タマラ・カセリャスとフリア・デ・パスの「Ama」*マラガ映画祭2021 ㉔2021年07月07日 13:26

        タマラ・カセリャスが「Ama」主演で銀のビスナガ女優賞を受賞

 

      

 

フリア・デ・パス監督のデビュー作Amaは、主役のタマラ・カセリャス銀のビスナガ女優賞をもたらしました。本作は2019年にESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校、マラガ映画祭が注目している映画学校)の卒業制作として撮られた同名の短編がベースになっています。当時フリアは「あまり良い状態ではなかった」とマラガのEFEインタビューに応えている。監督はまだ25歳、母親に借金をして製作したようですが、マラガで母親に最大級のプレゼントを贈ることができました。ハリウッドや男性シネアストたちが、長年にわたって作り続けてきたスーパー家父長制の映画は害をもたらし続けている。監督は、あってはならない「母性神話」の打ち壊しに挑戦しました。何故なら「母性は一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。

    

       

(タマラ・カセリャス、子役レイレ・マリン・バラ、監督、マラガFF2021フォトコール)

 

     

 Ama2021

製作:La Dalia Films / Ama Movie AIE

監督:フリア・デ・パス・ソルバス

脚本:フリア・デ・パス・ソルバス、ヌリア・ドゥンホ・ロペス

撮影:サンドラ・ロカ

音楽:マルティン・ソロサバル

編集:オリオル・ミロン

美術:ラウラ・ロスタレ

衣装デザイン:クリスティナ・マルティン

メイクアップ:メルセデス・ルハン、タニア・ロドリゲス

プロダクション・マネージメント:リチャード・ファブレガ、マメン・トルトサ

音響:ヤゴ・コルデロ、ほか

視覚効果:ギレム・ラミサ・デ・ソト(短編)

製作者:(エグゼクティブ)シルビア・メレロ、ホセ・ルイス・ランカニョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、ドラマ、90分、撮影地バレンシアのアリカンテ、撮影期間20203月から6月、パンデミックで中断、2021年完成させた。配給&販売Filmax、スペイン公開2021716

映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭2021セクション・オフィシアル部門、銀のビスナガ女優賞受賞(タマラ・カセリャス)、AICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)が選ぶフェロス・プエルタ・オスクラ賞を受賞。

 

キャスト:タマラ・カセリャス(ぺパ)、レイレ・・マリン・バラ(娘レイラ)、エステファニア・デ・ロス・サントス(ロサリオ)、アナ・トゥルピン(アデ)、マヌエル・デ・ブラス(カルロス)、チェマ・デル・バルコ、パブロ・ゴメス=パンド(レイラの父ディエゴ)、マリア・グレゴリオ、バシレイオス・パパテオチャリス、カルメン・イベアス、エリン・ガジェゴ、シルビア・サンチェス、ほか

 

ストーリー:母性神話に縛られて孤独のなかにいる多くの女性たちの物語。さまざまな警告の末に、アデは友人のぺパを家から追い出してしまう。6歳になる娘のレイラと一緒に道路に佇んでいるぺパを目にしたのが最後だった。もう助けてくれる人は誰もいない、ぺパとレイラは生きるための場所を見つけるために闘わねばならない。困難に直面しながらも探求に取りかかる。それは遠い昔の今では存在しない関係との和解に耐えることでもあるだろう。母と娘の新たな絆を創りだすだろうが、それは間違いを許容するもので理想化とは異なるものだろう。あってはならない母性神話に挑戦する女性たちの物語。

 

       

            (路頭に迷うぺパと娘レイラ、映画から)

 

監督紹介フリア・デ・パス・ソルバスは、1995年バルセロナ生れの監督、脚本家。バルセロナのESCAC(カタルーニャ映画視聴覚上級学校)で映画演出を専攻する(201218)。2012年、短編「Atrapado」、助監督、キャスティング監督などをしながら、2017年に共同監督(11名)として撮った長編La filla dalgú19)は、マラガ映画祭2019モビスター+賞を全員で受賞した。2018ESCACの卒業制作である短編Ama1919分)は、アルカラ・デ・エナレス短編映画祭にノミネートされた。今回、初の単独監督として本作「Ama」で長編デビューした。テーマは不平等、特に女性が受けている社会的地位の格差、フィクションとドキュメンタリーの接続点を求めている。鼻ピアスに耳の後ろから剃り上げたライオン・ヘアー、エイミー・ワインハウス風のアイライン、このタフでぶっ飛んだ監督は、映画祭に旋風を巻き起こした。

 

    

    (「まだ私は25歳の青二才です」と応えるデ・パス監督、プレス会見)

 

★短編Ama」の登場人物で重なるのはぺパ、ディエゴ、レイラ(別の子役エンマ・エルナンデス・ぺレス)、アデ(ロランダ・パテルノイ)と多くない。監督とぺパ役のタマラ・カセリャスは長編デビューに4年の歳月を掛けたという。映画はこんな風に始まる。ディスコで踊り明かした若い女性が帰宅する、既に新しい一日が始まっており、テーブルでお絵描きをしていた小さな女の子が迎える、女性は動じる風もなくおはようと言う。娘の育児放棄に耐えきれない友人から家を追い出されてしまう。

 

     

               (短編「Ama」のポスター)

 

★監督は「これまでのぺパの人生を説明しない方針にした。町中を子連れで放浪するぺパを無責任な母親と呼ぶこともできます」。しかし監督は、ぺパを理解するためのモラルやアリバイを提供しない。またぺパを裁かないし、観客に許しを求めない。このような状況に至るまでの経済的社会的なリソースを提供しないシステムを描くだけです。母性は存在してはならない神話であってそれは一つでなく、母親の数だけあり、それぞれ違っていていい」と監督。製作者のホセ・ルイス・ランカニョは、「芸術的品質、若くて才能あふれる制作チームの努力、何よりも映画が語る物語の力強さのため」と、製作意図に挙げている。

 

     

      (マラガ入りした監督、タマラ・カセリャス、レイレ・マリン・ベラ)

 

★ぺパを演じて、銀のビスナガ女優賞受賞タマラ・カセリャス(カセジャス)は、セビーリャ生れの35歳、舞台女優を目指し、セビーリャのViento Sur Teatroの演劇学校で学ぶ。その後18歳でバルセロナに移り、バルセロナの演劇学校Nancy Tuñonで学んでいる。2010年映画デビュー、2015年アルバル・アンドレス・エリアスの短編「4 días de octubre」(ESCAC Films)に出演、ハビエル・チャカルテギのコメディ「La estación」(18)、ホセチョ・デ・リナレスの「Desaparecer」(18ESCAC Films)で長編デビュー。他に上記の短編&長編の「Ama」、デ・パス監督との接点はESCACのようです。

 

      

        (銀のビスナガを手に喜びを全開するタマラ・カセリャス)

 

★ウェイトレスの仕事を終えて映画祭に馳せつけたタマラは、「私はぺパのように感じたことはないとはいえ、もし彼女が傷ついていると信じれば、すべての家族に言えることですが、まさかそんなことだったとは気づかなかったと言うのです」と語っている。事件後に親戚やご近所さんがメディアに語る定番ですね。またタマラは映画が絶えず深層に潜めているライトモチーフ、放棄または怠慢について「それぞれモードは異なりますが、それは私たち二人が感じている何かです」と。この映画には私にとって父や母が何であるかの分析があり、映画を見れば感動すると語っている。

    

     

           (自分とは違うぺパを演じたタマラ、映画から)

 

★ぺパが遊びまわっているあいだ、娘レイラの世話を押しつけられている友人アデ(アナ・トゥルピン)は、二人が彼ら自身の人生を見つけるために敢えて路頭に送り出す。レイラを演じたレイレ・マリン・ベラは自然体で、本当に難しいシーンをカバーしてくれたと監督は少女を絶賛している。タマラと同郷の先輩ロサリオ役のエステファニア・デ・ロス・サントスは幼女の祖母役、セクション・オフィシアル部門のアウトコンペティションで上映された、ビセンテ・ビジャヌエバのコメディ「Sevillanas de Brrooklyn」で活躍しています。短編「Ama」にもディエゴ役で出演していたパブロ・ゴメス=パンドは、幼女の父親役です。

 

        

  (意見の異なる友人アデとぺパ)

 

      

         (撮影中のレイラ、ぺパ、ロサリオ、20203月)

 

   

                    (新たな絆を模索するレイラとぺパ)

 

★マラガFF ESCAC出身のシネアストを重視している。2017年のカルラ・シモン(『悲しみに、こんにちは』)、2018年のエレナ・トラぺ(「Las distancias」)が金のビスナガを受賞している。2020年のピラール・パロメロ(「Las niñas」)はサラゴサ出身で卒業生ではないが、ゴヤ賞2020新人監督賞のベレン・フネス(「La hija de un ladorón」)もESCACで学んでいる。4作とも作品紹介をしていますが、今のスペインはマドリードよりバルセロナが熱い。マラガFFESCACが女性監督の採石場と称される所以です。1994年バルセロナ自治大学の付属校としてバルセロナで設立、2003年に本部をバルセロナ州テラサ(タラサ)に移した。活躍中の卒業生は、J.A. バヨナマル・コルキケ・マイジョオスカル・ファウラハビエル・ルイス・カルデラなど数えきれない。生徒に非常に厳しい要求をする学校として有名ですが、それなりの成果をあげているということでしょう。

 

★マラガ映画祭はとっくの昔に終幕しましたが、ゴヤ賞2022の新人監督賞、主演女優賞のノミネートを視野に入れて紹介いたしました。デ・パス監督の次回作は、児童虐待をテーマにした短編、目下準備中ということです。

クラウディア・ピントの「Las consecuencias」*マラガ映画祭2021 ㉓2021年07月01日 20:31

      クラウディア・ピント、第2作「Las consecuencias」で批評家審査員特別賞

   

       

 

クラウディア・ピントはベネズエラ出身ですが、本作Las consecuenciasはスペイン=オランダ=ベルギー合作の映画です。ご存知の通り故国ベネズエラは政情不安が続いて映画製作どころではありません。主演女優のフアナ・アコスタはコロンビアのカリ生れ、共演者アルフレッド・カストロはチリ出身、今回助演女優賞を受賞したマリア・ロマニジョスカルメ・エリアスソニア・アルマルチャはスペイン、エクトル・アルテリオはアルゼンチン、とキャスト陣も国際的です。音楽監督、撮影監督、編集はデビュー作と同じ布陣、監督と共同で脚本を執筆したビンセント・バリエレ以下、音響、美術などスタッフは概ねベネズエラ・サイドが担当しています。

 

         

       (本作をプレゼンするクラウディア・ピント、525日マドリード)

 

 

Las consecuencias2021

製作:Sin Rodeos Films / Las Consecuencias AIE / N279 Entertaiment(オランダ)/

        Potemkino(ベルギー)/ Erase Una Vez Films(スペイン)

