オリソンテス・ラティノス部門③*サンセバスチャン映画祭2023 ⑪ ― 2023年08月31日 11:11
ルシア・プエンソの新作「Los impactados」がノミネート
★オリソンテス・ラティノス部門の最終グループで、SSIFF がプレミアというのはアルゼンチンのルシア・プエンソの5作目「Los impactados」のみ、他はベルリンとかカンヌでプレミアされている。本祭は三大映画祭と言われるカンヌ、ベネチア、ベルリンのほか、トロントの後ということもあって、どうしても新鮮味に欠けます。ルシア・プエンソは4作目「La caída」(22)がプライムビデオで『ダイブ』という邦題で目下配信中です。2007年に『XXY』で鮮烈デビューを果たして以来、問題作を撮り続けている監督の成長ぶりが見られる力作です。新作は本祭がプレミアということもあり賞に絡むのではないかと予想しています。他にリラ・アビレスの「Tótem / Totem」は、世界の映画祭巡りで受賞歴多数です。
*オリソンテス・ラティノス部門 ③*
9)「Heroico / Heroic」メキシコ
監督:ダビ・ソナナ(メキシコ・シティ1989)は、2019年デビュー作「Mano de obra / Workforce」がセクション・オフィシアルにノミネートされている。今回2作目「Heroico / Heroic」がオリソンテス・ラティノス部門にノミネートされた。サンダンス映画祭でプレミア、ベルリン映画祭パノラマ部門正式出品のあとSSIFFにやってきました。より良い未来を求めて軍人学校に入学した反戦主義者の青年を軸にドラマは展開します。現代メキシコに蔓延する体系的な暴力が語られる。


(ダビ・ソナナ監督、サンセバスチャン映画祭2019にて)
データ:製作国メキシコ、2023年、スペイン語・ナワトル語、ミステリードラマ、88分
キャスト:サンティアゴ・サンドバル・カルバハル(ルイス)、フェルナンド・クアウトル、モニカ・デル・カルメン、エステバン・カイセド、カルロス・ヘラルド・ガルシア、イサベル・ユディセ
ストーリー:アメリカ先住民のルーツをもつルイス・ヌメズは18歳、よりよい未来を確実にするため軍人学校への入学を申し込む。彼と同じような新入生は、やがて完璧な兵士に変身させようと設計された、暴力が日常的である残酷なヒエラルキー・システムに自分たちが放り込まれたことを理解するだろう。

10)「Los colonos / The Settlers」チリ=アルゼンチン=オランダ=フランス=イギリス=デンマーク=台湾=スウェーデン、8ヵ国合作映画
監督:フェリペ・ガルベス(サンティアゴ1983)のデビュー作。1901年から1908年のパタゴニアを舞台にしたティエラ・デル・フエゴ島の先住民セルクナム虐殺が物語られる。
★本作はカンヌ映画祭2023「ある視点」でプレミアされたおり、作品&監督紹介を既にアップ済みです。オスカー賞2024のチリ代表作品。
*作品&監督紹介記事は、コチラ⇒2023年05年15日


(フェリペ・ガルベス監督)
11)「Los impactados」アルゼンチン
監督:ルシア・プエンソ(ブエノスアイレス1976)は、監督、脚本家、作家、製作者。父ルイス・プエンソは、『オフィシャル・ストーリー』(85)でアルゼンチンに初めてオスカーをもたらした監督。ルシアは2001年脚本家としてキャリアをスタートさせる。2013年のオリソンテス・ラティノス部門に長編3作目「El médico alemán Wakolda」(邦題『ワコルダ』)がノミネートされている。第2次世界大戦中、多くのユダヤ人をアウシュビッツで人体実験を繰り返して「死の天使」と恐れられていたナチスの将校ヨーゼフ・メンゲレ医師の実話を映画化した作品。久しくTVシリーズに専念していて、4作目が待たれていたのが上述の『ダイブ』でした。メキシコで起きた実話に着想を得て製作された。製作にも参画している主役のカルラ・ソウサの魅力もさることながら、性加害者のコーチにエルナン・メンドサを迎えるなどかなり見ごたえがあります。勝利が究極の夢である高飛込競技の少女がコーチから性被害を受けていた実話をもとに、ヒロインの栄光と挫折、最後に勝ち取る解放が語られる。
★今回の5作目「Los impactados」は、嵐で雷に打たれことで心身に変化をきたした少女の物語という定義は表層的で、かなり政治的なメッセージが込められているサイコスリラーです。プエンソに影響を与えた監督は、デイヴィッド・リンチを筆頭に、フランソワ・オゾン、オリヴィエ・アサイヤス、ミヒャエル・ハネケ、クレール・ドニなどの作品ということです。主役アダのキャラクターは複雑で、超自然的な要素が設定されており、彼女を苦しめる幻覚や爆発が心的外傷後に起きるストレスなのかどうかは明らかにされない。プエンソの当ブログ登場は、以下にアップしています。
*監督キャリア&『ワコルダ』(ラテンビート2013)紹介は、コチラ⇒2013年10月23日
*『フィッシュチャイルド』(ラテンビート2009)紹介は、コチラ⇒2013年10月11日


(ルシア・プエンソ監督)
データ:製作国アルゼンチン、2023年、スペイン語、サイコスリラー、90分
キャスト:マリアナ・ディ・ジロラモ(アダ)、ヘルマン・パラシオス(フアン)、ギジェルモ・プフェニング(ジャノ)、オスマル・ヌニェス(コーエン)、マリアナ・モロ・アンギレリ(オフェリア)
ストーリー:アダが野原で雷に打たれた5週間後に昏睡から目覚めると、彼女はすっかり変わってしまっていた。身体的にも精神的にもバランスを崩して苦しんでいます。さらに目に見える明らかな後遺症があり、制御できない一連の奇妙な症状、例えば視覚や聴覚を通しての幻覚、時間の混乱は、彼女を以前の生活から遠ざけ、彼女が愛する人々からの孤立へと駆り立てます。落雷の衝撃を受けた人たちのグループの支援、落雷によって引き起こされる身体的精神的な影響を理解することに専念する医師との信頼を通して、アダはリターンできない旅に誘い出されることになるだろう。


(アダ役で飛躍的な成長を遂げたと高評価のマリアナ・ディ・ジロラモ)
12)「Tótem / Totem 」メキシコ
監督:リラ・アビレス(メキシコ・シティ1982)は、監督、脚本家、製作者。2018年ニューディレクターズ部門に「La camarista / The Chambermaid」が選ばれている。2020年オリソンテス賞の審査員として現地入りしている。脚本リラ・アビレス、音楽トマス・ベッカ、撮影ディエゴ・テノリオ、編集オマール・グスマン。ドイツを皮切りに、米国、アジア、アフリカ諸国の映画祭巡りをしている。
*受賞歴:ベルリン映画祭2023コンペティション部門、エキュメニカル審査員賞受賞、香港映画祭ヤングシネマ部門金の火の鳥賞、北京映画祭監督賞・音楽賞、エルサレム映画祭監督賞、リマ映画祭作品賞・撮影賞などの受賞歴多数。

(リラ・アビレス監督と主役のナイマ・センティエス、ベルリン映画祭2023)

