フェリックス・ビスカレトの新作「Una vida no tan simple」2023年07月11日 17:47

    人間の複雑さについての繊細で知的、辛辣で的確なシリアスコメディ

 

       

               (パパ業は思うほどラクな仕事ではありません)

   

★前回の「Upon Entry / La llegada」と同じ、第26回マラガ映画祭2023でノミネートされたフェリックス・ビスカレトの辛口コメディUna vida no tan simple」がスペインで公開されました。各紙誌の評価は軒並みポジティブです。既に若者とは言えない、かといってシニアとも言えない宙ぶらりんの40代男性の悲哀が語られる。マラガでざっと紹介しましたが、日本の40代でも似たような傾向がみられることや贔屓の監督とキャスト陣ということで改めて紹介します。現代のように不確実性のなかで生きていくには、なりたかった自分になれないのは致し方ないのか、軽率に父親になってしまったことが悪かったのか、何処で間違ってしまったのか。こどもを持ってしまった中産階級カップルの繊細な可笑しさを失わない寓話。

Una vida no tan simple」の作品紹介は、コチラ20230314

 監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20171111

   

     

  (左から、ミキ・エスパルベ、オラヤ・カルデラ、フェリックス・ビスカレト監督、

    アレックス・ガルシア、アナ・ポルボロサ、マラガ映画祭2023フォトコール)

  

 

Una vida no tan simple」(仮題「人生はそれほど容易でない」)

製作:Lamia Producciones / A Contracorriente Films / Euskal Irrati Telebista

   (EiTB/ Movistar+ 協賛 Gobierno de Navarra

監督・脚本:フェリックス・ビスカレト

音楽:ミケル・サラス

撮影:オルカル・ドゥラン

編集:ビクトリア・ランメルス

美術:エイデル・ルイス

キャスティング:フロレンシア・イネス・ゴンサレス、チャベ・アチャ

衣装デザイン:イラチェ・サンス

製作者:アドルフォ・ブランコ、イケル・ガヌサ、(エグゼクティブ)マヌエル・モンソン、パス・レコロンス、エレナ・タベルナ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地ビルバオ、期間2021年末、公開スペイン20230623

映画祭・受賞歴:第26回マラガ映画祭2023セクション・オフィシアル正式出品

 

キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア、シャビ・バルカルセル

  

ストーリー40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしていますが、何処にいても自分がいるべき場所にいないと感じています。皆は別の場所にいて誰も自分のことなど覚えていないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ良好とはいえません。幼い子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しているイサイアスはいつもへとへとになっている。他の子供の賢明な母親であるソニアとの友情を深めますが、彼女は子供を一人前に育てて大人にするのは、それほど簡単ではないことを彼に教えます。誰もが喧嘩をせず友好的になろうとして、慎重かつ賢明な会話が交わされる、中産階級40代カップルの危機を掘り下げる。

   

         

      (一人ずつ我が子を抱えたイサイアスとアイノア、フレームから)

 

 

     生きることは簡単な仕事ではない、確実なノウハウもありません

 

★かつてモラトリアム世代と言えば、2030代だったものが、現在では40代と期間がどんどん長くなり、世間全体が幼児化してきているように感じます。このままだと子供を大人に教育する世代がいなくなってしまうのではないかと気になりますw。ディテールは未見なので想像の域をでませんが、失意の建築家イサイアスに生命を吹き込むミキ・エスパルベを見ていると、周囲の40代の誰彼の顔を浮かべてしまいます。居場所がないのではなく「ここは自分のいるべき場所ではない」という、居場所のない人からみれば贅沢な悩みなのです。イサイアスにはどうもエネルギーが足りない。

 

★対話劇のようですが、気まずい沈黙が訪れるとき、物語は動き出す。成功と失敗、屈辱、諦めの渦のなかで、建築家は周囲の期待に応えなければならないが、果たしてうまくいくでしょうか。結末がポジティブとネガティブに割れていますが、建築家を演じたミキ・エスパルベの評価はオール・ポジティブです。当ブログにも何回か登場させていますが、以下に日本語字幕入りで見られる作品を中心にラインナップしておきます。また大学教師の妻アイノアに扮したオラヤ・カルデラの演技をほめる記事が散見されました。イサイアスの同僚アレックス・ガルシア扮するニコとどうも微妙な関係らしいが、この手のドラマではよくある話です。離婚率の高さは万国共通、壁は日に日に低くなってきました。アナ・ポルボロサ扮する賢いソニアの造形も、クラスに一人か二人、見かけるタイプです。

 

       

                        (イサイアスとニコ)

 

         

    (ソニアとイサイアス)

 

ミキ・エスパルベ1983年カタルーニャのマンレサ生れ、俳優、脚本家、監督(短編2本)、ポンペウ・ファブラ大学、バルセロナのNancy Tuñóns School で演技を学ぶ。スペイン語とカタルーニャ語の映画に出演している。2016年マルク・クレウエトの「El rei borni」でガウディ賞2017主演男優賞、CEC新人賞にノミネート、2018年舞台をベルリンに移して撮った、エレナ・トラぺの「Les distàncies」で同じく助演男優賞にノミネートされている。フェルナンド・ボネリの短編「[Still] love you」でメディナ映画祭2017男優賞を受賞している。Netflixで配信されている作品も結構あり、字幕入りで鑑賞できる数少ない俳優の一人です。

 主なフィルモグラフィー 

2015Perdiendo el norte」(「Off Course」『夢と希望のベルリン生活』Netflix)助演

   監督ナチョ・G・ベリーリャ

2015Requisitos para ser una persona normal」コメディ、同レティシア・ドレラ、助演

2016El rei borni」監督マルク・クレウエト、主演

2017No sé decir adiós」(『さよならが言えなくて』)監督リノ・エスカレラ、助演

2018Les distàncies」監督エレナ・トラぺ、助演

2019Perdiendo el este」(「Off Course to China」)監督パコ・カバジェロ、主演

2020Malnazidos」(ホラー『マルナシドス~ゾンビの谷』Netflixコロナ禍で2022公開)

   監督ハビエル・ルイス・カルデラ、主演

2021El inocente」(『イノセント』TVシリーズ 6話出演、Netflix)助演

2021Tres」(「Out of Sync」)監督フアンホ・ヒメネス・ペーニャ、

   ガウディ賞助演男優賞ノミネート

2022Un hombre de acción」(『オンブレ・デ・アクシオン 伝説のアナーキスト』

   Netflix)ハビエル・ルイス・カルデラ、助演

2022Smiley」(ラブコメ『スマイリー』TVシリーズ8話)企画ギレム・クルア、主演

2023Una vida no tan simple」割愛

 

     

       (ガウディ賞主演男優賞ノミネートの「El rei borni」から)

 

フェリックス・ビスカレト(パンプローナ1975)は、2007年「Bajo las estrellas」で長編デビューした監督、脚本家、製作者。キャリアは以前の紹介に譲るとして、本作以降の仕事として、目下話題のTVシリーズ「Galgos」(23、全8話)のうち4話を監督します。ベテランのオスカル・マルティネス、パトリシア・ロペス・アルナイス、アドリアナ・オソレス、若手マリア・ペドラサ、マルセル・ボラスなど新旧入り混じっての豪華キャストです。

 

    

    (Galgos」撮影中の監督、アドリアナ・オソレス、マルセル・ボラス

   

   

   (右、パトリシア・ロペス・アルナイス)

     

    

                         (マリア・ペドロサ)

 

ストリーミング配信を期待する「Upon Entry」2023年07月01日 15:06

            カラカス出身の若い二人の監督、ロハスとバスケス

   

    

 

★サンセバスチャン映画祭2023のセクション・オフィシアル発表は、多分7月上旬あたりになると予想しています。というわけで前回のエレナ・トラぺの「Els encantats」に続いて、公開は無理としてミニ映画祭、ストリーミング配信などで観たい映画を幾つかアップする予定です。

 

3月に開催されたマラガ映画祭2023コンペティション部門にノミネートされたアレハンドロ・ロハスフアン・セバスティアン・バスケスの「Upon Entry / La llegada」が、予告通りスペインで公開されました(816日)。マラガFF では、主演のアルベルト・アンマン男優賞(銀のビスナガ)を受賞した作品です。両監督ともベネズエラのカラカス出身ですがバルセロナに在住、本国では映画製作ができない、いわゆる才能流出組です。二人ともHBOHome Box Office有料ケーブルテレビ放送局、本部ニューヨーク)の仕事をしており、ロハスはNetflix にも携わっています。バスケスが撮影監督をしたカルレス・トラスの「El practicante」(20)は、Netflixで『パラメディック~闇の救急救命士』として配信されている。本作はIMDbによると、松竹が配給元にアップされているので、公開もありかと期待して改めて紹介したい。

マラガ映画祭2023での監督キャリア&作品紹介は、コチラ20230314

      

       

   (左から、フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス両監督、

       製作者カルレス・トラス、タリン・ブラック・ナイツFF 2022

    

  

 (フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス、マラガFF フォトコール)

 

 「Upon Entry / La llegada」(仮題「通関 / 到着」)

製作:Zabriskie Films / Basque Films / Sygnatia  協賛ICEC / TV3

監督:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

撮影:フアン・セバスティアン・バスケス

編集:エマヌエーレ・ティツィアーニ

キャスティング:ジェラルド・オムス

美術:セルソ・デ・グラシア

メイクアップ&ヘアー:ロラ・カニャス(ヘアー)、スシ・ロドリゲス(メイク&ヘアー)