     協賛:TVE / TV3 / A Punto Media / バレンシア州TV

監督:クラウディア・ピント・エンペラドール

脚本:クラウディア・ピント・エンペラドール、エドゥアルド・サンチェス・ルへレス

撮影:ガボ(ガブリエル)・ゲーラ

音楽:ビンセント・バリエレ

編集:エレナ・ルイス

美術:フロリス・ウィレム・ボス

音響:ダーク・ボンベイ

キャスティング:アナ・サインス=トロパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ

衣装デザイン:マノン・ブロム

メイクアップ&ヘアー:アランチャ・フェルナンデス(ヘアー)、サライ・ロドリゲス(メイク)

製作者:ジョルディ・リョルカ・リナレス(エグゼクティブ/プロデューサー)、

        エルス・ヴァンデヴォルスト(オランダ)、クラウディア・ピント・エンペラドール、

        アンヘレス・エルナンデス、ヤデラ・アバロス他

 

データ:製作国スペイン=オランダ=ベルギー、スペイン語、2021年、サイコ・スリラー、96分、撮影地カナリア諸島のラ・ゴメラ、ラ・パルマ、バレンシア州のアリカンテ、ベニドルム、撮影期間2019518日~627日、スペイン公開2021917日。販売Film Factory


映画祭・受賞歴:第24回マラガ映画祭セクション・オフィシアル部門プレミアム(611日)、銀のビスナガ批評家審査員特別賞、同助演女優賞(マリア・ロマニジョス)受賞

 

キャスト:フアナ・アコスタ(ファビオラ)、アルフレッド・カストロ(父)、カルメ・エリアス(母)、マリア・ロマニジョス(娘ガビ)、エクトル・アルテリオ、ソニア・アルマルチャ、クリスティアン・チェカ、エンリケ・ヒメノ・ペドロス、他

 

ストーリー:最近夫をダイビング中の事故で亡くしたファビオラは、思春期の娘ガビと一緒に人生をやり直そうと家族の住むカナリア諸島に浮かぶ小さな火山島へ、長らく疎遠だった父親と連れ立って旅に出る。家族は再会するが、ファビオラは家族になにか秘密があるように感じる。確かな証拠があるわけではないが、彼女の直感はすべてが見た目通りでないといっている。しかし彼女は見つかるかもしれないものへの怖れと、その答えを知る必要があるのかどうかで引き裂かれている。他人の私事に何処まで踏み込めるでしょうか。愛する人を守るための嘘は何処までなら許されるのでしょうか。母性への恐れから生まれたエモーショナルなサイコ・スリラー。怖れ、愛、嫉妬、そして火山島の風景も重要なテーマの一つ。

 

         

              (小さな火山島を目指すファビオラと父親、映画から)

   

  

      文化の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにする

     

監督紹介クラウディア・ピント・エンペラドール1977年カラカス生れ、監督、脚本家、製作者。1998年、カラカスのアンドレス・ベジョ・カトリック大学で視聴覚社会情報学を専攻、卒業する。現在はスペインのバレンシアに移って映画製作をしている。短編「Una voz tímida en un concierto hueco」(01)、「El silencio de los sapos」(06)、「Todo recto」(07)、長編デビュー作La distancia más larga13、ベネズエラ=スペイン合作)など。

   

La distancia más largaについては、モントリオール映画祭2013で優れたラテンアメリカ映画に贈られるグラウベル・ローシャ賞受賞を皮切りに国際映画祭で17賞している。映画賞はイベロアメリカ・プラチナ賞2015オペラ・プリマ賞、ゴヤ賞2015イベロアメリカ映画賞部門ノミネート。映画祭受賞歴はモントリオールのほか、ウエルバ・ラテンアメリカ2013観客賞、パナマ2015観客賞、クリーブランド女性監督賞、ヘルシンキ・ラテンアメリカ観客賞、トリエステ・イベロアメリカ批評家特別賞などを受賞。ハバナ、トゥールーズ・ラテンアメリカ、ヒホン、各映画祭にノミネートされた。

La distancia más larga」紹介は、コチラ2013090520150207

   

               

                  (数々の受賞歴を配したデビュー作のポスター)

 

2作目が本作「Las consecuensias」である。サンセバスチャン映画祭の合作フォーラムに参加、ユーリマージュ賞Eurimages(欧州評議会文化支援基金、1989年設立)を受賞した。「このフォーラムに参加して、オランダやベルギーのシネアストと交流したことは、私にとって非常に興味深いものでした。文化と見解の混合は物語を豊かにし、映画を普遍的なものにします。それは私の望んだことでもあったのです」と語っている。2006年からTVシリーズの監督と映画製作を両立させている。

 

 

    8年ぶりの長編2作目――「彼らは愛する方法を知りません」と監督

 

8年ぶりの新作というのも驚きですが、ピント監督によると「製作には多額の資金が必要ですから、それが私にとって本当に重要な何かをもっているかどうか自問します。新作は母性への怖れから生まれました。というのも丁度妊娠していて完成できるか分かりませんでした。間違ったことをして娘を危険に晒してしまう母親はどうなるのだろう。娘がドアを閉めて沈黙してしまうとしたら最悪です。物語は娘が危険に晒されていると想像している母親と娘の闘いを描きますが、母親に確信はなく、それは不確実な怖れから生まれてきます」とRTVEスペイン国営放送で語っています。

 

     

  (撮影中のフアナ・アコスタ、マリア・ロマニジョス、監督、アルフレッド・カストロ)

 

★家族の秘密が語られますが、「私たちは敷物の下に隠しているものについては表立って話しません。多くの場合、他人を守るためには沈黙は金なのです。こうして秘密は正当化されます。まだ傷は癒えていません。正しいことをしたいと思っていますが、その方法が分かりません、彼らは愛する方法を知らないのです」と監督。キャスティングについて「フアナ(・アコスタ)はとても勇気のある女優と言わざるを得ません。彼女のことはよく知りませんでしたが、素晴らしい女優、とてもラッキーでした。彼女はこの島の人だと直ぐに私に気づかせたのです。外観だけでなく印象的なオーラを放っていました。私は『あなたと一緒にやりたい、二人なら何でもできる』と言いました」とアコスタの第一印象を語っています。

 

キャスト紹介:主役ファビオラ役のフアナ・アコスタは、1976年コロンビアのカリ生れ、監督と同世代の女優、昨年のマラガ映画祭にベルナベ・リコEl inconvenienteで現地入り、主役のキティ・マンベールが女優賞を受賞している。デビューはコロンビアのTVシリーズでしたが、2000年ごろからスペインに軸足をおいている。シリアス・ドラマ(Tiempo sin aireAnna)からコメディ(Jefe)まで演技の幅は広い。既にキャリア&フィルモグラフィーを紹介をしています。受賞歴はアレックス・デ・ラ・イグレシアの「Perfectos desconocidos」でフォトグラマス・デ・プラタ2018女優賞、ジャック・トゥールモンド・ビダルの「Anna」の主演でコロンビアのマコンド賞2016、ウエルバ映画祭2019ウエルバ市賞などを受賞している。まだゴヤ賞はノミネートもない。

 

★2003年、彼女の一目惚れで始まったエルネスト・アルテリオとの間に一人娘がいますが、2018年にパートナーを解消、正式には結婚していなかった。新恋人はパリ在住のフランスの実業家チャールズ・アラゼット、幼児を含む4人の子供がいる。本作出演のエクトル・アルテリオは実父です。

フアナ・アコスタのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20180711

 

       

                        (ファビオラと父親、映画から)

   


   (オシドリ夫婦といわれていた頃のフアナとエルネスト・アルテリオ、20172月)

 

★父親役のアルフレッド・カストロは、1955年チリのサンティアゴ生れ、俳優、舞台演出家。1982TVシリーズでスタート、既に50本以上に出演しているチリを代表する俳優。人間の暗部を掘り起こす登場人物を演じつづけ、チリ国内だけでなくラテンアメリカ各国で活躍している。今年のマラガでは、フアン・パブロ・フェリックスKarnawal(アルゼンチン)もセクション・オフィシアル部門にノミネートされ、予想通り銀のビスナガ助演男優賞を受賞している。

 

        

        (銀のビスナガ男優賞受賞のプレス会見、613日)

 

パブロ・ラライン映画(『トニー・マネロ』『ザ・クラブ』『No)出演が有名だが、ラテンアメリカに初の金獅子賞をもたらしたベネズエラのロレンソ・ビガスとタッグを組んだ『彼方から』15)に主演している。『ザ・クラブ』でイベロアメリカ・フェニックス2015主演男優賞、マルセラ・サイドのLos perros17)でイベロアメリカ・プラチナ2018男優賞など受賞歴多数。俳優に贈られるマラガ―スール賞がラテンアメリカから選ばれるとしたら、カストロを一番にあげておきたい。

2018年のギレルモ・デル・トロ、今年のアメナバルの監督受賞は異例です)

   

Karnawal」の紹介記事は、コチラ20210613

『ザ・クラブ』『No』の紹介記事は、コチラ20150222同年1018

『彼方から』の紹介記事は、コチラ20160930

Los perros」の紹介記事は、コチラ20170501

 

  

(カナリア諸島のラ・ゴメラの浜辺に佇むアルフレッド・カストロ)

 

       

     (父と娘、アコスタとカストロ、中央はロマニジョス、映画から)

 

★母親役のカルメ・エリアスは、1951年バルセロナ生れ、舞台俳優を目指し、ニューヨークのリー・ストラスバーグ演劇学校でメソッド演技法を学んでいる本格派。ハビエル・フェセルの『カミーノ』のオプス・デイの敬虔だが頑迷な信者を演じきって、ゴヤ賞2009主演女優賞、ほかサンジョルディ賞、トゥリア賞、スペイン俳優組合の各女優賞を受賞している。今年のガウディ栄誉賞を受賞している。クラウディア・ピントのデビュー作「La distancia más larga」で死出の旅に出る主役マルティナを好演し、第2作にも起用された。カルロス・ベルムトの『シークレット・ヴォイス』(18)では歌えなくなった歌手の冷静なマネージャー役だった。

ガウディ栄誉賞でキャリア&フィルモグラフィーを紹介、コチラ20210329

 

    

        (ファビオラの母、ファビオラ、ファビオラの娘、映画から)

    

   

       (ゴヤ賞2009主演女優賞のトロフィーを手に喜びのカルメ・エリアス)

 

★ファビオラの娘ガビを演じたマリア・ロマニジョスは、2004年マドリード生れ、Teatro Cuerta ParedCine Primera Toma の学校で演技を学んでいる。2019年本作起用がアナウンスされ映画デビューした。先述したようにデビュー作で銀のビスナガ助演女優賞を受賞している。モビスター+のTVシリーズ、フェルナンド・ゴンサレス・モリナParaíso7話)にも抜擢され、続いてフェリックス・ビスカレットのスリラーDesde la sombraでは、パコ・レオンやレオノル・ワトリングと共演している。まだ17歳、小柄で、172センチという長身のアコスタと並ぶと幼さが残る。目下のところ上昇気流に乗っているようだが、願わくば今回の受賞が吉となりますように。

