第13回フェロス賞2026授賞式*落穂ひろいフォト集2026年02月03日 17:06

 

       

            (ガラを締めくくった総合司会者4名)

 

★選考母体が異なるのに作品賞はフォルケ賞と同じアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Los domingos」が受賞、主演女優賞にパトリシア・ロペス・アルナイス、主演男優賞にホセ・ラモン・ソロイス、TVシリーズ部門の主演女優賞にエスペランサ・ペドレニョ(どちらにも欠席)、主演男優賞にハビエル・カマラという同じ結果に終わりました。ゴヤ賞にはTV部門がありませんが、大方の流れは決まったように感じました。ただゴヤ賞はアカデミー会員の投票結果、年々若い会員が増加傾向にあるようで、プロモーション次第で変わるかもしれません。

 

★落穂ひろいとして、ノミネートされながら手ぶらの帰宅を余儀なくされたクルーのうち、認知度のある女優さんを中心にフォト集を作成してみました。主演男優賞にノミネートされながらマリオ・カサス、アルベルト・サン・フアンの二人は不参加でした。

   


       (招待客、エレガントと高評価のヨランダ・ディアス第2副首相

 

    

 (ジャーナリスト兼テレビ司会者エレナ・サンチェス、フェロス栄誉賞プレゼンター)

          

    

          (アンヘラ・セルバンテス、「La furia」主演女優賞ノミネート)

 

  

        (ノラ・ナバス、「Mi amiga Eva」主演女優賞ノミネート)

 

   

  (ベストドレッサー、新人ブランカ・ソロア、「Los domingos」主演女優賞ノミネート)

 

  

    (ポルトガルの女優マリア・デ・メデイロス、「Una quinta portuguesa

     助演女優賞ノミネート)

 

  

   (ベストドレッサー、ナタリア・デ・モリーナ、TVシリーズ助演女優賞ノミネート)

 


    (レオノール・ワトリング、「La vida breve」同上助演女優賞ノミネート)

          

  

  (ベストドレッサー、イングリッド・ガルシア=ヨンソン、同上主演女優賞ノミネート)

          

   

       (カルラ・キレス、同上「Yakarta」主演女優賞ノミネート)

 

     

        (脚本賞プレゼンター、脚本家のエドゥアルド・ソラ

    


           (カルラ・シモン、監督賞ノミネート)

 


        (ミリアム・ガルロ、「Sorda」主演女優賞ノミネート)

 


        (どこにいても目立ったポップシンガーのユレナ)

 


 (右端エドゥアルド・カサノバ監督、TVシリーズ「Silencio感動賞ノミネート

 


         (ベストドレッサー、レティシア・ドレラ)

 


          (ベストドレッサー、ミレナ・スミット)

 

  

          (ベストドレッサー、マリア・レオン)

 

 

         (ベストドレッサー、ヴィッキー・ルエンゴ)

 


          (ベストドレッサー、ミリアム・ガジェゴ)

 


         (ベストドレッサー、ミレイア・オリオル)

  


     (主演男優賞プレゼンターのマルタ・コスタとマリア・カストロ)

 

                 

             (女優マリア・カストロ)

    


              (女優マルタ・コスタ)


マヌエル・ゴメス・ペレイラのコメディ「La cena」*ゴヤ賞2026 ⑤2026年02月09日 18:41

        ゴヤ賞作品賞を含む8カテゴリーにノミネートされたLa cena

   

  

 

★フォルケ賞(アルベルト・サン・フアン男優賞ノミネート)に続いて、フェロス賞(コメディ部門の作品賞受賞)でも気を吐いたマヌエル・ゴメス・ペレイラLa cena / The Dinner」は、スペイン内戦終結後をバックにフランコ派、反フランコ派入り乱れ、フランコ将軍やヒトラー総統も登場するブラックコメディ。本作はホセ・ルイス・アロンソ・デ・サントスの戯曲 La cena de los generales2008年刊)が原作。キャスト陣はアルベルト・サン・フアン、マリオ・カサス、アシエル・エチェアンディア、エルビラ・ミンゲス、アントニオ・レシネスなど芸達者なベテラン勢がクレジットされている。ゴヤ賞ノミネートは作品賞、脚色賞を含む8カテゴリー、以下太字がゴヤ賞にノミネートされている。

 

★評価はおしなべて高く、映画データベースは10点満点の7点、エル・パイスのハビエル・オカーニャは「記憶の必要性、尊厳の価値、自由の理想の高貴さ、悲劇中の悲劇、ユーモアを巧みに結びつけている」とポジティブに評価しています。敵対する登場人物の常套句に注意をはらって、異なった視点で現代史を語るインテレクチュアルなブラック・コメディ。

