F・トゥルエバの新作はコロンビア映画*サンセバスチャン映画祭2020 ⑱2020年10月10日 10:25

      クロージングに選ばれたコロンビア映画「El olvido que seremos

 

      

 

★カンヌ映画祭2020のコンペティション部門にノミネートされた作品El olvido que seremosは、コロンビアの医師で人権活動家のエクトル・アバド・ゴメスの伝記映画、1987825日、メデジンの中心街でパラミリタールの凶弾に倒れた。アバド・ゴメスの息子エクトル・アバド・ファシオリンセの同名小説の映画化。カンヌFFはパンデミックのせいで開催できなかった。その時点でサンセバスチャン映画祭上映が視野に入っていたのだが、結果は予想通りになった。既に本国で公開されていたことも考慮されたのかアウト・オブ・コンペティションながらクロージング作品に選ばれた。コロンビア映画なのに監督も主役も脚本もスペイン人になった経緯は、カンヌFFの紹介記事で既にアップしています。他に小説家アバド・ファシオリンセのキャリア、ボルヘスのソネットから採られたという原題の経緯なども紹介しています。部分的に重なりますが、ラテンビート一押しの作品として再度アップすることにしました。フェルナンド・トゥルエバ監督もハビエル・カマラも、ラテンビートが縁で来日したシネアストですから脈があるかもしれない。

El olvido que seremos」の作品紹介は、コチラ20200614

  

  

             (エクトル・アバド・ファシオリンセ)

 

   

 「El olvido que seremos(「Forgotten We'll Be」)2020

製作:Dago García Producciones / Caracol Televisión

監督:フェルナンド・トゥルエバ

脚本:エクトル・アバド・ファシオリンセ(原作)、ダビ・トゥルエバ

撮影:セルヒオ・イバン・カスターニョ

音楽:ズビグニエフ・プレイスネル

編集:マルタ・ベラスコ・ディアス

美術:カルロ・オスピナ

衣装デザイン:アナ・マリア・ウレア

メイクアップ:ラウラ・コポ

プロダクション・マネジメント:マルコ・ミラニ(イタリア)

助監督:ロレナ・エルナンデス・トゥデラ(マドリード)

録音:ヌリア・アスカニオ

視覚効果:ブライアン・リナレス

スタント:ミゲル・アレギ、ジョン・モラレス

製作者:マリア・イサベル・パラモ(エグゼクティブ)、ダゴ・ガルシア、クリスティナ・ウエテ

 

データ:製作国コロンビア、スペイン語、2020年、136分、カラー&モノクロ、伝記、撮影地メデジン、ボゴタ、マドリード、トリノ。公開コロンビア2020822日、スペイン20213月予定

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2020コンペティション部門正式出品(パンデミックで上映なし)、サンセバスチャン映画祭2020クロージング作品(926日)

 

キャスト:ハビエル・カマラ(エクトル・アバド・ゴメス)、パトリシア・タマヨ(妻セシリア・ファシオリンセ・デ・ゴメス)、フアン・パブロ・ウレゴ(長男エクトル・アバド・ファシオリンセ)、セバスティアン・ヒラルド(アルフォンソ・ベルナル)、ダニエラ・アバド、アイダ・モラレス、ホイット・スティルマン(ドクター・リチャード・サンダース)、他多数

 

ストーリー1987825日メデジンの中心街、医師でカリスマ的な人権活動家のエクトル・アバド・ゴメスは、二人組のパラミリタールのシカリオの凶弾に倒れた。アバドが撃たれた日は、子供たちが最愛の父親を、妻が善き夫であり優れた同志を奪われた日でもあった。1980年代、暴力が吹き荒れたメデジンで、アバドは医師として家族の長として、また大学教授として後進を育てていた。我が子たちは教育を受け寛容と愛に包まれていたが、恵まれない階級の子供たちのことが常に心に重くのしかかっていた。悲劇が顔を覗かせていた。

  

         

           (ハビエル・カマラ扮する父と息子、映画から)

 

          カラーとモノクロで描く暗殺された父に捧げる永遠の愛

 

★原作はベストセラーだったが、映画化までの道のりは長かった。一つには複雑なコロンビアの社会状況と無縁ではなく、およそ3年前、コロンビアのカラコルTV社長ゴンサロ・コルドバ(2012~)の発案で映画化が企画され、オスカー監督フェルナンド・トゥルエバに白羽の矢が立った。交渉に当たったのは副社長ダゴ・ガルシアで、長い紆余曲折の後、本格的に始動したのは2019年だった。紆余曲折については、後ほど監督に語ってもらいます。本作では女優として出演しているダニエラ・アバドは、主人公の孫娘、つまり作家エクトル・アバドの娘です。彼女は映画監督として祖父暗殺をめぐるアバド家の証言集Carta a una sombra15)というドキュメンタリーを撮っています。

 

     

              (エクトル・アバド・ゴメスと娘たち)

 

 

★予告編から推測するに、本作は作家アバド・ファシオリンセ(メデジン1958)がまだ少年だった1970年代前半はカラーで、成人した80年代はモノクロで撮るという2部構成になっているようです。下の家族写真によれば、作家は6人姉弟の第5子にあたる。

 

   

   (父親役のハビエル、一人置いて母親セシリア役のパトリシア・タマヨ)

 

   

 (就寝前に父親に絵本を読んでもらうエクトルと妹)

 

                   

                  (80年代の父とフアン・パブロ・ウレゴ扮する息子)

    

    

      (息子とその恋人か)

           

★エクトル・アバド・ファシオリンセの小説「El olvido que seremos」が上梓されたのは200511月、年内に3版したというベストセラー、スペインでの発売は2006年だった。サンセバスチャン映画祭上映に合わせて現地入りしたトゥルエバ監督と主人公アバドを演じたハビエル・カマラにインタビューしたエルパイス紙の記事によると、「何年ものあいだ、私はこの本に敬意を表してきた。私の人生に贈られてきたと思っていた」、しかし「ハビエル・カマラを主人公にした映画化の依頼には最初は断りました」と監督。依頼を受けて監督するという経験はなく、「私は個人的な映画をつくるだけで、というのも映画は第三者を介しないのが一番いいからです。もし外部から提案がきた場合、内面化できるなら引き受けるだけです。小説については視覚化できると感じていました」と説明する。

 

        

      (監督とハビエル・カマラ、マリア・クリスティナ・ホテル、926日)

 

★「小説は私的な絆が感じられるアングルを多く持っている。例えば家族物語、父と息子の関係などが語られている。私にとってこの映画は、幸福について、愛について、素晴らしいあわだちについて語っており、そして現実がいかにしてフィエスタを台無しにしてしまうかを伝えている。更に5人の姉妹や母親、メイドやシスターなど女性ばかりに囲まれて育つ男の子エクトルの魅力の虜になった。私が好きな映画や本をいくつも思い出させた」。にもかかわらずコロンビアのプロデューサーの提案をできるだけかわそうとした。それは「映画館に連れ出すのは難しそうに思えたからです。私の母が人生で再読した2冊のうちの1冊だったのですが」と苦笑する。幾度となく会合がもたれたが、ありがたいことだがその都度お断りした。

            

             

                (撮影中の監督とカマラ)

 

★彼の背中を押したのは製作者の妻クリスティナ・ウエテだった。彼女はたった一日で再読してしまうと、同意してしまった。それで彼も受け入れることにした。「不可能もここで受け入れるなら可能になるかもしれない。クリスティナはいつも不意を衝く」と思ったそうです。コロンビア行きが決定した。斯くのごとくこのカップルは夫唱婦随ならぬ婦唱夫随なのでした。クリスティナ・ウエテについては、本作の脚色を手掛けた義弟ダビ・トゥルエバが、ゴヤ賞2014を総なめにした「『ぼくの戦争』を探して」でご紹介しています。主役のハビエル・カマラと監督が宿願のゴヤの胸像を初めて手にした映画です。ウエテはスペインの女性プロデューサーの草分け的存在であり牽引役を担っている。

「『ぼくの戦争』を探して」の主な紹介記事は、コチラ201401301121

クリスティナ・ウエテについては、コチラ20140112

   

     

               (監督とカマラ、サンセバスチャンFFフォトコール、9月26日)

