第12回フェロス賞2025授賞式*結果発表 ― 2025年02月02日 14:06
映画ドラマ部門は「Salve María」、コメディ部門は「Casa en flames」

★1月25日、第12回フェロス賞2025の授賞式がポンテベドラの文化会館 Pazo da Culturaで開催され、全カテゴリー21の結果発表がありました。選考母体はスペイン映画ジャーナリスト協会AICAです。映画部門11、TVシリーズ部門7、フェロス感動賞2、今年の受賞者がハイメ・チャバリだったフェロス栄誉賞の合計21カテゴリーです。総合司会者は、昨年アレハンドロ・マリンの「Te estoy amando locamente」出演で助演男優賞を受賞したラ・ダニが務めました。登壇して降壇するまで涙の止まらない受賞スピーチをしたのでした。

(左から3人め、AICA会長マリア・ゲーラ)


(総合司会者ラ・ダニ)
★ゴヤ賞の前哨戦という位置づけが少し怪しくなってきた印象です。マル・コルの作品賞受賞作「Salve María」など、ゴヤ賞では脚色賞と新人女優賞(ラウラ・ヴァイスマール)の2個、カテゴリーの数を勘案すると少なすぎ、イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスの「Segundo premio」においてはゼロ、ゴヤ賞は3番目に多い11個です。重なるのはダニ・デ・ラ・オルデンのコメディ「Casa en llamas」(原題「Casa en flames」)、監督賞はペドロ・アルモドバルの手に渡りましたが、受賞は5回(予告編・脚本・監督)、フェロス栄誉賞2023につづいて2回めの監督賞を受賞しました。

★マル・コル(バルセロナ1981)は、バルセロナのカタルーニャ映画視聴覚上級学校で映画を学ぶ。イサベル・コイシェにつづく世代を代表する監督。デビュー作「Tres dias con la familia」がマラガ映画祭2009でプレミアされ、翌年のガウディ賞を総なめにして、ゴヤ賞では新人監督賞を受賞している。第23回東京国際女性映画祭2010のオープニング作品に選ばれ、『家族との3日間』の邦題で上映された。新作「Salve María」は、母性をテーマにしたサイコスリラー仕立て、カティシャ・アギーレの小説 ”Las madres no” の映画化です。ロカルノ映画祭でプレミアされ、国際映画部門のスペシャルメンション他を受賞、ガウディ賞2025の脚色賞を受賞している。
★TVシリーズ部門作品賞の「Querer」(4話)は、ホセ・マリア・フォルケ賞2024でも作品・主演男優(ペドロ・カサブランク)・主演女優(ナゴレ・アランブル)を受賞していて、予想通りの受賞でした。サンセバスチャン映画祭2024のアウト・オブ・コンペティション作品として特別上映されている。

*第12回フェロス賞2025結果発表*(*印は紹介作品)
★映画部門
◎作品賞(ドラマ)
「Salve María」監督マル・コル、脚本マル・コル、バレンティナ・ビソ、
原作カティシャ・アギーレ、製作マリア・サモラ、Sergi Casamitjana
ノミネート:
「La estrellas azul」(ハビエル・マシぺ) *
「La habitación de al lado」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(ペドロ・アルモドバル) *
「La virgen roja」『レッド・バージン』(パウラ・オルティス)
「Los destellos」(ピラール・パロメロ) *

(右から2人め、マル・コル監督)

(受賞スピーチをする製作者マリア・サモラ)

(興奮がおさまらないキャスト&スタッフ)
◎作品賞(コメディ)
「Casa en llamas」監督ダニ・デ・ラ・オルデン、
製作アルベルト・アランダ、キケ・マイジョ他 *
ノミネート作品:
「Bodegón con fantasmas」(監督エンリケ・ブレオ)
「Buscando a Coque」(同テレサ・ベリョン&セサル・F・カルビーリョ)
「Escape」(同ロドリゴ・コルテス) *
「Volveréis」(同ホナス・トゥルエバ) *

(スピーチするダニ・デ・ラ・オルデン)

◎監督賞
ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』) *
ノミネート:アランチャ・エチェバリア、ダニ・デ・ラ・オルデン、パウラ・オルティス、
ピラール・パロメロ



◎主演女優賞
エンマ・ビララサウ(「Casa en llamas」)
ノミネート:パトリシア・ロペス・アルナイス、ナイワ・ニムリ、ラウラ・ヴァイスマール、
カロリナ・ジュステ


◎主演男優賞
エドゥアルド・フェルナンデス(「Marco」監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ) *
ノミネート:ペペ・ロレンテ、ウルコ・オラサバル、アントニオ・デ・ラ・トーレ、
ダビ・ベルダゲル


◎助演女優賞
クララ・セグラ(「El 47」監督マルセル・バレナ) *
ノミネート:アンナ・カステーリョ、マリナ・ゲロラ、マリア・ロドリゲス・ソト、
アイシャ・ビリャグラン

(受賞者欠席で、バレナ監督がスピーチを代読した)
◎助演男優賞
オスカル・デ・ラ・フエンテ(「La casa」監督アレックス・モントーヤ) *
ノミネート:エンリク・アウケル、フリアン・ロペス、ホセ・サクリスタン、
アルベルト・サン・フアン


◎脚本賞 DAMA
エドゥアルド・ソラ(「Casa en llamas」)
ノミネート:
マルセル・バレナ&ベト・マリニ(「El 47」)
ハビエル・マシぺ(La estrellas azul)
ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)
エドゥアルド・ソラ&クララ・ロケ(『レッド・バージン』)


(TVシリーズ部門でも受賞して2個ゲットした)
◎オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)
ノミネート:
アルナウ・バタリェル(「El 47」)
フェルナンド・ベラスケス(「La casa」)
マリア・アルナル(「Polvo serán」監督カルロス・マルケス=マルセ)
セルティア・モンテス(「Salve María」)

◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トゥルド(「Polvo serán」カルロス・マルケス=マルセ)
ノミネート:
アルベルト・レアル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)、
ハビエル・モラレス(「La infiltrada」アランチャ・エチェバリア) *
オマール・ベルムデス&カルロス・ベロト(「Marco」)
マルタ・ロンガス&ヘスス・フェルナンデス・ガルシア(『レッド・バージン』)

◎ポスター賞
オクタビオ・テロル、リュイス・トゥデラ(「Salve María」)
ノミネート:「Casa en llamas」、「La estrellas azul」、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』、「「Polvo serán」


(ラウラ・ヴァイスマールの乳首露出がSNSで問題になったポスター)
★TVシリーズ部門
◎作品賞(ドラマ)
「Querer」4話(製作:フアン・モレノ、コルド・スアスア、スサナ・エレラス、フラン・アラウホ、監督アラウダ・ルイス・デ・アスア、脚本:アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス、エドゥアルド・ソラ、キャスト:ナゴレ・アランブル、ペドロ・カサブランク、ロレト・マウレオン、ミゲル・ベルナルドー、イバン・ペリセル、他) *

(アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)


◎作品賞(コメディ)
「Celeste」6話(製作:ディエゴ・サン・ホセ、フラン・アラウホ、ラウラ・フェルナンデス・エスペソ他、監督エレナ・トラぺ、脚本:ディエゴ・サン・ホセ、ダニエル・カストロ、オリオル・プイグ・プラヤ、キャスト:カルメン・マチ、アンドレア・バヤルド、アントニオ・ドゥラン、クララ・サンス、マノロ・ソロ、他多数)




◎主演女優賞
ナゴレ・アランブル(「Querer」)
ノミネート:モニカ・ロペス、カルメン・マチ、カンデラ・ペーニャ、イリア・デル・リオ


◎主演男優賞
オリオル・プラ(「Yo, adicto」)
ノミネート:フランセスコ・カリル、ペドロ・カサブランク、トリスタン・ウジョア、
アルベルト・サン・フアン

(受賞者はマドリードでの舞台出演で欠席、共演者ハビエル・ヒネルが代理で受け取った)


◎助演女優賞
ノラ・ナバス(「Yo, adicto」)
ノミネート:タマラ・カセリャス、マリア・レオン、ロレト・マウレオン、クララ。サンス


◎助演男優賞
ポル・ロペス(「Nos vemos en otra vida」)
ノミネート:ミゲル・ベルナルドー、ハビエル・グティエレス、イバン・ペリセル、マノロ・ソロ


◎脚本賞 DAMA
アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス、エドゥアルド・ソラ(「Querer」)

(エドゥアルド・ソラ、アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス)
◎フェロス感動賞(フィクション)
「Polvo serán」(監督カルロス・マルケス=マルセ)
製作国スペイン=スイス=イタリア合作、スペイン語、英語、ミュージカル・ドラマ、106分、ガウディ賞2025作品賞を含む4冠、アンヘラ・モリーナ、アルフレッド・カストロ主演。

(カルロス・マルケス=マルセ監督)

◎フェロス感動賞(ノンフィクション)
「The Human Hibernation」(監督アンナ・コルヌデリャ・カストロ)
製作国スペイン、英語、SF、90分。第74回ベルリン映画祭2024「フォーラム」部門、FIPRESCI賞受賞、マル・デル・プラタFF、トゥールーズ・シネエスパーニャ、他ノミネート多数。スペイン公開2025年1月10日

(左から2人め、アンナ・コルヌデリャ)


◎フェロス栄誉賞
ハイメ・チャバリ、1943年マドリード生れ、監督、脚本家、演出家、また俳優でもあった。プレゼンターは、「Besos para todos」に出演したエンマ・スアレスでした。

(左端がプレゼンターのエンマ・スアレス)


*キャリア&フィルモグラフィー
★マドリードの公立映画学校で学ぶ。1970年「Ginebra en los infiernos」で長編映画デビューする。1976年、「Los viajes escolares」(仮題「修学旅行」)、個人的な複雑な問題を抱えた家族をテーマにしている。製作者エリアス・ケレヘタとのコラボレーションで注目されるようになる。最高のドキュメンタリーと称される「El desencanto」(76、仮題「失望」)を撮っている。有名な詩人レオポルド・パネロ一家のフランコ独裁時代における家族制度を分析している。シネマ・ライターズ・サークル賞1977作品賞、フォトグラマス・デ・プラタのスペイン映画出演者賞を受賞した。40年間という長きにわたって窒息させられてきたドキュメンタリーというジャンルに生命力を吹き込んでいる。
★1977年「A un Dios desconocido」(仮題「見知らぬ神に」)でエクトル・アルテリオとハビエル・エロリアガを起用して同性愛をテーマに取り入れている。サンセバスチャン映画祭サンセバスティアン賞(アルテリオ)、スペイン語映画賞などを受賞した。1980年、ケレヘタと脚本を共同執筆した「Dedicatoria」(「献身」)は、カンヌ映画祭コンペティション部門にノミネートされた。
★80年代には「Bearn o la sala de las munecas」(83,同「ベアルン、または人形の間」)では、フェルナンド・レイ、アンヘラ・モリーナ、アンパロ・ソレル・レアル、イマノル・アリアスなどが共演している。つづく「Las bicicletas son para el verano」(84、『自転車は夏のために』)は、スペイン映画史をひもとけば必ず紹介される秀作、スペイン内戦を背景にした或る家族の感受性豊かな物語が語られ商業的にも成功した作品で、2作とも製作者はアルフレッド・マタス。アンヘラ・モリーナ起用は5作品、その一つが1986年の「El río de oro」、ミュージカル「Las cosas del querer」(89、『歌と踊りと恋のいざこざ』)、その続編(95)などです。
★2000年、コメディ「Besos para todos」にエンマ・スアレスやピラール・ロペス・デ・アヤラ、エロイ・アソリンを起用して、ゴヤ賞監督賞にノミネートされた他、トゥリア賞を受賞した。2005年「Camarón」は、フラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラ(1992年没)のビオピック、カマロンを演じたオスカル・ハエナダにゴヤ賞主演男優賞をもたらし、他にも衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアー賞を受賞した。
★もう監督は引退したのかと思っていたコロナ禍の2022年、約17年振りにマルタ・ニエト、セルジ・ロペスなどのベテラン演技派、若手アドリアン・ラストラを起用したコメディ「La manzana de oro」を撮った。ほかビッキー・ペーニャ、ロベルト・エンリケス、ガルシア・ミラン、アルバロ・スビエスなど豪華キャストを揃えての群像劇、本人も神父役で出演している。フェルナンド・アランブルの小説の映画化、撮影監督キコ・デ・ラ・リカ(『ブランカニエベス』『ルシアとSEX』)、フィルム編集はアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』を手掛けているテレサ・フォントと文句なしの布陣でした。次回作もあるかもしれない。
作品賞に「El47」と「La infiltrada」のサプライズ*ゴヤ賞2025の結果発表 ⑨ ― 2025年02月12日 18:23
作品賞は「El 47」と「La infiltrada」の2作受賞というサプライズに騒然!


