第28回マラガ映画祭2025結果発表*マラガ映画祭2025 ⑥ ― 2025年03月28日 09:01
金のビスナガは聾者の母親が主人公のエバ・リベルタードの「Sorda」

★3月22日アルベニス映画館、第28回マラガ映画祭2025授賞式が10日間の日程を無事こなして閉幕しました。模様は国営テレビ(La 2 de TVE)で放映されました。金のビスナガは、スペイン映画がエバ・リベルタードの「Sorda」、本作は作品・主演女優(ミリアム・ガルロ)・主演男優(アルバロ・セルバンテス)・観客賞の4冠、下馬評通りの受賞、批評家と観客の評価に乖離がなかった『タパス』(05)以来と報じられた。イベロアメリカ映画はチリのビンコ・トミシックの「El ladrón de perros」で、共に副賞として8,000ユーロが授与されます。

(左から、ミリアム・ガルロ、エバ・リベルタード監督、アルバロ・セルバンテス)
★総合司会者は「El 47」でゴヤ賞2025助演男優賞を受賞したサルバ・レイナと、昨年に続いてジャーナリストでTV司会者のエレナ・サンチェスでした。「金のビスナガ」は作品賞のみで、審査員特別賞以下すべて「銀のビスナガ」です。

(総合司会者サルバ・レイナとエレナ・サンチェス)
★ガラはコルドバ出身の歌手マリア・ホセ・リェルゴ(1994)の "La bien pagá" で幕を開けました。彼女はマルセル・バレナの「Mediterraneo」の “Te espera el mar” でゴヤ賞2022オリジナル歌曲賞を受賞しています。中盤に会場を盛り上げたのが、オルタナティブロック・ミュージシャンのソエル・ロペス(Xoel アコルーニャ1977)、“Tierra” を朗唱しました。しんがりがマラガ出身のシンガーソングライターのエル・カンカ(El Kanka、1981)が “Pasa la vida” で会場を沸かせました。

(マリア・ホセ・リェルゴ)

(エル・カンカ)
★セクション・オフィシアルの審査員は、審査委員長メルセデス・モラン(アルゼンチンの女優)、プチョ(Vetusta Morlaの歌手)、ピラール・パロメロ(監督、脚本家)、カルロス・マルケス=マルセ(監督、脚本家)、エストレージャ・アライサ(メキシコのグアダラハラ映画祭ディレクター)、ダニエラ・ベガ(チリの女優、歌手)、イレネ・エスコラル(女優)、ベレン・クエスタ(女優)の8名でした。パロメロ監督、マルケス=マルセは、金のビスナガ受賞者です。
★今年のマラガ映画祭は、連日のように雨が降ったりやんだりの天候には恵まれないエディションだった。しかし上映作品は260作にもなるレベルの高い作品が上映されたそうです。セクション・オフィシアルも22作、アウト・オブ・コンペティションも21作と例年より多く、ボルハ・コベアガ、マリア・リポルなどベテラン監督が多いこともあり、コンペより興味を惹く作品が目につきました。今年から観客賞の投票を50%ずつに分け、それぞれに授与することにした由。最初の受賞者はベテラン監督のフリオ・メデムの「8」が獲得しました。
★本祭のメインディレクターを続投しているフアン・アントニオ・ビガルは「観客、産業界、マスメディアが私たちに求めているもののバランスを考慮した」、「今のように怒りが充満し互いに攻撃的な世の中では、文化は常に指針となり、マラガは進むべき最良の道となっている」と自画自賛した。しかしスペイン映画が15作、イベロアメリカ映画7作は本数的にも不公平ではないでしょうか。
*第28回マラガ映画祭2025セクション・オフィシアルの受賞結果*
◎金のビスナガ作品賞(スペイン映画、副賞8.000ユーロ)
「Sorda」エバ・リベルタード監督、製作Distinto Films / Nexus CreaFilms /
A Contracorriente Films
★監督は「本作はムルシアの農村の片隅から始まり、金のビスナガに辿りつくことができました。この長い旅はひとえに多くのシネアストの努力とムルシアTVの協力のお蔭です。夢の実現に力を貸してくださった全ての人々に感謝を申し上げたい」とスピーチした。本作専用の手話者が受賞者と一緒に登壇した。
*プレゼンターは、審査委員長メルセデス・モランと審査員ダニエラ・ベガ