プロダクション・マネージメント:セルヒオ・アドリア、カルラ・ビセンテ

視覚効果:Hover Pinilla

製作者:カルレス・トラス(Zabriskie Films)、カルロス・フアレス、ショセ・サパタ、セルヒオ・アドリア、アルバ・ソトラ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・カタルーニャ語・英語、心理的スリラー、74分、公開スペイン2023616

映画祭・受賞歴:第26回タリン・ブラック・ナイツ映画祭2022(エストニア)FIPRESCI賞受賞、コルカタFF 2022ゴールデンベンガル・ロイヤルタイガー賞(インド)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023、マラガFF 2023 銀のビスナガ男優賞(アルベルト・アンマン)、BAFICI 映画祭2023(ブエノスアイレス)コンペティション部門正式出品、DA バルセロナFF、他多数

 

キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル(バレット税関職員)、ラウラ・ゴメス(バスケス税関職員)、ヌリス・ブルー(入国審査官)、デビッド・コムリー(警察官)、ルイス・フェルナンデス・デ・エリベ(ルイス)、コリン・モーガン(警察官)、ジェラルド・オムス(旅客)、他

 

ストーリー:ベネズエラ出身の都市計画家ディエゴ、バルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナ、二人は新しい生活を始めるため公式に承認された移民許可証を持って米国に到着する。彼らの目的は、プロとしてのキャリアを高め、「チャンスの国」であるマイアミで家族を築くことでした。しかし、ニューヨーク空港の入国審査エリアに入ると、彼らは二次検査室に連れていかれ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないか、と税関職員による心理的に不快な尋問を受けることになる。移民プロセスの複雑さ、外国人嫌い、少数の登場人物だけで緊張感あふれるドラマが展開する。アメリカン・ドリームと国家が自国の領土の安全を取り締まる権利が描かれる。

        

         

        (厳しい尋問を受けるディエゴとエレナ、フレームから)

  

 

     最高の演技と絶賛されたアルベルト・アンマンとブルーナ・クシ

   

★監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、既にアップしているマラガ映画祭の紹介記事に譲るとして、二人の主役を演じ、今までで恐らく最高のパフォーマンスと絶賛されている、アルベルト・アンマンとブルーナ・クシのキャリアを紹介したい。上述のようにアンマンはマラガ映画祭で最優秀男優賞を受賞している。ブルーナ・クシは、カルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』で少女の義理の叔母役の好演でゴヤ賞2018新人女優賞を受賞している。

    

      

    (銀のビスナガ男優賞受賞のアルベルト・アンマン、マラガ映画祭2023ガラ)

   

アルベルト・アンマンは、1978年アルゼンチンのコルドバ生れ、俳優、ミュージシャン。父親はジャーナリスト出身の政治家で作家のルイス・アルベルト・アンマンで後に大統領候補にも選ばれている。アルゼンチン軍事独裁政権(197683)を逃れて、一家は彼が生後1ヵ月のときスペインに亡命した。アルゼンチンがフォークランド戦争でイギリスに敗北した1982年に帰国するが、彼は数年後再びスペインに戻って、同じ理由でスペインに亡命してマドリードでアトリエを開き演技指導に当たっていたフアン・カルロス・コラッツァ演技学校で学んでいる。アルゼンチンではコルドバのジョリー・リボワ・シアター学校でも学んでいる。

 

2009年、ダニエル・モンソンの「Celda 211」の囚人に間違われた看守役で電撃デビュー、翌年のゴヤ賞新人賞を受賞した。本作は「スペイン映画祭2009」では『第211号監房』として上映されたが、公開時には何故かオリジナル題とかけ離れた『プリズン211』となり、ファンを呆れさせた。翌2010年、16世紀の劇作家ロペ・デ・ベガのビオピック「Lope」に主演、2011年、キケ・マイジョのSF映画「EVA」(『EVA〈エヴァ〉』)、2012年、ダニエル・カルパルソロの『インベーダー・ミッション』や『ワイルド・ルーザー』(13)、ホルヘ・ドラドのSFミステリー『記憶探偵と鍵のかかった少女』(13)に脇役で出演する。

    

       

         (ルイス・トサールと共演した『プリズン211』から)

 

2013年アルゼンチンに戻り、エルナン・ゴルドフリードのスリラー『ある殺人に関するテーゼ』でリカルド・ダリンと共演するなどした。メキシコのルイス・マンドキの「Presencias」(22)、オリヴィエ・マルシャルのアクション・スリラー『オーバードーズ 破滅の入り口』(22、プライム・ビデオ)など。アルゼンチンのマルティン・デ・サルボの「El silencio del cazador」でマラガ映画祭2020銀のビスナガ男優賞パブロ・エチャリと受賞しているほか、サンティアゴ映画祭SANFIC男優賞を受賞した。

 

NetflixTVシリーズ『ナルコス』(151720話)では、カリ・カルテルのボス、パチョ・エレーラを演じる。2019年『ナルコス』でスペイン俳優組合賞を受賞する。ほか『アパッチ』(151712話)、『マーズ 火星移住計画』(161812話)、『ナルコス:メキシコ編13』(18219話)とテレビ出演も多い。2022年ショセ・モライス企画の『ザ・ロンゲスト・ナイト』(6話)もNetflixで配信された。

    

     

     (パチョ・エレーラに扮したアンマン、TVシリーズ『ナルコス』から)

 

ブルーナ・クシ1987年バルセロナ生れ、映画・TV・舞台女優。父親は俳優のエンリク・クシ、バルセロナの演劇学校で学ぶ、その後バルセロナの演劇研究所でアルフレッド・カセス、ロベルト・ロメイの指導を受ける。2010年アルテ・ドラマティコの資格を受ける。アントニオ・ファバと一緒にコメディア・デル・アルテを設立するためイタリアを訪れる。カタルーニャTVシリーズ「Pulseras rojas」(11138話)に出演、主なテレビ出演は、主演「Instinto」(198話)、助演「The Alienist」(205話)、主演「Los herederos de la tierra」(225話)はNetflixで『大地を受け継ぎし者』の邦題で配信されている。アンナ・R・コスタのコメディ「Facil」(225話)にナタリア・デ・モリーナやアンナ・カスティーリョと共演している。

     

    

        (バックは尋問する2人の税関職員、Upon Entryから)

 

2013年、アグスティ・ビリャロンガと出会い、スペイン内戦をテーマにした「Incerta glôra」(Incerta gloria)で映画のキャリアをスタートさせ、ガウディ賞、サンジョルディ賞にノミネートされた。その後、上述したようにカルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』ゴヤ賞2018新人女優賞のほか、ガウディ賞助演女優賞を受賞、フォルケ賞やサンジョルディ賞にもノミネートされた。2019年、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのファンタジー「La reina de los lagartos」に出演、ラファ・デ・ロス・アルコスの短編「Todo el mundo se parece de lejos」(15分)でAguilar de Campoo 短編映画祭2019女優賞、カンス・フェスティバル2020女優賞を受賞した。2004年からガリシア州ポンテペドラの小さな村カンスで開催されるユニークな短編映画祭です。

    

      

            (ゴヤ賞2018新人女優賞の晴れ舞台から)

 

2020年はバイリンガルということも幸いしてテレビや短編も含めて活躍の年になった。リュイス・ダネスのホラー「La vampira de Barcelona」(カタルーニャ語)に出演、ガウディ賞助演女優賞にノミネートされた。他にダビ&アレックス・パストール兄弟の「Hogar」でハビエル・グティエレスと夫婦役を演じている。本作は『その住人たちは』の邦題でNetflix配信された。2021年、ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi」(スペイン語)に主演、弟モイ役を演じたリカルド・ゴメスは一時期パートナーだった。

    

      

     (ディオールの刺繍入りドレスが好評だったガウディ賞2021ガラにて)

 

Upon Entry / La llegada」と同じマラガ映画祭2023のコンペティション部門にノミネートされた、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのコメディSFEl fantástico caso del Golem」、マリオ・エルナンデスのロマンティックコメディ「Tregua (s)」に主演するなど、2023年のマラガには出演作が3作もノミネートされるという女優にとって異例の年でした。各映画とも簡単ですが既に作品紹介をしています。今後の活躍が確約されている女優として見守りたい。

 

ブルーナ・クシ関連記事

『悲しみに、こんにちは』の作品紹介は、コチラ20170222

La vampira de Barcelona」の作品紹介は、コチラ20210324

Tregua (s)」の作品紹介は、コチラ20230312

El fantástico caso del Golem」の作品紹介は、コチラ20230306

La reina de los lagartos」の作品紹介は、コチラ20230306

『その住人たちは』の作品紹介は、コチラ20200331


新世代監督エレナ・トラぺの3作目「Els encantats」公開2023年06月21日 16:11

          ゴヤ賞主演女優賞を受賞したライア・コスタが主演

 

      

 

エレナ・トラぺ3作目「Els encantats / Los encantados」は、ゴヤ賞2023主演女優賞を受賞したライア・コスタをヒロインにしたドラマ。コスタはアラウダ・ルイス・デ・アスアのデビュー作「Cinco lobitos」での演技が評価されての受賞でした。監督自身も新人監督賞を受賞するなど昨年の話題作でした。

 

