エレナ・マルティンの2作目が「監督週間」にノミネート*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月22日 13:50
スペインのエレナ・マルティンの第2作「Creatura」が監督週間に

★今年第55回を迎える「監督週間」にスペインのエレナ・マルティンの「Creatura」がノミネートされました。「監督週間」と「批評家週間」はカンヌ映画祭とは選考母体も異なりますが、本体と同期間にカンヌで開催されることからカンヌFFと称しています。今回は本体より1日遅れの5月17日から26日まで、従って結果発表も先になります。長編部門は60分以上、短編部門は60分未満という区別があり、SACD賞、ヨーロッパ・シネマズ賞、観客賞などがあります。

(最近のエレナ・マルティン)
「Creatura」
製作:Avalon PC / Elástica Films / Filmin / S/B Films / Vilauto Films / ICEC / ICAA / Lastro Media / TV3
監督:エレナ・マルティン
脚本:エレナ・マルティン、クララ・ロケ
音楽:クララ・アギラル
撮影:アラナ・メヒア・ゴンサレス
編集:アリアドナ・リバス
キャスティング:イレネ・ロケ
プロダクション・デザイン&美術:シルビア・ステインブレヒト
音響:レオ・ドルガン、ライア・カサノバス、オリオル・ドナト
衣装デザイン:ベラ・モレス
メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル(メイク)、アレクサンドラ・サルバ(ヘアー)
製作者:(Vilauto Films)アリアドナ・ドット、マルタ・クルアーニャス、トノ・フォルゲラ、(Elástica Films)マリア・サモラ、(Avalon PC)シュテファン・シュミッツ、(S/B Films)パウ・スリス、ジェイク・チーサムCheetham、他多数
データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語、ドラマ、112分、撮影地バルセロナのサンビセンツ・デ・モンタルト、公開スペイン2023年9月18日予定、国際販売LuxBox
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭併催の「監督週間」にノミネート(5月20日上映)
キャスト:ミラ・ボラス(ミラ5歳)、クラウディア・ダルマウ(ミラ15歳)、エレナ・マルティン(ミラ35歳)、アレックス・ブランデミュール(父ジェラルド)、マルク・カルタニャ(ジェラルド)、クリスティーナ・コロム(大人のアイナ)、カルラ・リナレス(ディアナ)、オリオル・プラ(ミラの恋人マルセル)、ベルナ・ロケ(アンドレ)、クララ・セグラ(ディアナ)、テレサ・バリクロサ、ダビ・ベルト
ストーリー:少女のミラはビーチで夏を過ごします。彼女の大好きな父親は彼女に優しく世界を見せます。母親は控えめです。少女から急成長するミラのエネルギーは、彼女の周囲、彼女の体、海との繋がりを変えてしまいます。大人たちは自意識の高いミラの変化に戸惑いを感じます。ミラと父親のあいだで何かが壊れます。30代になったミラは、深刻な危機に向き合っています。ミラは自分の欲望と喪失が心の奥底にあることに気づき始めます。過去の関係を再訪する自己探求の旅をしていますが、再び海に戻ることができるでしょうか。

(思春期のミラ)
★監督紹介:エレナ・マルティン・ヒメノは、1992年バルセロナ生れ、監督、脚本家、映画・舞台女優。ポンペウ・ファブラ大学(1990年設立)で映画を学ぶ。長編デビュー作は主役も自身で演じた2017年の「Júlia ist」、マラガ映画祭2017のZonaZine 部門の作品・監督・モビスター+賞を受賞、他トゥリア第1作監督賞も受賞、バレンシア映画祭、翌年のガウディ賞(カタルーニャ語以外部門)の作品賞にノミネートされている他、ワルシャワFF、レイキャビクFFに出品された。本作については簡単ですが作品紹介をしています。
*「Júlia ist」の作品紹介は、コチラ⇒2017年07月10日

(エレナ・マルティン、「Júlia ist」から)

★エレナ・マルティンは、女優としてスタートしました。2015年のライア・アラバルト他4人の共同監督作品「Les amigues de l’Ágata」(Las amigas de Ágata)のアガタ役で好演し、名前が知られるようになった。2019年イレネ・モライの短編「Suc de síndria」(20分、英題「Watermelon Juice」)に主演し、マラガFF、メディナFF、イベロアメリカンFFなどで主演女優賞を受賞している。モライ監督はゴヤ賞2020の短編映画賞以下、ガウディ賞、メディナFF、バレンシアFF、イベロアメリカン短編映画賞など多数受賞しています。

★TVシリーズでは、2019年、レティシア・ドレラが創案者のコメディ「Vida perfecta」(14話、19~20)に参加、2話を監督している。5話からなるTVミニシリーズ「En casa」(1話、20)、ミュージック・ビデオ「Rigoberta Bandeni:Perra」を監督している。他にロス・ハビス(ハビエル・アンブロシ、ハビエル・カルボ)のシリーズ「Veneno」(全8話)のスタッフライターとして6話にコミット、脚本2話を執筆している。
アルモドバルの英語映画第2弾「Strange Way of Life」*カンヌ映画祭2023 ― 2023年05月04日 15:53
ルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化を断念

(ペドロ・パスカルとイーサン・ホーク主演「Strange Way of Life」ポスター)
★ペドロ・アルモドバル英語映画2作目となる「Strange Way of Life」は、ネオウエスタン、ファッションブランドのサンローランが製作に参加するなど話題に事欠かない。長編新作はケイト・ブランシェット主演が予定されていたルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化のはずでしたが、どうやら本作を断念したようです。2022年に新設されたゴヤ賞国際ゴヤの第1回受賞者に選ばれたブランシェットのプレゼンターはアルモドバルでしたから、当時は少なくともまだ良好な関係だったのでしょうか。死後十年を経て「再発見」された作家の小説の映画化が立ち消えになったのは、個人的には非常に残念です。さて本題の「Strange Way of Life」は、主役二人を除いてスペインの若いガラン俳優たち、製作も『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』の常連が手掛けており、どんなウエスタンに仕上がっているのでしょうか。
「Strange Way of Life / Extraña forma de vida」2023
製作:El Deseo / Saint Laurent /
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:アルベルト・イグレシアス
編集:テレサ・フォント
プロダクション・デザイン:アンチョン・ゴメス
美術:マリア・クララ・ノタリ
セット・デコレーション:ビセンテ・ディアス
衣装デザイン:アンソニー・ヴァカレロ
メイクアップ&ヘアー:アナ・ロサノ(メイク)、ノエ・モンテス(ヘアー)
製作者:アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア、アンソニー・ヴァカレロ
データ:製作国スペイン、2023年、英語、短編30分、ウエスタン、撮影:アルメリア県タベルナス、配給ソニーピクチャーズ・クラシックス、公開スペイン5月26日
映画祭・受賞歴:第76回カンヌ映画祭コンペティション外(特別上映)正式出品。
キャスト:ペドロ・パスカル(シルバ)、イーサン・ホーク(ジェイク保安官)、マヌ・リオス、ジェイソン・フェルナンデス(青年ジェイク)、ジョゼ・コンデッサ(青年シルバ)、ペドロ・カサブランク、ダニエル・リベド(保安官代理)、サラ・サラモ、エレニス・ローハン(クララ)、ジョージ・ステイン、ヴァシレイオス・パパテオカリス、他
ストーリー:ビタークリークから彼を遠ざける砂漠を馬に乗って横断する男シルバの物語、彼はジェイク保安官を訪ねてやって来た。25年前、保安官と牧場労働者のシルバの二人は、金で雇われたガンマンとして一緒に働いていた。シルバは青年時代の友との再会を口実にやってきた。実際、彼らは再会を喜びあうのだが、翌朝、ジェイク保安官は彼の旅の動機が昔の友情の思い出ではないとシルバに告げる。男性二人のラブストーリー。

(シルバとジェイク保安官)
アマリア・ロドリゲスの有名なファドが暗示するもの
★かつてセルジオ・レオーネがクリント・イーストウッドとタッグを組んだマカロニ・ウエスタン「ドル箱三部作」(『荒野の用心棒』64、『夕陽のガンマン』65、『続・夕陽のガンマン』66)の撮影用に建てられた町でクランクインした。スペイン南部アンダルシア地方のアルメリア県タベルナスのウエスタン村テキサス・ハリウッド、北にはシエラネバダ山脈がそびえ、南は地中海を臨む風光明媚なガタ岬、ヨーロッパ唯一の砂漠といわれるタベルナス砂漠がある。2002年にはイーストウッドをカメオ出演させたアレックス・デ・ラ・イグレシアの『800発の銃弾』(02)もここで撮影されている。かつてのアルメリア地方は格安マカロニ・ウエスタンの聖地であった。ウエスタンではないが、ガタ岬で撮影されたのがダビ・マルティン・デ・ロス・サントスの『マリアの旅』(20)である。


(撮影中のアルモドバル、2022年)
★本作のタイトルは、ポルトガルのファドの女王アマリア・ロドリゲス(リスボン1920~99)の有名なクラシック・ファド「Estranha forma de vida」(奇妙な生き方)から採られており、「あなた自身の欲望に背を向けて生きるものほど奇妙な存在はない」ことを示唆している。サンローランのアンソニー・ヴァカレロが製作だけでなく衣装デザインを兼ねている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、『ペイン・アンド・グローリー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『私が、生きる肌』などで監督お気に入り、ゴヤ胸像のコレクターと言われる音楽監督アルベルト・イグレシアスは、『私の秘密の花』(95)以来『パラレル・マザーズ』まで12作に参加している常連です。
★フィルム編集のテレサ・フォントとセット・デコレーションのビセンテ・ディアスは、共に『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、『パラレル・マザーズ』を手掛けている。プロダクション・デザインのアンチョン・ゴメスは、バスク出身のベテランのアートディレクター、1997年の『ライブ・フレッシュ』から『パラレル・マザーズ』まで10作ほど手掛けている。ブエノスアイレス出身のアートディレクターマリア・クララ・ノタリは、2009年の『抱擁のかけら』からで『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、本作が4作目だが、公開されたものではアルゼンチン映画でダミアン・シフロンのヒット作『人生スイッチ』や、アスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』などがある。
★キャスト陣では、シルバ役のペドロ・パスカル(サンティアゴ1975)はチリ出身、TVシリーズ『ナルコス』(2019~23 Netflix)のDEA麻薬取締局の捜査官ハビエル・ペーニャ役で認知度は高い。実在する捜査官だがお化粧直しが多くて本人イコールとは言えない。1973年、もう一つの「9.11」と称されるピノチェト将軍率いるチリ・クーデタによりアジェンデ政権は崩壊した。アジェンデ支持派だった両親はペドロを連れてデンマークに亡命、後アメリカに渡りカリフォルニア、テキサスで育った。国籍はチリと米国、母語はスペイン語、ほかは英語である。オレンジ・カウンティ芸術学校、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で学び、ニューヨーク在住。出演作はテレビ、短編を含めると60作以上、代表作は『ナルコス』以外では、『ワンダーウーマン』(11)、『ワンダーウーマン1984』(20)、『トリプル・フロンティア』(19)、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(14)、『ザ・マンダロリアン』(2019~23)、ホラーSFアドベンチャー「The Last of Us」(23)では主役を演じている。

