アルベルト・ロドリゲスのTVシリーズ「Anatomía de un instante」*SSIFF 2025 ④ ― 2025年08月01日 11:27
ダブル・ノミネートのアルベルト・ロドリゲスの歴史ドラマ

(終結後、家族に無事を知らせる電話をする議員たち)
★アウト・オブ・コンペティション部門には、既にご紹介したアグスティン・ディアス・ヤネスの新作「Un fantasma en la batalla」とアルベルト・ロドリゲスのTVミニシリーズ「Anatomía de un instante」(4話、180分)の2作が選ばれ、4話のうち3話が上映されるようです。ハビエル・セルカスの同名ノンフィクション小説(2009年刊)がベースになっています。フランコ没後の民主主義移行期に起きた1981年2月23日の軍事クーデタ未遂事件が舞台です。スペインの子供たちは歴史の教科書で学びます。当時の国王ドン・フアン・カルロスI世の力量を国民が初めて知ることになったドラマチックな事件でもありました。今日のスペイン民主主義体制の土台となった事件だけにヒット作になるでしょうが、制作会社の一つMovistar Plus+ が配信しますので、多分日本では見ることができないでしょう。

(下院議場中央壇上のアントニオ・テヘロ中佐)
「Anatomía de un instante / The Anatomy of a Momento」
アウト・オブ・コンペティション
製作;Arte France / DLO Producciones / Movistar Plus+
監督:アルベルト・ロドリゲス
脚本:ラファエル・コボス、フラン・アラウホ、アルベルト・ロドリゲス
(原作)ハビエル・セルカス
撮影:アレックス・カタラン
編集:ホセ・M・G・モヤノ、アナ・ガルシア
キャスティング:エバ・レイラ、ヨランダ・セラノ
美術:ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ
衣装デザイン:フェルナンド・ガルシア
プロダクションデザイン:アレックス・ミヤタ
メイク&ヘアー:ヨランダ・ピーニャ(主任)、イツィアル・コスタス、ナチョ・ディアス、アイダ・カルバリョ
製作者:ホセ・マヌエル・ロレンソ(クリエーター)、フラン・アラウホ、マヌエラ・オコン
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、TVミニシリーズ4話、撮影地マドリードの下院議場、アルカラ・デ・エナレス、他。配給スペインMovistar Plus+ で配信が決定している。
キャスト:アルバロ・モルテ(総理大臣アドルフォ・スアレス)、エドアルド・フェルナンデス(スペイン共産党書記長サンティアゴ・カリージョ)、マノロ・ソロ(副総理グティエレス・メジャド陸軍将軍)、ダビ・ロレンテ(治安警備隊中佐アントニオ・テヘロ)、ミキ・エスパルペ(国王フアン・カルロスI世)、オスカル・デ・ラ・フエンテ(ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将)、フアンマ・ナバス(アルフォンソ・アルマダ陸軍少将)、サムエル・ロペス(社会労働党アルフォンソ・ゲーラ)、イグナシオ・カステージョ(議長ランデリノ・ラビージャ)、ルイス・ベルメホ、ベネアロ・エルナンデス(フアン・ガルシア・カレス)、他多数
ストーリー:1981年2月23日、午後6時20分、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐と自動小銃で武装した警備隊員200名が下院議場を占拠、国王を擁した軍事政権樹立を要求する。テヘロ中佐が拳銃を手に議場に乱入、安全のため議席の足元の床に身を伏せるよう命令して辱めたが、アドルフォ・スアレス首相、サンティアゴ・カリージョ共産党書記長、グティエレス・メジャド副首相の3名は指示に従わなかった。民主主義の前進を率いたこの3人と軍事クーデタ未遂事件の首謀者3人、治安警備隊アントニオ・テヘロ中佐、ミランス・デル・ボッシュ陸軍大将、アルフォンソ・アルマダ陸軍少将を通して、スペイン民主化のプロセスを強化することになった「F-23事件」が語られる。

(テヘロ中佐を演じたダビ・ロレンテ、フレームから)