★今回ご紹介するトラペの3作目「Els encantats / Los encantados」(仮題「魔法にかけられて」)は、今年のマラガ映画祭コンペティション部門に正式出品されました。監督は銀のビスナガ脚本賞を共同執筆者のミゲル・イバニェス・モンロイと受賞しています。マラガには監督以下、トラペ映画を手掛けるエグゼクティブプロデューサーのマルタ・ラミレス、キャスト陣ではダニエル・ペレス・プラダアイナラ・エレハルデなどが現地入りしました。昨今では珍しくもない自分探しがテーマのようにみえますが、脚本賞を受賞しただけに中々一筋縄ではいかない捻りがあるようです。ライア・コスタによる素晴らしいパフォーマンスとも相まって、ときには痛みを伴うが表層的ではないというポジティブな批評が多い。

    

    

(エレナ・トラぺ、マラガ映画祭2023フォトコール)

   

    

(左から、ダニエル・ペレス・プラダ、3人目がエレナ・トラぺ、マルタ・ラミレスなど)

 

      

            (ミゲル・イバニェスとエレナ・トラぺ、マラガFF2023授賞式)

 

★長編2作目「Les distàncies / Las destancias」は、マラガ映画祭2018でプレミアされ、金のビスナガ作品賞、トラペ自身も監督賞を受賞した。その後、釜山、カリ、ナント、トゥールーズなどの映画祭巡りをして、翌年のガウディ作品賞、サンジョルディ撮影賞を受賞するなどした。両作とも人生の岐路に立つ30代後半を登場人物に据えているが、こちらは2008年のリーマンショックで他国への出稼ぎを余儀なくされたミレニアル世代(198196年生れ)の幻滅を描いており、新作のように母親になること、離婚などには踏み込んでいない。監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は以下にアップしています。

 

Els encantats」の作品紹介は、コチラ20230306

Les distàncies / Las destancias」の作品&フィルモグラフィー紹介は、

  コチラ20180427

   

          

         (第2作「Les distàncies」のスペイン語版ポスター)

 

 

 「Els encantats / Los encantados」(「The Enchanted」)

製作:Coming Soon Films / A Contracorriente Films / RTVE / TVC / ICAA  他

監督:エレナ・トラぺ

脚本:エレナ・トラぺ、ミゲル・イバニェス・モンロイ

音楽:アンナ・アンドリュー

撮影:パウ・カステジョン・ウベダ

美術:イレネ・モントカダ

編集:ソフィア・エスクデ

プロダクションディレクター:エリサ・シルベント

キャスティング:アンナ・ゴンサレス・パスクアル

メイクアップ&ヘアー:ラウラ・ガルシア

衣装デザイン:マルタ・ムリージョ

音響:ナチョ・オルトゥサル、ラウラ・ディエス

製作者:マルタ・ラミレス(エグゼクティブ)、アドルフォ・ブランコ、フェルナンド・リエラ、マヌエル・モンソン、リュイス・ルスカレダ、他

 

データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語、ドラマ、108分、撮影地カタルーニャ州ピレネー山脈沿いのアンティスト(Vall Fosca)、配給A Contracorriente Films  公開スペイン202362

映画祭・受賞歴:第26回マラガ映画祭2023コンペティション部門にノミネート、脚本賞受賞。

 

キャスト:ライア・コスタ(イレネ)、ダニエル・ペレス・プラダ(友人エリック)、ペップ・クルス(祖父アグスティ)、アイナ・クロテット(隣人イングリット)、アイナラ・エレハルデ(隣人ジーナ)、デリア・ブルファウ(マルタ)、カルロス・ディ・ロス(ギジェルモ)、他

 

ストーリー:離婚手続き中のイレネは、4歳になる娘が父親と数週間過ごすことになり、初めて一人で自分自身に向き合うことになる。この新しい現実に適応できず、実家のあるカタルーニャのピレネー山脈近くの小さな村に出掛けようと思い立つ。長いあいだ失ったと感じていた安定と落着きを取り戻そうと考えたのだ。しかし、記憶のなかでは親しい場所であったのに、次第に自分の人生と同じようにイレネを圧倒するようになり、逃避からは何も得られないことを理解する。岩の割れ目には何かの生き物が住んでおり、夜になると出てくる。あまり近づきすぎると、あなたは彼らを愛するようになり、永遠にここに止まることになるという、カタルーニャの伝説が語られる。場所は魔法のように人を癒すことはできない。

   

      

         (岩の割れ目を覗くイレネ、フレームから)

 

★マラガ映画祭の紹介記事と重なりますが、公開されたことで情報が入手しやすくなったので、加筆して再構成しました。フランコ体制が終わった1976年生れの監督はミレニアル世代には属しておりませんが、スペインを壊滅的にした経済危機をもろに受けています。若者の失業率は6070%を超え、EUのお荷物といわれたスペイン、日本でも若者の非正規雇用が大量に発生、霞が関も大企業も無視続けた結果、経済の二極化が進んだ。「失われた30年」として、原因やその責任を問われぬまま延々と30年も続いている。30年で終止符をうつのか、40年に突入するのか。このミレニアル世代特有の「もう、うんざり」感が表面的には語られないが、奥深くに見え隠れするのではないか。監督は「時間が記憶を美化しただけのような牧歌的な田舎のノスタルジックな映画を打破したい」とコメントしている。

 

     

          (撮影中の監督とイレネ役のライア・コスタ)

 

★イレネを怖ろしい苦痛感から逃れさせるために、監督は彼女をピレネー山脈の近くにある村に逃避させます。両親が所有する家があるからです。しかし風光明媚な田舎も単なる場所でしかなく、イレネは最終的には新たな厳しい現実に直面する。場所は魔法のように人を癒すことはできない。初めて離れて暮らす娘の様子を電話で尋ねる、そう、イレネは母親なのだ。村の若い女性ジーナとその友人たちとのコントラスト、監督は世代間の違いを繊細に描いていく。内省的な映画ではあるが、イレネを体現するライア・コスタの自然な演技は注目に値するだろう。因みにジーナを演じたアイナラ・エレハルデ(バルセロナ2001)は、苗字からも分かるようにカラ・エレハルデの娘で本作でデビューした。目下売り出し中、将来が期待される新人です。

   

      

            (最近のアイナラ・エレハルデ)

 

★トラペ監督は、公開時にエル・パイスのインタビューに以下のように応えています。カタルーニャ語で行われたようですが、スペイン語に翻訳されたのをつまみ食いしてピックアップします。「へえー、そうなの?」、またはスペイン民主主義移行期の少女たちの興味深い片鱗を窺うこともできる。

 

Q: 最近のスペイン映画はなぜ田舎かや山へ脱出するのが多いのでしょうか。

A: 私の場合、山は主人公に起こる多くのことを触媒します。主人公は痛みに直面するからです。映画に登場するものはすべて本物で名前を変更せず、ストーリーをここに統合しようとしました。しかし、私はこの村の環境を、都会の人がもっている理想的な美的体験から見ていることを認めます。

 

Q: 2作目「Les distàncies」のあと、TVシリーズ『エリート』を手掛けていますが、混乱することはありませんか。

A: まったくありません。TVプロジェクトで多くのことを学びました。新作を撮影する方法を見つけたのも「Rapa」や『エリート』を手掛けたおかげです。

管理人:ハビエル・カマラ主演の犯罪スリラー「Rapa」(12話、2223)では、20223話を監督している。他にも「HIT」(30話、20216話、最新作「Yo, adicto」(23)では6話を手掛けている。

 

Q: あなたが最も多く観た映画は何でしょうか。

A: 『クレイマー、クレイマー』です。

管理人:少し意外でしたが、日本でもヒットしました。1979年製作、ロバート・ベントン監督、主演はダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ。

 

Q: 子供時代を思い出させる映画があるでしょうか。

A: 姉と私が好きだったのは、一つは『何かいいことないか子猫チャン』、もう一つは『掠奪された七人の花嫁』です。

管理人:前者は1965年製作、クライヴ・ドナー監督、ピーター・オトゥール、ピーター・セラーズ主演のコメディ、ウディ・アレンが脚本と脇役でも出演しています。後者は1954年製作、スタンリー・ドーネン監督のミュージカル映画、海外のクラシック映画が80年代に公開されたのでしょうか、当時スペインは吹き替えが一般的でした。

 

Q: あなたの映画に出てほしい女優は誰でしょうか。

A: オリヴィア・コールマン

管理人:日本でも人気の高いオスカー女優、『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞、『ファーザー』、TVシリーズのエリザベス2世役でお馴染みです。

 

Q: ペドロ・アルモドバル、ビクトル・エリセ、ピラール・ミロ、いずれか選択してください。

A: ペドロ・アルモドバル

 

Q: J. A. バヨナ、アルベルト・セラ、イサベル・コイシェ、いずれか選択してください。

A: イサベル・コイシェ

管理人:これは聞くまでもありません。2004年、トラペはバルセロナ大学付属上級映画学校ESCAC監督科出身でコイシェの薫陶を受けています。J. A. バヨナもESCAC出身。コイシェについてのドキュメンタリー「Palabras, mapas, secretos, otras cosas」(1558分)は、ロス、ポートランド、ニューヨーク、ベルリン、バルセロナを巡ります。コイシェの映画に出演したティム・ロビン、菊地凛子などが登場します。

    

      

            (イサベル・コイシェ、フレームから) 

 

Q: 最近あなたを魅了した映画はなんでしょうか。

A: ジェイミー・ダックのデビュー作「Palm Trees and Power Lines」をFilminで観ました。地味ですが繊細で壊滅的な映画だと思いました。俳優が素晴らしくて魅了されました。

管理人: Filminというのは独立系映画のストリーミングに特化した映画配給会社、バルセロナに本社があり、スペインでは多くの人が加入している。バジャドリード映画祭2022で「Nunca llueve en California」として上映された。

 

Q: 誰もが賞賛する映画監督はどなたでしょう。

A: アレクサンダー・ペイン

管理人:アレクサンダー・ペイン(1961)はアメリカの監督、脚本家。代表作『サイドウェイ』(04)、『ファミリー・ツリー』(11)など。

 

Q: 映画化したい本がありますか。

A: ニック・ドルナソのグラフィックノベル Sabrina です。

管理人:ニック・ドルナソは漫画家、イラストレーター。Sabrina 2018)はグラフィックノベルとして初めてブッカー賞の候補になった。本邦でも2019年『サブリナ』として翻訳本が刊行されている。

 

Q: 今、ナイトテーブルにある本は何でしょう。

A: マギー・オファーレル El retrat de matrimoni です。

管理人:マギー・オファーレル(北アイルランド1954)の原作 The Marriage Portrait2022刊)は、15歳で政略結婚させられ、16歳で生涯を閉じたルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチについて語ります。『ルクレツィアの肖像』として翻訳書がまもなく出版されます。(629日刊)

 

Q: いま読みかけている本は何でしょうか?

