第12回フェロス賞2025授賞式*結果発表2025年02月02日 14:06

       映画ドラマ部門は「Salve María」、コメディ部門は「Casa en flames

   

       

125日、第12回フェロス賞2025の授賞式がポンテベドラの文化会館 Pazo da Culturaで開催され、全カテゴリー21の結果発表がありました。選考母体はスペイン映画ジャーナリスト協会AICAです。映画部門11TVシリーズ部門7、フェロス感動賞2、今年の受賞者がハイメ・チャバリだったフェロス栄誉賞の合計21カテゴリーです。総合司会者は、昨年アレハンドロ・マリンの「Te estoy amando locamente」出演で助演男優賞を受賞したラ・ダニが務めました。登壇して降壇するまで涙の止まらない受賞スピーチをしたのでした。

    

       

                         (左から3人め、AICA会長マリア・ゲーラ)

     

      

    

               (総合司会者ラ・ダニ)

 

★ゴヤ賞の前哨戦という位置づけが少し怪しくなってきた印象です。マル・コルの作品賞受賞作「Salve María」など、ゴヤ賞では脚色賞と新人女優賞(ラウラ・ヴァイスマール)の2個、カテゴリーの数を勘案すると少なすぎ、イサキ・ラクエスタ&ポル・ロドリゲスの「Segundo premio」においてはゼロ、ゴヤ賞は3番目に多い11個です。重なるのはダニ・デ・ラ・オルデンのコメディ「Casa en llamas」(原題「Casa en flames」)、監督賞はペドロ・アルモドバルの手に渡りましたが、受賞は5回(予告編・脚本・監督)、フェロス栄誉賞2023につづいて2回めの監督賞を受賞しました。

       

          

   

マル・コル(バルセロナ1981)は、バルセロナのカタルーニャ映画視聴覚上級学校で映画を学ぶ。イサベル・コイシェにつづく世代を代表する監督。デビュー作「Tres dias con la familia」がマラガ映画祭2009でプレミアされ、翌年のガウディ賞を総なめにして、ゴヤ賞では新人監督賞を受賞している。第23回東京国際女性映画祭2010のオープニング作品に選ばれ、『家族との3日間』の邦題で上映された。新作「Salve María」は、母性をテーマにしたサイコスリラー仕立て、カティシャ・アギーレの小説 Las madres no の映画化です。ロカルノ映画祭でプレミアされ、国際映画部門のスペシャルメンション他を受賞、ガウディ賞2025脚色賞を受賞している。

 

TVシリーズ部門作品賞の「Querer」(4話)は、ホセ・マリア・フォルケ賞2024でも作品・主演男優(ペドロ・カサブランク)・主演女優(ナゴレ・アランブル)を受賞していて、予想通りの受賞でした。サンセバスチャン映画祭2024のアウト・オブ・コンペティション作品として特別上映されている。

 

      

 

 

           12回フェロス賞2025結果発表印は紹介作品)

 

★映画部門

作品賞(ドラマ)

Salve María」監督マル・コル、脚本マル・コル、バレンティナ・ビソ、

 原作カティシャ・アギーレ、製作マリア・サモラSergi Casamitjana

ノミネート

La estrellas azul(ハビエル・マシぺ) 

La habitación de al lado」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(ペドロ・アルモドバル) 

La virgen roja」『レッド・バージン』(パウラ・オルティス)

Los destellos」(ピラール・パロメロ) 

 

       

              (右から2人め、マル・コル監督)

   


 (受賞スピーチをする製作者マリア・サモラ)

   

   

            (興奮がおさまらないキャスト&スタッフ)

   

作品賞(コメディ)

Casa en llamas」監督ダニ・デ・ラ・オルデン

         製作アルベルト・アランダキケ・マイジョ他 

ノミネート作品:

Bodegón con fantasmas」(監督エンリケ・ブレオ)

Buscando a Coque」(同テレサ・ベリョン&セサル・F・カルビーリョ)

Escape」(同ロドリゴ・コルテス) 

Volveréis」(同ホナス・トゥルエバ) 

   

     

             (スピーチするダニ・デ・ラ・オルデン)

 

    

 

監督賞

ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)

ノミネート:アランチャ・エチェバリア、ダニ・デ・ラ・オルデン、パウラ・オルティス、

      ピラール・パロメロ

    

       

    

    

     

主演女優賞

エンマ・ビララサウ(「Casa en llamas」)

ノミネート:パトリシア・ロペス・アルナイス、ナイワ・ニムリ、ラウラ・ヴァイスマール、

      カロリナ・ジュステ

 

