マルタ・マトゥテのデビュー作が金のビスナガ作品賞*マラガ映画祭2026 ⑦2026年04月11日 11:41

        金のビスナガは若手監督マルタ・マトゥテのデビュー作が受賞

 

        

 

★マラガ映画祭のセクション・オフィシアルは、スペイン映画とイベロアメリカ映画の2本立て、前者の最高賞「金のビスナガ」作品賞は新人監督マルタ・マトゥテのデビュー作「Yo no moriré de amor」が受賞、後者はメキシコのホアキン・デル・パソの「El jardín que soñamos」の手に渡りました。先ず前者の作品紹介から始めます。脚本にマトゥテ監督自身が投影されているという主役を演じたフリア・マスコルトが銀のビスナガ主演女優賞、父親役のトマス・デル・エスタルが銀のビスナガ助演男優賞を受賞しています。昨年もエバ・リベルタードのデビュー作「Sorda」が受賞して女性監督の活躍を印象づけた。本作は『幸せの、忘れもの』という邦題でゴールデンウイークに劇場公開されます。相変わらず陳腐なタイトルですが、何とかなりませんかね。

 

 Yo no moriré de amor / I Wont Die for Love

製作:Elastica Films(スペイン)/ Solita Films(同)/ Saga Film(ベルギー)

   協賛:ICAA / RTVE / Movistar Plus+ / Ayuntamiento de Madrid / Filmin /

       Comunidad de Madrid 

監督・脚本:マルタ・マトゥテ

撮影:サラ・ガジェゴ・グラウ

編集:カルロス・カニャス・カレイラ

音楽:シモン・フランケ

美術:ロシオ・ペーニャ

キャスティング:マリア・ロドリゴ

衣装デザイン:エステル・ルカス・ハケティ Jaqueti

メイクアップ&ヘアー:アンネ・モラリス、サンドラ・オブリエン

製作者:マリア・サモラ(Elastica Films)、ホセ・エステバン・アレンダ、セサル・エステバン・アレンダ(Solita Films)、(エグゼクティブ)セシリア・リバス、フラビア・ビウルン(Saga Film

 

データ:製作国スペイン=ベルギー、2026年、スペイン語、ドラマ、94分、撮影地:マドリード自治州バルデモロ(監督の故郷)、公開スペイン202658

映画祭・受賞歴;第29回マラガ映画祭セクション・オフィシアル作品、金のビスナガ作品賞、銀のビスナガ助演女優賞(フリア・マスコルト)、助演男優賞(トマス・デル・エスタル)受賞、フェロス賞プエルタ・オスクラ2026受賞(AICEスペイン映画ジャーナリスト協会メンバーが選ぶ賞)

 

キャスト:フリア・マスコルト(クラウディア)、ソニア・アルマルチャ(母親)、トマス・デル・エスタル(父親)、ラウラ・ワイスマー、ギジェルモ・ベネト、フラン・カントス(ペペ)、レティシア・エタラ、マルク・ドミンゴ(アルベルト)、ダニエル・ゲーロ、ホルヘ・バサンタ、ロレア・インチャウスティ(レイレ)、他

 

ストーリー18歳になるクラウディアの物語、母親のアルツハイマー病が静かな嵐のように押し寄せ、長らく断絶していた家族の役割を定義し直す必要に迫られている。クラウディアは早めに始まった介護で彼女の青春は息ができない。介護する義務と同世代の他の女性のように青春を謳歌したい願望のはざまで引き裂かれている。この目の前の現実を生きる方法を探し始めるが、それは家族全員の絆を変えることになるだろう。愛、独立、道義心、義務と願望の葛藤についての物語。

 

      

    (左から、トマス・デル・エスタル、フリア・マスコルト、マトゥテ監督、

 ソニア・アルマルチャ、ラウラ・ワイスマー、マラガFF311日、フォトコール)

 

監督紹介マルタ・マトゥテ Marta Matute García1988年マドリード自治州バルデモロ生れ、監督、脚本家、女優、撮影監督。2011年、マドリード・コンプルテンセ大学視聴覚コミュニケーション卒、ウィリアム・レイトン劇場ラボラトリーで演劇芸術の学位を取得する。女優として短編映画に出演。ゴン・ラモスやエバ・ミルなどの演出で舞台にも立っている他、パウラ・アモールやハビエル・ヒネルの演出助手も手掛けており、独立系の映画のフィルム編集者でもある。

*フィルモグラフィー

2016Zong」短編、監督ボルハ・エチェベリア、女優出演

2017Grasse Matinée」短編、監督イバン・アルティレス、女優出演

2023Una amiga」短編、監督、脚本

2024Xiao Wei」短編、監督Jiajie Yu Yan、脚本共同執筆・女優出演

2026Yo no moriré de amor」長編デビュー作、監督、脚本

 

  

   

 (短編Una amiga」のポスター) 

 

★金のビスナガ作品賞の「Yo no moriré de amor」は、2020年スペイン映画アカデミーのレジデンシアに選ばれる。2021年に第18回「フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE」を受賞、Ventana CineMadVentana Sur、などのワークショップに参加して制作した。アルツハイマー型認知症になった母親を10年間にわたって介護した家族や監督自身が投影されている。同世代のカルラ・シモンやベレン・フネス、ピラール・パロメロの作品からも着想を得ていると語っている。本格的な評価はこれからですが、将来が有望視されている。

フリオ・アレハンドラ(ウエスカ1906~デニア1995)は、スペイン、メキシコ、アルゼンチン映画の脚本家、ルイス・ブニュエルの『ビリディアナ』(61)や『哀しみのトリスターナ』(70)の脚本を監督と共同執筆している。SGAE Sociedad Genaral de Autores y Editoresは、1995年設立された著作権管理団体でスペイン著者出版社協会。

 

    

       (フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞のトロフィを掲げる監督)

 

キャスト紹介フリア・マスコルトJulia Mascort、バルセロナ出身の映画・舞台女優、歌手、楽器はギターとチェロ。ラウラ・オブラドールズの短編単独デビュー作「Las chicas/The Girls」(2416分、スペイン語)、クリスティアン・アビレスの「La herida luminosa」(2223分、スペイン語)出演の他、カタルーニャTVシリーズ「Com si fos ahir/With That Same Look」(20228話出演)、「Un nuevo amanecer」(20242話出演)、長編出演は今回が初、主役も女優賞も初のようです。カタルーニャ語、スペイン語のバイリンガル、英語もできる。マラガではスペイン語でインタビューを受けていた。

   

     

          (銀のビスナガ主演女優賞受賞、マラガFFガラ)

 

トマス・デル・エスタル Tomás del Estal1967年サラマンカ生れ、俳優。TVシリーズ出演でスタート、脇役専門とはいえ本数が3桁は多すぎる。コメディからホラー、社会派シリアスドラマと芸域は広いから、スペイン映画ファンなら必ず見覚えがあるでしょう。受賞歴は、今回の銀のビスナガ助演男優賞受賞が初、検索している管理人も驚いている。最近では、こんな映画に出演しています、2024『叫び』、2021『ウェイ・ダウン』、2018『誰もがそれを知っている』、2016『スモーク・アンド・ミラーズ』、同『ジュリエッタ』、2015『ヤシの木に降る雪』、2014『トガリネズミの巣穴』、2010BIUTIFUL ビューティフル』、同『ペーパーバード 幸せは翼にのって』など、当ブログでも作品紹介をしています。TVシリーズではシーズン2が始まった『ガリシアン・ギャング』、『鉄の手』などがNetflixで配信されている。

   

  

        (銀のビスナガ助演男優賞受賞、マラガFFガラ)

 

★アルツハイマー認知症の母親を演じたソニア・アルマルチャ(アリカンテ州ピノソ1972)は、バレンシアの演劇芸術学校とウィリアム・レイトンで演技を学んだ。マラガ関連では、マラガFF2025の短編部門でポロ・メナルゲスの「Una vocal」で銀のビスナガ主演女優賞を受賞した。2020年ハビエル・マルコの「A la cara」で同じ短編部門の同賞を受賞している。この短編は2025年に同タイトルで長編化され、ロラ・ガオス賞の主演女優賞にノミネートされた。

  

       

             (母親とクラウディア、フレームから)

 

★ハイメ・ロサーレスがゴヤ賞2008作品賞と監督賞を受賞した『ソリチュード:孤独のかけら』に主役に抜擢され、物静かだが我が道を着々と準備する芯の強い女性を演じて、スペイン俳優組合新人女優賞を受賞しています。他2017年にエステバン・クレスポの『禁じられた二人』、パコ・プラサのホラー『エクリプス』、ロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」、フェルナンド・レオン・デ・アラノアのブラックコメディ「El buen patrón/The Good Boss」では、ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、俳優組合女優賞などを受賞、ジョン・ガラーニョ&アイトル・アレギの「Marco」、クラウディア・ピントの「Las consecuencias」(21)、最近は主に映画出演にシフトしている。

『ソリチュード:孤独のかけら』の作品紹介は、コチラ20131108

Las consecuencias」の作品紹介は、コチラ20210701

El buen patrón」の作品紹介は、コチラ20210810

 

ラウラ・ワイスマー(ヴァイスマール)Laura Weissmahr1992年タリファ生れ、女優、製作者。バルセロナのエオリア高等演劇芸術学校で演技を学んだ後、イギリスのウエストミンスター大学で映画テレビ制作の学位を取得する。ドキュメンタリーを撮っている。エレナ・マルティン・ヒメノ監督の「Júlia Ist」(17)やダビ・ビクトリの「No matarás」(20)に出演、2024年にマル・コルのサスペンス「Salve María」主演して、ゴヤ賞2025新人女優賞ほか、ガウディ賞、フェロス賞、バジャドリード映画祭、サンジェルマン賞などを受賞して脚光を浴びた。これからの活躍を予感させる。