データ:製作国メキシコ=デンマーク=フランス、2023年、スペイン語、ドラマ、95分、撮影地メキシコシティ
キャスト:ナイマ・センティエス(ソル)、モンセラト・マラニョン(叔母ヌリア)、マリソル・ガセ(叔母アレハンドラ)、サオリ・グルサ(エステル)、マテオ・ガルシア(父トナティウ)、テレサ・サンチェス(クルス)、イアスア・ラリオス(ルチア)、アルベルト・アマドル(ロベルト)、フアン・フランシスコ・マルドナド(ナポ)、他多数
ストーリー:7歳になるソルは、父親を驚かすびっくりパーティーの準備を手伝うため、祖父の家に来ています。日が経つにつれ、状況はゆっくりと不思議なカオスの大混乱の雰囲気に包まれ、家族の絆をたもつ土台が砕かれていく。ソルは彼女の世界が劇的な変化を遂げるところにちょうどさしかかっていることをやがて理解するでしょう。人生を祝うことで神秘的な道が開かれていく。7歳の少女の視点で生と死、時間が語られる。


(ソルを演じたナイマ・センティエス、フレームから)

(左から、ダビ・ソナナ、フェリペ・ガルベス、ルシア・プエンソ、リラ・アビレス)
オリソンテス・ラティノス部門 ②*サンセバスチャン映画祭2023 ⑩ ― 2023年08月23日 14:51
タティアナ・ウエソが2作目「El eco / The Echo」で戻ってきた!
★サンセバスチャン映画祭 SSIFF も開幕1ヵ月をきり、連日のごとくニュースが配信されています。例えばセクション・オフィシアルのオープニング作品は宮崎駿の『君たちはどう生きるか』、クロージング作品はイギリスの監督ジェームズ・マーシュの「Dance First」、マーシュ監督は英国史上、最高額、最高齢の金庫破りだったオールドボーイ窃盗団の実話に基づいて描いた『キング・オブ・シーヴズ』(18)が2021年に公開されている。両作ともアウト・オブ・コンペティション部門ノミネート作品であるため金貝賞には絡みません。さらに「ペルラク」部門18作品、「ネスト」部門12作品も相次いで発表されました。更に8月22日にはドノスティア栄誉賞の二人目の受賞者にビクトル・エリセがアナウンスされるなど急に慌ただしくなってきました。エリセはともかくとして、今年は時間的余裕がなく、アップはスペイン語、ポルトガル語映画に限らざるを得ません。今回はオリソンテス・ラティノ部門の続き、ドラマ2作、ドキュメンタリー2作の合計4作をアップします。
*オリソンテス・ラティノス部門 ②*
5)「Clara se pierde en el bosque / Clara Gets Lost in the Woods」
アルゼンチン
監督:カミラ・ファブリ(ブエノスアイレス1989)、監督、脚本家、戯曲家、女優として多方面で活躍しているアルゼンチン同世代の期待の星。女優としてミゲル・コーハン、ベロニカ・チェン、フアン・ビジェガスの「Las Vegas」(18)、アレハンドロ・ホビックやルシア・フェレイラの短編に主演している。


(カミラ・ファブリ監督)
データ:脚本はカミラ・ファブリとマルティン・クラウトが共同執筆、2023年、スペイン語、ドラマ、86分、長編デビュー作。
キャスト:カミラ・ペラルタ(クララ)、アグスティン・ガリアルディ(ミゲル)、フリアン・ラルキエル・テラリーニ(イバン)、フロレンシア・ゴメス・ガルシア(エロイサ)、ソフィア・パロミノ(フアナ)、マイティナ・デ・マルコ(パウリナ)、ペドロ・ガルシア・ナルバイツ(フアン)、マルティア・チャモロ(マルティナ)、カミラ・ファブリ(イネス)、フリアン・インファンティノ(マルティン)、ほか
ストーリー:クララは都会を離れて郊外に家族と小旅行中に、幼馴染の友人マルティナからの母性のアイディアを前面に押し出したメッセージを受けとった。マルティナとはレプブリカ・クロマニョン・クラブで起きた悲劇の一夜を共にしていた。一連のWhatsApp Messengerのテキスト、ホームビデオ、家族とランチする現在と現実のショット、危機と悲劇によって荒廃した都会での彼女自身や友人たちの思春期がつぶさに語られる。レプブリカ・クロマニョン・クラブの悲劇というのは、2004年12月30日の夜にブエノスアイレスのオンセ地区で開催されていたロック・イベント中に193人の命が奪われた大火災をさす。

(撮影中の監督とクララ役のカミラ・ペラルタ)
6)「El castillo / The Castle」アルゼンチン=フランス=スペイン
ドキュメンタリー
監督:マルティン・ベンチモル(ブエノスアイレス1985)、作品紹介、監督のキャリア&フィルモグラフィーは、以下にアップ済みです。
*作品紹介は、コチラ⇒2023年07月21日


7)「El Eco / The Echo」メキシコ=ドイツ
監督:タティアナ・ウエソ(サンサルバドル1972)監督、脚本家。監督のキャリア&フィルモグラフィーは、SSIFF 2021の同部門のオリソンテス賞以下3冠に輝いた「Noche de fuego」にアップしています。新作は、架空の要素が多く含まれているが、メキシコ高地にある村エルエコの子供たちを描いている。監督はメキシコ北部のある村に逗留して、ほぼ1年間掛けて撮影している。監督の子供時代の体験が投影されている。ウエソはエルサルバドル出身だが、4歳のとき両親に連れられてメキシコに移住している。2011年の「El lugar más pequeño」、2016年の「Tempestad」、新作「El Eco」をもって「痛みとトラウマ」三部作を完結したことになる。
*「Noche de fuego」の紹介記事は、コチラ⇒2021年08月19日

データ:脚本タティアナ・ウエソ、2023年、スペイン語、ドキュメンタリー、102分。本作は既にベルリン映画祭2023でプレミアされ、エンカウンターズ部門の監督賞とドキュメンタリー賞を受賞している他、香港映画祭ドキュメンタリー賞ノミネート、シアトル映画祭ノミネート、カルロヴィ・ヴァリ映画祭、リマ映画祭ドキュメンタリー賞、エルサレム映画祭シャンテル・アケルマン賞を受賞している。

(タティアナ・ウエソ、ベルリン映画祭2023ドキュメンタリー作品賞のガラから)
キャスト:モンセラ・エルナンデス(モンセ)、マリア・デ・ロス・アンヘレス・パチェコ・タピア(祖母アンヘレス)、ルス・マリア・バスケス・ゴンサレス(ルス)、サライ・ロハス・エルナンデス(サライ)、ウィリアム・アントニオ・バスケス・ゴンサレス(トーニョ)、他多数
ストーリー:メキシコ北部の人里離れた村エル・エコは、子沢山の家族が多く、生活は貧しく、子供たちは羊と年長者たちの世話をしています。孫娘は祖母が死ぬまで世話をしなければなりません。霜と旱魃が村を苦しめます。子供たちは両親の話す言葉と沈黙から、死、病気、愛を理解することを学びます。エコは魂のなかにあるもの、周りの人々からうける確実な暖かさ、人生で直面する反逆と眩暈について、成長についての物語です。

8)「Estranho caminho / A Strange Path(Extraño camino)」ブラジル
WIP Latam 2022 作品
監督:グト・パレンテ(セアラ州都フォルタレザ1983)は、監督、脚本家、撮影監督、俳優。長編10作目になる。WIP Latem 2022の最優秀賞作品賞受賞作。
*脚本グト・パレンテ、撮影リンガ・アカシオ、美術タイス・アウグスト、録音ルカス・コエーリョ、編集ビクトル・コスタ・ロペス、ティシアナ・アウグスト・リマ、タイス・アウグスト、グト・パレンテ。トライベッカ映画祭2023では、父親ジェラルド役のカルロス・フランシスコが説得ある演技で主演男優賞を受賞している。


(デビッド役のルカス・リメイラ)
データ:製作国ブラジル、2023年、ポルトガル語、ミステリー、85分、トライベッカ映画祭2023で国際コンペティション部門の作品賞、脚本賞、監督賞、カルロス・フランシスコが主演男優賞を受賞するなど4冠を制した。撮影地フォルタレザ。セアラ州文化省からの資金提供を受けている。