  

       

       (二人の主役、マリオ・カサスとアルベルト・サン・フアン)

  

 

 「La cena / The Dinner2025

製作: La Terraza / Turanga Films / Entre Medina y Genaro / Halley Production / Sideral Cinema / ICO / ICAA / Movistar Plus+ / Crea SGR / RTVE

監督:マヌエル・ゴメス・ペレイラの

脚本:ホアキン・オリストレルヨランダ・ガルシア・セラノ

     マヌエル・ゴメス・ペレイラ

原作:ホセ・ルイス・アロンソ・デ・サントスの戯曲 La cena de los generales

撮影:アイトル・マンチョラ

音楽:アンヌ・ソフィー・Versnaeyen   

   (オリジナル歌曲賞ビクトル・マヌエルY mientras tanto)

編集:ヴァネッサ・マリムベルトMarimbert

美術:コルド・バジェス

プロダクションデザイン:マリア・ヘスス・タラソナ

衣装デザイン:エレナ・サンチス

メイク&ヘアー:アンパロ・サンチェス、アネ・マルティネス、他

製作者:クリストバル・ガルシアリナ・バデネスロベルト・ブトラゲーニョ

  (エグゼクティブ)アナ・カマチョ、ラウラ・カストロ・オテロ、他

  

データ:製作国スペイン=フランス、2025年、スペイン語、ブラック・コメディ、106分、撮影地マドリードのホテル・プラサ、エル・エスコリアのホテル・ミランダ & スイス、バレンシア市、カナリア諸島ラス・パルマス、配給元ア・コントラコリエンテ・フィルムズ(スペイン)、フィルム・ファクトリー・エンターテインメント(ワールド)、公開スペイン、アンドラ公国1017日、イタリア20260409日、興行収入2025年末370万ユーロ、ワールド447万ユーロ

 

映画祭・映画賞:第73回サンセバスチャン映画祭2025 RTVE 部門上映(924日)、第40回バレンシア映画祭オープニング作品、第31回フォルケ賞2025主演男優賞ノミネート(アルベルト・サン・フアン)、第8回ロラ・ガオス賞助演女優賞(グロリア・マルチ)、プロダクションデザイン賞(マリア・ヘスス・タラソナ)受賞、第13回フェロス賞2026コメディ賞受賞、以下主演男優・助演女優・助演男優・予告編賞ノミネート、シネマ・ライターズ・サークル賞脚本・主演男優・助演女優賞にノミネート(結果発表223日)、ゴヤ賞は上記の通り。

    

  

       (マドリード公開のイベントに参加したクルー、2025年10月13日)

 

ストーリー:スペイン内戦終結からわずか2週間後の1939415日、負傷者の臨時病院として営業していたマドリードの高級ホテルであるパレスホテルに或るミッションを受けたメディナ中尉が到着する。フランコ将軍が武力勝利を祝う夕食会の開催を要請したからです。さっそく中尉はウェイター頭のヘナロに宴会の準備を命じます。当時マドリードにはフランコ派の料理人がいないという噂から、ヘナロは処刑寸前の反フランコ派の料理人たちの解放を求めます。将軍以下招待客は知りません、何を知らないかというと、夕食会の料理が国外逃亡の最後のチャンスを窺う反フランコ派の料理人によって準備されていることです。内戦の疵を抱えた人々が入り乱れての騙し合いが始まります。

   

     

           (おしっこ入りスープにご満悦なフランコ将軍)

  

キャスト

マリオ・カサス(サンティアゴ・メディナ中尉)

アルベルト・サン・フアン(ヘッド・ウェイターのヘナロ・パラソン)主演男優賞ノミネート

ノラ・エルナンデス(看護師マリア)新人女優賞ノミネート

アシエル・エチェアンディア(ファランヘ党のホセ・ルイス・アロンソ、サイコパス)

オスカル・ラサルテ(ソムリエのアンヘル、マリアのパートナー)

マルティン・パエス(ガリシアの将校チャペロ)

エルビラ・ミンゲス(労働組合リーダーの料理人フアナ、アンヘルの母)助演女優賞ノミネート

カルロス・セラノ(ファッシストのウェイター、エル・ルビオ)

カルメン・バラゲ(アルコール依存症のフローラ)

アントニオ・レシネス(反フランコの料理人アントン)