(エバ・リベルタード監督、フォトコール)
◎金のビスナガ作品賞(イベロアメリカ映画、副賞8.000ユーロ)
「El ladrón de perros」ビンコ・トミシック監督、製作Color Monster /
Zafiro Cinema / Calamar Cine
★来マラガは製作者のアルバロ・マンサノと主役を演じたフランクリン・アロのふたりだけでした。製作者と配給元のエドゥアルド・カジェが登壇した。カジェが「最近ボリビアのプロダクションがイベロアメリカ映画賞を受賞しています。全てのボリビアの人々に捧げます」とスピーチした。アレハンドロ・ロアイサ・グリシの『UTAMA~私たちの家~』が2022年に金のビスナガを筆頭に監督賞、批評家審査員特別賞など受賞している。
*プレゼンターは、審査員ピラール・パロメロ、同カルロス・マルケス=マルセ


(アルバロ・マンサノとフランクリン・アロ、フォトコール)

◎審査員特別賞(銀のビスナガ)
「Los Tortuga」ベレン・フネス監督
★監督と製作者がスピーチした。他に監督賞、脚本賞を受賞した。
*プレゼンターは、審査員ベレン・クエスタ、俳優カルロス・バルデム

◎監督賞
ベレン・フネス(「Los Tortuga」)
*プレゼンターは、カンヌ映画祭2024女優賞のカルラ・ソフィア・ガスコン、ゴヤ賞2025主演女優賞のカロリナ・ジュステでした。

◎主演女優賞(‘マラガ・パラシオ・ホテルAC’(今回は2名)
アンヘラ・セルバンテス(「La furia」ジェマ・ブラスコ監督)
★レイプ事件のトラウマを抱えた被害者を演じた。「Sorda」で主演男優賞を受賞したアルバロ・セルバンテスは4歳上の実兄です。他に本作は助演男優賞、編集賞の3冠でした。

ミリアム・ガルロ(「Sorda」)
★聾者の母親を演じたが、実際に聴覚障碍者でもあり、スピーチは手話を交えて喜びを語りました。エバ・リベルタード監督の実妹、視覚芸術を専門とするアーティスト、演劇、ダンス、女優と多才。

(自ら手話をまじえてスピーチするミリアム・ガルロ)

(二人の受賞者、アンヘラとミリアム)
◎主演男優賞(今回は2名)
アルバロ・セルバンテス(「Sorda」)兄妹で主演俳優賞を同時に受賞するのは珍しい。

マリオ・カサス(「Molt lluny / Muy lejos」ヘラルド・オムス監督)


(二人の受賞者、アルバロとマリオ)
◎助演女優賞
マリア・エレナ・ぺレス(「Perros」ヘラルド・ミヌッティ監督)
★受賞者欠席でビデオ出演、代理が受け取った。


(ビデオでスピーチした受賞者)
◎助演男優賞
アレックス・モネール(「La furia」)

◎脚本賞
ベレン・フネス&マルサル・セブリアン(「Los Tortuga」)


(それぞれにトロフィーが渡された)
◎音楽賞
フィリペ・ラポソ(「Lo que queda de ti」ガラ・グラシア監督)


◎撮影賞
アルバン・プラド(「Sugar Island」ジョアンヌ・ゴメス・テレロ監督)


◎編集賞
ディダック・パロウ&トマス・ロペス(「La furia」)

◎批評家審査員特別賞
「Molt lluny / Muy lejos」ヘラルド・オムス監督



(主演のマリオ・カサスとヘラルド・オムス監督)
◎観客賞(エルパイス紙)
「Sorda」エバ・リベルタード監督

(監督と本作専属の手話者)

◎アウト・オブ・コンペティション観客賞
「8」フリオ・メデム監督



★監督賞審査員特別メンションに、セリア・リコ・クラベリーノの「La buena letra」と、サラ・ファントバの「Jone, Batzuetan / Jone, Aveces」が受賞した。ポルトガル語映画「Una quinta portuguesa」は無冠に終わりました。割愛しているセクション・オフィシアル・ソナシネ(金のビスナガ)、ドキュメンタリー(銀のビスナガ)には副賞として4.000ユーロ、短編映画、短編アニメーションには2.000が与えられます。
★観客動員数は108.000人、期間中に来マラガした人々が散財したお金は、チケット代、ホテル代、飲食代含めて約2.175.000ユーロだった由、馬鹿にならない数字です。さて、第29回マラガ映画祭2026は、3月6日~3月15日とアナウンスされました。
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