(父親役のカルロス・フランシスコ)
キャスト:ルカス・リメイラ(デビッド)、カルロス・フランシスコ(父ジェラルド)、リタ・カバソ(テレサ)、タルツィア・フィルミノ(ドナ・モサ)、レナン・カピバラ(レナン)、アナ・マルレネ(マリアナ先生)、他多数
ストーリー:若い映画背作者デビッドは、映画祭で自作を発表するため生れ故郷のブラジルに向かっています。到着すると新型コロナのパンデミックが急速に全国に広がり始めていた。映画祭は中止され、空港が封鎖されたため帰国便もキャンセルされてしまう。デビッドは滞在先を必要としており、十年以上話していない風変わりな男である父親ジェラルドを訪ねることにする。彼が父親のアパートに到着すると、奇妙なことが起こり始めます。デビッドの軌跡を辿るドラマ。和解の痛み、不条理の喜びの表現などが描かれる。

(カミラ・ファブリ、マルティン・ベンチモル、タティアナ・ウエソ、グト・パレンテ)
オリソンテス・ラティノス部門12作出揃う*サンセバスチャン映画祭2023 ⑨ ― 2023年08月16日 17:49
オープニングはパウラ・エルナンデス&クロージングはカロリナ・マルコビッチ

★去る8月3日、第71回サンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門12作(2022年と同じ)が発表になりました。既にスペインが共同製作国になっている2作、アルゼンチンのドロレス・フォンシとマルティン・ベンチモルはご紹介しておりますが、残る10作が発表になり、これですべてが出揃ったことになります。
★オープニング作品は、アルゼンチンのパウラ・エルナンデスの「El viento que arrasa / A Ravaging Wind」(スペイン語)、クロージング作品は、ブラジルのカロリナ・マルコヴィッチの「Pedágio / Toll」(ポルトガル語)と、共に女性監督作品が選ばれました。監督は男性4名、女性8名と、女性シネアストの元気のよさが際立っています。WIP Latam 2作、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラム1作が含まれました。作品賞はオリソンテ賞、今回は全作品をご紹介する時間的余裕がなく、管理人が予想する賞に絡みそうな作品をつまみ食いすることになりそうです。一応全12作の作品名、監督、製作国、トレビア情報を列挙しておきます。3回に分けてアップします。
*オリソンテス・ラティノス部門 ①*
1)「El viento que arrasa / A Ravaging Wind」アルゼンチン=ウルグアイ
オープニング作品、2023年、スペイン語、ドラマ、94分
監督:パウラ・エルナンデス(ブエノスアイレス1969)は、アルゼンチンの監督、脚本家、女優。本作はセルバ・アルマダの処女作(2012年刊)である同名小説の映画化。チリのアルフレッド・カストロ、スペインのセルジ・ロペスなど、本邦でも知名度のある演技派がクレジットされている。アルゼンチンのチャコ州が舞台。トロント映画祭2023でワールドプレミアされる。

(パウラ・エルナンデス監督)
キャスト:アルムデナ・ゴンサレス(レニ)、アルフレッド・カストロ(父親ピアソン神父)、セルジ・ロペス、ホアキン・アセベド
ストーリー:父ピアソン神父の盲目的信仰にとらわれているレニは、父と福音主義の使命を共有しています。或るありふれた自動車事故が彼らをグリンゴの経営する修理工場に導いていきます。神父が整備士の息子タピオカの魂を救うことに取りつかれたとき、レニは自分の運命を受け入れることを理解する。


2)「Pedágio / Toll」ブラジル=ポルトガル
クロージング作品、2023年、ポルトガル語、ドラマ、101分
監督:カロリナ・マルコヴィッチ(サンパウロ1982)は、監督、脚本家、製作者、フィルム編集者。2007年短編デビュー、短編6編の後、「Carvao / Charcoal / Calvón」)で長編デビューを果たした。これはサンセバスチャン映画祭2022の同セクションに選ばれており、2年連続のノミネートです。監督キャリア&フィルモグラフィーなどは、昨年既に紹介しています。本作も前作に続いて、テーマは宗教、生と死、義務とは何かです。高速道路の料金所で働いている女性がヒロイン、ゲイである息子を救済するため違法な行為に手を染めるようになっていく。製作はデビュー作を手掛けたカレン・カスターニョと再タッグを組み、監督自身も製作に参画、撮影はルイス・アルマンド・アルテアガ。
*カロリナ・マルコヴィッチのキャリア紹介は、コチラ⇒2022年08月25日

キャスト:メイヴ・ジンキングス(スエレン)、トマス・アキノ(アラウト)、アイザック・グラサ、カウアン・アルバレンガ(ティキーニョ)、カイオ・マセド(リック)、アリネ・マルタ・マイア(テルマ)
ストーリー:高速道路の料金所係員であるスエレンは、ゲイである息子のことで苦しんでいる。著名な外国人司祭が率いる高額なゲイの改宗ワークショップに息子を送るため、車で海岸に行く人々から金品を盗み取るマフィアの片棒を担ぐことにする。ただし、これは息子を入所させるという高貴な目的のためだけに必要な額だけです。反LGBTQ+の現大統領派からは「不快な社会ドラマ」と揶揄されている。

(カロリナ・マルコヴィッチ監督と主役を演じるメイヴ・ジンキングス)
3)「Alemania」アルゼンチン=ドイツ
ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラム2021、スペイン語、ドラマ、87分
監督:マリア・サネッティ(ブエノスアイレス1980)は、監督、脚本家、製作者。2021年、ヨーロッパ=アメリカ・ラテン共同フォーラムの国際アルテキノ賞を受賞、本作が長編デビュー作。2011年、短編「Ping Pong Master」(12分)を監督、脚本、製作している。監督は姉が患っている精神障害に直面している家族を中心軸に、ドラマを展開させている。


(マリア・サネッティ監督)
キャスト:マイテ・アギラル(ロラ)、ミランダ・デ・ラ・セルナ、マリア・ウセド、ウォルター・ジャコブ
ストーリー:16歳のロラは、ドイツでのセメスターの可能性が出てきたことで、再受験の勉強に取りくむことにした。ロラはドイツに留学したいと思っているが、姉の精神医学的問題に行き詰っている家族は、ロラが断念してくれることを願っている。家族との軋轢に疲労して安定を失っているロラは、自分の考えを推し進めながら、自分自身と彼女を取り巻く状況の両方について、別の視点で見ることができる新しい経験を見つけようとしています。




(左から、パウラ・エルナンデス、カロリナ・マルコヴィッチ、マリア・サネッティ、
ドロレス・フォンシの4 監督)
ニューディレクターズ、コロンビア映画*サンセバスチャン映画祭2023 ⑧ ― 2023年08月11日 16:33
フアン・セバスティアン・ケブラダ「El otro hijo / The Other Son」

2)El otro hijo / The Other Son(コロンビア=フランス=アルゼンチン)
2023年、ドラマ、90分、長編デビュー作
Foro de Coproducción Europa-América Latina 2020
監督:フアン・セバスティアン・ケブラダ(メデジン1987)は監督、脚本家、編集者、製作者。ブエノスアイレスの映画大学で映画製作を学ぶ。バルセロナのカタルーニャ映画視聴覚上級学校 ESCAC 大学院で編集を学んだ。2015年 BAFICI ブエノスアイレス国際インデペンデンス映画祭に、監督、脚本、製作を手掛けた中編「Días extraños」(68分)を正式出品して注目される。短編「La casa del árbol」(17、16分)はトロント映画祭に出品された。フィルム編集を多数手がけている。