   

     

             (ゴヤ賞2025新人女優賞受賞のガラ)

  

★今秋の東京国際映画祭2026での上映を期待したいところです。


ジェマ・ブラスコの「La furia」*ゴヤ賞2026 ⑦2026年02月25日 14:54

        深い闇を描くジェマ・ブラスコのデビュー作「La furia

 

     

 

★第40回ゴヤ賞2026新人監督賞ジェマ・ブラスコ)と主演女優賞アンヘラ・セルバンテス)の2カテゴリーにノミネートされている「La furia」は、スペインでは第28回マラガ映画祭2025でプレミアされました。長編劇映画デビュー作、タイトルが「激怒」と穏やかでない。年越しのパーティでレイプされた若い舞台女優の恥辱と復讐に燃える心の闇が物語られるが、レイプ復讐映画ではなさそうです。マラガでは主役アレックスを演じたアンヘラ・セルバンテスの圧倒的なパフォーマンスが脚光を浴びました。

   

          

         (インタビューを受ける監督、マラガ映画祭2025にて

   

     

   (アレックス・モネル、監督、アンヘラ・セルバンテス、マラガFFフォトコール)

 

 「La furia / The Fury

製作:Ringo Media / Aragon TV / Filmin / ICEC / ICAA / RTVE

監督:ジェマ・ブラスコ

脚本:ジェマ・ブラスコ、エバ・パウマ

音楽:ジョナ・ハマン

撮影:ネウス・オレ

編集:ディダック・パロウ、トマス・ロペス

キャスティング:イレネ・ロケ

プロダクションデザイン&美術:アンナ・アウケル

衣装デザイン:エステル・パラウダリエス

メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、アレ・サルバット

製作者:ミレイア・グラエル・ビバンコス

 

データ:製作国スペイン、2025年、カタルーニャ語・スペイン語、ドラマ、107分、撮影地バルセロナ、アラゴン州テルエル(トレベリーリャ村)、配給元フィルマックス(スペイン)、公開スペイン2025328

映画祭・受賞歴SXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭2025ワールドプレミア、マラガ映画祭2025セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演女優賞(アンヘラ・セルバンテス)、助演男優賞(アレックス・モネル)、編集賞(ディダック・パロウ、トマス・ロペス)、マイアミ映画祭初監督賞ノミネート、DA映画祭(バルセロナ)オープニング作品、インド映画祭、第31回フォルケ賞2025女優賞ノミネート。以下2026年、シネマ・ライターズ・サークル賞新人監督賞ノミネート、スペイン俳優組合賞(アンヘラ・セルバンテス)、フェロス賞主演女優賞ノミネート、ガウディ賞新人監督賞主演女優賞受賞、助演女優賞(カルラ・リナレス)・助演男優賞・オリジナル脚本賞ノミネート、ディアス・デ・シネ賞作品賞・女優賞(アンヘラ・セルバンテス)受賞、ヒホン映画祭、他

 

キャスト:アンヘラ・セルバンテス(アレックス/アレクサンドラ)、アレックス・モネル(兄アドリアン)、エリ・イランソ(母エレナ)、カルラ・リナレス(フリア)、サリム・ダプリンセ(サミル)、アナ・トレント(舞台演出家)、ジュディット・コルティナ(フリア)、パウ・エスコバル(ダビ)、ビクトリア・リベロ、他多数

 

ストーリー:舞台女優のアレックスは、年越しのパーティでレイプされる。彼女は兄アドリアンに救いを求めますが、彼は妹を守れなかった怒りで苦しみます。1年間のあいだアレックスは兄や友人と距離をおき嫌悪感と恥辱のなかで孤立して生きていく。アドリアンは怒りに沈潜し、アレックスが必要としているものから遠く離れて、次第に闇のなかに堕ちていく。一方アレックスにとって痛みと激怒を追い払うための唯一の方法は、舞台で演じる復讐心に燃えるメディアの人格に自分を託して体現することだった。『メディア』はエウリピデスによって書かれた神話に基づくギリシャ悲劇だが、ここでは性的暴力が引き起こした兄妹の現代悲劇が語られる。

   

       

 

            (アレックスと兄アドリアン、フレームから)

  

    

        「語りたくてたまらないテーマ」とブラスコ監督

 

監督紹介ジェマ(ジェンマ)・ブラスコ Gemma Blasco1993年バルセロナ生れ、監督、脚本家。2014年バルセロナ映画学校Bande à Partを卒業。短編映画、広告、舞台の映像化を手掛けている。8ミリ、16ミリ、デジタル、ミニDVなど異なったフォーマットの経験を重ね「バルセロナでアッバス・キアロスタミと一緒に撮る」というワークショップにも参加している。2013年、キャストが盲人の女性と聾啞者の男性という設定の短編「Matices」を撮る。続いて2015年の「Formas de jugar」がカタルーニャ映画祭「新しい展望」部門短編賞を受賞する。2017年、「Jauría」製作の資金援助をICAAより受け、マラガ映画祭2018短編部門のセクション・オフィシアルにノミネートされる。その後、シッチェス、マドリード、アルシネ、ヒホン、アルメリア、アミアン、ボゴショートなど国内外の国際映画祭巡りをし、翌年のゴヤ賞短編映画賞のプレセレクションやガウディ賞にノミネートされている。

        

           

★長編「El zoo」がヒホン映画祭2018で上映される。若い俳優のグループが舞台でリアリティショーを演じている。現実と架空の境界では一人しか留まることができない、登場人物たちは互いに食べつくしていくという実験映画のようです。

 

★フィクションとしてはデビュー作になる長編2作めが2018年から着手していた本作「La furia」で、自身の体験がミックスされている。監督によると、この映画は未だ映画を学びはじめる前の「18歳のとき自分の身に起きた街路での性的暴力の体験から生まれました。私が創作した復讐の映画です。居場所を奪われた犠牲者がどんな痛みを抱え、何が必要で、何を望んでいるかについて、もう語りたくてたまらない」とインタビューに応えている。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画テレビ学校で「登場人物の構成」というセミナーに参加してテーマの細分化をした。その後、マジョルカ・タレント・ラボ(Filmin)、トリノ・フィルム・ラボ、2021年カンヌのシネフォンダシオン最終候補者になった。さらにスペイン女性映画製作者協会CIMAの新企画に選ばれるなどした。撮影地の一つアラゴン州テルエルのトレベリーリャは、父方の家族が住んでいる由。厳しい誠実さで難しいテーマに取りくみ、観客にとっては座り心地は決して良くないが、現実の本質的なことを突きつけている。今回のゴヤ賞ノミネートは〈新人監督賞〉枠ですが、キャリア的には新人とは言えません。

  

         

         (撮影中のブラスコ監督、セルバンテス、モネール)

 

*フィルモグラフィー

2013Matices3分、監督、脚本、スペイン語・英語、トレス・コートFFモンディアレ賞受賞

2015Formas de jugar」短編、監督、脚本、スペイン語

2017La mujer del escaparate」短編、ファンタジア、スペイン語、監督、脚本

2018Jauría」短編19分、スペイン語、監督、脚本(マルタ・フォント共同執筆)

   マラガFF短編部門上映、

2018El zoo」長編デビュー作、実験映画、96分、スペイン語、監督

   ヒホン映画祭、ラスパルマス映画祭、DA映画祭上映

2025La furia」長編劇映画(割愛)

 

キャスト紹介

アンヘラ・セルバンテス Angela Cervantes Sorribas1993年バルセロナ生れ、女優、アルバロ・セルバンテスは実兄、「Sorda」でゴヤ賞助演男優賞にノミネートされており、兄妹受賞が期待されている。カタルーニャTVシリーズ出演でスタート、長編デビューは、カロル・ロドリゲス・コラスのコメディドラマ「Chavalas / Girlfreinds」(21)でバルのオーナーに扮し、ゴヤ賞2022新人賞にノミネート、ガウディ賞を受賞した。ピラール・パロメロの「La maternal / Motherhood」(22)で、14歳で出産することになった娘の若い母親役を演じ、ゴヤ賞・フェロス賞助演女優賞ノミネート、ガウディ賞受賞。ジョルディ・ヌニェスの「Valenciana」(24)出演など。

 

  

    (揃ってゴヤ賞にノミネートされているセルバンテス兄妹、2026223日)

    

本作「La furia」について、ジェマ監督とは演劇学校時代に出会い、当時から映画化を語り合ってきたから、「最初から、脚本の最初のバージョンから、既に読んでいた」とRTVEのインタビューで語っている。マラガ映画祭2025銀のビスナガ女優賞受賞、フォルケ賞ノミネート、ガウディ賞2026主演女優賞受賞、フェロス賞ノミネート、ゴヤ賞と俳優組合賞は結果待ち。同じ年のマラガ映画祭で上映されたガラ・グラシアの「Lo que queda de ti」(25、西=伊=葡)にも主演、最新作は、間もなく始まるマラガ映画祭2026で上映されるダビ・セラーノのラップランドを舞台にしたコメディ「Lapönia」に主演している、ブレイクスルー(ブレイクアウトロー)の演技者として今後が期待できる女優の一人。

      

      

          

                     (La furia」のフレームから

    

       

          (ガウディ賞のトロフィーを手にしたアンヘラ、2026年2月8日授賞式)

                

アレックス・モネール Alex Mpnner19951月バルセロナ生れ、既に短編、TVシリーズを含めると50作以上に出演している。TVシリーズ「Polseres vermelles」(20111328話、カタルーニャTV)でフォトグラマス・デ・プラタ主演男優賞を受賞する。2012年、パコ・プラサの『RECレック3ジェネシス』で長編映画デビュー、同年パトリシア・フェレイラの「Els nens salvatges / Los niños salvajes」で注目され、マラガ映画祭2012助演男優賞・ガウディ賞2013主演男優賞・トゥリア賞2013新人賞受賞など受賞、ゴヤ賞新人男優賞にもノミネートされた。