エバ・ウガルテ(メディナ中尉の妻ルチ)

ハビ・フランセス(フランシスコ・フランコ将軍)

グロリア・マルチ(フランコ将軍の妻カルメン・ポロ)

トニ・アグスティ(料理人エピ・ファニオ)

フェラン・ガデア(ブラス)、エレアサル・オルティス(ナンド)、ラファエル・バルス(アロンソの部下)、ダビ・ディアス(ヒットラー総統)他多数

   

    

 (アルベルト・サン・フアン、マリア役のノラ・エルナンデス、マリオ・カサス)

   

 

   (スペイン脱出を目論むソムリエ役のオスカル・ラサルテと料理人たち)

   

  

   (マリア、料理人フアナ役のエルビラ・ミンゲス、オスカル・ラサルテ)

   

 

     (ファランヘ党員アロンソ役のアシエル・エチェアンディア右)

 

監督紹介:マヌエル・ゴメス・ペレイラ、195812月マドリード生れ、監督、脚本家、製作者。代表作として1995年の「Boca a boca」(監督・脚本)、ゴヤ賞1996作品・監督・脚本賞ノミネート、ハビエル・バルデムが主演男優賞受賞の他、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、オンダス賞などを受賞して知名度を挙げた作品。共演者にアイタナ・サンチェス=ヒホン、マリア・ブランコなど。邦題『電話でアモーレ』で公開された。

  

★スター・キャスト出演のロマンティック・コメディ「El amor perjudica seriamente la salud / Love Can Seriously Damege Your Health」(『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』)は、60年代にスペインを訪問したジョン・レノンのイベントに偶然出会った二人の若者(ペネロペ・クルスとガビノ・ディエゴ)が恋に落ち、別れ、また出会う風変わりな30年間を描いている。歌手で女優のアナ・ベレン、フアンホ・プイグコルベ、当時の豪華キャストが出演、コメディで2時間は長すぎるが型破りのロマンティック・コメディだった。

 

1999年、「Entre las piernas」がベルリン映画祭に正式出品、プチョン・ファンタスティック映画祭でシチズン・チョイス賞を受賞、カルメロ・ゴメスがトゥリア主演男優賞を受賞、翌年『スカートの奥で』の邦題で2000年ビデオが発売された。出演者はゴメスのほか、ビクトリア・アブリル、ハビエル・バルデム、フアン・ディエゴ、新作主役のアルベルト・サン・フアンも共演している。

 

2005年の「Reinas / Queens」は、ゲイ・カップルの共同結婚式を題材にした娯楽作。息子たちの母親役に、アルモドバル学校のミューズを含むベテラン5人、マリサ・パレデス、カルメン・マウラ、ベロニカ・フォルケ、メルセデス・サンピエトロ、ベティアナ・ブルムを起用、そのゲイの息子たちに当時の売れっ子を集合させ、クレジット欄には度肝を抜く。直近10年はTVシリーズにシフトしており、Netflixなどで配信されているものもある。

   

  

            (新作撮影中のゴメス・ペレイラ)

   

主なフィルモグラフィー

1994Todos los hombres sois iguales / All Men Are the Same(コメディ、監督・脚本)

  ゴヤ賞1995オリジナル脚本賞受賞、ペニスコラ・コメディFF1994作品・監督賞受賞

1995Boca a boca」『電話でアモーレ』(コメディ、199711月公開)

1996El amor perjudica seriamente la salud」『ペネロペ・クルスの抱きしめたい!』

  (コメディ、監督・脚本・製作)

1999Entre las piernas」『スカートの奥で』(ミステリー・ロマンス、監督・脚本・製作)

2005Reinas / Queens」『クイーンズ』(コメディ、監督・脚本)

2008El juego del ahorcado」『ザ・レイプ 秘密』(ドラマ、監督・脚本、DVD

   ゴヤ賞2009新人男優賞(アルバロ・セルバンテス)ノミネート

2014La ignorancia de la sangre」(スリラー、監督)

   スペイン俳優組合助演男優賞(アルベルト・サン・フアン)ノミネート

2017Tiempos de guerra」(ドラマ、TVシリーズ13話中6話、監督)

201920Alta mar / High Seas『アルタ・マール:公海の殺人』

(犯罪ドラマ、TVシリーズ12話中4話、監督)、2019年、Netflixで配信

 

★キャスト紹介:メディナ中尉を演じたマリオ・カサス(ア・コルーニャ1986)とヘナロ・パラソン役のアルベルト・サン・フアン(マドリード1968)のキャリア&フィルモグラフィーは既に紹介しています。2人とも主演男優賞のゴヤ胸像を手にしています。