(中編「Días extraños」のポスター)
★この度「El otro hijo / The Other Son」で長編デビューを果たした。予期せぬ弟の死に直面して、生き延びるために必要な力を模索するドラマ。兄弟二人が本当は所属していない上流階級の学校で覚える喪失感、監督自身が経験した思春期のトラウマなどが描かれる。既にコロンビアのFDC賞をセサル・アセベドと受賞している。アセベドは『土と影』がラテンビート2015で上映されたコロンビアの監督。

(フアン・セバスティアン・ケブラダ監督)
キャスト:ミゲル・ゴンサレス、イローナ・アルマンサ、ジェニー・ナバレテ
ストーリー:フェデリコとその弟シモンの物語。フィエスタでバルコニーから転落したシモンが亡くなる日まで二人はともに人生を生きていた。一方まわりの家族はフェデリコの目前でばらばらに崩壊していった。フェデリコは学校の最後の数週間を普通に送ろうとします。嘆き悲しむことができず、シモンのガールフレンドのラウラに接近していく。彼女に慰めを見出そうとする。コロンビアの階級社会で自分の居場所を探す青年の物語。

(フェデリコ役のミゲル・ゴンサレス)
★オリソンテス・ラティノス部門が発表になっていますので、ニューディレクターズ部門は2作にして、移行します。
ニューディレクターズ部門11作発表*サンセバスチャン映画祭2023 ⑦ ― 2023年08月09日 11:03
ニューディレクターズ部門11作品ノミネート発表

★去る7月27日、サンセバスチャン映画祭総指揮者ホセ・ルイス・レボルディノス、後援者クチャバンク・ギブスコア・ネットワーク代表のマルタ・マディナベイティア出席のもと、ニューディレクターズ部門11作品が発表になりました。このセクションは2作目までが対象で、作品賞はクチャバンク・ニューディレクターズ賞、副賞として50.000ユーロとスペイン国内での公開が約束されます。他に18歳から25歳までの学生150人が審査員であるユースTCM賞があります。
★オープニング作品は中国のリャン・ミンLiang Mingの「Xiao yao you / Carefree Days」、既に報道されているように日本からは、村瀬大智の『霧の淵』がクロージングに選ばれました。彼は1997年滋賀県信楽生れ、今年の最年少候補者となりました。スペイン語映画はスペインとコロンビアから、他にイラン、インド、カザフスタン、ロシア、シンガポール、カナダ、スウェーデン、各1作ずつです。全作ご紹介する余裕はなく、スペインとコロンビアのスペイン語映画2作だけアップいたします。
1)La estrella azul / The Blue Star
監督:ハビエル・マシペ・コスタ(テルエル1987)は、監督、脚本家、フィルム編集者。長編2作目、サラゴサ出身のミュージシャンで詩人のマウリシオ・アスナルの人生にインスピレーションを受けて製作されたフィクション。詩人は2000年、わずか36歳という若さで生涯を閉じました。マシペの長編デビュー作は「Los inconvenientes de no ser Dios」(14)、サラゴサ映画祭の監督第1作賞を受賞した。ほか短編数編を発表しており、うち2014年のポルトガル語で撮った「Os meninos de rio」(14分)は、ゴヤ賞2016にノミネートされたほか、CinEuphoria 2016 短編賞、シモン賞2015、パベス賞2015、モンテレイFF審査員メンション、サラゴサFF、ウエルバFFゴールデン・コロン賞など作品賞を含む、監督賞、脚本賞を多数受賞した。2019年のコメディ「Gastos incluidos」(21分)もゴヤ賞2021ではノミネートに終わったが、シモン賞2020短編賞を受賞した。ドキュメンタリー「Vivir sin agua」(08)を撮っている。

(長編デビュー作「Los inconvenientes de no ser Dios」のポスター)

(短編「Gastos incluidos」でシモン賞のトロフィーを手にしたハビエル・マシぺ)
キャスト:ペペ・ロレンテ(マウリシオ・アスナル)、クティ・カラバハル(ドン・カルロス)、ブルーナ・クシ、マルク・ロドリゲス、マリエラ・カラバハル、ノエリア・ベレニセ・ディアス、パブロ・アルバレス(青年マウリシオ)、カテリナ・ソペラナ、マヌエル・チャコン(マネージャー)
ストーリー:90年代、スペインのロックンロール・ミュージシャン、マウリシオは自分の天職を再発見するためにアルゼンチンへ旅立ちます。そこで彼は高齢のマエストロ、最も著名なフォークロアソングの作者であるにもかかわらず生活に困窮しているドン・カルロスと予期せぬ出会いをする。カルロスは旅人を歓迎し、実に贅沢で風変わりなデュオが誕生する。

(クティ・カラバハル扮するドン・カルロスとペペ・ロレンテ扮するマウリシオ)
データ:製作国スペイン=アルゼンチン、2023年、スペイン語、ドラマ、127分、撮影2020年3月クランクインしたがパンデミックのため中断、コロナ以後に再開して2023年2月に終了した。主な撮影地はマドリード、アルゼンチンのサンティアゴ・デル・エステロ。スペイン配給はワンダビジョン、国際販売はフィルム・ファクトリー。モビスター+、アラゴンTV、ICAA、INCAAからの資金提供を受け、アラゴン州政府と州議会、サラゴサ市議会、サンティアゴ・デル・エステロ政府ほかの支援を受けている。

(バンド、ゴールデン・ジッパーズの4人)
製作:Mod Producciones / El Pez Amarillo / Cimarrón / La Charito Films / Prisma
製作者:シモン・デ・サンティアゴ、エルナン・ムサルッピ、アメリア・エルナンデス、他
音楽:ペテコ・カラバハル、アリシア・モロテ
撮影:アルバロ・メディナ、ルイ・ポサス
解説:1981年サラゴサで、アスナル・マウリシオを中心に結成されたバンド、ゴールデン・ジッパーGolden Zippers は、スペインにおける国民的ロカビリーのパイオニア的な存在の一つ。1984年、サラゴサで開催された大イベントの直後解散、マウリシオはベーシストのミゲル・マタと Más Birras を結成、ドラマーのマノロ・レアル(愛称ロロ)は Los Dynamos へ、エレキギターのロビーは、カントリー・ミュージックに根ざした「Rodeo」 を結成している。

(撮影中のクティ・カラバハルとペペ・ロレンテ)
★クティ・カラバハル(1947)は、アルゼンチンのフォルクローレの伝統をもつ音楽家一家カラバハル家の12人いる兄弟姉妹の末っ子。映画に登場するカルロス・カラバハル(1929~2006)は5番目にあたり、歌手、作曲家、チャカレラの父として知られ、2006年1月に開催されたチャカレラ国立フェスティバルでの公演を最後に、脳卒中で死去している。弟にあたるクティ・カラバハルが演じている。
★次回はコロンビアのフアン・セバスティアン・ケブラダの「El otro lado / The Other Side」のアップを予定しています。
ベロドロモにシリーズ2作がプレミア*サンセバスチャン映画祭2023 ⑥ ― 2023年07月24日 16:34
アーティストC. Tanganaの創作プロセスを探求する4年間の旅

★賞には絡まないベロドロモ部門は、約3000人の観客が収容できる競輪場を会場にしています。例年人気のエンターテインメントが上映されます。今年は3部構成のシリーズ「Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition」(135分)とTVミニシリーズのホラー「El otro lado / The Other Side」(6話)の2作がプレミアされるようです。前者の監督は、サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレスの3監督、後者はハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロの2監督です。
1)Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition(スペイン)
ドキュメンタリー・ドラマ、スペイン語、135分
監督:サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレス
*サントス・バカナの本名はアルバロ・サントス(マドリード1991)、バレンシアの地中海に面したリゾート地ベニドルムのプレイモン・バカナから採られた。ミュージック・ビデオの監督、編集者、俳優、制作会社「Little Spain L.A. リトル・スペイン・ロサンゼルス」設立者の一人、ロヘリオ・ゴンサレス監督を通じて、2016年ラテングラミー賞の開催中だったラスベガスで初めてアーティストのC. Tangana(C. タンガナ)に出会った。