 

    

当ブログ紹介作品には、2014年のベレン・マティアスの「Marsella」、2016年、イサ・カンポ&イサキ・ラクエスタの「La propera pell / La proxima piel」でフォルケ賞とフェロス賞2017の主演男優賞にノミネート、『記憶の行方』の邦題でネットフリックスが配信した。2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」、マラガ映画祭2021でセクン・デ・ラ・ロサが監督デビューした「El Cover」、マルセル・バレナの実話に基づいた「Mediterraneo」(21、『地中海のライフガードたち』)は、難民映画祭2022オンラインで配信されている。ペドロ・マルティン=カレロの心理ホラー「El llanto」(24『叫び』)など、多くの問題作に出演している。

  

  

      (RTVEのインタビューを受けるアレックスとアンヘラ、202441

  

作品紹介はしていないが、ルイス・キレスの密室サスペンス「Bajocero」(21、邦題『薄氷』)、日本で人気の高いダニエル・カルパルソルのアクション映画「Centauro」(22、『ケンタウロス』)などがNetflixで配信されている。2022年から始まっているTVシリーズ「La ruta」(14話)で主役を演じている。1996年バレアレス諸島のイビサ島が舞台、フランコ時代を生きた父親世代との断絶のなかで、居場所探しをする若者5人の軌跡を描いている。


マヌエル・ゴメス・ペレイラのコメディ「La cena」*ゴヤ賞2026 ⑤2026年02月09日 18:41

        ゴヤ賞作品賞を含む8カテゴリーにノミネートされたLa cena

   

  

 

★フォルケ賞(アルベルト・サン・フアン男優賞ノミネート)に続いて、フェロス賞(コメディ部門の作品賞受賞)でも気を吐いたマヌエル・ゴメス・ペレイラLa cena / The Dinner」は、スペイン内戦終結後をバックにフランコ派、反フランコ派入り乱れ、フランコ将軍やヒトラー総統も登場するブラックコメディ。本作はホセ・ルイス・アロンソ・デ・サントスの戯曲 La cena de los generales2008年刊)が原作。キャスト陣はアルベルト・サン・フアン、マリオ・カサス、アシエル・エチェアンディア、エルビラ・ミンゲス、アントニオ・レシネスなど芸達者なベテラン勢がクレジットされている。ゴヤ賞ノミネートは作品賞、脚色賞を含む8カテゴリー、以下太字がゴヤ賞にノミネートされている。

 

★評価はおしなべて高く、映画データベースは10点満点の7点、エル・パイスのハビエル・オカーニャは「記憶の必要性、尊厳の価値、自由の理想の高貴さ、悲劇中の悲劇、ユーモアを巧みに結びつけている」とポジティブに評価しています。敵対する登場人物の常套句に注意をはらって、異なった視点で現代史を語るインテレクチュアルなブラック・コメディ。

  

       

       (二人の主役、マリオ・カサスとアルベルト・サン・フアン)

  

 

 「La cena / The Dinner2025

製作: La Terraza / Turanga Films / Entre Medina y Genaro / Halley Production / Sideral Cinema / ICO / ICAA / Movistar Plus+ / Crea SGR / RTVE

監督:マヌエル・ゴメス・ペレイラの

脚本:ホアキン・オリストレルヨランダ・ガルシア・セラノ

     マヌエル・ゴメス・ペレイラ

原作:ホセ・ルイス・アロンソ・デ・サントスの戯曲 La cena de los generales

撮影:アイトル・マンチョラ

音楽:アンヌ・ソフィー・Versnaeyen   

   (オリジナル歌曲賞ビクトル・マヌエルY mientras tanto)

編集:ヴァネッサ・マリムベルトMarimbert

美術:コルド・バジェス

プロダクションデザイン:マリア・ヘスス・タラソナ

衣装デザイン:エレナ・サンチス

メイク&ヘアー:アンパロ・サンチェス、アネ・マルティネス、他

製作者:クリストバル・ガルシアリナ・バデネスロベルト・ブトラゲーニョ

  (エグゼクティブ)アナ・カマチョ、ラウラ・カストロ・オテロ、他

  

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、スペイン語、ブラック・コメディ、106分、撮影地マドリードのホテル・プラサ、エル・エスコリアのホテル・ミランダ & スイス、バレンシア市、カナリア諸島ラス・パルマス、配給元ア・コントラコリエンテ・フィルムズ(スペイン)、フィルム・ファクトリー・エンターテインメント(ワールド)、公開スペイン、アンドラ公国1017日、イタリア20260409日、興行収入2025年末370万ユーロ、ワールド447万ユーロ

 

映画祭・映画賞:第73回サンセバスチャン映画祭2025 RTVE 部門上映(924日)、第40回バレンシア映画祭オープニング作品、第31回フォルケ賞2025主演男優賞ノミネート(アルベルト・サン・フアン)、第8回ロラ・ガオス賞助演女優賞(グロリア・マルチ)、プロダクションデザイン賞(マリア・ヘスス・タラソナ)受賞、第13回フェロス賞2026コメディ賞受賞、以下主演男優・助演女優・助演男優・予告編賞ノミネート、シネマ・ライターズ・サークル賞脚本・主演男優・助演女優賞にノミネート(結果発表223日)、ゴヤ賞は上記の通り。

    

  

       (マドリード公開のイベントに参加したクルー、2025年10月13日)

 

ストーリー:スペイン内戦終結からわずか2週間後の1939415日、負傷者の臨時病院として営業していたマドリードの高級ホテルであるパレスホテルに或るミッションを受けたメディナ中尉が到着する。フランコ将軍が武力勝利を祝う夕食会の開催を要請したからです。さっそく中尉はウェイター頭のヘナロに宴会の準備を命じます。当時マドリードにはフランコ派の料理人がいないという噂から、ヘナロは処刑寸前の反フランコ派の料理人たちの解放を求めます。将軍以下招待客は知りません、何を知らないかというと、夕食会の料理が国外逃亡の最後のチャンスを窺う反フランコ派の料理人によって準備されていることです。内戦の疵を抱えた人々が入り乱れての騙し合いが始まります。

   

     

           (おしっこ入りスープにご満悦なフランコ将軍)

  

キャスト

マリオ・カサス(サンティアゴ・メディナ中尉)

アルベルト・サン・フアン(ヘッド・ウェイターのヘナロ・パラソン)主演男優賞ノミネート

ノラ・エルナンデス(看護師マリア)新人女優賞ノミネート

アシエル・エチェアンディア(ファランヘ党のホセ・ルイス・アロンソ、サイコパス)

オスカル・ラサルテ(ソムリエのアンヘル、マリアのパートナー)

マルティン・パエス(ガリシアの将校チャペロ)

エルビラ・ミンゲス(労働組合リーダーの料理人フアナ、アンヘルの母)助演女優賞ノミネート

カルロス・セラノ(ファッシストのウェイター、エル・ルビオ)

カルメン・バラゲ(アルコール依存症のフローラ)

アントニオ・レシネス(反フランコの料理人アントン)

エバ・ウガルテ(メディナ中尉の妻ルチ)

ハビ・フランセス(フランシスコ・フランコ将軍)

グロリア・マルチ(フランコ将軍の妻カルメン・ポロ)

トニ・アグスティ(料理人エピ・ファニオ)

フェラン・ガデア(ブラス)、エレアサル・オルティス(ナンド)、ラファエル・バルス(アロンソの部下)、ダビ・ディアス(ヒットラー総統)他多数

   

    

 (アルベルト・サン・フアン、マリア役のノラ・エルナンデス、マリオ・カサス)

   

 

   (スペイン脱出を目論むソムリエ役のオスカル・ラサルテと料理人たち)

   

  

   (マリア、料理人フアナ役のエルビラ・ミンゲス、オスカル・ラサルテ)

   

 

     (ファランヘ党員アロンソ役のアシエル・エチェアンディア右)

 

監督紹介:マヌエル・ゴメス・ペレイラ、195812月マドリード生れ、監督、脚本家、製作者。代表作として1995年の「Boca a boca」(監督・脚本)、ゴヤ賞1996作品・監督・脚本賞ノミネート、ハビエル・バルデムが主演男優賞受賞の他、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、オンダス賞などを受賞して知名度を挙げた作品。共演者にアイタナ・サンチェス=ヒホン、マリア・ブランコなど。邦題『電話でアモーレ』で公開された。

  

★スター・キャスト出演のロマンティック・コメディ「El amor perjudica seriamente la salud / Love Can Seriously Damege Your Health」(『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』)は、60年代にスペインを訪問したジョン・レノンのイベントに偶然出会った二人の若者(ペネロペ・クルスとガビノ・ディエゴ)が恋に落ち、別れ、また出会う風変わりな30年間を描いている。歌手で女優のアナ・ベレン、フアンホ・プイグコルベ、当時の豪華キャストが出演、コメディで2時間は長すぎるが型破りのロマンティック・コメディだった。

 

1999年、「Entre las piernas」がベルリン映画祭に正式出品、プチョン・ファンタスティック映画祭でシチズン・チョイス賞を受賞、カルメロ・ゴメスがトゥリア主演男優賞を受賞、翌年『スカートの奥で』の邦題で2000年ビデオが発売された。出演者はゴメスのほか、ビクトリア・アブリル、ハビエル・バルデム、フアン・ディエゴ、新作主役のアルベルト・サン・フアンも共演している。

 

2005年の「Reinas / Queens」は、ゲイ・カップルの共同結婚式を題材にした娯楽作。息子たちの母親役に、アルモドバル学校のミューズを含むベテラン5人、マリサ・パレデス、カルメン・マウラ、ベロニカ・フォルケ、メルセデス・サンピエトロ、ベティアナ・ブルムを起用、そのゲイの息子たちに当時の売れっ子を集合させ、クレジット欄には度肝を抜く。直近10年はTVシリーズにシフトしており、Netflixなどで配信されているものもある。