A: オーシャン・ヴオン On Earth Were Briefly Gorgeous です。

管理人:オーシャン・ヴオン(ベトナムのホーチミン1988)はアメリカの作家、詩人。この長編小説は『地上で僕らはつかの間きらめく』(2019年刊)という邦題で翻訳書が出ています。

 

Q: 尊敬するミュージシャンは?

A フランコ・バッティアート

管理人:イタリアのシンガーソングライター(19452021)。

 

★まだインタビューは続きますが、映画と離れていくのでお開きといたします。


グティエレス・アラゴン審査委員長インタビュー*マラガ映画祭2023 ⑬2023年03月31日 18:19

              ベルリン映画祭で幸運なスタートをきる

 

★マラガ映画祭の「審査委員長にマヌエル・グティエレス・アラゴン監督」のアナウンスには、スペイン映画のオールドファンの一人として驚きを隠せなかった。民主主義移行期から1980年代を通して、多くの名作が本邦にもたらされ、若手ながら批評家の評価は高かったが、突然の引退表明から大分時が経っていたからでした。2008年製作の「Todos estamos invitados」(銀のビスナガ審査員特別賞受賞作)を最後に60代での引退はいかにも早すぎ、いずれ撤回するに違いないと思っておりましたが、TVシリーズはあっても長編映画を撮ることはありませんでした。インタビューの前段として監督キャリア&フィルモグラフィーをアップします。

 

    

  (フリックスオレのインタビューを受けるグティエレス・アラゴン、マラガFF2023

 

マヌエル・グティエレス・アラゴン1942年カンタブリア州トレラベガ生れの監督は81歳、ゴヤ賞ガラの前日に鬼籍入りしたカルロス・サウラの次の世代に当たります。ホセ・ルイス・ボラウの『密漁者たち』やハイメ・カミーノの『1936年の長い休暇』に監督とシナリオを共同執筆した名脚本家としての評価も高い。マドリード大学で哲学と文学を学ぶかたわら、1947年設立の国立映画研究所(IIEC)を1962年に組織替えした国立映画学校(EOC)に入学、監督を学び、卒業制作「Hansel y Gretel」(ヘンゼルとグレーテル)を撮る。短編数編を撮ったのち、1973エリアス・ケレヘタの製作によってデビュー作「Habla, mudita」が誕生した。当時の大物プロデューサーだったケレヘタとの出会いが幸運だった。

 

★長編第1作がベルリン映画祭に正式出品されるという幸運に恵まれただけでなく、いきなり「芸術文学科学の普及国際委員会賞」という批評家賞を受賞してしまった。非常に早い段階で成功がもたらされたことになります。本作はスペイン映画が初めて23本まとまったかたちで紹介された「スペイン映画の史的展望〈19511977」(198410月~11月、東京国立近代美術館フィルムセンター)で『話してごらん』の邦題で上映された。彼はルイス・ブニュエル以下20名の監督のなかで一番の若手でした。この映画祭終了後1週間おいて渋谷東急名画座で開催された「1回スペイン映画祭」では、1982年製作の6作目「Demonios en el jardín」が『庭の悪魔』の邦題でエントリーされた。駆け出しの監督が10年間に6作というのは、当時としては驚異的な数字でした。1986年のカルロス・サウラの映画特集に続いて、翌年「アラゴン映画特集」というミニ映画祭が開催され、以下の6作が上映された。

   

       

              (『庭の悪魔』のポスター)

 

1977年「Camada negra2作目、邦題『黒の軍団』ベルリン映画祭1978監督銀熊賞受賞

1977年「Sonámbulos3作目、同『夢遊病者』サンセバスチャン映画祭1978監督銀貝賞受賞

1978年「El corazón del bosque4作目、『森の中心』ベルリンFF 1979正式出品

1980年「Maravillas5作目『マラビーリャス』シカゴ映画祭1981銀のヒューゴー賞受賞、

    サンジョルディ賞1982受賞、フォトグラマス・デ・プラタ1982など受賞

1982年「Demonios en el jardín6作目、『庭の悪魔』サンセバスチャンFF FIPRESCI賞、

    フォトグラマス・デ・プラタ1983、イタリアのドナテッロ(ルネ・クレール賞)、

    モスクワ映画祭1983 FIPRESCI 賞などを受賞

1984年「Feroz」『激しい』カンヌ映画祭「ある視点」正式出品

 

★ミニ映画祭とはいえ、若手監督の映画特集は異例のことでしたが劇場公開には至りませんでした。サンセバスチャンFFで金貝賞を受賞した9作目「La mitad del cielo」(86)が『天国の半分』の邦題で初めて公開されたのは、1990年の年末でした。本作ではアラゴン監督のお気に入り女優アンヘラ・モリーナが女優賞(銀貝)を受賞している。スペイン内戦後のマドリードを舞台にした本作は、「2回スペイン映画祭1989」の1本でした。監督の故郷カンタブリアの州都サンタンデール出身の女性がマドリードに出て、二人の姉や成功を妬む人の密告などに苦労しながらも予知能力のある祖母の霊に守られてレストラン経営で成功する話だが、日本の観客に受け入れられたかどうか。

 

1998年、スペイン大使館主催、国際交流基金後援の「スペイン映画祭98」(会場シネ・ヴィヴァン・六本木)は本当に力作ぞろいの7作品でした。うちアラゴンはキューバの俳優とスタッフを起用した「Cosas que dejé en la Habana」(97)がエントリーされ、『ハバナから来た娘』で上映された。監督がキューバに拘るのは、祖父と父親がキューバ生れのクリオーリョということがあるようです。より良い人生を築くため祖国を離れてマドリードに移住してきた3人の娘たちの誇りと郷愁が描かれた。

 

★公開作品は上記『天国の半分』1作だけだが、キューバを舞台にした「Una rosa de Francia」(06)が、2009年に『カリブの白い薔薇』でDVDが発売された他、フェルナンド・レイとアルフレッド・ランダ主演の『ドン・キホーテ』(1991年版)がNHK衛星第2で放映された。10年後2002年に再びフアン・ルイス・ガリアルドとカルロス・イグレシアス主演のコンビで製作されたものは、前作のレベルには到達しなかったと評された。これは20155月にインスティトゥト・セルバンテス東京で英語字幕入りで上映されている。

 

      「検閲は私たちを萎縮させ、苛立ちを引き起こした」と監督

 

★以下の記事は、マラガ映画祭期間中に監督とFlixOléとのインタビューを簡単に要約したものです。まだ結果発表前に行われたインタビューなので、ノミネートされた個別の作品についての言及はありません。( )内は管理人が追加したものです。

  

Q: 審査委員長を引き受けた経緯についての質問。

A: 去年も打診がありましたがお断りしました。忘れてくれることを期待しましたが、やはり今年も要請がありましたので、やるしかないと引き受けました。私は何度もマラガに来ており、審査員になることでスペインとラテンアメリカ両方の映画を楽しんでいます。

 

Q: 今年の映画の一般的なレベルについての質問。

A: まだ審査前ですから、お話しすることはできません。しかし、ラテンアメリカ映画は多様で感銘を受けています。私たちが知らない不思議な世界を描いていて、訛りがとても魅力的なのです。今年のスペイン映画の質も高く、人々の関心を高めています。審査はラクではありませんが、有意義な時間を過ごしています。

 

Q: デビュー作がベルリン映画祭で受賞したことがキャリアにどう影響したかの質問。

A: 当時スペインでは、映画祭に出品するというのはそう多くなかったので注目されました。しかし映画祭は数が多すぎて出品しただけでは気づいてもらえず、ですから受賞はとても重要でした。注目を集めるには何かプラスが必要なのです。

 

Q: フランコ政権後期から民主主義移行期に登場した世代に属しています。その頃の映画製作の実情についての質問。

A: フランコがまだ死んでいなかったので(1975年没)、第1作(Habla, mudita73)は検閲を受けましたが、受けたのはこの1作だけです。しかし、何よりも検閲は私たちを萎縮させ、苛立ちを引き起こした。しかしそれと引き換えに、人々はどこが検閲され削られたかを見つけたりして、それなりに惹かれました。観客との一種の共犯関係があったのです。移行期にはそれが特に顕著でした。検閲を気にする必要がなくなって共犯関係は失われました。

 