(メジャド副総理役のマノロ・ソロ、スアレス首相役のアルバロ・モルテ)

(カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデス)
★スペインで「F-23事件」と言えば、スペイン人なら1981年に起きた軍事クーデタ未遂事件と分かります。Fはスペイン語の2月 febrero の頭文字、わが国の「3-11」、アメリカの「9-11」と同じように、年号は不要です。三軍の長でもあったフアン・カルロスI世のクーデタ不支持表明で、発生から18時間後に終結した無血クーデタですが、スペイン民主主義の行方を決定づけたターニングポイントとなる事件でした。とはいえ現在でも事件の推移は混沌としており、事件の黒幕の解明には至っていないということです。製作者がどこまで事件に踏み込んでいるのか目下のところ分かりませんが、監督、脚本家など製作スタッフの顔ぶれから期待したいところです。
★2月23日は、アドルフォ・スアレス首相が政治的混乱、高い失業率、ETAのテロ活動の未解決の責任を取って辞意を表明(1月29日)、当日は新首相選出の手続きを行っていたところでした。従って与野党下院議員がほぼ全員出席、国営放送局によりテレビで生中継されていました。一方ミランス・デル・ボッシュ将軍がテレビ局を占拠、突然放映が中断されましたが、記録は残っています。ラジオからは内戦当時の軍隊行進曲が流され国民を40年前の恐怖に陥れた。因みにダニエル・カルパルソロのTVミニシリーズ「Asalto al Banco Central / Bank Under Siege」(24、5話、『バンク・アンダーシージ』Netflix)の第1話の冒頭にこのときの実写が挿入されています。下院議場の中央壇上に駆け上がって威嚇するテヘロ中佐、スアレス首相、カリージョ書記長、メジャド副首相の3人以外は議席の床に伏せている映像を見ることができます。本作はF-23事件から3ヵ月後の5月23日に起きたバルセロナにあるスペイン中央銀行へ押し入った強盗事件を描いています。

(反乱首謀者3人、左からテヘロ、アルマダ、ミランス・デル・ボッシュ)

(原作者ハビエル・セルカスが表紙に使用したクーデタ当日の下院議場内)
★コンペティション外、TVシリーズということもあるので、スタッフ、キャスト紹介は割愛しますが、ロドリゲス監督はセクション・オフィシアルの「Los Tigres」、脚本家ラファエル・コボスはマラガ映画祭2019でリカルド・フランコ賞を受賞した折に紹介、カリージョ役のエドゥアルド・フェルナンデスは映画国民賞2025受賞の記事で、副総理メジャド役のマノロ・ソロはビクトル・エリセの『瞳をとじて』やガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『コンペティション』、ラウル・アレバロの『静かなる復讐』などに出演しています。原作者のハビエル・セルカス(カセレス1962)は小説家、翻訳家、日本では『サラミスの兵士たち』(“Soldados de Salamina” 2001)と、最近『テラ・アルタの憎悪』(“Terra Alta” 2019)の翻訳が出版されています。
*アルベルト・ロドリゲスの紹介記事は、コチラ⇒2025年07月24日
*ラファエル・コボスの紹介記事は、コチラ⇒2019年03月26日
*エドゥアルド・フェルナンデスの紹介記事は、コチラ⇒2025年07月13日
公式ポスターの顔に選ばれた故マリサ・パレデス*SSIFF 2025 ⑤ ― 2025年08月05日 16:53
ポスターの顔はマリサ・パレデス & ドノスティア栄誉賞はエステル・ガルシア