(前座から盛り上がった会場)
★1月8日(現地時間)、予定通り第39回ゴヤ賞2025の授賞式がグラナダ会議展示センターで開催されました。作品賞はマルセル・バレナの「El 47」とアランチャ・エチェバリアの「La infiltrada」が受賞するというゴヤ賞始まって以来の2作品受賞となりました。投票数が同じで引き分けだったということでした。ということでフィナーレは2チームのキャスト&スタッフにプレゼンターの『海を飛ぶ夢』チーム5名が登壇していたので、写真のように舞台は大賑わいになりました。「El 47」の製作者ラウラ・フェルナンデス・エスペソは「私たちの最初のプロジェクトを応援してくれて有難う」と、一方「La infiltrada」のメルセデス・ガメロは、「"El 47" の仲間たちと分け合えるなんて何て素敵なの。私たちの映画を観てくれた100万人以上の観客にこの賞を捧げたい」と挨拶、マリア・ルイス・グティエレスは、「映画館に足を運んでくれた大勢の若い観客」に感謝しました。

(5名のプレゼンター、受賞した2チームが入り混じって壇上は混雑模様)
★総合司会を務めたベテラン女優の魅力もあってか、視聴率24.4%(前年19%)と最近では稀にみる好記録でした。作品賞が発表されたゴールデンタイムは24.9%、約280万人が観たことになりました。早くからグラナダ入りして宣伝に努めた苦労が報われました。

(総合司会を務めたマリベル・ベルドゥとレオノール・ワトリング)
★監督賞はイサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスの「Segundo premio」でした。監督欠席でしたがペドロ・アルモドバルの「La habitación de al lado」は、脚色・オリジナル作曲・撮影賞、ダニ・デ・ラ・オルデンの「Casa en flames」はオリジナル脚本賞、新人監督賞には「La estrella azul」のハビエル・マシぺ、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」は主演男優賞とメイクアップ&ヘアー賞、パウラ・オルティスの「La virgen roja」は美術・衣装デザイン賞、と各作品とも満遍なく受賞して一人勝ちは避けられました。

(スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ)
★ミュージカル「Segundo premio」のイサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスの監督賞受賞は若干サプライズだったのではないでしょうか。金のビスナガ受賞作品ですが、マラガ映画祭は3月開催と大分月日が経っていたので不利でした。個人的には「La infiltrada」のアランチャ・エチェバリアか、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』のアルモドバルを予想していましたが外れました。共同監督のイサキ・ラクエスタは欠席で登壇したのはポル・ロドリゲス一人、彼はラクエスタや出演したミュージシャンたちに感謝を述べた。ラクエスタはメッセージで欠席を詫びた後「イサ、愛しています、ルナ、ありがとう」と、製作者の一人である妻イサ・カンポと、撮影中に白血病で天に召された幼い愛娘ルナに感謝を捧げました。

(左から、ペドロ・サンチェス首相、アンダルシア評議会会長フアンマ・モレノ、
行政府副長官ヨランダ・ディアス)
★ゴヤ栄誉賞アイタナ・サンチェス=ヒホン(プレゼンターはマリベル・ベルドゥ)、国際ゴヤ賞リチャード・ギア(プレゼンターはアントニオ・バンデラス)、昨年12月17日に突然旅立ったマリシータことマリサ・パレデス追悼、ゴヤ賞14カテゴリー制覇というゴヤ賞最多受賞を記録したアメナバルの『海を飛ぶ夢』公開20周年記念については別途アップします。監督以下主演のハビエル・バルデム、ロラ・ドゥエニャス、ベレン・ルエダ、タマル・ノバスが登壇しました。
*第39回ゴヤ賞2025の受賞者一覧(太字受賞者)*
◎作品賞
「Casa en flames」監督ダニ・デ・ラ・オルデン *
製作:アルベルト・アランダ、アナ・エイラス、アリエンス・ダムシ、ダニ・デ・ラ・オルデン、ハイメ・オルティス・デ・アルティニャノ、キケ・マイジョ、ト二・カリソナ、他
「La estrella azul」監督ハビエル・マシぺ *
製作:アメリア・エルナンデス、エルナン・ムサルッピ、シモン・デ・サンティアゴ
「Segundo premio」監督イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲス *
製作:クリストバル・ガルシア
◎「El 47」監督マルセル・バレナ *
製作:ハビエル・メンデス、ラウラ・フェルナンデス・エスペソ
*作品賞の他、助演男優・助演女優・プロダクション・特殊効果賞の5冠。プレゼンターは、公開20周年記念の『海を飛ぶ夢』の監督アメナバル以下主演キャストたち。


(マルセル・バレナ、ラウラ・フェルナンデス・エスペソ)

(受賞者たち)
◎「La infiltrada」監督アランチャ・エチェバリア *
製作:アルバロ・アリサ、マリア・ルイス・グティエレス、メルセデス・ガメロ、
パブロ・ノゲロレス

(アランチャ・エチェバリア)

(サプライズに喜び全開のエチェバリア監督)


(興奮がおさまらない製作者、長いスピーチに会場もお疲れ気味でした)
◎監督賞
ペドロ・アルモドバル「La habitación de al lado」(邦題『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)*
アランチャ・エチェバリア「La infiltrada」
パウラ・オルティス「La virgen roja」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ「Marco」 *
◎イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲス「Segundo premio」

(プレゼンターのアレハンドロ・アメナバル、受賞者ポル・ロドリゲス)

◎新人監督賞
ミゲル・ファウス「Calladita」
ペドロ・マルティン=カレロ「El llanto」(邦題『叫び』) *
サンドラ・ロメロ「Por donde pasa el silencio」
パス・ベガ「Rita」
◎ハビエル・マシぺ「La estrella azul」
*プレゼンターは、昨年『雪山の絆』で監督賞を受賞したホセ・アントニオ・バヨナ、同じく『ミツバチと私』で新人監督賞を受賞したエスティバリス・ウレソラ監督でした。

◎オリジナル脚本賞
アルベルト・マリニ&マルセル・バレナ「El 47」
ハビエル・マシぺ「La estrella azul」
アメリア・モラ&アランチャ・エチェバリア「La infiltrada」
アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホルヘ・ヒル・ムナリス、ホセ・マリ・ゴエナガ「Marco」
◎エドゥアルド・ソラ「Casa en flames」監督ダニ・デ・ラ・オルデン
*ガウディ賞、フェロス賞、ゴヤ賞とすべてを手にした。名前を呼ばれた途端にもう涙で顔がくしゃくしゃでした。


(涙が抑えられない受賞者)
◎脚色賞
アレックス・モントーヤ、ジョアナ M. オルトゥエタ「La casa」*
ピラール・パロメロ「Los destellos」監督ピラール・パロメロ *
マル・コル、バレンティナ・ビソ「Salve María」監督マル・コル
イシアル・ボリャイン、イサ・カンポ「Soy Nevenka」監督イシアル・ボリャイン *
◎ペドロ・アルモドバル「La habitación de al lado」(The Room Next Door)
*受賞者欠席で製作者のアグスティン・アルモドバルが「音楽と映画を守っていくのは奇跡です」というメッセージを代読した。6個目のゴヤ胸像は、今は亡きマリサ・パレデスに捧げられた。プレゼンターは昨年の総合司会者ロス・ハビスのコンビ、「受賞者は私たちのマエストロ、ペドロ・アルモドバル!」と。