 

         

                (銀のビスナガ助演女優賞のトロフィーを手にしたマリア)

 

    

 (クロージングに出席したアコスタとロマニジョス、612日)

 

スタッフ紹介:オランダのエルス・ヴァンデヴォルストは、『アイダよ、何処へ?』でオスカー賞2021国際長編映画賞にノミネートされた製作者。他『ジグザグキッドの不思議な旅』(12)、『素敵なサプライズ』(15)、『ドミノ 復讐の咆哮』(19)などが公開されている。カタルーニャのジョルディ・リョルカ・リナレスは『少年は残酷な弓を射る』の製作者、ヤディラ・アバロスはメキシコ出身だがスペインでTVシリーズ『エリーテ』や、エドゥアルド・カサノバの『スキン あなたに触らせて』などを手掛けている。

 

★撮影監督のガボ・ゲーラは、彼女の映画では「風景が重要な意味をもっています。前作のジャングルの撮影も過酷でしたが、今回は危険に晒されることが度々だった」と語っている。ラパルマ島で最も壮観な場所で撮影したが、困難が付きまとった。アコスタは「入り江のなかでも最も遠いところを選び、そこに到達するにはかなりのオデュッセイアでした」と。潮の流れに翻弄され、数時間中断することもあり、毎日が冒険だったようです。監督も「本当に美しい風景を手に入れましたが、それなりの代償を払いました。しかし払っただけのことはありました。物語の厳しさと風景の美しさのコントラストの映画でもあるからです」と。

 

          

                         (本作撮影中のピント監督)

 

        

    (撮影地のカナリア諸島ラ・ゴメラ島、フォト:サウル・サントス)

 

写真提供のサウル・サントスは、1979年ラパルマ島フエンカリエンテ生れ、世界最高を誇る『ナショナルジオグラフィック』誌の表紙を飾る写真家として、国際的に有名です。


マラガ映画祭<落穂ひろい>*マラガ映画祭2021 ㉑2021年06月20日 15:07

         Zonazineセクションのオープニング作品「Lucas」が作品賞

 

      

 

Zonazine部門というのはコンペティションの次に重要なセクションであるが、今年のオープニング作品のアレックス・モントーヤLucasがスペイン語映画の作品賞観客賞、主役のルカスを演じた新人ホルヘ・モトス男優賞3冠を制した(全て銀賞です)。2021年、スリラードラマ、92分。

 

         

      (Zonazine部門の作品賞銀のビスナガを受賞したアレックス・モントーヤ)

 

         

     (男優賞銀のビスナガを受賞して言葉をつまらせる新人ホルヘ・モトス)

 

ストーリー:最近父親を失ったばかりの若者ルカスと小児性愛者のアルバロ(ホルヘ・カブレラ)の関係を描いたスリラー仕立てのドラマ。父親の死によって自分の居場所が崩壊した若者に、罪のない写真と引き換えにお金を払うとアルバロが近寄ってくる。アルバロは偽のプロフィールを制作してソーシャルネットで利用したい欲望をもっているが、若い女の子と一緒にお喋りするだけだともちかける。今の状況に苛立っていたルカスは、彼の要求を受け入れる。

 

   

                    (ルカス役のホルヘ・モトス、映画から)

   

      

          (アルバロ役のホルヘ・カブレラ、映画から)

 

監督紹介アレックス・モントーヤは、1973年バレンシア生れの監督、脚本家、製作者、編集者。15歳のときから短編を撮っており10編以上に及ぶ。マラガFFの監督紹介によると、内外の映画祭受賞歴が170賞とある。本作は長編第2作目、2012年に製作した短編Lucas28分)がベースになっている。マラガ映画祭2013で監督賞を受賞、ゴヤ賞2014の短編ドラマ部門にノミネートされた(キャストは別の俳優が演じている)。202149日にインスティトゥト・セルバンテスのVimeoチャンネルで48時間限定でオンライン上映されている。

 

     

                (短編「Lucas」のポスター)

 

★長編デビュー作Asamblea18)は、アリカンテ映画祭2019審査員賞、主演のフランセスク・ガリードが男優賞を受賞、バレンシア・オーディオビジュアル賞の音響賞を受賞したほか、監督賞、撮影賞などにノミネートされた。2020年にスペインでリスナーの多いFilminでオンライン上映、好評につきその後の公開に繋がった。第2作目である本作はオープニング作品に選ばれ64日に上映された。以来メディア各社の取材攻勢に追われていたが、銀のビスナガ受賞となって慌ただしさも増したようだ。スペイン公開も間もなくの525日に決定した。

 

       

        (長編デビュー作「Asamblea」のインタビューを受ける監督)

 

★テーマの今日性、ルカス役の初々しい好青年ぶりもあいまって今後が期待できそう。ホルヘ・モトスは上映後のプレス会見で「台本を読んで直ぐにルカスを演じたいと思った」と語っていた。一方アルバロ役のホルヘ・カブレラは「登場人物を裁かないように、また理性を可能なかぎり避けながら、あるレベルまで彼と繋がれるように彼の人間性に頼ることにした」とコメント、小児性愛者という難役に挑戦した。マラガ入りしてプレス会見にも出席していたイレネ・アヌラは、モントーヤの「Asamblea」や短編Vampiro16)でメデジン映画祭女優賞、サンダンス映画祭出品のCómo conocí a tu padre08)でイベロアメリカ短編映画祭女優賞をそれぞれ受賞している。

 

   

 (左から、二人のホルヘ、モントーヤ監督、イレネ・アヌラ、64日のプレス会見)

 

  

  

  

                      (作品賞受賞後のプレス会見、6月13日)

 

★今年のマラガは全体像が間際まで見えてこなかった。コンペティション作品でさえ半分もご紹介できなかった。アグスティ・ビリャロンガが大賞を独占、他作品が脇に押しやられてしまった感が否めない。審査委員長のノラ・ナバスとビリャロンガ監督は旧知の仲、大ヒット作『ブラック・ブレッド』(10)主演で、サンセバスチャン映画祭、ゴヤ賞、フォルケ賞とスペイン映画賞の主要な女優賞をゲットしていた。知らんぷりはできず、何かの賞に絡むと予想していましたが、ベテラン監督作品が6回もコールされるとは思いませんでした。というのもマラガは新人の登竜門的役目をもっているからでした。2022年は通常の3月開催がアナウンスされています。いよいよ第69回サンセバスチャン映画祭2021のニュースが聞こえてきました。こちらは通常に戻って9月開催です。

  

ダニ・デ・ラ・トーレの冒険映画「Live is Life」*マラガ映画祭2021 ⑰2021年06月11日 11:56

      監督の原点、1980年代映画のオマージュ、5人の少年の冒険映画

    

      

 

★特別賞の授賞式に追われて、肝心の作品紹介が後手になっていました。映画祭4日めに第1回上映があったダニ・デ・ラ・トーレの長編3Live is Lifeの紹介です。デビュー作『暴走車ランナウェイ・カー』、第2『ガン・シティ~動乱のバルセロナ』で本邦でも比較的知名度のある監督です。第3作は夏休みに再会した5人の少年の冒険と、その家族に目を注ぎます。監督は「私の原点である80年代の映画へのオマージュです」と語っています。少し大人っぽくなった5人の少年たちと現地入り、上映日のプレス会見にも揃って登壇しました。

『暴走車ランナウェイ・カー』作品&監督キャリア紹介は、コチラ20160122

 

      

 (プレス会見に登壇した監督と出演者たち、マラガ映画祭2021

  

   

        (監督以下主演者の少年たち、マラガFFフォトコール、66日)

 

 

 Live is Life2020

製作:4 Cats Pictures / Atresmedia Cine / Live is Life AIE

監督:ダニ・デ・ラ・トーレ

脚本:アルベルト・エスピノサ

撮影:ホス・インチャウステギ

音楽:マヌエル・リベイロ

編集:フアン・ガリニャネス

キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラーノ

メイクアップ:クリスティナ・アセンホ、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ、アントニオ・ナランホ

セット装置:ヌリア・グアルディア

プロダクション・マネージメント:フェデリコ・ロサディリャス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、アドベンチャードラマ、109分、撮影地ガリシアのリベイラ・サクラを中心に、ルゴ県のパントン、ソベル、キロガ、モンフォルテ・デ・レモス、他オウレンセ、エスゴス、バルセロナなど。クランクイン2019年、期間7週間、配給ワーナー・ブラザース・エンターテインメント(スペイン)、販売Film Factory、マラガ映画祭2021プレミア、スペイン公開2021813

 

キャスト:ラウル・デル・ポソ(マサ)、ダビ・ロドリゲス(スソ)、アドリアン・バエナ(ロドリ)、ハビエル・カセリャス(ガリガ)、フアン・デル・ポソ(アルバロ)、マルク・マルティネス、シルビア・ベル(以上初出演)、カルロス・アルベルト・アロンソ(プール付きハウスのオーナー)、ルア・カルテロン(ロドリの姉妹)、他

 

ストーリー1985年の夏、ロドリはカタルーニャを離れて、いつものように両親が住んでいるガリシアの町に、仲間と再会するために戻ってくる。しかし今年は5人の仲間にとって別の夏休みになりそうだ。現実世界の問題が彼らを襲い、揺るぎないと思われていた彼らの関係が脅威にさらされようとしている。5人はそれぞれ友情にしがみつき、仲間の連帯を守るため、ある冒険を計画する。土地の伝説によると、山の頂上に生え、願いを叶えてくれる魔法の花があるという。聖ヨハネの夜、5人は夜陰に紛れて魔法の花探索に出発する。何故なら彼らの唯一の願いは、苦しんでいる友人の問題を解決し、一緒にいられることだけなのだ。Live is Life」が歌われた夏の思い出は永遠だ。自分探しの少年たちの旅、子供が大人を、子供であることを止めようとしない大人を発見する感動と希望に満ちたロードムービー。

 

      

             (主演の 5 人の少年たち、映画から)

   

 

      初めて映画に連れて行ってくれた、敬愛する母親へのオマージュ

 

★「監督として私がここにいられるのは、1980年代の家族と冒険の映画です」と語るガリシアの監督ダニエル・デ・ラ・トーレ(モンフォルテ・デ・レモス1975)は、前2作とは打って変わって、家族と少年の冒険物語をテーマに選びました。最初、監督に提案された脚本は、「とても気に入ったのですが、長いあいだ決めかねていました。というのも今までの私のコードとは違っていたからです。複雑なのに非常に感傷的な部分があり、それをどういうふうに処理するか迷っていました」。監督の肩を押したのは脚本を読んだ母親が映画化を勧めたからで、それから間もなく母は旅立ちました。「私のなかで何かが起きたのです。それでイエスを出しました。だからこれは母親へのオマージュでもあります。私を最初に映画に連れて行ってくれたのが彼女でした」と映画化の経緯を語っている。

 

          

             (撮影中のダニ・デ・ラ・トーレ監督)

