ジェマ・ブラスコの「La furia」*ゴヤ賞2026 ⑦2026年02月25日 14:54

        深い闇を描くジェマ・ブラスコのデビュー作「La furia

 

     

 

★第40回ゴヤ賞2026新人監督賞ジェマ・ブラスコ)と主演女優賞アンヘラ・セルバンテス)の2カテゴリーにノミネートされている「La furia」は、スペインでは第28回マラガ映画祭2025でプレミアされました。長編劇映画デビュー作、タイトルが「激怒」と穏やかでない。年越しのパーティでレイプされた若い舞台女優の恥辱と復讐に燃える心の闇が物語られるが、レイプ復讐映画ではなさそうです。マラガでは主役アレックスを演じたアンヘラ・セルバンテスの圧倒的なパフォーマンスが脚光を浴びました。

   

          

         (インタビューを受ける監督、マラガ映画祭2025にて

   

     

   (アレックス・モネル、監督、アンヘラ・セルバンテス、マラガFFフォトコール)

 

 「La furia / The Fury

製作:Ringo Media / Aragon TV / Filmin / ICEC / ICAA / RTVE

監督:ジェマ・ブラスコ

脚本:ジェマ・ブラスコ、エバ・パウマ

音楽:ジョナ・ハマン

撮影:ネウス・オレ

編集:ディダック・パロウ、トマス・ロペス

キャスティング:イレネ・ロケ

プロダクションデザイン&美術:アンナ・アウケル

衣装デザイン:エステル・パラウダリエス

メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、アレ・サルバット

製作者:ミレイア・グラエル・ビバンコス

 

データ:製作国スペイン、2025年、カタルーニャ語・スペイン語、ドラマ、107分、撮影地バルセロナ、アラゴン州テルエル(トレベリーリャ村)、配給元フィルマックス(スペイン)、公開スペイン2025328

映画祭・受賞歴SXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭2025ワールドプレミア、マラガ映画祭2025セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演女優賞(アンヘラ・セルバンテス)、助演男優賞(アレックス・モネル)、編集賞(ディダック・パロウ、トマス・ロペス)、マイアミ映画祭初監督賞ノミネート、DA映画祭(バルセロナ)オープニング作品、インド映画祭、第31回フォルケ賞2025女優賞ノミネート。以下2026年、シネマ・ライターズ・サークル賞新人監督賞ノミネート、スペイン俳優組合賞(アンヘラ・セルバンテス)、フェロス賞主演女優賞ノミネート、ガウディ賞新人監督賞主演女優賞受賞、助演女優賞(カルラ・リナレス)・助演男優賞・オリジナル脚本賞ノミネート、ディアス・デ・シネ賞作品賞・女優賞(アンヘラ・セルバンテス)受賞、ヒホン映画祭、他

 

キャスト:アンヘラ・セルバンテス(アレックス/アレクサンドラ)、アレックス・モネル(兄アドリアン)、エリ・イランソ(母エレナ)、カルラ・リナレス(フリア)、サリム・ダプリンセ(サミル)、アナ・トレント(舞台演出家)、ジュディット・コルティナ(フリア)、パウ・エスコバル(ダビ)、ビクトリア・リベロ、他多数

 

ストーリー:舞台女優のアレックスは、年越しのパーティでレイプされる。彼女は兄アドリアンに救いを求めますが、彼は妹を守れなかった怒りで苦しみます。1年間のあいだアレックスは兄や友人と距離をおき嫌悪感と恥辱のなかで孤立して生きていく。アドリアンは怒りに沈潜し、アレックスが必要としているものから遠く離れて、次第に闇のなかに堕ちていく。一方アレックスにとって痛みと激怒を追い払うための唯一の方法は、舞台で演じる復讐心に燃えるメディアの人格に自分を託して体現することだった。『メディア』はエウリピデスによって書かれた神話に基づくギリシャ悲劇だが、ここでは性的暴力が引き起こした兄妹の現代悲劇が語られる。

   

       

 

            (アレックスと兄アドリアン、フレームから)

  

    

        「語りたくてたまらないテーマ」とブラスコ監督

 

監督紹介ジェマ(ジェンマ)・ブラスコ Gemma Blasco1993年バルセロナ生れ、監督、脚本家。2014年バルセロナ映画学校Bande à Partを卒業。短編映画、広告、舞台の映像化を手掛けている。8ミリ、16ミリ、デジタル、ミニDVなど異なったフォーマットの経験を重ね「バルセロナでアッバス・キアロスタミと一緒に撮る」というワークショップにも参加している。2013年、キャストが盲人の女性と聾啞者の男性という設定の短編「Matices」を撮る。続いて2015年の「Formas de jugar」がカタルーニャ映画祭「新しい展望」部門短編賞を受賞する。2017年、「Jauría」製作の資金援助をICAAより受け、マラガ映画祭2018短編部門のセクション・オフィシアルにノミネートされる。その後、シッチェス、マドリード、アルシネ、ヒホン、アルメリア、アミアン、ボゴショートなど国内外の国際映画祭巡りをし、翌年のゴヤ賞短編映画賞のプレセレクションやガウディ賞にノミネートされている。

        

           

★長編「El zoo」がヒホン映画祭2018で上映される。若い俳優のグループが舞台でリアリティショーを演じている。現実と架空の境界では一人しか留まることができない、登場人物たちは互いに食べつくしていくという実験映画のようです。

 