Q: キャリアを最も決定づけた作品は何かの質問。

A: 私が若くて欲望が強かった頃の初期の映画によい思い出があります。70年代から80年代にスペインで映画を撮るのは非常に困難でした。撮影期間が今より長いこともありました。今は残念ながら短くなって数週間です。今よりずっと製作状況は厳しかったのに、最高の思い出は初期の作品で、記憶に残るのは(名優フェルナンド・フェルナン=ゴメス主演、1980年製作の)マラビーリャス』です。

    

      

        (最高の思い出がある『マラビーリャス』のポスター)

 

Q: 『夢遊病者』や『庭の悪魔』もお気に入りと思いますが、2作についての質問。

A: 私が映画を撮り始めたとき、『夢遊病者』や『マラビーリャス』はかなり稀な作品、破壊的でした。伝統的なスペイン映画との決別がありました。一部の人には受け入れられましたが、一方ほかの人は好きではありませんでした。それで少なくともより古典的な映画に切り替えました。私も年を取ったわけです(笑)。これは一般の観客に門戸を開きましたが、破壊的な映画の新鮮さを少し失いました。一部の人にしか受け入れられなかった映画でも、初期の作品は気に入っています。いつも批判的なサポートを受けます。ほかの監督は批判されると不平を言いますが、私の場合は専門家の評価でキャリアが推進されたので、文句は言えないのです。そうでなければ、私はここにいないでしょう。それから私の映画は緩慢な領域に入りましたが製作できただけ満足です。映画製作は高価で役に立たない複雑な面があり、最終的には批評家ではなく、多くの観客に受け入れられることを望んでいます

 

★監督が審査員になることの是非について「ご存じのように、監督は一般的に私たち自身の映画の良い判断者ではありません。ある人には共感できるが、他の人はそうではない。打ちのめされた映画というのは、それはまさにあなたが好きな映画で、あなたが良い映画だと思っているものです。自分たちの映画を審査することになると、私たちは信頼できません」ということでした。「然り」ですね。

 

FlixOlé フリックスオレというのは、月額3.99ユーロでサブスクリプションして、スペイン映画をタブレットや携帯にダウンロードして視聴できる。追加料金を払えば海外の映画も見ることができる。携帯で映画を見る時代になったのでしょうか。「映画は映画館で見る」という管理人の世代は、もはや化石人間なのでしょう。


マラガ映画祭2023の落穂ひろい*マラガ映画祭2023 ⑫2023年03月24日 18:01

  クロージングはパス・ヒメネスのコメディ、長編第1作「Como Dios manda

    

          

★セクション・オフィシアルのクロージング作品は、例年通りアウト・オブ・コンペティションから選ばれる。今回はパス・ヒメネスの長編デビュー作である多様性を反映したコメディ「Como Dios manda」(22)で締めくくられました。ヒメネス監督は1977年マラガ生れ、「故郷のコスタデルソルで撮影できたことはエキサイティングな体験でした」とプレス会見で語っている(317日)。自分を「神が意図した人」であると考えている、財務省の厳格な役人アンドレス(レオ・ハーレムが扮する)のお話。同僚との対立から制裁を受けるが、ユーモアと楽観的で希望に満ちた視点を通して、排除の危険にさらされているグループの纏めに取り組んでいる。監督は「批判的な背景をもつジョークや誇張があっても政治は脇においています」とも。製作者のマルタ・ベラスコによると、友人からもたらされた実話に基づいているということです。ベラスコは観客賞を受賞したマリナ・セレセスキーの「Empieza el baile」のエグゼクティブの一人です。

      

          
     (左から、レオ・ハーレム、監督、マルタ・ベラスコ、ペレス・プラダ、

      「Como Dios manda」のフォトコール、317日)

     

       

        (レオ・ハーレム扮するアンドレスを配したポスター)

 

 

   ドキュメンタリー映画はフェルナンド・フラゲラの「El matadero」が受賞

 

★ドキュメンタリー部門の受賞作は、フェルナンド・フラゲラ(キューバ1991)の「El matadero」(キューバ2022、仮題「食肉処理場」)、キューバ革命のプロジェクトとして建設されたアパートが建ち並ぶバリオでは、隣人たちが生き残るために豚を飼育している。フェルナンドは子供時代からそこで暮らしており、国を脱出するために豚を飼って販売している友人ドゥスニエルについて語ります。フェルナンドも逃げ出したいと思っている。

    

        

      

  

監督賞ソフィア・パオリの(「Guapo 'y」(パラグアイ=アルゼンチン=カタール2022、「ハンサム」) が受賞、パラグアイの軍事独裁政権が残した女性セルサ・ラミレスの傷が語られる。パオリは1982年ペルー生れだが、武力紛争を逃れてパラグアイに亡命して映画製作をしている。

    

       

   

 

観客賞は、エレナ・モリーナ(マドリード生れ)の「Remember my Name」(西=仏=カタール2023)は、モロッコからメリリャのフェンスを跳び越えたあと、未成年者は保護センターに入ります。それぞれ一人で越境してきますが、ここで新しい疑似家族を作ります。NANAというダンス・グループを作った若者を追うドキュメンタリー。メリリャはアフリカ北西部沿岸に位置するスペインの自治都市、不法移民を防ぐためモロッコとの国境に高さ6メートルの金属フェンスを張り巡らせている。

 

      

   

 

3作とも厳しい内容のドキュメンタリーですが、3監督とも若く将来が期待されます。カルラ・シモンが語ったように監督といえば中年男性をイメージする時代は既に終りを告げました。若い女性シネアストの躍進、これが今年のマラガで最も印象深かったことでした。映画館に足を運んでくれた観客は9万人という発表がありました。


第26回マラガ映画祭受賞結果*マラガ映画祭2023 ⑪2023年03月21日 17:44

   金のビスナガに「20.000 especies de abejas」と「Las hijas」を選んで閉幕

 

     

 

318日(2000~)、第26回マラガ映画祭は金のビスナガに、スペイン映画部門はエスティバリス・ウレソラの「20.000 especies de abejas」とイベロアメリカ映画部門にカティア・G・スニィガの「Las hijas」(パナマ=チリ合作)を選んで閉幕しました。偶然でしょうが両部門とも女性監督の手に渡りました。前者は下馬評通りの受賞でしょうか。作品賞2以外の銀賞は監督賞を含む10部門です。今年はアルゼンチンのベテラン俳優、本邦でも知名度の高いダリオ・グランディネッティとジャーナリストのモニカ・カリージョがホスト役を務めました。前者はマリナ・セレセスキーの「Empieza el baile」に主演していましたから受賞の可能性もあったはずです。本作は観客賞と同僚のホルヘ・マラレが助演男優賞を受賞しました。後者のジャーナリストはアンテナ3の「週末ニュース」の司会をしていますので、お茶の間のお馴染みさんです。第27回は2024年3月1日から10日までの予定。

   

   

     (総合司会者のダリオ・グランディネッティとモニカ・カリージョ)

 

★ガラの音楽パフォーマンスは、フラメンコ歌手で作曲家のイスラエル・フェルナンデスの情熱的なパフォーマンスで始まりましたが、彼は先だってのゴヤ賞ガラにも出演しておりました。加えてAlizzz y el grupo Amaral、正確にはカタルーニャの25年のキャリアのあるエバ・アマラルフアン・アギーレのデュオが会場を沸かせましたが、主役はやはり最優秀作品賞の金のビスナガ受賞者でしょう。1作品に固まらず丁寧に選んでいる印象を受けました。審査員は委員長のマヌエル・グティエレス・アラゴン(スペイン、監督)、ガブリエラ・サンドバル(チリ、製作者、プログラマー)、パブロ・ストール(ウルグアイ、監督、脚本家)、フリエタ・シルベルベルク(アルゼンチン、女優)、ゴンサロ・ミロー(スペイン、監督)の5名でした。

   

   

                (審査委員長マヌエル・グティエレス・アラゴン)

      

    

   (審査員ゴンサロ・ミロー、ガブリエラ・サンドバル、パブロ・ストール)

 

 

        セクション・オフィシアルの受賞結果

  

金のビスナガ(作品賞・スペイン映画)副賞8.000ユーロ

20.000 especies de abejas 」製作:Gariza Films / Inicia Films

             監督:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

      


              (大喜びの子役たち)

     

 

(エスティバリス・ウレソラ監督)

       

    

       (受賞ラッシュの製作者バレリー・デルピエーレ)

 

金のビスナガ(作品賞・イベロアメリカ映画)副賞8.000ユーロ

Las hijas」(パナマ=チリ)製作:Ceibita Films / Mente Pública

                        監督:カティアG. スニィガ

    

      

     

                     (カティア・G・スニィガ監督

   

   

          (レッドカーペットに現れたチーム)

 

審査員特別賞(銀のビスナガ)

Bajo terapia」(スペイン)監督:ヘラルド・エレーロ

    

  
       
                             (ヘラルド・エレーロ監督、レッドカーペット)                

監督賞(銀のビスナガ)

マティアス・ビゼ (チリ=アルゼンチン)「El castigo

    

    

  


   

女優賞(銀のビスナガ)

マリア・バスケス (スペイン)アルバロ・ガゴの「Matria

予想通りの受賞、「労働者階級の不完全なガリシア女性」というキャラクターを選んでくれた審査員に感謝した。プレゼンターは、アントニオ・レシーネスとラウラ・ガラン。

    

   

    

 

   (マリア・バスケス、レッドカーペット)

   

男優賞(銀のビスナガ)

アルベルト・アンマン(スペイン)

  アレハンドロ・ロハス&フアン・S・バスケスの「Upon Entry

アンマンは「カップルのプライバシーが侵害される映画を軌道に乗せるようやりくりした監督たちの勇気」を強調した。

    