(シルバ役のペドロ・パスカル、フレームから)
★イーサン・ホーク(オースティン1970)は、俳優、作家、脚本家、監督。1985年『エクスプロラーズ』でデビューしたが、学業に戻ってカーネギー・メロン大学で演技を学び、その後ニューヨーク大学でも学んだが、いずれも演技と両立せず中退している。ピーター・ウィアーの『いまを生きる』(89)で復帰、リチャード・リンクレイターの連作『恋人までの距離』(95)、『ビフォア・サンセット』(04)、『ビフォア・ミッドナイト』(13)に出演、2作目と3作目では脚本を監督と共演のジュリー・デルピーの3人で執筆、アカデミー脚色賞にノミネートされている。俳優としてはアカデミー賞は受賞していないが、『トレーニングデイ』(01)で助演男優賞に初ノミネート、2014年の『6才のボクが、大人になるまで』でもノミネートされた。アメナバルのサイコ・スリラー『リグレッション』(15)の刑事役、黒澤明の『七人の侍』をもとにした『荒野の七人』(60)のリメイク版『マグニフィセント・セブン』(16)では南北戦争で心に傷を負ったガンマン役で出演している。
★カトリーヌ・ドヌーヴが主演した是枝監督の『真実』(19)では、ジュリエット・ビノシュと夫婦役を演じ、ガルシア・マルケスの息ロドリゴ・ガルシアの『レイモンド&レイ』(22)では、ユアン・マクレガーと異母兄弟になった。マリベル・ベルドゥが共演している。2023年12月にNetflix 配信が決定しているサイコスリラー「Leave the World Behind」(リーブ・ザ・ワールド・ビハインド)に主演している。オスカー像を持っていなくても、サンセバスチャン映画祭2016ドノスティア栄誉賞を受賞しており、スペインでは知名度のあるハリウッドスターです。
*『リグレッション』の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月03日
*ドノスティア栄誉賞&『マグニフィセント・セブン』紹介は、コチラ⇒2016年09月12日

(ジェイク保安官役のイーサン・ホーク)
★TVシリーズでお馴染みになっている若いガラン俳優が束になって出演する。大体90年代生れで子役出身が多い。マヌ・リオス(シウダレアル1998)は、俳優、歌手、モデル、9歳でデビュー、ピアノとギターが弾ける。『エリート』のパトリック役で知られているが、ミュージカルの舞台にも立っている。セクシュアリティーについては公にしていない。サンローラン、プラダ、ディオール、バレンシアガなどのモデルとして数多くの雑誌をカバーしている。米国ビバリーヒルズに本拠をおくタレント・エージェンシーWMEと正式に契約した。次回作はアイトル・ガビロンドのTVミニシリーズの犯罪ミステリー「El silencio」(8話)に出演している優良株、Netflixで配信されるようです。


(左端がマヌ・リオス)
★ジェイク保安官の青年時代を演じるジェイソン・フェルナンデスは、SFスリラー『エデンへようこそ』(22、16話)出演のほか、19世紀初頭のアンダルシアを舞台にしたエンリケ・ウルビスの「Libertad」(21)に女盗賊ラ・ジャネラの息子役で出演しており、今年公開予定のダビ・ガラン・ガリンドのコメディ「Matusalén」(仮訳「メトセラ 長寿の人」)にも主演する。共演者にアントニオ・レシーネス、ホルヘ・サンス、カルロス・アレセス、ロベルト・アラモとなんとも豪華版過ぎる。ダニエル・リベトはリュイス・ダネスの「La vampira de Barcelona」(20)他、ホラー映画に出ている。ジョゼ・コンデッサ(リスボン1997)はポルトガルの俳優、数多くのTVシリーズに出演、セルジオ・グラシアノの「O Som Que Desce na Terra」(21、仮訳「大地に降りそそぐ音」)でポルトガル映画アカデミーのソフィア男優賞ノミネート、同 Nico賞とCinEuphoria賞ほかを受賞している。4人とも今後の活躍が期待される。
*「Libertad」の作品紹介は、コチラ⇒2021年04月06日


(ダニエル・リベトとペドロ・パスカル)
ビクトル・エリセの長編4作目「Cerrar los ojos」*カンヌ映画祭2023 ― 2023年04月29日 10:13
カンヌに間に合ったエリセ監督30年ぶりの新作「Cerrar los ojos」
★長編4作目となるビクトル・エリセの「Cerrar los ojos」については、昨年7月に大まかな作品紹介をしておりましたが、秘密裏に制作しているということで、まだIMDbもアップされておらず、キャスト陣も撮影中に謎の失踪をする俳優役のホセ・コロナド、映画監督役のヒネス・ガルシア・ミリャン、立ち位置が分からないマリア・レオンの3人しかアナウンスされておりませんでした(最終的には監督役はマノロ・ソロが演じる)。カンヌを視野に入れて進行中ということでしたが、凝り性の監督ゆえ完成できるかどうか明確でなかったので、映画祭の芸術監督であるティエリー・フレモーの気配りも大変だったようです。パルムドールを競うコンペティション部門でなく、2021年新設されたカンヌ・プルミェール部門になったのが残念と言えば残念です。以下に1992年の『マルメロの陽光』後のエリセ監督のフィルモグラフィー、共同執筆者は『悪人に平穏なし』でゴヤ賞を受賞しているミシェル・ガスタンビデ、主演のホセ・コロナド、ヒネス・ガルシア・ミリャンの紹介などしています。
*「Cerrar los ojos」の記事紹介は、コチラ⇒2022年07月15日
*ビクトル・エリセのフィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2022年07月25日

「Cerrar los ojos」(映画祭タイトル「Fermer les yeux」「Close Your Eyes」)
製作:Tandem Films / Pecado Films / La mirada del adiós AIE / Pampa Films / Nautilus Films 協賛 R TVE / Movistar+/ Canal Sur / ICAA / EiTB Euskal Irrati Telebista /マドリード共同体 / アンダルシア評議会
監督:ビクトル・エリセ
脚本:ビクトル・エリセ、ミシェル・ガスタンビデ
撮影:バレンティン・アルバレス
音楽:フェデリコ・フシド
編集:アスセン・マルチェナ
美術:クル・ガラバル
音響:イバン・マリン、(ポストプロダクション)フアン・フェロ
キャスティング:ピラール・モヤ
衣装デザイン:エレナ・サンチス
製作者:クリスティナ・スマラガ、ホセ・アルバ、(エグゼクティブ)オディレ・アントニオ≂バエス
データ:製作国スペイン=アルゼンチン、スペイン語、2023年、ドラマ、撮影地グラナダのカステル・デ・フェロ、アルメリア、アストゥリアス、マドリード、クランクイン2022年10月。配給スペインはアバロン、国際はフィルム・ファクトリー独占配給
キャスト:ホセ・コロナド(失踪した俳優フリオ・アレナス)、マノロ・ソロ(ミゲル・ガライ監督)、ヒネス・ガルシア・ミリャン、アナ・トレント、マリア・レオン、ソレダード・ビジャミル、ジョセップ・マリア・ポウ、ペトラ・マルティネス、マリオ・パルド、フアン・マルガージョ、エレナ・ミケル、フェルナンド・ウスタロス(バニョス刑事)、他

(上段左から、監督、ホセ・コロナド、ソレダード・ビジャミル、
下段左から、マリア・レオン、アナ・トレント、マノロ・ソロ)
ストーリー:90年代活躍していたスペインの俳優フリオ・アレナスは、映画の撮影中に忽然と姿を消します。彼の遺体は発見されませんでしたが、警察は彼が海沿いの崖で事故にあったと結論づけます。30年もの後、謎を掘り起こすテレビ番組の結果として彼は現代に戻ってきます。彼の親友でもあるミゲル・ガライ監督が撮影した最後のシーンがスクープされます。未完成の映画の始まりと終わり。
★製作はタンデム・フィルムズ(パブロ・E・ボッシ)を介してラ・ミラダ・デル・アディオスのクリスティナ・スマラガがメインになり、アンダルシアのペカド・フィルムズのホセ・アルバとオディレ・アントニオ≂バエス、アルゼンチンのパンパ・フィルムズ、エリセ自身の制作会社ノーチラス・フィルムズが手掛けている。協賛は上記の通りですが数の多さに驚きました。
★主人公は、3年の年月をかけたプロジェクトが資金の関係で頓挫して、世界から引きこもった監督自身の分身とみなすこともできるわけです。ならば自分自身を克服するためのリベンジが必要ではないでしょうか。詳細は分かりませんが、マノロ・ソロがエリセの特殊なバージョンを演じるようなので、興味がそそられます。他に『海を飛ぶ夢』で神父役のジョセップ・マリア・ポウ、『だれもが愛しいチャンピオン』でソーシャルセンターの責任者を演じたフアン・マルガージョのベテラン演技派が脇を固めています。
★女性陣はオール立ち位置が目下分かりませんが、『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』のマリア・レオン、アルゼンチンからは『瞳の奥の秘密』や『偽りの人生』のソレダード・ビジャミル、『マリアの旅』でフェロス主演女優賞を受賞したペトラ・マルティネス、彼女はマルガージョと結婚しており、別れていなければ夫婦で出演していることになる。そしてアナ・トレントのクレジットは、私たちを彼女の子供時代に引き戻し、『ミツバチのささやき』の美しいシーンを思い出させる。