(故マリサ・パレデス、マヌエル・オウトゥムロ撮影)
★7月30日、各セクションの公式ポスターが発表になりました。第73回SSIFF2025 の顔は、昨年師走に急逝したマリサ・パレデスになりました。1977年初登場以来、昨年までの約40年間の尽力にオマージュが捧げられることになりました。スペインのファッション写真界を代表するマヌエル・オウトゥムロ(ガリシア州オウレンセ1949)が、2000年マドリードで撮影したフォト。2018年にフランスの女優イザベル・ユペールで始まった公式ポスターの顔は、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、シガニー・ウイバー、ジュリエット・ビノシュ、ハビエル・バルデム、昨年はケイト・ブランシェットでした。どういうわけかパレデスはドノスティア栄誉賞は貰っていませんでした。
*パレデスのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2025年02月25日/2018年01月18日
★その他、ニューディレクターズ(ドラマ)、オリソンテス・ラティノス(戦争映画)、サバルテギ-タバカレア(ロマンティック・ミュージカル)、ペルラス(サイエンスフィクション)、クイナリーシネマ(ホラー)、ネスト(アニメーション)、シネミラ(アドベンチャー)、メイド・イン・スペイン(ウエスタン)の主要8部門のポスターも勢揃いしました。()はジャンルを表現しているようです。

(主要8部門のポスター)
★ドノスティア栄誉賞にエステル・ガルシア(セゴビア1956)が選ばれました。アルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」の中心的な製作者として知られ、1986年にエル・デセオに入社、『マタドール』のプロダクション・アシスタントとして参加以来、アルモドバル映画の全作を手掛けています。1987年『欲望の法則』、1988年『神経衰弱ぎりぎりの女たち』、本祭セクション・オフィシアル出品の『私の秘密の花』(95)、オスカー外国語映画賞受賞の『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、『パラレル・マザーズ』、最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』などのほか、エル・デセオがラテンアメリカ映画に出資した映画、例えばダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』、パブロ・トラペロの『エル・クラン』、ギレルモ・デル・トロ、ルクレシア・マルテル、ルイス・オルテガなどを含めると、かなりの本数になります。既に映画国民賞2018を受賞した折にキャリア紹介をしておりますが、別途キャリア紹介を予定しています。
*映画国民賞受賞の記事は、コチラ⇒2018年09月17日

セクション・オフィシアル特別上映作品*SSIFF 2025 ⑥ ― 2025年08月09日 17:15
フィクション、ノンフィクション、TVシリーズ2作、合計4作が上映
★アウト・オブ・コンペティション特別上映作品として4作が選ばれている。ドラマとしてアシエル・アルトゥナの「Karmele」(114分)、ノンフィクションとしてイサキ・ラクエスタ&エレナ・モリーナの「Flores para Antonio」(98分)、TVミニシリーズに、コルド・アルマンドスの「Zeru ahoak / Sky Mouths / Bocas de cielo」(4話、160分)と、パコ・プラサ&パブロ・ゲレロの共同監督作品「La suerte / Fate」(6話、183分)です。今回はいま話題になっている「Karmele」をアップします。

「Karmele / Time to Wake Up Together」2025
Foro de Coproducción Europa-América Latina 2019
製作:Euskal Irrati Telebista / Eusko Jauraritza Gobierno Vasco /
Gastibeltza Filmak / RTVE
監督:アシエル・アルトゥナ
脚本:アシエル・アルトゥナ、キルメン・ウリベ・エルカレキン
(原作)キルメン・ウリベ “La hora de despertarnos juntos”
音楽:アイトル・エチェバリア
撮影:ハビエル・アギレ
編集:ロラン・デュフレッシュ
キャスティング:マリア・ロドリゴ
プロダクションデザイン:サロア・シルアガ
製作者:マリアン・フェルナンデス・パスカル
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、114分
映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2025アウト・オブ・コンペティション特別上映
キャスト:ジョネ・ラスピウル(カルメレ・ウレスティ)、エネコ・サガルドイ(チョミン・レタメンディ)、ナゴレ・アランブル、ハビエル・バランディアラン

(ジョネ・ラスピウルとエネコ・サガルドイ)
ストーリー:1937年バスク、看護師のカルメレと家族は内戦のため故国を追い出されフランスに避難していた。カルメレは音楽や舞踊を通して反戦活動をするなかで、バスク大使館とコンタクトを取る。そこでプロフェッショナルのトランペット奏者チョミンと出会う。その後、二人はベネズエラに渡りカラカスで一時期暮らした後、奪い取られたものを取り戻す期待をもってスペインに戻ってくる。スペイン内戦、フランコ独裁政権、亡命と20世紀のスペインを生きぬいた女性とその家族が語られる。実話に基づいて書かれたキルメン・ウリベの小説の映画化。