 

★「夏の少年たちの生活、他の都市、例えばバルセロナやマドリードからやってくる子供と、ガリシアの子供という異なった世界の子供が集まる物語を作りたかった。子供から大人への移行、例えば1980年代のスピルバーグやゼメキスの映画に影響を受けています」と監督。『E.T.』(82)とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)を指しているのでしょうか。

 

★プレス会見では「80年代のハリウッド映画『グーニーズ』とインスピレーションを共有しています」と語っている。1985年製作のリチャード・ドナーの作品、伝説の海賊が隠した財宝を探して窮地に陥っている家族を助けようとする4人の少年たちの冒険映画のことです。新作は観客を楽しませ、ノスタルジーを呼び起こそうとする冒険は、成熟への道、友情の大切さ、少年それぞれの個人的な成長を、アクション、伝説を取り込んで、決して忘れることのない夏を描いている。そのために当時のシンボリックな要素を盛り込んだとコメントした。それを担ったのがエスピノサ、「彼がキーパーソンで、彼の創造のプロセスは、エモーショナルで魔法にかけられたようだった」と脚本家を讃えた。 

   

★さまざまなバックグランドをもつ5人の少年は、アクセントや話し方などを考えて、1000人以上の子供たちの中から選んだという。マサ、アルバロ役のラウル&フアン・デル・ポソは双子の兄弟ということです。ロケ地に私の生まれ育ったルゴ県のリベイラ・サクラを選んだのは、自身の少年時代を追体験する必要があったからだと明かしている。1980年代にワープするため、少年たちには今日のテクノロジー機器から切り離したようです。ゲームやスマホなしの生活体験はどうだったのでしょうか。

 

         

                     (クランクイン当時の監督と5人の少年)

   

   

     (マラガ入りした現在の5人、デル・ポソの髪も伸びたようです)     

  

★また会見では「この映画には明らかに楽観的なメッセージがあるのは分かっています。さまざまな障害にもかかわらず目標は達成される。夢のためには希望を捨てずに根気よくポジティブに活動すれば達成できるというメッセージです」。最初簡単で単純な仕事のようにみえたのに「これまでで最も困難な仕事でしたが貴重な体験ができ、人生最高の仕事の一つです」と述べた。最後に監督は「複雑な思春期を過ごしたが、映画の中に自由を見つけ、いわば映画は避難場所、物語に没頭することが好きだった」と告白、「成長して自分に自身がもてるようになった、それを映画で達成したいと思っている」と締めくくった。今日では珍しくなった飾らない人柄が魅力的です。

 

★脚本を執筆したアルベルト・エスピノサは、1973年バルセロナ生れ、劇作家、脚本家、監督、俳優、日刊紙「カタルーニャ新聞」の記者など多才な顔をもつ。1994年の戯曲Los Pelonesが、2003アントニオ・メルセロによってPlanta 4 aのタイトルで映画化され、自身も脚本を手掛けた。マラガ映画祭審査員特別メンション、モントリオール映画祭で観客賞、メルセロが監督賞受賞、ゴヤ賞2004にもノミネートされた。2010年にリリースされ内外の映画祭の受賞歴をもつHéroes以来、10年ぶりに長編映画に戻ってきた。この間はTVシリーズを主に執筆している。両作とも子供のグループが主人公の映画でした。

    

         

                (アルベルト・エスピノサ)


クロージング作品はムルガレンのコメディ*マラガ映画祭2021 ⑨2021年05月21日 15:32

        アナ・ムルガレンの第3作「García y García」はコメディ

 


 

★セクション・オフィシアル作品の全体像はまだ見えてきませんが、クロージング作品はアナ・ムルガレンの第3作めGarcía y Garcíaとアナウンスされました。前回のオープニング作品「El caver」で少し触れましたようにこちらもコメディ、新型コロナウイリス感染拡大による自粛ムードの憂さを晴らしたいようです。ムルガレン監督は、前作La higuera de los bastardosでキャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。主演のホセ・モタペペ・ビジュエラの二人が同姓同名のハビエル・ガルシアに扮します。ホセ・モタはアレックス・デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』とパブロ・ベルヘルの『アブラカダブラ』でお馴染みです。ペペ・ビジュエラはハビエル・フェセルの『モルタデロとフィレモン』のフィレモン・ピ役で既に登場していますが、当ブログは初登場です。

 

      

     (左から、ペペ・ビジュエラ、ホセ・モタ、二人のハビエル・ガルシア役)

 

La higuera de los bastardos」の監督&作品紹介は、コチラ20171203

『アブラカダブラ』の作品&ホセ・モタ紹介は、コチラ20170705

 

 

García y García2021年 コメディ

製作:Brogmedia / Claq Films  協賛RTVE / Amazon / EiTB / Aragón TV / ICAA

監督:アナ・ムルガレン

脚本:アナ・ムルガレン、アナ・ガラン

ストーリー:カルロス・ラメラ、ホアキン・トリンカド、(共著)マルコス・マス

音楽:アイツォル・サラチャガ

撮影:アルベルト・パスクアル

編集:アントニオ・フルトス、アナ・ムルガレン

キャスティング:フアナ・マルティネス、ホアキン・トリンカド

衣装デザイン:ネレア・トリホス

メイクアップ&ヘアー:(メイク&ヘアー主任)オルガ・クルス、(メイク主任)セシリア・エスコット)、ヘノベバ・ゴメス、ルベン・サモス

製作者:リカルド・マルコス・ブデ、カルロス・ラメラ、イグナシオ・サラサール=シンプソン、ホアキン・トリンカド、(エグゼクティブ)アナ・ムルガレン、ほか

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、アドベンチャー・コメディ、98分、撮影地アラゴン州のテルエル、サラゴサ、マドリード、ビルバオ、2020727日クランクイン、期間8週間。マラガ映画祭上映後アマゾンプライムビデオで上映、スペイン公開827日予定

 

キャスト:ホセ・モタ(顧問ハビエル・ガルシア)、ペペ・ビジュエラ(技術者ハビエル・ガルシア)、エバ・ウガルテ(クロエ)、マルティタ・デ・グラナ(エバ)、カルロス・アレセス(ダリオ)、ナイアラ・アルネド(ニナ)、ミケル・ロサダ(リッキー)、ジョルディ・サンチェス(アルフォンソ)、アントニオ・レシネス(アントニオ)、リカルド・カステーリャ(エクトル)、ヘスス・ビダル(ルベン)、Alexityアレクシティ(ブランカ)、ほかラモン・バレス、アリシア・フェルナンデス、パコ・コジャド、マルコス・マスなど多数

 

ストーリー:弱小の格安航空会社イスパビアは深刻な問題に直面している。彼らの数はバランスを欠き、飛行機が飛ぶこともありません。会社を救うために必死の博打をうつ。一流の航空会社のコンサルタントとメカニック部門のエキスパートを同時に雇うことにした。どちらもハビエル・ガルシアという名前でした。その偶然と会社の無秩序がもとで、最初から二人のガルシアは混乱に巻き込まれ、役割を交換することになるでしょう。技術者が会社のオーナーによって手配された高級ホテルに宿泊しているあいだ、一流コンサルタントは油じみた作業ズボンを着せられ格納庫に連れていかれます。何が起きているのか分からないまま、二人のガルシアが間違いに気づくまで、互いの難問に対処することになる。

 

    

         (二人のガルシア、テルエルの高級ホテルにて)

 

監督紹介アナ・ムルガレンAna Murugarrenは、1961年ナバラ州マルシーリャス生れ、監督、脚本家、編集者、製作者。バスク大学で情報科学を専攻、1980年代後半から始まったバスク・ヌーベルバーグの一人。グループにはエンリケ・ウルビス、パブロ・ベルヘル、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ルイス・マリアス、ホアキン・トリンカドなどがいる。編集者としてスタート、エンリケ・ウルビスのコメディ「Tu novia está loca」や「Todo por la pasta」の編集を手掛けている。ホアキン・トリンカドのコメディ「Sálvate si puedes」の編集、ドキュメンターEsta no es la vida privada de Javier Kraheを共同で監督しており、今回もストーリーと製作を担っている。ウルビスのコメディ映画は、『貸し金庫507』でご紹介しています。

エンリケ・ウルビスのコメディの記事は、コチラ⇒2014年03月25日

 

 フィルモグラフィー 

1988年「Tu novia está loca」編集、監督はエンリケ・ウルビス

1988年「Mama」(短編)編集、監督はパブロ・ベルヘル

1991年「Todo por la pasta」編集、監督はエンリケ・ウルビス

    シネマ・ライターズ・サークル賞1991最優秀編集賞を受賞

1995年「Sálvate si puedes」編集、監督はホアキン・トリンカド

2005年「Esta no es la vida privada de Javier Krahe」ドキュメンタリー、監督・編集

   アキン・トリンカドとの共同監督、映画の創造性ボセント賞受賞

2011年「El precio de la libertad」監督・編集(TVミニシリーズ2話)

    スペシャル・イリス賞、女性インデペンデントFF2012メリット賞・編集賞

   (製作者ホアキン・トリンカドと受賞)

2012年「La dama guerrera」監督・編集(TVムービー

    バスクのEuskal Bobinak 賞を受賞

2014年「Tres mentiras」監督・編集、長編映画デビュー作

2017La higuera de los bastardos」監督・脚色・編集

2021年「García y García」本作付き省略

 

     

       (ホアキン・トリンカドと監督、女性インデペンデントFF2012にて

     

長編受賞歴

Tres mentirasは、サモラ県の15トゥデラ映画祭 20141回監督賞フィリピンのワールド・フィルム・フェス2015グランプリ、他に主役のノラ・ナバスが女優賞を受賞他にサラゴサ映画祭20151回監督Augusto受賞、ほかノミネート多数。

La higuera de los bastardosは、ハリウッド映画祭2018銀賞・審査員賞・映画アーティスト・エクセレンス賞を受賞、アルバカーキ映画音楽祭監督賞、シアトル・ラティノ特別審査員賞、テキサス州オースティンのファンタスティック・フェスに正式出品、批評家から高く評価されたことが、翌年のアメリカ公開、オンライン上映に繋がった。

 

     (カラ・エレハルデとカルロス・アレセス主演の第2作のポスター)

 

新作トレビア:監督によると、プロデューサーのホアキン・トリンカドと本作のそもそものアイデアマンのカルロス・ラメラが「García y García」を携えて訪ねてきた。「これはオリジナルでリメイクじゃない」と言ったとき、「いいね!」と思った。それは「自分の原点である「Tu novia está loca」を思い出したから」。エンリケ・ウルビスのコメディですね。ほかの人が持ち込んできた企画ならクレージーすぎてホンキにならなかったろうと。「私が出会った製作者のなかでも、もっともリスクを怖れない賢明なホアキン・トリンカドと、マドリードのバラハス空港のターミナル4,またはアムステルダムの新スキポール空港の建築家カルロス・ラメラだったから監督することにした。数日後、ホセ・モタとペペ・ビジュエラにガルシアとガルシアを体現してもらうことを提案したのです」と監督。

