェイ黄金時代のスタイルで描いた黙示録的なミュージカル。豪華な家に改装された塩鉱山に住む裕福な家族の周囲は、明らかに破壊されていましたが、息子は外の世界を知りません。ある日、見知らぬ少女がバンカーの入り口に突然現れると、両親が地下の奥深くでコントロールしていた家族のバランスが脅かされるようになります。息子はここでの生活が見せかけの完璧さにすぎないのではないかと疑い始めます。
16)「Quand vient l’automne / When Fall Is Coming」
(スペイン題「Quando cae el otoño」)フランス
監督:フランソワ・オゾン(パリ1967)は、セクション・オフィシアル6回目の参加、1996年のデビュー作以来、1年1作のペースで撮っているから驚くほかはない。うち2012年の『危険なプロット』で金貝賞と審査員脚本賞を受賞、2009年の『ムースの隠遁』で審査員特別賞を受賞した。他『まぼろし』(00)、『彼は秘密の女ともだち』(14、セバスティアン賞)、10代当時の自身を投影した『Summer of 85』(20)は、少年同士のひと夏のラブストーリーを描いて観客を魅了した。さらにペルラス部門に『8人の女たち』(02)、『17歳』(13)、『婚約者の友人』(16)、ペルラスのオープニング作品だった『苦い涙』などが挙げられ、すべて公開されている。
データ:製作国フランス、2024年、フランス語、ドラマ、102分、脚本・製作フランソワ・オゾン、音楽エフゲニー・ガルペリン、サーシャ・がルペリン、編集アニタ・ロス、プロダクションデザインはクリステル・メゾンヌーヴ、製作FOZ。公開フランス9月2日、ベルギー10月9日、スペイン12月13日
映画祭・受賞歴:SSIFF2024 セクション・オフィシアルにノミネート
キャスト:エレーヌ・ヴァンサン(ミシェル)、ジョジアーヌ・バラスコ(マリー・クロード)、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタン、ヴァンサン・コロンブ、マリック・ジディ、ポール・ボールペール、マリー・ローレンス・タルタス、ソフィー・ギルマン、他
ストーリー:長年の親友であるマリー・クロードが住んでいるブルゴーニュの小村で静かに引退生活を送っているミシェルの物語です。諸聖人の祝日、パリに住んでいる娘ヴァレリーが孫ルーカスが学校の休暇を利用して祖母と一緒に過ごすアイディアをもって彼女に会いに来ます。娘にストレスを感じているミシェルは、昼食に毒キノコをふるまう。娘は直ぐ回復するが、一緒に過ごすことを心待ちにしていたルーカスとは会うことを禁じられてしまいます。孤独と罪悪感を感じていたが、出所したばかりのマリー・クロードの息子と出合ったことで人生が変わってしまいます。
(左から、ディエゴ・レルマン、ジョシュア・オッペンハイマー、フランソワ・オゾン、
オープニング作品の監督オドレイ・ディヴァン)
★以上16作の作品紹介です。うち別途紹介予定のマイテ・アルベルディ(チリ)の「El lugar de la otra」と、ディエゴ・レルマン(アルゼンチン)の「El hombre que los platos voladores / The Man Who Laves UFOs」は、映画祭事務局はアナウンスしておりませんが、Netflix 作品のようです。SSIFFはカンヌFFのようにオンラインシネマを除外していませんので問題ありません。前者はドキュメンタリー「La memoria infinita」が昨年のペルラス部門で上映されたばかりですが、新作は初フィクションです。後者は上述しましたように『代行教師』(22)がセクション・オフィシアルにノミネートされており、当時12歳だった娘のレナータ・レルマンが助演俳優賞を受賞しました。新作にもクレジットされています。本祭はフランソワ・オゾンを例に出すまでもなく、同じ監督を面倒見よくノミネートする傾向がありますが、それはそれで問題があるのではないかと個人的には危惧しています。
マイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』*サンセバスチャン映画祭2024 ⑩ ― 2024年08月14日 18:28
アルベルディの「El lugar de la otra」の邦題は『イン・ハー・プレイス』
(メルセデス役のエリサ・スルエタ)
★サンセバスチャン映画祭の公式発表では、ネットフリックス作品についての記載はありませんでしたが、マイテ・アルベルディ監督自身のバラエティ誌などのインタビュー記事から周知のことでした。先日ネットフリックスから邦題『イン・ハー・プレイス』と配信日(10月11日)が発表になりましたので、最初から邦題での作品紹介にしました。オスカー賞2021ドキュメンタリー部門ノミネートの『83歳のやさしいスパイ』や「La memoria infinita」(23)のドキュメンタリー作家として、イベロアメリカのみならず国際的にも認知度をあげています。新作「El lugar de la otra」でフィクションにデビューしました。もっとも監督自身はドキュメンタリーとフィクションを区別しておりませんが、製作の規模や方法の違いには苦労したようです。
(監督を挟んで二人の主役、エリサ・スルエタとフランシスカ・ルーウィン)
『イン・ハー・プレイス』
(原題「El lugar de la otra」、英題「In Her Place」)
製作:Fabula
監督:マイテ・アルベルディ
脚本:マイテ・アルベルディ、イネス・ボルタガライ、パロマ・サラス
原作:アリア・トラブッコ・セランの ”Las homicidas”
音楽:ホセ・ミゲル・ミランダ、ホセ・ミゲル・トバル
撮影:セルヒオ・アームストロング
編集:アレハンドロ・カリージョ・ペノビ、ハビエル・エステベス、ヘラルディーナ・ロドリゲス
プロダクションデザイン:ロドリゴ・バサエス・ニエト
衣装デザイン:ムリエル・パラ
録音:ミゲル・オルマサバル
美術:パメラ・チャモロ
プロダクション・マネジメント:ジョナサン・ホタ・オソリオ
製作者:フアン・デ・ディオス・ラライン、パブロ・ラライン、ロシオ・ハドゥエ、(エグゼクティブ)マリアンヌ・ハルタード、セルヒオ・カルミー、クリスティアン・ドノソ
データ:製作国チリ、2024年、スペイン語、歴史ドラマ、90分、撮影地サンティアゴデ・チレ、SSIFF上映後、チリで劇場公開され、その後ネットフリックスでストリーミング配信される(10月11日)
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2024セクション・オフィシアル作品9月23日上映