   

  

            (新作撮影中のゴメス・ペレイラ)

   

主なフィルモグラフィー

1994Todos los hombres sois iguales / All Men Are the Same(コメディ、監督・脚本)

  ゴヤ賞1995オリジナル脚本賞受賞、ペニスコラ・コメディFF1994作品・監督賞受賞

1995Boca a boca」『電話でアモーレ』(コメディ、199711月公開)

1996El amor perjudica seriamente la salud」『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』

  (コメディ、監督・脚本・製作)

1999Entre las piernas」『スカートの奥で』(ミステリー・ロマンス、監督・脚本・製作)

2005Reinas / Queens」『クイーンズ』(コメディ、監督・脚本)

2008El juego del ahorcado」『ザ・レイプ 秘密』(ドラマ、監督・脚本、DVD

   ゴヤ賞2009新人男優賞(アルバロ・セルバンテス)ノミネート

2014La ignorancia de la sangre」(スリラー、監督)

   スペイン俳優組合助演男優賞(アルベルト・サン・フアン)ノミネート

2017Tiempos de guerra」(ドラマ、TVシリーズ13話中6話、監督)

201920Alta mar / High Seas『アルタ・マール:公海の殺人』

(犯罪ドラマ、TVシリーズ12話中4話、監督)、2019年、Netflixで配信

 

★キャスト紹介:メディナ中尉を演じたマリオ・カサス(ア・コルーニャ1986)とヘナロ・パラソン役のアルベルト・サン・フアン(マドリード1968)のキャリア&フィルモグラフィーは既に紹介しています。2人とも主演男優賞のゴヤ胸像を手にしています。

  

マリオ・カサス紹介は、コチラ20210223

アルベルト・サン・フアン紹介は、コチラ2025010820210201


『そして彼女は闇を歩く』Netflix 鑑賞記*SSIFF2025 ㉓2025年11月23日 11:44

        アグスティン・ディアス・ヤネスの新作「Un fantasma en la batalla

  

    

 

★サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティションで上映された、アグスティン・ディアス・ヤネス7年ぶりの新作「Un fantasma en la batalla / She Walks in Darkness」(『そして彼女は闇を歩く』)は政治スリラードラマ、「バスク祖国と自由」ETAの解体のために組織に潜入して無事生還できた唯一人の女性潜入捜査官エレナ・テハダ(偽名アランサス・ベラドレ・マリン)の実話に着想をえて製作されたフィクションです。2024年、アランチャ・エチェバリアが同一人物を主役に据えた「La infiltrada / Undercover」を撮っており、今年のゴヤ賞で作品賞と潜入捜査官を演じたカロリナ・ジュステが主演女優賞を受賞したばかりです。『アンダーカバー 二つの顔を持つ女』の邦題でWOWOWが放映した。両作ともフィクションですが、先行したエチェバリアのほうがエレナ・テハダの伝記に近いようです。基本データは作品紹介記事に譲り、キャスト陣とストーリー紹介だけアップします。本祭には監督、製作者、主要キャストが「ジェノサイド・ストップ」のバッチをつけて参加しました。

  

Un fantasma en la batalla」の紹介記事は、コチラ20250716

La infiltrada」の作品とエレナ・テハダの紹介記事は、コチラ20250115

     

      

     (監督と出演キャスト、サンセバスチャン映画祭、9月24日フォトコール)

 

キャスト

スサナ・アバイトゥア(偽名アマイア・ロペス・エロセギ/アマヤ・マテオス・ヒネス)

アンドレス・ヘルトルディクス(フリオ・カストロ中佐)

イライア・エリアス(ベゴーニャ・ランダブル、バスク語学校校長)

ラウル・アレバロ(アリエタ/ソリオン

アリアドナ・ヒル(ギプスコア1961、ソレダード・イパラギレ・ゲネチュア/通称アンボト

ミケル・ロサダ(ギプスコア1954、イグナシオ・グラシア・アレギ/

   筆名イニャキ・デ・レンテリア)

アナルツ・スアスア(サンセバスティアン1961、アンボトのパートナー、ミケル・アルビス・イリアルテ/ミケル・アンツァ)

ハイメ・チャバリ(チキTxiki /エル・ビエホ)

クリス・イグレシアス(治安警備隊員アデラ、アマイアの連絡係)

アンデル・ラカリェ(アンドニ

ディエゴ・パリス(エスケルティア

フェルナンド・タト(ビスカヤ1966、フランシスコ・ハビエル・ガルシア・ガステル/

  チャポテ)

ミケル・ララニャガ(ダゴキ)

アルフォンソ・ディエス(イスンツァ)

エドゥアルド・レホン(内部告発者)

イニャキ・バルボア(ヨス・ウリベチェベリア・ボリナガ)

エネコ・サンス(チェリス)

アルマグロ・サン・ミゲル(アマイアの恋人アントニオ)、フアナ・マリア(アマイアの偽の母親)、イゴル・スマラベ(ホセ・マリア・ムヒカ、フェルナンド・ムヒカの息)、ほか多数

 

ETA による誘拐&殺害された政府要人など

アルベルト・サンチェス(グレゴリオ・オルドニェス、国民党PPバスク州議会議員、

1995123日、享年36歳)

ホルヘ・ウエルゴ(ホセ・アントニオ・オルテガ・ララ、刑務官、

   1996年から532日間幽閉後救出)

フアン・モントーヤ(フェルナンド・ムヒカ、弁護士、活動家、社会労働党PSOE党員、

   199626日、享年62歳)

ホセ・マリア・エルナンデス(フランシスコ・トマス・イ・バリエンテ、法学教授、

   元憲法裁判所長官、歴史家、1996214日、享年63歳)

ウィリアム・モンラバル・クック(ミゲル・アンヘル・ブランコPP議員、

   1997710日誘拐、13日死去、享年29歳)

ベナン・ロレヒ(フェルナンド・ブエサ・ブランコ、政治家、PSOEバスク社会党PSE-EE

   2000222日、享年53歳)

 

ストーリー1990年、バスク祖国と自由(ETA)の解体に寄与した潜入捜査官アマイアの恐怖の10年間が語られる。アマイアのミッションは、ETAがフランス南西部バスクに武器弾薬などを隠し持つ重要な秘密のアジト(スロ)を突き止めることであった。フランコ没後激化した実際に起きた要人暗殺、自動車爆破事件の数々を背景に、スペインの歴史的、政治社会的文脈に根ざした捜査官たちに触発されたフィクション。90年代後半から21世紀初頭の治安部隊による「サンクチュアリ作戦」をベースにしている。

 

       生還できた唯一人の女性潜入捜査官の人生に触発されたフィクション

 

A: まだ進行中の事案ですから評価は別れます。ジャンルとしては実際に起きた殺害事件をドラマ化して挟みこんだドキュメンタリー・フィクションです。ヒロインの潜入捜査官アマイアのモデルは、アランサス・ベラドレ・マリンという偽名をもつ国家警察所属の警官エレナ・テハダと思われますが、ドラマでは治安警備庁の隊員になっています。人物造形もかなり違っていて、アマイアの上司カストロ中佐も当然違うわけです。

B: アマイアは実在しません。冒頭で「これはある捜査員の物語かもしれない」と、フィクションだと予防線を張っています。しかしETA側の主だった登場人物は虚構の人もいますが、多くは同じ名前(通称、あるいはニックネーム)や行動から本人と同定できるケースが多いから混乱します。

 

A: 先行して製作されたアランチャ・エチェバリアの『アンダーカバー』(「La infiltrada / Undercover」)を視聴した人は混乱するかもしれません。あちらは同じフィクションでもドキュメンタリー・ドラマに近く、よりテハダの実像にそっている。当時の治安警備庁は警察庁と同じ内務省に所属していましたが、どちらかというと国防省所属の三軍統合本部(陸海空)に近い仕事をしており、現在では国防省に所属しています。

B: 実際は二つの組織が手柄を競い合って反目していた部分があった。プライドが高いといえば聞こえがいいが、スペイン人の妬み深さは定評がある。先行作品はゴヤ賞作品賞とカロリナ・ジュステが主演女優賞をゲットしたばかり、まだ余韻が残っているからタイミングが悪かったかもしれない。

 

A: テロリスト・グループ「コマンド・ドノスティ(サンセバスティアン)」というのは、ETAのなかでも最も過激な集団だったということです。バスク自治州ギプスコアの県都サンセバスティアンの責任者であったアリアドナ・ヒル扮する通称アンボトは実在しており、以下チャポテイニャキ・デ・レンテリアミケル・アンツァなどのテロリストたちも実在の人物です。

B: チャポテ、本名フランシスコ・ハビエル・ガルシア・ガステルは、劇中でも再現されたグレゴリオ・オルドニェスの暗殺者、ミゲル・アンヘル・ブランコやフェルナンド・ムヒカの暗殺などにも関与している。

    


                          (アンボトの沈黙にビビるアマイア)

  

A: 劇中、数本の短編映画を撮り、脚本家、ミュージシャンでもあるフェルナンド・タト扮するチャポテは、サンセバスティアンの旧市街のレストラン「ラ・セパ」で食事中のオルドニェスを殺害したとき、赤いカッパを着用していたが、実際も赤いカッパだったということです。ミゲル・アンヘル・ブランコ議員誘拐の後に起きたスペイン全土で200万人とも250万人とも言われる抗議デモのシーンも、アーカイブ映像とそっくりでした。

B: 死刑廃止のスペインでは、殺害件数が多すぎて刑期はトータルすると三桁と寿命より長い。ギプスコアの幹部アンボトは冷静沈着、美人で風雅なのも実像に近いとか。

   

  

        (殺害決行日は雨が降っていたので赤いカッパでも怪しまれなかった)