 

    

  

     (上映後のプレス会見、同上)

 

★実話を題材にするということはデリケートさが求められる。「二人(監督とカマラ)にとって資料集めをするのは興味あることだったが、私は映画を撮るためにここに来て、現実は既に滑走路で待機していた」と監督。「最初に私が考えた心配の種は、カマラがコロンビア人でないことでした。そのとき作家アバドから監督を引き受けてくれた感謝と、父親そっくりの俳優ハビエル・カマラは理想的だというメールが届いた」。父親を演じる俳優はコロンビア人から探すのが理想だと返事した。カマラはコロンビア訛りも分からないしメデジンもよく知らない。それだけでなくエクトル・アバド・ゴメスとは違いが大きすぎる。しかしハビエルは多くの好条件を兼ね備えていた。例えば非常に優秀な役者であることに加えて、アバド・ゴメスのように人生を愛し、生きることを謳歌している。これは上手く化けられるかもしれない。

 

★当のカマラはアバドの人格を「アメリカ人がよく口にする、実際より大きい」と定義した。また「ほとんど捉えどころのない」驚きの人だったとも。資料集めの段階でコロンビアにはアバドも載っていた脅威のリストというのがあるのを知った。このリストに載っている人は急いでコロンビアから出ていった。このリストに載っていたある人物から、例えばもしシンボリックな存在で親切で良心的な人なら残ってはいけなかった、とカマラは聞かされた。「そのとき、現実のアバドという人間の重みを感じ、撮影からは切り離そうと思った」。「とても興味深いのは、それぞれがエクトルに親切にしてもらったとか、娘たちは娘たちで父は優しいパパだったとか口にした。どうも彼は感動を演出する才に長けていたようだ」とカマラ。

 

    

(現地入りしたハビエル・カマラ、マリア・クリスティナ・ホテル玄関前、923日)

 

★作家が脚本を辞退したのは「小説を書いていたときの苦しみを二度と味わいたくなかった」からだと監督。それに脚本執筆の経験がなかったからとも語っているが、作家は娘ダニエラのドキュメンタリーの脚本を手掛けていた。撮影が始まると邪魔をしたくないと、ヨーロッパへ旅立ってしまった。「しかし最終的にはお会いできた」とカマラ。「3年前に監督に頂いた小説にサインしてもらいたかった。そして彼は彼で姉妹たちに渡したい私の写真を撮った。私が彼に映画は見たかと尋ねると、『いや、あなたが私のお父さんと同じだと思ったら興奮してしまうだろうね』と返事した。これ以上の褒め言葉はなかったでしょう」とカマラは述懐した。

 

 

        マジックリアリズムが今でも浮遊するコロンビア

 

★撮影中は実際のドクター・アバドの逸話が溢れていたとご両人。「脇役の俳優が背広を着てやってくると、私はアバド先生に2度お会いしています。2度目のときこの背広を着ていました。もし映画で着ることができたらと思ってと話した。ある女優さんは私の夫はアバド先生に命を助けてもらいました」など。カマラは「こういうことが次々に起こったのです」と強調する。通りで行き会う人々は、彼があたかも実際のドクターであるかのように接した。「マジックリアリズムはここコロンビアでは実際に存在しています。本の中だけでなく人々の中に存在し、彼らの視線を通してそれに気づかされます」。同じように憎しみも感じます。例えば埋葬のシーンを撮るための建物が必要だったが、教会はどこも拒絶したのです。

 

★トゥルエバ監督は「コロンビアはまだ闘いが終わっていないのです」と力をこめる。「アバドと妻セシリアが最後の会話をするシーンを撮ろうとした日、いくつかの道路が通行止めになった。そのニュースをラジオで聞いた未亡人セシリアは、直ぐタクシーで現場に駆けつけ、警察のバリアの前に立っていた。彼らに『どこに行くつもりだ』と尋問されると、『うるさいわね、通しなさい、私が主人公よ!』」ww。おそらく90歳はとうに過ぎていると思うが、かつての闘士の面目躍如。

 

       

     (セシリア・ファシオリンセ・デ・ゴメス、息子とのツーショット、201711月)


追加情報: 英題 『Forgotten We'll Be  の邦題で、ラテンビート2020のオープニング上映が決定。
        本作はオンラインではなく劇場上映です。

エドゥアルド・クレスポの「Nosotros nunca moriremos」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑰2020年10月04日 10:30

          セクション・オフィシアル部門にノミネートされたアルゼンチン映画

   

      

 

★ラテンアメリカ諸国からコンペティション部門に唯一ノミネートされた、エドゥアルド・クレスポの第3作目Nosotros nunca moriremosは、賞には絡めませんでしたが評価の高かった作品でした。上質のロードムービーのようで、主役の母親を演じたロミナ・エスコバルがトランスセクシュアルということも話題のようでした。クレスポは撮影監督でもあり、昨年のホライズンズ・ラティノ部門のオリソンテス受賞作品ロミナ・パウラDe nuevo otra vezを手掛けています。新作はラテンアメリカ映画の登竜門的セクションであるホライズンズ・ラティノではなくコンペティション部門ということで、コロナ禍の状況下にしては監督以下大勢が現地入りしていました。今年は中止と諦めかけていたラテンビート2020がオンラインで開催されるということで、もしかしたらと期待してアップしておきます。

De nuevo otra vez」の作品紹介は、コチラ20190910

    

         

     (ロミナ・エスコバルとエドゥアルド・クレスポ、923日のフォトコール)

 

 Nosotros nunca moriremos(「We Well Never Die」)2020

製作:SANTIAGO LOZA / RITA CINE / PRIMERA CASA / EDUARDO CRESPO

監督:エドゥアルド・クレスポ

脚本:エドゥアルド・クレスポ、サンティアゴ・ロサ、リオネル・ブラベルマン

撮影:イネス・ドゥアカステージャ

音楽:ディエゴ・バイネル

編集:ロレナ・モリコーニ

製作者:サンティアゴ・ロサ、エドゥアルド・クレスポ、ラウラ・マラ・タブロン

 

データ:製作国アルゼンチン、スペイン語、ドラマ、83分、スペイン公開20213月予定

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2020セクション・オフィシアル部門正式出品、スペイン協力賞ノミネート

 

キャスト:ロミナ・エスコバル(母)、ロドリゴ・サンタナ(次男ロドリゴ)、ジェシカ・フリッケル(消防士)、ジョヴァンニ・ぺリツァーリ(消防士)、ブライアン・アルバ(長男)、セバスティアン・サンタナ、他

 

ストーリー:母親はロドリゴを連れて、22歳になる長男が死んだばかりという小さな町を訪れている。息子の遺体を確認し埋葬するためである。この穏やかな土地で服喪の最初の時間が流れる。次男ロドリゴは大人たちの痛みを垣間見ながら、それとは気づかれずに子供時代に別れを告げるだろう。母親は息子の死の謎を明らかにしたいと思っているが、それは彼の過去の人生を辿ることでもあった。この透明な映画は、愛を捧げようとする孤独な人々のメランコリックで控えめなユーモアに溢れている。家族間で露わになる記憶の合流をパラレルに描くことで、それぞれが自身と向き合うことになるだろう。時が止まったような忘れられた土地を彷徨う上質のロードムービー。 

 

 

エドゥアルド・クレスポ紹介、1983年アルゼンチンのエントレ・リオス州クレスポ生れ、監督、脚本家、撮影監督、製作者。2012年、長編Tan cerca como pueda(マル・デル・プラタ映画祭正式出品)、2016年、生れ故郷クレスポについてのドキュメンタリーCrespoLa continuidad de la memoria、サンティアゴ・ロサと共同監督したTVシリーズDoce casas : historia de mujeres devotas14)は、マルティン・フィエロ賞ほかを受賞した。撮影監督としては上記のDe nuevo otra vez」の他、サンティアゴ・ロサBreve historia del planeta verde19)、イバン・フンドHoy no tuve miedo11)などが挙げられる。

     

       

★主役のロミナ・エスコバルとサンセバスチャンの散策も楽しんだ監督、「ここに来られることが夢でした」。その理由を言う必要はありませんね。ロミナのほうが注目されても彼女の傍らで静かに見守りながらにこやかに対応する監督、映画と同じように静謐で控えめな監督は、アルゼンチンの農村部で暮らす人々に敬意を表する映画を撮った。