キャスト:エリサ・スルエタ(メルセデス)、フランシスカ・ルーウィン(作家マリア・カロリナ・ヘール)、マルシアル・タグレ、パブロ・マカヤ、ガブリエル・ウルスア、ガブリエル・カニャス、他
ストーリー:1955年チリ、人気作家マリア・カロリナ・ヘールが恋人を殺害したとき、この容疑者の保護を担うことになった裁判官の内気な書記メルセデスは、この事件に夢中になった。作家のアパートを訪れた後、メルセデスはその家に自由のオアシスを見つけると、自分の人生、アイデンティティ、そして社会における女性の役割について疑問をもつようになる。このエキサイティングなドラマは、実際にあった殺人事件に基づいているが、メルセデス自身の居場所探しの物語でもある。
(マリア・カロリナ・ヘール役のフランシスカ・ルーウィン)
架空の登場人物メルセデスの視点で描くチリ社会の階級主義
★今作のベースになったアリア・トラブッコ・セランの ”Las homicidas”(仮題「殺害する女性たち」)は、20世紀にチリの女性によって犯された4つの象徴的な殺人事件を分析している。殺人事件そのものだけでなく、社会、メディア、権力者たちがどのように反応するかを詳述したノンフィクション。その一つホテル・クリジョンの衆人環視のなかで行われた殺害事件を扱った、人気作家マリア・カロリナ・ヘールの恋人殺害事件にインスパイアされて映画化された。殺害に至るまでとその後の出来事、当局による逮捕、裁判、司法手続き、メディアの報道の仕方などが語られている。作家が加害者であることは明白であるが、同時により陰湿な種類の暴力の被害者、犠牲者であることが語られる。
(英語版の表紙)
★トラブッコ・セラン(チリ1983)は、フルブライト奨学金を得て、ニューヨーク大学でクリエイティブライティングの修士号を取得する。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスペイン語とラテンアメリカ研究の博士号を取得、2018年のデビュー作 ”La resta”(The Remainder)は批評家から高く評価され、2019年のマン・ブッカー国際賞の最終選考に残った。2作目が ”Las homicidas”(2019年刊)です。現在サンティアゴとロンドンの両方に在住している。
★メルセデスは架空の人物で、アルベルディ監督によると「メルセデスの視点は、私たち女性の視点でもあります。彼女は夫と子供2人と狭いアパートで暮らしている。犯罪者である作家のアパートは自宅では得られない静けさの漂うオアシスだった・・・メルセデスは進化し創造するための自身の居場所を見つけようとする。この映画はチリ社会に蔓延し続ける階級主義と家父長制についても描いています」とコメントしている。存在さえ無視されていた50年代のチリ女性の居場所探しがテーマの一つのようです。
★また今回初めてタッグを組むラライン兄弟の制作会社「Fabula」とネットフリックスについては、「私の初めてのフィクションで素晴らしいパートナーになってくれた。彼らは私の視点、ビジョンを尊重して、この新しい世界を巧みに導いてくれた」と語っている。
(左から、トラブッコ・セラン、マリア・カロリナ・ヘール、アルベルディ監督)
★ドキュメンタリーとフィクションの違いについては「ドキュメンタリーは少人数だが数年がかりとなる。フィクションは短期間の撮影で終わったが、俳優が約50人、スタッフを含めるとチーム全体は80人にもなり大変だった」とその違いに苦労したそうです。
(メルセデス役のエリサ・スルエタ)
★SSIFFで上映後、10月11日にはストリーミング配信されますので、映画祭新情報、キャスト&スタッフ紹介は鑑賞後にアップしたいと思います。
ディエゴ・レルマンの新作はコメディドラマ*サンセバスチャン映画祭2024 ⑪ ― 2024年08月17日 10:41
フェイクニュースの先駆けホセ・デ・ゼルの人生を描くコメディ
★セクション・オフィシアル紹介の最終回、アルゼンチンのディエゴ・レルマンの「El hombre que amaba los platos voladores」は、20世紀に実在したアルゼンチンのテレビレポーター、ホセ・デ・ゼルの人生が語られる。レルマンが初めてネットフリックスから資金援助を受けて製作した「UFOを愛した男」は、コメディドラマであると同時にファンタジックなビオピックでもあり、SFの要素も備えている。彼のデビュー作『ある日、突然。』(02、「Tan de repente」公開2004年)を、それこそトツゼンに思いだしました。ロカルノ映画祭銀豹を皮切りに新人が貰える国際映画賞を山ほど手にした映画でした。
★本名ホセ・カイゼルKeizer として1941年誕生したホセ・デ・ゼルは、アルゼンチンのエンターテインメントのジャーナリスト、テレビレポーター、ポップカルチャーのアイコンとして不思議な磁力で人々を引き付けていた。舞台は1986年のブエノスアイレス、ある人物から不自然で奇妙な提案を受けたホセ・デ・ゼルとその相棒カメラマンのチャンゴは、コルドバのラ・カンデラリアに旅立ちます。
「El hombre que amaba los platos voladores」
(英題「The Man Who Loved UFOs」)
製作:El Campo Cine / Bicho Films 協賛Netflix
監督:ディエゴ・レルマン
脚本:ディエゴ・レルマン、アドリアン・ビニエス
編集:フェデリコ・ロットスタイン(1983 BSAS)
美術:マホ・サンチェス・キアッペChiappe
録音:ナウエル・デ・カミジス、レアンドロ・デ・ロレド、ルベン・ピプット・サントス
製作者:ディエゴ・レルマン
データ:製作国アルゼンチン、2024年、スペイン語、コメディドラマ、ビオピック、106分、配給元ネットフリックス、配信10月18日
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2024セクション・オフィシアル作品
キャスト:レオナルド・スバラリア(ホセ・デ・ゼル)、セルヒオ・プリナ(カルロス・〈チャンゴ〉・トーレス)、オスマル・ヌニェス、レナータ・レルマン、マリア・メルリノ、モニカ・アジョス(アヨス)、ダニエル・アラオス、エバ・ビアンコ、ノルマン・ブリスキ、アグスティン・リッタノ、ギジェルモ・プフェニング、他
ストーリー:1986年、ジャーナリストのホセ・デ・ゼルとカメラマンのチャンゴは、うさん臭い2人の人物から奇妙な提案を受け取り、コルドバのラ・カンデラリアに旅立った。村に到着したが、丘の中腹に焼け焦げた牧草地があるだけで取り立てて調査するようなものは見つからなかった。しかし引き続いて起きたことは、アルゼンチンのテレビ史上最高の視聴率を誇ることになる。隠された才能の持ち主で虚言癖の天才デ・ゼルがやったことは、地球外生命体エイリアンの存在を演出することだった。1980年代の宇宙人訪問詐欺を題材にしたコメディドラマ。