 

       

          (撮影中の監督、ホセ・モタとペペ・ビジュエラ)

 

★カルロス・ラメラが映画という冒険に乗り出すきっかけについて語っている。「2016年、私はカタールにいました。私のルーチンは10日ごとにバラハスに飛ぶことでした。出口には見知らぬ人を迎えに来た、見知らぬ人の名前が書かれた小さなボードを持って待っている一群が必ずいる。あるとき、<ハビエル・ガルシア>と書かれた看板をもっている別々の二人に気づいた。そこでピーンときた、これは映画になると。映画のことはチンプンカンプンだからアントニオ・レシネスに電話をした。するとビルバオのプロデューサーに連絡とれという、そのプロデューサーがトリンカドだったというわけです。私たちも二人のガルシアのように奇妙なカップルというわけですが、真実は、勇気、熱意、忍耐力が私たちを結びつけたのです」。ガルシアという苗字は日本で言うと<山田>さん、一番多いお名前です。ハビエルも多いから結構ありますよね。

 

★本作で映画デビューする女の子、ブランカ役のAlexityアレクシティはスペインで大人気のTouTuberインフルエンサーです。可愛くて生意気で小憎らしい、なによりもそのノンストップのお喋りにはびっくりする。本作で一番の人気者になるでしょう。YouTubeで愉しめます。

 

     

                  (アレクシティ)


オープニング&クロージング作品の発表*マラガ映画祭2021 ⑧2021年05月18日 18:34

          オープニング作品はセクン・デ・ラ・ロサのミュージカルコメディ

 

      

            (202155日公開されたばかりのポスター)

 

513日、オープニングとクロージング作品が同時に発表されました。前者は俳優セクン・デ・ラ・ロサの監督デビュー作El cover、後者はアナ・ムルガレンの長編3作目、コメディGarcía y García」です。今回はミュージカルコメディEl cover」のご紹介。監督のセクン・デ・ラ・ロサは、エミリオ・マルティネス=ラサロのコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』や『クローズド・バル』に出演、映画、TV、舞台出演に監督業が加わった。アナ・ムルガレン(ナバラ1961)の新作は、ハビエル・ガルシアという同姓同名の二人の男性の物語、ムルガレン監督のキャリア&フィルモグラフィーは、前作La higuera de los bastardos17)でご紹介しています。

 

  

 El cover2021 ミュージカルコメディ

製作:Nadie es Perfecto / Universal Music Group / Amazon Prime Video / Entertainment One

監督・脚本:セクン・デ・ラ・ロサ

撮影:サンティアゴ・ラカ、

編集:ハビ・フルトス

製作者:キコ・マルティネス、ホセ・ルイス・ヒメネス、レオネル・ビエイラ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、ミュージカルコメディ、撮影地アリカンテのベニドルム、マドリード、2020219日クランクインするもコロナウィルス感染によるパンデミックで626日まで中断、71日に再開、期間6週間。マラガ映画祭2021オープニング作品(63日上映)、スペイン公開723日予定

 

キャスト:アレックス・モネール(ダニ)、マリナ・サラス(サンドラ)、カロリナ・ジュステ(エイミー)、ランデル・オタオラ、マリア・エルバス(モニ)、フアン・ディエゴ(ダニの祖父)、カルメン・マチ、スシ・サンチェス、ホルヘ・カルボ、ペペ・オシオ(セバスティアン)、リディア・ミンゲス(マドンナ)、オスカル・デ・ラ・フエンテ(ダニの代父)、他

 

ストーリー:心に葛藤を抱えた若者ダニの物語。音楽への愛は限りないが、父親のように挫折することを怖れている。また祖父のようにありふれた人にはなりたくないと思っている。いまは両親と同じようにウェイターとして働きながら、夢を捨てて生きねばならないジレンマに苦しんでいる。今年もベニドルムに夏がめぐってきた。成功を求めてバルやホテル、ナイトクラブに歌いに来るミュージシャンで溢れている。やがてサンドラと出会うことになるが、二人は無名の歌手たちの日々の闘いや愛を見つけ、取るに足りない人間とは何か、そうならないためにどうすればいいか学ぶことになる。

 

    

    (左から、マリナ・サラス、アレックス・モネール、セクン・デ・ラ・ロサ監督、

   フアン・ディエゴ、カロリナ・ジュステ、マリア・エルバス)

 

★監督紹介:セクン・デ・ラ・ロサは、19691223日、バルセロナのCanyellesカニエル工業地帯生稀る(父はマラガ出身、母はカタルーニャ)、映画、TV、舞台俳優、監督、脚本家。20歳のときマドリードに移り、有名な俳優養成学校クリスティナ・ロタで演技を学ぶ。最近20年間の活躍でスペインではコメディ俳優としての揺るぎない位置を得ている。並行して戯曲家、舞台演出家のキャリアも積んでいおり、「Los años rápides」、「El disco de cristal」「Clara Bow」は、観客と批評家から受け入れられた成功作。

 

     

              (セクン・デ・ラ・ロサ監督)

 

★俳優としては、大方が脇役だからTVシリーズ、短編を含めると3桁に近づいている。アレックス・デ・ラ・イグレシアの『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的『スガラムルディの魔女』ほか、オスカー監督マイケル・ラドフォードの「La mula」、エミリオ・マルティネス=ラサロのミュージカルコメディ「El otro lado de la cama」、「El 2 lados de la cama」(ミニ映画祭で『ベッドサイド物語』)、ホアキン・オリストレルの「¡Hay motivo!」ほか、ボルハ・コベアガの実話をベースにしたヒット作Negociadorほか、アントニア・サン・フアンの「Del lado del verano」ほか、若手監督のハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシのミュージカル『ホーリー・キャンプ!』エドゥアルド・カサノバ『スキン あなたに触らせてTVシリーズでは長寿TVシリーズ「Aída」、『パキータ・サラス』、ミュージカルコメディ「Paco y Veva」、最近ではファンタジーホラー「30 monedas」(20)と引っ張り凧である。

ゴチック体は、当ブログで作品紹介をしている映画です。

 

        

             (『クローズド・バル』の1シーンから

 

受賞歴として、スペイン俳優連盟賞を2004年にダビ・セラーノDías de fútbol」と2011年にTVシリーズ部門の「Aída」で受賞している。ほかに1917年の短編サディ・ドゥアルテの「Enchufados」(15分、コメディ)でロスアンゼルス俳優賞を共演のアレバロとデュオ賞、翌年インデペンデント短編賞のゴールド賞、ニューヨーク・フィルム賞、トップ短編映画祭アンサンブル部門February賞、2019年にも同監督の「Cuando la Música Deja de Sonar」(15分)でアンサンブル男優賞、シネマワールドフェス助演男優賞、インデペンデント短編賞アンサンブル部門のオナラブル・メンション、トップ短編映画祭アンサンブル部門December賞、ワールドプレミアフィルム賞の助演男優賞部門審査員賞を受賞している。ノミネーションは多数につき割愛しました。

 

★上述したように2020219日にクランクインしたが、新型コロナウィルス感染によるパンデミックで626日まで中断、なんとか71日に再開できた。いろいろ縛りはあったが、とにかく完成できたから「ホントに、ホントに、運がよかった!」と監督。マラガ映画祭終了後の723日に劇場公開されたあと、アマゾン・プライム・ビデオでオンライン上映される予定。ザ・キラーズ、エイミー・ワインハウス、レディ・ガガ、シャーリー・バッシー、グロリア・ゲイナー、ラ・マレール、アントニオ・ベガ、ラファエルなどなど、世界の偉大なミュージシャンの楽曲がカバーされるということです。

 

★若いアレックス・モネールマリナ・サラスカロリナ・ジュステを脇から支えるフアン・ディエゴカルメン・マチスシ・サンチェスなどの豪華キャストに驚かされます。映画、TV、舞台俳優としての長年の実績と信頼の賜物でしょう。舞台となるバレンシアのアリカンテ県コスタブランカの海岸沿いににあるベニドルムという新興リゾート地は、イサベル・コイシェがイギリス俳優ティモシー・スポールを起用して撮ったスリラー仕立てのラブロマンスNieva en Benidormで紹介しています。海外から押しよせる観光客で賑わうスペインきっての大歓楽街です。本作にはカルメン・マチが警察官として出演している。

Nieva en Benidorm」の作品紹介は、コチラ20210211

 

     

                  (ダニとサンドラ、灯りの消えない街ベニドルム)

 

   

  (サンドラ役のマリナ・サラス)

 

   

              (監督とアレックス・モネール、本作の舞台ベニドルムにて)

 

   

       (左から、カルメン・マチ、監督、アレックス・モネール)

 

★制作会社「Nadie es Perfecto」のメインプロデューサー、キコ・マルティネは、アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バングとのコラボで『クローズド・バル』、『トガリネズミの巣』(『ネスト』)、「Perfectos desconocidos」などヒット作を製作しています。


セクション・オフィシアル作品*マラガ映画祭2021 ⑥2021年05月13日 11:50

★前回に続いてセクション・オフィシアル作品の紹介。511日にはマラガ映画祭の最高賞マラガ―スール賞にアレハンドロ・アメナバルの発表があり慌ただしくなってきました。開幕まであと3週間となりましたので作品列挙を優先して、その後時間が許す範囲で作品紹介をいたします。メキシコからはオスカー監督アルフォンソ・キュアロンの実弟カルロス・キュアロンの長編第3作となるブラック・コメディ「Amalgama」がノミネートされています。

 

        セクション・オフィシアル

 

③「Destello bravío」(英題「Mighty Frash」)スペイン 2021

製作:Tentación Cabiria / Eddie Saeta

協賛:バダホス地方自治体、カセレス地方自治体、エストレマドゥーラ女性協会、

   エストレマドゥーラ農村基金、エストレマドゥーラ・チャンネル、他

監督・脚本:アイノア・ロドリゲス(マドリード1982

製作者:ルイス・ミニャロ、(エグゼクティブ)アイノア・ロドリゲス

撮影:ウィリー・ハウレギ

編集:ホセ・ルイス・ピカド

キャスト:グアダルペ・グティエレス、カルメン・バルベルデ、イサベル・マリア・メンドサ、

    

       

               (アイノア・ロドリゲス監督)

 

解説:過疎化の進む南スペインの小さな町の女性たちは、特別なことは何も起こらない日常の無関心と、自分たちは幸せであると信じこんでいる場所から解放されたいと願っている。イサ、シタ、マリアの3人の中年女性を焦点にして、美しさの探求と子供のころの憧れが語られる。悪の根源としての家父長制と押しよせるグローバリゼーション、人々が自分の存在の意味を見つけるための寓話。アマチュアの女優を起用して、ドキュメンタリーの手法を採用している。長編デビュー作。

ロッテルダム映画祭2021セクション・オフィシアルのタイガー部門上映(22日)、メキシコのFicuname映画祭(326日)上映、ミステリアス・ドラマ、98分、ティエラ・デ・バロスで撮影。後日作品&監督紹介予定。