(亡き「マリサ・パレデスに捧げたい」とアグスティン)

(どのポケットに入れたんだっけと老眼鏡を探すアグスティン)
◎オリジナル作曲賞
アルナウ・バタリェル「El 47」
アルトゥロ・カルデルス「Guardiana de Dragones-Dragonkeeper」アニメーション
監督Li Jianping(李建平)&サルバドール・シモ
フェルナンド・ベラスケス「La infiltrada」
セルヒオ・デ・ラプエンテ「Verano en diciembre」
◎アルベルト・イグレシアス「La habitación de al lado」監督ペドロ・アルモドバル
*ゴヤ胸像のコレクター、これで何個目になるのでしょうか? 数えたら最多受賞の12個でした。トロフィーをマリサ・パレデスに捧げました。最初のアルモドバル作品がパレデス主演の『私の秘密の花』だったからでした。プレゼンターはグラナダのフラメンコ歌手エストレージャ&ソレア・モレンテ姉妹、今回アルハンブラ宮殿でのライブ配信もありました。


(プレゼンターのエストレージャ&ソレア・モレンテ姉妹)
◎オリジナル歌曲賞
Show me - 作曲家:フェルナンド・ベラスケス「Buffalo Kids」アニメーション
監督フアン・ヘスス・ガルシア・ガローチャ”ガロ”、ペドロ・ソリス
El borde del mundo - 作曲家:バレリア・カストロ「El 47」
La Virgen Roja - 作曲家:マリア・アルナル「La virgen roja」
Love is the worst - 作曲家:アロンドラ・ベントレー、イサキ・ラクエスタ「Segundo premio」
◎Los Almendros - 作曲家:アントン・アルバレス、イェライ・コルテス
「La guitarra flamenca de Yerai Cortés」ドキュメンタリー、監督アントン・アルバレス


(イェライ・コルテス、歌手ラ・タニア、アントン・アルバレス監督)
◎主演男優賞
アルベルト・サン・フアン「Casa en flames」(欠席)
アルフレッド・カストロ「Polvo serán」監督カルロス・マルケス=マルセ
ウルコ・オラサバル「Soy Nevenka」
ビト・サンス「Volveréis」監督ホナス・トゥルエバ *
◎エドゥアルド・フェルナンデス「Marco」監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ
*実在した詐欺師エンリク・マルコを演じた受賞者は、「今まで演じたことのない複雑な人物」とコメント、トランプ政権の不法移民のキューバ・グアンタナモ刑務所収容、ガザ問題、やはり政治的発言は止められない。プレゼンターはジョセップ・マリア・ポウとグレタ・フェルナンデス、4個目となるゴヤ胸像を愛娘から手渡された(主演・助演2個ずつ)。

(プレゼンターは娘グレタ・フェルナンデス)

◎主演女優賞
エンマ・ビララサウVilarasau「Casa en flames」
ジュリアン・ムーア「La habitación de al lado」(欠席)
ティルダ・スウィントン「La habitación de al lado」(欠席)
パトリシア・ロペス・アルナイス「Los destellos」
◎カロリナ・ジュステ「La infiltrada」監督アランチャ・エチェバリア
*プレゼンターはアネ・ガバラインと昨年の受賞者マレナ・アルテリオ、ハリウッドの大女優は共に欠席、大きなスキー靴のようなスニーカーを履いた受賞者は、エチェバリア監督や共演者のルイス・トサールに感謝の言葉を述べ「複雑で難しい役柄だった」と語った。主演女優賞は初めて。

(スピーチを見守る先輩ガバラインとアルテリオ、受賞者)

(毎回、ファッションはイマイチの受賞者)
◎助演男優賞
エンリク・アウケル「Casa en flames」
オスカル・デ・ラ・フエンテ「La casa」
ルイス・トサール「La infiltrada」
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Los destellos」
◎サルバ・レイナ「El 47」監督マルセル・バレナ
*毎回最初の受賞者は助演男優賞に決まっていますが、予期しない受賞だったのか座席で小躍り、かたわらの奥さんキラ・ミローと熱烈キス、登壇してからも興奮はおさまらずトロフィーを振り回すので落とさないかとハラハラでした。

(「不法な市民は存在しない」とスピーチしたサルバ・レイナ)

(人目もはばからず熱烈キス)
◎助演女優賞
マカレナ・ガルシア「Casa en flames」
マリア・ロドリゲス・ソト「Casa en flames」
ナウシカア・ボニン「La infiltrada」
アイシャ・ビリャグラン「La virgen roja」
◎クララ・セグラ「El 47」監督マルセル・バレナ
*ガウディ賞、フェロス賞には欠席だった受賞者も今回は姿を見せた。プレゼンターが過去の受賞経験者5名、左からエレナ・アナヤ、マリア・レオン、エバ・リョラチ、ナタリア・デ・モリーナ、スシ・サンチェスという豪華版でした。


(クララ・セグラ、プレゼンターのエレナ・アナヤ)

◎新人男優賞
オスカル・ラサルテ「¿Es el enemigo? La pelicula de Gila」監督アレクシス・モランテ
クティ・カラバハル「La estrella azul」
クリスタリノ「Segundo premio」
ダニエル・イバニェス「Segundo premio」
◎ペペ・ロレンテ「La estrella azul」監督ハビエル・マシぺ


◎新人女優賞
ソエ・ボナフォンテ「El 47」
マリエラ・カラバハル「La estrella azul」
マリナ・ゲロラ「Los destellos」
ルシア・ベイガ「Soy Nevenka」
◎ラウラ・ヴァイスマール「Salve María」監督マル・コル
*ガウディ賞に続いての受賞、「熟考を駆り立てる勇敢さ」を語った映画に起用してくれたマル・コル監督に感謝を捧げた。


◎プロダクション賞
ライア・ゴメス「Casa en flames」
アシエル・ペレス・セラノ「La infiltrada」
カティ・マルティ・ドノグエDonoghue「La virgen roja」
カリオス・アモエド「Segundo premio」
◎カルロス・アポリナリオ「El 47」監督マルセル・バレナ


◎撮影監督賞
アイザック・ビラ「El 47」
ハビエル・サルモネス「La infiltrada」
タクロ・タケウチ「Segundo premio」
グリス・ホルダナ「Soy Nevenka」
◎エドゥ・グラウ「La habitación de al lado」監督ペドロ・アルモドバル
*「ペドロ・ペドロ・・・」と監督の名前を連呼して感謝。