 

       

       (クルサール会場近辺を散策するクレスポ監督とロミナ・エスコバル)

 

ロミナ・エスコバル(ブエノスアイレス1974)は、主役の母親に抜擢された。昨年のベルリン映画祭2019パノラマ部門に出品された「Breve historia del planeta verde」は、ロサ監督がテディー賞テディー・リーダー賞2冠を受賞した作品。本作ではロミナ・エスコバルはトランスセクシュアルのDJ役になった。アルゼンチンではかなり注目されているスターのようで、TVシリーズPequeña Victoria1949話)出演で人気があるようです。新作ではトランスセクシュアルでない役柄に抜擢され「トランスセクシュアルの役柄ばかりでうんざりしていました。今回の母親役で、私が尊敬し、人生で私を支えてくれたアルゼンチンのすべての女性に敬意を表します」と、サンセバスティアンで語っている。アルゼンチンのTV局ともスカイプでインタビューを受けるほどの人気ぶりです。2006年のドノスティア栄誉賞受賞者マット・デイモンのツーショットや大ファンのヴィゴ・モーテンセンにも会え、大いに映画祭を楽しんだようです。

Breve historia del planeta verde」の作品紹介は、コチラ20190219

   

      

                    (母親役のロミナ・エスコバル、映画から)

  

              

            (ロドリゴ役のロドリゴ・サンタナ)

 

   

(消防士に扮するなるジョヴァンニ・ぺリツァーリとジェシカ・フリッケル)

 

   

                          (母親とロドリゴ)

 

   

       (「Breve historia del planeta verde」のポスター)

 

 

★映画祭はとっくに終了してしまいましたが、気になりながら割愛していた作品を、1119日から開催されるラテンビートを視野に入れてアップできたらと思っています。


受賞結果落穂ひろい*サンセバスチャン映画祭2020 ⑯2020年09月29日 15:16

       ホライズンズ・ラティノ部門の受賞者はメキシコのフェルナンダ・バラデス

 

★セクション・オフィシアル部門以外のホライズンズ・ラティノ部門、ニューディレクターズ部門、サバルテギ-タバカレラ部門などの受賞者は全員女性監督、メイド・イン・スペイン部門でも触れましたが元気な若い女性たちの受賞が目立ちました。今年はラテンビートもないことだしと勝手に決め、作品紹介が手薄でしたが、なかには受賞作をアップしているのもありました。以下スペイン語映画を中心に受賞結果を羅列しておきました。

 

オリソンテス賞(ホライズンズ・ラティノ部門)

Sin señas palticulares / Identifying Features(メキシコ=スペイン)

監督フェルナンダ・バラデス

*他にスペイン協力賞も受賞した。

作品紹介は、コチラ20200909

 

    

           (賞状を披露するフェルナンダ・バラデス)

 


    

       (英題のポスター)

 

 

クチャバンク賞(ニューディレクターズ部門)

La última primavera / Last Days of Spring(オランダ=スペイン)

監督イサベル・ランベルティ

 

   

         (トロフィーを手にしたイサベル・ランベルティ)

  

 

 

サバルテギ-タバカレラ賞

A metamorfose dos pássaros / The Metamorphosis of Birds(ポルトガル)

*ドキュメンター・ドラマ、伝記

監督カタリナ・ヴァスコンセロス

 

 

                      (カタリナ・ヴァスコンセロス)

 

                        

      

                         

  

イリサル賞(バスク映画賞)

Ane / Ane is Missing(スペイン)

監督ダビ・ペレス・サニュド

*他にバスク脚本賞受賞マリナ・パレス・プリド、ダビ・ペレス・サニュド)

 

 

 

      

   (賞状を披露するダビ・ペレス・サニュド)

    

        

                       (主役のパトリシア・ロペス・アルナイス)

 

★他にメイド・イン・スペイン部門で上映されたパウラ・パロメロLas niñas / School GirisSGAE財団のドゥニア・アヤソ賞ヴィゴ・モーテンセンのデビュー作Fallingセバスティアン観客賞を受賞した。

 

特別栄誉賞シネミラ

★特別賞のシネミラ栄誉賞には、キャスティング・ディレクターのサラ・ビルバトゥア(ギプスコア1958)が受賞した。1990年代から手掛けた映画は、本邦で公開された作品も含めて相当の数にのぼる。例えば、フリオ・メデムの『ルシアとSEX』『アナとオットー』、フアン・カルロス・フレスナディジョの『1億分の1の男』、アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』、ギレルモ・デル・トロの『デビルス・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』、カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』『シークレット・ヴォイス』、しばらくTVシリーズに専念していたが映画に戻り、最近カルロス・セデスのEl verano que vivimosを手掛けた。次回作はイサベル・コイシェのIt Snows in Benidormで、イギリスとスペインの個性派をキャスティングしている。プロデューサー同様、縁の下の力持ちのキャスティング・ディレクターに光が当たった。既にマラガ映画祭2013リカルド・フランコ賞を受賞している。

 

            

          (トロフィーを手にスピーチするサラ・ビルバトゥア)

 

★「El verano que vivimos」は、本映画祭では賞に絡まないチャリティー上映でしたが、パートナーになってから初めて共演するブランカ・スアレスとハビエル・レイをキャスティング、他にカルロス・クエバス、シンガーのアレハンドロ・サンス、マリア・ペドラサなど、目下話題の若手を起用した。オープニング・セレモニーには監督以下主演者たちが一堂に会し、その華やかさでコロナ禍吹き飛ばしに一役買った。ワーナーブラザーズで116日公開が決定している。オンライン配信を期待しています。

オープニング・セレモニーの記事は、コチラ20200921


金貝賞はジョージア映画「Dasatskisi / Beginning」が受賞*サンセバスチャン映画祭2020 ⑮2020年09月28日 10:58

          フランス合作のジョージア映画が金貝賞以下4冠の快挙

 

   

 

926日、第68回サンセバスチャン映画祭の結果発表がありました。進行役の総合司会はエドゥルネ・オルマサバル(バスク語)とフアン・ディエゴ・ボト(スペイン語)のコンビでした。作品賞に当たる金貝賞は、フランス合作のジョージア映画Dasatskisi / Beginningが受賞、その他、監督賞にデア・クルムベガシュビリ、女優賞イア・スクヒタシュビリ、脚本賞デア・クルムベガシュビリとラティ・オネリ2人と、主要7部門の4冠をゲット、これは本映画祭の作品賞(金貝賞)と監督賞(銀貝賞)はダブらせないという基本ルールを逸脱しています。よほど素晴らしかったのか、あるいは他作品がよほど見劣りしていたのかどちらでしょうか。

 

         

        (金貝賞受賞のDasatskisi / Beginning」のプロデューサー

 

           

         (両手でも4個はさすがに重いとデア・クルムベガシュビリ)

 

68回開催された本映画祭でも、作品賞と監督賞がダブルで受賞したのは2014年以来、それはカルロス・ベルムトのオタク映画『マジカル・ガール』が受賞したとき以来です。その際は会場がざわめき、結果を疑問視する声が聞かれるほどでしたが、ダブル受賞3度目となる今回はどうだったのでしょう。映画賞ではなく国際映画祭の賞なのですから腑に落ちません。審査員はオープニング・セレモニーでアップ済みですが、審査委員長ルカ・グァダニーノ、ミシェル・フランコ、ジョー・アルウィン、マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、レナ・Mossum5名でした。

セクション・オフィシアルの審査員については、コチラ20200921

      

★既に報道されているようですが、最優秀撮影賞佐藤快磨監督のデビュー作『泣く子はいねぇが』月永雄太が受賞、2人とも来サンセバスティアンできず、動画で感謝のメッセージを送りました。デビュー作がセクション・オフィシアルにノミネートされること自体が珍しく受賞は尚更のこと、是枝監督企画が功を奏しているか。公開が1120日に決定しています。

 