 

    

   

     (孤独を抱えた女性たちがスイーツを味わいながら恐怖を語る。映画から)

 

 

④「Las mejores familias」ペルー=コロンビア合作 2020

製作:El Caivo Films / Dynamo

監督:ハビエル・フエンテス=レオン

キャスト:タティアナ・アステンゴ(ルスミラ)、ガブリエラ・ベラスケス(ペタ)、グラシア・オラヨ(カルメン)、グラパ・パオラ、ジェリー・レアテギ、ソニア・セミナリオ、ジョバンニ・Ciccia、セサル・リッター、マルコ・スニノ、ロベルト・カノ、バネッサ・サバ、ヒメナ・リンド、他

 

解説:ルスミラとペタの姉妹は、ペルーの貴族階級のアリシアとカルメンの家で使用人として働いている。彼女たちはファミリーの一員と見なされていた。或る日のこと、町なかでは暴力的な抗議行動が起きているさなかに誕生会が開かれた。ファミリーのメンバー全員がお祝いに集まった。両方のファミリーによって長らく封印されていた秘密が明らかになると、完璧だったはずの貴族階級の世界が泡のように永遠に砕け散った。ペルー社会の構造上の問題、階級主義や人種差別に取り組んだブラック・コメディ。

  

 

      

    

   

            (誕生会に集まった二つの家族)

 

監督紹介ハビエル・フエンテス=レオンは、1968年ペルーのリマ生れ、監督、脚本家、製作者。大学では医学を専攻、映画はロスアンゼルスのカリフォルニア芸術学院で学んだ。デビュー作Contracorriente09)は、サンセバスチャン映画祭2010で新人監督に贈られるセバスティアン賞、サンダンスFF、マイアミ各映画祭観客賞を含む50以上の映画祭で受賞、ゴヤ賞2011ノミネート、オスカー賞2011のペルー代表作品に選ばれている。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『波に流れて』の邦題で上映された。主役を演じたのがタティアナ・アステンゴ、第2作アクション・スリラーEl elefante desaparecido14)にもバネッサ・サバと出演している。トロントFFを皮切りに映画祭巡りをした。本作のブラック・コメディが第3作目になる。他にコロンビアを舞台にしたゲリラをテーマにしたTVシリーズDistrito salvaje186話)を手掛けている。

   

   

        (ローマ映画祭2020でのフォトコール、1017日)

 

 

 

⑤「Amalgama」メキシコ 2020

製作:Besos Cosmicos / 11:11 films / LOKAL

監督:カルロス・キュアロン

脚本:カルロス・キュアロン、ルイス・ウサビアガ

撮影:アルフレッド・アルタミラノ

編集:ソニア・サンチェス

製作者:フアンチョ・カルドナ、マノロ・カルドナ、カルロス・キュアロン、(エグゼクティブ)フランシスコ・カルドナ、ホルヘ・ロンバ

 

キャスト:マノロ・カルドナ(ホセ・マリア・チェマ・ゴメス医師)、ミゲル・ロダルテ(ウーゴ・ベラ医師)、トニー・ダルトン(サウル・ブラボ医師)、スティファニー・カヨ(エレナ・ドゥラン医師)、フランシス・クルス(アベリノ・マガニャ医師)、アレハンドロ・カルバ(オマル)、ヒメナ・エレラ(タマラ)、他

   

    

       

    

      (悩み多き4人の歯科医)

 

解説:ゴメス、ベラ、ブラボ、ドゥランの4人の歯科医は、メキシコ有数のリゾート地リビエラ・マヤで開催される歯科学会で偶然出会うことになる。彼らは彼女に惹きつけられるが、彼女は胸中に何か問題を抱えているようだった。もっとも全員がそれぞれの痛みから逃れようとしていた。こうしてカリブの小さな島で、嫉妬、妬みなど、理性を失った週末を一緒に過ごした彼らは、それぞれの人生に深い傷あとを残すことになる。

18回モレリア映画祭2020正式出品(1031日上映)

 

監督紹介:カルロス・キュアロン(クアロン)1966年メキシコシティ生れ、監督、脚本家、製作者。メキシコ国立自治大学で英文学を専攻した。TV、映画、舞台の脚本家としてスタート、実兄アルフォンソの長編デビュー作Sólo con tu pareja91)を共同執筆、アリエル賞脚本賞を揃って受賞した。同じくアルフォンソの『天国の口、終りの楽園』01Y tu mamá también」)で脚本をコラボしている。他にホセ・ルイス・ガルシア・アグラスの「El misterio del Trinidad」(03)の脚本、カルロス・マルコヴィッチのドキュメンタリー「¿ Quién diablos es Juliette ?」(97)を監督とコラボしている。監督長編デビュー作『ルド and クルシ』は、『天国の口、終りの楽園』でブレークしたガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナのコンビを起用して大ヒット、アリエル賞8部門ノミネーション、メキシコ映画史上第3位となる興行成績を打ち立てた。

   

   

      

          

      (GG・ベルナルとディエゴ・ルナに挟まれたカルロス・キュアロン監督)

  

以下に短編・TVシリーズを除く監督作品を列挙すると、

2008Rudo y Cursi」(『ルド and クルシ』)監督、脚本、

   ニューポートビーチ映画祭2009観客賞受賞、

2013Besos de Azúcal」監督、脚本(ルイス・ウサビアガとの共同執筆)、

   ファンタスポルト2014監督賞受賞

2020Amalgama」監督、脚本、製作

   

セクション・オフィシアルの発表始まる*マラガ映画祭2021 ⑤2021年05月09日 17:32

          スペイン映画3作、ラテンアメリカ映画2作がアナウンスされました

 

        

63日に開幕する第24回マラガ映画祭のセクション・オフィシアルの5作品が発表になりました。スペイン映画3作、ラテンアメリカ映画2作(ペルー=コロンビア合作、メキシコ)、合計5作品と僅かで全体像は見えませんが、とにかくアナウンスされました。いずれ詳細は個別に紹介するとしてタイトル名、監督名ほかを紹介しておきます。今回はスペイン映画2作の紹介。

 

     セクション・オフィシアル

①「El vientre del mar」スペイン 

製作:Testamento / La Periferica Produccions / Filmin / Turkana Films /

   Link-up Barcelona / Bastera Films

協賛:TV3 / IB3 / ICAA / ICEC / Fundació Mallorca Turisme / Mallorca Film Commission /

   Ramón Llull

監督・脚本:アグスティ・ビリャロンガ(パルマ・デ・マジョルカ1953)、代表作『ブラック・ブレッド』10)、『ザ・キング・オブ・ハバナ』15)など。

キャスト:ロジェール・カザマジョール、オスカル・カポジャ、ムミヌ・ディアリョ(ディアヨ)

 

解説:ビリャロンガの新作は、イタリアの作家アレッサンドロ・バリッコ(トリノ1958)が実話に基づいて書いた小説 Oceano Mare1993刊)に着想を得ており、タイトルはその1章から採られている。181675日フランス海軍のフリゲート艦メデューズ号がモーリタニア沖で座礁、生き残りを賭けた乗組員147名が急ごしらえの筏で漂流したが、13日後に救出されたのは僅か15名、一大スキャンダルとなった事件。当時の画家テオドール・ジェリコーが描いた、あの有名な「メデューズ号の筏」(181819)の油彩画は、ルーブル美術館が所蔵している。

『ザ・キング・オブ・ハバナ』の監督&作品紹介は、コチラ201509171024

        

   

 (ビリャロンガ監督とテオドール・ジェリコーの油彩画「メデューズ号の筏」から)

 

    

              (主演のロジェール・カザマジョールとオスカル・カポジャ)

 

    

    (主演の二人と監督)

 

 

②「La casa del caracol」スペイン、ペルー=メキシコ=米国合作

製作:Esto También Pasará / Casita Colora Producciones / Bowfinger Internacional

   Pictures / Basque Filmms / Producciones Tondero S.A.C.(ペルー)/

   Hippo Entertainment(メキシコ=米国)

協賛:ICAA / アンダルシア同盟 / アマゾンプライムビデオ

監督:マカレナ・アストルガ(マラガ生れ)

製作者:マリア・ルイサ・グティエレス(エグゼクティブ)、アルバロ・アリサ、カルロス・フアレス、ミゲル・バリャダルセ(ペルー)、他

キャストハビエル・レイ(アントニオ)、パス・ベガ(ベルタ)、カルロス・アルコンタラ、ノルマ・マルティネス、ルナ・フルヘンシオ(子役)、アバ・サラサール(子役)、フェルナンド・テヘロ、ビセンテ・ベルガラ、ペドロ・カサブランク、エルビラ・ミンゲス、ヘスス・カロサ、アンパロ・アルカラス、他

   


 

   

            (アントニオ役のハビエル・レイ)

 

解説:マカレナ・アストルガの長編映画デビュー作、サンドラ・ガルシア・ニエトの同名小説の映画化、脚本は作家自身が執筆した。小説家のアントニオ・プリエトは、マラガの山岳地方の村でこの夏を過ごそうと決めていた。次の小説の構想を練るために静けさが必要だったからだ。そこで一目で惹きつけられたベルタという女性と知り合った。アントニオは、この一風変わった雰囲気の女性を登場人物にしようと取材を始めると、この地方には多くの秘密が隠され、神秘的な伝説にとり囲まれていることに気付き始める。村で過ごしていると、時には現実が神話を乗り越えていく感覚を覚えていく。過去と現実の亡霊が浮遊しているサイコスリラー。配給Filmax、スペイン公開2021611日が決定している。

 

 

トレビア2人の子役のうちルナ・フルヘンシオはサンティアゴ・セグラの最新作コメディがヒットして今や有名子役、もう一人アバ・サラサールパス・ベガの実の娘、母親似だが演技はどうか。本作でデビューした。

   

   

                        (ベルタ役のパス・ベガ)

 

   

        (左から、ルナ・フルヘンシオ、アバ・サラサール)

   


  (撮影中のパス・ベガ母娘)

 

監督紹介:マラガ生れ、監督、脚本家、プロデューサー。マラガ大学で視聴覚コミュニケーションと教育科学を専攻。2004年よりマルベリャのグアダルピン教育センターで映像と音響学の教授。2019年、アンダルシアの優秀な監督に授与されるASFAAN賞を受賞している。フアン・ルイス・モレノの「Last memory」(15)、マチュ・ラトレの「La pérdida」(18)の助監督も務めている。今回の「La casa del caracol」が長編デビュー作となる。

     


              (本作クランクイン当時のマカレナ・アストルガ監督)

       


  (撮影中のハビエル・レイとアストルガ監督)

  