     

       

 

助演女優賞(銀のビスナガ)

パトリシア・ロペス・アルナイス (スペイン)「20.000 especies de abejas

   

       

     

                     (名前を呼ばれて登壇するパトリシア)

 

助演男優賞(銀のビスナガ)

ホルヘ・マラレ (アルゼンチン)マリナ・セレセスキーの「Empieza el baile

*受賞者の来マラガはなく監督が代理で受け取りました。

    

   

        

              (右側が受賞者ホルヘ・マラレ)

      

脚本賞(銀のビスナガ)

ミゲル・イバニェスエレナ・トラぺ(スペイン)エレナ・トラぺの「Els Encantats

      

        

    

    

音楽賞(銀のビスナガ)

パブロ・モンドラゴン (コロンビア)ホセ・ルイス・ルヘレスの「Rebelión

 

   

                    (左が音楽監督パブロ・モンドラゴン)

   

    

                    (左端がルへレス監督、レッドカーペット)

  

撮影賞(銀のビスナガ)

セルゲイ・サルディバル・タナカ(メキシコ)

カルロス・アイチェルマン・カイザーの「Zapatos rojas」、受賞者はロドリゴ・プラの「Desierto adentro」などでアリエル賞を受賞しているベテラン。今回来マラガはなく監督が代理で受け取りました。

     

   

                   (カルロス・アイチェルマン・カイザー監督)

     

   

 

    

編集賞(銀のビスナガ)

ハロルド・ボルヘスフリアノ・カストロ(ブラジル)

 ハロルド・ボルヘスの「Saudade fez morada aqui dentro

     

     

               (ハロルド・ボルヘス)

     

      

     (レッドカーペット)

       

★以下は補完的な銀のビスナガです。批評家審査員特別賞の審査員は、アルフォンソ・カロ、アナ・サンチェス・デ・ラ・ニエタ、カルロス・サノンの3名です。観客賞は一般観客の投票50%とダビ・コレアなど7名で構成された専門家が決定しました。

 

批評家審査員特別賞(銀のビスナガ)

Desperté con un sueño」(アルゼンチン=ウルグアイ)監督:パブロ・ソラルス

今回、来マラガは監督と主役のルーカス・フェロ少年を含む4人でしたが、二人は帰国してガラ出席は女性陣だけでした。

    

        

      

       (パブロ・ソラルス監督と出演者たち、フォトコールから)

 

観客賞(銀のビスナガ)

Empieza el baile」(アルゼンチン)監督:マリナ・セレセスキー

    

   

              (マリナ・セレセスキー監督)

     

     

 

★セクション・オフィシアルの受賞者は以上の通りです。金のビスナガを受賞したウレソラ・ソラグレン監督は「トランスジェンダーの子供時代を大切にし、可視化したい願望が高まっていると思います。これらの子供たちが自分たちの居場所を見つけることが重要です。本作では家族のアプローチから、みんなが想像していたのとは異なる方法で自身を表現している人に同行しなければならないとき、周りの人々がどのように変化するかを物語っています」とスピーチしました。もう一人の受賞者カティア・G・スニィガ監督はこのプロジェクトが「9年かけて製作したこと」を強調し、「個人的な物語ですが、素晴らしい映画になる可能性を疑わなかった」と自信のほどを垣間見せたスピーチした。

 

★モニカ・カリージョの「来年は第27回になります、では映画館でお会いしましょう。ビバ・スペイン映画、ビバ・マラガ!」で締めくくられました。今回は長短はありますが、作品紹介はすべてアップ済みです。

    

    

       (受賞者、ミュージシャン全員が勢ぞろいしたクロージング)

 

カルラ・シモンにマラガ才能賞*マラガ映画祭2023 ⑩2023年03月19日 15:29

      マラガ才能賞のトロフィーはアンヘラ・モリーナから

 

       

317日、メイン会場セルバンテス劇場でマラガ才能賞(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)のガラがありました。受賞者カルラ・シモンはベテラン女優アンヘラ・モリーナの手からトロフィーを受け取りました。司会者はセリア・ベルメホでした。サポーターはモリーナの他、デビュー作『悲しみに、こんにちは』主演のブルーナ・クシダビ・ベルダゲラ、監督のフアン・アントニオ・バヨナなどが登壇しました。モリーナは、シモンが映画監督としてでなく、人間として素晴らしいことを讃え、「善と純粋さですべてを凌駕している彼女が受賞するのはとても価値がある」とスピーチした。

   

         

                      (アンヘラ・モリーナと受賞者)

   

          

   (ブルーナ・クシとダビ・ベルダゲラ)

 

★アクションを盛り込んだヒット作を出し続けているフアン・アントニオ・バヨナ監督は、「私の最後の映画がモンスター主演であったことを考えると、私のような監督が登壇するのは場違いに思うでしょう。モンスターを撮るのは非常に複雑なものがあります。なぜなら存在しない生き物を本物に見せようとしなければならないからです。カルラがしていることもまったく同じです。違うのは彼女は現実を並外れたものに変えるのです」とバヨナは、自作と親密で現実的なシモン映画を比較した。

   

       

            (フアン・アントニオ・バヨナ監督)

 

★カルラ・シモンは、この特別な日にサポートしてくれた同僚や友人に一人ずつお礼を述べたいと語り、またフェスティバル関係者や家族にも感謝したいとスピーチした。しかし、彼女が最も伝えたかったのはフェミニストとしてのメッセージでした。「私たちの視点は、今までの視点と同じではありません。私たちは女性によって語られる新しいタイプの作品を目指していきたい。今までとは異なる視点、より優しく、母性的な作品です。私たちの世界では光と愛が不足しているのでヒューマニストの映画とアートを保護しなければならない」と語った。

   

      

★授賞式に先だってセルバンテス劇場ロッシーニ・ホールで、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルのインタビューが行われた。シモンの『悲しみに、こんにちは』は、2017年の金のビスナガ賞受賞作品、2作目Alcarràs2022年のアウト・オブ・コンペティションに参加していた。「マラガは自宅に帰ってきたような気分でリラックスできる」と語った。第2作はとても厳しい長い道のりだったと明かし、ベルリンで金熊を与えられたとき「撮った甲斐があった」と感じたようです。

    

   

   (カルラ・シモンとフアン・アントニオ・ビガル、ロッシーニ・ホールにて)

 

★受賞者曰く「人々が映画監督についてイメージするのは若い女性ではありません。しかしこれは急速に変化しており驚きです。最初はチームがこの映画を完成させられるかどうか理解するのは難しいです。でも自分のやり方でやり通すことです」と。「技術チームが不確実性に慣れていない場合は、彼らの疑念を払拭するよう作業を進める必要があります」とも述べている。やはり「若い女性監督で大丈夫か?」という技術部門の不安を解消するのは大変ということでしょう。監督がどうしたいか、何を模索しているか、を理解してもらうことが必要ということでしょうか。彼女のキャリアが進むにつれて、彼女のやり方を尊重し、理解してくれるようになり、うまく作業できるようになった。今更ですが、若い監督にとって国際映画祭の受賞は大きな前進に繋がるようです。

 

★次回3作目のタイトルはRomeríaで、シモンの「家族についての三部作」を締めくくりたい、「それは一種のルーツへの旅、家族の記憶がテーマになるだろう」ということでした。


マラガ特別賞ガラのフォト集*マラガ映画祭2023 ⑨2023年03月17日 09:59

         マラガ―スール賞以下特別賞ガラのフォト特集

 

310日に開幕したマラガ映画もすでに半ばを過ぎ、15日現在の特別賞ガラのフォトが続々配信されています。オープニングにビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞の国民的歌手ラファエル・マルトス11日にレトロスペクティブ賞―マラガ・オイのアルベルト・ロドリゲス監督、12日にマラガFFの大賞マラガ―スール賞に女優ブランカ・ポルティーリョ13日にリカルド・フランコ賞にスクリプトのユイ・ベリンゴラ、と4賞のガラが終了しました。受賞者紹介はアップ済みなのでフォト集をお届けします。

   

     

      (オープニングの司会者、エレナ・サンチェスとマルタ・ハザス)

   

     

  (セクション・オフィシアルの5人の審査員)

 

ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞310日、メイン会場セルバンテス劇場

ラファエル・マルトス、愛称ラファエルで親しまれているスペインの国民的歌手にトロフィーを手渡したのは、TVシリーズのヒット作「Velvet」の主役を演じたマルタ・ハザスでした。歌手ディアナ・ナバロも登場、ラファエロの曲をミックスして歌いあげオマージュを捧げました。開幕ということもあって、審査委員長マヌエル・グティエレス・アラゴン以下の審査員4人も紹介されました。オープニングの司会者はジャーナリストのエレナ・サンチェスとマルタ・ハザスでした。

 

      

  

                      (受賞者とマルタ・ハザス)

 

   

           (受賞者とディアナ・ナバロ)

 

レトロスペクティブ賞―マラガ・オイの(311日、メイン会場セルバンテス劇場)

アルベルト・ロドリゲス監督、プレゼンターは長年脚本を共同で執筆しているラファエル・コボス、彼は2019年のリカルド・フランコ賞受賞者です。他『マーシュランド』主演のハビエル・グティエレス(2019年のマラガ―スール賞受賞者)、製作者で受賞者の妻マヌエラ・オコンなど、一緒にステージに立ちたいサポートが大勢集合しました。「この賞を与えてくれたフェスティバルに感謝いたします。映画は個人的なものではなく、集合的なものです。この賞をチームと友人たちと共有したい。それは彼らが私を今夜このステージに立たせてくれたからです」と締めくくり、どこまでも真面目で控えめなロドリゲスなのでした。