(アルモドバル監督に感謝の受賞者)
◎編集賞
ナチョ・ルイス・カピリャス「El 47」
ハビエル・マシぺ、ナチョ・ブラスコ「Los destellos」
ビクトリア・ラマーズ「La infiltrada」
フェルナンド・フランコ「Los pequeños amores」監督セリア・リコ・クラベリーノ *
◎ハビ・フルトス「Segundo premio」監督イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲス


◎美術賞
マルタ・バサコ「El 47」
インバル・ワインバーグ「La habitación de al lado」
ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ「Segundo premio」
ミゲル・アンヘル・レボーリョ「Volveréis」
◎ハビエル・アルバリニョ「La virgen roja」監督パウラ・オルティス


◎衣装デザイン賞
エステル・パラウダリエス、ビンジェト・エスコバルVinyet「Disco, Ibiza, Locomía」監督キケ・マイジョ
イランツェ・オルテス、オルガ・ロダル「El 47」
ビナ・ダイヘレル「La habitación de al lado」
ルルデス・フエンテス「Segundo premio」
◎アランチャ・エスケロ「La virgen roja」監督パウラ・オルティス


◎メイクアップ&ヘアー賞
カロル・トルナリア「El 47」
モラグ・ロス、マノロ・ガルシア「La habitación de al lado」
パトリシア・ロドリゲス、トノ・ガルソン「La infiltrada」
エリ・アダネス、パコ・ロドリゲス・フリアス「La virgen roja」
◎カルメレ・ソレル、セルヒオ・ペレス・ベルベル、ナチョ・ディアス「Marco」
監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ


◎録音賞
アマンダ・ビリャビエハ、ホアキン・ラハデル、他「La estrella azul」
セルヒオ・ビュルマン、アンナ・ハリントン、マルク・オルツ「La habitación de al lado」
ファブロ・ウエテ、ホルヘ・カスティーリョ・バリェステロス、他「La infiltrada」
コケ・F.ラエラ、アレックス・F.カピリャ、他「La virgen roja」
◎ディアナ・サグリスタ、エバ・ベリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ、アントニン・ダルマッソ 「Segundo premio」監督イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲス
*ガウディ賞に続く受賞。


◎特殊効果賞
Li Xinリー・シン「Guardiana de Dragones-Dragonkeeper」
マリアノ・ガルシア・マーティ、ジョン・セラノ、他「La infiltrada」
ラウル・ロマニリョス、フアンマ・ノガレス「La virgen roja」
ジョン・セラノ、マリアノ・ガルシア・マーティ、他「Marco」
◎ラウラ・カナルス、イバン・ロペス・エルナンデス「El 47」監督マルセル・バレナ


◎アニメーション賞
「Buffalo Kids」
「Guardiana de Dragones-Dragonkeeper」
「Rock Bottom」監督マリア・トレノル
「SuperKlaus」監督アンドレア・セバスティア、スティーブ・マジョーリー
◎「Mariposas Negras」監督・製作ダビ・バウテ
製作者セサル・セラダ、エドモン・ロチ、マルク・サベ
*フォルケ賞、ガウディ賞に続いての受賞。


◎ドキュメンタリー賞
「Domingo Domingo」監督ラウラ・ガルシア・アンドレウ
「Marisol, llámame Pepa」監督ブランカ・トレス
「Mi hermano Ali」監督パウラ・パラシオス
「No estás sola」監督アルムデナ・カラセド、ロベルト・バハル
◎「La guitarra flamenca de Yerai Cortés」監督アントン・アルバレス(芸名 C.タンガナ)
*クリスティナ・テレナス、サントス・バカナ

(アントン・アルバレス監督)

◎イベロアメリカ映画賞
「Agarrarme fuerte」ウルグアイ、監督アナ・ゲバラ・ポセ、レティシア・ホルヘ・ロメロ
「El jockey」『ジョッキー』アルゼンチン、監督ルイス・オルテガ *
「El lugar de la otra」『イン・ハー・プレイス』チリ、マイテ・アルベルディ *
「Memorias de un cuerpo que arde」コスタリカ=スペイン、
監督アントネリャ・スダサシ・フルニス
◎「Ainda estou aqui / Aún estoy aquí」ブラジル、監督ウォルター・サレス *
*監督、製作者欠席につき、代理がスマホに送られてきたメッセージを読んだ。
◎ヨーロッパ映画賞
「El Conde de Montecristo」フランス、
監督アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール、マチュー・デラポルテ
「Flow」『Flow』ラトビア=フランス=ベルギー、監督ギンツ・ジルバロディス
「La Quimera」『墓泥棒と失われた女神』イタリア、監督アリーチェ・ロルヴァケル
「La zona de interés」『関心領域』イギリス、監督ジョナサン・グレイザー *
◎「Emilia Pérez」『エミリア・ぺレス』フランス、監督ジャック・オーディアール *
*プレゼンターはアナ・トレントとオスカル・マルティネス。監督、カルラ・ソフィア・ガスコンとも欠席、配給元のエンリケ・コスタとミゲル・モラレスが代理が受け取った。

(左エンリケ・コスタ、ミゲル・モラレスがスピーチした)
◎短編映画賞
「Betiko gaua / La noche eterna」(18分)監督エネコ・サガルドイ
「Cuarentena」(6分)監督セリア・デ・モリナ
「El Trono」(13分)監督ルシア・ヒメネス
「Mamántula」(48分)監督イオン・デ・ソサ
◎「La gran obra」(20分)監督アレックス・ロラ、製作リュイス・キレス・サラ
*フォルケ賞に続いての受賞。

◎短編ドキュメンタリー賞
「Ciao Bambina」(18分)監督アフィオコ・グネッコ、カロリナ・ジュステ
「Els Buits」(19分)監督イサ・ルエンゴ、マリナ・フレイシャ・ロカ、ソフィア・エステべ
「Las novias del sur」(40分)監督エレナ・ロペス・リエラ
「Los 30(no)son los nuevos 20」(20分)監督フアン・ビセンテ・カスティリェホ・ナバロ
◎「Semillas de Kivu」(29分)監督カルロス・バリェ、ネストル・ロペス


◎短編アニメーション賞
「El cambio de rueda」(9分)監督ベゴーニャ・アロステギ
「La mujer ilustrada」(8分)監督イサベル・エルゲラ
「Lola, Lolita, Lolaza」(9分)監督マベル・ロサノ
「Wan」(13分)監督ビクトル・モニゴテ
◎「Cafune」(7分)監督カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ、ロレナ・アレス

★次回、国際ゴヤ賞のリチャード・ギア、ゴヤ栄誉賞のアイタナ・サンチェス=ヒホン、マリサ・パレデス追悼、『海を飛ぶ夢』公開20周年記念などを予定しています。
国際ゴヤ賞にリチャード・ギア*ゴヤ賞2025 ⑩ ― 2025年02月16日 10:43
第二の青春を満喫している受賞者リチャード・ギア