  

マリオ・カサス紹介は、コチラ20210223

アルベルト・サン・フアン紹介は、コチラ2025010820210201


ドロレス・フォンシの2作目「Belén」*ゴヤ賞2026 ➅2026年02月17日 17:57

        イベロアメリカ映画賞ノミネート――ドロレス・フォンシの「Belén

 

      

 

★アルゼンチンのドロレス・フォンシの第2作「Belén」は、サンセバスチャン映画祭2025セクション・オフィシアルでプレミア上映され、315日に開催される第98回アカデミー賞(国際長編映画賞部門)にアルゼンチン代表作品に選ばれていました。ショートノミネート15作には残りましたが、残念ながらノミネートは逃しました。ちなみにスペイン代表作品のオリベル・ラシェ Sirātは、映画賞と音響賞の2部門に踏みとどまりました。サンセバスチャン映画祭では作品紹介をしませんでしたが、ゴヤ賞イベロアメリカ映画賞にノミネートされましたので、遅ればせながらアップいたします。

   

     

 (左から、フリエタ・カルディナリ、ドロレス・フォンシ、カミラ・プラーテ、

   ラウラ・パレデス、サンセバスチャン映画祭2025フォトコール、922日)

 

★本作はおよそ10年前の2014年、アルゼンチン北西部トゥクマンで実際に起きた「乳児殺害(中絶)」の冤罪事件をベースにしています。アナ・エレナ・コレアのノンフィクション小説 Somos Belén (プラネタ社、2019年刊)を原作として、アルゼンチンで中絶法案成立に繋がった法廷での激しい対立を描いています。〈ベレン〉という名前は本名ではなく、この冤罪事件をきっかけに女性の人権運動が広がるにつれ、シンボル的に付けられた名前です。本名を明かすことは家族に危険が及ぶ可能性を考慮して、映画ではカミラ・プラーテ扮するフリエタの名前で登場します。監督自身が演じるソレダード・デサは、トゥクマン出身の実在の弁護士です。オスカー賞ノミネートのプロモーションに現地を訪れたデサ弁護士と監督は、メディアからの多くのインタビューを受けましたが、それはテーマが世界中の女性の権利闘争と共鳴しているからで、今の瞬間を象徴する映画だからです。

     

    

      (自著 Somos Belén を手にしたアナ・コレアとドロレス・フォンシ

   

       

  (インタビューを受けるデサ弁護士と彼女を演じたドロレス・フォンシ、ロサンゼルス)

 

 「Belén

製作:Amazon MGM Studios / K & S Films

監督:ドロレス・フォンシ

脚本:ラウラ・パレデス、ドロレス・フォンシ、アグスティナ・サン・マルティン、

   ニコラス・ブリトス  (原作:アナ・コレア Somos Belén 

撮影:ハビエル・フリア

編集:アンドレス・ペペ・エストラーダ

衣装デザイン:ルシア・ガスコニ

メイクアップ & ヘアー:ディノ・バランチノ、アンヘラ・ガラシハ、フロレンシア・グロッソ

プロダクションマネジメント:ニコラス・ポラストリ

製作者:レティシア・クリスティ(K & S)、マティアス・モスティリン、ウゴ・シグマン、ロドリゴ・カラ、ディエゴ・コペリョ(コペラ)、(エグゼクティブ)アルトゥール・デル・リオ(Amazon Studios

 

データ:製作国アルゼンチン、2025年、スペイン語、法廷ドラマ、105分、第98回アカデミー賞アルゼンチン代表作品(ショート15作ノミネート)、配給米アマゾンMGMスタジオ、公開アルゼンチン2025918日、プライムビデオ配信:英・米・カナダ・スウェーデン・シンガポール、ウルグアイ(シネマティカ)、視聴地域が限られ、現在日本では視聴できません。

  

映画祭・映画賞:サンセバスチャン映画祭2025セクション・オフィシアル(助演俳優賞カミラ・プラーテ、RTVE「もう一つの視点賞」スペシャル・メンション受賞)、リオデジャネイロFF、オランダのライデンFF、シカゴFF、フォルケ賞2025ラテンアメリカ映画賞受賞、ハバナFF2025音響賞、ローズ・ドール・ラティノス2025TVストリーミング賞受賞、2026年パルマ・スプリングスFF

 