(カルメルとチョミン)
監督紹介:アシエル・アルトゥナ、1969年ギプスコア県ベルガラ生れ、監督、脚本家、撮影監督。テルモ・エスナルと共同監督した短編デビュー作「Txotx」(15分)がマラガ映画祭1997短編賞2席を受賞。本祭関連では、テルモ・エスナルと2005年長編デビュー作「Aupa Etxebeste !」がニューディレクターズ部門でユース賞を受賞した。2016年ベロドロモ部門で上映された短編集「Kalebegiak」(12編)の1編を二人で手掛けている。2019年同じくエスナルとバスク映画ガラで「Agur Etxebeste !」、単独ではアウト・オブ・コンペティション上映のドキュメンタリー「Bertsolari」(11、バスク語)、続いて「Amama」(15)でバスク映画部門のイリサル賞を受賞した他、ナント映画祭2016ユース審査員賞、モンテレイ映画祭2016観客賞を受賞した代表作。クイナリー・シネマ部門でバスクの伝統料理を提供するレストラン・アルサクのドキュメンタリー「Arzak since 1897」(20)が上映された。

(イリサル賞受賞した「Amama」と、サンセバスチャン映画祭2015)

(アシエル・アルトゥナとテルモ・エスナル、サンセバスチャン映画祭2019)
原作者紹介:キルメン・ウリベ・エルカレキンは、1970年バスク自治州ビスカイヤ県オンダロア生れ、詩人、小説家、脚本家、バスク語で執筆している。最初の小説 “Bilbao-New York-Bilbao”(2008年刊)がスペイン国民小説賞を受賞、スペイン語、カタルーニャ語は勿論のこと、フランス語、英語、ポルトガル語、ロシア語ほかに翻訳されている。日本でも『ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ』の邦題で翻訳刊行されている。『オババコアック』の著者ベルナルド・アチャガと同様バスク語作家として知られている。
キャスト紹介:ジョネ・ラスピウル、1995年サンセバスティアン生れ、歌手、ダンサー、ミュージシャン。17世紀初頭のバスク地方の魔女狩り裁判をテーマにしたパブロ・アグエロの「Akelarre」(20、西仏アルゼンチン、スペイン語・バスク語)でデビュー、高い評価を受け、ダビ・ペレス・サニュドの「Ane」(20)にパトリシア・ロペス・アルナイスの娘役に起用され、期待に応えてゴヤ賞2021新人女優賞を受賞、ロペス・アルナイスも主演女優賞を受賞した。他にイシアル・ボリャインの「Maixabel」(21)、アシエル・ウルビエタのスリラー「La isla de los faisanes / Faisalen irla」(25)に出演している。
*「Akelarre」の作品紹介は、コチラ⇒2020年08月02日
*「Ane」の作品紹介は、コチラ⇒2021年01月27日

(「Ane」のフレームから)

(「Ane」でゴヤ賞2021新人女優賞受賞)
★エネコ・サガルドイは、1994年ビスカヤ県ドゥランゴ生れ、俳優、アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ共同監督の『アルツォの巨人』(「Handia」)でゴヤ賞2018新人男優賞とスペイン俳優組合賞を受賞する。ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi」(21)、パウル・ウルキホ・アリホのアドべンチャー・ファンタジー「Irati」(22)主演、TVミニシリーズ「Patria」(20、8話、バスク語)などに出演している。
*『アルツォの巨人』の紹介記事は、コチラ⇒2017年09月06日
*「Irati」の紹介記事は、コチラ⇒2022年12月22日
*「Patria」の紹介記事は、コチラ⇒2020年08月12日

(『アルツォの巨人』のフレームから)

(『アルツォの巨人』でゴヤ賞2018新人男優賞受賞)
ニューディレクターズ部門に2作品ノミネート*SSIFF 2025 ⑦ ― 2025年08月12日 13:57
イラティ・ゴロスティディ・アギレチェとホセ・アラヨン