 

         

         

          (長年の盟友ラファエル・コボスからトロフィーを受け取った受賞者)

    

      

(受賞スピーチをするロドリゲス、後方は司会のノエミ・ルイス)

     

      

            (大勢のサポーターに囲まれて・・・)

 

マラガ―スール賞312日、メイン会場セルバンテス劇場)

ブランカ・ポルティーリョTシャツにジーパン、スニーカー姿で登壇した受賞者に皆さんびっくり。この豪華衣装には理由があったのです。「贅沢品や仮面を剝ぎ取られた人間」としてトロフィーを受け取りたかった。「考えに考えて決断した、愛を必要としている59歳の女性」ともスピーチしました。サポートしたのはグラシア・ケレヘタ監督、女優パウラ・オルティス、プレゼンターはアシエル・エチェアンディアでした。

 

     

           (これ以上ラフな恰好はないでしょう)

 

          

           (アシエル・エチェアンディアからトロフィーを受け取る受賞者)

   


     (大喜びのグラシア・ケレヘタと)

     

   

              (サポーターに囲まれて)

 

★授賞式に先立ってマラガ―スール賞受賞者には、海沿いの遊歩道アントニオ・バンデラス通りに手形入りの記念碑が立ててもらえる。マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ以下、本祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなどが立ち会って除幕式が行われた。

             

  

           (このときはこんな衣装でした。3月12日)

 

リカルド・フランコ賞315日、メイン会場セルバンテス劇場)

ユイ・ベリンゴラ この賞はスペイン映画アカデミーとのコラボレーションで授与され、舞台裏で活躍する映画スペシャリストに与えられる。ユイ・ベリンゴラはアルモドバルの作品を数多く手がけたスクリプトですが、彼女はリカルド・フランコ監督の親友でもあったから一入感慨深いものがあったようです。プレゼンターはスペイン映画アカデミーの会長フェルナンド・メンデス≂レイテでした。進行役はノエミ・ルイス、他ナチョ・ガルシア・ベリーリャ監督、前回の受賞者フィルム編集者のソル・カルニセロなどが登壇しました。ベリンゴラは「家族、友人、とりわけ留守がちな母親に苦しんだ息子にこの賞を捧げる」とスピーチした。

 

      

             (受賞スピーチをする受賞者

 

    

メンデス=レイテ会長からトロフィーを受け取る受賞者) 

 

     

★残るはマラガ才能賞のカルラ・シモンと「金の映画」賞となりました。


セクション・オフィシアル(コンペ部門)⑤*マラガ映画祭2023 ⑧2023年03月14日 15:43

17Una vida no tan simple(仮題「それほど容易でない人生」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地・期間2021年末にビルバオ

監督紹介フェリックス・ビスカレト1975年パンプローナ生れ、監督、脚本家、製作者。2007年「Bajo las estrellas」で長編デビュー、マラガ映画祭金のビスナガ作品賞受賞作品、ビスカレトも銀のビスナガ監督賞、第1作脚本賞を受賞、ゴヤ賞2008では脚色賞を受賞した。2022年「No mires a los ojos」は、バジャドリード映画祭PIC賞とシネマ・ライターズ・サークル賞にノミネートされている。2020年バスク語のTVシリーズ「Patria」(8話)のうち4話を手がけている。ドキュメンタリー『サウラ家の人々』(17)などでキャリアを紹介しています。

監督キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ2017111120200812

    

         

       

      (ビスカレト監督以下主演者たち、マラガ映画祭2023フォトコール)

    

       

 (デビュー作「Bajo las estrellas」ポスター)

 

キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(知人ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア 

ストーリー40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが放課後遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしています。どこにいても自分がいるべき場所にいないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ、幼い頃の子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しています。イサイアスはいつもへとへとの生活のなかで、別の子供の母親であるソニアと友情を深めますが、彼女は子供を育てて大人の生活に送り込むのは、それほど簡単でないことを彼に教えます。40代父親の危機が語られる。

     

   

  (イサイアスとソニア)

 

  

             (イサイアスとニコ)

  

 

    

18UnicornsUnicornios  仮題「ユニコーン」)

データ:製作国スペイン、2023年、ドラマ、93分、カタルーニャ語・スペイン語、字幕上映、長編映画デビュー作。脚本を監督と『スクールガールズ』のピラール・パロメロほかが共同執筆、同じく製作をバレリー・デルピエールが手がけている。配給フィルマックス、スペイン公開2023年6月30日予定

監督紹介アレックス・ロラ・セルコス1979年バルセロナ生れ、監督、脚本家、フィルム編集者、ニューヨークを拠点にしている。バルセロナのラモン・リュユ大学で映画製作、脚本、演出の学位を取得、2011年フルブライト奨学生として渡米、シティ・カレッジ・オブ・ニューヨークでメディアアート・プロダクションを修了、オスカー学生アカデミー賞の最終候補になった。数多くの映画祭に参加、特にニューヨーク・エミー賞を受賞、サンダンスFF公式出品2回、ガウディ賞の受賞歴がある。2014年バラエティのカンヌ・エディションで注目すべき有望な監督トップテンに選ばれ、ベルリナーレ・タレントキャンパス、カンヌ・ショート・フィルム・コーナーには3回参加している。受賞歴はトータルで76賞と驚異的な数字である。

 

主なフィルモグラフィーは、2011年ドキュメンタリー短編「OdysseusGambit」は、サンダンス映画祭ノミネート、2013年の同「Godka Cirka」もサンダンスFF、その他マラガFFに出品され、ガウディ賞2014短編賞を受賞している。2015年長編ドキュメンタリー「The Fathers Chair」、2019年同「El cuarto reino」(The Fourth Kingdomは、グアダラハラ映画祭2019イベロアメリカ部門受賞、ガウディ賞2020ドキュメンタリー賞受賞、フェロス賞にノミネートされた。

 

       

     

        (ドキュメンタリー「El cuarto reino」のポスター)

 

キャスト:グレタ・フェルナンデス(イサ)、ノラ・ナバス(メルセ)、アレハンドロ・パウ(ギレム)、エレナ・マルティン(アブリル)、パブロ・モリネロ(ミケル)、ソニア・ニニャロサ(マルタ)、リディア・カサノバ(ガビ)、ホルヘ・カブレラ、アグスティン・スリバン、ほか

ストーリー:イサはすべてをもっている。それは知性であり、美しさであり、自信です。フェミニストでコミットすることを拒否するポリアモリーのイサは、情熱をもって自分の人生を守っている。ギレムが一夫一妻のカップルになることを提案したとき、自分の人生を変えたいかどうか確信がもてず決定できない。ギレムは二人の関係を壊すことにした。外見と快適さの世界に住んでいると、矛盾がはっきりし、宇宙はネットワークがなったウェブでの好き嫌いやモラルの判断が打撃を受け崩壊してしまう。

 

     

                      (イサ役のグレタ・フェルナンデス)

   

     

                 (ノラ・ナバス)

   

       

 

19Upon EntryLa llegada 仮題「通関」)

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、74分、英語、字幕上映、共に長編デビュー作。タリン・ブラックナイツ映画祭FIPRESCI賞受賞(202211月)、コルカタ映画祭ゴールデンロイヤル・ベンガルタイガー賞受賞(2022年)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭(20233月)、公開スペイン616日予定

 

監督紹介アレハンドロ・ロハス1976年ベネズエラのカラカス生れ、監督、脚本家、フィルム編集。映像ジャーナリストとして、カンヌ、ベネチア、ベルリン、トロント、サンダンスなど各映画祭で取材している。HBONetflix、などの仕事をしている。本作で監督デビューした。

フアン・セバスティアン・バスケス1981年カラカス生れ、HBOのコピー製作者としてキャリアをスタートさせる。撮影監督としてカルレス・トラスの「Callback」を手がけ、本作はマラガFF2016の作品・脚本・男優賞(マルティン・バシガルポ)を受賞している。2020年には同監督の「El practicante」で再びタッグを組んだ。『パラメディック~闇の救急救命士』の邦題でネットフリックスが配信した。またシッチェスFF2020のニュービジョン部門の審査員を務めている。

*「Callback」の作品紹介は、コチラ20160503

   

       

     (アレハンドロ・ロハス)

 

       

                      (フアン・セバスティアン・バスケス)

 

キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル、ラウラ・ゴメス、ジェラルド・オムス(旅客)

ストーリー:ベネズエラの都市計画家であるディエゴとバルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナは、プロとしてのキャリア向上、チャンスの地で家族を作ることにする。新生活を始めるにあたって米国の正式なビザを取り移住することにした。ところがニューヨーク空港の入国審査場に入ると、二人は二次検査室に連れていかれた。待ち受けていた2人の国境警備員が検査プロセスと心理的に激しい尋問をかけ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないかと発見に務めます。

 


                     (ディエゴとエレナ)

  

     

   (二人を尋問する国境警備員)

    

    

 

20Zapatos rojosRed Shoes 仮題「赤い靴」)

データ:製作国メキシコ=イタリア、2022年、スペイン語、ドラマ、83分、長編デビュー作、第79回ベネチア映画祭2022公式出品、モロッコ・マラケシュFF2022)、インド・ゴアFF2022)、米国サンタバーバラFF2023)、ブルガリア・ソフィアFF2023)、その他モレリアFF、サンディエゴFF出品