キャスト:カミラ・プラーテ(ベレン/フリエタ)、ドロレス・フォンシ(弁護士ソレダード・デサ)、ラウラ・パレデス(バルバラ)、フリエタ・カルディナリ(公選弁護人ベアトリス・カマニョ)、セルヒオ・プリナ(ディエゴ)、ルイス・マチン(判事ファリア)、セサル・トロンコソ(アルフォンソ)、リリ・フアレス(マベル)、ルス・プラーテ(メチャ)、ガイア・ガリバルディ(フローラ)、マリア・マルル(クリス)、他多数

 

ストーリー2014年、アルゼンチン北部トゥクマンで流産したにも拘わらず、違法な中絶〈乳児殺害〉の罪で告発、収監されたフリエタ(通称ベレン)の実話に基づいています。本作は、彼女を救うため立ち上がった勇敢な弁護士ソレダード・デサとの激しい法廷闘争が、やがて女性の権利を求める中絶合法化の大きな社会運動へと発展していく様子が語られ、法的な壁と社会の偏見に立ち向かうため連帯した女性たちを描いています。アナ・コレアの優れたノンフィクション小説がベースになっている。

   

          

            (アナ・コレアと Somos Belén の表紙

 

★本作は弁護士視点の法廷闘争がメインと推察されますが、まだ作品が視聴できないためフリエタの流産がどうして乳児殺害になったのかという経緯がよく分かりません。トゥクマン州(州都サン・ミゲル・デ・トゥクマン)は、アルゼンチンでも家父長制的な法制度が根を張った保守的な地域といわれ、女性の地位は低い。フリエタは激しい腹痛のため救急外来に搬送され、自身が妊娠22週目で流産したことを知らされます。当時彼女は27歳で妊娠していることを知らなかったという。医療従事者はフリエタが中絶を試みた可能性を疑い、警察に通報する。フリエタは目が覚めると退院どころか手錠がはめられ収監されたという、我が耳を疑う言語道断な事件です。

 

★監督、脚本、出演のドロレス・フォンシ(ブエノスアイレス1978)の2作目となる本作は、自身が企画して制作会社を探したというわけではなかった。ベレン事件には最初からコミットしていたが、自身で撮る予定はなかったと語っている。制作会社K & S Filmsレティシア・クリスティから打診があり、引き受けたと語っている。

 

★女優としての経歴が長く、パートナーのサンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』以下クラウディア・リョサの『悪夢は苛む』までの代表作4作を当ブログで紹介しています。監督デビュー作「Blondi」は、サンセバスチャン映画祭2023オリソンテス・ラティノス部門にノミネート、アルゼンチン映画アカデミーとコンドル賞2024初監督作品賞を受賞しています。優れた法廷闘争を描いた映画にはアカデミー賞2023国際長編映画賞にノミネートされたミトレの『アルゼンチン、1985』が記憶に新しい。比較しても始まりませんが、いずれ視聴できた折には改めてアップしたい。

ドロレス・フォンシのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ20230721

『パウリーナ』は、コチラ20150521

    

     

  (デサ弁護士役ドロレス・フォンシとフリエタ役のカミラ・プラーテ、フレームから)

 

ソレダード・デサ、トゥクマン州都サン・ミゲル・デ・トゥクマン生れ、トゥクマン国立大学卒、著書に Libertad para Belén: Grito nacional がある。時代遅れの法律によって女性の健康やプライバシーが脅かされている現実と闘う弁護士の一人。地元トゥクマン裁判所の「8年の禁固刑」という深刻な不正義に驚愕して、フリエタの弁護を前任者から引き継いだ。デサは自分が闘っているのがフリエタだけでなく、時代遅れの法律によって長年苦しめられてきた全女性のためであることに気づいたという。激しい社会運動のさなか、2017年にデサ弁護士の努力の甲斐あって州最高裁判所は「禁固3年」に減刑、フリエタは釈放され、最終的には無罪を勝ち取った。デサ弁護士は「映画ベレンは、ハンディキャップで組み立てられた自由の物語ですが、それは多くの人々の頑張りと団結についての物語でもある」とコメントしている。

 

      

  (ソレダード・デサ弁護士)

 

      

              (中絶法案合法化のデモ行進)

 

アナ・エレナ・コレア、ブエノスアイレス生れ、作家、弁護士、政治的コメンテーター、活動家、フェミニスト、Somos Belén の著者。201911月にブエノスアイレス大学法学部で行われた出版記念イベントにまだ就任前だったが、次期大統領アルベルト・フェルナンデス(任期202012月~202312月)も出席して、「私がここにいるのは、彼女たちの要求を支持するため」とスピーチした。就任した翌年合法化された。イベントには、アナ・コレアの他、ソレダード・デサ弁護士、中絶闘争の先駆者ネリー・ミニエルスキー弁護士(サン・ミゲル・デ・トゥクマン1929)やフォンシ監督の姿もあった。