(ラ・カンデラリアの丘でライブ放送をするホセ・デ・ゼル、フレームから)
★ホセ・デ・ゼル(本名ホセ・カイゼル)は1941年、劇場の照明デザイナーの息子としてブエノスアイレスで生れた。エンターテインメントのジャーナリスト、テレビレポーター、軍人、1997年、罹患していたパーキンソン病と食道癌と闘ったが56歳の若さで鬼籍入りした。彼の報道したニュース同様、ポップカルチャーのアイコンとして短いが波乱万丈の人生だった。映画からはフェイクニュースのパイオニアみたいな印象を受けるが、当時あらゆるタイプの記事をカバーできる実力のあるジャーナリストの地位を確立していた。だからこそ眉唾のフェイクニュースにお茶の間は釘付けになったのでしょう。今日のようにフェイクが民主主義を脅かす政治的武器ではなく、無害でエキサイティングな娯楽だった時代には、お茶の間で楽しむ人々も共犯者だった。いつの時代でも私たち庶民は、信じたいものを信じ、見たいものを見るという、操作されやすい存在ということです。
★ユダヤ教徒のホセ・デ・ゼルは、第三次中東戦争(1967)に、予備役少尉としてイスラエルに派遣されている。別名「六日間戦争」と言われるようにイスラエルの圧倒的勝利で、たったの6日間の戦闘で終わった戦争なので、九死に一生を得るということではなかったと思うが、パタゴニアでの意識を失うほどの深刻な自動車事故を生きのびて以来、死を怖れるようになった。息切れするほどのヘビースモーカーでコーヒー中毒だったから長生は難しかったのではないか。1989年にゲリラによってブエノスアイレス州のラ・タブラダ軍事施設が襲撃されたときの現場報道、妻殺害でサンタフェ刑務所に収監されていたミドル級チャンピオンのボクサー、カルロス・モンソンのインタビューなど、堅実な報道も行っている。
★監督キャリア&フィルモグラフィーは紹介済み、主役のレオナルド・スバラグリア(スバラリア)は、マラガ映画祭2017の大賞マラガ-スール賞を受賞した折にキャリア&フィルモグラフィーをアップしています。公開、ミニ映画祭、ネット配信、DVDと電撃デビューした『10億分の1の男』(01)以来、20数作も字幕入りで鑑賞できる俳優も少ないのではないでしょうか。
*レオナルド・スバラグリア紹介記事は、コチラ⇒2017年03月13日
★ケイト・ブランシェットに続いて、二人目となるドノスティア栄誉賞受賞者ペドロ・アルモドバルの発表がありました。昨年授与式を延期していたハビエル・バルデムも今年は出席します。またオリソンテス・ラティノス部門、ペルラス部門、サバルテギ-タバカレア部門などのノミネートがアナウンスされ映画祭の全容が見えてきました。もう開催まで1ヵ月を切りましたので、バランスをとって作品紹介をしていく予定です。
オリソンテス・ラティノ部門14作ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2024 ⑫ ― 2024年08月20日 15:14
オリソンテス・ラティノス部門14作、最多はアルゼンチンの5作
★8月8日、オリソンテス・ラティノス部門のノミネート14作が一挙発表になりました。スペイン語、ポルトガル語に特化した部門、例年だと10~12作くらいなので多い印象です。ラテンアメリカの映画先進国アルゼンチンの監督が5人と最多、チリ、メキシコ、ブラジル、パナマ、ベネズエラ、ペルーと満遍なく選ばれています。3回ぐらいに分けてアップします。オープニングはチリのホセ・ルイス・トーレス・レイバの「Cuando las nubes esconden las sombras」、クロージングはアルゼンチンのセリナ・ムルガの「El aroma del pasto recién cortado」です。新人登竜門の立ち位置にある部門ですが、「Pelo malo」で2013年の金貝賞を受賞したマリアナ・ロンドンの新作もノミネートされております。作品賞にあたるオリソンテス賞には副賞として35.000ユーロが与えられます。
*オリソンテス・ラティノス部門 ①*
1)「Cuando las nubes esconden las sombras / When Clouds Hide The Shadow」
チリ=アルゼンチン=韓国
オープニング作品 2024年、スペイン語、ドラマ、70分
監督:ホセ・ルイス・トーレス・レイバ(サンティアゴ1975)は、監督、脚本家、編集者。「El cielo, la tierra, la lluvia」がロッテルダムFF2008でFIPRESCI賞、ヒホン、ナント、サンタ・バルバラ、トライベッカ、全州チョンジュFFほか多くの国際映画祭にノミネートされている。「Verano」はベネチアFF2011オリゾンティ部門でプレミアされている。本祭関連ではSSIFF2019の「Vendrá la muerte y tendrá tus ojos」で金貝賞やセバスティアン賞を争った他、マル・デル・プラタ映画祭でスペシャル・メンションを受賞している。サバルテギ-タバカレア部門には、「El viento sepa que vuervo a casa」(16、カルタヘナFFドキュメンタリー賞)、短編「El Sueño de Ana」(17)、「Sobre cosas que me han happens」(18)が紹介されている。新作でセクション・オフィシアルに戻ってきた。
映画祭・受賞歴:全州チョンジュ市映画祭プレミア、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門
キャスト:マリア・アルチェ
ストーリー:マリア・アルチェは、映画で主人公を演じるために世界最南端の港町プエルト・ウィリアムズを訪れている女優です。激しい暴風雨が予定通りの撮影クルーの到着を阻んでおり、一人で待つしかありません。背中のひどい痛みの手当てを探しに、彼女は世界南端の村々を歩き回ることになるでしょう。彼女の人生で気がかりな物語の一つ、と同時に希望の物語であり、マリアと大陸の最南端の自然とその村人たちの間に起きる思いがけない出会いの物語である。
2)「El aroma del pasto recién cortado / The Freshly Cut Grass」
アルゼンチン=ウルグアイ=米国=メキシコ=ドイツ
クロージング作品 2024年、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同製作フォーラム 2020
ドラマ、114分、脚本ガブリエラ・ララルデ、セリナ・ムルガ、ルシア・オソリオ、他