★審査員特別賞には、ジュリアン・テンプルの音楽ドキュメンタリーCrock of Gold: A Few Rounds With Shane MacGowanが受賞しました。製作者と出演者を兼ねたジョニー・デップは既に帰国、登壇しませんでした。残る男優賞には、カンヌ映画祭にノミネートされていたトマス・ヴィンターベアDruk / Another Round出演の、マッツ・ミケルセントマス・ボー・ラーセンマグヌス・ミラングラース・ランゼ4名が受賞しましたが、4人とも動画出演でした。以上がシェル賞と作品賞に次ぐ大賞審査員特別賞を含めた主要7部門の受賞者です。

 

金貝賞(作品賞)

Dasatskisi / Beginning(フランス=ジョージア)

製作:FIRST PICTUREIlan Amouyal, David Zerat/ O. F. A.(ラティ・オネリ)

*プレゼンターは、審査委員長ルカ・グァダニーノ

 

   

        (ルカ・グァダニーノからトロフィーを受け取るDavid Zerat

 

審査員特別賞

Crock of Gold: A Few Rounds With Shane MacGowan(ドキュメンタリー、イギリス)

監督:ジュリアン・テンプル

*プレゼンターは、審査委員長ルカ・グァダニーノ

 

     

            (製作者ジョニー・デップは帰国して欠席)

 

 

監督賞(銀貝賞)

デア・クルムベガシュビリ Dea Kulumbegashvili

(ジョージア映画Dasatskisi / Beginning

*プレゼンターは、審査員ミシェル・フランコ

 

     

     (ミシェル・フランコからトロフィーを受け取るデア・クルムベガシュビリ)

 

    

 

女優賞(銀貝賞)

イア・スクヒタシュビリ Ia Sukhitashvili

(ジョージア映画Dasatskisi / Beginning」)

*プレゼンターは、審査員イギリスの俳優ジョー・アルウィン

 

   

  (受賞後のプレス会見のイア・スクヒタシュビリ、トロフィーは代理が受け取った)

 

    

            (イア・スクヒタシュビリ、映画から)

 

男優賞(銀貝賞)

マッツ・ミケルセントマス・ボー・ラーセンマグヌス・ミラングラース・ランゼ

(デンマーク映画Druk / Another Round」(トマス・ヴィンターベア監督、デンマーク=スウェーデン=オランダ)。動画出演のため、ポスター。

*プレゼンターは、審査員レナ・Mossum

 

       

             (カンヌ映画祭のマークが入ったポスター)

 

 

脚本賞(審査員賞)

デア・クルムベガシュビリラティ・オネリ

(ジョージア映画Dasatskisi / Beginning

*プレゼンターは、審査員マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス

 

        

         (ラティ・オネリは欠席、マスク姿のクルムベガシュビリ)

  

撮影賞(審査員賞)

月永雄太

(日本映画、佐藤快磨『泣く子はいねぇが』)

   


(主役の仲野太賀、映画から)
   
    

             (撮影賞受賞後に作成されたポスター)          

 

4冠受賞のデア・クルムベガシュビリ監督のDasatskisi / Beginning」を製作し、今回脚本賞も受賞したラティ・オネリは、「ジョージア映画祭2018」で上映されたドキュメンタリー『陽のあたる町』17)の監督、翌年公開もされた。先述したように男優賞受賞のトマス・ヴィンターベアのDruk / Another Round」は、カンヌ映画祭2020のコンペティション部門ノミネートされていた作品でした。カンヌFFのディレクター、ティリー・フレモーも現地入りした甲斐がありました。

 

金貝賞の発表後、クロージング作品El olvido que seremos / Forgotten Well Be(コロンビア)のフェルナンド・トゥルエバ監督と主役エクトル・アバド・ファシオリンセを演じたハビエル・カマラが登壇してお行儀良かった会場も少し盛り上がりました。座席も半分ほどに制限され、例年とは違う寂しい授賞式でした。最後に受賞者全員と審査員たちが登壇して幕となりました。まだ適当なフォトが入手できませんが、後ほど追加します。

      

 

(ハビエル、白いワイシャツがトゥルエバ監督)

 

ヴィゴ・モーテンセンにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2020 ⑭2020年09月26日 18:14

          プレゼンターは『アラトリステ』のアグスティン・ディアス・ヤネス

 

  

 

924日、メイン会場クルサールで初監督、主演作品Falling上映後、本映画祭のハイライトの一つであるドノスティア栄誉賞の授与式がありました。今年の受賞者ヴィゴ・モーテンセンは、登場したばかりは若干緊張して動揺しているようでしたが、以下のように素晴らしい授与式になりました。1986年から始まった栄誉賞受賞者の68人目、奇しくも本映画祭回数と同じでした。プレゼンターは『アラトリステ』の大物プロデューサーで監督のアグスティン・ディアス・ヤネスがトロフィーを手渡しました。Falling」(カナダ=英、字幕スペイン語入り上映)のフォトコールでは、コロナ禍でヤジウマが制限されていましたが、あちこちから「ヴィゴ、ヴィゴ!」と声がかかり、その人気ぶりがうかがえました。第1回目上映後のプレス会見も彼一人で応対していた。

Falling」の作品&キャリア紹介は、コチラ20200708

 

          

      (アグスティン・ディアス・ヤネスからトロフィーを受け取るヴィゴ)

 

★ガラの司会者エドゥルネ・オルマサバル(タバカレラ理事会ディレクター)によるヴィゴ・モーテンセンのキャリア紹介がバスク語とスペイン語で始り、彼のようにどんなタイプの役柄でも演じ分けられる <ジャンボな俳優> は多くないと、その35年間にわたるキャリアを称賛した。代表的な出演映画『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役に触れ、次々とコンパクトにモンタージュされた映像で『アラトリステ』『G.I.ジェーン』『イースタン・プロミス』『インディアン・ランナー』『ザ・ロード』『グリーンブック』などが紹介された。

 

★受賞スピーチは、素晴らしいアーティストに贈られるドノスティア賞受賞者の一員になれたことに感動していること、このように伝統のある賞を手にできた幸運に感謝していること、これからも精進して良い仕事をしていきたい、と述べた。最後のスピーチは「人生とは不確実なものだが、贈り物であることも忘れないようにしたい。孤独な人々に寄り添い、もうここにはいない人々に敬意を払って、できる限りの精進をし続けたい」、そしてバスク語で「ドノスティア映画万歳!」、よく響くスペイン語で「ビバ・エル・シネ!」と締めくくって退場した。

     

           

           (会場の歓声に感動するヴィゴ・モーテンセン)

 

★モーテンセンの友人3人のビデオメッセージ、イギリスの製作者ジェレミー・トーマス、アルゼンチンの元サッカー選手ベト・アコスタ、シネアストのデヴィッド・クローネンバーグがビデオで祝福を送った。製作者は彼の俳優だけでなく詩人やミュージシャン、監督のような分野での活躍に触れ、彼と一緒に仕事をする素晴らしさを語った。元サッカー選手は彼がサッカーチーム <サンロレンソ・デ・アルマグロ> の熱狂的なサポーターであることを紹介、ユニホームを贈りたいと(ベトは現役時代にサンロレンソでもプレイした)。その後、サンセバスティアンが本拠地のサッカークラブ、レアル・ソシエダのミッドフィルダーのアシエル・イジャラメンディの手から、青と白のレアル・ソシエダと濃紺のサンロレンソのユニホーム2着が贈られた(サンロレンソといえば赤と青が有名だが、新しいデザインでしょうか)。

  

       

      (アシエル・イジャラメンディから2着のユニホームを受け取るヴィゴ)

 

    

   (VIGGOとネームの入ったレアル・ソシエダのユニホームを来場者に披露するヴィゴ)

 

★最後に『イースタン・プロミス』の監督が彼とコラボできたのは非常に光栄なことで、「君は素敵な俳優というだけでなく、製作、脚本、美術、撮影、小道具にまで通じていた。もし君が望むなら、また一緒に仕事をしたい。映画のどんな分野にも精通し、いつも愉快で、思いやりのある愛すべき協力者、これがヴィゴという人間だ」と最大級の祝辞を送った。

   

      

    (映画祭参加者の署名をするヴィゴ)

   

    

                (カメラマンの要望に気軽に応えるヴィゴ、9月24日、フォトコール)

     

パスカル・ランベールの「Hermanas」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑬2020年09月24日 10:53