 

A: アンボトの通称は1994年秋ごろから使用、スペインとフランスを往復して「血なまぐさい」メンバーの一人と言われ、多くの殺害に積極的に関わっています。ETA中央委員会の二人目となる女性執行委員、軍事作戦を担当する4人のメンバーの一人でもあり、部下にも厳しかったそうです。2004年フランスで、1999年からパートナーだった筆名ミケル・アンツァことミケル・アルビス・イリアルテと共に逮捕された。アンツァはETA の創設者の一人ラファエル・アルビスの長男でETA メンバーでしたが作家でもあり、現在は執筆活動をしている。劇中ではアナルツ・スアスアが扮している。

  

B: 治安部隊が2004年に決行した「サンクチュアリ作戦」でアンボトとアンツァは逮捕されるのですが、映画はもっと前の印象でした。現実に起きた部分とフィクション部分が入れ子になっています。これはドラマであってドキュメンタリーではない。

A: アマイアが結婚を諦めて現場に復帰するのは、1997年夏のミゲル・アンヘル・ブランコ議員の誘拐、続く殺害の後ですからズレを感じました。商業映画ですから観客サービスも必要です。ただ埋め草的なシーン、ウエディングドレスを着せるなどやりすぎ、諸所に挟みこまれた二人の逢瀬も緊張が途切れて、個人的には残念でした。ただ起こらなかった事件のでっち上げはしていない。

 

B: 実際に起きたグレゴリオ・オルドニェスやブランコ議員の殺害シーンなどいやにリアルな部分がある半面、アマイアとカストロ中佐の密会シーンもかなり無防備でした。ミケル・ロサダ演じるイニャキ・デ・レンテリアも実在の人ですか。

A: 詳細が分からないようですが、グループのイデオロギー指導者ミケル・アンツァに次ぐリーダーと言われ、アルジェリアでゲリラ訓練を受けた。20009月フランス南西部のバスクで逮捕されている。

B: アンボトが二重スパイではないかとアマイアの身元確認を依頼したハイメ・チャバリ扮する「チキ/エル・ビエホ」は架空の人物でしょうか。

    

     

              (ハイメ・チャバリ、2022年頃)

 

A: フェロス栄誉賞2025の受賞者チャバリ監督がスクリーンに登場しました。自作にも出演する他、ベルランガやアルモドバル作品にも小さな役ですが出演している。本作の「チキ/エル・ビエホ」は、ETA の象徴的な人物で、フランコ総統が死去する直前の19759月、21歳の若さで銃殺刑になったフアン・パレデス・チキ1954)をシンボライズしているように思いました。他にも同定できない登場人物としてイスンツァがいる。19961月、ログローニョの刑務官オルテガ・ララを誘拐してギプスコアのモントラゴンに幽閉、翌年夏に彼が救出されるまでの532日間の監視役を務めた人物でした。

B: イライア・エリアス扮するバスク語学校の校長ベゴーニャは実在しませんね。

   

     

        (エタ組織に入った理由をアマイアに問い詰めるベゴーニャ)

 

A: アマイアと同じようにベゴーニャに近いモデルはいるそうです。来年のゴヤ賞助演女優賞ノミネートは期待できます。同じくラウル・アレバロのアリエタも架空の人物に思われますが、指導部の一人に同名の人がいるようです。アリエタはバスク語で「石の多い場所」をさし、慎重で猜疑心のかたまりのような人物造形にぴったりです。しかし隙のないアマイアの身辺を探るため彼女のアパートに同居したのに、盗聴器を発見できないなんてあり得ない。

B: 治安警備隊の上層部がエタの動きを探るため彼を同居させるようアマイアに指示していたわけですから、狐と狸の化かし合いです。アレバロは視聴者を不安にさせることに成功していた。誘拐したブランコ議員の処遇を決める指導部の会議でも、殺害に迷わず挙手したリーダーでした。

   

         

              (アマイアを監視するアリエタ)

 

A: アマイアの身辺警護のため多くの治安警備隊員が張り込んでいる。時間稼ぎのためエレベーターを故障に見せかけたり、クリス・イグレシアスのアデラも危険な連絡役を受け持っている。

B: エレベーターを修理するふりをしていたのは仲間ですね。エレナ・テハダを守っていた12人の警察官は「十二使徒」と呼ばれていたそうですが、テハダは顔を知らなかったと語っている。怪しまれないようにわざとそうしていた。

  

A: 劇中でも空軍大尉の身元がバレて、彼女が運転している車中で射殺されたり、アマイア自身が知らずに同僚を撃ってしまったりなど、用心のため互いに知らされていない。 

B: アンドレス・ヘルトルディクスが演じたフリオ・カストロ中佐のモデルは、何人かがミックスされている印象です。

  

   

            (アマイアの情報を受け取るカストロ中佐)

 

A: 『アンダーカバー』でルイス・トサールが演じたアンヘル・サルセド警部のモデルは、国家警察のフェルナンド・サインツ・メリノ長官だそうです。1990年初頭にはギプスコアのスペイン警察の指揮を任されていた。取り調べには拷問も辞さなかったそうです。長官は『アンダーカバー』の脚本作成に参加しており、中佐の造形には彼が部分的に取り入られているように感じました。ETAに顔が割れているエレナ・テハダは、19993月、任務終了後スペイン内をあちこち移動させられ、最終的にアンドラ公国大使館の治安機関に配属され慎重な活動をしている。

B: 塀の中とはいえ未だほとんどが存命、裁判が続行中ですから、映画にするにはどちら側にも不満が残ります。

  


 (先行作品『アンダーカバー』

 

A: スペイン内戦ものとは訳が違う。映画の冒頭部分でフランコ将軍の腹心で後継者だったルイス・カレロ・ブランコ首相暗殺のアーカイブ映像が流れました。197312月、ETA が得意とした自動車爆破で即死、彼の乗っていた車は20メートル空中に飛びあがり6階建てのビルを飛び越えて隣りのビルの2階屋根部分のパティオというか3階のバルコニーに落ちた。

B: 凄い破壊力です。1979年、この爆破テロ事件は『アルジェの戦い』で金獅子賞を受賞したジッロ・ポンテコルヴォが「Operación Ogro」(「鬼作戦」)として映画化した。

 

A: フランコ没後4年足らずの映画化で物議を醸したが、これはフランコ政権時代のテロ事件であり、バスク語使用も自治権も復権した90年代のテロとは区別して考えるべきです。かつて長いあいだ自分たちを容赦なく苦しめたスペイン人を懲らしめる目的のテロに民主化も正義の欠片もないでしょう。監督が冒頭に入れた目的は何かです。

B: 後継者を失ったフランコ政権はETA弾圧の強化に拍車をかけ、犠牲者を増やしていった。彼らは自分たちはバスク人でスペイン人ではないと考えている。

 

A: 『鬼作戦』以外にも、エタラを描いた作品は量産されている。本作にも挿入された2000222日に起きたPSOEフェルナンド・ブエサ・ブランコ殺害事件をバスクの監督エテリオ・オルテガがドキュメンタリー「Asesinato en febrero」(01、「2月の暗殺」)のタイトルで撮った。製作者のエリアス・ケレヘタもギプスコア県エルナニ出身(1934)です。カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でプレミアされ、マラガ映画祭でドキュメンタリー賞を受賞している。

B: ケレヘタは、カルロス・サウラやビクトル・エリセ、モンチョ・アルメンダリス、レオン・デ・アラノアなどを国際舞台に連れ出したスペインを代表する製作者でした。

 

A: 監督、脚本家でもあった。当ブログでは、その他ルイス・マリアスの「Fuego」(発砲)、ボルハ・コベアガのコメディ仕立ての「Negociador」(交渉人)、アイトル・ガビロンドのTVミニシリーズ「Patria」(祖国)、イシアル・ボリャインの「Maixabel」(マイシャベル)などをアップしています。

B: ボリャイン映画のモデルになったマイシャベル・ラサは、20007月に暗殺された政治家フアン・マリア・ハウレギの未亡人です。どうやらディアス・ヤネスの新作がお気に召さなかったようでした。

 

A: エタ犠牲者の当事者ですから商業映画は受け入れがたいでしょう。真実も正義もどちらの目線に立つかで意見は別れる。すべて真実、すべて虚偽です。冒頭の「これはある捜査員の物語かもしれない」を空々しく思った人がいて当然です。本作は、自分の身元が割れることへの恐怖、自分が誰であるかを忘れることへの恐怖を描いているわけです。ベゴーニャに組織に入った理由を問い詰められて「居場所探し」と応じていたが、ベゴーニャがそんな理由を納得したとは思われない。

 

B: 当時の女性の居場所は決まっていた。ミーナの「あまい囁き」(「Parole, parole」)が小道具として使用されていたが、劇中で「パロール、パロール」と歌っていたのはミーナでなく、フランス語版のダリダ&アラン・ドロンのデュエットの「Paroles, paroles」でした。歌うのはダリダでドロンは語りです。 

A: 「口先だけの甘い言葉では騙されないわよ」と手強いのは、登場人物の誰でしょうか。

 

★アグスティン・ディアス・ヤネス監督、スサナ・アバイトゥア、アンドレス・ヘルトルディクス、イライア・エリアスのキャリア紹介はアップしています。以下のフォトは本作がSSIFFでプレミアされたときのもです。

  

     

     


      

      

        

* ハイメ・チャバリのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20250202

Fuego」の作品紹介は、コチラ20140320同年1211

Negociador」の作品紹介は、コチラ20150111

Patria」の作品紹介は、コチラ20200812

Maixabel」の作品紹介は、コチラ20210805


ペルラス部門にギジェルモ・ガロエのデビュー作*SSIFF 2025 ⑨2025年08月17日 15:30

    カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でSACD脚本賞受賞の「Ciudad sin sueño

   

    