(「いじめっ子が米国大統領になっている」とスピーチした受賞者)
★第4回目となる国際ゴヤ賞は、サンセバスチャン映画祭2007のドノスティア栄誉賞受賞者である米国の俳優兼プロデューサーのリチャード・ギアの手に渡りました。プレゼンターはハリウッドでも活躍しているアントニオ・バンデラスでした。1975年ミルトン・カトセラスの犯罪ドラマ「Report to the Commissioner」(未公開)で映画デビューしているので、今年はキャリア50周年記念の節目の年に当たります。会場から温かい数分のスタンディングオベーションを受け、「(この賞を頂くのは)少し時期尚早でした。というのも私は新しい家族のいるスペインで製作する企画をもっているからです。実はガリシアの素晴らしい女性と結婚しているのです」と、会場で見守る実業家で人道活動家の妻アレハンドラ・シルバを紹介しました。因みに第1回の受賞者はケイト・ブランシェット(オーストラリア)、第2回はジュリエット・ビノシュ(フランス)、昨年がシガニー・ウィーバー(米国)と3連発で女優さんが受賞していました。

(プレゼンターのアントニオ・バンデラスとジョルジオ・アルマーニを着た受賞者)
★リチャード・ギアは、1949年フィラデルフィア生れの、俳優、製作者、人権活動家、ダライ・ラマを支援するチベット仏教の熱心な信者である。中国政府によるチベット人民迫害を非難して入国拒否になっている。30年以上前に「ギア財団」を設立して、チベット自治区のための活動を整備するほか、ダライ・ラマ14世が提唱するチベット文化の保護、先住民の権利保護などに賛同、受賞スピーチでも訴えていた。なかでも拍手を受けたのは「難民や我が家を持てない人々に、この賞を捧げたい」とスピーチしたときでした。また、権威主義の新たな台頭を危惧し、米国は「いじめっ子が大統領になって、権力と金が支配する恐ろしい場所になっている」と、警鐘を鳴らした。同じチベット仏教徒の信者であるアレハンドラ・シルバ(ア・コルーニャ1983)は、立ち上がって賛同の拍手を送っていました。


(見つめあう幸せなカップル、レッドカーペットにて)
★私生活に触れると、二人の出遭いは2014年頃で、チベット仏教徒の権利保護の活動が縁ということです。アレハンドラの前夫との離婚が正式に成立した2018年に、ギアにとっては3度目となる結婚をした。33歳の年齢差をはねのけての結婚、「父親と娘みたい」という陰口を聞き流し、翌年第1子、2020年第2子が誕生、アレハンドラの前夫とのあいだの男児合わせて3人兄弟、ギアは再婚相手キャリー・ローウェル(2002~16)との間に既に成人している息子(ホーマー・ジェームズ・ジグメ・ギア、歌手、2000生)がおり、4人の父親になっている。ベネチア映画祭2024に妻、長男と連れだって参加していた。昨年コネチカット州の自宅を売却、シルバの両親が暮らしているガリシアに移住している。ロスにあるもう1軒の家には長男が住んでおり、当分行ったり来たりになる由。
★キャリア&フィルモグラフィー:スクリーン以外のことに字数を取りすぎましたが、ほとんどの映画が公開され、TVでも放映されているので詳細は不要でしょうか。日本語ウィキペディアも充実しています。親日家で何回も訪日しているうえ、『HACHI 約束の犬』の製作を手掛け出演もしているのでファンは多い。しかしこれだけ主役を演じているのにオスカー像には縁遠く、ノミネートさえ一度もありません。犯罪コメディ・ミュージカル『シカゴ』(02)で受賞していると思っていたが勘違いで、受賞したのは第60回ゴールデングローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)の主演男優賞でした。共演のレネー・ゼルウィガーと受賞した。キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、アカデミー賞で助演女優賞を受賞した。

(タップダンスを披露した『シカゴ』のポスター)
他に1982年テイラー・ハックフォードの『愛と青春の旅だち』(ドラマ部門)、1990年ゲイリー・マーシャルの『プリティ・ウーマン』(コメディ/ミュージカル部門)、2012年ニコラス・ジャレッキーの『キング・オブ・マンハッタン』(ドラマ部門)の3作にノミネートされているだけでした。ポール・シュレーダーのサスペンス『アメリカン・ジゴロ』(80)やフランシス・フォード・コッポラの『コットン・クラブ』(84)など80年代の良作にオファーされているが、賞には結びつかなかった。ヨセフ・シダーの『嘘はフィクサーのはじまり』(16)のノーマン役で新境地を開いたと称賛されている。

(ゴヤ栄誉賞を受賞したアイタナ・サンチェス=ヒホンと、レッドカーペットにて)
★次回は、アイタナ・サンチェス=ヒホンのゴヤ栄誉賞を予定しています。
アイタナ・サンチェス=ヒホンのゴヤ栄誉賞授与式*ゴヤ賞2025 ⑪ ― 2025年02月20日 19:29
プレゼンターはマリベル・ベルドゥ、感動的なキャリア紹介

★ゴヤ栄誉賞授与式が比較的早い時間帯にありました。プレゼンターが誰になるかも楽しみの一つ、2023年の受賞者は、授賞式の前日に旅立ってしまった巨匠カルロス・サウラで、『歌姫カルメーラ』で主演したカルメン・マウラが務めました。会場は激動の時代を死の直前まで走り続けたマエストロを偲ぶ感動の渦が巻き起こりました。今回のプレゼンターは、総合司会者でもあるマリベル・ベルドゥでサウラのときと負けず劣らず会場を泣かせました。
★受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホンのキャリア紹介の途中、感動で言葉を詰まらせて中断する一幕があったのでした。会場からは「マリベル、頑張れ」の温かい応援の拍手が沸き起こり、カメラは会場の涙にくれるクララ・セグラ、2014年、最年少で受賞したアントニオ・バンデラスの姿などを追いました。師匠ともいえるアルモドバルより先に受賞することに拘って固辞した末の受賞が頭をよぎったのか、やはり目は潤んでいました。アイタナは「マリベル、このゴヤをあなたの手から受け取ることが私の夢だったのを知らなかったの?」と。二人は2歳違い、まだゴヤ賞など存在しなかった少女時代から女優を天職と考え、大女優になることを夢見る仲良しだったそうです。

(ハグしあう、アイタナとマリベル)
★プレゼンターは、「光り輝く類いまれな才能の持ち主、素晴らしい信頼のできる共犯者、これは皆が納得のゴヤです。私たちが自分の姿を映す鏡、何故ならあなたは私たちの国や文化が向上するよう努力したからです。40年間ものあいだ闘ったなんて、それは奇跡です」と、受賞者の卓越性に敬意を払った。