(ニューディレクターズ部門の公式ポスター)
★バスク出身のイラティ・ゴロスティディ・アギレチェ(1988)のデビュー作「Aro berria」と、テネリフェ出身のホセ・アラジョン(1980)の第2作め「La lucha / Dance of the Living」の2作がノミネートされました。当部門は1作めから2作目が対象です。8月5日にノミネート全作品が発表になっており、日本からもユカリ・サカモト(坂本悠花里/ユカリ、東京1990)の『白の花実』(12月26日公開)がクロージング作品として選ばれています。招待作品ということで賞には絡まないのかもしれません。他、中国、コスタリカ、デンマーク、インド、イギリス、ロシア、スウェーデン、台湾、トルコ、計13作です。当ブログでは、スペイン映画2作をアップします。まずはイラティ・ゴロスティディ・アギレチェの「Aro berria」からアップします。

(ニューディレクターズ13作入りの公式ポスター)
1)「Aro berria / Anekumen」
Ikusmira Berriak 2020 作品
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語・バスク語、歴史ドラマ、110分、長編デビュー作。イクスミラ・ベリアクの他、ロカルノ・レジデンス2023,FIDLab、インディ・リスボア・共同プロダクション・フォーラムなどに参加している。
監督・脚本:イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ、製作:Apellaniz y de Sosa SL / Anekumen Pelikula AIE / Leire Apellaniz & Claudia Salsedo / SEÑOR y SEÑORA、ICAA、RTVE、EiTBから資金提供を受けている。製作者:レイレ・アベリャニス、カルメン・ラカサ、撮影:イオン・デ・ソーサ、衣装デザイン:ハビエル・ベルナル・ベルチ、プロダクションデザイン:クラウディア・サルセド

キャスト:マイテ・ムゲルサ・ロンセ、オスカル・パスクアル・ロペス、アイマル・ウリベサルゴ、エドゥルネ・アスカラテ、ジョン・アンデル・ウレスティ、ナタリア・スアレス、(特別出演)ヤン・コルネ、オリベル・ラシェ、ハビエル・バランディアン
ストーリー:1978年5月、フランコのスペインは終焉を迎え、民主主義移行への興奮が感じられたサンセバスティアンの郊外では、水道メーター工場の労働者が集まり、ストライキについての集会を開いていた。最終的には失敗に終わり、幻滅した彼らのなかで最もラディカルな若いグループは工場を去り、社会変革より個人的なより仲間内の領域に向かい始めます。人里離れた山中に籠り、カタルシス体験を共有することで激しい探求への旅を企てますが、彼らの願望は深い矛盾にぶつかり、彼らが求めていた理想は揺らぎ始めます。フランコ没後の1970年代の実話に着想を得て製作された。

監督紹介:イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ、1988年ナバラ州エゲシバル生れ、監督、脚本家。ビルバオとバルセロナで芸術と映画を学び、フルブライト奨学金を得て、ニューヨークに留学。本祭関連では、短編「Unicornio」(18分、シネミラ・キムアク部門2021)ほか。「Contadores」(19分、サバルテギ-タバカレア部門2023)は、カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でライツ・シネ・ディスカバリー賞にノミネートされた他、グアナファト映画祭、ヴィラ・ド・コンデ映画祭などにもノミネートされた。アルカラ・デ・エナレス短編映画祭2023でイオン・デ・ソーサが撮影賞を受賞した。本作は「Contadores」で探求された世界を掘り下げたものであり、当時の歴史的再現やドキュメンタリー資料を駆使してアプローチしている。

(イラティ・ゴロスティディ・アギレチェ監督)

(イオン・デ・ソーサ、監督、製作者カルメン・ラカサ、SSIFF 2025、8月5日)
★次回、ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living」を予定しています。
ニューディレクターズ部門にホセ・アラヨンの「La lucha」*SSIFF2025 ⑧ ― 2025年08月13日 15:41
ホセ・アラヨンの「La lucha / Dance of the Living」