監督紹介カルロス・アイチェルマン・カイザー1980年サンルイス・ポトシ生れ、監督、製作者、脚本家。マドリードで映画監督と製作を学んだ。2006年から2010年までTVシリーズのプロデュースをする。2011年製作会社「Wabi Productions」設立、2016年トリシャ・ジフ監督の長編ドキュメンタリー「The Man Who Saw Too Much」を製作、アリエル賞を受賞した。2018年マイケル・ロウの文学ワークショップで「赤い靴」の脚本を執筆した。同年「Feral」の製作に参画し、ロスカボス映画祭2018で受賞、2021EFICINEの援助をを受け、デビュー作を監督した。

    

      

キャスト:エウスタシオ・アスカシオ(アルテミオ)、ナタリア・ソリアン(ダミアナ)、ファニー・モリーナ(アレハンドラ)、ロサ・イリヌ・エレーラ(ルベン)

ストーリー:年配の農民アルテミオは、メキシコ山地の忘れられた村で暮らしている。首都から娘の訃報という衝撃的なニュースが届くまでは、彼の人生はゆっくりと順調に進んでいた。彼は贖罪を求めて町に出発する決心をしますが、残忍で未知の世界に踏み出したことに気づきます。

   

     

          

  

セクション・オフィシアル(コンペ部門)④*マラガ映画祭2023 ⑦2023年03月12日 17:58

13)Rebelión (仮題「反乱」)

データ:製作国コロンビア=アルゼンチン=アメリカ、スペイン語、2022年、伝記、105分、タイトルはジョー・アロヨのシンボリックな曲から採られた。長編映画3作目、ボゴタ映画祭202210月)、タリン・ブラック・ナイト映画祭202211月)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭20233月)、マラガ映画祭(3月)正式出品、公開ペルー202211

監督紹介ホセ・ルイス・ルヘレス・グラシア、監督、脚本家、製作者。TVシリーズ、映画、コマーシャルなど25年以上のキャリアのある制作会社「Rhayuela Films」設立、長編フィルモグラフィーは、2010年「García」、2015年「Alias María」は、カンヌ映画祭「ある視点」部門でプレミアされ、ハイファ映画祭2015国際部門のカルメル賞、フリボーグ映画祭2016エキュメニカルを受賞、アカデミー賞コロンビア代表作品に選ばれた。新作については「古典的なミュージカルを期待しないでください」と監督。

 

         

      

                               (第2作「Alias María」のポスター)

 

キャスト:ジョン・ナルバエス(ジョー・アロヨ)、マルティン・シーフェルド(ウモ)、アンジー・セペダ(メアリー)、フアン・ミゲル・パエス、グスタボ・ガルシア、エドガー・キハダ、アルマンド・キンタナ、ロジェ・デュグアイ

ストーリー:本作は、コロンビアの歴史上おそらく最も重要な傷つきやすい無名のサルサ歌手ジョー・アロヨが、人生のさまざまな瞬間と空間を超越した旅を切り取っている。音楽の天才、シンガーソングライターであるジョーの音楽とその独特な声は、ステージに収めることができなかった。1970年代のサルサ全盛期のリーダーであるアロヨの音楽への献身、孤独、狂気、さまざまに交錯した感情、混沌が描かれる。

    

   

     

 

     

14Saudade fez morada aqui dentro (英題「Bittersweet Rain」)

データ:製作国ブラジル、2022年、ポルトガル語、字幕上映、ドラマ、107分、長編映画2作目(単独では1作目)、第37回マル・デル・プラタ映画祭2022で作品・監督賞を含む4冠を制した。

監督紹介ハロルド・ボルヘス、監督、脚本家、撮影監督、フィルム編集者。制作会社 Plano3 Filmsのメンバー。ドキュメンタリー「Jonas e o circo sem lona」(15Jonas and the Backyard Circus」)は、IDFAでプレミアされ、トゥールーズ映画祭2019観客賞を含む13冠、長編デビュー作「Filho de Boi」(「Son of Ox」)はエルネスト・モリネロと共同で監督した。釜山、グアダラハラ映画祭に出品され、マラガ映画祭2019ソナシネ部門の銀のビスナガ観客賞を受賞している。

   

       

   (トロフィーを手にしたハロルド・ボルヘス、マル・デル・プラタFF2022にて)

    

     

 (デビュー作「Filho de Boi」のポスター

 

キャスト:ブルーノ・ジェファーソン、アンジェラ・マリア、ロナルディ・ゴメス、テレーナ・フランサ、ウィルマ・マセド、ヘラルド・デ・デウス、ビニシウス・ブスタニ

ストーリー:ブラジル内陸部の小さな町に住んでいる若者は、変性眼疾患のため徐々に視力を失う危険に直面している。視力が衰えるにつれ、片思いだった初恋に混乱し、別の目で人生を見る方法を学ばねばならなくなる。父親のいない15歳の若者の棘のある思春期が描かれる。

 


    
                   (ブルーノ・ジェファーソン、フレームから)

 

                

 

15Sica (仮題「シカ」)

データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、ドラマ、90分、ベルリン映画祭2023ジェネレーション14 plus でプレミアされた。

   

     

  (左から、ヌリア・プリムス、スビラナ監督、ほか主演者たち、ベルリンFF 2023

 

監督紹介カルラ・スビラナ1972年バルセロナ生れ、監督、脚本家、10年の教師歴。スペイン内戦で反フランコ派の祖父が、1940年死刑に処され、女性3世代の家族の中で育つ。映画ファンの祖母の影響で映像の世界に入る。ドキュメンタリーとフィクションのあいだを行き来した最初のドキュメンタリー「Nadar08、カタルーニャ語)は史実と個人的な記憶についての自伝的要素をもっている。ロッテルダム映画祭で上映され、ガウディ賞2009にノミネートされた。3人の共同監督ドキュメンタリー「Kanimambo」(スペイン語・カタルーニャ語・ポルトガル語)はマラガ映画祭2012で審査員のスペシャル・メンションを受賞している。同「Volar」(12、スペイン語)はセビーリャ・ヨーロッパ映画祭に出品された。短編映画「Atma169分)は、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭、D'A映画祭に出品され、Fiver 17でナショナル・ダンス賞を受賞した。創造性ワークショップで後進を指導している。

    

       

       

              (ドキュメンタリー「Nadar」のカタルーニャ語版ポスター

 

キャスト:タイス・ガルシア・ブランコ(シカ)、ヌリア・プリムス(母親カルメン)、マリア・ビジャベルデ・アメイヘイラス(レダ)、カルラ・ドミンゲス、ルーカス・ピニェイロ(シモン)、マルコ・アントニオ・フロリド・アニョン(スソ)、ロイス・ソアシェSoaxe(エル・ポルトゲス)、マリア・デル・カルメン・ヘステイロ(教師)、ほか多数

  

ストーリー14歳になるシカは、ガリシアのコスタ・ダ・モルテで難破した父親の遺体を海が戻してくれることに取りつかれている。崖に沿って歩いているとき、シカはストームハンターだという15歳の風変わりな少年スソと知り合います。彼女は事故の状況を調査し、苦痛を伴う発見の旅に乗り出します。彼女の目にうつるのは、自分が育った漁村が海の残酷さとアンバランスな自然の増大によって特徴づけられている所であること、それが決して以前のように戻らないということでした。ガリシアの海の沈黙、失ったものへの強迫観念、父親の不在による無力感と悲しみ、夫や父親の死に対する諸々が女性キャラクターの視点で語られる。事実にインスパイアされている。

 

      

      (シカとカルメン)

 

      

              (シカとスソ、フレームから)

   

        

 

16)Tregua(s) (仮題「休戦」)

データ:製作国スペイン、2023年、スペイン語、コメディ・ドラマ、90分、撮影地マドリード、長編デビュー作

監督紹介マリオ・エルナンデス1988年カスティーリャ・ラ・マンチャのアルバセテ生れ、監督、脚本家、戯曲家、舞台演出家。アリカンテのシウダード・デ・ラ・ルス・スタジオで監督の学位を取得する。2015年短編「A los ojos」で監督デビュー、アルバセテのABYCINEの短編映画賞、マドリード市のヤング・クリエーターズ賞を受賞、2016年「Por Sifo / Slow Wine」はバジャドリード映画祭で短編賞を受賞、2017年、難民危機に関連する詩人ミゲル・エルナンデスのオマージュ「Vientos del pueblo Sirio」(20分)をギリシャのレスボス島で撮影、2020年フリオ・コルタサルの作品にインスパイアされた「Salvo el crepúsculo」は、バジャドリード映画祭のSEMINCI Factoryの脚本賞を受賞した。舞台演出家兼戯曲家としても活躍、カラモンテ賞を受賞するなどしている。現在、RNEのラジオ・プログラムの作成者およびコーディネーターです。

 

   

   

(左から、ブルーナ・クシ、監督、サルバ・レイナ、マラガFF2023のフォトコール)

 

キャスト:サルバ・レイナ(エドゥ)、ブルーナ・クシ(アラ)、アブリル・モンテージャ(シルビア)、ホセ・フェルナンデス(ダビ)、マルタ・メンデス(アリシア)

ストーリー:アラとエドゥは、新人の女優、脚本家だった10年間、恋人同士でした。二人の〈公式な〉関係とは別に、一緒にいるときは常にオアシスを見つけています。現在、二人ともそれぞれ別のパートナーと暮らし、かなり深刻な関係になっています。お互いに会わずにいた1年後、映画祭を利用して再会しますが、この切望した〈休戦〉でさえ、彼らの実生活を支配する嘘と郷愁から解放されることはありません。