      

   

 

主演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス(「Marco」監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ) 

ノミネート:ペペ・ロレンテ、ウルコ・オラサバル、アントニオ・デ・ラ・トーレ、

      ダビ・ベルダゲル

   

         


       

助演女優賞

クララ・セグラ(「El 47」監督マルセル・バレナ) 

ノミネート:アンナ・カステーリョ、マリナ・ゲロラ、マリア・ロドリゲス・ソト、

      アイシャ・ビリャグラン

 

       

         (受賞者欠席で、バレナ監督がスピーチを代読した)


 

助演男優賞

オスカル・デ・ラ・フエンテ(「La casa」監督アレックス・モントーヤ)  

ノミネート:エンリク・アウケル、フリアン・ロペス、ホセ・サクリスタン、

      アルベルト・サン・フアン

 

   

 

 

脚本賞 DAMA

エドゥアルド・ソラ(「Casa en llamas」)

ノミネート

マルセル・バレナ&ベト・マリニ(「El 47」)

ハビエル・マシぺ(La estrellas azul

ペドロ・アルモドバル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)

エドゥアルド・ソラ&クララ・ロケ(『レッド・バージン』)

  

      


           (TVシリーズ部門でも受賞して2個ゲットした)

 

 

オリジナル音楽賞

アルベルト・イグレシアス(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)

ノミネート

アルナウ・バタリェル(「El 47」)

フェルナンド・ベラスケス(La casa」)

マリア・アルナル(「Polvo serán」監督カルロス・マルケス=マルセ)

セルティア・モンテス(「Salve María」)

   


      

予告編賞

ミゲル・アンヘル・トゥルド(「Polvo serán」カルロス・マルケス=マルセ)

ノミネート

アルベルト・レアル(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』)

ハビエル・モラレス(「La infiltrada」アランチャ・エチェバリア) 

オマール・ベルムデス&カルロス・ベロト(「Marco」)

マルタ・ロンガス&ヘスス・フェルナンデス・ガルシア(『レッド・バージン』)

     


    

ポスター賞

オクタビオ・テロルリュイス・トゥデラ(「Salve María」)

ノミネート:「Casa en llamas」、「La estrellas azul」、『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』、「「Polvo serán

    

           

      

       (ラウラ・ヴァイスマールの乳首露出がSNSで問題になったポスター)

 

 

TVシリーズ部門

作品賞(ドラマ)

Querer4話(製作:フアン・モレノ、コルド・スアスア、スサナ・エレラス、フラン・アラウホ、監督アラウダ・ルイス・デ・アスア、脚本:アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス、エドゥアルド・ソラ、キャスト:ナゴレ・アランブル、ペドロ・カサブランク、ロレト・マウレオン、ミゲル・ベルナルドー、イバン・ペリセル、他) 

  


             (アラウダ・ルイス・デ・アスア監督)

 

     
            

      

作品賞(コメディ)

Celeste6話(製作:ディエゴ・サン・ホセ、フラン・アラウホ、ラウラ・フェルナンデス・エスペソ他、監督エレナ・トラぺ、脚本:ディエゴ・サン・ホセ、ダニエル・カストロ、オリオル・プイグ・プラヤ、キャスト:カルメン・マチ、アンドレア・バヤルド、アントニオ・ドゥラン、クララ・サンス、マノロ・ソロ、他多数)

  

      

  

       

     

 

主演女優賞

ナゴレ・アランブル(「Querer」)

ノミネート:モニカ・ロペス、カルメン・マチ、カンデラ・ペーニャ、イリア・デル・リオ

   

 

    

      

主演男優賞

オリオル・プラ(「Yo, adicto」)

ノミネート:フランセスコ・カリル、ペドロ・カサブランク、トリスタン・ウジョア、

      アルベルト・サン・フアン

 

    

 (受賞者はマドリードでの舞台出演で欠席、共演者ハビエル・ヒネルが代理で受け取った)

   

     

      

   

助演女優賞

ノラ・ナバス(「Yo, adicto」)

ノミネート:タマラ・カセリャス、マリア・レオン、ロレト・マウレオン、クララ。サンス

    

  

     

 

助演男優賞

ポル・ロペス(「Nos vemos en otra vida」)

ノミネート:ミゲル・ベルナルドー、ハビエル・グティエレス、イバン・ペリセル、マノロ・ソロ

    

      

      

脚本賞 DAMA

アラウダ・ルイス・デ・アスアフリア・デ・パスエドゥアルド・ソラQuerer

    

    