映画祭・受賞歴:トライベッカFF 2024脚本賞受賞(6月)、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門
監督:セリナ・ムルガ(アルゼンチンのパラナ1973)は監督、脚本家、製作者。1996年映画大学で映画監督の学位を取得、制作会社「Tresmilmundos Cine」の共同設立者、映画研究センターで後進の指導に当たっている。本祭との関連では、話題のデビュー作「Ana y los otros」がオリソンテス2003、ボゴタFF作品賞、リオデジャネイロFFのFIPRESCI賞、ほか国際映画祭での受賞歴多数、「Una semana solos」がシネ・エン・コンストルクション2007、ミュンヘンFF2009 ARRI/OSRAM賞を受賞している。「The Side of The River」がオリソンテス・ラティノス2014にノミネートされている。
キャスト:ホアキン・フリエル(パブロ)、マリナ・デ・タビラ(ナタリア)、ルチアナ・グラッソ(ベレン)、アルフォンソ・トルト、ベロニカ・ヘレス(ルチアナ)、ロミナ・ペルフォ(カルラ)、オラシオ・マラッシ(ロベルト)、クリスティアン・フォント(マルセロ)、ロミナ・ベンタンクール(ソニア)、ほか多数
ストーリー:ブエノスアイレス大学の教授であるパブロは結婚していて2人の息子がいる。彼の学生であるルチアナと不倫関係にある。浮気が発覚すると仕事と家族を失うと脅されます。ここから同じ大学の教授であるナタリアの物語が始まります。彼女も結婚していて2人の娘がいる。彼女も生徒のゴンサロと不倫関係を始めます。二つの物語は、同じコインのウラオモテであり、男女間で確立された力関係と、事前に確立された性別の解体に向けた新たな道を問いかけることになる。ありきたりの倦怠期夫婦の危機が語られるが、新味がないのにパブロとナタリアの不倫が交差することはなく、その独創的な構成と達者な演技で上質のドラマになっている。
(左から、ホアキン・フリエル、ムルガ監督、マリナ・デ・タビラ)
3)「Reas」アルゼンチン=ドイツ=スイス
WIP Latam 2023 作品 ドキュメンタリー、ミュージカル、82分、
映画祭・受賞歴:ベルリンFF2024フォーラム部門ドキュメンタリーでプレミア、テッサロニキ・ドキュメンタリーFF金のアレクサンダー賞&マーメイド賞、ルクセンブルク市FFドキュメンタリー賞、シネラティノ・トゥールーズ2024ドキュメンタリー部門観客賞受賞、ほかノミネート多数、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門
監督:ロラ・アリアス(ブエノスアイレス1976)は、監督、脚本家、戯曲家、シンガーソングライター、舞台女優、演出家と多才、キャリア&フィルモグラフィーはドキュメンタリーのデビュー作「Teatro de guerra」(18)がサバルテギ-タバカレア部門にエントリーされた折、作品紹介とキャリアを紹介しています。新作は長編2作目で昨年のWIP Latamに選出され完成が待たれていた。
*監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2018年08月05日
キャスト:ヨセリ・アリアス、イグナシオ・ロドリゲス(ナチョ)、カルラ・カンテロス、ノエリア・ラディオサ、エステフィー・ハーキャッスル、パウラ・アストゥライメ、シンティア・アギーレ、パト・アギーレ、ハデ・デ・ラ・クルス・ロメロ、フリエタ・フェルナンデス、ラウラ・アマト、ダニエラ・ボルダ、ほか多数
ストーリー:麻薬密売が発覚して空港で逮捕された若いヨセリは、背中にエッフェル塔のタトゥーをしている。ヨーロッパ旅行を夢見ていたからだが、規則、制約、友情、連帯、愛で構成されたチームに参加することにした。ナチョは詐欺罪で逮捕されたニューハーフでロックバンドを結成している。もう使用されなくなっているブエノスアイレスの刑務所の敷地が、ドキュメンタリー、ミュージカル、ドラマを組み合わせた本作の舞台となる。過去に収監されていた人々が刑務所での記憶をフィクション化して再現します。控え目な人も荒っぽい人も、ブロンドも剃毛も、長期囚も最近入所した人も、シスもトランスも、ここには自分の居場所があります。このハイブリットなミュージカルでは踊り、歌い、フィクション化して自分の人生を追体験し、自身の可能性のある未来を創造します。
4)「Querido Trópico / Beloved Tropic」パナマ=コロンビア
2024年、スペイン語、ドラマ、108分、脚本アナ・エンダラ、ピラール・モレノ
映画祭・受賞歴:トロントFF2024「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門でプレミア(9月7日)、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門
監督:アナ・エンダラ・ミスロフ(パナマシティ1976)は、ドキュメンタリーを専門とする監督、脚本家、製作者。フロリダ州立大学で社会学を専攻、キューバの国際映画テレビ学校で映画を学んでいる。2001年、ドイツのケルンにある芸術メディア・アカデミーの奨学金を得る。広告代理店のプロとして、ドキュメンタリーやオーディオビジュアルのプロジェクトを制作している。2013年コメディ・ドキュメンタリー「Reinas」でトロントFFグロールシュ・ディスカバリー賞、2016年「La Felicidad de Sonido」でコスタリカFFの審査員賞、イカロFF2017のドキュメンタリー賞を受賞している。マドリード女性映画祭2023の審査員を務めている。本作が最初のフィクションです。
キャスト:パウリナ・ガルシア、ジェニー・ナバレテ、フリエタ・ロイ
ストーリー:トロピカルな庭園は、時を共にすることになる二つの孤独の出会いの舞台になります。過去のすべてが奪われていく裕福だが認知症を患う女性、その介護者はたった一人で怖ろしい秘密から逃れてパナマに移民してきた女性、監督は二人の孤独を痛烈に解き明かします。
(コロンビア女優ジェニー・ナバレテ、チリのベテラン女優パウリナ・ガルシア)
(左から、ホセ・ルイス・トーレス・レイバ、セリナ・ムルガ、ロラ・アリアス、
アナ・エンダラ・ミスロフ)
★トロント映画祭2024は、9月5日から15日までとSSIFFに先行して開催されます。
オリソンテス・ラティノス部門第2弾*サンセバスチャン映画祭2024 ⑬ ― 2024年08月23日 14:41
過去の受賞者フェルナンダ・バラデス、ルイス・オルテガなどの新作