     メイド・イン・スペイン――TVシリーズ「Escenario 0」の第1作「Hermanas

 

     

  (イレネ・エスコラルとバルバラ・レニーを配置した「Hermanas」のポスター)

 

HBOHome Box Office)ヨーロッパ製作のTVシリーズEscenario 0(全6作)の第1パスカル・ランベールディエゴ・ポスティゴHermanasがメイド・イン・スペイン部門で上映されました。フランスはニース生れの劇作家、舞台演出家、監督のランベールは来西しなかったようで、フォトコールに現れた監督はポスティゴだけでした。ポスティゴはブリュッセル生れだがスペインで活躍している。本作はもとはフランスの舞台で演じられていた作品で、スペインではイレネ・エスコラルバルバラ・レニーが姉妹を演じていた。二人以外の女優も演じているようです。しかしコロナによるパンデミックで劇場が閉鎖され、テレビ化の企画が持ち上がって撮られた。全6作は監督も出演者もそれぞれ異なるが、イレネ・エスコラルは3作に出演している。

    

     

                         (パスカル・ランベールを囲んで)

 

    

      

     (イレネ・エスコラルとバルバラ・レニー、「Hermanas」のフォトコール、920日)

 

            

 (マドリードのEl Pavón Kamikaze劇場のポスター、201812月)

 

 

 HermanasTVシリーズEscenario 0の第1話)

製作:HBO EUROPE

監督:パスカル・ランベール、ディエゴ・ポスティゴ

脚本:パスカル・ランベール

撮影:サンティアゴ・ラカホ

編集:マルタ・ベラスコ

音楽:Sin Música

プロデューサー:ミゲル・サルバト

 

データ:製作国スペイン、2020年、89分、配給HBO ESPAÑA

キャスト:バルバラ・レニー、イレネ・エスコラル

ストーリー:二人の姉妹のあいだに起きる無数の対立が描かれ、非難と愛を絡ませた冷酷なストーリーが展開される。同じ肉体から発せられる二つの存在のあいだで結束し敵対する。からだをぶつけ合っての死闘。これらの姉妹は私自身の姿であり、我々自身がそれぞれ無数に持っているものである。この無数とは強要、真実、闘いと呼ばれるものである。

      

★日本で問題化される家族の対立では、姉妹より自分の果たせなかった夢を一人娘に託す母と娘のケースが多い。二人というのは冷静な中立者がいないから社会が成立しない。家族間の対立は狭い密封された空間で起きるから表面化するのに時間がかかる。憎しみと愛が複雑に絡み合ってどうしても深刻化する。夫婦なら別れることも可能だが親子はそう簡単にいかない。両親からも世間からも暗黙のうちに優劣が比較されがちな二人姉妹はこじれると収拾がつかない。3人以上いれば2人が対立しても残る一人が仲介役となる。映画より舞台のほうが面白そうです。

 

             

           (ぶつかり合う二人の姉妹、バルバラとイレネ)

 

 

★姉役のバルバラ・レニー(マドリード1984)は、本邦ではカルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』で知名度を上げた女優。マドリード生れだが、両親がアルゼンチンの軍事独裁政権を逃れてスペインに亡命中に生れた。その後、両親と一緒に帰国したので幼少期はアルゼンチンで育った。以前キャリア&フィルモグラフィーを紹介したことがあるので詳細は割愛するが、当時は『マジカル・ガール』で共演したイスラエル・エレハルデが相思相愛のパートナーでしたが、2017年に関係を解消して、現在は共同監督のディエゴ・ポスティゴがパートナー、彼の娘二人とマドリードで暮らしている。

バルバラ・レニーの主なキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20150327

 

ディエゴ・ポスティゴは、2005年にアントニア・サン・フアンと共同監督した短編La Chinaがニューヨークシティ短編映画祭作品賞、パルマ・スプリング短編映画祭審査員賞を受賞、Run a Way12)、Ruido13)などの短編を撮っており、海外での受賞歴多数。2017年二人の娘を残して乳がんで亡くなったビンバ・ボゼーと結婚していた(200613)。ローマ生れのモデル出身の女優、スペイン映画に出演している不思議な魅力を放つ女性だった。祖母はフアン・アントニオ・バルデムの『恐怖の逢びき』のヒロインを演じたルチア・ボゼーです。バルバラはポスティゴの家族(娘2人)と一緒に暮らしており、彼のティーンエイジャーになった長女ドラも、最近映画デビューした。

 

   

                      (幸せそうなバルバラとポスティゴ)

 

     

   (『ペトラは静かに対峙する』のポスターを背に、マドリード公開201810月)

 

イレネ・エスコラル(マドリード1988)は、女優で最近脚本も執筆する才媛。19世紀から続く舞台俳優の名門一家グティエレス・カバの血を引く。大叔母フリア・グティエレス・カバ、大伯父エミリオ・グティエレス・カバは、共にゴヤ賞やマラガ映画祭の特別栄誉賞の受賞者。祖母イレネも大女優だったが1995年に死去している。映画、TVシリーズ、舞台と引っ張り凧、

グティエレス・カバ一族の紹介記事は、コチラ20190317

 

    

              (左から、大叔父エミリオ、イレネ・エスコラル、大叔母フリア)

   

      

         (マラガ映画祭2019特別賞受賞の大叔母フリアとイレネ)

 

★カルロス・サウラやビセンテ・アランダの作品に脇役で出演しはじめ、ホセ・ルイス・クエルダの話題作「Los girasoles ciegos」(07)、アルバロ・フェルナンデス・アルメロのコメディ『迷えるオトナたち』14Netflix)、コルド・セラの「Gernika」(16)、イレネが主役を演じたララ・イサギレのUn otoño sin Berlin」が、サンセバスチャン映画祭2015でイリサル賞を受賞して注目された。翌2016年のゴヤ賞とシネマ・ライターズ・サークル賞の新人女優賞も受賞した。他にNetflix関連ではサム・フエンテスの『オオカミの皮をまとう男』17)、マテオ・ヒルの『熱力学の法則』18)などが字幕入りで観ることができる。

『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ20180402

 

★目下の話題作は今年から始まったTVシリーズのDime quién soy9話)で主役を演じている。またHBO EUROPE製作のTVシリーズEscenario 0」では、ナオ・アルベトマルセル・ボラスMammónと、カルラ・シモンVania2作に出演、バルバラ・レニー他と脚本も共同執筆している。前者にはカルメン・マチやルイス・トサール、後者にはアリアドナ・ヒルやルイス・ベルメホが共演している。

 

オープニング・セレモニー*サンセバスチャン映画祭2020 ⑫2020年09月21日 17:45

           マスクを付けたり外したり、なにかと忙しいオープニング・セレモニー

    

        

   (ライトアップされた第68回サンセバスチャン映画祭のメイン会場クルサール)

 

918日、オープニングにあわせて宿泊ホテルのマリア・クリスティナに到着したスターたちには、少し肌寒いのか、思い思いのマスク着用のジャケット姿が目に付いた。さすがにフォトコールにはマスクを外してカメラにおさまっていた。例年ならホテル前もヤジウマやパパラッチでいっぱいでしたが、今年は柵の中は撮影を許可されたカメラマンのみでした。

 

★ジャスト2100から開始されたオープニング・セレモニーの司会者は、司会者としては超ベテランの女優カエタナ・ギジェン・クエルボ、バスク州ギプスコア出身の女優ミレン・ガスタニャガ、マドリード生れの女優インマ・クエバス、『アルツォの巨人』で巨人ホアキンを演じたエネコ・サガルドイ4人。それぞれ癖のある実力者を選んでいた。ミレンはバスク・テレビの番組で「スペイン人は田舎者で、文化的には時代遅れの人」と評して話題になった女優。歯に衣着せぬ人らしく今回も自由奔放な司会者ぶりだった。

 

       

   (左から2人目が貫禄のカエタナ・ギジェン・クエルボ、右端がミレン・ガスタニャガ)

 

★開催を断念したカンヌ映画祭のディレクターであるティリー・フレモーも来セバスティアンして登壇、カンヌでノミネーションされた17作品が上映されることへの感謝の辞を述べた。

   

      