1990年代のスペイン女性監督についてのドキュメンタリー「Mujeres que dicen acción」「La memoria dormida」「Voces contra el silencio」などを発表する。2011年の短編ビデオ・ドキュメンタリーLos ojos de Brahim29分)が第15回マラガ映画祭短編ドキュメンタリー部門の銀のビスナガ賞RTVA賞を受賞した。旧スペイン領サハラ出身の先天性全盲のブラヒム・モハマドの人生を追ったドキュメンタリー。2013年、初となる短編ドラマTránsito13分)もマラガFF銀のビスナガ賞RTVA賞、アンダルシア最優秀短編賞を受賞、ゴヤ賞2014の短編映画部門にノミネートされた。短編Marta no viene a senarはナタリア・デ・モリーナとセリア・デ・モリーナを起用、同じくマラガFF2017に出品された。

   

       

             (短編ドラマTránsito」のポスター

 

★当ブログ初登場のシネアスト、長編第1作とはいえかなりのキャリアがある。マラガ映画祭の常連ということもあって若干長い監督紹介になりました。何かの賞に絡むと予想します。

  

エンリケ・ウルビスの新作「Libertad」*TVシリーズの劇場版2021年04月06日 20:57

             映画に戻ってきたエンリケ・ウルビスの新作Libertad

    

        

             (女盗賊ルシア <ラ・ジャネラ> を演じたベベを配したポスター)

 

エンリケ・ウルビスと言えば、ゴヤ賞2012の大賞6カテゴリーを制した『悪人に平穏なし』でしょうか。バスクに興味のある方、またはオールドファンでは2002年の『貸し金庫507かもしれません。1962年ビルバオ生れ、監督、脚本家、マドリードのカルロスⅢ世大学でジャーナリズムとオーディオビジュアル情報学部で後進の指導に当たっている。コメディとスリラー・アクションを交互に撮っており、『悪人に平穏なし』以降、2015年に『アラトリステ』TVシリーズ版(全13話のうち2話)、同じ年にバスクの監督8人によるコンピレーション・フィルムBilbao-Bizkaia Exp:DiaTVシリーズGigantes(全12話のうち9話)を手掛けていますが、ここ10年ほど長編映画は撮っておりませんでした。

『貸し金庫507』の作品&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20140325

Gigantes」の作品紹介記事は、コチラ20180729

   

         

                                     (後進の指導にあたるエンリケ・ウルビス)

     

             

        (ヒット作『悪人に平穏なし』の主人公ホセ・コロナドを配したポスター)

 

★このコロナ禍の中で久々の長編大作Libertadで映画界に戻ってきました。本作は5話(各50)完結のTVミニシリーズLibertad」として出発しましたが、第1話を完成させたところで製作側のモビスター+とのあいだで劇場版が決定されるという異例の展開になりました。多くが野外撮影となったのも劇場版を見据えてのこだわりでした。劇場版はTV250分を115分縮小した135分となり、2021326日、放映と公開が同時に行われた。専門家の劇場版の評価は概ねポジティブでしたが、230館で公開されたにもかかわらず、1週間の興行成績はベストテンに入れなかった。アメリカの観客が熱狂したと報じられた『ゴジラvsコング』、実写アニメ『トムとジェリー』、オスカー有力候補の『ノマドランド』などが上位を占めた。コロナ禍の中で、TV放映と劇場公開が同時という判断がベターだったのかどうかの検討はこれからでしょうか。

   

   

  「LibertadBandoleros2021

製作:Movistar+ / LaZona Producciones (劇場版)A Contracorriente Films

監督:エンリケ・ウルビス

脚本:ミゲル・バロス、ミシェル・ガスタンビデ

撮影:ウナックス・メンディア

音楽:マリオ・デ・ベニト

編集:アスセン・マルチェナ

美術:マヌエル・ルデニャ

キャスティング:ロサ・エステベス、ルイス・ヒメノ

衣装デザイン:パトリシア・モンネ

メイクアップ&ヘアー:エリ・アダネス、ノエリア・ペソ、(特殊メイク、NDスタジオ)ナチョ・ディアス、ソフィ・エルナンデス、フアン・オルモ、(補足メイク)ロラ・エルナンデス、アリディアン・ノブレガ、(ヘアー)セルヒオ・ぺレス・ベルベル、(アシスタント)パウラ・クルス

製作者:ラファ・タボアダ、(エグゼクティブ)フラン・アラウホ、ドミンゴ・コラル、ゴンサロ・サラサール=シンプソン、

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2021年、スリラー・アクション、撮影地マドリード周辺地区、セゴビア、クエンカ、グアダラハラ、カスティーリャ・ラマンチャのルピアナにあるサンバルトロメ修道院など、野外撮影期間はパンデミアで20203月末にロックダウンされる前の1週間に集中的に行われた。2021326TV放映と公開が同時に行われた。

 

ストーリー1809年のアンダルシアが舞台、イギリス艦隊がスペインのトラファルガー岬の沖でナポレオンに勝利してから4年が経っていた。戦争で戦った兵士たちのポケットは空っぽで、仕事のない故郷に戻ることもかなわず、スペインは混乱と戸惑いに被われていた。一方、ガローテ刑の宣告を受けて収監中だったラ・ジャネラの異名をもつ女盗賊に恩赦が届き、独房で生まれた息子フアンと共に17年ぶりに出所した。フアンは死刑執行人の見習いをさせられ、塀の外の世界は何も分からなかった。釈放されたとはいえ完全な自由を得たわけではなく、フアンの父親である有名な盗賊ラガルティホ、別の有力な盗賊アセイトゥノ、頑迷な知事エル・ゴベルナドールが二人の行方を探し回っていた。長年自由を奪われていた母と息子は、自由に生きることを希求していた。ウエスタンとサバイバル・スリラーの要素を取り入れ、歌手のベベを主役に起用した、マッチョな時代のネオウエスタン女性版。

  

            

                        (息子フアン、ラ・ジャネラ、レイナ)

 

主なキャスト

<ベべ>ニエベス・レボーリェド・ビラ(ルシア、ラ・ジャネラ)、ジェイソン・フェルナンデス(息子フアン)、ハビエル・デイベ(夫リサルド/ラガルティホ)、イサク・フェリス(アセイトゥノ)、ルイス・カジェホ(エル・ゴベルナドール)、ホルヘ・スケト(ジョン)、ペドロ・カサブランク(ドン・アナスタシオ)、マノロ・カロ、ソフィア・オリア(レイナ)、ホセ・ソスペドラ、ヒネス・ガルシア・ミリャン、アントニオ・ベラスケス(サルダ―ニャ)、ロヘル・カサマジョール(キャプテン・エクスポシト)、他多数

 

 

    TV版「アラトリステ」失敗のトラウマに苦しんだエンリケ・ウルビス

 

★監督は常日頃から望んでいた野外での撮影や馬と乗り手の配置、臨機応変に即興を可能にする作業計画を立てることができた。「このようなかたちの撮影は、私の人生の夢」だったことを認めている。歴史物を撮りたいと思っていたところ、17世紀を舞台にした「Las aventura del capitan Alatriste」のTV版を撮るチャンスを得た。2006年公開の劇場版は、スペイン国内ではレベルテのベストセラー小説のお蔭か大ヒットとなった。しかし当時の時代背景に暗い海外の観客には、原作のエピソードの数珠つなぎでは、ヴィゴ・モーテンセンの魅力だけでは成功しなかった。

          

TV版の監督は5人、前述したようにウルビスは2話を監督した。アラトリステ隊長はその独特なキャラクターゆえに依然として人気がありました。しかしレベルテの小説に忠実に従えば、彼は自惚れやの剣客ではなく傭兵、雇われの殺し屋でしたが、そのことを私たちはよく理解していませんでした。スペイン黄金時代の撮影をブダペストでエキストラのハンガリー人に囲まれて撮った。みんな流暢なスペイン語を離したが、何かが違っていたとウルビスは回想している。

 

★「監督に負債を弁償する義務はなかったが恐怖に襲われた」とも告白している。谷底から彼を救い出してくれたのがMovistar+ の「Gigantes」(全12話)だった。以前作品紹介をした折には全8話でしたが、最終的には、2シーズン6話ずつの12話になり、彼は9話を監督した。このシリーズの好評が新作「Libertad」に繋がったようです。歴史物を撮りたいと思い、フランコ没後の197612月から放映が始まった長寿TVシリーズCurro Jimenez(全52話)などの研究を重ねたという。これは19世紀前半に実在した盗賊クーロ・ヒメネスに材をとっている。Libertad」に登場する女盗賊ラ・ジャネラはフィクション、当時女性の盗賊は多くはなかったがスペインやイタリアに存在していたという。「第1話のカットを製作のモビスター+に見せたところ、大画面で見たのですが、このような素晴らしい作品を劇場で見られないのは残念だ、と誰もが納得した。翌日映画化が決定したのです。私はスクリーンを諦めません」と監督。

     

       

★テレビは映画を食べて成長した、前者は後者に恩恵を受けている。お互いに助け合わなければならない。TVシリーズの話ばかりしていますが、些細なことです。また見たいと思うのは『ジョーズ』とか、ロベール・ブレッソンの映画でしょうか、あるいは『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなTVシリーズでしょうか。監督は二つのフォーマットに同時に意欲を燃やし、20世紀のスペイン内戦など歴史物を視野に入れている。

 

      ラ・ジャネラに歌手べべことニエベス・レボーリェド・ビラを起用

 

<ベべ> ニエベス・レボーリェド・ビラ1978年バレンシア生れの42歳、シンガーソングライター、映画俳優。ホセ・ルイス・クエルダLa Educación de las hadas06)に出演、ゴヤ賞2007ルシオ・ゴドイと共同で歌曲賞を受賞、助演女優賞にもノミネートされた。2007フリオ・メデムの「Caótica Ana」)にベベ・レボーリェドとして出演している。今回久しぶりの映画出演で主役のラ・ジャネラ役に起用された。以前から射撃の経験はあったが、今回のために刀の扱いを特訓して撮影に臨んだということです。息子フアンを演じるジェイソン・フェルナンデスは子役出身、アントニオ・クアドリの「El corazón de la tierra」に少年役でデビュー、TVシリーズや短編に出演、今回初めて大役を演じることになった。既に次回作のTVシリーズAlba13話)がネットで配信が始まっている。

 

         

         (シンガーソングライターのベベ)

 

           

                            (ラ・ジャネラと息子フアン)

 

★盗賊アセイトゥノ役のイサク・フェリスは、1979年アンドラ生れの俳優、監督、編集。「Gigantes」に出演、ホセ・コロナド演じる麻薬組織のゲレーロ家の長男ダニエルを演じた。TVシリーズ出演が主だが、パストール兄弟の『ラスト・デイズ』(13)やガウディ賞2021のカタルーニャ語部門作品賞ノミネートのラモン・テレンスLa dona il-legalに主演している。短編だが3作を撮っている。ラ・ジャネラの夫リサルドで綽名ラガルティホ役のハビエル・デイベ1970年ア・コルーニャ生れ、TVシリーズ出演が主で、代表作はMatalobos091360話)、Néboa208話)など。

 

       

                                             (撮影中の監督とイサク・フェリス)

   

       

                   (マノロ・カロとラガルティホ役のハビエル・デイベ)