★オリソンテス・ラティノス部門第2弾は、アルゼンチンに実在した美少年の殺人鬼を映画化した『永遠に僕のもの』(18)のルイス・オルテガ、2020年のオリソンテス賞を受賞した『息子のの面影』のフェルナンダ・バラデスなどが新作を発表している。それぞれ4作ともカンヌ映画祭併催の「批評家週間」、ベネチア映画祭、ベルリン映画祭、サンダンス映画祭などでワールドプレミアされた作品ですが、スペインでは未公開なので選ばれています。本祭は開催時期が遅いこともあって二番煎じの印象が付きまとい分が悪い。第2弾として4作品をアップします。
*オリソンテス・ラティノス部門 ②*
5)「Simón de la montaña / Simon of the Mountain」
アルゼンチン=チリ=ウルグアイ=メキシコ
2024年、スペイン語、ドラマ、96分、公開アルゼンチン10月17日
脚本フェデリコ・ルイス、トマス・マフィー、アグスティン・トスカノ
監督:フェデリコ・ルイス(ブエノスアイレス1990)は、監督、脚本家。ブエノスアイレス大学で社会コミュニケーションを専攻、2013年卒業制作「Vidrios」を共同監督し、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭(Bafici)でプレミアされた。ほか短編がカンヌ、トロント、マル・デル・プラタ、アムステルダム・ドキュメンタリー(IDFA)など各映画祭で受賞している。本作が単独監督デビュー作である。
映画祭・受賞歴:カンヌFF2024併催の「批評家週間」グランプリ受賞、ゴールデンカメラ賞ノミネート、上海FF上映、ミュンヘンFFシネビジョン賞作品賞受賞、リマFFドラマ部門審査員俳優賞受賞(ロレンソ・フェロ)、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:ロレンソ・フェロ(シモン)、ペウエン・ペドレ、キアラ・スピニ、ラウラ・ネボレ、アグスティン・トスカノ、カミラ・ヒラネ
ストーリー:21歳になるシモンは、引っ越しのヘルパーをしている。なんとか現実を変えたいが料理もダメ、トイレ掃除もダメ、ただベッドメーキングはできる。最近、障害をもつ子供二人と友達になったことで変化の予感がしてきた。彼らは自分たちのために設計されていない世界を一緒にナビゲートし、愛と幸福のための独自のルールを発明していく。ルイス・オルテガの『永遠に僕のもの』で実在した殺人鬼を演じたロレンソ・フェロがシモンを演じている。
6)「El jockey / Kill The Jockey」
アルゼンチン=メキシコ=スペイン=デンマーク=米国
2024年、スペイン語、犯罪ドラマ、97分、脚本ファビアン・カサス、ルイス・オルテガ、ロドルフォ・パラシオス。海外販売Film Factry Entertainment、公開アルゼンチン9月26日、Disney+でストリーミング配信される予定
監督:ルイス・オルテガ(ブエノスアイレス1980)、監督、脚本家。両親とも俳優、兄セバスティアンは映画製作者など、アルゼンチンでは有名なアーティスト一家。2002年、メイド・イン・スペイン部門に長編デビュー作「Caja negra」が選ばれている。公開された『永遠に僕のもの』はカンヌの「ある視点」のあと、本祭ペルラス部門にエントリーされた。監督キャリア&フィルモグラフィーは7作目となる『永遠に僕のもの』にアップしています。新作が8作目と若い監督ながらチャンスに恵まれている。
*監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2018年05月15日
映画祭・受賞歴:ベネチアFF2024コンペティションでワールドプレミア(8月29日)、トロントFF「センターピース」部門出品、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:ナウエル・ペレス・ビスカヤート(レモ・マンフレディーニ)、ウルスラ・コルベロ(レモの恋人アブリル)、ダニエル・ヒメネス≂カチョ(シレナ)、マリアナ・ディ・ジロラモ(アナ)、ダニエル・ファネゴ、ロリー・セラノ、ロベルト・カルナギ、アドリアナ・アギーレ、オスマル・ヌニェス
ストーリー:伝説の騎手レモ・マンフレディーニの自己破壊的な行動は、彼の才能に影を落とし始めている。恋人のアブリルとの関係も脅かしている。騎手であるアブリルはレモの子供を宿しており、子供か名声かを選ばなければならない。かつて命を救ってくれたマフィアのボスのシレナからの借金を精算しなければならない、彼の人生でも重要なレースの日、貴重な馬を死なせてしまう深刻な事故に遭ってしまう。病院から抜け出してブエノスアイレスの街路を彷徨います。自分のアイデンティティから解放されたレモは、自分が本当は誰であるべきなのか考え始める。一方シレナは生死にかかわらず彼を見つけだすための捜索を開始する。アブリルはシレナより先に彼を見つけようとする。
7)「Cidade; Campo」ブラジル=ドイツ=フランス
2024年、ポルトガル語、ミステリー・ドラマ、119分、脚本ジュリアナ・ロハス、製作者サラ・シルヴェイラ、音楽リタ・ザルト
監督:ジュリアナ・ロハスは、1981年サンパウロ州カンピナス生れ、監督、フィルム編集者、脚本家。サンパウロ大学の情報芸術学校で映画を専攻した。大学で出合ったマルコ・ドゥトラとのコラボレーションでキャリアをスタートさせ、数編の短編で注目を集める。2011年、ドゥトラとのデュオで長編デビュー作「Trabalhar Cansa / Hard Labor」を撮り、カンヌFF「ある視点」でプレミアの後、シッチェスFF新人監督賞、ハバナFFサンゴ賞3席、リマ・ラテンアメリカFFスペシャル・メンションなどを受賞した。2017年、ホラーファンタジー「As Boas Maneiras / Good Manners」でロカルノFF銀豹賞を受賞、翌年『狼チャイルド』の邦題で公開された。
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2024エンカウンターズ部門*監督賞受賞、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
*エンカウンターズ部門は2020年に新設されたインディペンデント作品を対象にしている。作品・監督・新人監督・審査員特別賞などがある。
キャスト:フェルナンダ・ヴィアナ(ジョアナ)、ミレッラ・ファサーニャ(フラヴィア)、ブルナ・リンツマイヤー(マラ)、カレブ・オリヴェイラ(ハイメ)、アンドレア・マルケー(タニア)、プレタ・フェレイラ(アンヘラ)、マルコス・デ・アンドラーデ(セリノ)ほか