(撮影中のエリセ監督とアナ・トレント)
ビリャロンガの遺作「Loli tormenta」*母へのオマージュ ― 2023年04月22日 18:45
アグスティ・ビリャロンガを偲ぶ会に集まった仲間たち
★3月30日、バルセロナのカタルーニャ・フィルモテカで、アグスティ・ビリャロンガを偲ぶ会がもたれました。遺作となった監督初のコメディ「Loli tormenta」の公開前日にチョモン・ホールで開催され、家族、友人、仲間が思い思いに故人の思い出を語りました。カタルーニャ自治州政府の文化大臣ナタリア・ガリガ、カタルーニャ映画アカデミー会長ジュディス・コレルも出席して開催された。コレル会長はフレンドリーでいつも周りを笑顔にしたアグスティについて「若いころはとてもハンサムだったのですよ」と、映画館に掲げられていた「Tras el cristal」の看板の写真に見とれて追突事故を起こした逸話を語った。

(アグスティ・ビリャロンガ)
★女優ロザ・ノベルが癌に倒れる直前を記録した中編ドキュメンタリー「El testament de la Rosa」(15、46分、仮題「ロザの遺言」)が上映されました。フィルモテカ館長エステベ・リアンバウが本作上映を選んだ理由について口火を切りました。本作は「病気との闘い」という側面と、長靴を履いたまま死ぬ、つまり「殉職する、または戦死する」という側面があり、「元気づけるものではありませんが、今宵にふさわしいと考えた。それは『El testament de la Rosa』がアグスティでもあるからです」と語った。デビュー作「Tras el cristal」(88)を選ぶこともできたが、目下デジタル化の過程にあり、新しいものは別の機会に上映されるようです。

(「El testament de la Rosa」のロザ・ノベル)
★ビリャロンガの妹パウラ・ビリャロンガは、大の映画ファンで息子を映画界に手引きした兄妹の父親、デビュー作公開を目前にして亡くなった父親からの手紙を披露した。『ブラック・ブレッド』やTV映画「Després de la pluja」出演の女優マリナ・ガテル、映画監督のロザ・ベルジェス、撮影監督ジョセップ・マリア・シビトやジャウメ・ペラカウラ、「El ventre del mar」や遺作の音楽を手がけた作曲家マルクスJGRは、監督が「まだ去っておらず、次の映画に私を呼ぶだろう」と語った。1978年にバルセロナの公立舞台芸術学校である演劇研究所でアグスティと一緒に学んだ2人のクラスメート、エウラリア・ゴマとセスク・ムレトは、ビリャロンガは「たちまち頭角をあらわした」とスピーチした。
ぶっつけ本番で撮影された、残された時間との闘い
★前置きが長くなりました。遺作「Loli tormenta」の作品紹介と主役ロリを演じたスシ・サンチェスのインタビュー記事を交えてアップします。既に癌に冒されていた監督に残された時間は僅かでしたが、皆にさよならを言う前にどうしても完成させたかった。監督は化学療法を一時中断して撮影に臨んでおり、健康状態は最悪だった。死後公開となった本作は、これまでの作品とは想像もできないほどの甘酸っぱい家族コメディで、去る3月31日封切られました。本作は娘が亡くなって、血縁関係のない2人の男の孫を育てることになったアルツハイマーの兆候が現れ始めたハッスルお祖母さんの物語です。

「Loli tormenta」(「3.000 obstáculos」)2023年
製作:3000 obstáculos A.I.E. / Crea SGR / Irusoin / Vilaüt Films / Film Factory Entertainment 協賛カタルーニャ自治州文化省 / ICAA / RTVE / TV3 / Movistar+、他
監督:アグスティ・ビリャロンガ
脚本:アグスティ・ビリャロンガ、マリオ・トレシーリャス
音楽:マルクスJGR
撮影:ジョセップ・マリア・シビト
編集:ベルナト・アラゴネス
キャスティング:イレネ・ロケ、(アシスタント)カルメン・ロペス・フランコ
プロダクション・デザイン:スザンナ・フェルナンデス、ジョルディ・ベラ
衣装デザイン:パウ・アウリ
メイクアップ&ヘアー:(ヘアー)クリスティナ・カパロス、(メイク)アルマ・カザル
製作者:フェルナンド・ラロンド、アリアドナ・ドット、ハビエル・ベルソサ、トノ・フォルゲラ、アンデル・サガルドイ、アンデル・バリナガ≂レメンテリア、(エグゼクティブ)マルタ・バルド
データ:製作国スペイン、スペイン語、2023年、コメディドラマ、94分、撮影地バルセロナの各地、2022年夏。配給キャラメル・フィルムズ、ユープラネット・ピクチャーズ、国際販売フィルム・ファクトリー、 公開スペイン2023年3月31日
キャスト:スシ・サンチェス(ロラ、ロリ)、ジョエル・ガルベス(孫ロベルト)、モル・ゴム(孫エドガー)、シャビ・サエス、ペパ・チャロ(ロッシおばさん)、セルソ・ブガーリョ(銀行家の父親トマス)、フェルナンド・エステソ(ラモンおじさん)、メテオラ・フォンタナ(ピラール)、カルメン・ロペス・フランコ(受付係)、ブランカ・スタル・オリベラ(トラム乗客)、マリア・アングラダ・セリャレス(リネト)、ほか
ストーリー:現代的で少し混沌が始まっているロラは、数年前に亡くなった娘の子供エドガーとロベルトを引き取ります。3人はバルセロナの郊外にある質素な家に住んでおり、彼らの静かな生活が劇的に変化すると疑うものは何もありません。ロラにアルツハイマー病の進行が顕著になってきますが、再び引き離されて里親に預けられることを望まない孫たちは、周りに病気の進行を隠すための素晴らしい創意工夫と溢れるファンタジーを凝らして世話をします。孫が祖母を世話するという逆転が起きてしまいます。元アスリートとして名声を博したロラは、陸上競技会出場のロベルトのように3000障害物レースに出場することになるでしょう。エキサイティングで謙虚な甘酸っぱい家族コメディ。

(左から、ロベルト、ロラ、エドガー)
★デビュー作「Tras el cristal」の公開直前に死去したという監督の父親は、15歳でスペイン内戦に引きずり込まれたという。その後血縁関係のないパルマでお針子をしていたロラ叔母さんに引き取られている。彼女がロリの人格造形に何か投影されているのだろうか。また監督より1年前に亡くなったという母親もアルツハイマー病だったことから、母親へのオマージュの側面もあるようです。老齢、死、アルツハイマー病、移民問題、エネルギー貧困、不動産投機、社会から孤立した人々など盛りだくさんな社会批判が盛り込まれている。しかし遊び心があり、あかるさに満ちた、いたずらっぽい作品に仕上がっているようです。その多くは主役ロラを演じたスシ・サンチェス(バレンシア1955)に負っている。彼女はラモン・サラサール『日曜日の憂鬱』でゴヤ賞2019主演女優賞、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」で助演女優賞を受賞したばかりです。現在スペイン映画アカデミー副会長です。

(ゴヤ賞助演女優賞のスシ・サンチェス、ゴヤ賞2023ガラ)
「ロリは考えない」従って「あなたも考えない」と監督
★以下の記事は、バルセロナに本部をおく「ラ・バングアルディア」紙との電話インタビューの抜粋です(4月3日)。サンチェスはクラウディア・レイニッケの「Reinas」の撮影でペルーからマドリードに戻ってきたばかりでした。
Q: 本作出演の経緯についての質問(女優はビリャロンガ作品は初出演)。
A: 以前から彼と一緒に仕事をしたいと夢見ていました。その贈り物が幸運にも届きましたが、彼の健康状態はひどいものでした。不平を言いませんでしたが、彼のような苦しみを見るのは辛かった。撮っている作品はコメディですから、監督の苦しみから切り離すのが困難でした。気温が40度、狭い部屋での撮影、リハーサルをする時間がなく、アグスティはそのことを私に詫びました。私たちに「ノー」はなく、常に「イエス」、その場でキャラクターを作りました。しかし、私はこの経験から多くを学んだのです。
Q: 監督とはどのように出会ったのですか。
A: 監督は次の映画(本作のこと)の主役が病気で出演できなくなり、代わりを緊急に見つける必要があった。共通の友人が私に会いに行くよう勧めたので、バルセロナのD'A映画祭上映の「Cinco lobitos」を見に来ました。少し話し合った後、私は彼に都合のつく時間があるから待ってほしいと言いました。脚本を読んで一緒に彼と旅をしたかったのです。今まで自分が演じてきた役柄とかけ離れていましたが、コミックのような役柄をした経験もあり、(ロリは)私を大いに魅了しました。二人の間に発見もあり、私は任せることにしたのです。
Q: 祖母役が多くなっていますが、主人公に最も惹かれたところは何でしょうか。
A: 幾つになったら、私の番になる(笑)。シェイクスピアからジュリエット役をもらえるとは思いません。もっともシニア版ならあり得ますが! ロリの魅力は、人生を前進させる能力です。ロリは「考えない女性」です。それは純粋な衝動であり、前進する生存本能です。スポーツと人生の挑戦を乗り切ることには似ているところがあり、人生への愛や物事の純粋さに対する大きな能力に惹かれました。彼女がいかに正直で、子供たちを心から世話していたか、実際ロリは闘士なのです。そして重要なのはアグスティが生きていた瞬間だったということです。

(撮影中の監督とサンチェス、2022年盛夏)
Q: あなたの人生でロリと同じくらい多くの困難に直面したでしょうか。
A: もちろん皆さんと同じです。人生は誰にとっても次々に問題が降りかかります。ロリは考えずに先に進みます。それはその瞬間を生きるよう私に教えてくれました。誰にとっても教訓だと思います。
監督が私たちに伝えたかったこと
Q: 本作はアルツハイマー病がテーマの一つになっています。
A: アルツハイマー病はすべてにおいて異なります。私はアルモドバルの『ジュリエッタ』でアルツハイマー病の女性をやりましたが、本作とは別のタイプでした。私の母親は人生の最後の3年間をホームにいましたので以前からこの病気の知識がありました。ホームで出会うアルツハイマー病の症例はそれぞれ違っておりました。監督の母親も患っていたので、彼の見解が大いに役立ちました。私たちの身近にある病気であり、これについて話したかった。一方には役に立たない要素としての老人ドラマや子供ドラマがあり、それは社会が私たちをそのように見ているからです。なぜなら高齢者はもはや成果を生み出せない、子供はまだ生み出していないからです。これについては否定したい、ここでは何が起こるかはユーモアで語られます。コメディの要素を加えたドラマです。まだ完成版を観ておりませんが、光の扱いは明るく、アグスティが指示したトーンも明るいものでした。彼は人生がもつ価値について希望に満ちたかたちで語りました。それが彼の伝えたかったことなのです。
Q: ベテランと新人をミックスしたキャスト陣についての質問。
A: アグスティは仲間のプロの俳優を呼びました。フェルナンド(・エステソ、ラモンおじさん)とは既に仕事をしていて、彼らは友達でした。一方子供たちはカメラの前に立つのは初体験で集中させるのが難しかった。しかし私とは最初から馬が合いました。私は二人に登場人物の名前で呼ぼうと提案しました。私のことをスシ以外のヤヤ(おばあちゃん)、ロリ、アブ(祖母abuela)など好きに呼んでいいと彼らに伝えました。まるでゲームのようでした。