   

   

  (左から2人目、デサ弁護士、アナ・コレア、次期大統領アルベルト・フェルナンデス、

 ミニエルスキー弁護士、ドロレス・フォンシ、中絶合法化のイベント、20191115日)

 

カミラ・プラーテ(ベレン/フリエタ)は、アグスティン・トスカノの「El Motoarrebatador / The Snatch Thief」(18)でデビュー、アルゼンチン映画アカデミー賞2019新人女優賞にノミネートされた。本作はカンヌ映画祭併催の「監督週間」でプレミアされ、同年サンセバスチャン映画祭オリソンテス・ラティノス部門にもノミネートされた。バイクひったくり犯の心の遍歴が語られる。トスカノはサン・ミゲル・デ・トゥクマン出身の監督です。2019年リリアナ・パオリネリのコメディ「Margen de error」、TVシリーズ「Tafí Viejo, verdor sin tiempo」(25)などが代表作。

El Motoarrebatador / The Snatch Thief」紹介記事は、コチラ20180907

 

    

               (「Belén」の法廷シーンから)

   

   

    (銀貝助演俳優賞のトロフィーを手にしたカミラ、SSIFF2025授賞式にて)

 

★同じテーマの作品として、ドキュメンタリーだがSSIFF2019でご紹介したRTVEスペイン国営ラジオ・テレビが選ぶ「もう一つの視点」を受賞したフアン・ソラナスの「La ola verdeQue sea ley」がある。カンヌ映画祭2019アウト・オブ・コンペティションで特別上映された。妊娠中絶合法化のシンボルである緑のハンカチやスカーフを身に着けてカンヌやサンセバスチャンに大挙して参加した。翌2020年、フェルナンデス大統領によってに合法化された。しかし、アルゼンチンのトランプと揶揄される現大統領ハビエル・ミレイは、中絶法の復活を豪語している。

La ola verdeQue sea ley」の記事は、コチラ20190811同年1003


ジェマ・ブラスコの「La furia」*ゴヤ賞2026 ⑦2026年02月25日 14:54

        深い闇を描くジェマ・ブラスコのデビュー作「La furia

 

     

 

★第40回ゴヤ賞2026新人監督賞ジェマ・ブラスコ)と主演女優賞アンヘラ・セルバンテス)の2カテゴリーにノミネートされている「La furia」は、スペインでは第28回マラガ映画祭2025でプレミアされました。長編劇映画デビュー作、タイトルが「激怒」と穏やかでない。年越しのパーティでレイプされた若い舞台女優の恥辱と復讐に燃える心の闇が物語られるが、レイプ復讐映画ではなさそうです。マラガでは主役アレックスを演じたアンヘラ・セルバンテスの圧倒的なパフォーマンスが脚光を浴びました。

   

          

         (インタビューを受ける監督、マラガ映画祭2025にて

   

     

   (アレックス・モネル、監督、アンヘラ・セルバンテス、マラガFFフォトコール)

 

 「La furia / The Fury

製作:Ringo Media / Aragon TV / Filmin / ICEC / ICAA / RTVE

監督:ジェマ・ブラスコ

脚本:ジェマ・ブラスコ、エバ・パウマ

音楽:ジョナ・ハマン

撮影:ネウス・オレ

編集:ディダック・パロウ、トマス・ロペス

キャスティング:イレネ・ロケ

プロダクションデザイン&美術:アンナ・アウケル

衣装デザイン:エステル・パラウダリエス

メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、アレ・サルバット

製作者:ミレイア・グラエル・ビバンコス

 

データ:製作国スペイン、2025年、カタルーニャ語・スペイン語、ドラマ、107分、撮影地バルセロナ、アラゴン州テルエル(トレベリーリャ村)、配給元フィルマックス(スペイン)、公開スペイン2025328