ストーリー:都会と田舎に移住した二つの物語が語られる。一つ目はジョアナの物語、貯水池が決壊して生れ故郷の土地が浸水してしまうと、彼女は孫のハイメと暮らしている姉タニアを頼ってサンパウロに移住する。ジョアナは労働者の都会で成功するため闘うことになる。不安定な雇用のなかより良い仕事を求めて同僚と絆を深めていく。二つ目はフラヴィアの物語、疎遠にしていた父親の死後、フラヴィアは妻のマラと一緒に父の農場に移り住む。二人の女性は新たなスタートを切りますが、田舎の厳しい現実に直面してショックを受けます。自然が二人の女性をフラストレーションに向き合わせ、古い記憶と幻影に立ち向かうことを強います。
(ジョアナ、ハイメ、タニア)
(マラ、フラヴィア)
8)「Sujo / Hijo de sicario」メキシコ=米国=フランス
2024年、スペイン語、ドラマ、126分、脚本アストリッド・ロンデロ&フェルナンダ・バラデス、撮影ヒメナ・アマン、編集スーザン・コルダ、両監督、録音オマール・フアレス・エスピナ、衣装デザインはアレハ・サンチェス。スージョ役に『息子の面影』でデビューしたフアン・ヘスス・バレラが起用され、その演技が絶賛されている。
監督:アストリッド・ロンデロ(メキシコシティ1989)、監督、製作者、脚本家、共同監督のフェルナンダ・バラデスの『息子の面影』の脚本を共同執筆している。単独で監督した「Los días más oscuros de nosotras」
(17)は、アリエル賞2019のオペラ・プリマ賞、主役のソフィー・アレクサンダー・カッツが女優賞にノミネートされたほか、ボゴタ、サンアントニオ、モンテレイ、サントドミンゴ・アウトフェスなどの国際映画祭で作品賞や脚本賞を受賞している。共同監督のフェルナンダ・バラデス(グアナフアト1981)は、上述したようにSSIFF2020オリソンテス賞を受賞した『息子のの面影』を撮っている。キャリア&フィルモグラフィーについては、ロンデロ監督も含めて以下に紹介しています。両監督ともメキシコにはびこる暴力、麻薬密売、社会的不平等、女性蔑視などを映像を通じて発信し続けている。
*『息子の面影』の紹介記事は、コチラ⇒2020年11月26日
映画祭・受賞歴:サンダンスFF2024ワールドシネマ・ドラマ部門審査員グランプリ、ソフィアFFインターナショナル部門グランプリ、トゥールーズ・ラテンアメリカFFレールドック賞&シネプラス賞、スペイン・ラテンアメリカ・シネマ・フェスティバル作品賞他を受賞。ヨーテボリ、香港、マイアミ、ダラス、シアトル、シドニー、ミュンヘン、ウルグアイ、マレーシア他、各映画祭でノミネートされている。SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:フアン・ヘスス・バレラ・(スージョ)、ヤディラ・ペレス・エステバン(叔母ネメシア)、アレクシス・バレラ(ジャイ)、サンドラ・ロレンサノ(スーザン)、ハイロ・エルナンデス・ラミレス(ジェレミー)、ケヴィン・ウリエル・アギラル・ルナ(少年スージョ)、カルラ・ガリード(ロサリア)ほか
ストーリー:メキシコの小さな町、スージョが4歳だったとき、麻薬カルテルのヒットマンだった父親が残忍な方法で殺害されるのを目撃する。彼は叔母ネメシアの機転で間一髪で命を救われるが孤児となる。ネメシアは危険を避け、生れ故郷の暴力が届かないところでスージョを苦労を重ねながら育てていた。しかし彼の人生には暴力の影が付きまとい、成長するにつれ父親の過去の忘れられない暴力的な遺産にとらえられ、面と向かって立ち向かうことが自分の宿命のように思えてくる。カルテルがスージョとその友人たちを見つけだす。スージョ役に『息子の面影』でデビューしたフアン・ヘスス・バレラが起用され、その演技が絶賛されている。
(メキシコ版のポスター「Hijo de sicario」)
(アストリッド・ロンデロ、フェルナンダ・バラデス、サンダンスFF2024ガラにて)
(左から、フェデリコ・ルイス、ルイス・オルテガ、ジュリアナ・ロハス、
アストリッド・ロンデロ)
オリソンテス・ラティノ部門第3弾*サンセバスチャン映画祭2024 ⑭ ― 2024年08月25日 17:08
2013年の金貝賞受賞者マリアナ・ロンドンの新作「Zafari」
★オリソンテス・ラティノス部門の残り6作を2回に分け、第3弾としてベネズエラ、ペルー、コロンビアの監督作品をお届けします。ベネズエラのマリアナ・ロンドンは、「Pelo malo / Bad Hair」でSSIFF2013の金貝賞を受賞しています。ペルーのサルバドール・デル・ソラルは、オリソンテス・ラティノス部門でデビュー作「Magallanes」を発表、第2作「Ramón y Ramón」で再び戻ってきました。コロンビアのイェニファー・ウリベ・アルサテは、デビュー作「La piel en primavera」で参加します。
*オリソンテス・ラティノス部門 ③*
9) 「Zafari」
ベネズエラ=ペルー=メキシコ=フランス=ブラジル=チリ=ドミニカ共和国
ヨーロッパ=アメリカ・ラティナ共同製作フォーラム2019
2024年、スペイン語、ドラマ、90分、撮影地ドミニカ共和国、脚本マリアナ・ロンドン、マリテ・ウガス、製作者マリテ・ウガス
監督:マリアナ・ロンドン(ベネズエラのバルキシメト1966)は、監督、脚本家、製作者。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画学校で学ぶ。その後フランスに渡り、アニメーションを学んだ。第3作「Pelo malo / Bad Hair」でSSIFF2013の金貝賞、セバスティアン賞、SIGNIS賞を受賞。デビュー作のマリテ・ウガスと共同監督した「A la medianoche y media」は東京国際映画祭1999コンペティション部門で『ミッドナイト・アンド・ハーフ』の邦題で上映された。自伝的な要素のある「Postales de Leningrado」は、サンパウロFF2007国際審査員賞、ユース賞を受賞、ビアリッツ・ラテンアメリカFF金の太陽賞受賞、ケララFFのFIPRESCI賞、監督賞を受賞するなど寡作だが受賞歴多数。新作で脚本を共同執筆しているマリテ・ウガスは、「Pelo malo」の編集者、「A la medianoche y media」を共同で監督、脚本も執筆している。二人は制作会社「Sudaca Films」の設立者でもある。
映画祭・受賞歴:SSIFF2024オリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:ダニエラ・ラミネス(アナ)、フランシスコ・デニス(エドガー)、サマンサ・カスティーリョ、クラレット・ケア、フアン・カルロス・コロンボ、バレク・ラ・ロサ、ベト・ベニテス