(ラモンおじさん役のフェルナンド・エステソ、フレームから)
Q: あなたはロリと同じようにアスリートでしたか。
A: まさか! 若いころは陸上競技が好きでしたが、最近はスポーツをしておりません。最後にやったのが卓球です(笑)。

(ゴールのテープを切るロリ)
Q: 監督とお別れができたかどうかの質問。
A: 撮影終了後、中断していた化学療法を再開していたマドリードで会いました。フィルム編集はほぼ終わっていて、完成して直ぐ亡くなりました。それは信じられないほどの努力でした。私はマドリードで別れを告げました。彼に感謝し抱擁しました。私の演技がどうだったかより、彼の状態が心配でした。撮影中は楽しい時間を過ごせました。彼は生き生きとして、物事をじっくり説明し、模範を示し、皆を巻き込んでしまいました。
★ラ・バングアルディア紙以外のインタビュー記事も何紙か読みましたが、なかでこれが一番纏まっておりました。冒頭のシーンで祖母と孫が一緒に歌うバスクの子守歌「Cinco lobitos」が流れるようですが、上述したようにサンチェスは、同じ名前の映画「Cinco lobitos」に祖母役で出演していました。偶然の結果そうなったということです。脚本は映画より前に書かれたもので、サンチェスは「脚本を読んだとき偶然以上の前兆のようなものを感じた」と語っています。
★共同執筆者のマリオ・トレシーリャス(バルセロナ1971)が、本作をベースにしたコミック版 “Loli tormanta” を上梓、3月30日に書店の棚に並びました。彼は作家兼脚本家、またテコンドーのフライ級元チャンピオン、バルセロナ県サン・クガのスペインチームのメンバーでした。その後、広告ディレクター、映画とコミックの脚本家など幾つもの職業を経て、4年間「エル・ペリオディコ」のコラムニストでした。2008年、世界中の子供たちと一緒にアニメーションを制作するプロジェクト「PDA-films」を設立、国際コンペティションでも受賞しています。2009年、グラフィックノベル “Santo Cristo”、2010年 “El hijo”、2015年 ”DreamTeam” は現在フランスで映画化が検討されているということです。2019年には ”El original” が出版された。

(“Loli tormanta”の表紙)
★キャスト紹介:フェルナンド・エステソは、ビリャロンガの「Incerta glòria」に出演、どちらかというと映画より脇役としてTV出演が多い。2017年アルフレッド・コントレラスの「Luces」で刑事役を演じ、ラティノ賞2018男優賞を受賞した。盟友ビリャロンガとカルロス・サウラを立て続けに失い、ゴヤ賞短編ドキュメンタリー賞のプレゼンターを務めた折には、あちらの二人に向けて「もう直ぐそちらに行くから、映画撮るなら私の役も忘れないでくれよ」と語りかけた。
★もう一人のベテランセルソ・ブガーリョ(ガリシアのポンテベドラ1947)の一番知名度のある映画はアメナバルの『海を飛ぶ夢』でしょうか。彼は主人公の父親役でゴヤ賞2005助演男優賞を受賞した。他にフェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』や「El buen patrón」、ホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』、マヌエル・ウエルガの『サルバドールの朝』など、字幕入りで見られる映画に出演している。

(父親トマス役のセルソ・ブガーリョとスシ・サンチェス)
★女優陣では、ロッシおばさん役のぺパ・チャロ(マドリード1977)は、ビリャロンガの『アロ・トルブキン』、TVムービー「Carta a Eva」に出演している。ピラール役のメテオラ・フォンタナ(ベローナ1958)は、『ハウス・オブ・フラワーズ:ザ・ムービー』(Netflix)、『バルド』など。今回女優とキャスティングを掛け持ちしているカルメン・ロペス・フランコはキャスティングに軸足をおいているようです。

(スシ・サンチェス、ペパ・チャロ、後方フェルナンド・エステソ)
★カタルーニャとバスクの仲間が参加した本作が、いずれ本邦でも鑑賞できることを願っています。アグスティ、あなたがいなくなっても、他の人があなたの映画を守ります。じゃ、またね。
セクション・オフィシアル(コンペ部門)⑤*マラガ映画祭2023 ⑧ ― 2023年03月14日 15:43
17)Una vida no tan simple(仮題「それほど容易でない人生」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地・期間2021年末にビルバオ
監督紹介:フェリックス・ビスカレト、1975年パンプローナ生れ、監督、脚本家、製作者。2007年「Bajo las estrellas」で長編デビュー、マラガ映画祭金のビスナガ作品賞受賞作品、ビスカレトも銀のビスナガ監督賞、第1作脚本賞を受賞、ゴヤ賞2008では脚色賞を受賞した。2022年「No mires a los ojos」は、バジャドリード映画祭PIC賞とシネマ・ライターズ・サークル賞にノミネートされている。2020年バスク語のTVシリーズ「Patria」(8話)のうち4話を手がけている。ドキュメンタリー『サウラ家の人々』(17)などでキャリアを紹介しています。
*監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2017年11月11日/2020年08月12日


(ビスカレト監督以下主演者たち、マラガ映画祭2023フォトコール)

(デビュー作「Bajo las estrellas」ポスター)
キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(知人ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア
ストーリー:40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが放課後遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしています。どこにいても自分がいるべき場所にいないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ、幼い頃の子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しています。イサイアスはいつもへとへとの生活のなかで、別の子供の母親であるソニアと友情を深めますが、彼女は子供を育てて大人の生活に送り込むのは、それほど簡単でないことを彼に教えます。40代父親の危機が語られる。

(イサイアスとソニア)

(イサイアスとニコ)

18)Unicorns(Unicornios 仮題「ユニコーン」)
データ:製作国スペイン、2023年、ドラマ、93分、カタルーニャ語・スペイン語、字幕上映、長編映画デビュー作。脚本を監督と『スクールガールズ』のピラール・パロメロほかが共同執筆、同じく製作をバレリー・デルピエールが手がけている。
監督紹介:アレックス・ロラ・セルコス、1979年バルセロナ生れ、監督、脚本家、フィルム編集者、ニューヨークを拠点にしている。バルセロナのラモン・リュユ大学で映画製作、脚本、演出の学位を取得、2011年フルブライト奨学生として渡米、シティ・カレッジ・オブ・ニューヨークでメディアアート・プロダクションを修了、オスカー学生アカデミー賞の最終候補になった。数多くの映画祭に参加、特にニューヨーク・エミー賞を受賞、サンダンスFF公式出品2回、ガウディ賞の受賞歴がある。2014年バラエティのカンヌ・エディションで注目すべき有望な監督トップテンに選ばれ、ベルリナーレ・タレントキャンパス、カンヌ・ショート・フィルム・コーナーには3回参加している。受賞歴はトータルで76賞と驚異的な数字である。
*主なフィルモグラフィーは、2011年ドキュメンタリー短編「Odysseus’Gambit」は、サンダンス映画祭ノミネート、2013年の同「Godka Cirka」もサンダンスFF、その他マラガFFに出品され、ガウディ賞2014短編賞を受賞している。2015年長編ドキュメンタリー「Thy Father’s Chair」、2019年同「El cuarto reino」(The Fourth Kingdom)は、グアダラハラ映画祭2019イベロアメリカ部門受賞、ガウディ賞2020ドキュメンタリー賞受賞、フェロス賞にノミネートされた。


(ドキュメンタリー「El cuarto reino」のポスター)
キャスト:グレタ・フェルナンデス(イサ)、ノラ・ナバス、エレナ・マルティン、パブロ・モリネロ、ソニア・ニニャロサ、アレハンドロ・パウ、リディア・カサノバ、ホルヘ・カブレラ、アグスティン・スリバン、ほか
ストーリー:イサはすべてをもっている。それは知性であり、美しさであり、自信です。フェミニストでコミットすることを拒否するポリアモリーのイサは、情熱をもって自分の人生を守っている。ギレムが一夫一妻のカップルになることを提案したとき、自分の人生を変えたいかどうか確信がもてず決定できない。ギレムは二人の関係を壊すことにした。外見と快適さの世界に住んでいると、矛盾がはっきりし、宇宙はネットワークがなったウェブでの好き嫌いやモラルの判断が打撃を受け崩壊してしまう。

(イサ役のグレタ・フェルナンデス)

(ノラ・ナバス)

19)Upon Entry(La llegada 仮題「入場」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、74分、英語、字幕上映、共に長編デビュー作。タリン・ブラックナイツ映画祭FIPRESCI賞受賞(2022年11月)、コルカタ映画祭ゴールデンロイヤル・ベンガルタイガー賞受賞(2022年)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭(2023年3月)、公開スペイン6月16日予定
監督紹介:アレハンドロ・ロハス、1976年ベネズエラのカラカス生れ、監督、脚本家、フィルム編集。映像ジャーナリストとして、カンヌ、ベネチア、ベルリン、トロント、サンダンスなど各映画祭で取材している。HBO、Netflix、などの仕事をしている。本作で監督デビューした。
フアン・セバスティアン・バスケス、1981年カラカス生れ、HBOのコピー製作者としてキャリアをスタートさせる。撮影監督としてカルレス・トラスの「Callback」を手がけ、本作はマラガFF2016の作品・脚本・男優賞(マルティン・バシガルポ)を受賞している。2020年には同監督の「El practicante」で再びタッグを組んだ。『パラメディック~闇の救急救命士』の邦題でネットフリックスが配信した。またシッチェスFF2020のニュービジョン部門の審査員を務めている。
*「Callback」の作品紹介は、コチラ⇒2016年05月03日

(アレハンドロ・ロハス)