             (ペルラク/ペルラス部門の公式ポスター)

 

ペルラス部門ギジェルモ・ガロエのデビュー作「Ciudad sin sueño」(スペイン=フランス、スペイン語・アラビア語、97分)が、スペイン映画としてただ1作選ばれました。「批評家週間」インディペンデント賞SACD脚本賞受賞作品です。既に詳細をアップしておりますが、カンヌでは情報不足ということもあって、前回とダブらないように、今回少し補足しておきます。スペイン公開20251121日がアナウンスされました。

   

      

               (ギジェルモ・ガロエ監督)

 

        

 

★前回よりキャスト情報が増え、補足しておきます。

キャスト:アントニオ トニ’・フェルナンデス・ガバレ(トニ)、ビラル・セドラオウイ(トニの友人)、ヘスス‘チュレ’・フェルナンデス・シルバ(祖父チュレ)、マヌエラ アネリ’・フェルナンデス・フェルナンデス、デボラ‘スラミ’・ヴァルガス、フランシスカ‘パキ’・ヒメネス・フェルナンデス、サナ・アグミル、ルイス・ベルトロ

   

     

            (トニと友人ビラル、フレームから)

 

★受賞歴、カンヌの他、ミュンヘン映画祭2025シネヴィジョン賞ノミネート、ブリュッセル映画祭 BRIFF2025 スペシャル・メンション受賞。監督以下撮影監督のルイ・ポサなどスタッフ紹介、トニ役のアントニオ・フェルナンデス・ガバレの紹介もしております。

Ciudad sin sueño」の紹介記事は、コチラ20250527

 

ニューディレクターズ部門にホセ・アラヨンの「La lucha」*SSIFF2025 ⑧2025年08月13日 15:41

         ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living

    

       

2)「La lucha / Dance of the Living2025 

データ:製作国スペイン=コロンビア、2025年、長編2作目、スペイン語、ドラマ、92分、撮影地カナリア諸島フエルテベントゥーラ島、16mm撮影、プレミア上映

監督:ホセ・アンヘル・アラヨン(アラジョン)、製作:El Viaje Films(スペイン)/ Blond Indian Films(コロンビア)共同製作、資金提供:MEDIA Creative Europe / ICAA / カナリア諸島政府 / ラジオ・テレビ・カナリア 協賛:カナリア諸島レスリング連盟、フエルテベントゥーラ・レスリング連盟、他フエルテベントゥーラ映画委員会など多数、製作者:マリナ・アルベルティ、脚本:マリナ・アルベルティ、サムエル・M・デルガド、撮影:マウロ・エルス、美術:シルビア・ナバロ、編集:エマ・タセル、キャスティング:センドリアン・ラプヤデ

 

キャスト:ヤスミナ・エストゥピニャン(マリアナ)、トマシン・パドロン(父ミゲル)、イネス・カノ、サラ・カノ、アリダニー・ぺレス

  

ストーリー:火星を思わせる乾燥したフエルテベントゥーラ島、母親ピラールが亡くなり、マリアナと父親ミゲルは前進しようとしますが、喪失感から父娘二人は精神的に漂流しています。カナリア諸島のレスリングは彼らの避難所であり、世界に自分たちの居場所を作るための方法です。しかし、トップレスラーのミゲルの体は慢性的な膝の痛みを抱え衰え始めています。一方このスポーツの規範には小柄すぎるマリアナの怒りは、彼女にルール違反を促します。チャンピオンシップ決勝を目前にして、不確実な状況に立たされていることに気づきます。父と娘は手遅れになる前にお互い冷静になる方法を見つけねばなりません。500年の伝統を誇るカナリア・レスリングを背景に、スポーツをはるかに超えた想像力、譲歩の拒否、静かな誇りが語られる。

 

監督・スタッフ紹介ホセ・アンヘル・アラヨン1980年カナリア諸島テネリフェ生れ、製作者、脚本家、監督、撮影監督、フィルム編集者。プロデューサーとしてのキャリが長い。「En el insomnio」がカルタヘナ映画祭2010とラス・パルマスFF短編賞を受賞、「La ciudad oculta」がフェロス賞2020ドキュメンタリー賞を受賞、ベネチア映画祭2023短編部門にノミネートされたマリナ・アルベルティ(監督、脚本家、製作者)の「Aitana」(2319分)に脚本を監督と共同執筆する。ベネチア映画祭2019オリゾンティ部門出品のテオ・コートの「Blanco en Blanco」には製作と撮影を手掛け、ペドロ・シエナ賞2021撮影監督賞を受賞、テオ・コートは監督賞、FIPRESCI賞以下、ハバナ、トゥールーズ、ビニャ・デル・マルなど受賞歴多数。

 

      

              (ホセ・アンヘル・アラヨン)

 

2013年、マウロ・エルセ(監督、撮影監督)と共同監督した「Slimane」(西=モロッコ=仏、ベルベル語・西語、70分)で長編映画デビューを果たし、製作、脚本も手掛けた。IBAFFムルシア映画祭2014オペラ・プリマ賞を受賞する。共同監督のマウロ・エルセは、オリベル・ラシェの『ファイアー・ウィル・カム』でゴヤ賞2020撮影賞を受賞している。アラヨンはベネチアFF2021「批評家週間」ノミネートのサムエル・M・デルガド&エレナ・ヒロンの「Eles Transportan a Morte / They Carry Death」には製作と撮影で参加、本作と同じカナリア諸島を拠点として展開するドラマです。アートディレクターのシルビア・ナバロは「They Carry Death」を手掛けています。

 

      

     

                (撮影中のアラヨン監督)

 

キャスト紹介:主役マリアナを演じたヤスミナ・エストゥピニャンは、本作でデビュー、キャスティングのセンドリアン・ラプヤデ1年がかりで探した。父親役のトマシン・パドロンはベテランのレスラーということです。


ニューディレクターズ部門に2作品ノミネート*SSIFF 2025 ⑦2025年08月12日 13:57

          イラティ・ゴロスティディ・アギレチェとホセ・アラヨン

   

      

           (ニューディレクターズ部門の公式ポスター)

 

★バスク出身のイラティ・ゴロスティディ・アギレチェ1988)のデビュー作「Aro berria」と、テネリフェ出身のホセ・アラジョン1980)の第2作め「La lucha / Dance of the Living」の2作がノミネートされました。当部門は1作めから2作目が対象です。85日にノミネート全作品が発表になっており、日本からもユカリ・サカモト(坂本悠花里/ユカリ、東京1990)の『白の花実』1226日公開)がクロージング作品として選ばれています。招待作品ということで賞には絡まないのかもしれません。他、中国、コスタリカ、デンマーク、インド、イギリス、ロシア、スウェーデン、台湾、トルコ、計13作です。当ブログでは、スペイン映画2作をアップします。まずはイラティ・ゴロスティディ・アギレチェの「Aro berria」からアップします。

   

       

          (ニューディレクターズ13作入りの公式ポスター)

 

 

1)Aro berria / Anekumen

Ikusmira Berriak 2020 作品

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、110分、長編デビュー作。イクスミラ・ベリアクの他、ロカルノ・レジデンス2023FIDLab、インディ・リスボア・共同プロダクション・フォーラムなどに参加している。

監督・脚本:イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ、製作:Apellaniz y de Sosa SL / Anekumen Pelikula AIE / Leire Apellaniz & Claudia Salsedo / SEÑOR y SEÑORAICAARTVEEiTBから資金提供を受けている。製作者:レイレ・アベリャニス、カルメン・ラカサ、撮影:イオン・デ・ソーサ、衣装デザイン:ハビエル・ベルナル・ベルチ、プロダクションデザイン:クラウディア・サルセド

 

     

 

キャスト:マイテ・ムゲルサ・ロンセ、オスカル・パスクアル・ロペス、アイマル・ウリベサルゴ、エドゥルネ・アスカラテ、ジョン・アンデル・ウレスティ、ナタリア・スアレス、(特別出演)ヤン・コルネ、オリベル・ラシェ、ハビエル・バランディアン

 

ストーリー19785月、フランコのスペインは終焉を迎え、民主主義移行への興奮が感じられたサンセバスティアンの郊外では、水道メーター工場の労働者が集まり、ストライキについての集会を開いていた。最終的には失敗に終わり、幻滅した彼らのなかで最もラディカルな若いグループは工場を去り、社会変革より個人的なより仲間内の領域に向かい始めます。人里離れた山中に籠り、カタルシス体験を共有することで激しい探求への旅を企てますが、彼らの願望は深い矛盾にぶつかり、彼らが求めていた理想は揺らぎ始めます。フランコ没後の1970年代の実話に着想を得て製作された。

 

     

 

監督紹介イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ1988年ナバラ州エゲシバル生れ、監督、脚本家。ビルバオとバルセロナで芸術と映画を学び、フルブライト奨学金を得て、ニューヨークに留学。本祭関連では、短編「Unicornio」(18分、シネミラ・キムアク部門2021)ほか。「Contadores」(19分、サバルテギ-タバカレア部門2023)は、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でライツ・シネ・ディスカバリー賞にノミネートされた他、グアナファト映画祭、ヴィラ・ド・コンデ映画祭などにもノミネートされた。アルカラ・デ・エナレス短編映画祭2023でイオン・デ・ソーサが撮影賞を受賞した。本作は「Contadores」で探求された世界を掘り下げたものであり、当時の歴史的再現やドキュメンタリー資料を駆使してアプローチしている。

   

     

           (イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ監督)

 

   

    (イオン・デ・ソーサ、監督、製作者カルメン・ラカサ、SSIFF 202585日)

 

★次回、ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living」を予定しています。


セクション・オフィシアル特別上映作品*SSIFF 2025 ⑥2025年08月09日 17:15

       フィクション、ノンフィクション、TVシリーズ2作、合計4作が上映

 