映画祭・受賞歴SXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭2025ワールドプレミア、マラガ映画祭2025セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演女優賞(アンヘラ・セルバンテス)、助演男優賞(アレックス・モネル)、編集賞(ディダック・パロウ、トマス・ロペス)、マイアミ映画祭初監督賞ノミネート、DA映画祭(バルセロナ)オープニング作品、インド映画祭、第31回フォルケ賞2025女優賞ノミネート。以下2026年、シネマ・ライターズ・サークル賞新人監督賞ノミネート、スペイン俳優組合賞(アンヘラ・セルバンテス)、フェロス賞主演女優賞ノミネート、ガウディ賞新人監督賞主演女優賞受賞、助演女優賞(カルラ・リナレス)・助演男優賞・オリジナル脚本賞ノミネート、ディアス・デ・シネ賞作品賞・女優賞(アンヘラ・セルバンテス)受賞、ヒホン映画祭、他

 

キャスト:アンヘラ・セルバンテス(アレックス/アレクサンドラ)、アレックス・モネル(兄アドリアン)、エリ・イランソ(母エレナ)、カルラ・リナレス(フリア)、サリム・ダプリンセ(サミル)、アナ・トレント(舞台演出家)、ジュディット・コルティナ(フリア)、パウ・エスコバル(ダビ)、ビクトリア・リベロ、他多数

 

ストーリー:舞台女優のアレックスは、年越しのパーティでレイプされる。彼女は兄アドリアンに救いを求めますが、彼は妹を守れなかった怒りで苦しみます。1年間のあいだアレックスは兄や友人と距離をおき嫌悪感と恥辱のなかで孤立して生きていく。アドリアンは怒りに沈潜し、アレックスが必要としているものから遠く離れて、次第に闇のなかに堕ちていく。一方アレックスにとって痛みと激怒を追い払うための唯一の方法は、舞台で演じる復讐心に燃えるメディアの人格に自分を託して体現することだった。『メディア』はエウリピデスによって書かれた神話に基づくギリシャ悲劇だが、ここでは性的暴力が引き起こした兄妹の現代悲劇が語られる。

   

       

 

            (アレックスと兄アドリアン、フレームから)

  

    

        「語りたくてたまらないテーマ」とブラスコ監督

 

監督紹介ジェマ(ジェンマ)・ブラスコ Gemma Blasco1993年バルセロナ生れ、監督、脚本家。2014年バルセロナ映画学校Bande à Partを卒業。短編映画、広告、舞台の映像化を手掛けている。8ミリ、16ミリ、デジタル、ミニDVなど異なったフォーマットの経験を重ね「バルセロナでアッバス・キアロスタミと一緒に撮る」というワークショップにも参加している。2013年、キャストが盲人の女性と聾啞者の男性という設定の短編「Matices」を撮る。続いて2015年の「Formas de jugar」がカタルーニャ映画祭「新しい展望」部門短編賞を受賞する。2017年、「Jauría」製作の資金援助をICAAより受け、マラガ映画祭2018短編部門のセクション・オフィシアルにノミネートされる。その後、シッチェス、マドリード、アルシネ、ヒホン、アルメリア、アミアン、ボゴショートなど国内外の国際映画祭巡りをし、翌年のゴヤ賞短編映画賞のプレセレクションやガウディ賞にノミネートされている。

        

           

★長編「El zoo」がヒホン映画祭2018で上映される。若い俳優のグループが舞台でリアリティショーを演じている。現実と架空の境界では一人しか留まることができない、登場人物たちは互いに食べつくしていくという実験映画のようです。

 

★フィクションとしてはデビュー作になる長編2作めが2018年から着手していた本作「La furia」で、自身の体験がミックスされている。監督によると、この映画は未だ映画を学びはじめる前の「18歳のとき自分の身に起きた街路での性的暴力の体験から生まれました。私が創作した復讐の映画です。居場所を奪われた犠牲者がどんな痛みを抱え、何が必要で、何を望んでいるかについて、もう語りたくてたまらない」とインタビューに応えている。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画テレビ学校で「登場人物の構成」というセミナーに参加してテーマの細分化をした。その後、マジョルカ・タレント・ラボ(Filmin)、トリノ・フィルム・ラボ、2021年カンヌのシネフォンダシオン最終候補者になった。さらにスペイン女性映画製作者協会CIMAの新企画に選ばれるなどした。撮影地の一つアラゴン州テルエルのトレベリーリャは、父方の家族が住んでいる由。厳しい誠実さで難しいテーマに取りくみ、観客にとっては座り心地は決して良くないが、現実の本質的なことを突きつけている。今回のゴヤ賞ノミネートは〈新人監督賞〉枠ですが、キャリア的には新人とは言えません。

  

         

         (撮影中のブラスコ監督、セルバンテス、モネール)

 