(フアン・セバスティアン・バスケス)
キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル、ラウラ・ゴメス、ジェラルド・オムス(旅客)
ストーリー:ベネズエラの都市計画家であるディエゴとバルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナは、プロとしてのキャリア向上、チャンスの地で家族を作ることにする。新生活を始めるにあたって米国の正式なビザを取り移住することにした。ところがニューヨーク空港の入国審査場に入ると、二人は二次検査室に連れていかれた。待ち受けていた2人の国境警備員が検査プロセスと心理的に激しい尋問をかけ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないかと発見に務めます。

(ディエゴとエレナ)

(二人を尋問する国境警備員)

20)Zapatos rojos(Red Shoes 仮題「赤い靴」)
データ:製作国メキシコ=イタリア、2022年、スペイン語、ドラマ、83分、長編デビュー作、第79回ベネチア映画祭2022公式出品、モロッコ・マラケシュFF(2022)、インド・ゴアFF(2022)、米国サンタバーバラFF(2023)、ブルガリア・ソフィアFF(2023)、その他モレリアFF、サンディエゴFF出品
監督紹介:カルロス・アイチェルマン・カイザー、1980年サンルイス・ポトシ生れ、監督、製作者、脚本家。マドリードで映画監督と製作を学んだ。2006年から2010年までTVシリーズのプロデュースをする。2011年製作会社「Wabi Productions」設立、2016年トリシャ・ジフ監督の長編ドキュメンタリー「The Man Who Saw Too Much」を製作、アリエル賞を受賞した。2018年マイケル・ロウの文学ワークショップで「赤い靴」の脚本を執筆した。同年「Feral」の製作に参画し、ロスカボス映画祭2018で受賞、2021年EFICINEの援助をを受け、デビュー作を監督した。

キャスト:エウスタシオ・アスカシオ(アルテミオ)、ナタリア・ソリアン(ダミアナ)、ファニー・モリーナ(アレハンドラ)、ロサ・イリヌ・エレーラ(ルベン)
ストーリー:年配の農民アルテミオは、メキシコ山地の忘れられた村で暮らしている。首都から娘の訃報という衝撃的なニュースが届くまでは、彼の人生はゆっくりと順調に進んでいた。彼は贖罪を求めて町に出発する決心をしますが、残忍で未知の世界に踏み出したことに気づきます。



セクション・オフィシアル(コンペ部門)④*マラガ映画祭2023 ⑦ ― 2023年03月12日 17:58
13)Rebelión (仮題「反乱」)
データ:製作国コロンビア=アルゼンチン=アメリカ、スペイン語、2022年、伝記、105分、タイトルはジョー・アロヨのシンボリックな曲から採られた。長編映画3作目、ボゴタ映画祭2022(10月)、タリン・ブラック・ナイト映画祭2022(11月)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023(3月)、マラガ映画祭(3月)正式出品、公開ペルー2022年11月
監督紹介:ホセ・ルイス・ルヘレス・グラシア、監督、脚本家、製作者。TVシリーズ、映画、コマーシャルなど25年以上のキャリアのある制作会社「Rhayuela Films」設立、長編フィルモグラフィーは、2010年「García」、2015年「Alias María」は、カンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミアされ、ハイファ映画祭2015国際部門のカルメル賞、フリボーグ映画祭2016エキュメニカルを受賞、アカデミー賞コロンビア代表作品に選ばれた。新作については「古典的なミュージカルを期待しないでください」と監督。


(第2作「Alias María」のポスター)
キャスト:ジョン・ナルバエス(ジョー・アロヨ)、マルティン・シーフェルド(ウモ)、アンジー・セペダ(メアリー)、フアン・ミゲル・パエス、グスタボ・ガルシア、エドガー・キハダ、アルマンド・キンタナ、ロジェ・デュグアイ
ストーリー:本作は、コロンビアの歴史上おそらく最も重要な傷つきやすい無名のサルサ歌手ジョー・アロヨが、人生のさまざまな瞬間と空間を超越した旅を切り取っている。音楽の天才、シンガーソングライターであるジョーの音楽とその独特な声は、ステージに収めることができなかった。1970年代のサルサ全盛期のリーダーであるアロヨの音楽への献身、孤独、狂気、さまざまに交錯した感情、混沌が描かれる。



14)Saudade fez morada aqui dentro (英題「Bittersweet Rain」)
データ:製作国ブラジル、2022年、ポルトガル語、字幕上映、ドラマ、107分、長編映画2作目(単独では1作目)、第37回マル・デル・プラタ映画祭2022で作品・監督賞を含む4冠を制した。
監督紹介:ハロルド・ボルヘス、監督、脚本家、撮影監督、フィルム編集者。制作会社 Plano3 Filmsのメンバー。ドキュメンタリー「Jonas e o circo sem lona」(15「Jonas and the Backyard Circus」)は、IDFAでプレミアされ、トゥールーズ映画祭2019観客賞を含む13冠、長編デビュー作「Filho de Boi」(「Son of Ox」)はエルネスト・モリネロと共同で監督した。釜山、グアダラハラ映画祭に出品され、マラガ映画祭2019ソナシネ部門の銀のビスナガ観客賞を受賞している。

(トロフィーを手にしたハロルド・ボルヘス、マル・デル・プラタFF2022にて)

(デビュー作「Filho de Boi」のポスター)
キャスト:ブルーノ・ジェファーソン、アンジェラ・マリア、ロナルディ・ゴメス、テレーナ・フランサ、ウィルマ・マセド、ヘラルド・デ・デウス、ビニシウス・ブスタニ
ストーリー:ブラジル内陸部の小さな町に住んでいる若者は、変性眼疾患のため徐々に視力を失う危険に直面している。視力が衰えるにつれ、片思いだった初恋に混乱し、別の目で人生を見る方法を学ばねばならなくなる。父親のいない15歳の若者の棘のある思春期が描かれる。



15)Sica (仮題「シカ」)
データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、ドラマ、90分、ベルリン映画祭2023ジェネレーション14 plus でプレミアされた。

(左から、ヌリア・プリムス、スビラナ監督、ほか主演者たち、ベルリンFF 2023)
監督紹介:カルラ・スビラナ、1972年バルセロナ生れ、監督、脚本家、10年の教師歴。スペイン内戦で反フランコ派の祖父が、1940年死刑に処され、女性3世代の家族の中で育つ。映画ファンの祖母の影響で映像の世界に入る。ドキュメンタリーとフィクションのあいだを行き来した最初のドキュメンタリー「Nadar」(08、カタルーニャ語)は史実と個人的な記憶についての自伝的要素をもっている。ロッテルダム映画祭で上映され、ガウディ賞2009にノミネートされた。3人の共同監督ドキュメンタリー「Kanimambo」(スペイン語・カタルーニャ語・ポルトガル語)はマラガ映画祭2012で審査員のスペシャル・メンションを受賞している。同「Volar」(12、スペイン語)はセビーリャ・ヨーロッパ映画祭に出品された。短編映画「Atma」(16、9分)は、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭、D'A映画祭に出品され、Fiver 17でナショナル・ダンス賞を受賞した。創造性ワークショップで後進を指導している。


(ドキュメンタリー「Nadar」のカタルーニャ語版ポスター)
キャスト:タイス・ガルシア・ブランコ(シカ)、ヌリア・プリムス(母親カルメン)、マリア・ビジャベルデ・アメイヘイラス(レダ)、カルラ・ドミンゲス、ルーカス・ピニェイロ(シモン)、マルコ・アントニオ・フロリド・アニョン(スソ)、ロイス・ソアシェSoaxe(エル・ポルトゲス)、マリア・デル・カルメン・ヘステイロ(教師)、ほか多数
ストーリー:14歳になるシカは、ガリシアのコスタ・ダ・モルテで難破した父親の遺体を海が戻してくれることに取りつかれている。崖に沿って歩いているとき、シカはストームハンターだという15歳の風変わりな少年スソと知り合います。彼女は事故の状況を調査し、苦痛を伴う発見の旅に乗り出します。彼女の目にうつるのは、自分が育った漁村が海の残酷さとアンバランスな自然の増大によって特徴づけられている所であること、それが決して以前のように戻らないということでした。ガリシアの海の沈黙、失ったものへの強迫観念、父親の不在による無力感と悲しみ、夫や父親の死に対する諸々が女性キャラクターの視点で語られる。事実にインスパイアされている。

(シカとカルメン)

(シカとスソ、フレームから)

16)Tregua(s) (仮題「休戦」)
データ:製作国スペイン、2023年、スペイン語、コメディ・ドラマ、90分、撮影地マドリード、長編デビュー作
監督紹介:マリオ・エルナンデス、1988年カスティーリャ・ラ・マンチャのアルバセテ生れ、監督、脚本家、戯曲家、舞台演出家。アリカンテのシウダード・デ・ラ・ルス・スタジオで監督の学位を取得する。2015年短編「A los ojos」で監督デビュー、アルバセテのABYCINEの短編映画賞、マドリード市のヤング・クリエーターズ賞を受賞、2016年「Por Sifo / Slow Wine」はバジャドリード映画祭で短編賞を受賞、2017年、難民危機に関連する詩人ミゲル・エルナンデスのオマージュ「Vientos del pueblo Sirio」(20分)をギリシャのレスボス島で撮影、2020年フリオ・コルタサルの作品にインスパイアされた「Salvo el crepúsculo」は、バジャドリード映画祭のSEMINCI Factoryの脚本賞を受賞した。舞台演出家兼戯曲家としても活躍、カラモンテ賞を受賞するなどしている。現在、RNEのラジオ・プログラムの作成者およびコーディネーターです。


(左から、ブルーナ・クシ、監督、サルバ・レイナ、マラガFF2023のフォトコール)
キャスト:サルバ・レイナ(エドゥ)、ブルーナ・クシ(アラ)、アブリル・モンテージャ(シルビア)、ホセ・フェルナンデス(ダビ)、マルタ・メンデス(アリシア)
ストーリー:アラとエドゥは、新人の女優、脚本家だった10年間、恋人同士でした。二人の〈公式な〉関係とは別に、一緒にいるときは常にオアシスを見つけています。現在、二人ともそれぞれ別のパートナーと暮らし、かなり深刻な関係になっています。お互いに会わずにいた1年後、映画祭を利用して再会しますが、この切望した〈休戦〉でさえ、彼らの実生活を支配する嘘と郷愁から解放されることはありません。