(サントス・バカナ)
*アーティストC. タンガナの本名はアントン・アルバレス・アルファロ(マドリード1990)、ラッパー兼ソングライター、愛称〈Puchoプーチョ〉で知られている。サントス・バカナはプーチョのミュージック・ビデオを制作している。2018年のミュージック・ビデオ「C. Tangana & Nino de Elche: Un Veneno」以来、3~4分のビデオを10本ほど撮っおり、うち代表作として「C. Tangana &Alizzz: Para Repartir」(19)、「C. Tangana:Demasiadas Mujeres」(20)などがある。

(C. タンガナ)

(「C. Tangana:Demasiadas Mujeres」から)
*ロヘリオ・ゴンサレス(マドリード1991)は監督、編集者。バカナとラスベガス空港で出会い、数時間後にはC. タンガナの部屋を訪れたという二人は互いに兄弟と思っている。ロスでサントス・バカナを主役にした短編ドキュメンタリー「Santos」(21,9分)を監督している。またC. タンガナが監督したミュージック・ビデオ「C. Tangana feat. Nathy Peluso: Ateo」(21)のフィルム編集を手掛けている。

(「Santos」のポスター)

(サントス・バカナ、ロヘリオ・ゴンサレス、C. タンガナの3人組)
*クリスティナ・トレナス(マドリード1987)は監督、脚本家、製作者、撮影監督。サントス・バカナの協力者の一人。製作者としてC. タンガナのミュージック・ビデオ全作を手掛けている。長編「From 7 to Eleven」(17)ほか、短編多数、2021年、マリア・ルビオとC. タンガナのミュージック・ビデオを監督している。フアン・ピンサスの「New York Shadow」の撮影監督として、ゴヤ賞2014にノミネートされ、撮影監督賞ノミネート最初の女性として話題になった。
解説:「El Madrileño」のレコードの成功を受け、C. タンガナはキャリアのなかで最も野心的なツアーを企画し、ライブのやり方に革命を起こすという挑戦に向き合っている。アーティストを4年以上も追いつづける旅、キューバでのアルバム制作以来、ショーの概念化、対立するビジネス、リハーサル、気づまりな会話、仲間内での賞賛、目まぐるしくスペインとラテンアメリカ全土を渡り歩くコンサートまで、彼の創作プロセスを探求する。3部構成で掘り下げる。

2)El otro lado / The Other Side (スペイン)TVミニシリーズ(6話、各30分)、コメディ・ホラー、Movister+
監督:ハビエル・ルイス・カルデラ(バルセロナ近郊ビラデカンス1976)、アルベルト・デ・トロ(バルセロナ1972)
企画:ベルト・ロメロ(バルセロナ近郊カルドナ1974)
脚本(共同):ラファエル・バルセロ、エンリク・パルド、ベルト・ロメロ
音楽:ハビエル・ロデロ
撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン
編集:オリオル・ペレス・アルカラス

(中央がベルト・ロメロ)
キャスト:ベルト・ロメロ(ナチョ・ニエト)、アンドレウ・ブエナフエンテ(エストラーダ博士)、エバ・ウガルテ、マリア・ボット、ナチョ・ビガロンド、マリア・パスクアル、アルベルト・ガルシア、ウーゴ・モレニーリャ、他
ストーリー:ジャーナリストのナチョ・ニエトは超常現象のスペシャリストである。公私ともに最悪の状態に陥っている。自殺が未遂に終わった後、ナチョは20年以上前に亡くなった、謎の神話的伝道者であり、彼の助言者でもあったエストラーダ博士の幽霊をともなって息を吹き返す。

*Movister+TVシリーズの新企画である本作は、俳優、コメディアン、脚本家として活躍しているベルト・ロメロが企画し、ハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロが共同で監督します。ロメロはハビエル・ルイス・カルデラのコメディ「Tres bodas de más」に出演してゴヤ賞2014新人男優賞にノミネート、同監督の『SPY TIMEスパイ・タイム』にも出演しています。人気TVシリーズ、コメディ「Mira lo que has hecho」(2018~20、25分、全18話)の成功以来、久しぶりに主役で戻ってきて、今回初めてホラーのジャンルに挑戦します。シリーズでロメロのパートナー役を演じ数々の受賞歴のあるエバ・ウガルテが共演しています。
*『SPY TIME スパイ・タイム』の作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィーの紹介をしています。コチラ⇒2016年02月02日

(エバ・ウガルテとベルト・ロメロを配した「Mira lo que has hecho」のポスター)
*他にエストラーダ博士役に、ゴヤ賞ガラの総合司会を夫人のシルビア・アブリルと2年連続(2019・2020)で成功させた、コメディアンのアンドレウ・ブエナフエンテが扮します。両人はホセ・ルイス・クエルダの遺作となってしまったSFコメディ「Tiempo después」(18)の共演や、お茶の間の人気トークショー「Nadie sabe nada」(2022~23)で二人揃って舌戦を繰り広げています。

(「Nadie sabe nada」のブエナフエンテとロメロ)
*新作は映画データバンクIMDbでは「エピソード8」となっていますが、本祭のメイン紹介記事や各紙誌によって「6話」を採用しています。ベロドロモ部門で何話上映されるかもアップされていません。
オリソンテス・ラティノス部門2作発表*サンセバスチャン映画祭2023 ⑤ ― 2023年07月21日 15:22
オリソンテス・ラティノス部門――散発的なノミネート発表

★去る7月14日、製作国にスペインが参加している映画14作が発表になり、うちオリソンテス・ラティノス部門にはスペインとの合作であるアルゼンチン映画2作が含まれていました。例年ですと8月初めに一挙に全作が発表になるのですが、今年は散発的です。とりあえず発表順にアップしておきます。ホライズンズ・ラティノスを今回からオリソンテス・ラティノスとスペイン語読みに変更します。
*オリソンテス・ラティノス部門 ①*
1)Blondi(アルゼンチン=スペイン=米国)2023年、スペイン語、88分
2023年4月、BAFICI(ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭)でプレミアされ、アルゼンチンでは6月1日に公開されています。
監督:ドロレス・フォンシ(ブエノスアイレス1978)は、女優としてたびたびサンセバスチャン映画祭に参加していますが、今回はデビュー作「Blondi」の監督として訪れることになります。監督だけでなく脚本、製作、出演とエネルギーを爆発させています。フォンシの監督デビューには誰も驚かないはずです。10代で母親になった女性とその息子の特殊な関係が描かれ、母親ブロンディをフォンシ自身が演じます。夫君サンティアゴ・ミトレ監督がプロデューサーの一人として参加しています。リタ・コルテセやレオナルド・スバラリアなど、アルゼンチン映画ではお馴染みさんが共演しています。

★本祭との関りは、セクション・オフィシアルにファビアン・ヒエリンスキーの「El aura」(05)、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(15)、クラウディア・リョサのサイコスリラー「Distansia de rescate」(21『悪夢は苛む』Netflix)、オリソンテス・ラティノス部門にはサンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』(15)と『サミット』(17)などに出演しています。当ブログでは以下にキャリア&フィルモグラフィをアップしています。
*『パウリーナ』の紹介記事は、コチラ⇒2015年05月21日
*『サミット』の紹介記事は、コチラ⇒2017年10月25日/同年05月18日
*『しあわせな人生の選択』の紹介記事は、2016年01月09日/コチラ⇒2017年08月04日
*『悪夢は苛む』の紹介記事は、コチラ⇒2021年07月28日/同年11月03日
キャスト:ドロレス・フォンシ(ブロンディ)、カルラ・ペターソン(マルティナ)、リタ・コルテセ(ぺパ)、トト・ロビト(ミルコ)、レオナルド・スバラリア(エドゥアルド)、他多数
ストーリー:ブロンディとミルコは親友同士である。彼らは一緒にいるのが楽しい、同じ音楽を聴き、同じ映画を観て、二人ともマリファナが好きで、リサイタルも一緒に行き、互いの友人も同じ、すべてがパーフェクトである。ただほとんど同年代に見えますが、ブロンディはミルコの母親だということです。