  (流暢なスペイン語で感謝の辞を述べるカンヌFFディレクター、ティエリー・フレモー)    

 

    

  (左端は本映画祭ディレクターのホセ・ルイス・レボルディノス、ティリー・フレモー)

 

★オフィシャル・セレクション部門の審査員5人が登壇、委員長ルカ・グァダニーノが挨拶のスピーチをした。TVシリーズWe Are Who We Areがコンペティション外で特別上映される。メキシコの監督ミシェル・フランコ、イギリスの俳優ジョー・アルウィン、プロデューサーのマリサ・フェルナンデス・アルメンテロス、衣装デザイナーのレナ・Mossum 5審査員。

 

     

 (左から、フェルナンデス・アルメンテロス、フランコ、グァダニーノ、Mossum、アルウィン

   

      

              (審査委員長ルカ・グァダニーノ)

 

    

  (ペルラス部門の開幕作品「Nuevo orden / New Orden」が上映されるミシェル・フランコ)

 

       

                           (ジョー・アルウィン)

 

      

   (マリサ・フェルナンデス・アルメンテロス)

 

     

                            (レナ・Mossum

 

★セクション・オフィシアル部門のオープニング作品Rifkin's Festivalの主演者、米国のジーナ・ガーションエレナ・アナヤ、製作者のジャウマ・ロウレス3人が登壇、疲れ知らずの監督と言われるウディ・アレンは不参加でした。監督と共演者ウォーレス・ショーンは、上映後のプレス会見ではニューヨークからテレマティクスで参加していた。

 

   

    (左から、エレナ・アナヤ、ジャウマ・ロウレス、ジーナ・ガーション)

 

(エレナ・アナヤ)

  

     

(ジーナ・ガーション)

   

                        

 

   

         (テレマティクス参加のウディ・アレン監督)

 

★ミュージックやダンスなどでつなぐのは例年通りだが、入場者が半分ほどに制限されているせいか、客席は概してお行儀よかった。司会者が客席の通路に降りるときは、マスクをするのでなかなかシュールでした。米国のシングソングライター、ピート・シガーの不朽の名曲、世界一有名な反戦歌とも称される「花はどこへ行った」が演奏されるなどした。予定通りの50分で終了した。

 

★以下は17日から20日にかけて配信された、その他のフォト(順不同)。出演者の他、プレゼンターとして参加するシネアストたちです。ジョニー・デップのように海外勢も結構名前が挙がっており、国際映画祭らしい雰囲気が漂ってきました。ジョニーはイギリスの監督ジュリアン・テンプルのドキュメンタリー「Crock of Gold: A Few Rounds with Shane MacGowan」(コンペティション)に「Pogues」のリードシンガーでソングライターのシェン・マガウアンと共演しているほか、製作者でもある。コロナ感染者が連日1万人増加では、終幕後がどうなっているか心配してもしようがないようです。

 

 

       

 (ミレン・ガスタニャガ) 

          


    

           (カエタナ・ギジェン・クエルボ)

    

(インマ・クエバス)

 

 

   

     (19日、マリア・クリスティナ・ホテルに到着したバルバラ・レニー)

   

      

     

(相変わらず人気の高いジョニー・デップ、パパラッチがいないからトラブルもなく・・・)

    

   

   (セクション・オフィシアルの「Akelarre」監督のパブロ・アグエロ、19日)

 

 (アマイア・アベラストゥリ、出演者)

   

                  

  (A・ブレンデミュール、同)

  

  

 

   

      (「El verano que vivimos」監督のカルロス・セデス、20日)

 

 (ブランカ・スアレス、出演者)

                         

                    

   

(ハビエル・レイ、同)

    

(マリア・ペドラサ、同)

     

             

パウラ・コンスの「La isla de las mentiras」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑪2020年09月16日 17:57

         メイド・イン・スペイン――パウラ・コンスのLa isla de las mentiras

 

      

 

★既にオンラインで配信が始まっているパウラ・コンスのスリラーLa isla de las mentirasは、192112日の明け方に起きた<ガリシアのタイタニック>と言われる実話に基づいて製作された。船舶沈没がテーマではなく、ネレア・バロスが扮したマリアの視点で、中央から離れた閉ざされた社会の当時の女性たちの勇気や闘い、カシキスモについての、逃走についての、自由についての物語。オリジナルはガリシア語であるが、オンラインではスペイン語で配信されている。ワーキングタイトルは「El Santa Isabel」だった。

 

    

   (製作発表をする、監督とネレア・バロス以下3人の主演者たち、20193月)

 

 

La isla de las mentirasThe Island of Lies2020

製作:Agallas Films(スペイン)/ Aleph Cine(アルゼンチン)/

     Euskal Irratitelebista EITB(バスク)/ Take 2000(ポルトガル)/

         Historias del Tío Luis(同)    協賛INCAA / ICAA / TVE / ガリシアTV、他

監督:パウラ・コンス・バレラ

脚本:パウラ・コンス・バレラ、ルイス・マリアス

撮影:アイトル・マンチョラ

編集:フリア・フアニス

美術:アントニオ・ペレイラ

録音:シャビ・アギーレ

衣装デザイン:エバ・カミノ

メイクアップ:ラケル・フィダルゴ

プロダクション・マネジメント:カロリナ・コレイア・メンデス

製作者:ビクトリア・アイゼンスタット、マウロ・ゲバラ、ルイス・マリアス、フアン・デ・ディオス・セラノ、(エグゼクティブ)エドゥアルド・カルネロス、他

 

データ:製作国スペイン=アルゼンチン=ポルトガル、言語ガリシア語、2020年、実話をもとにしたスリラー・ドラマ、93分、撮影地はサルボラ島、3月公開予定だったがコロナウイリス感染拡大のため中止、724日よりオンラインFilmin にてスペイン語で配信開始、アルゼンチン514日公開。

映画祭・受賞歴:上海映画祭2020正式出品、サンセバスチャン映画祭2020「メイド・イン・スペイン部門」上映

 

キャスト:ネレア・バロス(マリア)、ダリオ・グランディネッティ(アルゼンチンの記者レオン)、アイトル・ルナ、ビクトリア・テイヘイロ(ホセファ)、アナ・オカ(シプリアナ)、ミロ・タボアダ(ペペ)、レイレ・ベロカル、ミゲル・ボリネス、セルソ・ブガージョ、メラ・カサル、マリア・コスタス、ロベルト・レアル、セルヒオ・キンタナ、マチ・サルガド(ルイス・セブレイロ)、アナ・サントス、ハビエル・トロサ、ほか

 

ストーリー192112日の明け方、ブエノスアイレスに向かう260名の移民を乗せた蒸気船サンタ・イサベル号が大西洋に位置するガリシアのサルボラ島の海岸で遭難した。その夜、島には男たちはいなかった。というのもクリスマスを祝うため本土に渡っていたからだ。マリア、ホセファ、シプリアナの3人の女性は、助けを求める生存者の声を聞くと岩だらけの海に危険を冒して救助に向かった。霧に閉ざされた暗闇の中、小舟のオールを漕いで幼児を含めて48名を救助した。一方、アルゼンチンのジャーナリストのレオンは事故のニュースを知ると調査のために現地に赴いた。背景が少しずつ分かってくるが、その夜、島では怖ろしい或る予期せぬことが起きていたのだった。解決すべき幾つもの謎が潜んでいることが次第に分かってくる。若い進取の気性に富んだ勇敢なマリア、無口だが思慮深いガリシアに典型的な女性ホセファ、広い世界を知りたいと島を抜け出したい一番若いシプリアナの3人の女性の視点で描かれる、<ガリシアのタイタニック>事件と言われる実話をベースにしたスリラー・ドラマ。中央から離れた閉ざされた社会の女性たちの勇気や闘いについての、ボス支配のカシキスモについての、逃走や自由についての物語。 (文責:管理人)

   

   

          (マリア、ホセファ、シプリアナ、映画から)

 

       *監督キャリア&フィルモグラフィー紹介

   