セクション・オフィシアル(コンペ部門)③*マラガ映画祭2023 ⑥ ― 2023年03月08日 17:24
9)La pecera (仮題「金魚鉢」)
データ:製作国プエルトリコ=スペイン、2023年、スペイン語、ドラマ、92分、長編デビュー作、本作のプロジェクトはハバナ映画祭の未発表脚本に対するサンゴ賞、トライベッカ基金、マラガFFのMAFIZ でEAVE賞を受賞している。サンダンス映画祭2023ワールド・コンペティション部門正式出品、ヨーテボリ映画祭デビュー作部門出品、公開スペイン4月21日

(主役のイセル・ロドリゲスと監督、サンダンス映画祭2023にて)
監督紹介:グロリマー・マレロ・サンチェス、1978年プエルトリコのバランキータス生れ、学際的な映画製作者でアーティスト。テーマはアイデンティティ、植民地主義、ジェンダー問題に関連している。シカゴ大学とマサチューセッツ現代美術館のアーティスト・イン・レジデンス、プリンストン大学ラテンアメリカ研究プログラムの客員アーティストに選ばれている。フィルモグラフィーは、2013短編「Tokio」、2016「Todavia」と「Biopsia」、2017「Revuelo en la Roosvelt」、2018年ドキュメンタリー「Juana(s) matos」を撮っている。

キャスト:イセル・ロドリゲス(ノエリア)、モデスト・ラセン、カローラ・ガルシア、ヘオルヒナ・ボッリ、アナミン・サンティアゴ、マキシミリアノ・リバス、マガリ・カラスキーリョ、ナンシー・ミリャン
ストーリー:癌が進行するにつれ、治療を望まないアーティストのノエリアは、生れ故郷のビエケス島に戻ろうと決心する。自身の運命を決断するために自由になることが必要だった。彼女は60年間にわたる軍事演習のためアメリカ海軍が残した汚染処理に携わっている友人や家族と再会することになる。



10)Las buenas compañías (仮題「親切な仲間」)
データ:製作国スペイン=フランス、2023年、スペイン語、ドラマ、93分、撮影地サンセバスティアン、バスク自治州から資金提供を受けている。公開スペイン5月5日予定
監督紹介:シルビア・ムント、1957年バルセロナ生れ、女優、監督、脚本家、舞台演出家。女優として50作以上の映画に出演、なかでもフアンマ・バホ・ウジョア監督の「Alas de mariposa」(蝶の羽)主演でゴヤ賞1992主演女優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞を受賞した。ほかに1989モンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』、ペドロ・オレアの「Akelarrre」(84)など。女優レティシア・ドレラの監督デビュー作、コメディ「Requisitos para ser una persona normal」(15)を最後に監督に専心する。


(ゴヤ賞主演女優賞のシルビア・ムント、1992年)
*TVムービーを含む監督フィルモグラフィーは、1999年に短編ドキュメンタリー「Lelia」で監督としてのキャリアを始め、翌年ゴヤ賞2000短編ドキュメンタリー賞を受賞、2001年「Quia」で長編デビュー、2004年長編ドキュメンタリー「Gala」がトゥデラ・オペラ・プリマ映画祭で受賞、TVムービー「Coses que passen…」(06)でマラガFF 2006 TVムービー部門観客賞、バルセロナ映画賞を受賞した。「Pretextos」はマラガFF 2008 銀のビスナガ監督賞を受賞した他、トゥールーズFF、カルロヴィヴァリFFなどに出品。TVムービー「Mentiders」(12)、同「El Café de la Marina」(14)、2015年ドキュメンタリー「La Granjas del Pas」(カタルーニャ語)は、バジャドリード映画祭でプレミアされ、ドキュメンタリー賞を受賞ほか、ガウディ賞にノミネートされた。
キャスト:アリシア・ファルコ(ベア)、エレナ・タラッツ(ミレン)、イツィアル・イトーニョ(フェリ)、アイノア・サンタマリア(ベレン)、マリア・セレスエラ(トト)、ナゴレ・セニソ(アスン)、イバン・マサゲ(ラファ)、イツィアル・アイスプル(サグラリオ)ほか
ストーリー:1976年の夏、16歳のベアは、スペイン全土が騒然として怒涛の変化をしているなか、フェミニストの大義を目に見えるようにと、尊厳ある中絶の権利を要求する女性グループに協力していた。この血がたぎるような反逆の行為は、予想もしない感情とごちゃ混ぜになっていた。それはベアが少し年上の良家の女の子ミレンと非常に特別な友情を築くからです。その夏起きたことがベアの人生を決定的に変えてしまうでしょう。実際の出来事に基づいている。


11)Las hijas (仮題「娘たち」英題「Sister & Sister」)
データ:製作国パナマ≂チリ、2023年、スペイン語、ドラマ、80分、撮影地パナマ、長編デビュー作(監督・脚本・製作)、マラガと同時期開催のSXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭グローバルセクション出品され、3月1日ワールドプレミアされる。
監督紹介:カティア・G・スニィガ、パナマ系コスタリカ人、監督、脚本家、女優、製作者。コスタリカ大学で理学療法とオープンダンスの学位を取得、女優としてスタートした。アレホ・クリソストモ監督の「Nina y Laura」(15)に主演、イカロ・シネ・ビデオ映画祭で女優賞と美術監督賞を受賞、ほかパス・ファブレガの「Viaje」(15)に主演、さまざまな視聴覚プロジェクトで製作や女優として活躍。2012年短編「Es Cecilia」(23分)で監督デビューした。2017年に「Cosas que no se rompen」(14分)、2019年にはクリソストモのSF「Live Cinema Astronauta Fantasma」に主演、脚本も執筆した。「Las hijas」ではクリソストモが製作と撮影を手がけている。

キャスト:アリアナ・チャベス・ガビラン(マリナ17歳)、カラ・ロセル・カンポス(ルナ14歳)、フェルナンド・ボニーリャ、ミラグロス・フェルナンデス、ほか
ストーリー:夏休み、マリアナとルナの姉妹は、コスタリカからパナマに、不在の父親を探す旅に出る。二人の間に時おり吹きだす軋轢に対処しながら、彼女たちの望み、新しい友情、恋人、スケートボードを楽しむ空間を見つけだす。ただぶらぶらと時間をつぶすことの長所を学びながら自分たちを解放していく旅であった。熱帯地方の町で姉妹愛を深める親密で愛情のこもった物語であり、多感な青春時代の深遠な肖像画でもある。監督の半自伝的な要素を盛り込んでいる。



12)Matria (仮題「マトリア」)
データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、社会派ドラマ、99分、長編映画デビュー作、脚本も執筆、ベルリン映画祭2023パノラマ部門でプレミアされた。2017年の短編と同じタイトル。
監督紹介:アルバロ・ガゴ、1986年ガリシア州のビゴ生れ、監督、脚本家。バラエティ誌のスパニッシュ・タレント、スクリーン・インターナショナル誌のトゥモロー・スターに選出されている。ポンテベドラで視聴覚コミュニケーションと音楽、シカゴで演劇、ロンドン映画学校で映画を学び、2013年卒業。卒業制作の短編「Curricán」がマラガ映画祭2013に出品された。2017年「Matria」を撮り、ゴヤ賞2018短編映画部門にノミネートされ、サンダンス映画祭審査員賞を受賞、続いて「16 de decembro」もゴヤ賞2019にノミネート、ロカルノ映画祭で上映された。現在、長編2作目「Posto alegre」が進行中である。


(アルバロ・ガゴ監督とラモナ役のマリア・バスケス)
キャスト:マリア・バスケス(ラモナ)、サンティ・プレゴ(アンドレス)、ソラヤ・ルアセス(エストレーリャ)、スサナ・サンペドロ(カルメ)、E. R. クーニャ・タタンCunha ‘Tatán’(ソセ)
ストーリー:ラモナは40歳、ガリシアの海辺の町で、個人的に張り詰めた不安定な労働環境に没頭して暮らしている。彼女は娘のエストレーリャが苦労しないで、より良い未来が描けるよう掛け持ちで仕事をこなしている。しかし娘が自分の道を歩む準備ができると、自分自身のために何かできるのではないかと初めて気づくのでした。長年母親業に徹していた女性の鮮やかな肖像画。ガリシア地方の家父長制神話を解体する社会派ドラマ、数年間監督の祖父の介護者だった女性に触発されている。

(荒々しい魅力で観客を酔わせたマリア・バスケス)

セクション・オフィシアル(コンペ部門)②*マラガ映画祭2023 ⑤ ― 2023年03月06日 17:20
5)El fantástico caso del Golem (仮題「ゴーレムのファンタスティックな出来事」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、SF、95分、公開スペイン6月16日予定、長編3作目。
監督紹介:フアン・ゴンサレス&フェルナンド・マルティネス(バーニン・ペルセベスBurnin' Percebes)、脚本も同じ。フアン・ゴンサレスはESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画・テレビ・演劇の脚本を専攻。フェルナンド(IMDbナンド)・マルティネスは、バルセロナ大学オーディオビジュアル科卒(2015)、Burnin' Percebesは二人のグループ名。2014年から短編、長編を手がけている。
*2020年、本作にも出演しているブルナ・クシとハビエル・ボテットを起用して、スーパー8ミリで撮ったファンタジー「La reina de los lagartos」がその斬新さで周囲を驚かせる。フェロス賞ポスター部門、スペシャル賞にノミネート、第7回リソマRizoma賞を受賞、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭でも上映された。バルセロナのD'A映画祭ほかに参加している。2023年、制作会社Aquí y Allí Films で本作を撮る。現在アニメーション・シリーズ「Meretricius」、長編「Royal Films」が進行中。

(手前フアン・ゴンサレス、後ろフェルナンド・マルティネス)

(フェロス賞ポスター部門ノミネートの「La reina de los lagartos」から)
キャスト:ブライス・エフェ、ブルナ・クシ、ルイス・トサール(トニ)、アンナ・カスティーリョ、ハビエル・ボテット、ロジャー・コマ、ナオ・アルベト、ロベルト・アラモ、ダビ・メネンデス、ティト・バルベルデ
ストーリー:パーティが終わったあと、酔っぱらったダビは友人フアンの目の前でテラスから転落してしまいます。ダビの体は車のボンネットの上にぶつかりばらばらになりました。誰も騒ぎ立てていないようなので、フアンは何が起きたのか調べることにしました。こうして彼は空から降ってくるピアノと矛盾の迷宮に迷い込んでいきます。