(ミルコ役のトト・ロビトと)

(ぺパ役のリタ・コルテセと)
2)El castillo / The Castle(アルゼンチン=フランス=スペイン)2023年
ドキュメンタリー、スペイン語、78分 WIP Latam & Egeda Platino
監督:マルティン・ベンチモル(ブエノスアイレス1985)は、ドキュメンタリー監督、脚本家、撮影監督。本作はベルリン映画祭2023パノラマ部門観客賞ノミネート、香港FFヤングシネマ部門監督賞を受賞、グアダラハラFFで撮影監督のニコ・ミランダがドキュメンタリー撮影賞を受賞、ほかイスラエルの DocAviv 映画祭、テッサロニキ・ドキュメンタリーFF、カルタヘナFFなどに出品されている。製作者マイラ・ボテロ、共同製作者ハイディ・フライシャー、フリア・パラティアン。


(左から、ニコ・ミランダ、ベンチモル監督、ハイディ・フライシャー、
フリア・パラティアン、ベルリン映画祭2023、2月19日フォトコール)
★2017年、パブロ・アパロと共同監督したドキュメンタリー・ミステリー「El espanto」(65分)は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭の中編ドキュメンタリー賞を受賞しているほか、ラスパルマスFF、ドキュメント・バルセロナTV3賞にノミネートされている。2012年にパブロ・アパロと監督した「La gente del río」は、150人しか住んでいない川沿いのエルネスティナ村が舞台。住民は村を訪れる人々が川を楽しむだけでなく、破壊行為で汚していると訴えます。BAFICI 2013 で上映された。
出演者:フスティナ・オリボ、アレクア・カミノス・オリボ
解説:フスティナは人生のすべてを家政婦として働いてきた。彼女はアルゼンチンのパンパの奥深くに建つ大邸宅を、元の雇用主から生涯にわたる献身が報われて相続しました。条件は唯一つ、決して売ってはならないということだった。


(相続した大邸宅でくつろぐフスティナ・オリボ、アレクサ・カミノス・オリボ)

(マルティン・ベンチモル、ドロレス・フォンシ)
アウト・オブ・コンペティション2作*サンセバスチャン映画祭2023 ④ ― 2023年07月19日 17:19
ロス・ハビスのTVシリーズと特別上映のトゥルエバ&マリスカルの新作

(ロス・ハビスのTVシリーズ「La mesías」から)
★コンペ外の2作、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ(マドリード1984)とハビエル・カルボ(ムルシア1991)のスリラー「La mesías」は7話からなるTVシリーズ、アウト・オブ・コンペティションだが2人がセクション・オフィシアルに参加するのは初めてである。舞台演出家でもあるロス・ハビスは『パキータ・サラス』(16)、「Veneno」(20)、「Caldo」(21)などのTVシリーズを成功させている。長編映画デビュー作「La llamada / Hoiy Camp」(17)は、『ホーリー・キャンプ!』の邦題でラテンビートFFで上映されている。出演者は『ブラック・ブレッド』の好演が記憶に残るロジェール・カザマジョール、アンブロッシ監督の実妹でもある『ブランカニエベス』や『ホーリー・キャンプ!』のマカレナ・ガルシア、『海を飛ぶ夢』のロラ・ドゥエニャス、カメレオン女優のカルメン・マチ、ほかアナ・ルハス、アルベルト・プラ、アマイアなど豪華キャストがクレジットされている。
*『ホーリー・キャンプ!』の作品&監督紹介は、コチラ⇒2017年10月07日

(ハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボ)

★フェルナンド・トゥルエバ(マドリード1955)とハビエル・マリスカル(バレンシア1950)のアニメーション「They Shot the Piano Player」(Dispararon al pianista)もセクション・オフィシアルのコンペ外である特別上映作品です。コンビは音楽アニメーション「Chico & Rita」(10)でタッグを組み、ラテンビート2011で『チコとリタ』として上映された。オスカー賞にノミネートされ、ゴヤ賞2011では長編アニメーション賞を受賞している。マリスカルはバルセロナ・オリンピックのマスコットでも知られているアーティスト。トゥルエバは新作について「この映画は、70年代に軍事クーデタで不当に命を奪われた天才の人生を、15年間にわたって調査したもである」と語っている。

(久々にタッグを組んだ「They Shot the Piano Player」から)

(フェルナンド・トルゥエバとハビエル・マリスカル)
★新作「They Shot the Piano Player」英語、2023
製作:Fernando Trueba Producciones Cinematograficas / Les Films d’Ici / Lola Films / Gao Shan Pictures
配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス、フランスはSophie Dulac Distribution
製作者:クリスティナ・ウエテ、セルジュ・ラルー、ウンベルト・サンタナ
ナレーション:ジェフ・ゴールドブラム
製作国:スペイン、フランス、オランダ、ペルー、ポルトガル
解説:ブラジルのミュージシャン、ボサノバの音楽運動を推進した天才ピアニスト、テノリオ・ジュニオール(リオデジャネイロ1941~ブエノスアイレス1976、享年34歳)の謎の失踪の背後にある真実を追求しようと旅に出るニューヨークの音楽ジャーナリストの物語。ラテンアメリカ諸国が軍事政権に飲み込まれる直前の60~70年代を背景に、歴史の転換点にあるラテアメリカの創造的自由がはじける束の間の時間をとらえている。1976年、トキーニョとヴィニシウス・デ・モラエスと一緒にブラジルからアルゼンチンに演奏に出掛けたきり姿を消したフランシスコ・テノリオ・ジュニオールの失踪事件にインスパイアされている。

(フランシスコ・テノリオ・ジュニオール)
出演者:ナレーターは俳優でミュージシャンのジェフ・ゴールドブラム(ピッツバーグ1952)、他ブラジルのミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、パウロ・モウラ、トキーニョ、ヴィニシウス・デ・モラエス、ジョアン・ドナート(2023年7月17日没)、ビル・エヴァンス(米国、1980年没)、ベボ・バルデス(キューバ、2013年没)、など。

(左ジェフ・ゴールドブラム)



スペイン映画14作ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2023 ③ ― 2023年07月17日 16:04
コンペティション部門にイサベル・コイシェの新作がノミネート