★アウト・オブ・コンペティション特別上映作品として4作が選ばれている。ドラマとしてアシエル・アルトゥナの「Karmele」(114分)、ノンフィクションとしてイサキ・ラクエスタエレナ・モリーナの「Flores para Antonio」(98分)、TVミニシリーズに、コルド・アルマンドスの「Zeru ahoak / Sky Mouths / Bocas de cielo」(4話、160分)と、パコ・プラサパブロ・ゲレロの共同監督作品「La suerte / Fate」(6話、183分)です。今回はいま話題になっている「Karmele」をアップします。

  

 

 

 Karmele / Time to Wake Up Together2025

Foro de Coproducción Europa-América Latina 2019

製作:Euskal Irrati Telebista / Eusko Jauraritza Gobierno Vasco / 

     Gastibeltza Filmak / RTVE

監督:アシエル・アルトゥナ

脚本:アシエル・アルトゥナ、キルメン・ウリベ・エルカレキン

(原作)キルメン・ウリベ La hora de despertarnos juntos

音楽:アイトル・エチェバリア

撮影:ハビエル・アギレ

編集:ロラン・デュフレッシュ

キャスティング:マリア・ロドリゴ

プロダクションデザイン:サロア・シルアガ

製作者:マリアン・フェルナンデス・パスカル

 

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、114

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティション特別上映

 

キャスト:ジョネ・ラスピウル(カルメレ・ウレスティ)、エネコ・サガルドイ(チョミン・レタメンディ)、ナゴレ・アランブル、ハビエル・バランディアラン

   

     

           (ジョネ・ラスピウルとエネコ・サガルドイ)

 

ストーリー1937年バスク、看護師のカルメレと家族は内戦のため故国を追い出されフランスに避難していた。カルメレは音楽や舞踊を通して反戦活動をするなかで、バスク大使館とコンタクトを取る。そこでプロフェッショナルのトランペット奏者チョミンと出会う。その後、二人はベネズエラに渡りカラカスで一時期暮らした後、奪い取られたものを取り戻す期待をもってスペインに戻ってくる。スペイン内戦、フランコ独裁政権、亡命と20世紀のスペインを生きぬいた女性とその家族が語られる。実話に基づいて書かれたキルメン・ウリベの小説の映画化。

   

        

     

                (カルメルとチョミン)

 

監督紹介アシエル・アルトゥナ1969年ギプスコア県ベルガラ生れ、監督、脚本家、撮影監督。テルモ・エスナルと共同監督した短編デビュー作「Txotx」(15分)がマラガ映画祭1997短編賞2席を受賞。本祭関連では、テルモ・エスナルと2005年長編デビュー作「Aupa Etxebeste !」がニューディレクターズ部門でユース賞を受賞した。2016年ベロドロモ部門で上映された短編集「Kalebegiak」(12編)の1編を二人で手掛けている。2019年同じくエスナルとバスク映画ガラで「Agur Etxebeste !」、単独ではアウト・オブ・コンペティション上映のドキュメンタリー「Bertsolari」(11、バスク語)、続いて「Amama」(15)でバスク映画部門のイリサル賞を受賞した他、ナント映画祭2016ユース審査員賞、モンテレイ映画祭2016観客賞を受賞した代表作。クイナリー・シネマ部門でバスクの伝統料理を提供するレストラン・アルサクのドキュメンタリー「Arzak since 1897」(20)が上映された。

 

  

           (イリサル賞受賞した「Amama」と、サンセバスチャン映画祭2015)

 

     

     (アシエル・アルトゥナとテルモ・エスナル、サンセバスチャン映画祭2019

 

原作者紹介キルメン・ウリベ・エルカレキンは、1970年バスク自治州ビスカイヤ県オンダロア生れ、詩人、小説家、脚本家、バスク語で執筆している。最初の小説 Bilbao-New York-Bilbao2008年刊)がスペイン国民小説賞を受賞、スペイン語、カタルーニャ語は勿論のこと、フランス語、英語、ポルトガル語、ロシア語ほかに翻訳されている。日本でも『ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ』の邦題で翻訳刊行されている。『オババコアック』の著者ベルナルド・アチャガと同様バスク語作家として知られている。

 

キャスト紹介ジョネ・ラスピウル1995年サンセバスティアン生れ、歌手、ダンサー、ミュージシャン。17世紀初頭のバスク地方の魔女狩り裁判をテーマにしたパブロ・アグエロの「Akelarre」(20、西仏アルゼンチン、スペイン語・バスク語)でデビュー、高い評価を受け、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」(20)にパトリシア・ロペス・アルナイスの娘役に起用され、期待に応えてゴヤ賞2021新人女優賞を受賞、ロペス・アルナイスも主演女優賞を受賞した。他にイシアル・ボリャインの「Maixabel」(21)、アシエル・ウルビエタのスリラー「La isla de los faisanes / Faisalen irla」(25)に出演している。

Akelarre」の作品紹介は、コチラ20200802

Ane」の作品紹介は、コチラ20210127

 

      

               (「Ane」のフレームから)

 

     

            (「Ane」でゴヤ賞2021新人女優賞受賞)

 

エネコ・サガルドイは、1994年ビスカヤ県ドゥランゴ生れ、俳優、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ共同監督の『アルツォの巨人』(「Handia」)でゴヤ賞2018新人男優賞とスペイン俳優組合賞を受賞する。ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi21)、パウル・ウルキホ・アリホのアドべンチャー・ファンタジー「Irati」(22)主演、TVミニシリーズ「Patria」(208話、バスク語)などに出演している。

『アルツォの巨人』の紹介記事は、コチラ20170906

Irati」の紹介記事は、コチラ20221222

Patria」の紹介記事は、コチラ20200812

      

      

            『アルツォの巨人』のフレームから

       

  

         (『アルツォの巨人』でゴヤ賞2018新人男優賞受賞)

 

アルベルト・ロドリゲスのTVシリーズ「Anatomía de un instante」*SSIFF 2025 ④2025年08月01日 11:27

         ダブル・ノミネートのアルベルト・ロドリゲスの歴史ドラマ

    

       

       (終結後、家族に無事を知らせる電話をする議員たち)

 

★アウト・オブ・コンペティション部門には、既にご紹介したアグスティン・ディアス・ヤネスの新作「Un fantasma en la batalla」とアルベルト・ロドリゲスTVミニシリーズ「Anatomía de un instante」(4話、180分)の2作が選ばれ、4話のうち3話が上映されるようです。ハビエル・セルカスの同名ノンフィクション小説(2009年刊)がベースになっています。フランコ没後の民主主義移行期に起きた1981223日の軍事クーデタ未遂事件が舞台です。スペインの子供たちは歴史の教科書で学びます。当時の国王ドン・フアン・カルロスI世の力量を国民が初めて知ることになったドラマチックな事件でもありました。今日のスペイン民主主義体制の土台となった事件だけにヒット作になるでしょうが、制作会社の一つMovistar Plus+ が配信しますので、多分日本では見ることができないでしょう。

   

        

           (下院議場中央壇上のアントニオ・テヘロ中佐)

 

Anatomía de un instante / The Anatomy of a Momento

 アウト・オブ・コンペティション

製作;Arte France / DLO Producciones / Movistar Plus+

監督:アルベルト・ロドリゲス

脚本:ラファエル・コボス、フラン・アラウホ、アルベルト・ロドリゲス

(原作)ハビエル・セルカス

撮影:アレックス・カタラン

編集:ホセ・MG・モヤノ、アナ・ガルシア

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ

美術:ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ

衣装デザイン:フェルナンド・ガルシア

プロダクションデザイン:アレックス・ミヤタ

メイク&ヘアー:ヨランダ・ピーニャ(主任)、イツィアル・コスタス、ナチョ・ディアス、アイダ・カルバリョ

製作者:ホセ・マヌエル・ロレンソ(クリエーター)、フラン・アラウホ、マヌエラ・オコン

 

データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、TVミニシリーズ4話、撮影地マドリードの下院議場、アルカラ・デ・エナレス、他。配給スペインMovistar Plus+ で配信が決定している。

  

キャスト:アルバロ・モルテ(総理大臣アドルフォ・スアレス)、エドアルド・フェルナンデス(スペイン共産党書記長サンティアゴ・カリージョ)、マノロ・ソロ(副総理グティエレス・メジャド陸軍将軍)、ダビ・ロレンテ(治安警備隊中佐アントニオ・テヘロ)、ミキ・エスパルペ(国王フアン・カルロスI世)、オスカル・デ・ラ・フエンテ(ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将)、フアンマ・ナバス(アルフォンソ・アルマダ陸軍少将)、サムエル・ロペス(社会労働党アルフォンソ・ゲーラ)、イグナシオ・カステージョ(議長ランデリノ・ラビージャ)、ルイス・ベルメホ、ベネアロ・エルナンデス(フアン・ガルシア・カレス)、他多数

 

ストーリー1981223日、午後620分、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐と自動小銃で武装した警備隊員200名が下院議場を占拠、国王を擁した軍事政権樹立を要求する。テヘロ中佐が拳銃を手に議場に乱入、安全のため議席の足元の床に身を伏せるよう命令して辱めたが、アドルフォ・スアレス首相、サンティアゴ・カリージョ共産党書記長、グティエレス・メジャド副首相の3名は指示に従わなかった。民主主義の前進を率いたこの3人と軍事クーデタ未遂事件の首謀者3人、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐、ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将、アルフォンソ・アルマダ陸軍少将を通して、スペイン民主化のプロセスを強化することになった「F-23事件」が語られる。

 

       

         (テヘロ中佐を演じたダビ・ロレンテ、フレームから)

 

    

         (メジャド副総理役のマノロ・ソロ、スアレス首相役のアルバロ・モルテ)

 

         

          (カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデス)

 