6)Els Encantats(西題Los encantados 仮題「魔法にかけられて」)
データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語(字幕上映)、ドラマ、108分、公開スペイン6月2日予定
監督紹介:エレナ・トラぺ、2作目「Las distancias」がマラガ映画祭2018で金のビスナガと監督賞を受賞、翌年のガウディ賞を受賞している。短編数編の後。「Blog」で長編デビュー、サンセバスチャン映画祭2010サバルテギ部門に出品、「ある視点」を受賞、CECの新人監督賞にもノミネートされた。2015年の「Palabras, mapas, secretos y otras cosas」は、イサベル・コイシェについてのドキュメンタリー、新作は長編3作目。脚本はミゲル・イバニェス・モンロイとの共同執筆。以下で監督紹介をしています。
*「Las distancias」の作品、及びキャリア&フィルモグラフィー紹介は、

キャスト:ライア・コスタ(イレネ)、ダニ・ペレス・プラダ、ペップ・クルス、アイナ・クロテット、アイナラ・エレハルデ・ベル、デリア・ブルファウ、マルティ・アタンス
ストーリー:最近離婚したばかりのイレネは、4歳になる娘が父親と数日間過ごすことになり、初めて一人で自身に向き合っている。この新しい現実に適応できず、別荘のあるカタルーニャのピレネー山脈の小さな村に旅をしようと思い立つ。長い間失ったと感じていた安定と落着きを取り戻そうと考えたのだ。しかし、以前は親しい場所だったのに、次第に彼女の人生と同じようにイレネを圧倒し、自分の怖れを克服するには逃亡は役に立たないことを理解するだろう。


(ライア・コスタ、ペップ・クルス、フレームから)
7)Empieza el baile (仮題「ダンスを始める」)
データ:製作国アルゼンチン=スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、99分、撮影地メンドーサ(アルゼンチン)
監督紹介:マリナ・セレセスキー、1969年、ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、女優。本作が長編3作目、アムステルダム映画祭2016「La puerta abierta」で長編デビュー、作品紹介をしています。2019年2作目の「Lo nunca visto」では、カルメン・マチ、ペポン・ニエトが出演している。ドキュメンタリーのほか短編多数。
*「La puerta abierta」の作品紹介は、コチラ⇒2017年01月12日

キャスト:ダリオ・グランディネッティ(カルロス)、メルセデス・モラン(マルガリータ)、ホルヘ・マラレ(ピチュキート)、パストラ・ベガ、アゴスティナ・ポッツイPozzi、ラウタロ・セラ、マルセロ・Xicarts、カロリナ・ソビシュSobisch
ストーリー:カルロスとマルガリータは、当時最も認められた有名なタンゴのカップルでした。今日では、その素晴らしさ、二人が共有した情熱、ステージ、旅、人生は何も残っておりません。カルロスはマドリードに住んでおり、マルガリータは忘却のブエノスアイレスに住んでいる。二人の切っても切れない友人ピチュキートと一緒に、カルロス・ガルデルの街からアンデス山脈の麓へ、彼らの記憶、怖れ、そして何よりも本当の望みを求めて旅立ちます。このクレージーな旅で彼らが避けてきた過去だけでなく、最もピュアな人生に出会えるでしょうか。

(左から、カルロス、マルガリータ、ピチュキート)

8)La desconocida (仮題「見知らぬ人」)
データ:製作国スペイン、2022年、ドラマ、88分、長編映画3作目。
監督紹介:パブロ・マケダ、1985年マドリード生れ、製作者、監督、脚本家。2012年「Manic Pixie Dream Girl」で長編デビュー、マドリード・コンプルテンセ大学UCMの視聴覚コミュニケーションの学位を取得。チェマ・ガルシア・イバラ、マルサル・フォレス、エドゥアルド・カサノバを含む25本以上の製作を手がけている。2020年、ヴェルナー・ヘルツォークと共にドキュメンタリー「Dear Werner(Walking on Cinema)」を撮る。1974年にヘルツォークが師ロッテ・アイスナー危篤の報を受け、彼女の病気平癒を願ってミュンヘンからパリまで歩いた足跡を辿るドキュメンタリー、映画製作の意味を探る旅が語られる。セビーリャ・ヨーロッパ映画祭ニューウェーブ部門でプレミアされた。さらにジネビ、トリノ、トレントなど各映画祭に出品された。RTVEのディアス・デ・シネ賞2021「ビダ・エン・ソンブラ」賞、アルシネ・フェスティバル観客賞を受賞、サンジョルディ賞、フェロス賞、シネマ・ライターズ・サークル賞(ドキュメンタリー部門)にノミネートされた。


(ドキュメンタリー「Dear Werner」のポスター)
キャスト:ライア・マンサナレス(カロリナ)、マノロ・ソロ(レオ)、エバ・リョラチ(エリサ)、ブランカ・パレス(ニナ)、ベガ・セスペデス(アニタ)
ストーリー:カロリナはナイーブで魅力的な若い女性です。彼女はチャットでレオと知り合った。彼は16歳の若者になりすましていた大人の男で、カロリナを騙して市内の閑散とした公園で会うことに成功する。しかしレオがカロリナに会って見ると、彼女が見た目ほどイノセントで無邪気でないのではないかと疑い始める。

(レオとカロリナ、フレームから)

セクション・オフィシアル(コンペ部門)①*マラガ映画祭2023 ④ ― 2023年03月03日 18:26
第26回マラガ映画祭2023ノミネーション長編映画全20作

★コンペティション部門セクション・オフィシアルは全20作、新人発掘の映画祭でもあるのでデビュー作が多いのは当然として、最近はベテラン監督の多さが気になります。すでに既発の国際映画祭(ベルリン、ベネチアなど)でプレミアされたもの、中には受賞作もあるようです。作品数が多いので何回かに分けてアップする予定です。スペイン単独作品が8作と多く、メキシコ、ブラジルは別として、市場が狭く単独では製作できないアルゼンチン、チリ、コロンビアなどのラテンアメリカ諸国は合作です。ブラジルのポルトガル語映画は字幕入り上映、セッションは各3回ずつと例年通りです。
*第26回マラガ映画祭セクション・オフィシアル全20作*
1)20.000 especies de abejas (仮題「2万種のミツバチ」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・バスク語・フランス語、ドラマ、129分、長編デビュー作
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023コンペティション部門でプレミア(2月22日)。ギルデ・ドイツ・フィルムアートシアター賞、バリナー・モルゲンポスト紙読者賞、主演のソフィア・オテロ(9歳)が銀熊主演賞を受賞という快挙、過去の受賞者は故フェルナンド・フェルナン≂ゴメスの2回、2012年にビクトリア・アブリルが『アマンテ』で受賞しているだけである。

(銀熊主演賞のソフィア・オテロ、ベルリンFF授賞式)
監督紹介:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン、1984年バスク自治州アラバ生れ、監督、脚本家、製作者。バスク公立大学視聴覚コミュニケーションの学位を取得、フィルム編集の制作理論、ESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画監督の修士号と映画ビジネスの修士号を取得、マーケティング、配給、国際販売などを学ぶ。2019年制作会社「Sirimiri Films」を設立。
フィルモグラフィー:2012短編「Adri」、2016長編ドキュメンタリー「Voces de papel」(サンセバスチャン映画祭プレミア)、2018短編「Nor nori nork」、2020短編「Polvo somos」、2022短編「Cuerdas」はカンヌ映画祭「批評家週間」に正式出品、受賞歴多数、フォルケ賞短編部門受賞。

(エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督)
キャスト:ソフィア・オテロ(アイトル/ルシア)、パトリシア・ロペス・アルナイス(母親アネ)、アネ・ガバライン(ルーデス)、イツィアル・ラスカノ(リタ)、サラ・コサル(レイレ)、マルチェロ・ルビオ(ゴルカ)、ウナックス・ヘイデンHeyden、他
ストーリー:8歳になる少女ルシアは他人の期待に添わない。母親のアネは夏休みを利用して3人の子供たちと養蜂をしている実家に帰郷します。アネの母親リタ、叔母ルルド、3世代の女性たちが直面する疑いと怖れは、彼女たちの人生を変えてしまうだろう。性同一性を求めているルシアの物語。

(ベルリンFFで絶賛されたルシア役のソフィア・オテロ、フレームから)

2)Bajo terapia (仮題「セラピー中」)
データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、コメディドラマ、93分、マティアス・デル・フェデリコの同名小説の映画化。
監督紹介:ヘラルド・エレーロ、1953年マドリード生れ、製作者、監督。1987年、制作会社「Tornasol Media」設立、国際的に活躍している大物プロデューサー、手がけた作品はドキュメンタリー、エグゼクティブを含めると150作を超える。うち2009年製作の『瞳の奥の秘密』は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞、アルゼンチンにオスカー像をもたらした。ロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」ではゴヤ賞2019の監督賞以下7冠を制した。監督作品としては、実話をベースにした「Heroína」でマラガ映画祭2005の銀のビスナガ監督賞を受賞している。続く2006年には「Los aires dificiles」で金のビスナガ作品賞を受賞した。ほかに『戦火の沈黙、ヒトラーの義勇兵』(11)など。

キャスト:マレナ・アルテリオ、アレクサンドラ・ヒメネス、フェレ・マルティネス、アントニオ・パグド、エバ・ウガルテ、フアン・カルロス・ベリィド
ストーリー:3組の夫婦が珍しいグループ・セラピーのセッションを受けに集まった。心理学者はカップルが一緒に対処しなければならないスローガンを同封した封筒を渡しました。提案されたメカニズムは、誰もが自分の意見を述べ、話し合い、最終的にありのままの自身をさらけ出すことを奨励します。ユーモアを主なツールとして、出会いは予想もしない限界まで複雑になるでしょう。


3)Desperté con un sueño (仮題「夢で目覚めた」)
データ:製作国アルゼンチン=ウルグアイ、2022年、ドラマ、76分、長編3作目
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2023ジェネレーションKplus部門でプレミアされた。
監督紹介:パブロ・ソラルス、1969年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、俳優、教師。ブエノスアイレス演劇学校に入学、コロンビア大学シカゴ校で映画を学んだ後帰国、母国でキャリアを積む。脚本家として、カルロス・ソリンの「Historias minimas」、アリエル・ウィノグラードの「Sin hijos」、フアン・タラトゥトなどとタッグを組んでいるほか脚本執筆多数。2011年「Juntos para siempre」で長編デビュー、2017年、名優ミゲル・アンヘラ・ソラを主役に起用した2作目「El último traje」が、『家へ帰ろう』の邦題で劇場公開された。SKIP映画祭上映の折来日している。新作が3作目になる。当ブログで「Sin hijos」の作品紹介をしています。