 

ルイス・カジェホは、1970年セゴビア生れ、監督との接点はTV版「Alatriste」、当ブログではラウル・アレバロの『静かな男の復讐』/『静かなる復讐』(ゴヤ賞主演男優賞ノミネート)、アメナバルの『戦争のさなかで』、ベニト・サンブラノの「Intemperie」の悪役、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」など、その都度キャリア紹介をしています。同じくソフィア・オリアTV版「Alatriste」に続いて、「Gigantes」ではマフィアの孫娘に扮した。ほかドン・アナスタシオ役のペドロ・カサブランクホルヘ・スケトマノロ・カロなど。

  

          

    (ペドロ・カサブランクとソフィア・オリア) 

 

           

        (ソフィア・オリアとジェイソン・フェルナンデス)

 

★脚本家、助監督のミゲル・バロスは、「Gigantes」(12話)、マテオ・ヒルの『ブッチ・キャシディ 最後のガンマン』、イサベル・コイシェの「Nadie quiere la noche」、マテオ・ヒルとの共同執筆『ミダスの手先』(6話、Netflix配信中)など。ミシェル・ガスタンビデは、『貸し金庫507』からタッグを組み、「La vida mancha」、『悪人に平穏なし』、「Gigantes」(10話)のほか、フリオ・メデムの『バカス』やハイメ・ロサーレスの『ペトラは静かに対峙する』などを手掛けている。


「Black Beach」 エステバン・クレスポの新作*ゴヤ賞2021 ⑬2021年02月27日 16:32

              アフリカで暗躍する石油カンパニーのアクション・スリラー

 

   

 

エステバン・クレスポの新作Black Beachは、ゴヤ賞ノミネート6カテゴリーと大いに気を吐いています。撮影・編集・美術・プロダクション・録音・特殊効果賞と地味な部門だが、マラガ映画祭上映後、1ヵ月後には公開されている。Netflixが絡んでおり、フランスの1月を皮切りに23日にはアメリカ、イギリスなど各国で既に配信が始まっております。日本はまだ準備中とかで待たされていますが、言語を選んで視聴できます。詳細はそれからにしたいが、ラウル・アレバロカンデラ・ペーニャ、チリのパウリーナ・ガルシアの他、アレバロのパートナーであるメリナ・マシューズがドラマでも夫婦役を演じています。一応データ、キャスト、ストーリーをご紹介しておきたい。 

          

      (エステバン・クレスポ監督、マラガ映画祭2020のフォトコールから)

 

 Black Beach

製作:LAZONA Films / David Naranjo Villalonga / Crea SGR / Scope Pictures /

    Nectar Media / Macaronesia Films / Nephilim Producciones  協賛RTVE、ICAA

監督:エステバン・クレスポ

脚本:エステバン・クレスポ、ダビ・モレノ

音楽:アルトゥーロ・カルデルス

撮影:アンヘル・アモロス

編集:ミゲル・ドブラドフェルナンド・フランコ

美術・プロダクション・デザイン:モンセ・サンス

プロダクション・デザイン:カルメン・マルティネス・ムニョス

プロダクション・マネージメント:ハルナ・セイドゥ、マクロード・アイス・インプライム、他

キャスティング:パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ、アナ・サインス=トラパガ

録音:コケ・F・ラエラセルヒオ・テストンナチョ・ロヨ・ビリャノバ

特殊効果:ラウル・ロマニリョスジャン=ルイ・ビリヤード

製作者:ダビ・ナランホ、(エグゼクティブ)ヘスス・ウリェド・ナダル、コンチャ・カンピンス(マドリードGhana)、ダビ・ラゴニグ(ベルギー)、他

 

データ:製作国スペイン=ベルギー=米、スペイン語・英語、2020年、アクション、政治スリラー、115分、撮影地グラン・カナリア、マドリード、ガーナ共和国、ブリュッセル、撮影期間201959日~71日、公開スペイン2020925日。ネット配信は20211月仏、2月伊、米、英などで開始。

映画祭・受賞歴:マラガ映画祭セクション・オフィシアル(823日上映)、ゴヤ賞20216カテゴリーにノミネーション(36日発表)

 

キャスト:ラウル・アレバロ(カルロス・フステル)、パウリナ・ガルシア(カルロスの母エレナ)、カンデラ・ペーニャ(NGOアレ/アレハンドラ)、クロード・ムスンガイ(グラハム)、バブ・チャム(ギジェルモ・ムバ将軍)、リディア・ネネ(ルシア)、メリナ・マシューズ(カルロス妻スーザン)、エミリオ・ブアレ(大統領の息子レオン)、ムーリー・ジャルジュ(グレゴリオ・ンドング大統領)、アイダ・Wellgaya(カルロスの元恋人アダ)、ジミー・カストロ(カルロスの友人カリスト・バテテ)、テレシタ・エブイ(アダの母親)、ダイロン・タジョン(カリストJr.)、フェンダ・ドラメ(アレの助手エバ)、オリビエ・ボニ、フレッド・アデニス(ダグラス)、ジョン・フランダース(ドノバン)、ルカ・ぺロス、ジュリアス・コッター(ONU職員ロナルド)、アンバー・シャナ・ウィリアムズ(アフリカ人記者)、その他大勢

 

ストーリー:カルロス・フステルは、アメリカの石油カンパニーのスペインCEOに昇進したばかり、8ヵ月になる身重の妻スーザンと国連のベテラン外交官の母親とベルギーのブリュッセルで暮らしている。贅沢三昧の上流階級に属しているが会社の共同経営者になることを期待している。妻により豊かな生活が送れるようニューヨークへの移住を計画している。そんな折も折、はるか彼方のアフリカの島国でカンパニーの技術者が、カルロスの古い友人カリスト・バテテによって誘拐される事件が起き、調停役としてカルロスに白羽の矢が立った。かつて暮らしていたアフリカに飛び、ンドング大統領の息子レオン所有の家に居を定める。スペインNGOの協力者アレと再会するが、想像以上の危険なミッションであることが分かる。元恋人のアダがカリストと結婚して息子がいること、ブラック・ビーチ刑務所に収監されていることを突き止めるカルロス。政治的対立で起きた誘拐事件は何百万もの契約を危険に晒すことになる。

ゴチック体はゴヤ賞ノミネーションを受けている印。

 

 

        タイトル「Black Beach」は赤道ギニアの最恐の刑務所の名前

 

★タイトルのBlack Beachブラック・ビーチというのは、かつての植民地時代にアフリカ中部に位置する赤道ギニア共和国の首都マラボに建設された刑務所の名前、スペイン語でPlaya Negraと言い、地下牢のある世界でも最恐の刑務所の一つであった。独立前はスペイン、フランス、ポルトガルが宗主国、従って現在の公用語も3語である。現大統領テオドロ・オビアン・ンゲマが当時の刑務所長でした。常に即決裁判、政治的な反主流派に対しては残酷な拷問などを科した。

    

★クレスポ監督がこのタイトルを選んだのは、現在でも金権政治を行っているとか暴君であるとか明白ではないにしろ、符合する事実もあるからです。というのも2016年副大統領に就任した息子が高級車に目がなく、2019年スイス検察の公金横領事件の捜査打ち切りの司法取引に応じて高級車25台を没収され競売にかけられた事件が報じられた。背景には石油の利権に群がる欧米の強国が片棒を担いでいる。

 

★スリラーであることから結末を書くことは控えたいが、遠いアフリカの小国を背景に登場人物が入れ乱れ、政治的、部族的対立、ONUの画策などが複雑に絡み合ってアクション映画では一概に括れない。有能なビジネスマンがセンチメンタルな過去と向き合う倫理的なメロドラマの部分もあり、加えて家族の相克、無実の民の死屍累々、親しい友人の死など、テーマは盛りだくさんです。ヤッピー世代のオデュッセイア、カルロスは無事に帰還できるのか。

 

             

           (カルロスとグラハム役のクロード・ムスンガイ)

 

★過去にも同じようなテーマを扱った映画はかなり多い。アフリカで暗躍する多国籍企業をテーマにしたジョン・ル・カレの小説の映画化、フェルナンド・メイレレスの『ナイロビの蜂』05)では、レイチェル・ワイズがアカデミー賞助演女優賞を受賞した。同じ年には舞台は中東の架空の国シリアナの石油利権をめぐる陰謀を描いたスティーヴン・ギャガンの政治スリラー『シリアナ』も製作され、こちらはCIA工作員役のジョージ・クルーニーがアカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞の助演男優賞を受賞している。

 

ラウル・アレバロは、1979年マドリード近郊のモストレス生れの監督、俳優。キャリア&フィルモグラフィーは、2016年の初監督作品Tarde para la ira邦題『物静かな男の復讐』でアップしています。彼は本作でゴヤ賞2017新人監督賞を受賞している。バツグンの演技で存在感を示したカンデラ・ペーニャイシアル・ボリャインLa boda de Rosaで主演女優賞にノミネーションされています。スーザン役のメリナ・マシューズ(バルセロナ1986)は、アレバロの現パートナーということですが、以前のアリシア・ルビオとは別れたようですね。

ラウル・アレバロの主な紹介記事は、コチラ20170109

 

     

     

          (ラウル・アレバロとカンデラ・ペーニャ、映画から)

 

★監督紹介:エステバン・クレスポは、1971年マドリード生れ、監督、脚本家、2012年に撮った短編6作目Aquel no era yo25分)が、米アカデミー賞2014にノミネートされたことで、オスカー賞ノミネート監督としばしば紹介される。本作はゴヤ賞2013短編映画賞受賞の他、マラガ映画祭2012銀のビスナガ短編賞CinEuphoria2014、メディナ映画祭ほか、国内外の受賞歴を誇る。アフリカの少年兵の記事にインスパイアされて製作した。英語の分かる子供たちを選んで起用、アフリカを再現しているが、実際の撮影はトレドとその近郊の農場で、新作と同じアンヘル・アモロスが手掛けた。

  

       

                   (ゴヤ賞2013短編映画賞のトロフィーを手にした監督

    

       

       (アフリカの少年兵をテーマにしたAquel no era yo」のポスター

 

★短編の受賞歴は以下の通り:

2005年「Amar」ポルト短編映画祭2006大賞受賞

2009年「Lala」メディナFF観客賞、ラルファス・デル・ピ映画祭監督賞ほかを受賞

2011年「Nadie tiene la culpa」ラルファス・デル・ピFF観客&脚本賞、

    モントリオール映画祭2011審査員賞を受賞

2012Aquel no era yo」上記

 

★長編デビュー作Amarはマラガ映画祭2017にノミネートされ、本邦では『禁じられた二人』という全く意味不明の邦題でNetflixで配信された。ない知恵を絞らないで欲しい。2005年に同タイトルで短編を撮っている。個人的には評価できなかったので紹介を断念したが、功績は新人マリア・ペドラサとポル・モネンを世に送り出したこと。新作が第2作目になります。

 

            

              (長編デビュー作Amar」のポスター