★スペインで「F-23事件」と言えば、スペイン人なら1981年に起きた軍事クーデタ未遂事件と分かります。Fはスペイン語の2febrero の頭文字、わが国の「3-11」、アメリカの「9-11」と同じように、年号は不要です。三軍の長でもあったフアン・カルロスI世のクーデタ不支持表明で、発生から18時間後に終結した無血クーデタですが、スペイン民主主義の行方を決定づけたターニングポイントとなる事件でした。とはいえ現在でも事件の推移は混沌としており、事件の黒幕の解明には至っていないということです。製作者がどこまで事件に踏み込んでいるのか目下のところ分かりませんが、監督、脚本家など製作スタッフの顔ぶれから期待したいところです。

 

223日は、アドルフォ・スアレス首相が政治的混乱、高い失業率、ETAのテロ活動の未解決の責任を取って辞意を表明(129日)、当日は新首相選出の手続きを行っていたところでした。従って与野党下院議員がほぼ全員出席、国営放送局によりテレビで生中継されていました。一方ミランス・デル・ボッシュ将軍がテレビ局を占拠、突然放映が中断されましたが、記録は残っています。ラジオからは内戦当時の軍隊行進曲が流され国民を40年前の恐怖に陥れた。因みにダニエル・カルパルソロのTVミニシリーズ「Asalto al Banco Central / Bank Under Siege」(245話、『バンク・アンダーシージ』Netflix)の第1話の冒頭にこのときの実写が挿入されています。下院議場の中央壇上に駆け上がって威嚇するテヘロ中佐、スアレス首相、カリージョ書記長、メジャド副首相の3人以外は議席の床に伏せている映像を見ることができます。本作はF-23事件から3ヵ月後の523日に起きたバルセロナにあるスペイン中央銀行へ押し入った強盗事件を描いています。

  

       

     (反乱首謀者3人、左からテヘロ、アルマダ、ミランス・デル・ボッシュ)

 

    

         (原作者ハビエル・セルカスが表紙に使用したクーデタ当日の下院議場内)

 

★コンペティション外、TVシリーズということもあるので、スタッフ、キャスト紹介は割愛しますが、ロドリゲス監督はセクション・オフィシアルの「Los Tigres」、脚本家ラファエル・コボスはマラガ映画祭2019でリカルド・フランコ賞を受賞した折に紹介、カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデスは映画国民賞2025受賞の記事で、副総理メジャド役のマノロ・ソロはビクトル・エリセの『瞳をとじて』やガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『コンペティション』、ラウル・アレバロの『静かなる復讐』などに出演しています。原作者のハビエル・セルカス(カセレス1962)は小説家、翻訳家、日本では『サラミスの兵士たち』(Soldados de Salamina 2001)と、最近『テラ・アルタの憎悪』(Terra Alta 2019)の翻訳が出版されています。

アルベルト・ロドリゲスの紹介記事は、コチラ20250724

ラファエル・コボスの紹介記事は、コチラ20190326

エドゥアルド・フェルナンデスの紹介記事は、コチラ20250713


セクション・オフィシアルの追加作品「Los domingos」*SSIFF2025 ③2025年07月27日 16:31

          バスクの監督アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos

 

         

      

723日、セクション・オフィシアルの追加発表がありました。結局これでスペイン映画は4作となりました。昨年TVミニシリーズ「Querer」(4話)がアウト・オブ・コンペティションで上映され、連続でサンセバスチャン映画祭に登場することになりました。セクション・オフィシアルにノミネートは初となるアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」は、長編3作目、17歳になる聡明な理想主義者アイナラの選択は、家族を驚かせ深い断絶と試練をもたらします。

   

   

            (左から2人目、ルイス・デ・アスア監督、中央がブランカ・ソロア)

   

4)Los domingos / Sundaysアラウダ・ルイス・デ・アスア

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、スペイン語、ドラマ、115分、撮影地ビルバオ、2025220日クランクイン。配給スペインBTeam Pictures

製作Buena Pinta Media / Encanta Films / Colose Producciones / Movistar Plus+ /

   Think Studio Sayaka Producciones

監督・脚本:アラウダ・ルイス・デ・アスア、製作者:マヌエル・カルボ、マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、サンドラ・エルミダ、マヒカリ・イピニャ、撮影:ベト・ロウリチ、編集:アンドレス・ジル、美術:サロア・シルアガ、衣装デザイン:アナ・マルティネス・フェセル

 

キャスト:ブランカ・ソロア(アイナラ)、パトリシア・ロペス・アルナイス(母マイテ)、ミゲル・ガルセス(父親)、フアン・ミヌヒン、マベル・リベラ、ナゴレ・アランブル、リエル・アラバ(ゴルカ)、他

 

ストーリー:聡明な理想主義者アイナラは17歳、大学でどのようなキャリアを選ぶか決心しなければなりません。少なくとも、それは家族がアイナラに期待していることです。しかし彼女は自分の将来は別の場所にあるように考えています。彼女は神のおそばに近づきたいと修道会のシスターになる計画を打ち明ける。このニュースに不意を衝かれた家族は驚愕し、家族に深い断絶と試練を引き起こすことになる。

   

     

             

監督紹介アラウダ・ルイス・デ・アスア(バラカルド1978)、監督、脚本家。デウスト大学(スペイン最古の私立大学)卒業後、マドリード映画学校 ECAM の映画監督の学位を取得した。短編5作を撮ったのち、デビュー作「Cinco lobitos / Lullaby」がベルリン映画祭2022パノラマ部門で上映された。同年マラガ映画祭コンペティション部門にノミネート、金のビスナガ作品賞を含む7冠を制した。翌年のゴヤ賞では新人監督賞を受賞するほか、主演女優賞(ライア・コスタ)、助演女優賞(スシ・サンチェス)の3冠、その他フェロス脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル新人監督賞、ディアス・デ・シネ賞、ガウディ賞ヨーロッパ映画賞など2023年は受賞ラッシュの年となった。

 

      

                     (ルイス・デ・アスア監督、SSIFF 2024にて)

 

 

★ 第2作ロマンチックコメディ「Eres tú / Love at First Kiss」(23、米合作)は、『だから、君なんだ』の邦題でNetflixが配信している。上述した本祭2024 のアウト・オブ・コンペティションで上映された「Querer」は、新作にも出演しているナゴレ・アランブルとペドロ・カサブランクが主演、「愛が何であるか理解している男性はいるのか」がテーマ、TVシリーズ部門のトロフィー、例えばフェロス賞(作品賞・脚本・主演女優賞)、フォルケ賞(作品・主演男優賞)、フォトグラマス・デ・プラタ観客賞シネマ・ライターズ・サークル賞(作品・アンサンブル・スター賞)などを手にした。

Cinco lobitos」の作品紹介は、コチラ2022051420221213

Querer」の作品紹介は、コチラ20241009

      

    

 (デビュー作「Cinco lobitos」ポスター)

 

キャスト紹介:アイナラ役のブランカ・ソロアは今作でデビューです。母親役のパトリシア・ロペス・アルナイス1981)は、昨年ピラール・パロメロの「Los destellos / Glimmers」で銀貝女優賞を受賞、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」でゴヤ賞2021主演女優賞とサンジョルディ賞、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレンの『ミツバチと私』でマラガ映画祭2023銀のビスナガ助演女優賞、その他グアダラハラ映画祭、香港映画祭など海外の映画祭でも評価された。ナゴレ・アランブルはフォルケ賞とフェロス賞主演女優賞を受賞した「Querer」の他、ジョン・ガラーニョ&ホセ・マリ・ゴエナガのバスク語映画『フラワーズ』14)で日本に紹介されている。「Ane」、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『コンペティション』(21)、TVミニシリーズ「Patria」、パウル・ウルキホ・アリホの「Irati」(22、バスク語)、イボン・コルメンサナの「El bus de la vida」(24)など当ブログ紹介の良作に起用されている。マベル・リベラ(ア・コルーニャ1952)は、アメナバルの『海を飛ぶ夢』でゴヤ賞2005の助演女優賞を受賞している。

 

     

      (撮影中のブランカ・ソロアと監督)

    

     

           (銀貝女優賞受賞のロペス・アルナイス、「Los destellos」から)

 

    

                                         (ナゴレ・アランブル、「Querer」から)

 

ミゲル・ガルセスは、当ブログ紹介映画では、「Querer」、『ミツバチと私』、イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka」(24)と「Maixabel」(21)、ロペス・アルナイスと共演したアンドレア・ハウリエタの「Nina」など、さらに今年は何本もTVシリーズが予定されている。フアン・ミヌヒンはブエノスアイレス生れ(1975)だが、海外の監督に起用されている。ディエゴ・レルマンの『代行教師』(22)とセバスティアン・シンデルの『天の怒り』(22)はNetflixで配信されている。フェルナンド・メイレレスの『2人のローマ教皇』(19)では、アンソニー・ホプキンスやジョナサン・プライスと共演、プライス演じるフランシスコ教皇の若い時代を演じた。ルクレシア・マルテルの『Zama サマ』(17)、銀のコンドル賞、マルティン・フィエロ賞、アルゼンチン映画アカデミー賞と受賞歴多数、TVシリーズ「El marginal」(43話、1622)では27話に出演、タト賞2016主演男優、本作では監督(2話、22)も手掛けている。

     

   

           (フアン・ミヌヒンとブランカ・ソロア、フレームから)


 

◎関連記事  

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『ミツバチと私』の作品紹介は、コチラ20230303

Los destellos / Glimmers」の作品紹介は、コチラ20240730

Nina」の作品紹介は、コチラ20240911

『フラワーズ』の主な作品紹介は、コチラ20141109

『代行教師』の作品紹介は、コチラ20220809

『サマ』の主な作品紹介は、コチラ201710月13

 

★大学ではなく修道女になりたいという若い女性の話は日本では分かりづらいが、監督によると本作のアイディアは、知人のお嬢さんがヒントになっているそうです。