(エモーショナルなキャリア紹介をしたマリベル・ベルドゥ)
★受賞者のキャリア&フィルモグラフィーは、既にアップしておりますが、映画とTV出演を中心にした紹介記事で、舞台女優としてのキャリアは割愛しています。スペイン語版ウィキペディアに載っていない事柄なども含めて、今回受賞スピーチから明らかになった事柄をかいつまんで補足します。自分の師として、演劇の師アリシア・エルミダ(マドリード1932~2022)、受賞者にサンセバスチャン映画祭1999銀貝女優賞をもたらした『裸のマハ』の監督ビガス・ルナ(バルセロナ1946~2013)、2023年師走旅立ってしまった女性監督のパイオニアの一人であるパトリシア・フェレイラ(マドリード1958~2023)の3人にオマージュを捧げました。
★アリシア・エルミダ*については、12歳での初舞台がここフェデリコ・ガルシア・ロルカの生れ故郷グラナダの劇団《バラッカ》だったことに触れた。ロルカが1930年初めに設立した劇団です。「彼女と一緒にロルカの生地フエンテバケーロスでロルカの作品を上演したのです。だから私の人生は文字通りここグラナダから始まったわけです」と語った。この瞬間から彼女の学校は仕事場となり、職業として生活できるわずかな数の俳優の一部分になることができた。「だからこのゴヤを逆風に向かって進む仲間たちと分かち合いたい、皆さんとともに!」と。演技の師は舞台にあり、若い人たちに舞台で演技を学んで欲しいとも語った。
★さらに自分にとって学びは尽きない泉のようなものだと語り、今宵この場にいない人々のなかで、どうしても感謝したい師としてビガス・ルナに言及した。また40人以上の監督と仕事をする幸運に恵まれたこと、4人の女性監督に起用されたこと、その一人として脚本家でもあったパトリシア・フェレイラに触れた。まだ女性が足を踏み入れることができなかった時代からのパイオニアの一人でしたが、現在では多くの監督、製作者、脚本家、撮影監督、撮影技師、音響家が活躍している。それは彼女のような先輩たちの努力の成果だと語った。アイタナはフェレイラの『ティ・マイ~希望のベトナム』にカルメン・マチやアドリアナ・オソレスと出演している。(Netflix で配信しています)


★当然の流れとしてマリサ・パレデスを追悼しました。「彼女はゴヤ賞のガラではっきり述べていました。〈文化を怖れる必要はない。怖れるべきは無知であり、無関心であり、偽物や狂信的行為、暴力です。重要なのは戦争を怖れることです〉」と。「マリサにも納得して貰えると思いますが、怖れるべきことに新たな帝国主義、民族浄化の台頭を付け足したい」と述べた。
★最後に家族、生きる喜びである二人の子供レオとブルナ、ずっと以前に亡くなった父アンヘル、
会場で娘の晴れ姿を見守っていた母フィオレラに感謝を述べた。特に彼女の共犯者で仕事の原動力だった母親に「ママ、あなたの支えや信頼なしには、何事も成し遂げられなかった」と語りかけた。「愛を込めて皆さま有難うございました。映画館でお目にかかりましょう」と締めくくった。(父親は2007年に鬼籍入りしている)
★主な受賞歴:2022年にスペイン映画アカデミー名誉会員、アルハンブラ友好財団の名誉会員。1993年シネマ・ライターズ・サークル賞(「Havanera 1820」)、1995年フォトグラマス・デ・プラタ女優賞(TVシリーズ「Regenta」)、1996年フォトグラマス・デ・プラタ女優賞(演劇『熱いトタン屋根の猫』)、1999年サンセバスチャン映画祭銀貝女優賞(『裸のマハ』)、2004年バルセロナ女優賞、2015年「金のメダル」、同年Max賞主演女優賞(演劇「Medea」)、2022年フェロス賞助演女優賞(『パラレル・マザーズ』)、2024年12月に文化省が付与する芸術功労金のメダル、2025年ゴヤ栄誉賞。
*受賞者の主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2024年12月17日
*スペイン映画アカデミー「金のメダル」受賞記事は、コチラ⇒2015年08月01日/11月20日
*アリシア・エルミダは、舞台女優、映画、TV女優。1950年代半ばに舞台女優としてスタートを切り、シェイクスピア、ロペ・デ・ベガ、あるいは米国のソーントン・ワイルダー、チェーホフの『桜の園』、フェデリコ・ガルシア・ロルカの『ベルナルダ・アルバの家』などに出演した。1981年、ロルカの《バラッカ》劇団の巡業に参加する。その後《アリシア・エルミダ学校》と呼ばれたクラスで後輩に発声法や演技の指導にあたった。古典詩の造詣が深く、ロルカの『ドン・クリストバルの祭壇装飾絵図』、『老嬢ドーニャ・ロシータ』ほか、バリェ=インクランの『聖なる言葉』(Max賞1999受賞)、ミゲル・デ・ウナムノの「El otro」、後にアイタナも演じたテネシー・ウィリアムズの『熱いトタン屋根の猫』などに出演した。2014年スペイン映画アカデミー「金のメダル」受賞。政治的発言も多く、もの言う女優として女性の地位向上に貢献した一人でした。
ラブストーリーが語られた『海を飛ぶ夢』公開20周年を祝う
★第19回ゴヤ賞2005のガラはアレハンドロ・アメナバルの『海を飛ぶ夢』のための授賞式でした。1作品がノミネートできる最大カテゴリー数は18個、うちオリジナル歌曲・編集・衣装デザイン賞を除いた15カテゴリーにノミネートされ、受賞できなかったのは録音賞だけでした。少しばかり白けたのを思い出しました。今回登壇したのは、作品・監督・オリジナル脚本・オリジナル作曲賞のアメナバル、主演男優賞のハビエル・バルデム、主演女優賞のロラ・ドゥエニャス、新人女優賞のベレン・ルエダ、新人男優賞のタマル・ノバスの5名、今回「El 47」で助演女優賞を受賞したクララ・セグラも共演者でしたが登壇しなかった。

(登壇した『海を飛ぶ夢』の監督、主要キャスト)
★この『海を飛ぶ夢』クルーが今回の作品賞のプレゼンターを務めた。昨年はペドロ・アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』の公開25周年で、監督以下まだ元気だったマリサ・パレデス、主演のセシリア・ロス、ペネロペ・クルス、アントニア・サンフアンの豪華版でした。最近のゴヤ賞ガラはプレゼンターも視聴率アップに一役買っているようです。


