アリエル賞2017*メキシコ・アカデミー賞の結果発表 ― 2017年07月15日 16:30
メキシコ未公開映画が最優秀作品賞以下10冠の不思議
★デビュー作(◎印)が目立った今年のアリエル賞が、7月11日に発表になりました。カテゴリーはまた増えて28個、うち10冠(ノミネート20個)を制した「La 4a compañía」が、未だにメキシコでは公開されていないのに受賞しました。グアダラハラ映画祭2016(3月6日)で上映こそされましたが、アカデミー会員の多くはスクリーンでは観てないはずです。今後の公開を期待したのかもしれませんが、配給会社はまだ決まっていないようです。受賞カテゴリーは、作品・男優(アドリアン・ラドロン)・クアドロ男優(エルナン・メンドサ)・編集・視覚効果・特殊効果・美術デザイン・録音・衣装・メイクアップの10個です。「Tempestad」がドキュメンタリーということからある程度は予想されていましたが、未公開作品が作品賞を取るという結果になりました。

(「La 4a compañía」のポスター)
★アリエル賞はメキシコの社会情勢を反映して、政治的メッセージの強い映画が選ばれる傾向にあると思います。2016年ダビ・パブロスの『選ばれし少女たち』、2015年アロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』、2014年ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』と、切りこむ角度は違ってもメキシコやラテンアメリカの闇を抉るという意味では同じでした。今年の受賞作も実話をベースにした刑務所が舞台になっている。制度的革命党PRIのホセ・ロペス・ポルティーリョが大統領だった時代(1976~82)、メキシコ・ペソの大暴落で世界を混乱させた頃の物語です。実現までに10年以上もかかったプロジェクト全員が、待ちに待った受賞者のアナウンスに酔いしれた夕べとなりました。
*「La 4a compañía」ほかノミネーション発表の記事は、コチラ⇒2017年6月9日
最優秀作品賞(メキシコ)
『夜を彩るショーガール』◎(Bellas de noche)ドキュメンタリー
監督マリア・ホセ・クエバス
『彼方から』◎(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス
『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン
「Tempestad」ドキュメンタリー 監督タティアナ・ウエソ
「Me estás matando, Susana」監督ロベルト・スネイデル
◎「La 4a compañía」◎(スペイン合作)
監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ
「El sueño del Mara'akame」◎ 監督フェデリコ・Cecchetti

(ミッチ・バネッサ・アレオラとアミル・ガルバン・セルベラ)
監督賞&長編ドキュメンタリー賞
タティアナ・ウエソ「Tempestad」ドキュメンタリー
*女性で監督賞を受賞した第1号となり、当夜のもう一人の華だった。アリエル賞は1947年、16のカテゴリーで始まったメキシコ・アカデミー賞、その長い歴史にもかかわらず、ウエソ監督が初とは驚きを通りこして沈黙あるのみです。女性への暴力が処罰されないメキシコの現在が語られる。パウラ・マルコビッチ監督の自伝的デビュー作「El premio」(メキシコ、仏、独、ポーランド)が、2013年に作品賞を受賞したことがあります。しかし彼女はメキシコで活動しているアルゼンチン出身の脚本家でした。

(監督賞のトロフィーを手にしたタティアナ・ウエソ)
オペラ・プリマ第1回作品賞&と音楽賞
「El sueño del Mara'akame」監督:フェデリコ・Cecchetti

(出演者と一緒に)
男優賞(二人)
アドリアン・ラドロン「La 4a compañía」
ホセ・カルロス・ルイス「Almacenados」監督:ジャック・サグア・カバビエZagha Kababie確認
*若手とベテランが賞を分け合いました。

(左から、ホセ・カルロス・ルイスとアドリアン・ラドロン)
女優賞
ベロニカ・ランガー(ランヘル)「La calidas」監督:マロエイリノ・イスラス・エルナンデス

(貫禄の受賞者ベロニカ・ランガー)
助演男優賞
オセHoze・メレンデス「Almacenados」

助演女優賞
アドリアナ・パス「La calidas」

新人男優賞
パコ・デ・ラ・フエンテ「El alien y yo」監督:ヘスス・マガニャ・バスケス
新人女優賞
マリア・エボリ「Tenemos la carne」監督:エミリアノ・ロチャ・ミンター

クアドロ男優賞
エルナン・メンドサ「La 4a compañía」

クアドロ女優賞
マルタ・クラウディア・モレノ 「Distancias cortas」

オリジナル脚本賞
ホアキン・デル・パソ&ルシー・Pawlak「Maquinaria Panamericana」監督ホアキン・デル・パソ
脚色賞
ダビ・デソラ「Almacenados」
撮影賞
エルネスト・パルド「Tempestad」
編集賞
ミッチ・バネッサ・アレオラ、フランシスコ・リベラ、カミロ・アバディア「La 4a compañía」

(欠席したカミロ・アバディアのトロフィーも手にアレオラ、フランシスコ・リベラ)
視覚効果賞
リカルド・ロブレス「La 4a compañía」
特殊効果賞
ルイス・エドゥアルド・アンブリス「La 4a compañía」
美術デザイン賞
ジェイ・エロエスティ、カルロス・コッシオ「La 4a compañía」

音楽賞
エミリアノ・モッタ「El sueño del Mara'akame」
衣装賞
ベルタ・ロメロ、ホセ・グアダルーペ・ロペス「La 4a compañía」

メイクアップ賞
カルラ・ティノコ、アルフレッド・ガルシア「La 4a compañía」

録音賞(2作)
ハビエル・ウンピエレス、イサベル・ムニョス他「La 4a compañía」
フェデリコ・ゴンサレス・ホルダン、カルロス・コルテス他「Tempestad」
短編賞(フィクション)
「El ocaso de Juan」監督:オマル・デネド・フアレス

短編賞(ドキュメンタリー)
「Aurelia y Pedro」監督:オマル・ロブレス、ホセ・ペルマル
短編アニメーション(長編は該当作なし)
「Los aeronautas」監督:レオン・ロドリゴ・フェルナンデス

イベロアメリカ映画賞
◎『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート
◎『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
「Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル
「Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、独) 監督セバスティアン・コルデロ
『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ
(ブラジルとアルゼンチンが分け合いました)
ゴールデン・アリエル賞(二人)
イセラ・ベガ(女優、脚本家、製作者、シンガー・ソング・ライター)
*1939年生まれ。アリエル賞では、女優賞を1984年にアルトゥーロ・リプスタインの「La viuda negra」で受賞しているが、本作は1977年製作、メキシコ公開が1983年でした。他に2000年「La ley del Herodes」でも受賞、他に助演女優賞も受賞している。サム・ペキンパーの米国メキシコ合作映画『ガルシアの首』に出演、これは1975年公開されている。

ルセロ・イサック(美術監督)

★「La 4a compañía」が10個、「Tempestad」が4個、「Almacenados」が3個、「El sueño del Mara'akame」
と「La calidas」が2個ずつ、他は1カテゴリーという結果になりました。既に公開、映画祭上映、ネットフリックスなどで見ることのできる作品もありますが、この他どのくらい日本で見られるでしょうか。マリア・エボリが新人賞を取ったホラー・ファンタジー「Tenemos la carne」(エミリアノ・ロチャ・ミンター)あたりは期待できそうです。
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