ストーリー:カラカスの小さな動物園にカバのサハリが到着して、対立する社会階級に属する隣人同士が向き合うことになる。アナとエドガーと息子のブルーノは、退廃した上流階級のビルの窓からすべてを観察している。食料、水、明かりが欠乏するなかで、アナは逃げ出した家族の廃屋になったアパートで食べ物を漁っている。しかし通りから奇妙な音がして恐怖を募らせる。世界は日増しに凶暴になり、いまだに充分な食料をもっている唯一のものがサハリだった。異なる社会階級の隣人関係の二極化が露呈する。ディストピアの寓話。
(マリアナ・ロンドン監督と共同脚本家兼製作者のマリテ・ウガス)
10)「Ramón y Ramón」ペルー=スペイン=ウルグアイ
2024年、スペイン語、ドラマ、100分、脚本サルバドール・デル・ソラル、製作者ニコラス・バルデス、マルセラ・アバロス、アルモドバル兄弟のエル・デセオが参画しています。
監督:サルバドール・デル・ソラル(ペルーのリマ1970)は、監督、脚本家、俳優。TVシリーズ出演で俳優としてスタートを切る。フランシスコ・ロンバルディの『パンタレオン大尉と女たち』で主役を演じた。マリアナ・ロンドンの「A la medianoche y media」でも主演、『ナルコス』(15)などのTVシリーズ出演が多い。長編デビュー作「Magallanes」がオリソンテス・ラティノス部門にノミネートされている。新作が2作めである。
*「Magallanes」の紹介記事は、コチラ⇒2015年08月04日
映画祭・受賞歴:SSIFF2024オリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:エマヌエル・ソリアノ、アルバロ・セルバンテス、ダリオ・ヤスベク・ベルナル
ストーリー:疎遠だった父親の遺灰を受け取ったラモンは、新型コロナウイリス感染のパンデミックの最中にマテオに出合う。彼らはその違いにもかかわらず深い繋がりが生まれ、自分自身を見つめなおすことになる。マテオは、ワンカヨに遺灰を撒きに行くというラモンの旅に同行しようと決心する。その道中、ラモンは間違った数々の疑問に答えを求めていたことや、前に進むには内面から治さなければと気づくのでした。
11)「La piel en primavera / Skin in Spring」コロンビア=チリ
Proyecta 2018 WIP Latam 2022
2024年、スペイン語、ドラマ、100分、脚本イェニファー・ウリベ・アルサテ、音楽アレコス・ヴスコビッチ、撮影ルシアナ・リソ、編集フアン・カニョラ・ぺレス、録音ロミナ・カノ、製作者アレクサンダー・アルベラエス・オソリオ、レベッカ・グティエレス・カンポス他。長編デビュー作。WIP Latam 2022のタイトルは「Sandra」、公開コロンビア6月27日
監督:イェニファー・ウリベ・アルサテ(コロンビアのメデジン1988)は、監督、脚本家。フィクション映画の修士号取得、短編「Like the First Time」(17)を撮っている。
映画祭・受賞歴:ベルリンFF2024「フォーラム」部門出品、韓国ソール女性FF出品、カルタヘナFF2024出品、SSIFF2024オリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:アルバ・リリアナ・アグデロ・ポサダ(サンドラ)、ルイス・エドゥアルド・アランゴ(ハビエル)、フリアン・ロペス・ガジェゴ(息子フリアン)、ラウラ・サパタ・アセベド(アンドレア)、クリスティアン・ロペス
ストーリー:メデジンで暮らすシングルマザーのサンドラは、ショッピングモールの新人警備員として働きはじめる。初出勤の日、束の間の付合い相手ハビエルが運転するバス路線243番に乗って職場に向かう。仕事を真剣に受け止めていますが、息子フリアンも15歳になり、何か新しいことを始めるときです。彼女自身の体験を通して内に秘めた人生に立ち向かい、解放の道を模索し始める。サンドラの内面の変化の簡潔な肖像画作成に成功していると高評価。
(アルバ・リリアナ・アグデロとイェニファー・ウリベ監督、ベルリンFF2024)
(左から、フェルナンダ・バラデス、マリアナ・ロンドン、
サルバドール・デル・ソラル、イェニファー・ウリベ・アルサテ)
オリソンテス・ラティノス部門第4弾*サンセバスチャン映画祭2024 ⑮ ― 2024年08月29日 15:11
アルゼンチン在住のドイツ人監督ネレ・ヴォーラッツの第2作
★オリソンテス・ラティノス部門の最終回は、変わり種としてアルゼンチン在住のドイツ人監督ネレ・ヴォーラッツが中国人の移民を主役にしてブラジルを舞台にした「Dormir de olhos abertos / Sleep With Your Eyes Open」、イエア・サイドの「Los domingos mueren más personas / Most People Die on Sundays」、ソフィア・パロマ・ゴメス&カミロ・ベセラ共同監督の「Quizás es cierto lo que dicen de nosotras / Maybe It’s True What They Say About Us」の3作、いずれも長いタイトルです。
*オリソンテス・ラティノス部門 ④*
12)「Dormir de olhos abertos / Sleep With Your Eyes Open」
ブラジル=アルゼンチン=台湾=ドイツ
イクスミラ・ベリアク 2018 作品
2024年、ポルトガル語・北京語・スペイン語・英語、コメディドラマ、97分、撮影地ブラジルのレシフェ。脚本ピオ・ロンゴ、ネレ・ヴォーラッツ、撮影ロマン・カッセローラー、編集アナ・ゴドイ、ヤン・シャン・ツァイ、公開ドイツ6月13日
監督:ネレ・ヴォーラッツ(ハノーバー1982)は、監督、脚本家、製作者。アルゼンチン在住のドイツ人監督。長編デビュー作「El futuro perfecto」がロカルノ映画祭2016で銀豹を受賞している。アルゼンチンに到着したばかりの中国人少女のシャオビンが新しい言語であるスペイン語のレッスンを受ける課程でアイデンティティを創造する可能性を描いている。第2作は前作の物語にリンクしており、主人公が故郷の感覚を失った人の目を通して、孤立と仲間意識の物語を構築している。3作目となる次回作はドイツを舞台にして脚本執筆に取りかかっているが、監督自身もドイツを10年前に離れており、母国との繋がりを失い始めているため距離の取り方に苦労していると語っている。新作に製作者の一人として『アクエリアス』のクレベール・メンドンサ・フィーリョが参加、偶然ウィーンで出合ったそうで、撮影地が『アクエリアス』と同じレシフェになった。