★フィクションとしてはデビュー作になる長編2作めが2018年から着手していた本作「La furia」で、自身の体験がミックスされている。監督によると、この映画は未だ映画を学びはじめる前の「18歳のとき自分の身に起きた街路での性的暴力の体験から生まれました。私が創作した復讐の映画です。居場所を奪われた犠牲者がどんな痛みを抱え、何が必要で、何を望んでいるかについて、もう語りたくてたまらない」とインタビューに応えている。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画テレビ学校で「登場人物の構成」というセミナーに参加してテーマの細分化をした。その後、マジョルカ・タレント・ラボ(Filmin)、トリノ・フィルム・ラボ、2021年カンヌのシネフォンダシオン最終候補者になった。さらにスペイン女性映画製作者協会CIMAの新企画に選ばれるなどした。撮影地の一つアラゴン州テルエルのトレベリーリャは、父方の家族が住んでいる由。厳しい誠実さで難しいテーマに取りくみ、観客にとっては座り心地は決して良くないが、現実の本質的なことを突きつけている。今回のゴヤ賞ノミネートは〈新人監督賞〉枠ですが、キャリア的には新人とは言えません。

  

         

         (撮影中のブラスコ監督、セルバンテス、モネール)

 

*フィルモグラフィー

2013Matices3分、監督、脚本、スペイン語・英語、トレス・コートFFモンディアレ賞受賞

2015Formas de jugar」短編、監督、脚本、スペイン語

2017La mujer del escaparate」短編、ファンタジア、スペイン語、監督、脚本

2018Jauría」短編19分、スペイン語、監督、脚本(マルタ・フォント共同執筆)

   マラガFF短編部門上映、

2018El zoo」長編デビュー作、実験映画、96分、スペイン語、監督

   ヒホン映画祭、ラスパルマス映画祭、DA映画祭上映

2025La furia」長編劇映画(割愛)

 

キャスト紹介

アンヘラ・セルバンテス Angela Cervantes Sorribas1993年バルセロナ生れ、女優、アルバロ・セルバンテスは実兄、「Sorda」でゴヤ賞助演男優賞にノミネートされており、兄妹受賞が期待されている。カタルーニャTVシリーズ出演でスタート、長編デビューは、カロル・ロドリゲス・コラスのコメディドラマ「Chavalas / Girlfreinds」(21)でバルのオーナーに扮し、ゴヤ賞2022新人賞にノミネート、ガウディ賞を受賞した。ピラール・パロメロの「La maternal / Motherhood」(22)で、14歳で出産することになった娘の若い母親役を演じ、ゴヤ賞・フェロス賞助演女優賞ノミネート、ガウディ賞受賞。ジョルディ・ヌニェスの「Valenciana」(24)出演など。

 

  

    (揃ってゴヤ賞にノミネートされているセルバンテス兄妹、2026223日)

    

本作「La furia」について、ジェマ監督とは演劇学校時代に出会い、当時から映画化を語り合ってきたから、「最初から、脚本の最初のバージョンから、既に読んでいた」とRTVEのインタビューで語っている。マラガ映画祭2025銀のビスナガ女優賞受賞、フォルケ賞ノミネート、ガウディ賞2026主演女優賞受賞、フェロス賞ノミネート、ゴヤ賞と俳優組合賞は結果待ち。同じ年のマラガ映画祭で上映されたガラ・グラシアの「Lo que queda de ti」(25、西=伊=葡)にも主演、最新作は、間もなく始まるマラガ映画祭2026で上映されるダビ・セラーノのラップランドを舞台にしたコメディ「Lapönia」に主演している、ブレイクスルー(ブレイクアウトロー)の演技者として今後が期待できる女優の一人。

      

      

          

                     (La furia」のフレームから

    

       

          (ガウディ賞のトロフィーを手にしたアンヘラ、2026年2月8日授賞式)

                

アレックス・モネール Alex Mpnner19951月バルセロナ生れ、既に短編、TVシリーズを含めると50作以上に出演している。TVシリーズ「Polseres vermelles」(20111328話、カタルーニャTV)でフォトグラマス・デ・プラタ主演男優賞を受賞する。2012年、パコ・プラサの『RECレック3ジェネシス』で長編映画デビュー、同年パトリシア・フェレイラの「Els nens salvatges / Los niños salvajes」で注目され、マラガ映画祭2012助演男優賞・ガウディ賞2013主演男優賞・トゥリア賞2013新人賞受賞など受賞、ゴヤ賞新人男優賞にもノミネートされた。

 

    

当ブログ紹介作品には、2014年のベレン・マティアスの「Marsella」、2016年、イサ・カンポ&イサキ・ラクエスタの「La propera pell / La proxima piel」でフォルケ賞とフェロス賞2017の主演男優賞にノミネート、『記憶の行方』の邦題でネットフリックスが配信した。2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」、マラガ映画祭2021でセクン・デ・ラ・ロサが監督デビューした「El Cover」、マルセル・バレナの実話に基づいた「Mediterraneo」(21、『地中海のライフガードたち』)は、難民映画祭2022オンラインで配信されている。ペドロ・マルティン=カレロの心理ホラー「El llanto」(24『叫び』)など、多くの問題作に出演している。

  

  

      (RTVEのインタビューを受けるアレックスとアンヘラ、202441

  

作品紹介はしていないが、ルイス・キレスの密室サスペンス「Bajocero」(21、邦題『薄氷』)、日本で人気の高いダニエル・カルパルソルのアクション映画「Centauro」(22、『ケンタウロス』)などがNetflixで配信されている。2022年から始まっているTVシリーズ「La ruta」(14話)で主役を演じている。1996年バレアレス諸島のイビサ島が舞台、フランコ時代を生きた父親世代との断絶のなかで、居場所探しをする若者5人の軌跡を描いている。