(左端が受賞者ダニ・デ・ラ・オルデン、読み上げたのはベレン・ルエダでした)
マリサ・パレデス逝く*ゴヤ賞2025 ⑫ ― 2025年02月25日 15:57
前触れもなく旅立った〈映画界のレジェンダ〉マリサ・パレデス追悼

★今年のゴヤ賞ガラで多くの人が深い喪失感を味わったのが、昨年師走に前触れもなく旅立ったマリシータことマリサ・パレデス(1946)の追悼でした。毎年ガラにはノミネートがなくてもプレゼンターとして姿を見せ、偉ぶることもなく各メディアのインタビューに応じ、常に女性の地位向上に言及していた。もうあの青い瞳の優雅な佇まいに接することは叶わなくなってしまった。ガラ後半、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテもスピーチの締めくくりはパレデス追悼でした。母親と同じ女優の道を歩む一人娘マリア・イサシが会長に伴われて壇上に登場、亡き母への想いを語った。会場には40年以上も共に人生を歩んだホセ・マリア・プラド(愛称チェマ、ルゴ1952、元国立フィルムライブラリー館長)の未だ事実を受け入れられないのか、悪い夢を見ているような、打ちのめされたような姿が印象的でした。隣席の男性はマリサの兄弟ということです。

(感謝の辞を述べるマリア・イサシ)
★マリア・イサシは、「私たちと心を分かち合って下さっている全ての方々に御礼を申し上げたい、皆さまから寄せられた親愛や素晴らしい言葉、そして私たちの空虚感を共有して下さる全ての方々です。彼女は親愛、熱愛、敬意を重んじることを知っておりました。その凄さは決して想像できないほどでした」とスピーチした。マリア・イサシ(マドリード1975)は、パレデスが17歳の年齢差で結婚した監督アントニオ・イサシ・イサスメンディ(1929~2017)の娘、母親が「私の最高作品」と称した一人娘です。共演作として、アンパロ・クリメントが同名戯曲を映画化したドキュメンタリー・ドラマ「Las cartas perdidas」(21)、カルロス・モリネロのデビュー作「Salvajes」(01)ではゴヤ賞新人女優賞にノミネートされている。母親が2018年ゴヤ栄誉賞を受賞したときのプレゼンターを務めている。

(マリサ・パレデス、第32回ゴヤ栄誉賞2018ガラ)

(マリア・イサシ、マリサ・パレデス母娘、同フォトコール)
★2024年12月17日の明け方、心不全のため帰らぬ人となった。生来の優雅さをたたえた、貴婦人のお手本のようなマリサ・パレデスは、少し体調が良くないとマドリードのヒメネス・ディアス財団病院に緊急入院していた。互いに支えあった40年来のパートナーであるチェマ・プラドも、当日の朝には別れの言葉を交わすことが叶わなかったということです。元気そうに見えていたが心臓に栄養を運ぶ血管の冠状疾患を抱えていたようです。

(チェマ・プラドとマリサ・パレデス、ベルリン映画祭2018にて)
★マリサの旅は、マドリードの中心街サンタ・アナ広場近くの労働者階級が多く暮らす守衛室から幕を開けた。ビール工場で働く保守的な父ルシオと建物の守衛をしていた自立心に富んだ母ペトラの末娘、家は貧しかったという。当時のスペインは階級の違いがはっきりしていて、マリサは労働者階級意識を胸に刻み付けて成長した。そして国際的な女優になった後も決してそのことを忘れることはなかった。
★「ママ、どうして家は貧乏なの?」と尋ねる娘に「金持ちは遺産を相続するからなの。同じように貧乏人は貧乏を受け継ぐんだよ」と、指で頭をさして「ここによーく叩き込んでおきなさい」と諭したそうです。個人の努力が足りないとか、日本の為政者や権力者が大好きな言葉〈自己責任〉ではないということです。社会がどのように変わろうともブレない彼女の強い責任感、民主主義への政治的コミットメント、義務を果たすフェミニストぶりが筋金入りなのは、この幼少期の母親の教えにあると語っている。彼女が母親を〈共犯者〉と呼ぶ所以です。

(「品位ある民主主義のために」の会合で「今日世界は少し悲しい」と。2024年4月)

(「性暴力は終わりにしよう」の団扇を手にしたゴヤ賞ガラ、2024年2月)
★家計を助けるため、小学校は11歳まで、婦人服の仕立で屋で働き始める。隣人が持っていたコミック雑誌を借りて独学した。痩せていたのでパハリート、小鳥ちゃんの綽名で呼ばれていた。母親の「いいかいマリシータ、自分のやりたいことを諦めずに闘いなさい」という言葉を終生忘れなかった。守衛室の建物の屋上からエスパニョール劇場を見下ろして「女優になる」と決めたのは5歳だった。

(アルモドバル監督と。フォトグラマス・デ・プラタ栄誉賞2015ガラ)

(パレデス、チュス・ランプレアベ、ロッシ・デ・パルマ、『私の秘密の花』から)

(母娘の最後の共演作となった「Las cartas perdidas」から)
★主な受賞歴:映画国民賞1996、芸術功労賞金のメダル2007、CinEuphoria栄誉賞2011、フォトグラマス・デ・プラタ栄誉賞2015、バジャドリード映画祭栄誉賞2017、ゴヤ栄誉賞2018、ナント映画祭栄誉賞2021、ほか演技賞受賞はキャリア紹介に譲ります。2018年以降の主な出演は上記の「Las cartas perdidas」、2024年のアルバ・ソテロのドキュメンタリー「Mucha mierda」、TVミニシリーズでは、ロス・ハビスがプロデュースした「Vestidas de azul」(23~24)の2話に出演している。キャリア&フィルモグラフィーは以下にアップしております。
*ゴヤ栄誉賞2018とキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2018年01月18日
*ナント映画祭2021栄誉賞と「Las cartas perdidas」作品紹介は、コチラ⇒2021年04月11日

(カンヌ映画祭2024のレッドカーペットにて)
★訃報が伝えられると、X や SNS には、急逝に驚いたペドロ・サンチェス首相以下、労働大臣で副首相ヨランダ・ディアス、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、『私の秘密の花』や『ハイヒール』の監督アルモドバル、製作者のアグスティン・アルモドバル、『オール・アバウト・マイ・マザー』の共演者ペネロペ・クルス、「あまりにも早すぎます」とアントニオ・バンデラス、カンヌ映画祭の元会長ジル・ジャコブ、『ペトラは静かに対峙する』の監督ハイメ・ロサーレス、『私の秘密の花』の共演者ロッシ・デ・パルマ、フアン・ディエゴ・ボットーなど多くの仲間や友人からの感謝の言葉が投稿されている。日本では考えられないことですが、12月18日の通夜がエスパニョール劇場で行われると発表したのはサンチェス首相でした。

(最後のアディオス、エスパニョール劇場、2024年12月18日)
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