パウラ・コンス・バレラ(ア・コルーニャ1976)は、監督、ジャーナリスト、脚本家、ドキュメンタリー作家、Agallas Filmsのプロデューサー。ア・コルーニャ県生れだが、家族の祖先のコンスもバレラも映画の舞台になったポンテべドラ県出身。サンティアゴ・デ・コンポステラ大学の新聞学部でジャーナリズムを専攻(199498)、1998年よりポルティコ・デ・コミュニケーションの編集者や執筆者として働く。2004年マドリードに移住、クアトロTVの社会的問題をテーマにしたレポーターとなる。2009Agallas Films の共同設立者となる。

  

     

              (撮影中のパウラ・コンス・バレラ)

 

★主なフィルモグラフィーは以下の通り:

2009年「13 badaladasTVドキュメンタリー・シリーズ、監督

2015年「Lobos sucios」長編、共同脚本・エグゼクティブプロデューサー

2017年「La batalla desconocida」ドキュメンタリー、監督・脚本・エグゼクティブ

2018年「El caso Diana Quer, 500 días」ドクドラマ、監督

2020年「La isla de las mentiras」長編ドラマ、監督・脚本

 

      

      (制作会社 Agallas Films の共同設立者フアン・デ・ディオスと監督)

 

★「Lobos sucios」は、第二次世界大戦中に、連合国側がスペインと争ったタングステン闘争についての報告書。フランコ政府は参戦しなかったが、戦略上ナチスにタングステン鉱山の採掘を認めて協力していた。「La batalla desconocida」は、前作と同じテーマで製作され、バジャドリード映画祭のドキュメンタリー部門の監督賞を受賞、他にナント映画祭、ブエノスアイレス政治映画祭などで上映された。「El caso Diana Quer, 500 días」は、ディアナ・ケル事件の警察の捜査を追った500日間のドキュメンタリー・ドラマ。今回が長編映画デビュー作とはいえ、経験豊富なシネアストであることが知れる。

 

 

         20世紀初頭のガリシアの女性たちがおかれていた地位

 

★最近頓に輩出する女性監督のなかでも、実際の事件をベースにしてスリラー仕立てにしたドラマは珍しいのではなかろうか。この難破事件は当時のガリシア地方では知られていたようです。記事によって乗船者や生存者の人数が異なりますが、当たらずとも遠からずです。マリア16歳、ホセファ24歳、シプリアナ14歳という設定ですが、より年上に見えます。48名の救助者のなかに、当時1歳だったという女性が最後の生存者として今でも元気とか、驚くほかありません。

 

★マリアを演じたネレア・バロス(サンティアゴ・デ・コンポステラ1981)は、女優、看護師の資格を持っているという変り種。今回のパンデミックでは一時女優業を中断して看護師として治療に当たっているというニュースに接した。主にガリシアTV、アンテナ3、テレシンコのドラマに出演、公開作品ではアルベルト・ロドリゲスのスリラー『マーシュランド』14)で失踪した姉妹の母親役を演じて、翌年のゴヤ賞助演女優賞を受賞している。他にNetflix配信の連続ドラマ『クリスマスのあの日私たちは』(「Dias de Navidad」全3話)の第2話にバレンティナ役で出演している。主役を演じるのはLa isla de las mentiras」が初めてか。ビクトリア・テイヘイロ(ア・コルーニャ)は、マドリードの王立芸術演劇上級学校卒、映画、TV、舞台で活躍、TVシリーズAidaに出演、10年以上前から複数の演劇学校で後進の指導に当たっているベテラン、公開作品はない。アナ・オカは短編、TVシリーズ出演、本作で長編映画デビューした。

 

   

     

    

            (マリアとホセファ)

 

★アルゼンチンのジャーナリストを演じるダリオ・グランディネッティ(ロサリオ1959)は、アルゼンチン出身だがスペインに軸足をおいている。アルモドバル『トーク・トゥ・ハー』02)、『ジュリエッタ』16)、ダミアン・ジフロン『人生スイッチ』16)出演でお馴染みです。1984年、軍事独裁時代の末期、マルビナス戦争を背景にしたアレハンドロ・ドリアDarse cuentaで映画デビュー、本作は銀のコンドル賞作品賞を受賞した秀作です。他にサンセバスチャン映画祭2018ベンハミン・ナイシュタットが監督賞、主演のグランディネッティが男優賞を受賞したRojo出演がある。本作がオンライン配信になったことを「パンデミックで俳優は危機に陥っている。舞台ダメ、ソーシャルディスタンスで撮影もダメ、モビスター、アマゾン、HBO、ネットフリックスのようなプラットフォームに移行するしかない」と語っている。

   

     

            (レオン役のダリオ・グランディネッティ)

 

★ガリシア出身者の他、バスク州の俳優も多く出演している。その一人がアイトル・ルナ(ギプスコア1981)だが、役回りが分からない。TVシリーズ出演が多く、『アラトリステ』13)のテレビ版でディエゴ・アラトリステに扮している。Netflixで配信されている『海のカテドラル』18)では、主役のアルナウ役に抜擢され、お茶の間では認知度がある。映画、テレビ出演のほか舞台にも立っている。

 

   

            (ネレア・バロスとアイトル・ルナ)

 

★本作は主役となる3人の登場人物の他、スタッフにも女性シネアストが多く参加している。パウラ・コンス監督によると「女性たちが自分自身を信頼することが重要であり、それぞれ得意な分野を主張することが必要です。本作は私たち若い世代の女性たちが祖母世代へ贈るオマージュです」と。


ヌリア・ヒメネスの「My Mexican Bretzel」*サンセバスチャン映画祭2020 ⑩2020年09月14日 10:33

        メイド・イン・スペイン部門――ヌリア・ヒメネスの「My Mexican Bretzel

 

      

 

912日に閉幕したベネチア映画祭で黒沢清『スパイの妻』が監督賞(銀獅子賞)を受賞しました。本作はサンセバスチャン映画祭SSIFFでもペルラス部門のオープニング作品に選ばれています。その昔、ホラー映画『回路』がカンヌ映画祭2001「ある視点」で国際批評家連盟賞を受賞したときには、黒澤明監督の縁戚関係者と間違われたが、もうそんな誤解は昔話になりました。クラスターが起きたのか起きなかったのか、とにかくベネチアは閉幕しました。

 

★メイド・イン・スペイン部門の中から、気になる映画を時間が許す限りアップする予定ですが、先ずヌリア・ヒメネスMy Mexican Bretzelが邦題『メキシカン・プレッツェル』で、なら国際映画祭2020918日~22日)のコンペティション部門にノミネートされておりますので、本作からスタートします。また本映画祭では「カタラン・フォーカス」として、IRLインスティテュート・ラモン・リュイスとの共催でカタルーニャの女性監督作品6作が上映されます。その中には当ブログSSIFF 2019でご紹介した、ルシア・アレマニーのデビュー作「La inocencia」(19『イノセンス』)とベレン・フネスの「La hija de un ladrón」(19『泥棒の娘~サラの選択~』)が含まれており、嬉しいサプライズです。後者は主演のグレタ・フェルナンデスが女優賞(銀貝賞)を受賞、翌年のゴヤ賞2020ではベレン・フネスが新人監督賞を受賞している力作です。奈良県はコロナウイリス感染者も落ち着いているようなので無事終了することを願っています。

   

 

My Mexican Bretzel『メキシカン・プレッツェル』スペイン、2019

製作:BRETZEL & TEQUILA FILM PRODUCTIONS(ヌリア・ヒメネス)/

   AVALON PRODUCTORA CINEMATOGRAFICA(マリア・サモラ、ステファン・シュミッツ)

監督・脚本:ヌリア・ヒメネス・ロラング

撮影:フランク・A・ロラング、イルセ・G・ロラング

編集:クリストバル・フェルナンデス、ヌリア・ヒメネス

音楽:NO HAY NO HAY

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2019、ドキュメンタリー・ドラマ、74

映画祭・受賞歴:ヒホン映画祭2019スペイン映画部門の作品・監督・脚本賞受賞、ロッテルダム映画祭2020ワールドプレミア、Found Footage賞、D'Aバルセロナ映画祭2020観客賞を受賞、サンセバスチャン映画祭メイド・イン・スペイン部門上映、なら国際映画祭2020コンペティション部門ノミネート、ほか

 