2)「La lucha / Dance of the Living」2025
データ:製作国スペイン=コロンビア、2025年、長編2作目、スペイン語、ドラマ、92分、撮影地カナリア諸島フエルテベントゥーラ島、16mm撮影、プレミア上映
監督:ホセ・アンヘル・アラヨン(アラジョン)、製作:El Viaje Films(スペイン)/ Blond Indian Films(コロンビア)共同製作、資金提供:MEDIA Creative Europe / ICAA / カナリア諸島政府 / ラジオ・テレビ・カナリア 協賛:カナリア諸島レスリング連盟、フエルテベントゥーラ・レスリング連盟、他フエルテベントゥーラ映画委員会など多数、製作者:マリナ・アルベルティ、脚本:マリナ・アルベルティ、サムエル・M・デルガド、撮影:マウロ・エルス、美術:シルビア・ナバロ、編集:エマ・タセル、キャスティング:センドリアン・ラプヤデ
キャスト:ヤスミナ・エストゥピニャン(マリアナ)、トマシン・パドロン(父ミゲル)、イネス・カノ、サラ・カノ、アリダニー・ぺレス
ストーリー:火星を思わせる乾燥したフエルテベントゥーラ島、母親ピラールが亡くなり、マリアナと父親ミゲルは前進しようとしますが、喪失感から父娘二人は精神的に漂流しています。カナリア諸島のレスリングは彼らの避難所であり、世界に自分たちの居場所を作るための方法です。しかし、トップレスラーのミゲルの体は慢性的な膝の痛みを抱え衰え始めています。一方このスポーツの規範には小柄すぎるマリアナの怒りは、彼女にルール違反を促します。チャンピオンシップ決勝を目前にして、不確実な状況に立たされていることに気づきます。父と娘は手遅れになる前にお互い冷静になる方法を見つけねばなりません。500年の伝統を誇るカナリア・レスリングを背景に、スポーツをはるかに超えた想像力、譲歩の拒否、静かな誇りが語られる。
監督・スタッフ紹介:ホセ・アンヘル・アラヨン、1980年カナリア諸島テネリフェ生れ、製作者、脚本家、監督、撮影監督、フィルム編集者。プロデューサーとしてのキャリが長い。「En el insomnio」がカルタヘナ映画祭2010とラス・パルマスFF短編賞を受賞、「La ciudad oculta」がフェロス賞2020ドキュメンタリー賞を受賞、ベネチア映画祭2023短編部門にノミネートされたマリナ・アルベルティ(監督、脚本家、製作者)の「Aitana」(23、19分)に脚本を監督と共同執筆する。ベネチア映画祭2019オリゾンティ部門出品のテオ・コートの「Blanco en Blanco」には製作と撮影を手掛け、ペドロ・シエナ賞2021撮影監督賞を受賞、テオ・コートは監督賞、FIPRESCI賞以下、ハバナ、トゥールーズ、ビニャ・デル・マルなど受賞歴多数。

(ホセ・アンヘル・アラヨン)
★2013年、マウロ・エルセ(監督、撮影監督)と共同監督した「Slimane」(西=モロッコ=仏、ベルベル語・西語、70分)で長編映画デビューを果たし、製作、脚本も手掛けた。IBAFFムルシア映画祭2014でオペラ・プリマ賞を受賞する。共同監督のマウロ・エルセは、オリベル・ラシェの『ファイアー・ウィル・カム』でゴヤ賞2020撮影賞を受賞している。アラヨンはベネチアFF2021「批評家週間」ノミネートのサムエル・M・デルガド&エレナ・ヒロンの「Eles Transportan a Morte / They Carry Death」には製作と撮影で参加、本作と同じカナリア諸島を拠点として展開するドラマです。アートディレクターのシルビア・ナバロは「They Carry Death」を手掛けています。