(スペイン映画14作が一挙に発表になった)
★7月14日マドリード発、スペイン映画アカデミーはスペイン製作の映画を中心に、セクション・オフィシアル(3作)、アウト・オブ・コンペティション(1作)、特別上映(1作)、ニューディレクターズ(1作)、ベロドロモ(2作)、オリソンテス・ラティノス(2作)、サバルテギ-タバカレラ(4作)の各部門合計14作を発表いたしました。今回はセクション・オフィシアルにノミネートされ金貝賞を競う、イサベル・コイシェ、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラの3女性監督の新作をアップします。特別上映枠にフェルナンド・トゥルエバ&ハビエル・マリスカルのコンビがアニメーション映画「They Shot The Piano Player」(Dispararon al pianista)で久々に登場します。いずれご紹介したい。
◎第71回SSIFF セクション・オフィシアル② ◎
8)O Corno / The Rye Horn (スペイン=ポルトガル=ベルギー)長編2作目
ガリシア語、ポルトガル語、103分
*イクスミラ・ベリアク 2020
監督:ハイオネ・カンボルダJaione Camborda(サンセバスティアン1983)は監督、脚本家、アートディレクター。映画はプラハとミュンヘンの映画学校で学んだ。長編デビュー作「Arima」は、セビーリャ・ヨーロッパFF2019「新しい波」セクションの監督賞受賞、ほかヒホン映画祭の受賞を経て、SSIFF 2020メイド・イン・スペインで上映されている。2作目でコンペティション部門に選出されるのは幸運です。本作はガリシア語で金貝賞を目指す最初の作品です。イクスミラ・ベリアクのプロジェクトに参加して完成させた。怖ろしい事件に巻き込まれ、島から逃亡せざるをえなかった女性マリアの人生が描かれる。ガリシアのポンテベドラのアロウサで撮影された。撮影監督は『サマ』など国際的に活躍するルイ・ポカスが手掛けている。
キャスト:ジャネット・ノバス(マリア)、シオバンSiobhan・フェルナンデス、カルラ・リバス、ダニエラ・エルナン・マルチャン、マリア・ラド、フリア・ゴメス、ホセ・ナバロ、ヌリア・レステガス、ディエゴ・アニド
ストーリー:1971年アロウサ島、マリアはエビやカニなどの海産物を採って生計を立てている。また他の女性のお産を手助けするなど、島では献身的な女性として知られた存在でした。しかし予期せぬ出来事により島を脱出しなければならなくなり、生き残りを賭けた危険な旅をすることになる。マリアは自由を求めて、ガリシアとポルトガル間の密航ルートに沿って国境を越えようと決心する。ガリシア語で撮られた映画のノミネート1作目となります。
*「Arima」の作品紹介は、コチラ⇒2020年09月12日

9)El sueño de la sultana / Sultana’s Dream(スペイン=ドイツ)SFアニ、85分
監督:イサベル・エルゲラ(サンセバスティアン1961)は、視覚アーティスト、製作者、アニメーションの監督。本作は長編アニメーションのデビュー作、1905年、ベンガル出身のイスラム教徒でフェミニストの作家、社会改革者であったロケヤ・ホセインRokeya Hossain(1880~1932)のSF小説、英語で出版された。当時女性が英語を学ぶことは不適切とされていたが、夫の理解を得て学んだ。女性が統治しているユートピア「レディランド」をベースにしている。短編アニメーション「La gallina ciega」がゴヤ賞2007短編アニメーション部門にノミネートされている。他「Kutxa beltza」(16)、「Amore d'inverno」(15)、「Bajo la almohada」(12)、「Ámár」(10)などを撮っている。
ストーリー:〈スルタン王妃の夢〉は、1905年インドのベンガル地方で書かれたSF小説にインスパイアされて製作された。女性たちがすべてを統治管理しているフェミニストの理想郷レディランドが舞台。男性は隔離されている。ユートピアでは「男性は強くて頭がいい、女性は弱くて愚か」という固定観念が壊れるというジェンダー逆転が生まれている。

10)Un amor(スペイン)スペイン語、ドラマ、140分
監督:イサベル・コイシェ(バルセロナ1960)、セクション・オフィシアル初参加となる本作は、サラ・メサのベストセラー小説 ”Un amor” (2020年刊)の映画化、ライア・コスタが主役ナタリアに扮する。脇を固めるホヴィク・ケウチケリアン、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホなど演技派を揃えている。本祭との関りでいうと、1988年ニューディレクターズ部門に「Demaciado viejo para morir joven」がノミネートされている。またドキュメンタリー「El techo amarillo」がセクション・オフィシアルで特別上映され、RTVE「ある視点」賞、ドゥニア・アジャソ賞スペシャル・メンションを受賞している。翌年のゴヤ賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた。
キャスト:ライア・コスタ(ナット/ナタリア)、ホヴィク・ケウチケリアン(アンドレアス)、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホ、イングリッド・ガルシア≂ヨンソン、フランチェスコ・カリル
ストーリー:都会での息苦しい生活を逃れ、30代のナットはスペインの奥地に典型的な小さな村ラ・エスカパに避難所を見つけます。素朴な廃屋でナットは再び人生を立て直そうと決意します。家主は歓迎のしるしとして、飼いならしていない犬を連れてくる。やがて家主との対立や村民の不信感に直面して、隣人アンドレアスの不穏な性的提案を受け入れて、自分自身を驚かせることになる。この奇妙で矛盾をはらんだ出会いから、貪欲で強迫的な情熱が芽生えてくる。ナットは今まで彼女が自分だと思っていた女性は、本当の自分なのだろうか、実存への疑念と性的役割の破壊力を探求する。
◎本作については、別途作品紹介を予定しています。


(左から、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラ、イサベル・コイシェ)
コンペティション部門ノミネート7作品*サンセバスチャン映画祭2023 ② ― 2023年07月15日 18:01
セクション・オフィシアルのノミネート7作品発表

★7月7日、第71回サンセバスチャン映画祭SSIFF 2023セクション・オフィシアル(コンペティション部門)の7作品のノミネート発表がありました。例年16~20作くらいですから3分の1だけ、全体像が分かるまでには少し時間がかかりそうです。7作のなかにスペイン映画は含まれておりません。スペイン語映画としてはアルゼンチンの2作が選ばれています。昨年は最初にスペイン映画4作が発表になりましたが、今年は様子が違うようです。以下に公式サイトの発表順に、製作国、タイトル、監督名、キャスト、ストーリーなどを簡単に列挙しておきます。
◎第71回 SSIFF セクション・オフィシアル◎
1) All Dirt Roads Taste of Salt(米国)英語、97分
*イクスミラ・ベリアク2019
監督:レイブン ・ジャクソン(米、テネシー1990)は、監督、詩人、写真家、製作者。長編デビュー作だが本祭との関係は深く、2018年のネスト部門に短編「Nettles」(仮題「イラクサ」24分、タコマFF審査員賞)が出品されている。ほかノミネート作はイクスミラ・ベリアク・プログラムで掘り下げ完成させている。サンダンスFF2023のUSドラマ・コンペに正式出品された。ミシシッピで暮らす一人の女性の人生がリリックに語られる。
キャスト:チャーリン・マクルーア、ジャヤ・ヘンリー、レジナルド・ヘルムズ・ジュニア、クリス・チョーク、シーラ・アテム、他多数
ストーリー:数十年にわたるミシシッピ州で暮らす黒人女性の人生を探求する物語。私たちを形作った何世代もの人々、場所、そして言葉では言い表せない瞬間への賛歌です。セリフは殆どなく、美しいビジュアル、視覚的なストーリーテリングが監督の才能を際立たせている。

2) Ex-Husbands (米国)英語、コメディ、98分
監督:ノア・プリツカー(米、サンフランシスコ1986)は監督、作家。長編第2作目、2015年「Quitters」でデビュー、本祭参加は初めてとなる。新作は同じ家族ながらさまざまな登場人物たちのセンチメンタルな変転が語られる。主役グリフィン・ダン以下芸達者が共演する。
キャスト:グリフィン・ダン、マイルズ・ハイザー、ジェームズ・ノートン、エイサ・デイビス、ロザンナ・アークエット
ストーリー:ピーターの両親は65年間暮らした後に離婚した。彼の妻は35年後に去り、息子のニックとミッキーはそれぞれ自分の人生を送っている。ピーターがトゥルムに飛んで、ミッキーがお膳立てしたるニックの独身さよならパーティをぶち壊したとき、危機に瀕しているのは自分だけでないことに気づきます。