*フィルモグラフィー

2013Matices3分、監督、脚本、スペイン語・英語、トレス・コートFFモンディアレ賞受賞

2015Formas de jugar」短編、監督、脚本、スペイン語

2017La mujer del escaparate」短編、ファンタジア、スペイン語、監督、脚本

2018Jauría」短編19分、スペイン語、監督、脚本(マルタ・フォント共同執筆)

   マラガFF短編部門上映、

2018El zoo」長編デビュー作、実験映画、96分、スペイン語、監督

   ヒホン映画祭、ラスパルマス映画祭、DA映画祭上映

2025La furia」長編劇映画(割愛)

 

キャスト紹介

アンヘラ・セルバンテス Angela Cervantes Sorribas1993年バルセロナ生れ、女優、アルバロ・セルバンテスは実兄、「Sorda」でゴヤ賞助演男優賞にノミネートされており、兄妹受賞が期待されている。カタルーニャTVシリーズ出演でスタート、長編デビューは、カロル・ロドリゲス・コラスのコメディドラマ「Chavalas / Girlfreinds」(21)でバルのオーナーに扮し、ゴヤ賞2022新人賞にノミネート、ガウディ賞を受賞した。ピラール・パロメロの「La maternal / Motherhood」(22)で、14歳で出産することになった娘の若い母親役を演じ、ゴヤ賞・フェロス賞助演女優賞ノミネート、ガウディ賞受賞。ジョルディ・ヌニェスの「Valenciana」(24)出演など。

 

  

    (揃ってゴヤ賞にノミネートされているセルバンテス兄妹、2026223日)

    

本作「La furia」について、ジェマ監督とは演劇学校時代に出会い、当時から映画化を語り合ってきたから、「最初から、脚本の最初のバージョンから、既に読んでいた」とRTVEのインタビューで語っている。マラガ映画祭2025銀のビスナガ女優賞受賞、フォルケ賞ノミネート、ガウディ賞2026主演女優賞受賞、フェロス賞ノミネート、ゴヤ賞と俳優組合賞は結果待ち。同じ年のマラガ映画祭で上映されたガラ・グラシアの「Lo que queda de ti」(25、西=伊=葡)にも主演、最新作は、間もなく始まるマラガ映画祭2026で上映されるダビ・セラーノのラップランドを舞台にしたコメディ「Lapönia」に主演している、ブレイクスルー(ブレイクアウトロー)の演技者として今後が期待できる女優の一人。

      

      

          

                     (La furia」のフレームから

    

       

          (ガウディ賞のトロフィーを手にしたアンヘラ、2026年2月8日授賞式)

                

アレックス・モネール Alex Mpnner19951月バルセロナ生れ、既に短編、TVシリーズを含めると50作以上に出演している。TVシリーズ「Polseres vermelles」(20111328話、カタルーニャTV)でフォトグラマス・デ・プラタ主演男優賞を受賞する。2012年、パコ・プラサの『RECレック3ジェネシス』で長編映画デビュー、同年パトリシア・フェレイラの「Els nens salvatges / Los niños salvajes」で注目され、マラガ映画祭2012助演男優賞・ガウディ賞2013主演男優賞・トゥリア賞2013新人賞受賞など受賞、ゴヤ賞新人男優賞にもノミネートされた。

 

    

当ブログ紹介作品には、2014年のベレン・マティアスの「Marsella」、2016年、イサ・カンポ&イサキ・ラクエスタの「La propera pell / La proxima piel」でフォルケ賞とフェロス賞2017の主演男優賞にノミネート、『記憶の行方』の邦題でネットフリックスが配信した。2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」、マラガ映画祭2021でセクン・デ・ラ・ロサが監督デビューした「El Cover」、マルセル・バレナの実話に基づいた「Mediterraneo」(21、『地中海のライフガードたち』)は、難民映画祭2022オンラインで配信されている。ペドロ・マルティン=カレロの心理ホラー「El llanto」(24『叫び』)など、多くの問題作に出演している。

  

  

      (RTVEのインタビューを受けるアレックスとアンヘラ、202441

  

作品紹介はしていないが、ルイス・キレスの密室サスペンス「Bajocero」(21、邦題『薄氷』)、日本で人気の高いダニエル・カルパルソルのアクション映画「Centauro」(22、『ケンタウロス』)などがNetflixで配信されている。2022年から始まっているTVシリーズ「La ruta」(14話)で主役を演じている。1996年バレアレス諸島のイビサ島が舞台、フランコ時代を生きた父親世代との断絶のなかで、居場所探しをする若者5人の軌跡を描いている。