     (エドゥアルド・ソラ、アラウダ・ルイス・デ・アスア、フリア・デ・パス) 

 

 

フェロス感動賞(フィクション)

Polvo serán」(監督カルロス・マルケス=マルセ) 

製作国スペイン=スイス=イタリア合作、スペイン語、英語、ミュージカル・ドラマ、106分、ガウディ賞2025作品賞を含む4冠、アンヘラ・モリーナ、アルフレッド・カストロ主演。

 

   

             (カルロス・マルケス=マルセ監督

   

   

 

フェロス感動賞(ノンフィクション)

The Human Hibernation」(監督アンナ・コルヌデリャ・カストロ)

製作国スペイン、英語、SF90分。第74回ベルリン映画祭2024「フォーラム」部門、FIPRESCI賞受賞、マル・デル・プラタFF、トゥールーズ・シネエスパーニャ、他ノミネート多数。スペイン公開2025110

 

   

             (左から2人め、アンナ・コルヌデリャ)

 

      

    

 

フェロス栄誉賞

ハイメ・チャバリ1943年マドリード生れ、監督、脚本家、演出家、また俳優でもあった。プレゼンターは、「Besos para todos」に出演したエンマ・スアレスでした。

 

  

                     (左端がプレゼンターのエンマ・スアレス)

  

          

       

 

キャリア&フィルモグラフィー

★マドリードの公立映画学校で学ぶ。1970年「Ginebra en los infiernos」で長編映画デビューする。1976年、「Los viajes escolares」(仮題「修学旅行」)、個人的な複雑な問題を抱えた家族をテーマにしている。製作者エリアス・ケレヘタとのコラボレーションで注目されるようになる。最高のドキュメンタリーと称される「El desencanto」(76、仮題「失望」)を撮っている。有名な詩人レオポルド・パネロ一家のフランコ独裁時代における家族制度を分析している。シネマ・ライターズ・サークル賞1977作品賞、フォトグラマス・デ・プラタのスペイン映画出演者賞を受賞した。40年間という長きにわたって窒息させられてきたドキュメンタリーというジャンルに生命力を吹き込んでいる。

 

1977年「A un Dios desconocido」(仮題「見知らぬ神に」)でエクトル・アルテリオとハビエル・エロリアガを起用して同性愛をテーマに取り入れている。サンセバスチャン映画祭サンセバスティアン賞(アルテリオ)、スペイン語映画賞などを受賞した。1980年、ケレヘタと脚本を共同執筆した「Dedicatoria」(「献身」)は、カンヌ映画祭コンペティション部門にノミネートされた。

 

80年代には「Bearn o la sala de las munecas」(83,同「ベアルン、または人形の間」)では、フェルナンド・レイ、アンヘラ・モリーナ、アンパロ・ソレル・レアル、イマノル・アリアスなどが共演している。つづく「Las bicicletas son para el verano」(84、『自転車は夏のために』)は、スペイン映画史をひもとけば必ず紹介される秀作、スペイン内戦を背景にした或る家族の感受性豊かな物語が語られ商業的にも成功した作品で、2作とも製作者はアルフレッド・マタス。アンヘラ・モリーナ起用は5作品、その一つが1986年の「El río de oro」、ミュージカル「Las cosas del querer」(89、『歌と踊りと恋のいざこざ』)、その続編(95)などです。

 

2000年、コメディ「Besos para todos」にエンマ・スアレスやピラール・ロペス・デ・アヤラ、エロイ・アソリンを起用して、ゴヤ賞監督賞にノミネートされた他、トゥリア賞を受賞した。2005年「Camarón」は、フラメンコ歌手カマロン・デ・ラ・イスラ1992年没)のビオピック、カマロンを演じたオスカル・ハエナダにゴヤ賞主演男優賞をもたらし、他にも衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアー賞を受賞した。

 

★もう監督は引退したのかと思っていたコロナ禍の2022年、約17年振りにマルタ・ニエト、セルジ・ロペスなどのベテラン演技派、若手アドリアン・ラストラを起用したコメディ「La manzana de oro」を撮った。ほかビッキー・ペーニャ、ロベルト・エンリケス、ガルシア・ミラン、アルバロ・スビエスなど豪華キャストを揃えての群像劇、本人も神父役で出演している。フェルナンド・アランブルの小説の映画化、撮影監督キコ・デ・ラ・リカ(『ブランカニエベス』『ルシアとSEX』)、フィルム編集はアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』を手掛けているテレサ・フォントと文句なしの布陣でした。次回作もあるかもしれない。