解説:映画はインテリ階級の裕福な女性ビビアン・バレットの日記と、夫のレオン・バレットが前世紀の40年代から60年代にかけて、スーパー8ミリと16ミリで妻を撮影したアーカイブ資料を結び付けている。YouTubeで流れるフィルムは撮影されたばかりのように鮮明で美しく、どのように保存されていたのか完成度の高い映像に驚かされる。無声の部分と後から追加した飛行機、車、列車、風の音で構成され、ナレーションの代わりにビビアンのエッセイ風の日記で構成されている。

 

      

 

  監督キャリア&フィルモグラフィー

ヌリア・ヒメネス・ロラング(バルセロナ1976)は、監督、脚本家、製作者。ジャーナリズム、国際関係、ドキュメンタリー映画の制作を学んだ後、セミナー参加、イサキ・ラクエスタ、ビルヒニア・ガルシア・デル・ピノ、パトリシオ・グスマン、フレデリック・ワイズマンのようなシネアストが指導するクラスで知識を蓄積している。2017年短編ドキュメンタリーKafeneioでデビュー、ドキュメンタリー・マドリードやMIDBOで上映された。本作『メキシカン・プレッツェル』が長編第1作。

 

       

                  (ヌリア・ヒメネス)

 

1分程度の予告編で驚くのは、ビビアンの夫レオンが撮影したというそのヴィンテージ映像です。多くの批評家が「ダグラス・サークの映画に典型的なテクニカラーで撮られている」と口を揃える。ドイツ出身の監督だが、妻がユダヤ人だったことでアメリカに亡命、1950年代に撮ったハリウッド映画は、本邦でも何作も公開されている。当時を知るオールドファンにはロック・ハドソン、ローレン・バコールなど出演俳優の名前からして懐かしい。世界の都市、ニューヨーク、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、バルセロナ、ベネチア、リヨンなどを訪れ、いみじくも古いヨーロッパやアメリカへのロマンティックな旅に観客を誘っている。観客賞受賞の所以です。

 

        

               (ビビアンとレオン・バレット)

 

★映画は「嘘は真実を語るためのもう一つの方法に過ぎない」というParavadin Kanvar Kharjappali(パラバディン・カンバール・カージャッパリ?)という作家の言葉で始まるようです。ビビアンの伯父の家にあった赤表紙の本から引用したというが、グーグルで検索しても見つかりません、架空の作家のようですから。勿論ビビアンの声も聞くことができません。こういう作品は見るに限るのですが、ドキュメンタリー映画と簡単に括れない、現実とフィクションが交じり合った偽りのドキュメンタリーとでも言うしかない。海の中央にいる女性とお菓子のプレッツェルというタイトルを組み合わせたポスターも謎めいている。

 

   

 


メイド・イン・スペイン部門に8作*サンセバスチャン映画祭2020 ⑨2020年09月12日 15:02

        女性シネアストの活躍が目立つメイド・イン・スペイン部門

 

      

 

830日、メイド・イン・スペイン部門の発表がありました。長編映画7作、HBOヨーロッパのシリーズ「Escenario 0」の1作の合計8本、なかには終了したばかりのマラガ映画祭の受賞作が含まれています。例年なら3月のマラガの後にカンヌ、ロカルノ、映画賞などが入り、サンセバスチャン映画祭になるのですが、今年はマラガとサンセバスチャンやカンヌが繋がってしまった。スペインはコロナウイリス感染の第2波では、ヨーロッパで一番感染者が多く、連日約9000人ほどが陽性反応、日本の人口の半分にも満たないのに10倍以上です。夏のバカンス休暇の落とし物です。

 

★マラガ映画祭の受賞作は、作品賞に当たる金のビスナガ賞(スペイン部門)のピラール・パロメロ(サラゴサ1980)のデビュー作Las niñas、審査員特別賞のイシアル・ボリャイン(マドリード1967La boda de Rosa2作です。

Las niñas」の作品&キャリア紹介は、コチラ20200316

La boda de Rosa」の作品紹介は、コチラ20200421

 

    

 

 

 

   

★女性新人監督のヌリア・ヒメネス(バルセロナ1976)のデビュー作My Mexican Bretzelは、例年11月下旬に開催されるヒホン映画祭2019で、作品・脚本・監督の3賞、ロッテルダム映画祭2020でワールドプレミアされ、Found Footage賞、D'Aバルセロナ映画祭では観客賞を受賞している。IMDbではドキュメンタリーと紹介されていますが、ドキュメンタリーとフィクションがミックスされた、いわゆるドクドラマのようです。1940年代から60年代にわたって、ビビアン・バレットを夫のレオンが撮影したダイアリーのようですが、いったい彼女はどんな女性なのか。面白そうなのでいずれアップします。

作品紹介は、コチラ⇒2020年09月14日

 

   

            (ヴィヴィアンを配したポスター) 

 

 

★次も女性監督ラウラ・エレーロ・ガルビア(トレド1985)のドキュメンタリーLa Mami19、ヨーロッパ=ラテンアメリカ共同フォーラム映画祭で上映され、続いてD'Aバルセロナ映画祭、IDFAアムステルダム・ドキュメンタリー映画祭などの多くの国際映画祭で上映されている。メキシコシティのキャバレー「バルバ・アスール」を通して、踊り子たちを支え続けた女性ドーニャ・オルガ、通称ラ・マミの45年にわたる人生が語られるドキュメンタリー。ウーマン・パワーが炸裂する。 

 

   

        (ラ・マミことドーニャ・オルガを配したポスター)

 

 

ハイオネ・カンボルダ(サンセバスティアン1983)のデビュー作Arima19、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2019「新しい波」セクションの監督賞受賞作品。予期しない2人のよそ者が現れたことによって動揺が走る4人の女性と一人の少女の人生が語られる。現実と想像、悪夢と眠り、怖れと欲望のあいだを行き来する謎に包まれた物語。ガリシア語、77分。

 

      

              (メラニア・クルスを配したポスター)

 

 

パウラ・コンス・バレラ(ア・コルーニャ1976)のデビュー作La isla de las mentiras2093分、スペイン・ポルトガル・アルゼンチン合作)は、上海映画祭2020で上映されている。192112日の明け方、ガリシアの海岸で260人の移民を乗せたサンタ・イサベル号が沈没した。実際に起きた「ガリシアのタイタニック」と呼ばれる客船難破を描いたドラマ。公開予定だったがパンデミックで中止となり、624日からFilminでオンライン配信されている。言語は本来ガリシア語だがスペイン語で配信されている。キャストはネレア・バロス、ダリオ・グランディネッティ、アイトル・ルナ。初長編映画だが、ドキュメンタリー映画を2017La batalla desconocidaと、2018年にはEl caso Diana Quer, 500 díasを撮っている。時間が許せばアップしたい。

   

      

           (ネレア・バロスほか主演者を配したポスター)

 

 

★トレンテ・シリーズでお馴染みのサンティアゴ・セグラ(マドリード1965)のコメディPadre no hay más que uno 2: La llegada de la suegra20は、2019年のスペイン映画のなかで興行成績が第2位だった、Padre no hay más que uno」の続編というか新バージョン。出演者もオール同じということです。4歳から12歳までの5人の子供たちをおいて妻が旅に出てしまう。父親のてんやわんやが語られるが、悪いことばかりではない、父と子供たちの距離が縮まって互いの理解が深まるというお話。他にトニ・アコスタシルビア・アブリルレオ・アルレムなどが共演する。父親ハビエルを監督自身が演じるが、こましゃくれた子役たちの魅力に食われてしまう。本編よりも続編のほうが評判が良いようです。

 

     

 (前列左から2番目がサンティアゴ・セグラ)

   

                 (2019年のPadre no hay más que uno」のポスター

 

 

★最後がフランスの劇作家、演出家、俳優、監督のパスカル・ランベール(ニース1962)とスペインのディエゴ・ポスティゴ(ブリュッセル1974)のHermanas89分)、作家、監督、俳優、舞台演出家がコラボして製作された、HBOヨーロッパのTVシリーズ「Escenario 0」(6作)の中の1作。2人の姉妹を演じるバルバラ・レニーイレネ・エスコラルもグループの一員、2人は製作、脚本も手掛けている。本作は後ほどアップを予定しています。

 

            

       (姉妹を演じるバルバラ・レニーとイレネ・エスコラル)