(撮影中のアラヨン監督)
キャスト紹介:主役マリアナを演じたヤスミナ・エストゥピニャンは、本作でデビュー、キャスティングのセンドリアン・ラプヤデが1年がかりで探した。父親役のトマシン・パドロンはベテランのレスラーということです。
ペルラス部門にギジェルモ・ガロエのデビュー作*SSIFF 2025 ⑨ ― 2025年08月17日 15:30
カンヌ映画祭併催の「批評家週間」でSACD脚本賞受賞の「Ciudad sin sueño」

(ペルラク/ペルラス部門の公式ポスター)
★ペルラス部門にギジェルモ・ガロエのデビュー作「Ciudad sin sueño」(スペイン=フランス、スペイン語・アラビア語、97分)が、スペイン映画としてただ1作選ばれました。「批評家週間」インディペンデント賞SACD脚本賞受賞作品です。既に詳細をアップしておりますが、カンヌでは情報不足ということもあって、前回とダブらないように、今回少し補足しておきます。スペイン公開2025年11月21日がアナウンスされました。

(ギジェルモ・ガロエ監督)

★前回よりキャスト情報が増え、補足しておきます。
キャスト:アントニオ ‘トニ’・フェルナンデス・ガバレ(トニ)、ビラル・セドラオウイ(トニの友人)、ヘスス‘チュレ’・フェルナンデス・シルバ(祖父チュレ)、マヌエラ ‘アネリ’・フェルナンデス・フェルナンデス、デボラ‘スラミ’・ヴァルガス、フランシスカ‘パキ’・ヒメネス・フェルナンデス、サナ・アグミル、ルイス・ベルトロ

(トニと友人ビラル、フレームから)
★受賞歴、カンヌの他、ミュンヘン映画祭2025シネヴィジョン賞ノミネート、ブリュッセル映画祭 BRIFF2025 スペシャル・メンション受賞。監督以下撮影監督のルイ・ポサなどスタッフ紹介、トニ役のアントニオ・フェルナンデス・ガバレの紹介もしております。
*「Ciudad sin sueño」の紹介記事は、コチラ⇒2025年05月27日
オリソンテス・ラティノス部門12作発表*SSIFF2025 ⑩ ― 2025年08月24日 15:38
オープニング作品はドミンガ・ソトマヨールの「Limpia」

(公式ポスター)
★8月20日、オリソンテス・ラティノス部門のラインナップ12作品が発表になりました。オープニング作品は、久しぶりにチリのドミンガ・ソトマヨール(サンティアゴ・デ・チレ1985)の「Limpia」、アリア・トラブッコのベストセラー小説の映画化、心理スリラー。クロージング作品は、チリのディエゴ・セスペデス(サンティアゴ・デ・チレ1995)の長編デビュー作「La misteriosa mirada del flamenco」、カンヌ映画祭2025「ある視点」賞を受賞した折に、既に監督キャリア&フィルモグラフィー、キャスト紹介をしております。同じ「ある視点」の大賞審査員賞を受賞したコロンビアのシモン・メサ・ソト(メデジン1986)の「Un poeta」(ドイツ=スウェーデンとの合作)もノミネートされました。これら2作品は想定内のことと言っていいでしょう。こちらも作品、監督キャリア&フィルモグラフィー、キャスト紹介を既にアップしております。

(オープニング作品「Limpia」)

(クロージング作品「La misteriosa mirada del flamenco」)

(カンヌ「ある視点」賞の「Un poeta」)
*ディエゴ・セスペデス関連の記事は、コチラ⇒2025年05月12日/同年06月01日
*シモン・メサ・ソト関連の記事は、コチラ⇒2025年05月14日/同年06月06日

(12作品入りの公式ポスター)
★他にアルゼンチンのルクレシア・マルテル(サルタ1966)の「Nuestra tierra」、ウルグアイ出身だが、アルゼンチンで主に俳優としても活躍しているダニエル・エンドレール(モンテビデオ1976)の「Un cabo suelto / A Loose End」は、Industria WIP Latam de 2024 の受賞作です。メキシコ(2作品)、エクアドル、ブラジルなど、いずれ何回かに分けて可能な限り作品紹介を予定しています。

(マルテルの「Nuestra tierra」)

(エンドレールの「Un cabo suelto / A Loose End」)
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