3) La práctica / The Practice(アルゼンチン=チリ=ポルトガル)
スペイン語、コメディ、90分
監督:マルティン・ライトマンRejtman(アルゼンチン、ブエノスアイレス1961)は監督、脚本家、作家、製作者。セクション・オフィシアルのノミネートは初めてだが、1999年「Silvia Prieto」(メイド・イン・スペイン)、オリソンテス・ラティノス部門に「Los guantes mágicos」(04)、「Dos disparos / Two Shots Fired」(14)、2019年にはネスト部門の審査委員長を務めた。最新ニュースとしては、SSIFF 2020でドキュメンタリー「El repartidor está en camino / Riders」を発表、ヨーロッパ-アメリカラテンの共同製作開発賞Eurimages を受賞した。夫婦の危機にあるエステバン・ビリャルディ扮するヨガ教師が主人公。「ヨガの世界についてのコメディです。ヨガを始めてから20年以上経ち、無意識のうちにこの映画を撮る準備してきた」と監督。
キャスト:エステバン・ビリャルディ(グスタボ)、ミルタ・ブスネリ(バネサ)、マヌエラ・オジャルスン、カミラHirane、ガブリエル・カニャス
ストーリー:グスタボとバネサは離婚したが、協力してプロジェクトを見直さなければならない。二人ともヨガ教師で、グスタボはアルゼンチン人でバネサはチリ人である。バネサは二人で共有していたスタジオに残り、グスタボは家無し子になった。グスタボは溜めこんだストレスによって膝を負傷し、ヨガを諦める。まず最初に大腿四頭筋を鍛え、その後ジムに行く。彼の人生は少しずつ軌道に乗り、再び練習に戻れるようになる。
◎別途に監督キャリア&フィルモグラフィ紹介を予定しています。

4) Lile rouge / Red Island / La isla roja (フランス=ベルギー)仏語、116分
監督:ロバン・カンピヨ(モロッコ、モハメディア1962)は、モロッコ系フランスの監督、脚本家、フィルム編集者。コンペティション部門ノミネートは初めてである。本作はマダガスカルのフランス領植民地を舞台にしている。2004年『奇跡の朝』で監督デビュー、『イースタンボーイズ』(ベネチアFF2013、オリゾンティ部門作品賞受賞)、『BPMビート・パー・ミニット』はカンヌFF2017グランプリ、国際批評家連盟賞、SSIFFのペルラク部門で上映されセバスチャン賞などを受賞した。ローラン・カンテの『南へ向かう女たち』(05)、カンヌFF2008でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』(セザール賞脚色賞)や「Foxfire」(12、『フォックスファイア 少女たちの告白』)の共同脚本家でもある。
キャスト:ナディア・テレスツィエンキーヴィツ(コレット・ロペス)、キム・グティエレス(ロベール・ロペス)、チャーリー・ヴォゼル(トマス・ロペス)、ソフィー・ギルマン、デビッド・セレロ、他
ストーリー:1970年代初頭のマダガスカルに我々は誘いだされる。フランスが統治していた植民地の一つでは、フランスの軍事基地に駐留する家族たちが植民地主義の最後のあがきを送っていた。トマスは10歳、冒険コミックの怖れを知らないヒロイン〈ファントメット〉の影響を受けた好奇心旺盛な少年である。一方、彼の視線は徐々に世界のもう一つの現実に開かれて始めていた。

5) MMXX (ルーマニア=モルドバ共和国=フランス)ルーマニア語、コメディ、160分
監督:クリスティ・プイウ(ルーマニア、ブカレスト1967)は、監督、脚本家、俳優。カンヌFFやカルロヴィ・ヴァリFFに出品されている。ルーマニア医療の現実を切りとった2作目『ラザレスク氏の最期』(05)、本祭との関りでは2016年ペルラク部門に『シエラネバダ』を出品している。2020年『荘園の貴族たち』は、ベルリンFFに新設されたエンカウンターズ部門に選出され監督賞を受賞した。
キャスト:ビアンカ・ククリチ、ローレンティウ・ボンダレンコ、イゴール・バビアック、オティリア・パナイテ、ドリアン・ボグタ、ドラゴス・ブクル、ロクサナ・オグレンディル、他
ストーリー:若いセラピストのオアナ・フィファーは、患者の質問に少しずつ悶着を起こし始めている。オアナの弟ミハイ・ドゥミトルは誕生日の準備にとらわれ、オアナの夫セプティミウは新型コロナ汚染に怯え、組織犯罪検査官のナルシス・パトラネスクは一人の同僚の死に動揺しています。歴史の岐路に立ち往生している人々の放浪をとらえた瞬間を描いています。

6) Puan (アルゼンチン=イタリア=ドイツ=フランス=ブラジル)スペイン語、107分
*イクスミラ・ベリアク2022
監督:マリア・アルチェ(ブエノスアイレス1983)
ベンハミン・ナイシュタット(ブエノスアイレス、1986)
マリア・アルチェは、SSIFF 2018オリソンテス・ラティノス部門にデビュー作「Familia sumergida / A Famiiy Submerged」がノミネートされ作品賞を受賞しました。一方ベンハミン・ナイシュタットは、同年「Rojo」がセクション・オフィシアルにノミネート、監督賞(銀貝)を受賞しているほか、主役のダリオ・グランディネッティが男優賞(銀貝)、ペドロ・ソテロが撮影賞を受賞するなどした。デビュー作「Historia del miedo / History of Fear」は、2014年オリソンテス・ラティノス部門にが選出されており、両作とも簡単な作品紹介をしています。ベルリンやロカルノ映画祭に参加している。
*「Rojo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月16日
*「Historia del miedo」の作品&監督キャリア紹介は、コチラ⇒2014年02月24日
キャスト:マルセロ・スビオット(マルセロ)、レオナルド・スバラリア(ラファエル)、フリエタ・ジルベルベルグ、アレハンドラ・フレッチェネル、マラ・ベステリ、アンドレア・フリヘリオ
ストーリー:「プアン」として知られるブエノスアイレス大学のユニークな哲学部を舞台にした物語。マルセロはブエノスアイレス大学で哲学を教えています。彼の指導教師のカセリ教授が突然亡くなり、マルセロは空席になった学部長の椅子を引き継ぐことを受け入れます。予想しなかったことは、カリスマ的で魅力的な同僚であるラファエル・スジャーチュクがこの学部長席を奪おうとヨーロッパの大学から戻ってくることでした。二人が学部長職をめぐって闘うはめになり、マルセロの人生もアルゼンチンもカオスになるでしょう。混乱はアルゼンチンのアイデンティティの基本です。

7) Un silence / A Silence (ベルギー=フランス=ルクセンブルク)仏語、100分
監督:ヨハヒム・ラフォセ(ベルギー、イクル1975)は、SSIFF 2015のセクション・オフィシアルに「Les chevaliers blancs / The White Knights」がノミネート、監督賞(銀貝)を受賞している。8年ぶりに本作で戻って来ました。本祭との関りはペルラク部門に「L’economie du couple / After Love」(16)、「Les intranquilles / The Restless」(21)が出品されている。
キャスト:ダニエル・オートゥイユ、エマニュエル・デヴォス、マチュー・ガルー、サロメ・ドゥワエルズ、ラリッサ・フェイバー、デニス・シモネッタ、他
ストーリー:著名な弁護士の妻アストリッドは25年間沈黙したままだった。彼女の子供たちが正義を求め始めたとき、家族の安定に突然亀裂が生じます。


(左から、マリア・アルチェ、ベンハミン・ナイシュタット、
ロビン・カンピヨ、レイブン ジャクソン)

(左から、ヨアヒム・ラフォセ、ノア・プリツカー、
クリスティ・プイウ、マルティン・ライトマン)
最近のコメント