映画祭・受賞歴:ベルリンFF2024「エンカウンターズ部門」のFIPRESCI賞受賞、韓国ソウルFF、カルロヴィ・ヴァリFF、(ポーランド)ニューホライズンズFF、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:リャオ・カイ・ロー(カイ)、チェン・シャオ・シン(シャオシン)、ワン・シンホン(アン・フー)、ナウエル・ペレス・ビスカヤール(レオ)、ルー・ヤン・ゾン(ヤン・ゾン)ほか多数
ストーリー:ブラジルの或るビーチリゾート、カイは傷心を抱いて台湾から休暇をとって港町に到着する。故障したエアコンをアン・フーの傘屋に送ることにする。友達になれたはずなのに雨季がやってこないので店はしまっている。アン・フーを探しているうちに、カイは高級タワーマンションでシャオシンと中国人労働者のグループの存在を知る。カイは、シャオシンの話に不思議な繋がりがあるのに気づきます。ヒロインは監督の外国人の視点を映し出す人物であり、帰属意識を失う可能性のある人の物語。
13)「Los domingos mueren más personas / Most People Die on Sundays」
アルゼンチン=イタリア=スペイン
WIP Latam 2023 作品
2024年、スペイン語、コメディドラマ、73分、デビュー作、WIP Latam 産業賞&EGEDA プラチナ賞受賞、公開スペイン2024年10月4日、アルゼンチン10月31日
監督:Iair Said イエア(イアイル)・サイド(ブエノスアイレス1988)は、監督、脚本家、キャスティングディレクター、俳優。2011年俳優としてスタートを切り、出演多数。監督としては短編コメディ「Presente imperfecto」(17分)がカンヌFF2015短編映画部門ノミネート、ドキュメンタリー「Flora’s life is no picnic」がアルゼンチン・スール賞2019ドキュメンタリー賞受賞。長編デビュー作は監督、脚本、俳優としてユダヤ人中流家庭の遊び好きで無責任なゲイのダビを主演する。
映画祭・受賞歴:カンヌFF 2024 ACIDクィアパーム部門でプレミア、グアナフアトFF国際長編映画賞ノミネート、SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:イエア・サイド(ダビ)、リタ・コルテス(母親)、アントニア・セヘルス(従姉妹)、フリアナ・ガッタス(姉妹)
ストーリー:ダビは叔父の葬儀のためヨーロッパからブエノスアイレスに帰郷する。母親が、長い昏睡状態にある父親ベルナルドの人工呼吸器のプラグを抜く決心をしたことを知る。ダビは、夫の差し迫った死の痛みに錯乱状態の母親との窮屈な同居と、自身の存在の苦悩を和らげるための激しい欲望とのあいだでもがいている。数日後、彼は過去と現在を揺れ動きながら、また最低限の注意を向けてセクシュアルな関係を保ちながら、車の運転を習い始める。さて、ダビは父親の死を直視せざるをえなくなりますが、呼吸器を外すことは適切ですか、みんなで刑務所に行くことになってもいいのですか。家族、病気、死についてのユダヤ式コメディドラマ。
14)「Quizás es cierto lo que dicen de nosotras / Maybe It’s True What They Say About Us」
チリ=アルゼンチン=スペイン
WIP Latam 2023 作品
2024年、スペイン語、スリラー・ドラマ、95分、脚本カミロ・ベセラ、ソフィア・パロマ・ゴメス、撮影マヌエル・レベリャ、音楽パブロ・モンドラゴン、編集バレリア・ラシオピ、美術ニコラス・オジャルセ、録音フアン・カルロス・マルドナド、製作者&製作カルロス・ヌニェス、ガブリエラ・サンドバル(Story Mediaチリ)、Murillo Cine / Morocha Films(アルゼンチン)、b-mount(スペイン)、公開チリ2024年5月30日(限定)、インターネット6月7日配信。
監督:カミロ・ベセラ(サンティアゴ1981)とソフィア・パロマ・ゴメス(サンティアゴ1985)の共同監督作品。ベセラは監督、脚本家、製作者。ゴメスは監督、脚本家、女優。前作「Trastornos del sueño」(18)も共同で監督、執筆している。意義を求めるような宗教セクト、口に出せないことの漏出、男性がいない家族、ヒメナのように夫を必要としない女性、これらすべてがこの家族を悲惨な事件に追い込んでいく。「私たちの映画は、どのように生き残るか、または恐怖にどのように耐えるかを描いており」、「この事件の怖ろしさがどこにあるのかを考えた」と両監督はコメントしている。
映画祭・受賞歴:SSIFFオリソンテス・ラティノス部門出品
キャスト:アリネ・クッペンハイム(ヒメナ)、カミラ・ミレンカ(長女タマラ)、フリア・リュベルト(次女アダリア)、マリア・パス・コリャルテ、アレサンドラ・ゲルツォーニ、ヘラルド・エベルト、マカレナ・バロス、他
*アリネ・クッペンハイムについては、マヌエラ・マルテッリのデビュー作『1976』が東京国際映画祭2022で上映され女優賞を受賞した折に、キャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。 コチラ⇒2022年11月06日
ストーリー:成功した精神科医のヒメナは、長らく或る宗派のコミュニティに入り疎遠だった長女タマラの思いがけない訪問をうける。タマラが母親と次女アダリアが暮らしている家に避難しているあいだ、タマラの生まれたばかりの赤ん坊がセクト内部の奇妙な状況で行方不明になったというので、ヒメナは赤ん坊の運命を知ろうと政治的な調査を開始する。実際に起きた「アンタレス・デ・ラ・ルス」事件*にインスパイアされたフィクション。
*アンタレス・デ・ラ・ルス「Antares de la Luz」事件とは、2013年、キリスト再臨を主張した宗教指導者ラモン・グスタボ・カステージョ(1977~2013)が、世界終末から身を守る儀式の一環としてバルパライソの小村コリグアイで、女性信者の新生児を生贄として焼いていたことが発覚した事件。当局の調査着手に身の危険を察知したカステージョは、逮捕に先手を打って逃亡先のクスコで首吊り自殺をした。チリ史上もっとも残忍な犯罪の一つとされる事件は、ネットフリックス・ドキュメンタリー『アンタレス・デ・ラ・ルス:光のカルトに宿る闇』(24)として配信されている。
(ネレ・ヴォーラッツ、イエア・サイド、ソフィア・パロマ・ゴメス、カミロ・ベセラ)
★オリソンテス・ラティノス部門は、以上の14作です。スペイン語、ポルトガル語がメイン言語で監督の出身国は問いません。ユース賞の対象になり、審査員は18歳から25歳までの学生150人で構成されています。
最近のコメント