キャスト:ルーカス・フェロ(フェリペ)、ミレリャ・パスクアル、ロミナ・ペルフォ、マリアナ・スミレビテス、エマ・セナ
ストーリー:フェリペの日常は、湯治場の閑散とした通りを友人たちと自転車に乗ったり、フリースタイルでラップしたり、母親に隠れて演劇のクラスに行ったりして過ごしている。彼の情熱は夢のようなものだが、目覚めると直ぐ内容を書き留めておく。ある映画のオーディションの可能性に直面して、父親が亡くなった8歳のとき以来一度も会ったことのない父方の祖母を頼って首都に脱出する。フェリペは過去の断片をかき集め、自分が何になりたいかを考え始める。


(再会した祖母、フレームから)

4)El castigo(仮題「罰」)
データ:製作国チリ=アルゼンチン、スペイン語、2022年、ドラマ、86分
監督紹介:マティアス・ビセ、1979年サンティアゴ・デ・チリ生れ、監督、製作者、脚本家。2003年にデビュー作「Sábado」を若干23歳で撮った。マンハイム・ハイデルベルク映画祭のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞を受賞した。2005年の2作目「En la cama」がバジャドリード映画祭2005の作品賞金の穂を受賞、『ベッドの中で』の邦題でミニ映画祭で上映された。5作目「La vida de los peces」はベネチア映画祭2010監督週間でプレミアされ、ゴヤ賞2011イベロアメリカ映画部門で受賞、ブニュエル賞ほか受賞歴多数。6作目「La memoria del agua」はウエルバ映画祭2015銀のコロン賞ほかを受賞、『水の記憶』としてNetflixで配信されている。2022年の「Mensajes Privados」はマラガ映画祭にノミネートされ、ニコラス・ポブレテが助演男優賞を受賞した。新作は9作目になる。
*「Mensajes Privados」の紹介記事は、コチラ⇒2022年03月14日

(マティアス・ビセ、マラガ映画祭2022のプレス会見)
キャスト:アントニア・セヘルス(アナ)、ネストル・カンティリャナ(マテオ)、カタリア・サアベドラ、ジャイル・フリ Yair Juri、サンティアゴ・ウルビナ(ルーカス)
ストーリー:アナとマテオは、悪さをしたので罰として数分間放っておいた息子が行方不明になってしまった。必死の捜索は、リアルタイムで森の中や自動車道などで行われる。80分間というもの夫婦は、恐怖、罪悪感、壊れやすい彼らの繋がり、最も厳しい発覚に直面する。アナがどこかで息子が見つからないよう願っているのは、彼が生れてからずっと幸せでなかったからだ。

(息子を探すアナとマテオ)

アマイア・レミレス監督デビュー「Maldita」*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月12日 16:25
異色の短編ドキュメンタリー「Maldita. A Love Song to Sarajevo」

(ボジョ・ブレチョを配したゴヤ賞のポスター)
★既に国際映画祭での受賞歴があるラウル・デ・ラ・フエンテ & アマイア・レミレスの「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(仮訳「のけ者、サラエボへの愛の歌」)は、人生と自由と寛容への美しい讃歌である。主人公はボスニアのミュージシャンのボジョ・ブレチョと、カタルーニャのピアニストで作曲家のクララ・ペーヤである。二人の感受性豊かな音楽は、廃墟と滅亡のなかから何か純粋な気高さを生み出している。ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボは、日本人にとっては距離的にも精神的にも遠い国ですが、モノクロの映像とボジョの情熱を込めた歌声にある懐かしさを覚えます。受賞を予想してアップします。


(サンタ・マリア・デル・マル教会で演奏するボジョ・ブレチョとクララ・ペーヤ)
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」ドキュメンタリー
製作:Medicusmundi Mediterránia / Kanaki Films 協賛カタルーニャ政府、バルセロナ市
監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ、アマイア・レミレス
脚本:アマイア・レミレス
撮影:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
音楽:クララ・ペーヤ
編集:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
録音:インマ・カラスコ
製作者:イバン・サイノス、(エグゼクティブ)アマイア・レミレス
データ:製作国スペイン、2022年、ドキュメンタリー、27分、モノクロ、撮影バルセロナのサンタ・マリア・デル・マル(14世紀建立のカタルーニャ・ゴシック様式教会)やサラエボ。2021年12月バルセロナ―ジロナのイベントで先行上映された。ほかにマドリードやバルセロナでの上映イベントがある。配給Selected Films Distribution
映画祭・受賞歴:クラクフ映画祭2022銀のドラゴン受賞、メディナ・デル・カンポ映画週間2022ゴールデン・ロエル受賞、メルリンカ映画祭審査員賞受賞、ほかコソボのドキュメンタリーフェス、スペインのシウダレアル、ヒホン、ランサローテ各短編映画祭出品、ゴヤ賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート
出演者:ボジョ・ブレチョ、クララ・ペーヤ、そのほか演奏者多数
ストーリー:ボジョ・ブレチョの神は愛である。彼の祖国は地球である。性別は男性でもあるが女性でもある人間である。バルカン出身の最も革新的なアーティストであるボジョは、困難な時期に自分自身を見つける方法を知っていた二つの都市、サラエボとバルセロナのあいだの人生と、障害の克服と、愛の物語を歌いあげる。決してさようならを言わないために。想像の世界と現実の世界、寛容と残忍、破壊と怖れ、愛と許し、男性と女性、サラエボとバルセロナ、ボジョとクララ、など二面性で構成されている。

(ゴールデン・ロエルを手にしたアマイア・レミレス、メディナFF2022授賞式)
★本作のオリジナルなアイディアは、プロデューサーのイバン・サイノスである。現在はNGO制作会社Medicusmundi Mediterránia のディレクターであるが、もともとは光学機器製造会社の検眼士であった。サラエボではバルカン戦争で眼鏡を失くした人々が多く、サイノスは終戦後の1995年からサラエボに眼鏡を届けていた。そこでボジョ・ブレチョの音楽に出会った。二人は長年、一緒にドキュメンタリーを作りたいと思っていたがなかなか実現しなかった。そこで『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の製作者アマイア・レミレスとコンタクトをとった。レミレスはサイノスを通じてブレチョに会い、こうして二つの制作会社の共同製作が実現した。レミレスの「クララ・ペーヤがバルセロナを象徴する」というアイディアが生まれた。

(ラウル、イバン、ボジョ、アマイア)
★ボジョ・ブレチョ Božo Vrećoは、1983年ボスニアのフォチャ生れ、セブダリンカ(sevdalinka *)の歌手、考古学教授、LGBTQの権利を求めている。5歳の時父親が亡くなり、2人の姉妹と育つ。芸術家の母親から絵を描いたり音楽を学ぶよう勧められ、インターネットで独学する。風変わりな少年としていじめに苦しんだ。生計を立てるためセルビアのベオグラードに行き考古学の修士号を取る。しかし本当にやりたかったのはセブダリンカの音楽だった。録音で伝統的な歌唱法を学んだ。
★サラエボのカフェで歌っているところをバンドHalkaに見いだされCDを発売、2013年よりプロとして世界で活躍している。アカペラで歌うことが多い。ロングドレスや長めのチュニックに身を包んだブレチョは女性の側にいる。エレガントでデリケートな動き、よく響く声、黒くて濃い髭のコントラストに戸惑う。ブレチョは戦争のさなかに生まれ育ったが、彼は自らの独特な個性のせいで内面の葛藤から自由になる必要があった。議論の的となるアーティストは、より自由になるために豊かな表現力、寛容さでその違いを力強く示そうとする歌手である。
*セブダリンカというのは、ボスニア・ヘルツェゴビナ発祥の民族音楽、ゆっくりしたテンポ、強烈で感情豊かなメロディーが特徴的である。オリエント、ヨーロッパ、セファルディム(ディアスポラのユダヤ人のうち南欧諸国やトルコなどに定住した人)の要素を組み合わせている。


(トルコの旋踊教団の祈りのようにスピンしながら熱唱するボジョ・ブレチョ)
★クララ・ペーヤ Clara Peya、1986年カタルーニャのパラフルジェル生れ、ピアニスト、作曲家。両親は医師、母親の懇望で姉アリアドナと一緒にピアノを学ぶ。姉は16歳で断念するが、クララはカタルーニャ高等音楽学校のクラシックピアノ科に入学、2007年卒業、その後バルセロナ音楽養成所でモダンジャズを学んだ。23歳でアルバムのレコーディングを開始、独自のスタイルを確立しており、既に十数枚のアルバムを発表している。
★また姉アリアドナと制作会社 Les Impuxiblesを主宰、ミュージカル、演劇、ダンスシアター、マイクロオペラの制作を手掛けている。2019年にその社会への影響が認められてカタルーニャ文化国民賞の最年少受賞者となりました。他に2018年、アルバム「Estómac」は、音楽誌「エンダーロック・マガジン」の年間最優秀アルバム賞エンダーロックを受賞。フェミニスト活動家として男女平等を求めている。レズビアンとしてレズ嫌いを批判するドキュメンタリーに参加している。2021年の新譜「Periferia」では、男性歌手エンリオをフィーチャしている。


(クララ・ペーヤ、カタルーニャ文化国民賞授賞式)
★監督紹介:ラウル・デ・ラ・フエンテ(パンプローナ1974)とアマイア・レミレス(パンプローナ1982)は、20年来から二人三脚で問題作に挑戦している監督、脚本家、製作者、共にナバラ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒。アンゴラ内戦をアニメーションと実写で描いた「Un día más con vida」(18)が『アナザー・デイ・オブ・ライフ』としてラテンビートFF 2018で上映され、観客から賞賛を受けた。翌年のゴヤ賞アニメーション部門で受賞している。ゴヤ賞ノミネートは今回で5回目、2回目の「Minerita」がゴヤ賞2014の短編ドキュメンタリー賞受賞、ドキュメンタリー作家としての地位を確立している。レミレスは制作会社Kanaki のメインプロデューサーだが、今回監督デビューした。2021年に子供が誕生した。
*両監督のキャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2018年10月08日

(『アナザー・デイ・オブ・ライフ』のポスター)

(ゴヤ賞2019アニメーション賞のガラにて)

(最近のラウルとアマイア)
追加情報:ゴヤ賞2023短編ドキュメンタリー部門で予想どおり受賞しました。
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